説明

プラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置

【課題】プラズマディスプレイパネルの強制初期化動作の回数を削減して黒輝度を抑えるとともに安定した書込み動作を行う。
【解決手段】放電の履歴にかかわらず放電が発生する所定の電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に下り傾斜波形電圧を印加する走査電極と所定の電圧よりも低い電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に下り傾斜波形電圧を印加する走査電極とが存在する第1種サブフィールドと、下り傾斜波形電圧を走査電極に印加する第2種サブフィールドとを含み、第1種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧を印加し、第2種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流面放電型のプラズマディスプレイパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)は、走査電極および維持電極からなる表示電極対とデータ電極とを有する放電セルを複数備え、放電セル内でガス放電により発生させた紫外線で赤色、緑色および青色の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としてはサブフィールド法、すなわち初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般的である。各サブフィールドの初期化期間には初期化動作、書込み期間には書込み動作、維持期間には維持動作を行う。初期化動作は初期化放電を発生し、続く書込み動作に必要な壁電荷を形成する動作である。初期化動作には、直前のサブフィールドの動作にかかわらず初期化放電を発生させる強制初期化動作と、直前のサブフィールドで書込み放電を行った放電セルで初期化放電を発生させる選択初期化動作とがある。書込み動作は表示する画像に応じて放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する動作であり、維持動作は表示電極対に交互に維持パルスを印加して維持放電を発生させ、対応する放電セルの蛍光体層を発光させる動作である。
【0004】
サブフィールド法の中でも最も低い階調である黒を表示する際の輝度(以下、「黒輝度」と略記する)を下げ、階調表示に関係しない発光を極力減らしてコントラストを向上させる駆動方法が検討されている。例えば特許文献1には、強制初期化動作を行う回数を1フィールドに1回とし、緩やかに変化する傾斜波形電圧を用いて強制初期化動作を行う駆動方法が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、表示電極対をn分割し、強制初期化動作を行う回数をnフィールドに1回とし、階調表示に関係しない発光をさらに減らして黒輝度をさらに下げ、コントラストをさらに向上させた駆動方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−242224号公報
【特許文献2】特開2006−091295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら強制初期化動作には、続く書込み期間において書込み放電を発生させるために必要な壁電荷を蓄積する働きがあり、加えて放電遅れ時間を短くして書込み放電を確実に発生させるためのプライミングを発生するという働きも持っている。そのため単純に強制初期化動作の回数を削減すると、書込み放電が発生しない、あるいは書込み放電の放電遅れ時間が長くなりすぎて書込み動作が不安定となり、正常な画像表示ができなくなるおそれがあるという課題があった。
【0008】
本発明はこれらの課題に鑑みなされたものであり、強制初期化動作の回数を削減して黒輝度を抑えるとともに安定した書込み動作を行って、コントラストが高くかつ画像表示品質の高い画像表示が可能なパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたパネルを駆動するパネルの駆動方法であって、フィールドは、初期化期間において、放電の履歴にかかわらず放電が発生する所定の電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に再び放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を印加する走査電極と所定の電圧よりも低い電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に下り傾斜波形電圧を印加する走査電極とが存在する第1種サブフィールドと、初期化期間において、直前のサブフィールドで書込み放電を発生した放電セルのみで放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を走査電極に印加する第2種サブフィールドとを含み、第1種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧を印加し、第2種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加することを特徴とする。この方法により、強制初期化動作の回数を削減して黒輝度を抑えるとともに安定した書込み動作を行って、コントラストが高くかつ画像表示品質の高い画像表示が可能なパネルの駆動方法を提供することができる。
【0010】
また本発明のパネルの駆動方法は、第2種サブフィールドの初期化期間において走査電極に印加する下り傾斜波形電圧の到達電圧が、第1種サブフィールドの初期化期間において走査電極に印加する下り傾斜波形電圧の到達電圧よりも高いことが望ましい。
【0011】
また本発明は、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたパネルと、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成するとともに駆動電圧波形を発生してパネルの各電極に印加する駆動回路とを備えたプラズマディスプレイ装置であって、駆動回路は、初期化期間において、放電の履歴にかかわらず放電が発生する所定の電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に再び放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を印加する走査電極と所定の電圧よりも低い電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に下り傾斜波形電圧を印加する走査電極とが存在する第1種サブフィールドと、初期化期間において、直前のサブフィールドで書込み放電を発生した放電セルのみで放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を走査電極に印加する第2種サブフィールドとでフィールドを構成し、第1種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧を印加し、第2種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加して前記プラズマディスプレイパネルを駆動することを特徴とする。