説明

プラズマ処理装置及び温度測定方法

【課題】プラズマ処理装置の載置台や上部電極に孔を設けることなく、低コヒーレンス干渉計を利用して処理室内の温度測定対象物の温度を測定することができ、より精度良くかつ均一に基板のプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置及び温度測定方法を提供する。
【解決手段】光源側窓の外側に光源側コリメータを配置するとともに受光側窓の外側に受光側コリメータを配置し、光源側コリメータから射出された測定光が光源側窓を透過し、温度測定対象物の表面に斜めに照射され、反射された測定光が受光側窓を透過し、受光側コリメータに入射するようにして処理室内の温度測定対象物の温度を低コヒーレンス干渉計を利用して測定可能とされたプラズマ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板例えば半導体ウエハや液晶表示装置用基板等を、プラズマを用いて処理するプラズマ処理装置及び温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置により処理される基板、例えば半導体ウエハや液晶表示装置用基板の温度を正確に測定することは、成膜やエッチングなど種々の処理の結果により半導体ウエハや液晶表示装置用基板上に形成される膜やホールなどの形状、物性等を正確にコントロールする点からも極めて重要である。このため、例えば抵抗温度計や、基板裏面の温度を測定する蛍光式温度計等を利用した計測法等の様々な方法によって半導体ウエハや液晶表示装置用基板の温度を計測することが従来から行われている。
【0003】
近年では、上述したような従来の温度計測方法では困難だった基板の温度を直接計測することができる低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術が知られている。さらに、上記の低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術において、第1スプリッタによって光源からの光を温度測定用の測定光と参照光とに分け、さらに、分けられた測定光を第2スプリッタによってn個の測定光に分けてn個の測定光をn個の測定ポイントへ照射し、これらのn個の測定光の反射光と、参照光反射手段で反射された参照光の反射光との干渉を測定し、複数の測定ポイントの温度を同時に測定できるようにした技術も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このような技術によれば、簡単な構成で複数の測定ポイントの温度を一度に測定できる。また、上記の低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術において、基板を載置する載置台、上部電極等に光を通す穴を開け、温度測定対象物の表面に垂直に測定光を照射して温度を測定する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
なお、真空成膜装置の覗き窓を介してレーザ光を照射し、散乱反射されて生ずるスペックル・パターンをイメージセンサで受像してスペックル・パターンの移動量から基板温度を求める技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この技術は、低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−112826号公報
【特許文献2】特開2010−199526号公報
【特許文献3】特開平10−19690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術を用いてプラズマ処理中の処理室内の温度測定対象物の温度を測定する場合、基板を載置する載置台や上部電極に光を通す穴を開け、温度測定対象物の表面に垂直に測定光を照射して温度を測定している。しかしながら、このようにプラズマ処理装置の載置台や上部電極に孔を設けると、プラズマ処理の均一性に悪影響を与える虞がある。
【0007】
