説明

プラズマディスプレイパネル及びこれを用いたプラズマディスプレイ装置

【課題】本発明は、プラズマディスプレイパネルが大画面化した場合であっても、輝度むらが少ないプラズマディスプレイパネル及びこれを用いたプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】前面基板10と背面基板20が対向配置され、前記前面基板の前記背面基板との対向面には走査電極21と維持電極22からなる表示電極対20が平行に延在して形成され、前記背面基板の前記前面基板との対向面には前記表示電極対と直交する方向に延在した書き込み電極60及び縦隔壁70が形成されるとともに、前記書き込み電極と直交する方向に横隔壁80が形成され、前記表示電極対と前記書き込み電極の交点領域に放電セル100が形成されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記横隔壁の体積は、前記表示電極対が延在する方向において、端部から中央部に向かって漸増することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル及びこれを用いたプラズマディスプレイ装置に関し、特に、前面基板と背面基板が対向配置され、背面基板の対向面には表示電極対と直交する方向に延在した書き込み電極及び縦隔壁が形成されるとともに、書き込み電極と直交する方向に横隔壁が形成されたプラズマディスプレイパネル及びこれを用いたプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薄型・大画面ディスプレイとして、対向配置された前面基板と背面基板との間に多数の放電セルを形成し、放電発光によって映像表示を行うプラズマディスプレイパネル(PDP)が知られている。かかるプラズマディスプレイパネルにおいて、前面基板の背面基板との対向面には、誘電体層や保護層で覆われた複数の走査電極と維持電極とが対をなし、互いに平行に延在して付設される。ここで、走査電極と維持電極は、表示電極対を構成する。また、背面基板の前面基板との対向面には、誘電体層で覆われた書き込み電極が、表示電極対と直交する方向に延在して複数付設され、書き込み電極の間の誘電体層上に、書き込み電極と平行して隔壁が設けられる。そして、誘電体層の表面から隔壁の側面にかけて蛍光体が設けられる。また、表示電極対と書き込み電極が交差する隔壁で囲まれた領域は、放電セルを形成する。放電セルには、放電によって紫外線を放射する放電ガスが封入され、放電セル内の表示放電で発生した紫外線により、蛍光体が励起され、可視光線を発光し、映像を表示する。なお、放電セルの表示放電は、表示電極対にパルス電圧を印加することにより発生する。
【0003】
かかる構成を有するプラズマディスプレイパネルを大画面化した場合には、表示電極対が長くなり、電極の抵抗成分が大きくなって電極における電圧降下が大きくなることから、放電が不安定となり輝度むらが生じるという問題があった。かかる問題点を解決すべく、放電セルの内部又は放電セルに隣接して、付加コンデンサを表示電極対の少なくとも一方を利用して形成し、高い周波数成分を有する急峻なパルス状の電流に伴う電圧降下を緩和するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−103149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のプラズマディスプレイパネルにおいて、表示放電が生じると、放電セル内の荷電粒子の移動に伴い、表示電極対に誘導電流が流れる。このとき、表示電極に接続された放電セルに印加される電圧は、表示電極における前記放電セルよりも電源回路に近い位置に存在する放電セル(以下、上流側セルと称す)の静電容量や放電電流の影響を受ける。電圧波形に重畳されたスパイク状の電圧降下を補うには、各放電セル周辺に充分な電荷が蓄積されている必要がある。印加電圧波形に歪みを与える主な原因は、上流側セルの放電電流であるため、波形歪みの影響は、電源回路との間に多数の上流側セルが存在するパネル中央部において大きく、電源回路に近いパネル端部で小さくなる。このような印加電圧波形の歪みの分布は、放電の不安定性、すなわち点灯すべき放電セルが明滅する、あるいは不点灯状態となるなどの不具合がパネル内に分布することを意味する。よって、例えば、全面点灯状態において一様性を損ね、所謂輝度ムラの原因になるなど、映像品質を劣化させるという問題があった。