この構成により、強制初期化動作の回数を削減して黒輝度を抑えるとともに安定した書込み動作を行って、コントラストが高くかつ画像表示品質の高い画像表示が可能なプラズマディスプレイ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強制初期化動作の回数を削減して黒輝度を抑えるとともに安定した書込み動作を行って、コントラストが高くかつ画像表示品質の高い画像表示が可能なパネルの駆動方法およびプラズマディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネルの分解斜視図である。
【図2】同プラズマディスプレイ装置に用いるパネルの電極配列図である。
【図3】同プラズマディスプレイ装置の各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【図4】本発明の実施の形態1において強制初期化動作を行う走査電極とフィールドとの関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。
【図6】同プラズマディスプレイ装置の走査電極駆動回路の回路図である。
【図7】同プラズマディスプレイ装置の維持電極駆動回路の回路図である。
【図8】同プラズマディスプレイ装置のデータ電極駆動回路の回路図である。
【図9】同プラズマディスプレイ装置の駆動回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2におけるプラズマディスプレイ装置の各電極に印加する駆動電圧波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネル10の分解斜視図である。ガラス製の前面基板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして表示電極対24を覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。保護層26は、放電を発生しやすくするために、電子放出性能の高い材料である酸化マグネシウムを用いて形成されている。背面基板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色、緑色および青色の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0016】
これら前面基板21と背面基板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンとの混合ガスが封入されている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0017】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0019】
次に、パネル10を駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。プラズマディスプレイ装置は、サブフィールド法、すなわち1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって画像を表示する。それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する初期化動作を行う。このときの初期化動作には、それ以前の放電の有無にかかわらず放電セルで強制的に初期化放電を発生させる強制初期化動作と、直前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルのみで初期化放電を発生させる選択初期化動作とがある。書込み期間では、発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する書込み動作を行う。そして維持期間では、サブフィールド毎にあらかじめ決められた輝度重みに応じた数の維持パルスを表示電極対に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる維持動作を行う。
【0020】
サブフィールド構成としては、例えば、1フィールドを10のサブフィールド(SF1、SF2、・・・、SF10)に分割し、各サブフィールドはそれぞれ、(1、2、3、6、11、18、30、44、60、80)の輝度重みを持つものとする。
【0021】
本実施の形態においては、サブフィールドSF1は、強制初期化動作を行う放電セルと強制初期化動作を行わない放電セルとが存在する第1種サブフィールドである。またサブフィールドSF2〜SF10は、全ての放電セルで選択初期化動作を行う第2種サブフィールドである。なお第1種サブフィールドにおいて強制初期化動作を行う特定の走査電極についての詳細は後述することとして、まず駆動電圧波形の一例について説明する。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図3には走査電極SC1、走査電極SC2、維持電極SU1〜SUnおよびデータ電極D1〜Dmに印加する駆動電圧波形を、サブフィールドSF1〜SF3について示している。なお図3においては、走査電極SC1を有する放電セルで強制初期化動作を行い、走査電極SC2を有する放電セルでは強制初期化動作を行わないものとして説明する。
【0023】
第1種サブフィールドSF1の初期化期間の前半部では、データ電極D1〜Dmに電圧0(V)を印加し、維持電極SU1〜SUnにも電圧0(V)を印加する。そして強制初期化動作を行う走査電極SC1には、放電が発生しない電圧Vi1から、放電の履歴にかかわらず放電が発生する所定の電圧Vi2(以下、単に「電圧Vi2」と略記する。)まで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。すると、走査電極SC1と維持電極SU1との間、および走査電極SC1とデータ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こり、走査電極SC1上に負の壁電圧が蓄積されるとともにデータ電極D1〜Dm上および維持電極SU1上に正の壁電圧が蓄積される。加えて、書込み放電の放電遅れ時間を短くするプライミングも発生する。ここで電極上の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0024】
一方、強制初期化動作を行わない走査電極SC2には、電圧0(V)から、上記所定の電圧Vi2よりも低い電圧Vi5まで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。ただしこの場合には放電は発生しない。
