説明

プラズマディスプレイパネル及びプラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】高発光効率を有し、実用化のための量産製造に適した構造のプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】 本発明のプラズマディスプレイパネルは、前面基板110及び背面基板120と、前面基板110と背面基板120との間で対面するように配置され、対応する開口パターンが共に放電空間Sを形成する電極シート130、140とを備え、各電極シート130、140は、放電空間を取り囲んで延び、放電空間と接したエッジにラウンド型の曲面部R1,R2が形成された放電電極135、145と、放電電極135、145を相互に支持及び絶縁するために放電電極の間に形成され、放電電極と同種の金属の酸化物で形成された絶縁部材131、141とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス放電を利用して画像を具現するプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)及びPDPの製造方法に係り、高発光効率を有しているとともに、実用化のための量産製造に適した構造に改善されたPDP及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平板ディスプレイ装置であって、PDPを採用した装置は、大画面を有するとともに、高画質、超薄型、軽量化及び広視野角という優秀な特性を有しており、他の平板ディスプレイ装置に比べて、製造方法が簡単であり、大型化が容易なので、次世代の大型平板ディスプレイ装置として注目されている。
【0003】
このようなPDPは、印加される放電電圧によって直流(DC:Direct Current)型、交流(AC:Alternating Current)型及び混合型に分類され、放電構造によって、対向放電型及び面放電型に分類される。現在、国内外で生産されているほとんどのPDPは、3電極面放電型PDPである。
【0004】
最近、3電極面放電型構造で不回避であった蛍光体の劣化、可視光透過率の低下、発光効率の低下などの諸問題を解決するために、新たな構造のPDPに関する研究が活発に進められている。
【0005】
そのうち、図1には、特許文献1に開示されているPDPの分解斜視図を示している。開示されたPDPは、相互に所定間隔をおいて対向するように配置されている前面基板10及び背面基板20と、前面基板10と背面基板20との間に放電空間Sを区画するために、垂直方向に整列された前方隔壁31及び後方隔壁24とを備えている。前方隔壁31内には、放電空間S内に表示放電を起こすために、上下に離隔して配置されている第1放電電極35及び第2放電電極45が埋め込まれている。前方隔壁31は、放電電極35,45を埋め込むことによってイオン衝撃による電極損傷を防止し、放電に有利な環境を提供するためのものであり、誘電物質で形成されている。後方隔壁24によって区画された領域内には、蛍光体25が塗布されている。また、背面基板20上には、放電電極35,45と交差する方向に延びるアドレス電極22が配置され、背面基板20と後方隔壁24との間には、アドレス電極22を埋め込むための誘電体層21が配置されている。
【0006】
図1に示したPDPでは、放電空間Sを限定する側壁を通じて放電が行われるので、背面基板20側に塗布された蛍光体25がイオン衝撃によって劣化する恐れがほとんどなく、前面基板10側では不透明な電極要素が排除されて可視光の上方透過率が向上し、放電空間Sの全ての側壁を通じて放電がなされ、放電空間Sの中央にプラズマを集中させることができるので、紫外線の生成を画期的に増加させることができる。
【0007】
しかし、このようなPDPは、放電電極35,45が隔壁31内に埋め込まれているという特有な構造のために、従来の製造技法では量産製造に限界があり、製造上の問題によって、未だに実用化されていないのが実情である。
【特許文献1】韓国公開特許第2005−0104003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高発光効率を有しているとともに、実用化のための量産製造に適した新たな構造のPDP及びPDPの製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記目的を達成するとともに、放電安定性及び耐久性を向上させたPDP及びPDPの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的及びその他の目的を達成するために、本発明の一つの側面であるPDPは、相互に離隔されている前面基板及び背面基板と、前記前面基板と前記背面基板との間で相互に対向して配置され、対応する開口パターンが共に放電空間を形成する少なくとも二つ以上の電極シートとを備えているPDPであって、前記各電極シートは、前記放電空間の少なくとも一部を取り囲んで延び、前記放電空間と接するか、または少なくとも近接したエッジには、ラウンド型の曲面部が形成されている複数の放電電極と、前記放電電極を相互に支持及び絶縁するために、前記放電電極の間に一体に形成され、前記放電電極と同種の金属の酸化物で形成された絶縁部材とを備えていることを特徴とする。
【0011】
一方、本発明の他の側面であるPDPは、相互に離隔されている前面基板及び背面基板と、前記前面基板と前記背面基板との間で相互に対面するように配置され、対応する開口パターンが共に放電空間を形成する第1及び第2電極シートとを備えているPDPであって、それぞれの前記第1及び第2電極シートは、一方向に配列された前記放電空間の少なくとも一部を取り囲んで延び、前記放電空間と接するか、または少なくとも近接したエッジには、ラウンド型の曲面部が形成されている複数の放電電極と、前記放電電極を相互に支持及び絶縁させるものであって、前記放電電極に対して垂直な段差を介して一体に形成され、前記放電電極と同種の金属の酸化物から形成されている絶縁層とを備えていることを特徴とする。
【0012】
一方、本発明の他の側面であるPDPは、相互に離隔されている前面基板及び背面基板と、前記前面基板と前記背面基板との間で相互に対面するように配置され、対応する開口パターンが共に放電空間を形成する第1及び第2電極シートとを備えているPDPであって、それぞれの前記第1及び第2電極シートは、前記放電空間を取り囲む放電面を有し、前記放電面と接するエッジには、ラウンド型の曲面部が形成されている放電部と、前記放電部を相互に電気的に連結する通電部とを備えた放電電極と、前記放電電極を相互に支持及び絶縁するために、隣接した前記放電電極の間で一体に形成される少なくとも一つのブリッジとを備えている。
【0013】
