説明

プラズマディスプレイパネルの駆動方法

【課題】キセノン分圧を増加させたパネルであっても誤放電現象を発生させず、良好な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルの駆動方法を提供する。
【解決手段】維持期間には放電セルを所定の輝度重みで発光させるための維持放電を発生させる維持パルスを走査電極と維持電極とに印加し、走査電極に印加する維持パルスのうち、最後の維持パルスPwのパルス幅はそれ以外の維持パルスPmのパルス幅よりも広く、最後の維持パルスPwのパルス電圧Vn(V)はそれ以外の維持パルスPmのパルス電圧Vm(V)よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。前面板は、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極が前面ガラス基板上に互いに平行に複数対形成され、それら表示電極を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面板は、背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁がそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極とデータ電極とが立体交差するように前面板と背面板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。ここで表示電極とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネルにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線でRGB各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としては、サブフィールド法、すなわち、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割した上で、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般的である。各サブフィールドはそれぞれ初期化期間、書込み期間および維持期間を有し、初期化期間には放電セルに初期化放電を発生させ、書込み期間には発光させるべき放電セルに対し選択的に書込み放電を発生させ、維持期間には書込み放電を発生した放電セルに対し所定の輝度重みで発光させるための維持放電を発生させる。
【0004】
サブフィールド法の中でも、階調表示に関係しない発光を極力減らして黒輝度の上昇を抑え、コントラスト比を向上した新規な駆動方法が特許文献1に開示されている。この駆動方法によれば、初期化期間には、画像表示を行うすべての放電セルに対して初期化放電を行わせる全セル初期化動作、または直前のサブフィールドにおいて維持放電を行った放電セルに対して選択的に初期化放電を行わせる選択初期化動作のいずれかの動作を行う。そして、1フィールドを構成する複数のサブフィールドのうち、全セル初期化動作を行う初期化期間を有するサブフィールドの数を減らすことにより、画像表示に関係のない発光を抑えることができ、コントラストの高い画像表示が可能となる。
【0005】
また、特許文献2には、維持期間に単一の太幅パルスを有するサブフィールドを備え、暗い画面における階調性を改善した新規な駆動方法が開示されている。この駆動方法によれば、単一の太幅パルスにより維持放電と同時に消去動作を行うことができ、そのときの発光は維持パルスを用いる場合の発光よりも暗くなるので、通常の維持パルスを用いた最小の階調よりもさらに暗い階調表現が可能となる。
【特許文献1】特開2000−242224号公報
【特許文献2】特開2002−014652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、パネルに封入されている放電ガスのキセノン分圧を増加させてパネルの発光効率を向上させる検討がなされている。しかしながら、キセノン分圧を増加させると放電が不安定になり、放電すべき放電セルが放電しない、あるいは放電すべきではない放電セルが放電する等の誤放電現象が発生し、画像表示品質が低下するという課題があった。また、誤放電現象の発生に至らないまでもパネルの駆動マージンが低下するという課題があった。
【0007】