【0025】
このようにサブフィールドSF1の初期化期間の前半部では、強制初期化動作を行う走査電極にはそれ以前の放電の有無にかかわらず放電が発生する電圧Vi2に向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。また、強制初期化動作を行わない走査電極には、電圧Vi2よりも低い電圧Vi5に向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。
【0026】
続く第1種サブフィールドSF1の初期化期間の後半部では、データ電極D1〜Dmに第1の電圧として電圧0(V)を印加し、維持電極SU1〜SUnには電圧Veを印加する。そして走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると、サブフィールドSF1の初期化期間の前半部で微弱な初期化放電を起こした放電セルおよび直前のサブフィールドである前フィールドのサブフィールドSF10で放電を発生し過剰な壁電荷を蓄積している放電セルでは微弱な初期化放電が発生する。そして対応する放電セルの走査電極上および維持電極上の壁電圧が弱められるとともに、データ電極D1〜Dmの壁電圧の過剰な部分が放電され書込み動作に適した壁電圧に調整される。加えて、書込み放電の放電遅れ時間を短くするプライミングも発生する。一方、直前のサブフィールドで放電を起こさずサブフィールドSF1の初期化期間の前半部でも初期化放電を起こさなかった放電セルでは初期化放電が発生せず、それ以前の壁電圧が保持される。
【0027】
このように本実施の形態においては、サブフィールドSF1は、初期化期間において、強制初期化動作を行う放電セルと選択初期化動作を行う放電セルとが混在する第1種サブフィールドである。そして初期化期間において、放電の履歴にかかわらず放電が発生する所定の電圧Vi2まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に再び放電が発生する電圧Vi4まで下降する下り傾斜波形電圧を印加する走査電極と、所定の電圧Vi2よりも低い電圧Vi5まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に電圧Vi4まで下降する下り傾斜波形電圧を印加する走査電極とが存在する。また走査電極SC1〜SCnに下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極D1〜Dmに第1の電圧0(V)を印加する。
【0028】
続くサブフィールドSF1の書込み期間では、データ電極D1〜Dmに電圧0(V)を、維持電極SU1〜SUnには電圧Veを引き続き印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。次に、1行目の走査電極SC1に電圧Vaの走査パルスを印加するとともに発光すべき放電セルに対応するデータ電極Dkに電圧Vdの書込みパルスを印加する。するとデータ電極Dk上と走査電極SC1上との交差部の電圧差は放電開始電圧を超え、データ電極Dkと走査電極SC1との間で放電が発生し、さらに走査電極SC1と維持電極SU1との間に放電が伸展して書込み放電が起こる。そして走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。このようにして、1行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかったデータ電極と走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。
【0029】
次に、2行目の走査電極SC2に走査パルスを印加するとともに、発光すべき放電セルに対応するデータ電極Dkに電圧Vdの書込みパルスを印加する。するとデータ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間で書込み放電が起こり、走査電極SC2上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU2上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。このようにして、2行目に発光させるべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかったデータ電極と走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。
【0030】
以下、n行目の走査電極SCnにいたるまで同様の書込み動作を行い、続く維持放電に必要な壁電荷を形成する。
【0031】
続くサブフィールドSF1の維持期間では、データ電極D1〜Dmに電圧0(V)を印加する。そして、維持電極SU1〜SUnに電圧0(V)を印加するとともに走査電極SC1〜SCnに電圧Vsの維持パルスを印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差は電圧Vsに走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差を加算したものとなり放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。一方、書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化動作の終了時における壁電圧が保たれる。
【0032】
続いて、走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)を印加するとともに維持電極SU1〜SUnに電圧Vsの維持パルスを印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは再び維持放電が起こり、蛍光体層35が発光する。そして維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を継続して発生させる。
【0033】
そしてその後に、電圧Vrに向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する。すると維持放電を行った放電セルでは消去放電が発生して、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。こうして維持動作を終了する。
【0034】