一方、本発明の他の側面であるPDPの製造方法は、アレイをなして配列された多数の放電空間と、前記放電空間を取り囲んで延びる複数の放電電極と、相互に離隔されている前記放電電極を構造的に相互に連結する絶縁部材とを備えたPDPの製造方法であって、原素材の金属シートを準備するステップと、前記金属シートの一方の面に前記放電電極の形成部分を覆う第1PRマスクを形成するステップと、前記金属シートの他方の面に前記放電電極の形成部分を覆う第2PRマスクを形成するステップと、前記第1PRマスクから露出した前記金属シートの一方の面を選択的にエッチングする第1エッチングステップと、前記第2PRマスクから露出した前記金属シートの他方の面を選択的にエッチングする第2エッチングステップと、前記第1PRマスク及び第2PRマスクを剥離するステップと、前記金属シートを中性電解質の中で酸化処理して前記放電電極の表面に沿って酸化被膜を形成し、前記放電電極の間の領域を絶縁化して前記絶縁部材を形成する陽極処理ステップと、前記各ステップを再度実施して、少なくとも二枚の金属シートを提供するステップと、提供された前記金属シートを相互に対面するように積層し、垂直方向に整列させるステップと、積層された金属シートを間に介して、提供された前面基板及び背面基板を相互に対面するように結合するフリットシーリングステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、放電電極パターンが形成された金属シートを酸化処理することで放電電極の表面に誘電体層の代替となる酸化被膜を一括して形成するので、従来あった誘電体層を形成するための別途の工程が不要になる。特に、放電空間を取り囲んで延びる電極配置を有することによって、量産製造に適した新たな構造のディスプレイパネルを提示することができ、これによって、従来の高効率のディスプレイパネルの有する製造上の限界を克服し、実用化を操り上げて実現することができる。
【0015】
また、最終的に通電の必要な部分と絶縁の必要な部分との間に、厚さや幅などの形状に関する数値を異なるようにすることによって、選択的な酸化を行うために別途パターニングをする必要がないので、金属シートの全体領域に対して同じ酸化条件を付加したとしても、一部の領域はそのまま伝導性を維持し、他の部分は酸化によって絶縁化され、製造工程におけるステップを最小化することができる。
【0016】
特に、本発明では、放電空間と接する放電電極のエッジにラウンド型の曲面部を形成するので、鋭いエッジが原因で酸化被膜の成長基盤が脆弱になることを防止し、エッジ部分を含む全体表面にわたって均一な酸化被膜を形成することができる。これにより、放電電極を覆っている酸化被膜にクラックが形成されたり、または耐電圧特性の劣る粗い組織を有する酸化被膜が形成されたりすることを防止し、放電安定性及び耐久性の低下を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施例に係るPDPについて詳細に説明する。
【0018】
第1実施例
図2には、本発明の第1実施例に係るPDPの分解斜視図を示しており、図3には、図2のIII−III線における垂直断面図を示している。但し、垂直断面図において、説明の便宜のために、下部の第2電極シート140の部分では図2のIII’−III’線における断面構造を示している。また、図4には、図2の放電電極135,145の拡大斜視図を示している。
【0019】
図示したPDPは、相互に所定の間隔をおいて対面するように配置されている前面基板110及び背面基板120を備え、前面基板110と背面基板120との間には、相互に対面するように配置されて共に多数の放電空間Sを形成する第1電極シート130及び第2電極シート140が介在している。前面基板110は、所定の画像が投影される画像表示面側となり、このため、透光性に優れたガラス素材のガラス基板によって形成されている。
【0020】
第1電極シート130及び第2電極シート140は、原素材となる金属シートに所定の電極パターンを形成した後、酸化処理を経ることでその一部を絶縁化させた一体型シートである。以下では、第1電極シート130及び第2電極シート140の構造についてさらに詳細に説明する。それぞれの第1電極シート130及び第2電極シート140には、縦横に配列された多数の円形開口が形成され、相互に対応した位置に形成された開口によって多数の放電空間Sが設けられている。ここで、放電空間Sとは、表示放電を起こすための所定の電界が形成され、放電によって励起される放電ガスが充填されている空間を意味する。本発明では、第1電極シート130及び第2電極シート140が上下に対面するように配置されて共に放電空間Sを形成するので、第1及び第2電極シート130,140によってそれぞれ形成された上部及び下部空間は、放電空間Sの一部となる。但し、本明細書を通じて、各電極シート130,140に形成された上部または下部空間を放電空間Sと称する場合もあるが、これは説明の便宜のためのものであり、厳格な意味では各電極シート130,140に形成された空間は、放電空間Sの一部を構成するものである。
【0021】
第1及び第2電極シート130,140に円形の開口パターンを形成することによって、各放電空間Sは円柱状を有している。これとは異なり、各電極シート130,140に多角形の開口パターンを形成することも可能であり、各放電空間Sは六面体を含む多様な多面体構造に形成されたり、それ以外にもその内部に放電ガスを収容できるような構造であれば、特別の形態に限定されるわけではない。
【0022】
第1電極シート130には、一列に配列された放電空間Sを取り囲んで一方向(x方向)に延びる多数の第1放電電極135が形成されている。第1放電電極135は、それ自体の抵抗による発熱損失を最小化するために、電気伝導性に優れた金属素材で形成することが望ましいので、例えば、アルミニウム素材で形成される。第1放電電極135は、放電空間Sを取り囲んで放電に関与する放電部135aと、放電部135aを相互に電気的に連結して放電部135aに駆動電源を供給する通電部135bとを備えている。放電部135aは、その形態に応じた形状に放電空間Sを限定するので、具体的にいろいろな実施例に対応して多様な形態の放電空間Sを形成するために、その形態を適切に変形させることもある。放電空間Sを限定する放電部135aの内面に沿って、ラウンド型の曲面部Rが形成されている。この曲面部Rは、放電部135aの上下両側のエッジに沿って環状に形成されている。これについては、後にさらに詳細に説明する。
【0023】
一方、図面に例示した放電部135aは、放電空間Sを完全に取り囲むように形成されているが、放電空間S内に放電を起こすのに十分な電界を誘導できるのであれば、放電部135aは放電空間Sの一部のみを取り囲むように形成された変形も可能である。これは、放電電流を制限するための目的に寄与しうる。このとき、放電部135aは、その一部が開放された形態に形成され、その開放された部分は、放電部135aとの間に垂直な段差を介して形成される絶縁層131となる。
【0024】
一方、第1放電電極135の外面には、陽極処理のような酸化処理を通じて所定の厚さTの酸化被膜135tが形成されており、この酸化被膜135tによって覆われている放電電極135の内部は、酸化されずに電気伝導性を維持したコア部分135cとして残っている。酸化被膜135tによって第1放電電極135は、外部環境から電気的に絶縁される。例えば、酸化被膜135tは、放電電極135の素材であるアルミニウム(Al)を酸化した絶縁性アルミナ(Al)によって形成することができる。放電空間Sと接する表面に形成された酸化被膜135tは、対をなして配置された放電電極135,145間の直接的な通電を防止するとともに、放電に関与する荷電粒子との衝突によって生じる放電電極135の損傷を防止するので、従来あった誘電体層の役割を担っている。