これらの現象は、表示電極が長い、すなわち大画面である場合や、放電電流が大なる時、すなわち放電セルの数が多数(多画素)になったとき等に顕著になり、輝度むら無くプラズマディスプレイを大画面化するのが困難であるという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の構成では、高い周波数成分を有する急激なパルス状の電流に伴う電圧降下を、プラズマディスプレイパネルの全体について一様に緩和することはできるが、プラズマディスプレイパネルの中央部と端部の抵抗成分の差による輝度むらを補償することはできず、中央部と端部でやはり輝度むらが生じてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、プラズマディスプレイパネルが大画面化した場合であっても、輝度むらが少ないプラズマディスプレイパネル及びこれを用いたプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明に係るプラズマディスプレイパネルは、前面基板と背面基板が対向配置され、前記前面基板の前記背面基板との対向面には走査電極と維持電極からなる表示電極対が平行に延在して形成され、前記背面基板の前記前面基板との対向面には前記表示電極対と直交する方向に延在した書き込み電極及び縦隔壁が形成されるとともに、前記書き込み電極と直交する方向に横隔壁が形成され、前記表示電極対と前記書き込み電極の交点領域に放電セルが形成されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記横隔壁の体積は、前記表示電極対が延在する方向において、端部から中央部に向かって漸増することを特徴とする。
【0009】
これにより、プラズマディスプレイパネルが大画面化し、表示電極対が長い場合であっても、表示電極対の延在方向の位置に応じて放電セルの静電容量を調整し、輝度むらの発生を防止することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記横隔壁の体積は、前記表示電極対が延在する方向において中央に配置された前記書き込み電極又は前記縦隔壁に関して、線対称であることを特徴とする。
【0011】
これにより、表示電極対の電源回路からの距離に応じて左右対称に放電セルの静電容量を調整することができ、パネルの左右で輝度むらが生じることを防止することができる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記横隔壁の高さは一定であり、前記横隔壁の体積の分布は、前記横隔壁の幅を変化させて制御したことを特徴とする。
【0013】
これにより、1つのパラメータで放電セルの静電容量を調整することができ、高精度に静電容量の調整を行うことができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記横隔壁の幅は、前記表示電極対が延在する方向における中央部で最大であることを特徴とする。
【0015】
これにより、電源回路からの距離が遠い中央部の放電セルの静電容量を端部の放電セルの静電容量よりも高くし、中央部が端部よりも輝度が小さくなることを防止して、輝度むらを低減させることができる。
【0016】
第5の発明は、第3又は第4の発明に係るプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記横隔壁の幅は、前記表示電極対が延在する方向における中央部と端部との間において、所定の画素数単位で変化していることを特徴とする。
【0017】
これにより、表示電極対の中央部と端部の電源回路からの抵抗変化による放電セルの静電容量の変化を相殺するように横隔壁を設定し、パネル内の輝度むらを低減させることができる。
【0018】
第6の発明に係るプラズマディスプレイ装置は、第1〜5のいずれかの発明に係るプラズマディスプレイパネルと、
前記表示電極対及び前記書き込み電極を駆動する各駆動回路と、
該駆動回路に電力を供給する電源回路と、を有することを特徴とする。
【0019】
これにより、大画面化したプラズマディスプレイ装置の画面の輝度むらを低減させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、大画面のプラズマディスプレイパネルを用いた場合でも、輝度むらなく映像表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構造を示した斜視分解図である。
【図2】本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの各電極に印加される電圧波形と発光タイミングを示した図である。
【図3】本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの一例の平面構造を示した図である。図3(A)は、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの中央部を示した平面構成図である。図3(B)は、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの端部を示した平面構成図である。
【図4】本実施例に係るプラズマディスプレイパネルの諸元を示した表である。
【図5】本実施例に係るプラズマディスプレイパネルの計算機シミュレーションの結果を比較例とともに示した表である。