第2種サブフィールドSF2の初期化期間では、データ電極D1〜Dmに第1の電圧0(V)よりも高い第2の電圧として正の電圧Vgを印加する。また維持電極SU1〜SUnには電圧Veよりも高い電圧Vhを印加する。そして走査電極SC1〜SCnには電圧Vi6に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。ここで、第2種サブフィールドSF1の初期化期間において走査電極SC1〜SCnに印加する下り傾斜波形電圧の到達電圧Vi6は第1種サブフィールドSF1の初期化期間において走査電極SC1〜SCnに印加する下り傾斜波形電圧の到達電圧Vi4よりも高く設定されており、電圧Vi4と電圧Vgとの和と同程度の電圧に設定されている。すると、直前のサブフィールドSF1において維持放電を発生した放電セルで微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。またデータ電極Dk上の壁電圧の過剰な部分が放電され、書込み動作に適した壁電圧に調整される。このようにして選択初期化動作が完了する。
【0035】
このように本実施の形態においては、サブフィールドSF2は、全ての放電セルで選択初期化動作を行う第2種サブフィールドである。そして初期化期間において、直前のサブフィールドで書込み放電を発生した放電セルのみで放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する。また、走査電極SC1〜SCnに下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極D1〜Dmに第1の電圧0(V)よりも高い第2の電圧Vgを印加する。
【0036】
続くサブフィールドSF2の書込み期間の駆動電圧波形はサブフィールドSF1の書込み期間と同様である。すなわちデータ電極D1〜Dmに電圧0(V)を、維持電極SU1〜SUnには電圧Veを印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vaの走査パルスを順次印加するとともに、発光すべき放電セルに対応するデータ電極Dkに電圧Vdの書込みパルスを印加して書込み動作を行う。
【0037】
続くサブフィールドSF2の維持期間の駆動電圧波形も維持パルス数を除きサブフィールドSF1の維持期間と同じである。すなわち走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を継続して発生させる。そしてその後に、電圧Vrに向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加して、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧を弱める。
【0038】
続く第2種サブフィールドSF3〜SF10における駆動電圧波形は、維持パルス数を除き第2種サブフィールドSF2と同様である。
【0039】
なお、本実施の形態においては、電圧Vi1は150(V)、電圧Vi2は350(V)、電圧Vi3は200(V)、電圧Vi4は−170(V)、電圧Vi5は200(V)、電圧Vi6は−110(V)、電圧Vcは−50(V)、電圧Vaは−200(V)、電圧Vsは200(V)、電圧Vrは200(V)、電圧Veは170(V)、電圧Vdは60(V)、電圧Vgは60(V)、電圧Vhは200(V)である。また、走査電極SC1〜SCnに印加する上り傾斜波形電圧の傾斜は10(V/μs)であり、下り傾斜波形電圧の傾斜は−1.5(V/μs)である。しかしこれらの電圧値は上述した値に限定されるものではなく、パネルの放電特性やプラズマディスプレイ装置の仕様にもとづき最適に設定することが望ましい。
【0040】
次に、強制初期化動作を行う特定の走査電極とフィールドとの関係について説明する。本実施の形態においては、各フィールドのそれぞれに対して強制初期化動作を行う特定の走査電極を以下の規則にもとづき設定する。1つの走査電極に対して、N個の連続するフィールド(Nは自然数)のうち1つのフィールドで1回だけ強制初期化動作を行う場合、時間的に連続するNフィールドを1つのフィールド群とし、連続して配置されたN本の走査電極を1つの走査電極群とする。その上で、
(規則1)1つの走査電極で強制初期化動作を行うフィールドは、それぞれのフィールド群の中で1つである。
【0041】
(規則2)1つのフィールドで強制初期化動作を行う走査電極は、それぞれの走査電極群の中で1つである。
【0042】
さらに、N≧5の場合には、
(規則3)あるフィールドで強制初期化動作を行う走査電極に隣接する走査電極では、少なくともそのフィールドと、そのフィールドの次のフィールドとで強制初期化動作を行わない。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態1において強制初期化動作を行う走査電極とフィールドとの関係を示す図であり、時間的に連続する5フィールドを1つのフィールド群とするN=5の場合の一例を示している。また横軸はフィールドを、縦軸は走査電極をそれぞれ表し、フィールドFj〜Fj+4が1つのフィールド群を、走査電極SCi〜SCi+4が1つの走査電極群を構成している。さらに「○」は強制初期化動作を行うことを示し、「×」は強制初期化動作を行わないことを示している。
【0044】
図4から明らかなように、走査電極SCiは、それぞれフィールド群の中の1つのフィールドで強制初期化動作を行っている。他の走査電極についても同様である(規則1)。これにより、フィールド毎に全ての放電セルで強制初期化動作を毎回行う場合と比較して、強制初期化動作の回数が5分の1に低減されるので、表示画像の黒輝度も5分の1に低減することができる。またフィールドFjに対して、それぞれ走査電極群の中の1つの走査電極で強制初期化動作を行っている。他のフィールドについても同様である(規則2)。これにより、強制初期化動作を行う走査電極を各フィールドに分散できるので、フリッカーを低減することができる。また走査電極SCiはフィールドFjで強制初期化動作を行い、走査電極SCiに隣接する走査電極SCi−1および走査電極SCi+1は、フィールドFjおよびその次のフィールドFj+1では強制初期化動作を行わない。他の走査電極についても同様である(規則3)。これにより、強制初期化動作を行う走査電極の時間的および空間的連続性を低減できるので、強制初期化動作にともなう発光が認識されにくくなる。
【0045】
このように本実施の形態においては、放電セルのそれぞれは、連続する複数のフィールドのうちの1つのフィールドに属する1つのサブフィールドの初期化期間において強制的に初期化放電を発生させる強制初期化動作を行う。これにより強制初期化動作を行う回数をnフィールドに1回とし、階調表示に関係しない発光をさらに減らして黒輝度を低下させ、コントラストの高い画像表示を行っている。
【0046】
ただし上述したように、単に強制初期化動作の回数を削減すると、書込み放電が発生しない、あるいは書込み放電の放電遅れ時間が長くなりすぎて書込み動作が不安定となり、正常な画像表示ができなくなるおそれがある。
【0047】
しかしながら本実施の形態においては、選択初期化動作を行う第2種サブフィールドSF2〜SF10の初期化期間において、データ電極D1〜Dmに第1の電圧0(V)よりも高い第2の電圧Vgを印加する。さらに走査電極SC1〜SCnに印加する下り傾斜波形電圧の到達電圧Vi6は、第1種サブフィールドSF1の初期化期間において走査電極SC1〜SCnに印加する下り傾斜波形電圧の到達電圧Vi4よりも高く設定されている。これにより、書込み動作を安定させてコントラストが高くかつ画像表示品質の高い画像を表示している。以下にその理由について説明する。
