説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】点灯率に応じた放電制御を行い、発光効率を改善し、画像表示品質を向上した画像表示装置を提供する。
【解決手段】維持期間において表示電極間に印加される維持パルスを作る維持パルス発生部と、表示すべき画像信号に基づき放電セルの点灯率を算出する点灯率算出回路と、算出された点灯率と1フィールド前の点灯率を比較し、点灯率変化の時間を制御するフィルター処理部とを備え、フィルター処理部にはフィルター係数の異なる複数のフィルターと、1フィールド前の点灯率を記憶するメモリと、点灯率算出回路で算出された表示画像の点灯率と1フィールド前の点灯率を比較する点灯率大小比較部とを有し、点灯率大小比較部が1フィールド前の点灯率に対して表示画像の点灯率が大きいと判断する場合に前記フィルター係数の大きさを切替えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の放電セルを選択的に放電させて画像を表示するプラズマディスプレイパネルの駆動方法およびその画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に市場規模を拡大してきたプラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)は、大画面、薄型、軽量を特徴とする視認性に優れた表示デバイスである。しかしその発光効率はまだ低く、現在様々な発光効率の向上や消費電力削減技術が提案されている。
【0003】
パネルの駆動方法により発光効率を上げて消費電力を削減する方法として、例えば、表示パネル内の選択された放電セルに特定の期間において駆動パルスを印加して第1の放電を発生させた後に第2の放電を発生させる駆動手段と、放電セルの点灯率(プラズマディスプレイパネルの放電セルに対する表示する放電セルの割合)を検出し、検出された点灯率に応じてこの第1の放電を発生させた後に第2の放電を発生させるタイミングが変化するように駆動手段を制御する制御手段とを備えた表示装置(特許文献1参照)が提案されている。この表示装置によれば、点灯率が変化しても安定に放電を行うことができるとともに、投入電力に対する発光効率を向上させて消費電力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−285066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら2つの連続した放電、特に第1の放電は個々の放電セルの放電特性や放電条件、駆動回路の回路部品のばらつき等の影響を受けやすく、そのためにすべての放電セルで安定して2つの放電を発生させることは容易ではなかった。また、点灯率が同じであっても、点灯パターンが異なる場合には放電電流の流れる経路も異なるので、点灯率だけで2つの放電を安定して制御することは難しかった。
【0006】
また、画像表示の切替わりにより点灯率が変化して特定の期間における2つの連続した放電を発生させるタイミングが変化することで、表示画像の切替わり前後の輝度差が大きくなる場合があることが分かった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、連続した2つの放電を安定して発生させるとともに点灯率に応じた放電制御を行い、発光効率を改善し、画像表示品質を向上した画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対の表示電極を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルと、1フィールド期間を初期化期間、書込み期間および維持期間を有する複数のサブフィールドに分割して画像を前記プラズマディスプレイに表示するプラズマディスプレイ装置であって、維持期間において表示電極間に印加される電圧の変化時に維持放電を発生させる維持パルスを表示電極間に印加するための維持パルス発生部と、表示すべき画像信号に基づき放電セルの点灯率を算出する点灯率算出回路と、算出された点灯率と1フィールド前の点灯率を比較し、点灯率変化の時間を制御するフィルター処理部とを備え、フィルター処理部にはフィルター係数の異なる複数のフィルターと、1フィールド前の点灯率を記憶するメモリと、点灯率算出回路で算出された表示画像の点灯率と1フィールド前の点灯率を比較する点灯率大小比較部とを有し、点灯率大小比較部が1フィールド前の点灯率に対して表示画像の点灯率が大きいと判断する場合にフィルター係数の大きさを切替えることを特徴とする。この構成により、連続した2つの放電を安定して発生させるとともに点灯率に応じた放電制御を行い、発光効率を改善し、画像表示品質を向上した画像表示装置を提供することができる。
【0009】
また、前述したフィルター処理部においてフィルター係数を切替える点灯率の閾値を設け、変化前の点灯率が閾値未満の場合には、閾値以上の場合よりもフィルター係数を小さくして点灯率を緩やかに変化させても良い。
【0010】
また、前述したフィルター処理部の閾値部においてフィルター係数を切替える点灯率の閾値は、20%以上40%以下に設定しても良い。
【0011】
また、本発明のフィルター処理部は、異なるフィルター係数をもつ2つのフィルターと1フィールド前の点灯率を記憶しフィルターに1フィールド前の点灯率を出力するメモリーと2つのフィルターから出力された点灯率のうちどちらの点灯率を次フィールドの点灯率とするかを選択するための点灯率大小比較部、閾値比較部、セレクターとを有し、表示画像の点灯率変化に応じたフィルター処理を行い、表示画像切替わり時の輝度差を抑制し、画像表示品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、点灯率に応じた放電制御を行い、放電を安定して発生させるとともに、発光効率を改善し、画像表示品質を向上した画像表示装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における画像表示装置に用いるパネルの構造を示す分解斜視図