【0025】
放電電極135を保護する酸化被膜135tは、耐電圧特性を考慮して十分な厚さに形成することが望ましく、酸化被膜135tの厚さTは、酸化工程時の印加電流、電解溶液の選択、工程時間などの工程条件を制御することによって最適化することができる。一方、第1放電電極135の表面が酸化被膜135tで被覆されることによって、その下方に配置された第2放電電極145との間の電気的な短絡が防止される。
【0026】
酸化被膜135tの形成と関連して、放電空間Sと接する放電部135aのエッジに沿って、ラウンド型の曲面部Rが形成されている。一般的に、放電空間Sは、電極シート130に対してパンチング作業を行うことによって形成されるので、放電空間Sと接する面は、パンチング時の切断面に該当し、切断面側の端部には、鋭いエッジが形成されている可能性が高い。一方、陽極処理などの酸化工程では、露出した加工物の表面を基盤として、ここから酸化物を成長させるので、切断を通じて形成された鋭いエッジ上には、緻密な組織の酸化物を形成することが難しい。このような理由から、本発明では、切断によって形成された端部の鋭いエッジを除去するように、ラウンド処理された曲面部Rを形成することによって、端部のエッジが原因で酸化被膜135tの成長基盤が脆弱になることを防止し、端部を含む全体表面にわたって均一な酸化被膜135tを形成することができる。
【0027】
一方、第1放電電極135の間には、放電電極135と一体に形成された絶縁層131が形成されている。絶縁層131によって第1放電電極135は、相互に構造的に支持され、電極シート130の全体的なフラッタリングや反り変形が防止され、生産工程における取り扱いの便宜が図られる。図示したように、絶縁層131は、放電電極135を除いた電極シート130の全領域を構成している。但し、表面を通じて酸化が進められる陽極処理工程の特性上、酸化処理を促進するために、絶縁層131の一部に開口が形成されている。このとき、開口されて露出した側面を通じても酸化が進められる。
【0028】
絶縁層131は、第1放電電極135を構造的に相互に支持するとともに、放電電極135の間を電気的に絶縁させる。例えば、電極パターンが形成されたアルミニウムシートを陽極処理することにより、絶縁層131に対応する部分を絶縁化させれば、絶縁層131は、アルミニウム(Al)の酸化物であるアルミナ(Al)で形成される。
【0029】
絶縁層131は、第1放電電極135との間に垂直な段差を介して形成され、相対的に薄い厚さTに形成される。例えば、絶縁層131は、第1放電電極135との間に上下両面に段差d,dを介して形成され、薄い厚さTに形成される。絶縁層131の厚さTは、陽極処理の具体的な工程条件によって決定されるが、陽極処理を通じてその表面から内部に酸化が進められる過程において、絶縁層131が完全に酸化されるような厚さにすることが望ましい。もし、絶縁層131の厚さTがこのような厚さよりも厚く形成される場合には、第1放電電極135を相互に連結する絶縁層131の内部が十分に酸化されずにそのまま電気伝導性を維持することになり、異なる電気的な信号が導通される放電電極135同士が絶縁層131を通じて短絡してしまうので、工程マージンを考慮して十分に薄い厚さにする必要がある。厚さの異なる放電電極135及び絶縁層131を形成するために、例えば、原素材となるアルミニウム電極シートにおいて絶縁層131の部分を両面エッチングすることによって、放電電極135の両面に対して段差のある構造を作る。このとき、絶縁層131と放電電極135との間に形成される段差のうち一方の面の段差dと他方の面の段差dを同等に設計すれば、両面エッチング作業を対称的に行うことができるので、特別に一方の面と他方の面とを区別する必要がなくなり、作業の便宜性を図ることができる。
【0030】
一方、絶縁層131は、酸化工程を通じてその内部まで完全に酸化されるような薄さに形成されていれば、放電電極135の上下両面との間に段差d,dを形成してもよいし、または代案として放電電極135の一方の面との間には深い段差を形成するが、放電電極135の他方の面との間には平坦な面となるような変形も可能である。
【0031】
一方、厚さを異なるように設計することによって、同じ酸化条件に露出したとしても放電電極135は伝導性を維持するが、絶縁層131はその内部まで完全に絶縁化されるようにすることができる。また、放電電極135と絶縁層131との間の垂直な段差d,dによって付随的に絶縁層131の上下に形成された段差空間gは、放電空間S内から不純ガスを排気し、放電ガスを充填する過程において、これらのガスの排気路及び流入路として提供される。これにより、排気−封入工程に要する時間を短縮できるだけではなく、放電空間S内に不純ガスを残さないので、放電ガスの純度を高く維持することができ、放電の安定性に寄与することができる。
【0032】
第1電極シート130の下側には、第1電極シート130と対面する第2電極シート140が配置される。この第2電極シート140は、前述した第1電極シート130と類似した構成となる。さらに具体的に説明すれば、第2電極シート140には、一定の配列をなして複数の放電空間Sが形成されており、放電空間Sを取り囲んで延びる多数の第2放電電極145が形成されている。第2放電電極145は、放電空間Sを取り囲んで放電に直接関与する放電部145aと、放電部145aを相互に電気的に連結する通電部145bとを備えている。そして、放電空間Sと接する放電部145aのエッジに沿って、ラウンド処理された曲面部Rが形成されている。
【0033】
第2放電電極145は、x方向に延びる第1放電電極135と交差するy方向に延びている。これは、PM(Passive Matrix)駆動方式において、一方の放電電極はアドレス電極として機能し、他方の放電電極は走査電極として機能することにより、表示放電を起こす放電空間に対する選択動作を可能にするためのものである。例えば、第1放電電極135は走査電極として、第2放電電極145はアドレス電極として駆動される。但し、このような電極構造によって本発明の技術的範囲が制限されるものではなく、第1及び第2放電電極135,145を平行に延びるように配列し、放電電極135,145と交差する方向に延びる別途のアドレス電極(図示せず)を含むような電極構造についても本発明の技術的思想は同一に適用される。このとき、放電電極135,145のうち、一方の放電電極が走査電極として機能して、アドレス電極と共に放電空間の選択のためのアドレス放電を起こすことが可能である。
【0034】
第2放電電極145は、その間の領域を形成する絶縁層141によって相互に支持及び絶縁され、この絶縁層141は、第2放電電極145との間に段差d,dが形成され、薄い厚さTに形成されている。さらに具体的に説明すると、絶縁層141は、第2放電電極145の上下端から段差d,dを介して形成され、薄膜の厚さTに構成される。一方、図面に示していないが、第1及び第2電極シート130,140は、例えば、非伝導性の誘電体接着層を介在させて対面して結合されている。
【0035】