【0048】
本実施の形態においては、強制初期化動作を行う回数を減らしているために、各放電セルの壁電圧のばらつきが大きくなる可能性がある。しかしながら本実施の形態においては、選択初期化動作を行う第2種サブフィールドSF2〜SF10の初期化期間においてデータ電極D1〜Dmに正の電圧Vgを印加している。そのため走査電極SC1〜SCnとデータ電極D1〜Dmとの間の電圧差が大きくなり、選択初期化動作を行う放電セルのデータ電極Dkと走査電極SCiとの間で確実に放電を発生させることができ、データ電極Dk上の壁電圧を精度よくそろえることができる。そしてこの放電により減少した壁電圧を補って書込み放電を確実に発生させるために、書込み期間において走査電極に印加する走査パルスの低電圧側電圧Vaを電圧Vi6から正の電圧Vgを減じた電圧と同程度に設定している。言い換えると、選択初期動作を行う初期化期間において、走査パルスの低圧側の電圧Vaに正の電圧Vgを重畳した電圧と同程度の電圧Vi6に向かって下降する下り傾斜波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加している。本実施の形態においては、電圧Vi6は電圧Vi4と電圧Vgとの和よりもわずかに高い電圧に設定されている。
【0049】
一方、第1種サブフィールドSF1の初期化期間では、データ電極D1〜Dmに正の電圧Vgは印加しない。以下にその理由について説明する。
【0050】
第1種サブフィールドSF1の初期化期間では強制初期化動作を行う放電セルが存在する。すなわち初期化期間の前半部において、以前の放電の有無にかかわらず放電が発生する電圧Vi2に向かって上昇する上り傾斜波形電圧を印加して強制的に初期化放電を発生させる放電セルが存在する。このような放電セルのデータ電極上には正極性の高い壁電圧が蓄積される。仮にこのような放電セルのデータ電極上に正極性の電圧を印加したと仮定すると、初期化期間の後半部において走査電極とデータ電極との間の電圧差が大きくなりすぎて強い誤放電が発生する確率が高くなる。そのため本実施の形態においては、強制初期化動作を行う放電セルが存在する第1種サブフィールドSF1の初期化期間では、データ電極上に正極性の電圧は印加しない。
【0051】
こうしてデータ電極Dk上の壁電圧を精度よく調整することにより、強制初期化動作の回数を削減しても書込み放電を安定して発生させることができる。
【0052】
次に、パネル10を駆動するための駆動回路とその動作について説明する。図5は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置40の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置40は、パネル10とその駆動回路とを備え、駆動回路は、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45および各回路ブロックに必要な電源を供給する電源回路(図示せず)を備えている。
【0053】
画像信号処理回路41は、入力された画像信号をサブフィールド毎の発光・非発光を示す画像データに変換する。データ電極駆動回路42はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する書込みパルスに変換し各データ電極D1〜Dmに印加する。タイミング発生回路45は垂直および水平同期信号をもとにして各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。走査電極駆動回路43は、タイミング信号にもとづいて上述した駆動電圧波形を発生し各走査電極SC1〜SCnのそれぞれに印加する。維持電極駆動回路44は、タイミング信号にもとづいて上述した駆動電圧波形を発生し維持電極SU1〜SUnに印加する。
【0054】
図6は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置40の走査電極駆動回路43の回路図である。走査電極駆動回路43は、維持パルス発生回路50と、傾斜波形電圧発生回路60と、走査パルス発生回路70とを備えている。
【0055】
維持パルス発生回路50は、電力回収回路51と、スイッチング素子Q55と、スイッチング素子Q56と、スイッチング素子Q59とを有し、走査電極SC1〜SCnに印加する維持パルスを発生する。電力回収回路51は走査電極SC1〜SCnを駆動するときの電力を回収して再利用する。スイッチング素子Q55は走査電極SC1〜SCnを電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q56は走査電極SC1〜SCnを電圧0(V)にクランプする。スイッチング素子Q59は分離スイッチであり、走査電極駆動回路43を構成するスイッチング素子の寄生ダイオード等を介して電流が逆流するのを防止するために設けられている。
【0056】
走査パルス発生回路70は、スイッチング素子Q71H1〜Q71Hn、Q71L1〜Q71Ln、スイッチング素子Q72、走査パルス発生回路70の基準電位(図6に示した節点Aの電位)に重畳された電圧Vpの電源E71を有する。そして電圧Vaの電源、および電源E71をもとにして走査パルスを発生し、走査電極SC1〜SCnのそれぞれに、図3に示したタイミングで走査パルスを順次印加する。なお、走査パルス発生回路70は、維持動作時には維持パルス発生回路50の出力電圧をそのまま出力する。すなわち、節点Aの電圧を走査電極SC1〜SCnへ出力する。
【0057】
傾斜波形電圧発生回路60は、ミラー積分回路61〜63を備え、図3に示した傾斜波形電圧を発生させる。ミラー積分回路61は、トランジスタQ61とコンデンサC61と抵抗R61とを有し、入力端子IN61に一定の電圧を印加することにより、電圧Vtに向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を発生する。ミラー積分回路62は、トランジスタQ62とコンデンサC62と抵抗R62と逆流防止用のダイオードD62とを有し、入力端子IN62に一定の電圧を印加することにより、電圧Vrに向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を発生する。ミラー積分回路63は、トランジスタQ63とコンデンサC63と抵抗R63とを有し、入力端子IN63に一定の電圧を印加することにより、電圧Vi4に向かって緩やかに低下する下り傾斜波形電圧を発生する。なおスイッチング素子Q69も分離スイッチであり、走査電極駆動回路43を構成するスイッチング素子の寄生ダイオード等を介して電流が逆流するのを防止するために設けられている。
【0058】
なお、これらのスイッチング素子およびトランジスタは、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。またこれらのスイッチング素子およびトランジスタは、タイミング発生回路45で発生したそれぞれのスイッチング素子およびトランジスタに対応するタイミング信号により制御される。