【図2】同画像表示装置に用いるパネルの電極配列図
【図3】同画像表示装置の回路ブロック図
【図4】同画像表示装置に用いるパネルの各電極に印加する駆動電圧波形を示す図
【図5】同画像表示装置の維持パルス発生器の回路図
【図6】同画像表示装置の維持パルス発生器の維持パルスを発生させる動作を説明するためのタイミング図
【図7】本発明の第2の実施の形態における画像表示装置において全セル点灯率および部分点灯率の平均値と駆動パターンの切替えとの関係の一例を示す図
【図8】同画像表示装置における点灯率変化の一例を説明するための図
【図9】同画像表示装置における部分点灯率に対する完全点灯電圧の駆動差による特性差を示す図
【図10】同画像表示装置における部分点灯率に対する発光輝度の駆動差による特性差を示す図
【図11】同画像表示装置における部分点灯率に対する発光効率の駆動差による特性差を示す図
【図12】同画像表示装置において維持パルスの立ち上がり期間と輝度の関係を示す図
【図13】同画像表示装置において維持パルスの立ち上がり期間と発光効率の関係を示す図
【図14】同画像表示装置のフィルター処理部の回路ブロック図
【図15】同画像表示装置において点灯率が10%から30%に変化する場合のフィルター係数「16」とフィルター係数「64」のときの時間に対する点灯率変化を示す図
【図16】同画像表示装置において点灯率が10%から100%に変化する場合のフィルター係数「16」とフィルター係数「64」のときの時間に対する点灯率変化を示す図
【図17】同画像表示装置において点灯率が10%から100%に変化する場合にフィルター係数が点灯率制御されたときの時間に対する輝度差の変化を示す図
【図18】同画像表示装置において点灯率と完全点灯電圧の関係を示す図
【図19】同画像表示装置において点灯率が10%から100%に変化する場合にフィルター係数が点灯率制御されたときの時間に対する点灯率変化を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態における画像表示装置について、図面を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態における画像表示装置に用いるパネルの構造を示す分解斜視図である。パネル1は、ガラス製の前面基板2と背面基板3とを対向配置して、その間に放電空間を形成するように構成されている。前面基板2の放電空間側の面上には表示電極を構成する走査電極4と維持電極5とが互いに平行に対をなして複数形成されている。そして、走査電極4および維持電極5を覆うように誘電体層6が形成され、誘電体層6上には保護層7が形成されている。
【0016】
また、背面基板3の放電空間側の面上には絶縁体層8で覆われた複数のデータ電極9が形成され、さらに絶縁体層8上にデータ電極9と平行して隔壁10が設けられている。また、絶縁体層8の表面および隔壁10の側面に蛍光体層11が設けられている。そして、走査電極4および維持電極5とデータ電極9とが交差する方向に前面基板2と背面基板3とを対向配置しており、その間に形成される放電空間には、放電ガスとして、たとえばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。
【0017】
図2は同パネルの電極配列図である。行方向にn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極4)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極5)が交互に配列され、列方向にm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極9)が配列されている。そして、1対の走査電極SCiおよび維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。なお、図1、図2に示したように、走査電極4と維持電極5とは互いに平行に対をなして形成されているために走査電極4と維持電極5との間に大きな電極間容量が存在する。
【0018】
図3は本発明の実施の形態における画像表示装置の回路ブロック図である。この画像表示装置は、パネル1、データ電極駆動回路12、走査電極駆動回路13、維持電極駆動回路14、駆動パターン選択部15を内部に備えた制御信号発生回路16、画像信号処理回路17、全セル点灯率検出回路18、平均値検出回路19を内部に備えた部分点灯率検出回路20、フィルター処理部21および電源回路(図示せず)を備えている。
【0019】
画像信号処理回路17は、画像信号sigである赤の原色信号sigR、緑の原色信号sigG、青の原色信号sigBをサブフィールド毎の画像データに変換する。データ電極駆動回路12はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し各データ電極D1〜Dmを駆動する。制御信号発生回路16は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各種の制御信号を発生し、各回路ブロックへ供給している。走査電極駆動回路13は制御信号にもとづいて走査電極SC1〜SCnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路14は制御信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnに駆動電圧波形を供給する。ここで、走査電極駆動回路13は後述する維持パルスを発生させるための維持パルス発生器100を備え、維持電極駆動回路14にも同様に維持パルス発生器200を備えている。