本発明は、これらの課題に鑑みなされたものであり、キセノン分圧を増加させたパネルであっても誤放電現象を発生させず、良好な画像表示が可能なパネルの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパネルの駆動方法は、走査電極および維持電極とデータ電極との交差部に放電セルを形成してなるプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、1フィールド期間は初期化期間、書込み期間および維持期間を有する複数のサブフィールドから構成され、維持期間には放電セルを所定の輝度重みで発光させるための維持放電を発生させる維持パルスを走査電極と維持電極とに印加し、走査電極に印加する維持パルスのうち、最後の維持パルスのパルス幅はそれ以外の維持パルスのパルス幅よりも広く、最後の維持パルスのパルス電圧はそれ以外の維持パルスのパルス電圧よりも低いことを特徴とする。この方法により、キセノン分圧を増加させたパネルであっても誤放電現象を発生させず、良好な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルの駆動方法を提供することができる。
【0009】
また、本発明の駆動方法を適用するパネルの放電セルは、キセノンを10%以上含む放電ガスを有する。これにより、キセノン分圧を増加させたパネルであっても誤放電現象を発生させず、良好な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルの駆動方法を提供することができる。
【0010】
また、本発明のパネルの駆動方法は、走査電極に印加する最後の維持パルスの立上がり期間と維持電極に印加する維持パルスの立下がり期間との少なくとも一部が時間的に重なることが望ましい。この方法により、誤放電現象をさらに抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キセノン分圧を増加させたパネルであっても誤放電現象を発生させず、良好な画像表示が可能なプラズマディスプレイパネルの駆動方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態におけるパネルの駆動方法について、図面を用いて説明する。
【0013】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態に用いるパネルの要部を示す斜視図である。パネル1は、ガラス製の前面基板2と背面基板3とを対向配置して、その間に放電空間を形成するように構成されている。前面基板2上には表示電極を構成する走査電極4と維持電極5とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極4および維持電極5を覆うように誘電体層6が形成され、誘電体層6上には保護層7が形成されている。保護層7としては安定した放電を発生させるために二次電子放出係数が大きくかつ耐スパッタ性の高い材料が望ましく、本発明の実施の形態においてはMgO薄膜が用いられている。背面基板3上には絶縁体層8で覆われた複数のデータ電極9が付設され、データ電極9の間の絶縁体層8上にデータ電極9と平行して隔壁10が設けられている。また、絶縁体層8の表面および隔壁10の側面に蛍光体層11が設けられている。そして、走査電極4および維持電極5とデータ電極9とが交差する方向に前面基板2と背面基板3とを対向配置しており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、たとえばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。本発明の実施の形態においてはパネルの発光効率を向上させるために、パネルに封入されている放電ガスのキセノン分圧を10%に増加させている。
【0014】
図2は本発明の実施の形態に用いるパネルの電極配列図である。行方向にn本の走査電極SCN1〜SCNn(図1の走査電極4)およびn本の維持電極SUS1〜SUSn(図1の維持電極5)が交互に配列され、列方向にm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極9)が配列されている。そして、1対の走査電極SCNiおよび維持電極SUSi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0015】
図3は本発明の実施の形態におけるパネルの駆動方法を使用するプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。このプラズマディスプレイ装置は、パネル1、データ電極駆動回路12、走査電極駆動回路13、維持電極駆動回路14、タイミング発生回路15、AD(アナログ・デジタル)変換器18、走査数変換部19、サブフィールド変換部20および電源回路(図示せず)を備えている。
【0016】
図3において、画像信号sigはAD変換器18に入力される。また、水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vはタイミング発生回路15、AD変換器18、走査数変換部19、サブフィールド変換部20に入力される。AD変換器18は、画像信号sigをデジタル信号の画像データに変換し、その画像データを走査数変換部19に出力する。走査数変換部19は、画像データをパネル1の画素数に応じた画像データに変換し、サブフィールド変換部20に出力する。サブフィールド変換部20は、各画素の画像データを複数のサブフィールドに対応する複数のビットに分割し、サブフィールド毎の画像データをデータ電極駆動回路12に出力する。データ電極駆動回路12は、サブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。