前面基板110と対面するように配置される背面基板120は、前面基板110と同様にガラスを主素材とするガラス基板として提供される。背面基板120の内面には、放電空間Sと対応するようにグルーブ120’が形成されており、グルーブ120’に沿って、蛍光体125が塗布されている。グルーブ120’は、蛍光体125の塗布領域を区画し、塗布面積を拡大するために形成されたものである。蛍光体125は、フルカラーのディスプレイを具現するために、異なる色相が設けられている。例えば、光の3原色でカラー画像を具現する場合には、赤色、緑色及び青色の蛍光体125が交互にグルーブ120’内に塗布され、各放電空間Sでは、塗布された蛍光体125の種類によって、赤色、緑色または青色の単色光を出射し、これらが集まって一つのカラー画像を構成する。
【0036】
以下では、上述したPDPの駆動について説明する。第1放電電極135及び第2放電電極145に交流電圧を印加することにより、放電空間内に放電を起こす所定の電界が形成され、それにより、アドレス放電の結果として得られた壁電荷及び放電ガスのイオン化を通じて形成された荷電粒子が両放電電極135,145の間の放電パスに沿って移動して表示放電が起きる。この表示放電は、放電空間Sを限定する放電電極135,145対の側面を通じて閉曲線の形態で垂直方向に沿って起きる。このような点から、放電電極135,145の側面は、放電面となる。放電空間Sに充填されていた放電ガスは、放電パスに沿って移動する荷電粒子との衝突によって励起状態になると、基底状態に落ちる際にエネルギー差に該当する紫外線を発生させる。発生した紫外線は、蛍光体125を通じて可視光の形態に変換され、この可視光が前面基板110側に投影されてユーザが認識できる所定の画像が具現される。
【0037】
以下では、本発明の主要な構成であって、放電電極135,145に設けられた曲面部R,Rの作用について説明する。前述したように、放電空間Sと接する第1放電電極135及び第2放電電極135のコーナーに沿って、ラウンド処理された曲面部R,Rが形成されている。曲面部R,Rと隣接する放電面は、放電空間用の開口を形成するために、原素材のプレートを穿孔して形成される切断面に該当する。そのため、放電面と隣接したコーナーに沿って、鋭いエッジが形成されることが一般的である。本発明では、放電面側の端部に沿って仕上切削を行うことによって、このようなエッジ部を除去し、その結果として図示したような曲面部R,Rを形成する。このとき、具体的な切削方式としては、微小切削のための研磨加工が望ましく、研磨材を付着させて高速回転させるCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置のポリシングパッドを利用するCMP、または単純にサンドペーパなどの研磨材をコーナーに加圧して摩擦することによって該コーナーのエッジを除去する手作業で行われる。
【0038】
図5は、コーナーに鋭いエッジがそのまま残っているアルミニウム加工物に対して酸化処理した場合に結果として得られた酸化被膜の概略的な形態を示す断面図であり、図6は、本発明と同様に、コーナーに丸い形態の曲面部Rを形成したアルミニウム加工物に対して同じ条件で酸化処理した場合に結果として得られた酸化被膜の概略的な形態を示す断面図である。陽極処理などの酸化工程では、外部酸素が加工物の表面を通じて内部に浸透する一方で、加工物のアルミニウム成分は、その表面を通じて外部に拡散され、相互に親密度の高い酸素とアルミニウム成分とが相互反応して酸化被膜を形成する。このように形成される酸化被膜は、加工物の表面に対して垂直な法線方向に成長する特性があるので、図5に示したように、隣接した第1及び第2面P,Pが出合うコーナー部分が角張った形態で残っていれば、酸化被膜に沿って第1面Pから成長する第1酸化膜Lと第2面Pから成長する第2酸化膜Lとの間には、図示したように、酸化物が存在しないクラックCが形成されやすい。また、具体的な酸化工程の条件、例えば、工程時間や印加電流によって、酸化被膜にクラックCが形成されないこともあるが、少なくとも対応するコーナー部分に形成された酸化物は、粗い内部組織となるために、十分な絶縁性を提供できず、耐電圧特性が低くて容易に破壊するような特性を有する。
【0039】
前述したように、放電電極135,145の表面に形成された酸化被膜135t,145tは、放電電極135,145間の直接的な通電を防止するとともに、イオン衝撃から放電電極135,145を保護するという従来の誘電体層の役割を代替するものでもある。したがって、放電空間Sと接する放電電極135,145の内面に沿って酸化被膜135t,145tが均一に覆わず、局部的に酸化被膜135t,145tの欠如したクラックCが形成されれば、耐電圧特性が大きく落ちることはもとより、特に、クラックCが形成される蓋然性の高いコーナー部分に電界が集中して絶縁性が破壊され、放電電極135,145間の直接的なショートが発生する可能性が高くなる。
【0040】
図7は、放電空間のための多数の開口Hが形成されたアルミニウムプレートに酸化被膜を形成し、所定の放電電圧を印加したときに開口Hの周囲の酸化被膜が破損される様子を示したものである。このような絶縁破壊は、開口Hを形成するために、プレートの所定領域を穿孔して形成された鋭いコーナー部分に、前述した酸化工程上の限界によって緻密な組織の酸化被膜が形成されないことによって、該当部分に電界が集中してアーキングが発生した結果であると理解されている。
【0041】
一方、図6に示したように、加工物のコーナーにラウンド型の曲面部Rが形成されていれば、平坦な第1面P及び第2面Pからそれぞれ成長する第1及び第2酸化膜L,Lと同じように、曲面部Rからも放射状にラウンド型酸化膜Lが成長するので、加工物の表面に沿って酸化被膜が均一に覆うことになる。このように、ラウンド処理された曲面部Rは、酸化被膜の成長のための基盤を提供して耐電圧特性に寄与し、ディスプレイパネルの耐久性を高めることができる。
【0042】
第2実施例
図8には、本発明の第2実施例に係るPDPの分解斜視図を示しており、図9には、図8のIX−IX線における垂直断面構造を示している。但し、説明の便宜のために、下部の第2電極シート240については、図8のIX’−IX’線における断面構造を示している。そして、図10には、図8の電極シート230,240の一部に対する拡大斜視図を示している。図示したPDPは、相互に対面するように配置された前面基板210及び背面基板220と、前面基板210と背面基板220との間に対面するように配置されて共に放電空間Sを形成する第1電極シート230と第2電極シート240とを備えている。第1及び第2電極シート230,240は、原素材となる金属シートに所定パターンで放電電極235,245及びこれらを相互に連結するブリッジ231,241を形成した後に、酸化処理を通じてブリッジ231,241の部分を絶縁化させた一体型構造のシートである。原素材となる金属シートは、放電電極自体の抵抗による電源損失を考慮して、電気伝導性が高く、かつ酸化処理を通じて絶縁化が相対的に容易なアルミニウムシートを利用する。
【0043】