【0059】
図7は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置40の維持電極駆動回路44の回路図である。維持電極駆動回路44は、維持パルス発生回路80と、一定電圧発生回路85とを備えている。
【0060】
維持パルス発生回路80は、電力回収回路81と、スイッチング素子Q83と、スイッチング素子Q84とを有し、維持電極SU1〜SUnに印加する維持パルスを発生する。電力回収回路81は維持電極SU1〜SUnを駆動するときの電力を回収して再利用する。スイッチング素子Q83は維持電極SU1〜SUnを電圧Vsにクランプし、スイッチング素子Q84は維持電極SU1〜SUnを電圧0(V)にクランプする。
【0061】
一定電圧発生回路85は、スイッチング素子Q86、Q87を有し、維持電極SU1〜SUnに電圧Veを印加する。
【0062】
なお、これらのスイッチング素子は、MOSFETやIGBT等の一般に知られた素子を用いて構成することができる。またこれらのスイッチング素子は、タイミング発生回路45で発生したそれぞれのスイッチング素子に対応するタイミング信号により制御される。
【0063】
図8は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置40のデータ電極駆動回路42の回路図である。データ電極駆動回路42は、スイッチング素子Q91H1〜Q91Hm、スイッチング素子Q91L1〜Q91Lmを有する。そしてスイッチング素子Q91Ljをオンにすることでデータ電極Djに電圧0(V)を印加し、スイッチング素子Q91Hjをオンにすることでデータ電極Djに電圧Vdを印加する。
【0064】
次に、駆動回路の動作、特に走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、データ電極駆動回路42の第1種サブフィールドSF1から第2種サブフィールドSF2にかけての動作について説明する。本実施の形態においては、図3に示した電圧Vi1は電圧Vpに等しく、電圧Vi2は電圧(Vt+Vp)に等しく、電圧Vi3は電圧Vsに等しく、電圧Vi5は電圧Vtに等しく、電圧Vcは電圧(Va+Vp)に等しく、電圧Vgは電圧Vdに等しく、電圧Vhは電圧Vsに等しいものとして説明する。しかしこれらの電圧は上記に限定されるものではなく、回路構成に応じて適宜設定することができる。
【0065】
図9は、本発明の実施の形態1におけるプラズマディスプレイ装置40の駆動回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。なお図9には走査電極SC1〜SCnの内、強制初期化動作を行う走査電極を走査電極SCxで示し、強制初期化動作を行わない走査電極を走査電極SCyで示した。またスイッチング素子Q71H1〜Q71Hnの内、走査電極SCxに対応するスイッチング素子をスイッチング素子Q71Hxで示し、走査電極SCyに対応するスイッチング素子をスイッチング素子Q71Hyで示した。同様にスイッチング素子Q71L1〜Q71Lnの内、走査電極SCxに対応するスイッチング素子をスイッチング素子Q71Lxで示し、走査電極SCyに対応するスイッチング素子をスイッチング素子Q71Lyで示した。
【0066】
サブフィールドSF1の初期化期間の前半部では、まず走査電極駆動回路43のスイッチング素子Q56オンにして走査電極SCx、SCyに電圧0(V)を印加する。次にスイッチング素子Q56をオフにするとともに、強制初期化動作を行う走査電極SCxに対してはスイッチング素子Q71Lxをオフ、スイッチング素子Q71Hxをオンにして電圧Vpを印加する。一方、強制初期化動作を行わない走査電極SCyに対しては、電圧0(V)を印加したままである。
【0067】
次に、ミラー積分回路61の入力端子IN61に一定の電圧を印加して、節点Aの電圧を電圧Vtまで緩やかに上昇させる。すると、強制初期化動作を行う走査電極SCxには、電圧Vpから電圧(Vt+Vp)まで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧が印加される。一方、強制初期化動作を行わない走査電極SCyには電圧0(V)から電圧Vtまで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧が印加される。
【0068】
続くサブフィールドSF1の初期化期間の後半部では、維持電極駆動回路44のスイッチング素子Q84をオフ、スイッチング素子Q86、Q87をオンにして、維持電極SU1〜SUnに電圧Veを印加する。そして走査電極駆動回路43のスイッチング素子Q71Hxをオフ、スイッチング素子Q71Lxをオンに戻すとともに、スイッチング素子Q55、Q59をオンにして、まず走査電極SCx、SCyに電圧Vsを印加する。その後、スイッチング素子Q69をオフにするとともにミラー積分回路63の入力端子IN63に一定の電圧を印加してミラー積分回路63を動作させて、走査電極SCx、SCyに電圧Vi4まで緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。
【0069】
続くサブフィールドSF1の書込み期間では、走査電極駆動回路43のミラー積分回路63のトランジスタQ63をオフ、スイッチング素子Q72をオンにして節点Aの電圧を電圧Vaにする。そしてスイッチング素子Q71Lx、Q71Lyをオフ、スイッチング素子Q71Hx、Q71Hyをオンとして、走査電極SCx、SCyのそれぞれに電圧(Va+Vp)を印加する。
【0070】
次に、スイッチング素子Q71H1をオフ、スイッチング素子Q71L1をオンにし、画像データに応じてデータ電極駆動回路42のスイッチング素子Q91Ljおよびスイッチング素子Q91Hjを制御する。一定の時間の後、スイッチング素子Q71L1をオフ、スイッチング素子Q71H1をオンに戻す。このようにして走査電極SC1に走査パルスを、データ電極に書込みパルスをそれぞれ印加する。以下同様に、走査電極SCnにいたるまで、順次走査パルスを印加するとともに書込みパルスを印加する。
【0071】
その後、スイッチング素子Q72、スイッチング素子Q71Hx、Q71Hyをオフ、スイッチング素子Q56、スイッチング素子Q69、スイッチング素子Q71Lx、Q71Lyをオンにして走査電極SCx、SCyに電圧0(V)を印加する。
【0072】
続くサブフィールドSF1の維持期間では、走査電極駆動回路43の維持パルス発生回路50、および維持電極駆動回路44の維持パルス発生回路80を用いて、走査電極SCx、SCy、および維持電極SU1〜SUnに、輝度重みに応じた維持パルスをそれぞれ印加する。そしてその後、走査電極駆動回路43のスイッチング素子Q56をオフにするとともに、ミラー積分回路62の入力端子IN62に一定の電圧を印加してミラー積分回路62を動作させ、走査電極SCx、SCyに、電圧Vrまで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。