【0017】
タイミング発生回路15は、水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにしてタイミング信号を発生し、各々走査電極駆動回路13および維持電極駆動回路14に出力する。走査電極駆動回路13は、タイミング信号に基づいて走査電極SCN1〜SCNnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路14は、タイミング信号に基づいて維持電極SUS1〜SUSnに駆動電圧波形を供給する。
【0018】
つぎに、パネルを駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。本発明の実施の形態においては、1フィールドを10のサブフィールド(第1SF、第2SF、・・・、第10SF)に分割し、各サブフィールドは後ろのサブフィールドほど輝度重みが大きくなるように構成しているものとして説明する。
【0019】
図4は本発明の実施の形態におけるパネルの駆動方法を使用するにあたって各電極に印加する駆動電圧波形図であり、第1SFと第2SFとを詳細に示している。ここで第1SFは、全セル初期化動作を行う初期化期間を有するサブフィールド(以下、「全セル初期化サブフィールド」と略記する)であり、つづく第2SFは選択初期化動作を行う初期化期間を有するサブフィールド(以下、「選択初期化サブフィールド」と略記する)である。
【0020】
第1SFの初期化期間では、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SUS1〜SUSnを0(V)に保持し、走査電極SCN1〜SCNnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vp(V)から、放電開始電圧を超える電圧Vr(V)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて1回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SCN1〜SCNn上に負の壁電圧が蓄えられるとともに、維持電極SUS1〜SUSn上およびデータ電極D1〜Dm上に正の壁電圧が蓄えられる。ここで、電極上の壁電圧とは、電極を覆う誘電体層あるいは蛍光体層上に蓄積した壁電荷により生じる電圧をあらわす。
【0021】
その後、維持電極SUS1〜SUSnを正の電圧Vh(V)に保ち、走査電極SCN1〜SCNnに電圧Vg(V)から電圧Va(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて2回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SCN1〜SCNn上の壁電圧および維持電極SUS1〜SUSn上の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
【0022】
このように、第1SFの初期化期間では、すべての放電セルにおいて初期化放電させる全セル初期化動作が行われる。
【0023】
つづく書込み期間では、走査電極SCN1〜SCNnを一旦Vs(V)に保持する。つぎに、データ電極D1〜Dmのうち、1行目に表示すべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vw(V)を印加するとともに、1行目の走査電極SCN1に負の走査パルス電圧Vb(V)を印加する。すると走査電極SCN1とデータ電極Dkとの間には書込みパルス電圧と走査パルス電圧とが加算された電圧が印加され放電開始電圧を超えるので、走査電極SCN1とデータ電極Dkとの交差部で放電が発生し、対応する放電セルの走査電極SCN1と維持電極SUS1との間の放電に進展する。そして書込み放電を発生した放電セルの走査電極SCN1上には正の壁電圧、維持電極SUS1上には負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。こうして1行目の書込みパルス電圧Vw(V)を印加した放電セルで書込み放電が発生する。一方、書込みパルス電圧Vw(V)を印加しなかった放電セルには書込み放電は発生せず壁電荷が蓄積されない。このとき、2行目以降の放電セルのデータ電極Dkにも正の書込みパルス電圧Vw(V)が印加されるが、2行目以降の走査電極SCNiには負の走査パルス電圧Vb(V)が印加されないので、対応する走査電極SCNiとデータ電極Dkとの間に印加される電圧は書込みパルス電圧Vw(V)のみであり放電開始電圧を超えないので書込み放電が発生することはない。