これをさらに具体的に説明すれば、第1電極シート230は、一列に配列された放電空間Sを取り囲み、x方向に延びる多数の第1放電電極235を備えている。第1放電電極235は、放電空間Sを取り囲む放電部235aと、放電部235aを電気的に連結させる通電部235bとを備えている。放電部235aは、放電空間Sを取り囲んで独立的な発光領域に区画する。また、放電部235aは、対をなす他の放電部245aと共に、該当する放電空間Sで表示放電を起こす。放電空間Sと接する放電部235aのコーナーには、ラウンド処理された曲面部Rが形成されている。これは、ソフトに続いた曲面部Rによって酸化被膜235tが成長するための基底面を提供し、それにより、放電空間Sと接する放電面に均一な酸化被膜235tを形成する。
【0044】
通電部235bは、所定の間隔に離隔されている放電部235aをx方向に相互に通電させ、その方向に配列された一列の放電部235aが同じ駆動信号を共有できるようにして、一つの放電電極235を構成している。通電部235bは、当然のこととして電気伝導性を有していなければならないので、陽極処理を通じて電極シート230の一部領域を絶縁化させるときに、その表面は酸化されて伝導性を喪失しても、内部のコア部分235cは酸化されずにそのまま伝導性を維持するように十分に広い幅W30で形成されることが望ましい。すなわち、陽極処理の工程条件を検討して、少なくとも工程終了時点まで幅方向に沿って酸素が浸透せず、したがって、伝導性がそのまま維持されたコア部分235cが残るように、通電部235bの幅W30(図10)を広く形成することが必要である。一方、酸化処理の結果、第1放電電極235の表面に沿って、所定の厚さTの酸化被膜235tが形成されている。放電空間Sを取り囲む放電電極235の表面に形成された酸化被膜235tは、放電電極235,245相互間の直接的な通電を防止し、放電によるイオン衝撃から放電電極235を保護する役割をする。垂直に整列した第1放電電極235及び第2放電電極245は、酸化被膜235tによって電気的に絶縁されている。
【0045】
隣接した第1放電電極235は、その間を連結するブリッジ231を通じて相互に構造的に支持されている。ブリッジ231は、放電電極235の間を相互に連結して電極シート230のフラッタリングや反り変形を防止する。ブリッジ231は、放電電極235と交差するy方向に延びている。一方、電極シート230に要求される支持強度を考慮して、一つ以上の複数のブリッジ231が所定の間隔をおいて平行に形成される場合もある。
【0046】
ブリッジ231は、絶縁性酸化物で形成され、隣接した放電電極235を相互に絶縁し、異なる駆動信号が導通して放電電極235が電気的に短絡することを防止する。このように、放電空間Sを取り囲む放電部235aは、x方向には通電部235bによって相互に通電され、y方向にはブリッジ231によって相互に絶縁されている。ブリッジ231は、隣接した放電部235aの間に形成される。但し、ブリッジ231は、隣接した放電電極235の間で絶縁及び支持の目的を達成できるかぎり、通電部235bの間に形成される場合もある。
【0047】
ブリッジ231の幅W10,W20は、表面から進められる酸化処理工程の特性上、酸化が幅方向に沿って十分に内部に進んでブリッジ231の全部が絶縁化されるように狭く形成することが望ましい。同じ酸化条件に露出される通電部235bは、伝導性をそのまま維持するコア領域235cを有する一方で、ブリッジ231は、その全部が酸化を通じて絶縁化されなければならないので、通電部の幅W30とブリッジの幅W10,W20との間には、以下の関係が成立する。
【0048】
W30>W10,W20
第1電極シート230と垂直方向に整列されている第2電極シート240は、基本的には、第1電極シート230と類似した構造を有する。すなわち、第2電極シート240には、縦横に配列された多数の放電空間Sが形成され、放電空間Sを取り囲んで一方向に沿って延びる多数の第2放電電極245が配置されている。第2放電電極245は、第1放電電極235と交差するy方向に延びている。相互に交差するように配列された第1放電電極235と第2放電電極245によって、表示放電が起きる放電空間Sに対する選択動作が可能になる。
【0049】
第2放電電極245は、放電空間Sを区画して放電に直接関与する放電部245aと、放電部245aを相互に電気的に連結する通電部245bとを備えている。放電空間Sと接する放電部245aのコーナーには、ラウンド型の曲面部Rが形成される。曲面部Rは、緻密な組織の酸化被膜245tを形成するための基底面を提供する。一方、第2放電電極245は、これらの間を連結するブリッジ241によって構造的に相互に支持され、電気的に絶縁される。放電空間Sを取り囲む放電部245aは、y方向には通電部245bによって相互に通電され、x方向にはブリッジ241によって相互に絶縁されている。
【0050】
一方、前面基板210及び背面基板220は、ガラス素材で形成されたガラス基板として提供され、背面基板220の内面には、放電空間Sに対応するように一定の間隔をおいて多数のグルーブ220’が形成されている。グルーブ220’内には、蛍光体225が塗布されている。図面に示していないが、背面基板220と共に前面基板210にも蛍光体225を配置し、このために、前面基板210にも蛍光体225の塗布領域を区画するためのグルーブを形成することも可能である。
【0051】
第3実施例
以下では、本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法について詳細に説明する。本発明では、陽極処理の工程条件を制御することによって酸化被膜の内部構造を変化させ、それにより、耐電圧特性の向上したPDPを提供する。
【0052】
図11Aないし図11Iは、本実施例に係るPDPの製造方法を工程段階別に示している。まず、図11Aに示したように、第1電極シートの原素材となる金属シートを準備するが、例えば、伝導性及び酸素との親和力が高くて、酸化度に優れたアルミニウムシート330’を準備する。次いで、図11Bに示したように、提供されたアルミニウムシート330’の上下両面にそれぞれ第1及び第2フォトレジストP,Pを塗布する。フォトレジストP,Pは、UVなどの照射光に露出されると、化学的な反応を通じて硬化する感光性樹脂材で形成されている。
【0053】
次いで、露光マスクM1を通じて上側の第1フォトレジストPに対して選択的にUV光を照射する露光過程と、その次に行われる現像過程を通じて、図11Cに示したように、所定のパターンを有する第1PRマスクPRを形成する。第1PRマスクPRは、放電電極部分W1に対応するパターンを有し、該当部分W1をカバーする。次いで、前述した工程と同様に露光マスクM2を通じて下側の第2フォトレジストPに対して露光及び現像過程を進め、図11Dに示したように、所定のパターンが形成された第2PRマスクPRを形成する。このようにして得られた第2PRマスクPRは、放電電極部分W1に対応するパターンを有し、該当部分W1をカバーする。アルミニウムシート330’の上面及び下面にそれぞれ形成された第1PRマスクPR及び第2PRマスクPRは、それぞれ垂直方向に整列されていることが望ましい。これは、後述するエッチング工程において第1PRマスクPR及び第2PRマスクPRを通じてアルミニウムシート330’の両面をエッチングして放電空間を形成する際に、第1及び第2PRマスクPR,PRが不正確に整列されてミス−アラインが発生すると、放電空間が上下でずれて形成され、パネルの表示機能が低下する恐れがあるためである。
【0054】