【0020】
全セル点灯率検出回路18は、サブフィールド毎の画像データにもとづき、パネル1の画像表示領域における全ての放電セルの数に対する点灯するべき放電セルの数の割合を「全セル点灯率」としてサブフィールド毎に検出する。そして、検出した全セル点灯率を表す信号を制御信号発生回路16に出力する。
【0021】
部分点灯率検出回路20は、パネル1の画像表示領域を複数の領域に分け、サブフィールド毎の画像データにもとづき、領域毎かつサブフィールド毎に、各領域の放電セルの数に対する点灯するべき放電セルの数の割合を「部分点灯率」として検出する。なお、部分点灯率検出回路20は、例えば、走査電極4を駆動するIC(以下、「走査IC」と呼称する)の1つに接続された複数の走査電極4で構成される領域を1つの領域として部分点灯率を検出する構成であってもよいが、本実施の形態では、1対の表示電極対50を1つの領域と見なして部分点灯率を検出するものとする。
【0022】
また、部分点灯率検出回路20は、平均値検出回路19を有する。平均値検出回路19は、部分点灯率検出回路20において検出した部分点灯率をあらかじめ定めた所定の閾値(以下、「部分点灯率閾値」と呼称する)と比較する。部分点灯率閾値のとりえる数値範囲は0%から100%とする。そして、部分点灯率が部分点灯率閾値以下になる表示電極対50を除く表示電極対50、すなわち部分点灯率が部分点灯率閾値を超える表示電極対50における部分点灯率の平均値をサブフィールド毎に算出し、その結果を表す信号を制御信号発生回路16に出力する。例えば、パネル1に設けた表示電極対50が1080対であり、あるサブフィールドにおいて200対の表示電極対50の部分点灯率が部分点灯率閾値以下であれば、そのサブフィールドでは、部分点灯率が部分点灯率閾値よりも大きい880対の表示電極対50に関して部分点灯率の平均値を算出する。
【0023】
なお、本実施の形態では、部分点灯率閾値を「0%」に設定するものとする。これは、点灯するべき放電セルが実質的に発生しない表示電極対50を、部分点灯率の平均値を算出する際に除外するためである。
【0024】
しかし、本発明は、部分点灯率閾値が何ら上述した数値に限定されるものではない。部分点灯率閾値は、パネル1の特性やプラズマディスプレイ装置300の仕様等にもとづいて最適な値に設定することが望ましい。
【0025】
なお、本実施の形態においては、全セル点灯率および部分点灯率を算出する際に百分率表示のための正規化演算を行う構成とするが、必ずしも正規化演算を行う必要はなく、例えば、算出した点灯するべき放電セル(以下、点灯するべき放電セルを「点灯セル」、点灯させない放電セルを「非点灯セル」とも記す)の数を全セル点灯率および部分点灯率として用いる構成であってもかまわない。部分点灯率検出回路20で検出された各サブフィールドの点灯率はフィルター処理部21に送られ、フィルター処理部21で画面表示の切替わりによる点灯率変化に応じて、フィールド毎の点灯率変化の速度を変えるように制御信号発生回路16に送る点灯率が選択される。
【0026】
制御信号発生回路16は、水平同期信号H、垂直同期信号V、全セル点灯率検出回路18およびフィルター処理部21からの出力にもとづいて各回路ブロックの動作を制御する各種の制御信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給し、走査電極駆動回路13および維持電極駆動回路14を制御する。
【0027】
次に、パネルを駆動するための駆動電圧波形とその動作について説明する。本発明の実施の形態においては、画像信号の1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間、維持期間を有している。
【0028】
図4は本発明の実施の形態におけるパネルの各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。第1サブフィールドの初期化期間では、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SUnを0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi1(V)から放電開始電圧を超える電圧Vi2(V)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて1回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上に負の壁電圧が蓄えられるとともに維持電極SU1〜SUn上およびデータ電極D1〜Dm上に正の壁電圧が蓄えられる。ここで、電極上の壁電圧とは放電により発生した電荷が、電極を覆う誘電体層や蛍光体層上などに蓄積した壁電荷により生じる電圧を指す。その後、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Vh(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて2回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上の壁電圧および維持電極SU1〜SUn上の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