【0024】
つづいて、2行目に表示すべき放電セルのデータ電極Dkに正の書込みパルス電圧Vw(V)を印加するとともに、2行目の走査電極SCN2に負の走査パルス電圧Vb(V)を印加する。すると走査電極SCN2とデータ電極Dkとの間には書込みパルス電圧と走査パルス電圧とが加算された電圧が印加され放電開始電圧を超え、2行目の書込みパルス電圧Vw(V)を印加した放電セルの書込み放電が発生する。一方、書込みパルス電圧Vw(V)を印加しなかった放電セルには書込み放電は発生せず壁電荷が蓄積されない。この場合にも、3行目以降の放電セルの走査電極SCNiとデータ電極Dkとの間に印加される電圧は書込みパルス電圧Vw(V)のみであり放電開始電圧を超えないので書込み放電が発生することはない。
【0025】
以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
【0026】
つづく維持期間では、維持電極SUS1〜SUSnを0(V)に戻し、同時に走査電極SCN1〜SCNnに正の電圧Vn(V)をもつ幅の広い維持パルスPwを印加する。本発明の実施の形態においては維持パルスPwの幅を5μs、電圧Vn(V)を140(V)と設定した。このとき、書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCNi上と維持電極SUSi上との間の電圧は維持パルスPwの電圧Vn(V)に走査電極SCNi上および維持電極SUSi上の壁電圧の大きさが加算されたものとなり、放電開始電圧をわずかに超え、走査電極SCNiと維持電極SUSiとの間に維持放電が発生する。そしてデータ電極Dk上に正の壁電圧が蓄積される。ここで、走査電極SCN1〜SCNnに印加する維持パルスPwのパルス幅が広く、かつ電圧Vn(V)は後述する維持パルスの電圧Vm(V)より低く、走査電極SCNi上および維持電極SUSi上の壁電圧と加算したとき放電開始電圧をわずかに超える電圧に設定している。そのため、放電後に走査電極SCNiおよび維持電極SUSi上に蓄積される壁電荷は小さく、幅の広い維持パルスPwによる維持放電は消去動作をも兼ねた放電となり、つづくサブフィールドにおいて放電すべきでない放電セルが放電する等といった誤放電現象を防ぐことができる。そして、第1SFの維持期間では幅の広い維持パルスPwを印加することにより1回の発光があり、書込み期間における書込み放電と合計すると2回の発光がある。そして第1SFではこれら2回の発光が最小階調「階調1」を表示する。
【0027】
このとき、維持電極SUS1〜SUSnを電圧Vh(V)から0(V)に戻すと同時に走査電極SCN1〜SCNnに維持パルス電圧Vn(V)を印加したのは、走査電極SCN1〜SCNnに印加する駆動電圧波形の立上がり期間と維持電極SUS1〜SUSnに印加する駆動電圧波形の立下がり期間とを時間的に重ねるためである。そしてこれは後述するように、キセノン分圧の高いパネルを用いた場合であっても、放電すべき放電セルが放電しない等といった誤放電現象を防ぐ上で重要となる。
【0028】
第2SFの初期化期間では、維持電極SUS1〜SUSnをVh(V)に保持し、データ電極D1〜Dmを0(V)に保持し、走査電極SCN1〜SCNnには電圧Va(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると第1SFの維持期間で維持放電を行った放電セルでは、微弱な初期化放電が発生し、走査電極SCN1〜SCNn上および維持電極SUS1〜SUSn上の壁電圧が弱められ、データ電極Dk上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。一方、第1SFで維持放電を行わなかった放電セルについては放電することはなく、第1SFの初期化期間終了時における壁電荷状態がそのまま保たれる。このように、第2SFの初期化動作は前のサブフィールドで維持放電を行った放電セルにおいて初期化放電させる選択初期化動作である。
【0029】
書込み期間については第1SFの書込み期間と同様であるため説明を省略する。
【0030】
つづく維持期間では、まず、維持電極SUS1〜SUSnを0(V)に戻し、走査電極SCN1〜SCNnに正の維持パルスPmの電圧Vm(V)を印加する。本発明の実施の形態においては維持パルスPmの幅を3μs、電圧Vm(V)を180(V)と設定した。このとき、書込み放電を起こした放電セル内では、維持パルス電圧Vm(V)に壁電荷による電圧が加算され放電開始電圧を大きく超え維持放電が発生する。そしてデータ電極Dk上には正の壁電圧が蓄積し、走査電極SCNiおよび維持電極SUSi上の壁電圧の極性が反転する。つづいて、走査電極SCN1〜SCNnを0(V)に戻し、維持電極SUS1〜SUSnに正の維持パルスPmの電圧Vm(V)を印加すると、放電セル内で再び維持放電が起こり、走査電極SCNiおよび維持電極SUSi上の壁電圧の極性が反転する。