次いで、図11E及び図11Fに示したように、第1PRマスクPRをエッチング防止膜として、アルミニウムシート330’の上面に対してエッチングを実施する。上面エッチングによって、放電空間部分W3と放電電極の間の部分W2とが選択的にエッチングされる。このとき、放電空間部分W3は、フルエッチングされて深いエッチングがなされ、放電電極の間の部分W2は、ハーフエッチングされて薄いエッチングがなされる。
【0055】
また、図11E及び図11Fに示したように、第2PRマスクPRをエッチング防止膜として、アルミニウムシート330’の下面に対してエッチングを実施する。下面エッチングを通じて、放電空間部分W3と放電電極の間の部分W2とが選択的にエッチングされる。このとき、放電空間部分W3は、完全に貫通されるまでフルエッチングが進められ、放電電極の間の部分W2は、一定の厚さが残存するようにハーフエッチングされる。
【0056】
次いで、利用が終わった第1PRマスクPR及び第2PRマスクPRを剥離すれば、図11Gに示したような構造の電極シート330が得られる。前述したエッチング過程を通じて残された一部335’は、放電電極を構成し、他の一部331’は、放電電極間の絶縁層を構成する。
【0057】
次いで、図11Hに示したように、電極シート330に対して酸化処理によって表面に酸化被膜335tを形成する陽極処理工程が進められる。陽極処理を通じて電極シート330の表面に沿って生成される酸化被膜335tは、アルミナ(Al)として形成され、絶縁性を有するセラミック素材となる。ここで、相対的に厚く形成された放電電極335は全体が酸化されることはなく、伝導性を維持するコア部分335cを有することになる。一方、相対的に厚さの薄い放電電極の間の部分は、その内部まで完全に酸化が進められて絶縁化され、放電電極335を相互に支持して絶縁させる絶縁層331を構成する。この陽極処理工程は、本発明の主要な構成であって、後に詳細に説明する。
【0058】
一方、前述した工程を反復することによって、図11Iに示したように、事実上同一に構成された他の電極シート340が得られる。このようにして得られた電極シート340は、放電電極345の間に絶縁層341を有し、外面が酸化被膜345tで覆われている放電電極345は、伝導性を維持するコア部分345cを有する。次いで、電極シート330,340を相互に対称になるように上下に配置し、絶縁性接着剤365を利用して対面するように結合させる。但し、電極シート330,340が接着剤365を通じて直接相互に結合されなくても、後述するように、前面基板310と背面基板320との結合力によって電極シート330,340の積層構造が維持されるので、接着剤365は必須のものではない。
【0059】
次いで、電極シート330,340の上下の面に配置される前面基板310及び背面基板320を準備する。前面基板310及び背面基板320は、ガラスを主素材とするガラス基板として提供される。次いで、背面基板320に一定の間隔でグルーブ320’を形成し、形成されたグルーブ320’内に蛍光体325を塗布する。このとき、グルーブ320’は、電極シート330,340に形成された放電空間Sに対応するように一定の間隔をおいて設けられている。最後に、電極シート330,340を介して、前面基板310及び背面基板320を垂直に整列させた後、枠に沿って塗布されたフリットシーリング剤315を通じて相互に対面するように結合する。
【0060】
以下では、本発明の陽極処理工程について詳細に説明する。図12には、陽極処理工程を説明するための概略的な工程図を示している。本発明の陽極処理工程では、アンモニウムホウ酸塩、アンモニウムリン酸塩またはアンモニウムスズ酸塩などの中性電解溶液の中で、アルミニウムシート(Al)を陽極(+)とし、触媒として作用する鉛(Pb)、カーボン(Carbon)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)などの素材を陰極(−)として直流電源を通電することによって、電気化学的な反応を通じてアルミニウム(Al)の表面に沿ってAlの酸化被膜を形成する。酸化被膜の厚さは、陽極処理の具体的な工程条件、例えば、工程時間、直流電圧の強度を調整して最適に制御されるが、例えば、1μm〜50μmの範囲に調節される。
【0061】
図13は、酸化被膜の垂直断面構造を模式的に示す図面である。一般的に、酸化被膜は、膜特性の異なる2層の薄膜層を含んで構成される。外部に露出した表面には、その厚さ方向に沿って開口し、約数nm〜100nmの直径のナノポアで形成された多孔層が形成されている。そのため、多孔層は、電気的な絶縁特性が相対的に劣る。多孔層とその下部のアルミニウム層との間には、障壁層が形成されるが、この障壁層は、多孔層とは異なり、ポアを含まない緻密な組織を有しているので、耐電圧特性に寄与するところが大きい。障壁層の厚さによって全体の酸化被膜の耐電圧特性が左右されるが、硫酸やシュウ酸を電解溶液として使用する一般的な陽極処理工程では、印加電圧によって形成される障壁層の厚さは、最大0.1μmほどにすぎない。
【0062】
本発明では、電解溶液としてアンモニウムホウ酸塩、アンモニウムリン酸塩、アンモニウムスズ酸塩などの中性電解溶液を使用することによって、厚膜の障壁層を形成することができる。定量的に、陽極処理時に約700Vの電圧を印加することによって、約1μnmの厚さの障壁層を形成することができる。図14は、改善された陽極処理工法を適用して得られた酸化被膜の垂直断面構造を電子顕微鏡で撮影したものである。図面を通じて、障壁層の厚さが相対的に大きく増大したということが確認でき、改善した陽極処理工法を通じて最高1μmに達する境界層を形成することができる。
【0063】
本発明は、図面に示した実施例を参照して説明したが、それは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これらから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であることは分かるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ディスプレイ関連の技術分野に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】韓国公開特許第2005−0104003号公報に開示されているPDPの分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例に係るPDPの分解斜視図である。
【図3】図2のIII−III線及びIII’−III’線における垂直断面図である。
【図4】図2の電極配置構造を示す斜視図である。
【図5】角型エッジを有するアルミニウム加工物に対して、酸化処理の結果として得られた酸化被膜の形状を概略的に示す断面図である。
【図6】ラウンド型エッジを有するアルミニウム加工物に対して、酸化処理の結果として得られた酸化被膜の形状を概略的に示す断面図である。
【図7】所定の電圧を印加することによって、開口周囲の酸化被膜が破壊された様子を示す写真である。
【図8】本発明の第2実施例に係るPDPの分解斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線及びIX’−IX’線における垂直断面図である。