【図6】本実施形態に係るプラズマディスプレイ装置の一例の全体構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの構造を示した斜視分解図である。図1に係るプラズマディスプレイパネルは、前面基板10と、表示電極対20を構成する走査電極21及び維持電極22と、透明電極23と、金属母線24と、誘電体層30と、保護層40と、背面基板50と、書き込み電極60と、縦隔壁70と、横隔壁80と、蛍光体層90と、放電セル100と、シャドーマスク110とを備える。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、前面基板10と背面基板50とが対向配置された構成を有する。前面基板10と背面基板50は、ガラス基板により構成される。
【0025】
前面基板10の背面基板50との対向面上には、誘電体層30および保護層40で覆われた帯状の走査電極21及び維持電極22の対からなる表示電極対20が多数配置される。走査電極21と維持電極22は、互いに平行に延在して形成され、延在方向と直交する方向には交互に配置される。表示電極対20は透明電極23と金属母線24によって構成され、透明電極23によって放電面積が、金属母線24によって電気伝導が、それぞれ制御される。
【0026】
背面基板50の前面基板10との対向面上には、誘電体層(図示せず)に覆われた帯状の書き込み電極60が、表示電極対20に直交する方向に多数配列される。横方向に隣り合う書き込み電極60の間には、放電セル100の仕切りとなる縦隔壁70が設けられている。縦隔壁は、誘電体材料で構成される。縦隔壁70の側面から背面基板に亘り、蛍光体層90が形成される。蛍光体層90は、赤色蛍光体層90R、緑色蛍光体層90G及び青色蛍光体層90Bの3種類があり、各々の蛍光体層90R、90G、90Bを備えた放電セル100の3個分で1画素を構成する。また、縦方向に隣接する放電セル100間の干渉を低減する目的で、放電セル100間にも仕切りとなる横隔壁80が設けられる。横隔壁80も、誘電体材料で構成される。放電セル100には、放電によって紫外線を放射するキセノン(Xe)などのガスが封入されている。なお、前面基板10側には、蛍光体90の色ずれを防ぐシャドーマスク110が設けられてもよい。
【0027】
本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルにおいては、横隔壁80が、表示電極対20の延在方向において、位置に応じて体積が異なる構成を有するが、その点については後述する。なお、図1においては、1画素分の3個の放電セル100が示されており、1画素内では横隔壁80の体積は同一であるので、横隔壁80のサイズは同一で示されている。つまり、図1においては、3つの横隔壁80は、高さも幅も同一で示されている。
【0028】
図2は、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの各電極に印加される電圧波形と発光タイミングを示した図である。図2において、書き込み電極60、走査電極21及び維持電極22に印加される電圧波形と、電圧印加により放電セル100に発生する発光タイミングが、サブフィールドの書き込み期間と表示放電期間について示されている。
【0029】
プラズマディスプレイパネルの発光は、図2の表示放電期間において表示電極対20へ印加されたパルス電圧(維持パルス)による放電(表示放電)に伴い、封入されたXeガスから放射される紫外線によって蛍光体層90が励起された後、蛍光体から可視光が放射されることによって生じる。かかる表示放電による放電発光を用いてプラズマディスプレイパネルに映像表示を行うには、表示放電期間の直前の書き込み期間において、書き込み電極60に書き込みパルス、走査電極21に走査パルスを印加し、表示電極対20と書き込み電極60の交差部の放電セル100に書き込み放電を発生させる。この書き込み放電の作用により、放電セル100内に壁電荷が形成され、表示放電を発生させるために必要な表示電極対20の電位差が低減されることを利用して、発光すべき放電セル100の選択動作が可能になる。
【0030】
図3は、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの一例の平面構造を示した図である。図3(A)は、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの中央部を示した平面構成図であり、図3(B)は、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルの端部を示した平面構成図である。
【0031】
図3において、本実施形態に係るプラズマィスプレイパネルは、走査電極21と維持電極22からなる表示電極対20と、書き込み電極20と、縦隔壁70と、横隔壁80と、蛍光体90と、放電セル100と、シャドーマスク110とを備えている。図3において、図1に示した構成要素と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