その後、維持電極SUS1〜SUSnを0(V)に戻すと同時に走査電極SCN1〜SCNnに正の電圧Vn(V)をもつ幅の広い維持パルスPwを印加する。すると、走査電極SCNiと維持電極SUSiとの間に3度目の維持放電が発生する。ここで、走査電極SCN1〜SCNnに印加する維持パルス電圧Vn(V)は維持パルス電圧Vm(V)より低く、走査電極SCNi上および維持電極SUSi上の壁電圧と加算したとき放電開始電圧をわずかに超える電圧に設定している。そのため、放電後に走査電極SCNiおよび維持電極SUSi上に蓄積される壁電荷は小さく、幅の広い維持パルスPwによる維持放電は消去動作をも兼ねた放電となり、つづくサブフィールドにおいて放電すべきでない放電セルが放電する等といった誤放電現象を防ぐことができる。ただしデータ電極Dk上の壁電圧は消去されない。そして、第2SFの維持期間では通常の維持パルスPmによる2回の放電と幅の広い維持パルスPwによる1回の消去放電とが発生し、書込み期間における書込み放電と合計すると第2SFでは4回の発光がある。そしてこれら4回の発光が「階調2」を表示する。
【0031】
このとき、維持電極SUS1〜SUSnを電圧Vm(V)から0(V)に戻すと同時に走査電極SCN1〜SCNnに維持パルス電圧Vn(V)を印加したのは、走査電極SCN1〜SCNnに印加する維持パルスPwの立上がり期間と維持電極SUS1〜SUSnに印加する維持パルスPmの立下がり期間とを時間的に重ねるためである。
【0032】
第3SF以降のサブフィールドの初期化期間、書込み期間については第2SFと同様であるので説明を省略する。
【0033】
第3SF以降のサブフィールドの維持期間では、まず、維持電極SUS1〜SUSnを0(V)に戻し、走査電極SCN1〜SCNnに維持パルスPmの電圧Vm(V)を印加する。このとき、書込み放電を起こした放電セル内では、維持パルス電圧Vm(V)に壁電荷による電圧が加算され放電開始電圧を大きく超え維持放電が発生する。そしてデータ電極Dk上には正の壁電圧が蓄積し、走査電極SCNi上および維持電極SUSi上の壁電圧の極性が反転する。つづいて、走査電極SCN1〜SCNnを0(V)に戻し、維持電極SUS1〜SUSnに維持パルスPmの電圧Vm(V)を印加すると、放電セル内で再び維持放電が起こり、走査電極SCNi上および維持電極SUSi上の壁電圧の極性が反転する。以上の動作を階調を表示するために必要な回数だけ繰り返す。そして維持期間の最後に、維持電極SUS1〜SUSnを0(V)に戻すと同時に走査電極SCN1〜SCNnに正の電圧Vn(V)をもつ幅の広い維持パルスPwを印加し、維持放電を発生させる。ここで、走査電極SCN1〜SCNnに印加する維持パルスPwの電圧Vn(V)は維持パルス電圧Vm(V)より低いので、放電後に走査電極SCNi上および維持電極SUSi上に蓄積される壁電荷は小さく、幅の広い維持パルスPwによる維持放電は消去動作をも兼ねた放電となり、つづくサブフィールドにおいて放電すべきでない放電セルが放電する等といった誤放電現象を防ぐことができる。ただしデータ電極Dk上の壁電圧は消去されない。そして第3SF以降の維持期間では、通常の維持パルスPmによる放電と幅の広い維持パルスPwによる1回の消去放電とが発生し、書込み期間における書込み放電と合計して所定の階調を表示する。
【0034】
ここで、各サブフィールドの維持期間において、最後に走査電極SCN1〜SCNnに印加する維持パルスPwの立上がり期間と維持電極SUS1〜SUSnに印加する維持パルスPmの立下がり期間との少なくとも一部を時間的に重ねた理由について説明する。上述の駆動電圧波形により放電すべき放電セルが放電しない等の誤放電現象が抑制される理由については完全に解明されたわけではないが、たとえば1つの要因として以下のように考えることができる。
【0035】
図5は維持期間において走査電極および維持電極に印加する駆動電圧波形とそれに伴う発光波形を示す図であり、図5(a)は走査電極の駆動電圧波形の立上がり期間と維持電極の駆動電圧波形の立下がり期間を重ねない場合を示し、図5(b)は重ねた場合を示している。
【0036】
図5(a)に示したように走査電極の駆動電圧波形の立上がり期間と維持電極の駆動電圧波形の立下がり期間とを重ねない場合には、維持電極SUSiが0(V)に固定された後に維持電極SUSiとデータ電極Dkとの間で自己消去放電d1が発生し、データ電極Dk上の壁電圧が消去される。そして走査電極SCNiに電圧Vn(V)を印加すると走査電極SCNiと維持電極SUSiとの間で維持放電d2が発生する。一方、図5(b)に示すように立上がり期間と立下がり期間を重ねた場合には、自己消去放電が実質的に発生することなく走査電極SCNiと維持電極SUSiとの間で維持放電d3が発生している。そしてこのときの維持放電d3は第1の維持期間における維持放電d2より大きい。これは維持放電d3はデータ電極Dkをも含む放電であり、データ電極Dk上には正の壁電圧が形成されると考えられる。
【0037】