【図10】図8に示した電極シートの一部を拡大した斜視図である。
【図11A】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図11B】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図11C】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図11D】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図11E】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図11F】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図11G】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図11H】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図11I】本発明の第3実施例であって、PDPの製造方法を工程ステップ毎に示す垂直断面図である。
【図12】本発明の陽極処理工程を説明するための概略的な工程図である。
【図13】酸化被膜の構造を示す切開斜視図である。
【図14】本発明の製造方法による酸化被膜の構造を示す写真である。
【符号の説明】
【0066】
110 前面基板
120 背面基板
120’ グルーブ
125 蛍光体
130 第1電極シート
131,141 絶縁層
135,145 第1及び第2放電電極
135a,145a 放電部
135b,145b 通電部
135c,145c コア部分
135t,145t 酸化被膜
140 第2電極シート
,R 曲面部
S 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に離隔されている前面基板及び背面基板と、
前記前面基板と前記背面基板との間で相互に対面するように配置され、対応する開口パターンが共に放電空間を形成する少なくとも二つ以上の電極シートとを備えているプラズマディスプレイパネルであって、
前記各電極シートは、
前記放電空間の少なくとも一部を取り囲んで延び、前記放電空間と接するか、または少なくとも近接したエッジには、ラウンド型の曲面部が形成されている複数の放電電極と、
前記放電電極を相互に支持及び絶縁するために、前記放電電極の間に一体に形成され、前記放電電極と同種の金属の酸化物で形成された絶縁部材と
を備えていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記各放電電極は、独立的に駆動されるように隣接して配列された放電電極と離隔して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記曲面部は、前記放電空間と接する前記放電電極の上下両側のエッジに沿って形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記放電電極の表面に沿って、酸化被膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記放電電極はアルミニウムを主素材として形成され、前記絶縁部材は絶縁性アルミナで形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
相互に離隔されている前面基板及び背面基板と、
前記前面基板と前記背面基板との間で相互に対面するように配置され、対応する開口パターンが共に放電空間を形成する第1及び第2電極シートとを備えているプラズマディスプレイパネルであって、
それぞれの前記第1及び第2電極シートは、
一方向に配列された前記放電空間の少なくとも一部を取り囲んで延び、前記放電空間と接するか、または少なくとも近接したエッジには、ラウンド型の曲面部が形成されている複数の放電電極と、
前記放電電極を相互に支持及び絶縁させるものであって、前記放電電極に対して垂直な段差を介して一体に形成され、前記放電電極と同種の金属の酸化物から形成されている絶縁層と
を備えていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記各放電電極は、独立的に駆動されるように隣接して配列された放電電極と離隔して配置されていることを特徴とする請求項6に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記曲面部は、前記放電空間と接する前記放電電極の上下両側のエッジに沿って形成されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記放電電極はアルミニウムを主素材として形成され、前記絶縁層は絶縁性のアルミナ素材で形成されていることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
前記放電電極の表面に沿って、絶縁性の酸化被膜が形成されていることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
前記放電電極は、前記放電空間を取り囲み、放電に直接関与する放電部と、前記放電部を相互に電気的に連結する通電部とを備えていることを特徴とする請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項12】
前記曲面部は、前記放電部の内部エッジに沿って形成されていることを特徴とする請求項11に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項13】
前記第1電極シートが第1放電電極を備え、前記第2電極シートが第2放電電極を備えており、前記第1及び第2放電電極は、相互に交差する方向にそれぞれ延びていることを特徴とする請求項6乃至請求項12のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
前記第1電極シートが第1放電電極を備え、前記第2電極シートが第2放電電極を備えており、前記第1及び第2放電電極は、相互に平行に延び、
前記前面基板または前記背面基板には、前記第1及び第2放電電極と交差する方向に延びているアドレス電極が配置されていることを特徴とする請求項6乃至請求項12のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項15】
前記絶縁層は、前記放電電極との間に垂直な段差を介して形成され、前記放電電極よりも薄く形成されていることを特徴とする請求項6乃至請求項14のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項16】
前記絶縁層の一方の面は隣接した放電電極との間に垂直な段差を介して形成され、他方の面は前記放電電極と平らな面をなすことを特徴とする請求項6乃至請求項14のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項17】