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたもので、プラズマ処理装置の載置台や上部電極に孔を設けることなく、低コヒーレンス干渉計を利用して処理室内の温度測定対象物の温度を測定することができ、より精度良くかつ均一に基板のプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置及び温度測定方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラズマ処理装置の一態様は、基板を収容してプラズマにより処理するための処理室と、前記処理室内に設けられ、基板が載置される載置台と、前記処理室内に設けられ、前記載置台と対向する上部電極と、前記処理室内に、前記基板の周囲を囲むように設けられたフォーカスリングと、前記処理室の壁部の対向する位置に設けられ、前記処理室の内外とで光が通過可能な一対の光源側窓及び受光側窓と、光源と、前記光源からの光を測定光と参照光とに分けるためのスプリッタと、前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と、前記測定光を前記処理室内の温度測定対象物に照射するための光源側光ファイバ及び当該光源側光ファイバの出口部分に設けられた光源側コリメータと、前記温度測定対象物から反射する測定光を受光するための受光側光ファイバ及び当該受光側光ファイバの入口部分に設けられた受光側コリメータと、前記温度測定対象物から反射する測定光と前記参照光反射手段から反射する参照光との干渉を測定するための光検出器と、を有する温度測定手段と、を具備したプラズマ処理装置であって、前記光源側窓の外側に前記光源側コリメータを配置するとともに前記受光側窓の外側に前記受光側コリメータを配置し、前記光源側コリメータから射出された測定光が前記光源側窓を透過し、前記温度測定対象物の表面に斜めに照射され、反射された測定光が前記受光側窓を透過し、前記受光側コリメータに入射するようにして前記温度測定対象物の温度を測定可能とされたことを特徴とする。
【0009】
本発明の温度測定方法の一態様は、基板を収容してプラズマにより処理するための処理室内に設けられた温度測定対象物の温度を測定する温度測定方法であって、前記処理室の対向する壁部に、前記処理室の内外とで光が透過可能な一対の光源側窓及び受光側窓を設け、光源と、前記光源からの光を測定光と参照光とに分けるためのスプリッタと、前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と、前記測定光を前記処理室内の温度測定対象物に照射するための光源側光ファイバ及び当該光源側光ファイバの出口部分に設けられた光源側コリメータと、前記温度測定対象物から反射する測定光を受光するための受光側光ファイバ及び当該受光側光ファイバの入口部分に設けられた受光側コリメータと、前記温度測定対象物から反射する測定光と前記参照光反射手段から反射する参照光との干渉を測定するための光検出器と、を有する温度測定手段の前記光源側コリメータを前記光源側窓の外側に配置するとともに、前記受光側コリメータを前記受光側窓の外側に配置し、前記光源側コリメータから射出された測定光が前記光源側窓を透過し、前記温度測定対象物の表面に斜めに照射され、反射された測定光が前記受光側窓を透過し、前記受光側コリメータに入射するようにして前記温度測定対象物の温度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラズマ処理装置の載置台や上部電極に孔を設けることなく、低コヒーレンス干渉計を利用して処理室内の温度測定対象物の温度を測定することができ、より精度良くかつ均一に基板のプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置及び温度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態にかかるプラズマ処理装置の温度測定装置の構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態にかかるプラズマ処理装置の処理室の構成を模式的に示す図。
【図3】本発明の実施形態にかかるプラズマ処理装置の処理室の構成を模式的に示す図。
【図4】測定光の反射の状態を説明するための図。
【図5】測定光の反射の状態を説明するための図。
【図6】干渉波形の例を説明するための図。
【図7】光路長差及びビームのずれと入射角度との関係を示すグラフ。
【図8】光路長差及びビームのずれと入射角度との関係を示すグラフ。
【図9】光路長差及びビームのずれと入射角度との関係を示すグラフ。
【図10】シリコンの屈折率と温度との関係を示すグラフ。
【図11】光路長差及びビームのずれと屈折率との関係を示すグラフ。