図3(A)、(B)に示すように、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルは、パネル端部とパネル中央部で、横隔壁80の体積が異なる構成を有する。つまり、具体的には、図3(A)に示すパネル中央部の横隔壁81の幅Vcは、図3(B)に示すパネル端部の横隔壁82の幅Veよりも広く構成されている。横隔壁81、82の高さは、図1において説明したように一定であるので、横隔壁81と横隔壁82の幅を互いに異ならせることにより、横隔壁81と横隔壁82の体積を互いに異ならせることができる。ここで、横隔壁81、82は、図1において説明したように、誘電体材料で構成されているので、横隔壁81、82の体積を増加させることにより、放電セル101、102の静電容量の係数である誘電率を大きくし、静電容量を大きくすることができる。よって、図3(A)に示すパネル中央部の放電セル101は、図3(B)に示すパネル端部の放電セル102よりも大きな体積の横隔壁81を備えており、より大きな静電容量を有する。よって、パネル中央部の放電セル101は、パネル端部の放電セル102よりも多く電荷を蓄えることができる。これにより、パネル中央部の放電セル101は、電源回路からの距離がパネル端部より離れており、表示電極対20に印加されるパルス電圧がパネル端部より小さくなっても、多量に蓄えた電荷により、パネル端部と同程度の輝度を有する表示放電を発生させることができる。
【0033】
このように、誘電体材料で構成された横隔壁80の体積について、パネル中央部の横隔壁81がパネル端部の横隔壁82よりも大きくなるように構成することにより、パネル中央部の放電セル101の静電容量を、パネル端部の放電セル102の静電容量よりも大きくし、パネル中央部における印加電圧の電圧降下分による輝度低下を是正することができる。これにより、パネル中央部とパネル端部で輝度むらが生じず、画面全体で一定の輝度特性を有するプラズマディスプレイパネルとすることができる。
【0034】
なお、図3においては、横隔壁80の体積が最大となるパネル中央部と最小となるパネル端部の2箇所を抜き出して示しているが、全体としては、パネル端部からパネル中央部に向かって、横隔壁80の体積が漸増する構成となっている。つまり、パネル中央部の横隔壁80の体積のみがパネル端部の横隔壁80の体積より大きくなっているのではなく、パネル端部からパネル中央部に向かって、徐々に体積が増加する構成となっている。その増加の仕方は、必ずしも線形的に増加している必要は無く、階段的な増加の仕方であってもよい。
【0035】
また、横隔壁80の体積の変化は、横隔壁80の形状について、全体的に体積を変化させて行うようにしてもよいし、図1及び図3において説明したように、高さを一定とし、横隔壁80の幅を表示電極対20の延在方向における位置に基づいて変化させて行うようにしてもよい。つまり、高さを一定とする場合は、パネル端部からパネル中央部に向かって横隔壁80の幅が漸増する、又はパネル中央部からパネル端部に向かって横隔壁80の幅が漸減する構成となる。
【0036】
また、横隔壁80の体積は、パネル中心の書き込み電極60又は縦隔壁70に関して線対称となるように構成することが好ましい。一般に、走査電極21の電源回路は、プラズマディスプレイパネルの一方の端部から走査電極21に電力を供給し、維持電極22の電源回路は、プラズマディスプレイパネルの他方の端部から維持電極22に電力を供給するため、表示電極対20の両端から交互に電力が供給され、左右対称の駆動方法となるからである。これにより、パネルの左右で輝度むらのない映像表示を行うことができる。
【0037】
また、上述のように、表示電極対20には、左右両端から電力が供給されるため、パネル中央部は最も輝度が小さくなる傾向がある。よって、横隔壁80は、パネル中央部の横隔壁81が最大の体積となるように構成することが好ましい。
【0038】
更に、横隔壁80は、高さを一定とした場合、パネル中央部の横隔壁81の幅が大きく、パネル端部に接近するにつれて横隔壁82の幅が小さくなるが、その横隔壁80の幅の変化は、中央部と端部との間で、所定の画素数単位で線形となるように形成することが好ましい。図1において説明したように、同一画素内の放電セル100では、各色で輝度むらを生じさせないため、横隔壁80の幅を同一とすることが好ましい。一方、パネル中央部とパネル端部では、徐々に表示電極対20の抵抗値が変化すると考えられるために、これを滑らかに相殺すべく、パネル中央部とパネル端部では、徐々に放電セル100の静電容量を変化させることが好ましい。よって、かかる2つの点を考慮すると、パネル中央部とパネル端部との間で、画素(3つの放電セル100)毎に線形に横隔壁80の幅を変化させることが最も好ましい。
【0039】