【0029】
続く書込み期間では、走査電極SC1〜SCnを一旦Vr(V)に保持する。次に、データ電極D1〜Dmのうちパネルの1行目の走査電極SC1と維持電極SU1からなる電極対に表示すべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vd(V)を印加するとともに、1行目の走査電極SC1に走査パルス電圧Va(V)を印加する。このときデータ電極Dkと走査電極SC1との交差部の電圧は、外部印加電圧(Vd−Va)(V)にデータ電極Dk上の壁電圧および走査電極SC1上の壁電圧の大きさが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、この放電セルの走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。このようにして、1行目に表示すべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、正の書込みパルス電圧Vd(V)を印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
【0030】
続く維持期間で維持パルスを走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に印加して、書込み放電による壁電荷形成を行った放電セルを選択的に放電させ発光させる。このときの維持パルスの波形およびそれに伴う放電の詳細については後述することとして、ここでは維持期間における動作の概要を説明する。
【0031】
まず、維持電極SU1〜SUnを0(V)に戻し、走査電極SC1〜SCnに正の維持パルス電圧Vs(V)を印加する。このとき書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCi上と維持電極SUi上との間の電圧は維持パルス電圧Vs(V)に走査電極SCi上および維持電極SUi上の壁電圧の大きさが加算されたものとなり放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。このときデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧状態が保持される。続いて、走査電極SC1〜SCnを0(V)に戻し、維持電極SU1〜SUnに正の維持パルス電圧Vs(V)を印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との間の電圧が放電開始電圧を超えるので再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。こうして維持期間における維持動作が終了する。続く第2サブフィールドにおける初期化期間、書込み期間、維持期間の動作も第1サブフィールドにおける動作とほぼ同様のため、説明を省略する。
【0032】
次に、維持パルス発生器100、維持パルス発生器200の詳細について説明する。図5は、本発明の実施の形態における画像表示装置の維持パルス発生器100、200の回路図である。維持パルス発生器100は電力回収部110と電圧クランプ部120とから構成されている。電力回収部110は、電力回収用のコンデンサC10、スイッチング素子Q11、Q12、逆流防止用のダイオードD11、D12、電力回収用のインダクタL10を有している。電圧クランプ部120は、電圧値がVs(V)である電源VS、スイッチング素子Q13、Q14を有している。そしてこれらの電力回収部110および電圧クランプ部120はパネル1の電極間容量Cpの一端である走査電極4に接続されている。コンデンサC10は電極間容量Cpに比べて十分に大きい容量を持ち、電力回収部110の電源として働く。
【0033】
維持パルス発生器200も維持パルス発生器100と同様の回路構成で、電力回収部210と電圧クランプ部220を有しているが、維持パルス発生器200の出力はパネル1の電極間容量Cpの維持電極5に接続されている。電力回収部210も、電力回収用のコンデンサC20、スイッチング素子Q21、Q22、逆流防止用のダイオードD21、D22、電力回収用のインダクタL20を有し、電圧クランプ部220も電圧値がVs(V)である電源VS、スイッチング素子Q23、Q24を有している。
【0034】
次に、第1の維持パルスについて詳細に説明する。図6は本発明の実施の形態における画像表示装置の維持パルス発生器100、200の維持パルスを発生させる動作を説明するためのタイミングチャートである。維持パルスの1周期をT1〜T6で示した6つの期間に分割し、それぞれの期間について説明する。なお、走査電極4に印加される維持パルスと維持電極5に印加される維持パルスとは同じ波形であるため、期間T4から期間T6までの動作は期間T1から期間T3までの動作で走査電極4と維持電極5とを入れ替えた動作に等しい。
【0035】
(期間T1)
時刻t1でスイッチング素子Q12をONにする。すると走査電極4側の電荷はインダクタL10、ダイオードD12、スイッチング素子Q12を通してコンデンサC10に流れ始め、走査電極4の電圧が下がり始める。
【0036】
(期間T2)
インダクタL10と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、共振周期の1/2の時間経過後の時刻t2において走査電極4の電圧は0(V)付近まで低下する。しかし共振回路の抵抗成分による電力損失のため、走査電極4の電圧は0(V)にまでは下がりきらない。そして時刻t2でスイッチング素子Q14をONする。すると走査電極4はスイッチング素子Q14を通じて直接に接地されるため、走査電極4の電圧は強制的に0(V)に低下する。