【0073】
続くサブフィールドSF2の初期化期間では、データ電極駆動回路42のスイッチング素子Q91L1〜Q91Lmをオフ、スイッチング素子Q91H1〜Q91Hmをオンにしてデータ電極D1〜Dmに正の電圧Vdを印加する。また維持電極駆動回路44のスイッチング素子Q84をオフ、スイッチング素子Q83をオンにして維持電極SU1〜SUnに電圧Vsを印加する。そして走査電極駆動回路43のスイッチング素子Q71Lx、Q71Lyをオンにするとともに、ミラー積分回路63の入力端子IN63に一定の電圧を印加してミラー積分回路63を動作させる。そして走査電極SCx、SCyに印加する下り傾斜波形の電圧が電圧Vi6に達した時点で、入力端子IN63に印加していた電圧を停止する。こうして電圧Vi6まで緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を走査電極SCx、SCyに印加する。
【0074】
続くサブフィールドSF2の書込み期間および維持期間の動作はサブフィールドSF1の書込み期間および維持期間と同様である。
【0075】
このようにして、本実施の形態においては、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43および維持電極駆動回路44を用いて図3に示した駆動電圧波形をデータ電極D1〜Dm、走査電極SC1〜SCnおよび維持電極SU1〜SUnに印加する。
【0076】
そして、第1種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧0(V)を印加し、第2種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧よりも高い第2の電圧Vgを印加することにより、強制初期化動作の回数を削減して黒輝度を抑えるとともに安定した書込み動作を行うことができる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、各走査電極、各フィールドのそれぞれに対して強制初期化動作を行うか否かを、上述した(規則1)、(規則2)にもとづき設定した。また、N≧5の場合には、(規則1)、(規則2)に加えて(規則3)にもとづき設定した。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、条件を緩和した駆動についても適用することができる。例えば(規則2)の替わりに、
(規則2’)1つのフィールドで強制初期化動作を行う走査電極は、それぞれの走査電極群の中で1つまたは0である。
を適用してもよい。
【0078】
また本発明は図3に示した駆動電圧波形に限定されるものではなく、強制初期化動作の回数を抑えた他の駆動電圧波形についても適用することができる。以下に他の駆動電圧波形の一例について説明する。
【0079】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2におけるプラズマディスプレイ装置の各電極に印加する駆動電圧波形図である。図10には走査電極SC1、走査電極SC2、維持電極SU1〜SUnおよびデータ電極D1〜Dmに印加する駆動電圧波形を、サブフィールドSF1〜SF3について示している。なお図10においても、走査電極SC1を有する放電セルで強制初期化動作を行い、走査電極SC2を有する放電セルでは強制初期化動作を行わないものとして説明する。
【0080】
第1種サブフィールドSF1の初期化期間の前半部および後半部は実施の形態1と同様である。すなわち前半部では、データ電極D1〜Dmに電圧0(V)を印加し、維持電極SU1〜SUnにも電圧0(V)を印加する。そして強制初期化動作を行う走査電極SC1には、電圧Vi1から電圧Vi2まで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加して微弱な初期化放電を発生させる。一方、強制初期化動作を行わない走査電極SC2には、電圧0(V)から電圧Vi5に向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。初期化期間の後半部では、データ電極D1〜Dmに電圧0(V)を印加し、維持電極SU1〜SUnには電圧Veを印加する。そして走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。
【0081】
実施の形態2においては、この後さらに異常電荷消去部を設けている。そして異常電荷消去部では、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧0(V)を印加するとともに走査電極SC1〜走査電極SCnには電圧Vrまで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。すると誤放電を発生するおそれのある異常電荷を有する放電セルでは微弱な消去放電が発生する。さらにその後、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧Veを印加し、走査電極SC1〜走査電極SCnには電圧0(V)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると異常電荷を有する放電セルでは再度微弱な放電が発生して書込み動作に適した壁電圧に調整される。なお異常電荷を有しない放電セルでは放電は発生しない。
【0082】
このように異常電荷消去部を設けることで、さらに精度よく壁電圧を調整できるので、さらに安定した書込み放電を発生させることができる。
【0083】
続くサブフィールドSF1の書込み期間では、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0084】
続くサブフィールドSF1の維持期間では、実施の形態1と同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を継続して発生させる。
【0085】
そして実施の形態2においては、その後に、維持電極SU1〜維持電極SUnに電圧0(V)を印加したまま、走査電極SC1〜走査電極SCnに電圧0(V)から電圧Vi4に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると維持放電を発生した放電セルで微弱な放電が発生する。
【0086】
そしてその後に、電圧Vrに向かって緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を走査電極SC1〜SCnに印加する。すると維持放電を行った放電セルでは消去放電が発生して、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。
【0087】