しかしながら、実際の設計では、画素毎に横隔壁80の幅を変化させることは加工が困難であるので、例えば、5画素毎、10画素毎、20画素毎というように、所定の画素数を1単位として、中央部と端部との間で線形に横隔壁80の幅を変化させれば、実用的にも構成容易なプラズマディスプレイとすることができる。このように、パネルの端部から中央部まで、所定の画素数単位で線形的に横隔壁80の幅が大きくなるような構成としてもよい。
【0040】
また、理論的には、上述のように、画素毎に又は所定の画素数毎に、横隔壁80の幅が線形的に変化することが好ましいが、実際には、パネル特性等の他の要素が影響し得る。よって、横隔壁80の幅は、所定の画素数毎にパネル端部からパネル中央部に漸増していれば、必ずしも線形的に変化していなくてもよい。
【実施例】
【0041】
次に、本実施形態に係るプラズマディスプレイを具体的に一定の条件下で構成し、パネル中央部の横隔壁81の幅とパネル端部の横隔壁82の幅をパラメータとして変化させた計算機シミユレーションによる実施例について説明する。
【0042】
図4は、本実施例に係るプラズマディスプレイパネルの諸元を示した表である。なお、本実施例に係るプラズマディスプレイにおいて、図1〜3において説明した本実施形態に係るプラズマディスプレイの対応構成要素には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0043】
本実施例に係るプラズマディスプレイパネルは、横方向のセル数が5760で、画素サイズが横0.3mm、縦0.3mmで構成された。よって、横については、放電セル100の1セル当たりでは、0.1mmとなる。金属母線24は、幅0.04mm、厚さ0.005mm、ギャップが0.06mmのものを用いた。透明電極23は、幅0.08mm、ギャップ0.06mmとした。誘電体層30は、前面基板11側を厚さ0.02mm、背面基板を厚さ0.03mmに構成した。縦隔壁70は、幅0.03mm、高さ0.100mmとした。横隔壁80は、幅を0.04〜0.08mmの間でパネル端部からの距離に応じて線形に変化させた。つまり、パネルの端部の横隔壁80の幅が最も小さく、パネル中央部の横隔壁80の幅が最も大きくなるように変化させた。また、横隔壁80の高さは、0.100mmに設定して一定とした。封入ガスは、Neが90%、Xeが10%の組成の混合ガスを用い、全圧力を86.7kPaに設定した。駆動条件として、維持放電パルスは、周期0.005ms、パルス幅0.002ms、電圧220Vのものを表示電極対20に印加した。
【0044】
このように、本実施例に係るプラズマディスプレイパネルの各値を、図4に示した条件に設定して計算機シミュレーションを行ったが、具体的な計算機シミュレーションは、非特許文献の「平野 他,"Analysis of the Display Characteristics of a Large-Screen Ultra-High-Definition PDP by a New Plasma Array Simulation", Proc. IDW'09, pp.917-918 (2009)」に記載されている放電シミュレーションと回路シミュレーションを組み合わせた方法で解析した。かかる計算機シミュレーションによれば、表示電極対20が長い場合に発生する抵抗成分やインダクタンス成分も等価回路として顕在化させてシミュレーションを行うことができるので、大画面化したプラズマディスプレイパネルについても、正確にシミュレーションを行うことができる。
【0045】
図5は、本実施例に係るプラズマディスプレイパネルの計算機シミュレーションの結果を、比較例とともに示した表である。図5において、veはパネル端部における横隔壁82の幅、vcは中央部における横隔壁81の幅を表している。輝度ばらつきは表示電極を共有する放電セルの平均輝度を基準に、各放電セルの輝度の分散を計算した結果である。最大ばらつきは前記平均輝度から最も外れた輝度値の相対値である。
【0046】
図5において、比較例1〜3は、従来のプラズマディスプレイによる比較例を示している。比較例1〜3では、横隔壁80の幅は一定とし、各々パネル端部とパネル中央部の横隔壁81、82の幅について、ve=vc=0.04mmの場合(比較例1)、ve=vc=0.06mmの場合(比較例2)、ve=vc=0.08mm(比較例3)の場合を示している。比較例1〜3のいずれも、輝度ばらつきは1.5%前後、最大ばらつきは12%台の値を示している。
【0047】
図5において、比較例4、5及び実施例1、2は、横隔壁80の幅を、パネル端部からパネル中央部に掛けて変化させた例の結果を示している。そのうち、比較例4、5は、パネル端部の横隔壁82の幅veが、パネル中央部の横隔壁81の幅vcよりも大きい、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルと逆の変化をさせた例である。パネル端部の横隔壁82の幅ve=0.08、パネル中央部の横隔壁81の幅vc=0.04とした比較例4と、パネル端部の横隔壁82の幅ve=0.07、パネル中央部の横隔壁81の幅vc=0.05とした比較例5については、輝度ばらつき及び最大ばらつきの双方とも、横隔壁80の幅を一定とした比較例よりも大きくなっている。このことから、パネル端部の放電セル102の静電容量を、パネル中央部の放電セル101の静電容量よりも大きくすると、輝度ばらつき及び最大ばらつきの双方とも、静電容量が総ての放電セル100で一定の従来のプラズマディスプレイよりも悪化してしまうことが分かる。しかも、ve=0.08、vc=0.04の組み合わせの比較例4の方が、ve=0.07、vc=0.05の組み合わせの比較例5よりも輝度ばらつき及び最大ばらつきが大きいことから、