【0037】
さらに、時刻t2でスイッチング素子Q21をONにする。すると、電力回収用のコンデンサC20からスイッチング素子Q21、ダイオードD21、インダクタL20を通して電流が流れはじめ、維持電極5の電圧が上がり始める。
【0038】
(期間T3)
インダクタL20と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、共振周期の1/2の時間経過後の時刻t3において維持電極5の電圧はVs(V)付近まで上昇するが、共振回路の抵抗成分による電力損失のため、維持電極5の電圧はVs(V)にまでは上がりきらない。そして、時刻t3でスイッチング素子Q23をONする。すると維持電極5はスイッチング素子Q23を通して直接に電源VSへ接続されるため、維持電極5の電圧は強制的にVs(V)まで上昇する。すると、書込み放電を起こした放電セルでは走査電極4−維持電極5間の電圧が放電開始電圧を超え維持放電が発生する。
【0039】
なお、スイッチング素子Q12は時刻t2以降、時刻t5までにOFFすればよく、スイッチング素子Q21は時刻t3以降、時刻t4までにOFFすればよい。また、維持パルス発生器100、200の出力インピーダンスを下げるために、スイッチング素子Q14は時刻t5直前に、スイッチング素子Q23は時刻t4直前にOFFするのが望ましい。
【0040】
(期間T4)
時刻t4でスイッチング素子Q22をONにする。すると維持電極5側の電荷はインダクタL20、ダイオードD22、スイッチング素子Q22を通してコンデンサC20に流れ始め、維持電極5の電圧が下がり始める。
【0041】
(期間T5)
維持電極5の電圧は、インダクタL20と電極間容量Cpとの共振周期の1/2の時間経過後の時刻t5において維持電極5の電圧は0(V)付近まで低下する。時刻t5でスイッチング素子Q24をONする。すると維持電極5はスイッチング素子Q24を通じて直接に接地されるため、維持電極5の電圧は強制的に0(V)に低下する。
【0042】
さらに、時刻t5でスイッチング素子Q11をONにする。すると、電力回収用のコンデンサC10からスイッチング素子Q11、ダイオードD11、インダクタL10を通して電流が流れはじめ、走査電極4の電圧が上がり始める。
【0043】
(期間T6)
インダクタL10と電極間容量Cpとは共振回路を形成しているので、共振周期の1/2の時間経過後の時刻t6において走査電極4の電圧はVs(V)付近まで上昇する。そして、時刻t6でスイッチング素子Q13をONする。すると走査電極4はスイッチング素子Q13を通して直接に電源VSへ接続されるため、走査電極4の電圧は強制的にVs(V)まで上昇する。すると、書込み放電を起こした放電セルでは走査電極4−維持電極5間の電圧が放電開始電圧を超え維持放電が発生する。
【0044】
なお、スイッチング素子Q22は時刻t5以降、時刻t2までにOFFすればよく、スイッチング素子Q11は時刻t6以降、時刻t1までにOFFすればよい。また、スイッチング素子Q24は時刻t2直前に、スイッチング素子Q13は時刻t1直前にOFFするのが望ましい。
【0045】
また、本発明の実施の形態においては、電力回収部110、210の回収効率が大きくなるように、インダクタL10またはL20と電極間容量Cpとが形成する共振回路の共振周期の1/2、すなわち期間T1、T2、T4、T5の時間を900nsと長く設定して、維持パルス発生時の維持パルス発生器100、200の無効電力を大幅に削減している。その反面、期間T3、T6の時間が短くなり、維持放電を継続させるために必要な維持パルス電圧が高くなる傾向があり、特に点灯率が高くなり放電電流が多くなるとこの傾向が顕著になる。
【0046】
上述した実施の形態では、大画面化、高精細化されて駆動インピーダンスが増大したパネル1では、駆動波形にリンギング等の波形歪が生じやすい。そのため、放電のばらつきが大きくなりやすく、輝度ムラと呼ばれる輝度のばらつきを生じやすい。このとき、例えば、維持パルスを立ち上げるために電力回収部110、電力回収部210を動作させる期間(以下、「立ち上がり期間」と呼称する)および維持パルスを立ち下げるために電力回収部110、電力回収部210を動作させる期間(以下、「立ち下がり期間」と呼称する)の少なくとも一方の長さを変更するとともに、走査電極SCnと維持電極SUnのそれぞれに維持パルスの立ち上がり期間と立ち下がり期間とを重複させる期間(以下、「重複期間」と呼称する)を表示画像に応じて変更することで、パネル1における消費電力を削減しつつ、維持放電を安定に発生することが可能である。
【0047】
そこで、本実施の形態では、「立ち上がり期間」および「立ち下がり期間」の少なくとも一方の長さが異なる複数の維持パルスを発生するとともに、発生する維持パルスの組み合わせ、および「重複期間」の長さを異ならせた複数の駆動パターン(例えば、第1駆動パターン、第2駆動パターン、第3駆動パターン、第4駆動パターン、第5駆動パターン、第6駆動パターンの6つの駆動パターン)を設定し、表示画像に応じて適応的にそれらを切替えて維持パルスを発生する構成とする。
【0048】
図3に示した本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置300の駆動パターン選択部15は、上述した複数の駆動パターンのうちのいずれか1つを、全セル点灯率検出回路18および部分点灯率検出回路20からの出力にもとづき選択する。そして、制御信号発生回路16は、その選択結果にもとづく維持パルスを発生するように、維持パルス発生器100、維持パルス発生器200を制御するための制御信号を出力する。
【0049】