【図12】光路長差及びビームのずれと屈折率との関係を示すグラフ。
【図13】光路長差及びビームのずれと屈折率との関係を示すグラフ。
【図14】測定光の反射の状態を説明するための図。
【図15】干渉波形の例を示すグラフ。
【図16】干渉波形の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかるプラズマ処理装置の温度測定装置100の構成を示すものであり、図2,3はプラズマ処理装置1の処理室2の構成を模式的に示すものである。
【0014】
図2,3に示すように、処理室2内には、半導体ウエハWを載置するための載置台3が設けられている。この載置台3の上面には、半導体ウエハWを吸着するための図示しない静電チャックが設けられている。また、載置台3の上方には、載置台3と対向するように、上部電極4が配設されており、下部電極としての載置台3と上部電極4とによって、一対の対向電極が構成されている。載置台3と上部電極4の少なくともどちらか一方、例えば載置台3には、図示しない高周波電源が接続され、この高周波電源から印加される高周波電力により載置台3と上部電極4の間の空間で処理ガスのプラズマを発生させるようになっている。載置台3の上面には、半導体ウエハWの周囲を囲むように、シリコン等からなるフォーカスリング5が配設されている。
【0015】
処理室2の壁部の対向する位置には、光源側窓6と受光側窓7が設けられており、光源側窓6の外側には、図1に示す温度測定装置100の光源側コリメータ21が配設されている。また、受光側窓7の外側には、温度測定装置100の受光側コリメータ22が配設されている。そして、温度測定対象物、例えば、半導体ウエハW、上部電極4、フォーカスリング5の表面に、光源側コリメータ21から斜めに測定光を照射し、この測定光の反射光を受光側コリメータ22によって受光するようになっている。なお、図2は、半導体ウエハWに斜めに測定光を照射して半導体ウエハWの温度を測定する場合を示し、図3は、上部電極4に斜めに測定光を照射して上部電極4の温度を測定する場合を示している。
【0016】
図1に示すように、温度測定装置100は、温度測定のための測定光を発生させるための光源110と、この光源110からの光を温度測定用の測定光と参照光とに分けるためのスプリッタ120と、スプリッタ120によって分けられた測定光を導出するとともに、この測定光の反射光を導入するためのカプラー130と、上記スプリッタ120からの参照光を反射するための参照光反射手段140と、参照光反射手段140から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段150と、測定光の反射光及び参照光の反射光を検出しこれらの干渉を測定するための光検出器160とを備えている。
【0017】
光路長変化手段150は、例えば参照ミラーなどで構成される参照光反射手段140を参照光の入射方向に平行な一方向へ移動させるためのリニアステージ151、サーボモータ152、参照光反射手段140の位置を検出するためのレーザ干渉計153等から構成されている。このように、参照ミラー等の参照光反射手段140を一方向へ駆動させることにより、参照ミラー等の参照光反射手段140から反射する参照光の光路長を変化させることができる。サーボモータ152は、コンピュータ等からなるコントローラ170から、モータコントローラ173、モータドライバ174を介して制御される。また、レーザ干渉計153からの信号は、A/D変換器172でデジタル信号に変換されてコントローラ170に入力される。
【0018】
光源110としては、測定光と参照光との干渉が測定できれば、任意の光を使用することが可能である。半導体ウエハWの温度測定を行う場合には、少なくとも半導体ウエハWの表面と裏面との間の距離(通常は800〜1500μm程度)からの反射光が干渉を生じない程度の光が好ましい。具体的には例えば低コヒーレンス光を用いることが好ましい。低コヒーレンス光とは、コヒーレンス長の短い光をいう。低コヒーレンス光の中心波長は例えば0.3〜20μmが好ましく、更に0.5〜5μmがより好ましい。また、コヒーレンス長としては、例えば0.1〜100μmが好ましく、更に3μm以下がより好ましい。このような低コヒーレンス光を光源110として使用することにより、余計な干渉による障害を回避でき、半導体ウエハWの表面又は内部層からの反射光に基づく参照光との干渉を容易に測定することができる。
【0019】