パネル中央部の横隔壁81の幅vc<パネル端部の横隔壁82の幅ve
の差が大きい程、輝度ばらつき及び最大ばらつきが大きくなってしまうことが分かる。
【0048】
図5において、実施例1、2は、パネル中央部の横隔壁81の幅vcが、パネル端部の横隔壁82の幅veよりも大きく構成された、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルを適用したプラズマディスプレイパネルの計算機シミュレーション結果である。
【0049】
実施例1に係るプラズマディスプレイパネルは、パネル端部の横隔壁82の幅がve=0.05、パネル中央部の横隔壁81の幅がvc=0.07であり、ve<vcとなるように構成されている。実施例1においては、輝度ばらつきが0.7807と比較例1〜3の約1/2、最大ばらつきが5.4473と比較例1〜3の1/2以下の値となっており、輝度ばらつき及び最大ばらつきの双方とも、従来のプラズマディスプレイパネルよりも大きく改善された結果が得られた。
【0050】
また、実施例2に係るプラズマディスプレイパネルは、パネル端部の横隔壁82の幅がve=0.04、パネル中央部の横隔壁81の幅がvc=0.08であり、ve<vcの差が、実施例1よりも大きく構成されている。つまり、パネル中央部の放電セル101とパネル端部の放電セル102との静電容量差が、実施例1の場合よりも大きく構成されている。実施例2に係るプラズマディスプレイパネルにおいては、輝度ばらつきは0.4677と比較例1〜3の1/3以下、最大ばらつきは1.1635と比較例1〜3の1/10以下と、実施例1よりも更に大きく改善された結果が得られた。
【0051】
このことから、パネル端部とパネル中央部の表示電極対20の抵抗成分の差が大きい場合には、パネル中央部の横隔壁81の幅をパネル端部の横隔壁82の幅よりも大幅に大きくなるように構成すれば、より輝度むらを低減できることが分かる。
【0052】
このように、パネル中央部とパネル端部における横隔壁81、82の体積差は、表示電極対20の長さ、その他の条件を考慮して、適切な差となるように調整することができる。
【0053】
次に、本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルを用いて、プラズマディスプレイ装置を構成した実施形態について説明する。
【0054】
図6は、本発明の実施形態に係るプラズマディスプレイ装置の一例の全体構成を示した図である。なお、今まで説明した構成要素と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
本実施形態に係るプラズマディスプレイ装置は、プラズマディスプレイパネル120と、走査駆動回路130と、走査電源回路135と、維持駆動回路140と、維持電源回路145と、書き込み駆動回路150と、書き込み電源回路155と、駆動制御回路160とを備える。
【0056】
プラズマディスプレイパネル120は、今まで説明した本実施形態に係るプラズマディスプレイパネルが用いられており、パネル中央部の横隔壁81の幅vcが、パネル端部の横隔壁82の幅veよりも広く構成されている。なお、プラズマディスプレイパネル120には、横方向に互いに平行に延在して配置された表示電極対20を構成する複数の走査電極21及び維持電極22と、これらに直交する方向に延在する複数の書き込み電極60が設けられ、走査電極21、維持電極22及び書き込み電極60が交差する領域に放電セル100が形成される点は、今までの説明と同様である。
【0057】
走査駆動回路130は、走査電極21に電圧を印加して走査電極21を駆動する回路であり、走査電極21に接続される。走査電源回路135は、走査駆動回路130に電力を供給するための回路であり、走査駆動回路130に接続されている。
【0058】
維持駆動回路140は、維持電極22に電圧を印加して維持電極22を駆動する回路であり、維持電極22に接続されている。維持電源回路145は、維持駆動回路140に電力を供給するための回路であり、維持駆動回路140に接続されている。
【0059】
書き込み駆動回路150は、書き込み電極60に電圧を印加して書き込み電極60を駆動する回路であり、書き込み電極60に接続されている。書き込み電源回路155は、書き込み駆動回路150に電力を供給するための回路であり、書き込み駆動回路150に接続されている。
【0060】