前記絶縁層の上下両面は、隣接した前記放電電極との間に垂直な段差を介して形成されていることを特徴とする請求項6乃至請求項14のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項18】
前記絶縁層は、前記放電電極を除いた前記電極シートの全領域を構成していることを特徴とする請求項6乃至請求項17のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項19】
前記前面基板及び前記背面基板のうち少なくとも一つには、前記放電空間に対応するように所定間隔をおいて多数のグルーブが形成され、前記グルーブ内には蛍光体が塗布されていることを特徴とする請求項6乃至請求項18のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項20】
前記放電空間は、放電によって励起される放電ガスが充填されていることを特徴とする請求項6乃至請求項19のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項21】
相互に離隔されている前面基板及び背面基板と、
前記前面基板と前記背面基板との間で相互に対面するように配置され、対応する開口パターンが共に放電空間を形成する第1及び第2電極シートとを備えているプラズマディスプレイパネルであって、
それぞれの前記第1及び第2電極シートは、
前記放電空間を取り囲む放電面を有し、前記放電面と接するエッジには、ラウンド型の曲面部が形成されている放電部と、前記放電部を相互に電気的に連結する通電部とを備えた放電電極と、
前記放電電極を相互に支持及び絶縁するために、隣接した前記放電電極の間で一体に形成される少なくとも一つのブリッジと
を備えていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項22】
前記曲面部は、前記放電面と接する上下両側のエッジに沿って形成されていることを特徴とする請求項21に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項23】
前記ブリッジは、前記放電電極を構成する金属素材の酸化物で形成されていることを特徴とする請求項21または請求項22に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項24】
前記ブリッジは、前記通電部より狭い幅に形成されていることを特徴とする請求項21乃至請求項23のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項25】
前記放電電極の表面に沿って、絶縁性の酸化被膜が形成されていることを特徴とする請求項21乃至請求項24のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項26】
前記第1電極シートが第1放電電極を備え、前記第2電極シートが第2放電電極を備えており、前記第1及び第2放電電極は、相互に交差する方向に延びていることを特徴とする請求項21乃至請求項25のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項27】
前記ブリッジは、平行に配列された前記放電電極の間で、前記放電電極と交差する方向に延びていることを特徴とする請求項21乃至請求項26のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項28】
前記ブリッジは、隣接した前記放電電極の放電部の間に形成されていることを特徴とする請求項21乃至請求項27のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項29】
前記前面基板及び前記背面基板のうち少なくとも一つは、前記放電空間に対応するように所定間隔をおいて多数のグルーブが形成され、前記グルーブ内には蛍光体が塗布されていることを特徴とする請求項21乃至請求項28のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項30】
アレイをなして配列された多数の放電空間と、前記放電空間を取り囲んで延びる複数の放電電極と、相互に離隔されている前記放電電極を構造的に相互に連結する絶縁部材とを備えたプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、
原素材の金属シートを準備するステップと、
前記金属シートの一方の面に前記放電電極の形成部分を覆う第1PRマスクを形成するステップと、
前記金属シートの他方の面に前記放電電極の形成部分を覆う第2PRマスクを形成するステップと、
前記第1PRマスクから露出した前記金属シートの一方の面を選択的にエッチングする第1エッチングステップと、
前記第2PRマスクから露出した前記金属シートの他方の面を選択的にエッチングする第2エッチングステップと、
前記第1PRマスク及び前記第2PRマスクを剥離するステップと、
前記金属シートを中性電解質の中で酸化処理して前記放電電極の表面に沿って酸化被膜を形成し、前記放電電極の間の領域を絶縁化して前記絶縁部材を形成する陽極処理ステップと、
前記各ステップを再度実施して、少なくとも二枚の金属シートを提供するステップと、
提供された前記金属シートを相互に対面するように積層し、垂直方向に整列させるステップと、
積層された前記金属シートを間に介して、提供された前面基板と背面基板を相互に対面するように結合するフリットシーリングステップと
を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項31】
前記中性電解質は、アンモニウムホウ酸塩、アンモニウムリン酸塩及びアンモニウムスズ酸塩の中から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項30に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項32】
前記金属シートは、アルミニウムシートであることを特徴とする請求項30または請求項31に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項33】
前記第1エッチングステップ及び前記第2エッチングステップを通じて、前記放電空間の部分は、両面からフルエッチングされることを特徴とする請求項30乃至請求項32のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項34】
前記第1エッチングステップ及び前記第2エッチングステップを通じて、前記放電電極の間の領域は、両面からエッチングされ、その一部が残存するように薄くエッチングされることを特徴とする請求項30乃至請求項33のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図11I】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−235274(P2008−235274A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72123(P2008−72123)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】