図7は、本発明の実施の形態における全セル点灯率および部分点灯率の平均値と複数の駆動パターンの切替えとの関係の一例を示す図である。本実施の形態では、図7に示すように、部分点灯率の平均値が小さく(例えば、20%未満)、かつ全セル点灯率が低い(例えば、20%未満)サブフィールドでは、第1駆動パターンで維持パルスを発生する。この第1駆動パターンは、発光輝度の向上を目的とした駆動パターンである。第1駆動パターンでは、全セル点灯率が低く、かつ部分点灯率の平均値が小さいサブフィールドにおいて、すなわち、点灯領域が少なく、パネル1の駆動負荷が低いサブフィールドにおいて、発光輝度の向上を図るものである。
【0050】
部分点灯率の平均値が大きく(例えば、60%以上)、かつ全セル点灯率が高い(例えば、60%以上)サブフィールドでは、第2駆動パターンで維持パルスを発生する。この第2駆動パターンは、発光効率改善を目的とした駆動パターンである。第2駆動パターンでは、全セル点灯率が高く、かつ部分点灯率の平均値が大きいサブフィールドにおいて、すなわち、点灯領域が全体的に広く生じ、パネル1の駆動負荷が全体的に高いときに、発光効率を改善して消費電力の低減を図るものである。
【0051】
また、部分点灯率の平均値が大きく(例えば、60%以上)、かつ全セル点灯率が所定の範囲内にある(例えば、35%以上かつ60%未満)サブフィールドでは、第3駆動パターンで維持パルスを発生する。この第3駆動パターンは、発光輝度の向上と発光効率の改善とを目的とした駆動パターンである。第3駆動パターンでは、全セル点灯率がやや高くかつ部分点灯率の平均値が大きいサブフィールドにおいて、すなわち画像表示領域の一部の領域が点灯領域となり、パネル1の駆動負荷が部分的に高いときに、発光輝度の向上を図りつつ、発光効率を改善して消費電力の低減を図るものである。
【0052】
また、部分点灯率の平均値が大きく(例えば、60%以上)、かつ全セル点灯率が低い(例えば、35%未満)サブフィールドでは、第4駆動パターンで維持パルスを発生する。この第4駆動パターンは、発光効率を改善する効果を高めつつ発光輝度を向上することを目的とした駆動パターンである。第4駆動パターンでは、全セル点灯率が低くかつ部分点灯率の平均値が大きいサブフィールドにおいて、すなわち画像表示領域の一部に点灯領域が集中し、パネル1の駆動負荷が部分的に非常に高いときに、発光輝度の向上を図りつつ、発光効率を改善して消費電力の低減を図るものである。
【0053】
また、部分点灯率の平均値が中位(例えば、35%以上かつ60%未満)で、かつ全セル点灯率も中位(例えば、35%以上かつ60%未満)のサブフィールドでは、第5駆動パターンで維持パルスを発生する。この第5駆動パターンは、発光輝度を向上する効果を高めつつ発光効率を改善することを目的とした駆動パターンである。第5駆動パターンでは、全セル点灯率が中位でかつ部分点灯率の平均値も中位のサブフィールドにおいて、すなわち、画像表示領域において点灯領域がやや分散し、パネル1における駆動負荷の高い領域が第3駆動パターンを適用するときほどは偏っておらず、かつ駆動負荷が全体的に中位のときに、発光効率を改善して消費電力の低減を図りつつ、発光輝度の向上を図るものである。
【0054】
また、部分点灯率の平均値が中位(例えば、20%以上かつ60%未満)で、かつ全セル点灯率が低い(例えば、35%未満)サブフィールドでは、第6駆動パターンで維持パルスを発生する。一般的な動画像を表示する際に、最も頻繁に発生するのがこの点灯状態である。そして、この第6駆動パターンは、発光効率の改善効果を最も高めることを目的とした駆動パターンである。第6駆動パターンでは、全セル点灯率が低くかつ部分点灯率の平均値が中位のサブフィールドにおいて、すなわち、画像表示領域において点灯領域が分散し、パネル1における駆動負荷の高い領域が第4駆動パターンを適用するときほどは偏っておらず、かつ駆動負荷が全体的に低いときに、発光効率を改善する効果を高めて消費電力の低減を図るものである。
【0055】
上記のように点灯率に応じて駆動を切替える根拠となる点灯率に対する完全点灯電圧、発光輝度、発光効率の特性の一例として、図8を用いて説明する。図8の斜線で示した部分は維持放電を発生させない非点灯セルの分布を表し、斜線のない白抜きの部分は点灯セルの分布を表す。
【0056】
図8(a)に示した縦方向の点灯率が10%で横方向の点灯率が10%の点灯状態から横方向の点灯率のみを順次大きくし、図8(b)に示した縦方向の点灯率が10%で横方向の点灯率が100%の点灯状態まで変化する場合において、駆動が「駆動パターン1」→「駆動パターン6」→「駆動パターン4」の順に切替わっていく場合と、駆動を切替えず全点灯率において駆動パターン1、駆動パターン4、駆動パターン6の各駆動を単一で設定した場合の点灯率に対する完全点灯電圧、発光輝度、発光効率の特性を図9、図10、図11にそれぞれ示した。
【0057】
駆動パターン1は全点灯率領域で発光輝度が高く特に部分点灯率の平均値が20%以下では他の駆動に比べて非常に高い発光輝度が得られるが、部分点灯率の平均値が20%以上では発光効率が低くなるので、駆動パターン1は部分点灯率の平均値が20%未満で設定するのが望ましい。駆動パターン4は部分点灯率の平均値が80%以上の横負荷が大きくなる領域で完全点灯電圧の上昇を抑制すると同時に、輝度、発光効率も大きく低下させることなく維持することができるので、駆動パターン4は部分点灯率の平均値が80%以上で設定するのが望ましい。駆動パターン6は全点灯率領域で高い発光効率が得られるが、完全点灯電圧が大きくなり、点灯率によっては電源電圧Vを超過するため、駆動パターン6は高い発光効率が得られかつ完全点灯電圧の上昇も大きくない部分点灯率の平均値が20%以上60%未満で設定するのが望ましい。