このように、各駆動回路130、140、150の電源回路135、145、155は、各々駆動回路130、140、150の外側に設けられる。表示電極対20で考えれば、外側に近いパネル端部は電源回路135、145に近くなるが、パネル中央部は、電源回路135、145に遠くなり、表示電極対20が長くなると、表示電極対20の抵抗成分の影響を受けてしまうが、本実施形態に係るプラズマディスプレイ装置では、放電セル1100の横隔壁80の幅で調整を行い、輝度むらが発生しない映像表示を可能としている。
【0061】
なお、駆動制御回路160は、各駆動回路130、140、150の駆動を制御する回路である。駆動制御回路160は、サブフィールド変換回路161と、走査データ発生回路162と、維持データ発生回路163と、書き込みデータ発生回路164を備える。
【0062】
サブフィールド変換回路161は、1枚のフィールド画像を、プラズマディスプレイパネルを駆動するサブフィールドに変換する回路である。走査データ発生回路162、維持データ発生回路163及び書き込みデータ発生回路164は、サブフィールド変換された画像データに基づいて、走査電極21、維持電極22及び書き込み電極60を駆動するためのデータを発生させる回路である。これにより、走査電極21、維持電極22及び書き込み電極60が駆動されて放電セル100が放電し、プラズマディスプレイパネル120に入力信号Sに応じた映像が表示される。
【0063】
そして、本実施形態に係るプラズマディスプレイ装置によれば、大画面のプラズマディスプレイパネル120を用いても、輝度むらの生じない高精細な映像を表示することができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、映像をプラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 前面基板
20 表示電極対
21 走査電極
22 維持電極
23 透明電極
24 金属母線
30 誘電体層
40 保護層
50 背面基板
60 書き込み電極
70 縦隔壁
80、81、82 横隔壁
90、90R、90G、90B 蛍光体層
100、101、102 放電セル
110 シャドーマスク
120 プラズマディスプレイパネル
130 走査駆動回路
135 走査電源回路
140 維持駆動回路
145 維持電源回路
150 書き込み駆動回路
155 書き込み電源回路
160 駆動制御回路
161 サブフィールド変換回路
162 走査データ発生回路
163 維持データ発生回路
164 書き込みデータ発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面基板と背面基板が対向配置され、前記前面基板の前記背面基板との対向面には走査電極と維持電極からなる表示電極対が平行に延在して形成され、前記背面基板の前記前面基板との対向面には前記表示電極対と直交する方向に延在した書き込み電極及び縦隔壁が形成されるとともに、前記書き込み電極と直交する方向に横隔壁が形成され、前記表示電極対と前記書き込み電極の交点領域に放電セルが形成されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記横隔壁の体積は、前記表示電極対が延在する方向において、端部から中央部に向かって漸増することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記横隔壁の体積は、前記表示電極対の延在方向において中央に配置された前記書き込み電極又は前記縦隔壁に関して、線対称であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記横隔壁の高さは一定であり、前記横隔壁の体積の分布は、前記横隔壁の幅を変化させて制御したことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記横隔壁の幅は、前記表示電極対の延在方向における中央部で最大であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記横隔壁の幅は、前記表示電極対の延在方向における中央部と端部との間において、所定の画素数単位で変化していることを特徴とする請求項3又は4に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプラズマディスプレイパネルと、
前記表示電極対及び前記書き込み電極を駆動する各駆動回路と、
該駆動回路に電力を供給する電源回路と、を有することを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−48855(P2012−48855A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187466(P2010−187466)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】