上記低コヒーレンス光を使用した光源としては、例えばSLD(Super Luminescent Diode)、LED、高輝度ランプ(タングステンランプ、キセノンランプなど)、超広帯域波長光源等を使用することができる。これらの低コヒーレンス光源の中でも、図1に示した輝度の高いSLD(波長、例えば1300nm)を光源110として用いることが好ましい。
【0020】
スプリッタ120としては、例えば光ファイバカプラーを用いることができるが、これに限定されるものではなく、他のスプリッタを用いてもよい。また、カプラー130としては、例えば光ファイバカプラーを用いることができるが、これに限定されるものではなく、他のカプラーを用いてもよい。
【0021】
参照光反射手段140は、例えば参照ミラーにより構成される。参照ミラーとしては例えばコーナーキューブプリズム、平面ミラー等などが適用可能である。これらの中でも、反射光の入射光との平行性の観点からは、コーナーキューブプリズムを用いることが好ましい。但し、参照光を反射できれば、上記のものに限られず、例えばディレーラインなどで構成してもよい。
【0022】
光検出器160としては、低価格性、コンパクト性を考慮すれば、例えばフォトダイオードを用いて構成することが好ましい。具体的には例えばSiフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、Geフォトダイオードなどを用いたPD(Photo Detector)により構成する。但し、温度測定対象物からの測定光と参照光反射手段140からの参照光との干渉を測定できれば、上記のものに限られず、例えばアバランシェフォトダイオード、光電子増倍管などを用いて光検出器160を構成してもよい。光検出器160の検出信号は、増幅器171を介してA/D変換器172に入力され、デジタル信号に変換されてコントローラ170によって処理される。
【0023】
スプリッタ120からの参照光は、光ファイバ及びコリメータ28を介して、参照光反射手段140へ照射する参照光照射位置まで伝送されるようになっている。また、スプリッタ120からの測定光は、カプラー130、光ファイバ23及び光源側コリメータ21を介して、光源側窓6(図2,3参照)の外側の温度測定対象物へ照射する測定光照射位置まで伝送されるようになっている。そして、図2,3に示すように、光源側窓6の外側から温度測定対象物、例えば、半導体ウエハW、上部電極4、フォーカスリング5の表面に、斜めに測定光を照射するようになっている。
【0024】
温度測定対象物からの測定光の反射光は、受光側窓7の外側の受光側コリメータ22によって受光され、光ファイバ24、カプラー130、スプリッタ120を介して光検出器160に入射する。これとともに、参照光反射手段140で反射した参照光の反射光は、コリメータ28によって受光され、スプリッタ120を介して光検出器160に入射する。そして、光検出器160にて、入射した測定光の反射光と参照光の反射光との干渉波を検出し、この干渉波によって温度測定対象物の温度を検出する。
【0025】
このように、本実施形態では、光源側窓6及び受光側窓7を用いて、処理室2の外側から温度測定対象物である半導体ウエハW、上部電極4、フォーカスリング5等に斜めに測定光を照射し、受光して温度を測定する。したがって、従来の低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術のように、温度測定対象物である半導体ウエハW、上部電極4、フォーカスリング5等に垂直に測定光を照射するための光導入部を載置台3や上部電極4に配設する必要が無い。これによって、半導体ウエハWの処理の均一性が低下することを抑制することができる。
【0026】
上記構成のプラズマ処理装置1では、図4に示すように、温度測定対象物、例えば半導体ウエハWに向けて照射された温度測定用の測定光は、半導体ウエハWの表面で反射されるとともに、半導体ウエハWの裏面側で反射され、これらの反射光と参照光との干渉波が検出される。
【0027】
上記のように温度測定対象物に入射角度θで斜めに測定光を照射してその反射光を検出する場合、図4に示すように、表面で反射した測定光と裏面側で反射した測定光の光路が距離cだけずれる。このため、受光側コリメータ22は、距離cずれているこれらの測定光を検出可能な口径Dを必要とする。
【0028】
また、図5に示すように、温度測定対象物の厚さをd、屈折率をnとした場合、表面での反射光Aと裏面での反射光Bの光路長差Δは、