【0058】
このように駆動パターンと点灯率によって完全点灯電圧、輝度、発光効率などの特性が変化するため、全セル点灯率と部分点灯率の平均値に応じて駆動パターンを切替えることで点灯率に対する完全点灯電圧、輝度、発光効率特性の最適化が可能となり、表示品質と発光効率を向上させることができる。しかし、駆動パターン1と駆動パターン6の輝度差が大きく、表示画像の点灯率変化に応じて駆動を切替えると駆動パターン1と駆動パターン6が切替わる際に視認可能な大きな輝度差が生じ問題となる。これは、維持期間において発生させる維持パルスは「立ち上がり期間」、「立ち下がり期間」、「重複期間」の長さが異なる複数の維持パルスを組合せ、15発を1周期としており、その組合せにより輝度、発光効率、表示品質を最適化しているのだが、駆動パターン1と駆動パターン6では「立ち上がり期間」において大きな差があるためである。
【0059】
駆動パターン1は発光輝度を高めることを主目的として、図12に示したように「立ち上がり期間」が短くなれば発光輝度が高くなるため、駆動パターンの中で最も短い「立ち上がり期間」を用いており、本発明の実施の形態においては表示品質との両立のため400〜550nsの「立ち上がり期間」を用いている。これに対して、駆動パターン6は発光効率を向上させることを主目的として、図13に示したように「立ち上がり期間」が長くなれば発光効率が向上するため、駆動パターンの中で最も長い「立ち上がり期間」を用いており、表示品質との両立のため、維持パルス15発周期中2、3発は450nsを用いているが、その他の維持パルスは700ns以上の「立ち上がり期間」を用いている。この駆動パターン1と6の駆動形態の差により輝度差が生じている。
【0060】
そこで本発明のプラズマディスプレイ装置では、フィルター処理により輝度差を抑制することを可能にした。そこで以下に駆動パターンの切替わり時の輝度差抑制のためのフィルター処理を行うフィルター処理部について説明する。図14に本発明の実施の形態におけるフィルター処理部21の動作を示す。フィルター処理部21はフィルター係数の異なる第一のフィルター22と第二のフィルター23、メモリ24、点灯率大小比較部25、閾値比較部26、セレクター27で構成されている。
【0061】
まず、図14の第一のフィルター22、第二のフィルター23部分のフィルター処理の基本動作について説明する。フィルターに送られる部分点灯率検出回路20で算出された表示画像の部分点灯率をXn、メモリ24に記憶された1フィールド前にフィルター処理部から制御信号発生回路16へ送られた部分点灯率をXn−1、第一のフィルター22、第二のフィルター23のフィルター係数をK1、K2、第一のフィルター22、第二のフィルター23からセレクター27に送られる部分点灯率をそれぞれ部分点灯率Xk1、部分点灯率Xk2とすると、フィルターでは下記の計算が行われ、部分点灯率Xk1、部分点灯率Xk2を決定する。
【0062】
XKm=〔{Xn−1×(128−Km)}+{Xn×Km}〕/128(m=1,2)
つまり、表示画像が切替わる際に部分点灯率検出回路20からフィルターに送られる点灯率がそのまま制御信号発生回路16へ送られ次フィールドの点灯率となるのではなく、制御信号発生回路16へ送られる点灯率はフィルター処理部21を通して徐々に変化し、数フィールド期間後に部分点灯率検出回路20からフィルター処理部21に送られた点灯率になるように変化する。フィルター係数Kmが大きくなれば時間に対する点灯率変化が急になり、フィルター係数Kmが小さくなれば時間に対する点灯率変化が緩やかになる。
【0063】
表示画像の切替わりにより点灯率が10%から30%に変化する場合と点灯率が10%から100%に変化する場合においてフィルター係数が16とフィルター係数が64の場合の点灯率の時間変化を図15、図16にそれぞれ示した。
【0064】
図15に示したように点灯率が10%から30%に変化する場合はフィルター係数Kを64より小さい16にすると点灯率変化が緩やかになり、また図17に示したのは点灯率が10%から100%に変化する場合の輝度差の変化であるが、点灯率が10%から30%に変化する場合も同様に、フィルタ係数が16ではフィルタ係数が64より点灯率変化の前後の輝度差が小さくなる。特に点灯率が40%以下の低点灯率領域では視認可能な輝度差となるので輝度差の低減が必要となるため、フィルター係数は16にするのが望ましい。
【0065】
フィルター係数を64から16にすると図18に示したように点灯率に対する完全点灯電圧が高くなるが、低点灯率領域では電源電圧Vに対して十分低く、電源電圧Vを超えることはないので表示画像が破綻することはなく問題はない。一方で図16に示したように点灯率が10%から100%に変化する場合もフィルター係数Kを64より小さい16にすると点灯率変化が緩やかになり、図17に示したように点灯率変化の前後の輝度差が小さくなる。しかし図18に示したように点灯率70%以上で完全点灯電圧が高くなり電源電圧Vを超過し表示画像が破綻する。このため輝度差が視認できない程度の輝度差となる点灯率40%以上の高点灯率領域ではフィルター係数は64とするのが望ましい。
【0066】
そこで本発明では、点灯率40%以下の低点灯率領域では表示画面切替わり時の輝度差を出来る限り抑制するためにフィルター係数が小さいフィルターを使用し、同時に点灯率40%以上の高点灯率領域で完全点灯電圧が電源電圧を超過し画像表示が破綻することがないようにするためにフィルター係数が大きいフィルターを使用するためにフィルター処理部に異なるフィルター係数をもつフィルターを2個設け、表示画像の点灯率変化の大きさと変化前の点灯率によってフィルター係数を制御した。
【0067】