そして、データ電極Dk上に正の壁電圧がそれぞれ十分に蓄えられることによって、つづくサブフィールドの選択初期化動作を安定させ、安定した書込み動作を行うことができる。すなわち、つづく初期化期間において走査電極SCNiに電圧Va(V)へ向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加すると維持電極SUSiと走査電極SCNiとの間およびデータ電極Dkと走査電極SCNiとの間で安定した微弱な初期化放電が発生する。そして、走査電極SCNi上の壁電圧、維持電極SUSi上の壁電圧が弱められ、データ電極Dk上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整することができる。しかしながら、データ電極Dk上の正の壁電圧が不足した場合には、つづくサブフィールドの初期化期間において初期化放電が発生しない、あるいは発生しても十分な壁電圧調整が行われない等、書込み動作に適した壁電圧が形成されない。そのため書込み放電が不安定になるといった問題が発生すると考えられる。
【0038】
本発明の実施の形態におけるパネルの駆動方法は、上述のように維持期間において幅の広い維持パルスPwを印加する際に、走査電極SCN1〜SCNnに印加する維持パルスの立上がり期間と維持電極SUS1〜SUSnに印加する維持パルスの立下がり期間とを時間的に重ねている。この駆動方法により、つづく初期化動作、特に選択初期化動作を安定させ、書込み動作に適した壁電荷形成を行っている。
【0039】
なお、本発明の実施の形態においては維持パルスPwの幅を5μs、電圧Vn(V)を140(V)と設定し、維持パルスPmの幅を3μs、電圧Vm(V)を180(V)と設定した。しかしこれらは上述の値に限られるものではなく、維持パルスPwの幅>維持パルスPmの幅、電圧Vn(V)<電圧Vm(V)の範囲で誤放電現象の最も発生しにくい、あるいは最も駆動マージンが広くなる値に設定することが望ましい。
【0040】
また、本発明の実施の形態においては第1SFを全セル初期化サブフィールドとしたが、全セル初期化サブフィールドは維持期間の維持動作と関係なく任意のサブフィールドに設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のパネルの駆動方法は、キセノン分圧を増加させたパネルであっても誤放電現象を発生させず、良好な画像表示が可能であり、プラズマディスプレイパネルの駆動方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に用いるパネルの要部を示す斜視図
【図2】同パネルの電極配列図
【図3】本発明の実施の形態におけるパネルの駆動方法を使用するプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図
【図4】同駆動方法を使用するにあたって各電極に印加する駆動電圧波形図
【図5】維持期間において走査電極および維持電極に印加する駆動電圧波形とそれに伴う発光波形を示す図
【符号の説明】
【0043】
1 パネル
2 前面基板
3 背面基板
4 走査電極
5 維持電極
9 データ電極
12 データ電極駆動回路
13 走査電極駆動回路
14 維持電極駆動回路
15 タイミング発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電極および維持電極とデータ電極との交差部に放電セルを形成してなるプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
1フィールド期間は初期化期間、書込み期間および維持期間を有する複数のサブフィールドから構成され、
前記維持期間には、前記放電セルを所定の輝度重みで発光させるための維持放電を発生させる維持パルスを前記走査電極と前記維持電極とに印加し、
前記走査電極に印加する維持パルスのうち、最後の維持パルスのパルス幅はそれ以外の維持パルスのパルス幅よりも広く、前記最後の維持パルスのパルス電圧はそれ以外の維持パルスのパルス電圧よりも低いことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項2】
前記放電セルはキセノンを10%以上含む放電ガスを有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
【請求項3】
前記走査電極に印加する前記最後の維持パルスの立上がり期間と前記維持電極に印加する維持パルスの立下がり期間との少なくとも一部が時間的に重なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−3398(P2006−3398A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176842(P2004−176842)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】