第2種サブフィールドSF2の初期化期間では、実施の形態1と同様である。すなわち、データ電極D1〜Dmに正の電圧Vgを印加する。また維持電極SU1〜SUnには電圧Veよりも高い電圧Vhを印加する。そして走査電極SC1〜SCnには電圧Vi6に向かって緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。ここでも、電圧Vi6は電圧Vi4と電圧Vgとの和と同程度の電圧に設定されている。すると、直前のサブフィールドにおいて維持放電を発生した放電セルで微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧が弱められる。またデータ電極Dk上の壁電圧の過剰な部分が放電され、書込み動作に適した壁電圧に調整される。このようにして選択初期化動作が完了する。
【0088】
続くサブフィールドSF2の書込み期間の駆動電圧波形はサブフィールドSF1の書込み期間と同様である。続くサブフィールドSF2の維持期間の駆動電圧波形も維持パルス数を除きサブフィールドSF1の維持期間と同じである。また第2種サブフィールドSF3〜SF10における駆動電圧波形も、維持パルス数を除きサブフィールドSF2と同様である。
【0089】
このように実施の形態2においても、第1種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧0(V)を印加し、第2種サブフィールドの初期化期間において走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともにデータ電極に第1の電圧よりも高い第2の電圧Vgを印加することにより、強制初期化動作の回数を削減して黒輝度を抑えるとともに安定した書込み動作を行うことができる。
【0090】
なお、実施の形態1、2において示した具体的な数値等は単に一例を示したに過ぎず、本発明はこれらの数値に何ら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等にあわせて最適に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、強制初期化動作の回数を削減して黒輝度を抑えるとともに安定した書込み動作を行って、コントラストが高くかつ画像表示品質の高い画像表示が可能であり、パネルの駆動方法およびそれを用いたプラズマディスプレイ装置として有用である。
【符号の説明】
【0092】
10 パネル
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
32 データ電極
35 蛍光体層
40 プラズマディスプレイ装置
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
50,80 維持パルス発生回路
51,81 電力回収回路
60 傾斜波形電圧発生回路
61,62,63 ミラー積分回路
70 走査パルス発生回路
85 一定電圧発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成し、走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルを駆動するプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
前記フィールドは、前記初期化期間において、放電の履歴にかかわらず放電が発生する所定の電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に再び放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を印加する走査電極と、前記所定の電圧よりも低い電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に下り傾斜波形電圧を印加する走査電極とが存在する第1種サブフィールドと、前記初期化期間において、直前のサブフィールドで書込み放電を発生した放電セルのみで放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を前記走査電極に印加する第2種サブフィールドとを含み、
前記第1種サブフィールドの初期化期間において前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともに前記データ電極に第1の電圧を印加し、前記第2種サブフィールドの初期化期間において前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともに前記データ電極に前記第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項2】
前記第2種サブフィールドの初期化期間において前記走査電極に印加する下り傾斜波形電圧の到達電圧は、前記第1種サブフィールドの初期化期間において前記走査電極に印加する下り傾斜波形電圧の到達電圧よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項3】
走査電極と維持電極とデータ電極とを有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルと、初期化期間と書込み期間と維持期間とを有するサブフィールドを複数用いて1つのフィールドを構成するとともに駆動電圧波形を発生して前記プラズマディスプレイパネルの各電極に印加する駆動回路とを備えたプラズマディスプレイ装置であって、
前記駆動回路は、
前記初期化期間において、放電の履歴にかかわらず放電が発生する所定の電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に再び放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を印加する走査電極と、前記所定の電圧よりも低い電圧まで上昇する上り傾斜波形電圧を印加した後に下り傾斜波形電圧を印加する走査電極とが存在する第1種サブフィールドと、前記初期化期間において、直前のサブフィールドで書込み放電を発生した放電セルのみで放電が発生する電圧まで下降する下り傾斜波形電圧を前記走査電極に印加する第2種サブフィールドとで前記フィールドを構成し、
前記第1種サブフィールドの初期化期間において前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともに前記データ電極に第1の電圧を印加し、前記第2種サブフィールドの初期化期間において前記走査電極に下り傾斜波形電圧を印加するとともに前記データ電極に前記第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加して前記プラズマディスプレイパネルを駆動することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−83532(P2012−83532A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229425(P2010−229425)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】