Δ=2nb−a
但し、
a=(2dSinθ)/(n−Sinθ)1/2
b=nd/(n−Sinθ)1/2
となる。したがって、光路長差Δは、
Δ=2nb−a=2d(n−Sinθ)1/2
となる。なお、垂直入射方式の場合θ=0なので、Δ=2ndとなる。したがって、参照光を反射する参照光反射手段140を移動した場合、図6のグラフに示すように、参照光反射手段140の移動距離がΔ/2毎に干渉波形が表れる。
【0029】
また、表面での反射光Aと裏面での反射光Bのずれcは、
c=(2dSinθ・Cosθ)/(n−Sinθ)1/2
で表される。θ=0ならば、c=0となり、表面での反射光と裏面での反射光は重なる。
【0030】
図7〜9は、縦軸を上記した光路長差Δ(mm)及びビームのずれc(mm)、横軸を入射角度θ(deg)としてこれらの関係を示したものである。図7は、n=3.6、d=750μmの場合(Siウエハ等)、図8は、n=3.6、d=4mmの場合(Siフォーカスリング等)、図9は、n=3.6、d=10mmの場合(Si上部電極等)を示している。
【0031】
一方、Siの屈折率の変化は、次のように表される。
N(λ)=[3.35+(0.22/λ)]+[6.05/λ1/2−1.64]×10−4
この式から、光源の波長1.31μmの光に対する屈折率の温度依存性を計算すると、縦軸を屈折率、横軸を温度とした図10のグラフに示すようになる。図10のグラフに示されるように、室温から500℃までで、屈折率は5%増加する。
【0032】
屈折率が5%増加する間の光路長差Δとビームのずれcの変化は、縦軸を光路長差Δ及びビームのずれc、横軸を屈折率nとした図11〜13のグラフに示すようになる。なお、図11は、d=750μmの場合、図12は、d=4mmの場合、図13は、d=10mmの場合を示している。図11〜13のグラフに示されるように、屈折率増加で光路長差Δは増加するが、ビームのずれcは減少する。したがって、測定時の最も低い温度におけるビームのずれcの値で受光側コリメータ22の口径Dを決定すればよい。
【0033】
図14に示すように、温度測定対象物に対して測定光を斜めに照射した場合、入射面から入射して裏面側で反射した測定光が、さらに入射面の内側で反射した後裏面側で反射して入射面から導出される光の成分がある。この場合、入射面の外側面で反射した測定光と温度測定対象物の内側で3回反射して導出される光のずれは2cとなる。受光側コリメータ22でこの測定光まで受光するためには、口径Dが2c以上必要となる。
【0034】
温度測定対象物が半導体ウエハWの場合、n=3.6、厚さ750μmとすると、cの最大値が0.25mm、測定光のビーム径が1mmならば、受光側コリメータ22の口径は、D=1.25mm以上となる。また、2cとする場合は、D=1.50mm以上となる。
【0035】
温度測定対象物がフォーカスリングの場合、n=3.6、厚さ4mmとすると、cの最大値が1.2mm、測定光のビーム径が1mmならば、受光側コリメータ22の口径は、D=2.2mm以上となる。2cの場合は、D=3.4mm以上となる。
【0036】
温度測定対象物が上部電極の場合、n=3.6、厚さ10mmとすると、cの最大値が3mm、測定光のビーム径が1mmならば、受光側コリメータの口径は、D=4mm以上となる。2c必要な場合は、D=7mm以上となる。このような口径のコリメータは市販のもので十分対応することができる。
【0037】
上記の温度測定装置100によって半導体ウエハW等の温度測定を行う際は、温度測定に先立って、温度測定対象物である半導体ウエハW等の初期厚さ測定を行う。この時、図6に示したような波形が得られ、図6に示したピークの間隔として、半導体ウエハW等の初期厚さが得られる。そして、半導体ウエハW等の温度は、この初期厚さに対する厚さの変化、つまり、図6に示したピークの間隔の変化によって検出する。
【0038】
ここで、光源110としては、上述したような低コヒーレンス光源を用いている。低コヒーレンス光源によれば、光源110からの光のコヒーレンス長が短いため、通常は測定光の光路長と参照光の光路長とが一致した場所で強く干渉が起こり、それ以外の場所では干渉は実質的に低減するという特質がある。このため、参照光反射手段140を移動させ、参照光の光路長を変化させることにより、温度測定対象物の表面及び裏面の他、内部にさらに層があればその各層についても、これらの屈折率差によって反射した測定光と参照光が干渉する。
【0039】