次に図14に示した本発明のフィルター処理部のフィルター係数の点灯率制御の方法について説明する。点灯率大小比較部25において、部分点灯率検出回路20で算出された部分点灯率Xnとメモリに格納されている1フィールド前に制御信号発生回路16へ送られた部分点灯率Xn−1の大小を比較する。部分点灯率Xnが部分点灯率Xn−1より小さいときは、フィルター係数を小さくして点灯率変化を緩やかにしても完全点灯電圧が電源電圧Vを超過することはなく表示は破綻しないので、輝度差抑制のためセレクター27においてフィルター係数が小さい第二のフィルター23から送られてくる部分点灯率Xk2を部分点灯率Xとして選択し、制御信号発生回路16に送る。一方、部分点灯率Xnが部分点灯率Xn−1より大きいときは、フィルター係数を小さくして点灯率変化を緩やかにすると完全点灯電圧が電源電圧Vを超過して表示が破綻する場合があるので、表示破綻せずに輝度差抑制するために部分点灯率Xn−1と閾値とを比較し、部分点灯率Xn−1が閾値より大きい場合はセレクター27において第一のフィルター22から送られてくる部分点灯率Xk1を制御信号発生回路16に送る部分点灯率Xとして選択し、部分点灯率Xn−1が閾値より小さい場合はセレクター27において第二のフィルターから送られてくる部分点灯率Xk2を制御信号発生回路16に送る部分点灯率Xとして選択し、制御信号発生回路16に送る。
【0068】
本発明の実施の形態の画像表示装置において、図18に示したようにフィルター係数が16の場合は部分点灯率70%以上で完全点灯電圧が電源電圧を超過するので閾値を部分点灯率40%とするのが望ましく、部分点灯率40%以下のときフィルター係数を16、部分点灯率40%以上のときフィルター係数を64となるように点灯率に応じてフィルター係数を制御すれば完全点灯電圧が電源電圧を超過することはなくなる。
【0069】
図19は本発明の実施の形態の画像表示装置において表示画像の点灯率が10%から100%へ変化した場合に部分点灯率40%以下のときフィルター係数を16、部分点灯率40%以上のときフィルター係数を64としたときの部分点灯率の時間変化を示したものである。しかし、本発明では、フィルター係数が何ら上述した数値に限定されるものではない。フィルター係数は、パネル1の特性やプラズマディスプレイ装置300の仕様等にもとづいて部分点灯率40%以下のときのフィルター係数が部分点灯率40%以上のときのフィルター係数よりも小さくなるという条件の下、最適な値に設定することが望ましい。
【0070】
このように表示画像の点灯率変化の大きさと変化前の点灯率によってフィルター係数を制御することで、表示画像を破綻させることなく表示画像の切替わりによる点灯率変化の前後で生じる輝度差を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の画像表示装置は、連続した2つの放電を安定して発生させるとともに点灯率に応じた放電制御を行い、発光効率の改善と画像表示品質の向上が可能となるので、パネルを用いた画像表示装置等として有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 パネル
12 データ電極駆動回路
13 走査電極駆動回路
14 維持電極駆動回路
15 駆動パターン選択部
16 制御信号発生回路
17 画像信号処理回路
18 全セル点灯率検出回路
19 平均値検出回路
20 部分点灯率検出回路
21 フィルター処理部
22 第一のフィルター
23 第二のフィルター
24 メモリ
25 点灯率大小比較部
26 閾値比較部
27 セレクター
100、200 維持パルス発生器
110、210 電力回収部
120、220 電圧クランプ部
300 プラズマディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の表示電極を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルと、1フィールド期間を初期化期間、書込み期間および維持期間を有する複数のサブフィールドに分割して画像を前記プラズマディスプレイに表示するプラズマディスプレイ装置であって、
前記維持期間において前記表示電極間に印加される電圧の変化時に維持放電を発生させる維持パルスを表示電極間に印加するための維持パルス発生部と、
表示すべき画像信号に基づき放電セルの点灯率を算出する点灯率算出回路と、
算出された点灯率と1フィールド前の点灯率を比較し、点灯率変化の時間を制御するフィルター処理部とを備え、
前記フィルター処理部にはフィルター係数の異なる複数のフィルターと、1フィールド前の点灯率を記憶するメモリと、前記点灯率算出回路で算出された表示画像の点灯率と1フィールド前の点灯率を比較する点灯率大小比較部とを有し、前記点灯率大小比較部が1フィールド前の点灯率に対して表示画像の点灯率が大きいと判断する場合に前記フィルター係数の大きさを切替えることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記フィルター処理部にフィルター係数を切替える点灯率の閾値を設け、前記変化前の点灯率が前記閾値未満の場合には、前記閾値以上の場合よりもフィルター係数を小さくして点灯率を緩やかに変化させることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−109290(P2013−109290A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256223(P2011−256223)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】