図15,16は、縦軸を振幅、横軸を参照光反射手段移動距離として、測定光を温度測定対象物に斜めに照射して実際に干渉波を検出した際の信号を示している。図15は、θが30度の場合であり、図16は、θが80度の場合である。
【0040】
実際の温度測定では、温度測定装置100の光源側コリメータ21及び受光側コリメータ22を、プラズマ処理装置1の光源側窓6及び受光側窓7の外側に組付けた際に、温度測定対象物に対する測定光の入射角度θが決まるので、組付け後に予めその入射角度θに対する光路長の温度較正データを取得し、データベースとして持っておく。そして、そのデータベースを元に、半導体ウエハW、上部電極4、フォーカスリング5等の温度測定対象物の光路長から温度測定対象物の温度を算出する。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0042】
2……処理室、3……載置台、4……上部電極、5…フォーカスリング、6……光源側窓、7……受光側窓、21……光源側コリメータ、22……受光側コリメータ、23,24……光ファイバ、100……温度測定装置、110……光源、120……スプリッタ、140……参照光反射手段、150……光路長変化手段、160……光検出器、W……半導体ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容してプラズマにより処理するための処理室と、
前記処理室内に設けられ、基板が載置される載置台と、
前記処理室内に設けられ、前記載置台と対向する上部電極と、
前記処理室内に、前記基板の周囲を囲むように設けられたフォーカスリングと、
前記処理室の壁部の対向する位置に設けられ、前記処理室の内外とで光が通過可能な一対の光源側窓及び受光側窓と、
光源と、前記光源からの光を測定光と参照光とに分けるためのスプリッタと、前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と、前記測定光を前記処理室内の温度測定対象物に照射するための光源側光ファイバ及び当該光源側光ファイバの出口部分に設けられた光源側コリメータと、前記温度測定対象物から反射する測定光を受光するための受光側光ファイバ及び当該受光側光ファイバの入口部分に設けられた受光側コリメータと、前記温度測定対象物から反射する測定光と前記参照光反射手段から反射する参照光との干渉を測定するための光検出器と、を有する温度測定手段と、
を具備したプラズマ処理装置であって、
前記光源側窓の外側に前記光源側コリメータを配置するとともに前記受光側窓の外側に前記受光側コリメータを配置し、前記光源側コリメータから射出された測定光が前記光源側窓を透過し、前記温度測定対象物の表面に斜めに照射され、反射された測定光が前記受光側窓を透過し、前記受光側コリメータに入射するようにして前記温度測定対象物の温度を測定可能とされた
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記温度測定対象物が、前記基板、前記上部電極、前記フォーカスリングのいずれかであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラズマ処理装置であって、
前記処理室内の前記温度測定対象物に対して、予め前記測定光を照射し、反射された測定光を検出して光路長の温度較正データを得てデータベースに格納し、当該データベースに格納された温度較正データに基づいて前記温度測定対象物の温度を算出する
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
基板を収容してプラズマにより処理するための処理室内に設けられた温度測定対象物の温度を測定する温度測定方法であって、
前記処理室の対向する壁部に、前記処理室の内外とで光が透過可能な一対の光源側窓及び受光側窓を設け、
光源と、前記光源からの光を測定光と参照光とに分けるためのスプリッタと、前記スプリッタからの参照光を反射するための参照光反射手段と、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と、前記測定光を前記処理室内の温度測定対象物に照射するための光源側光ファイバ及び当該光源側光ファイバの出口部分に設けられた光源側コリメータと、前記温度測定対象物から反射する測定光を受光するための受光側光ファイバ及び当該受光側光ファイバの入口部分に設けられた受光側コリメータと、前記温度測定対象物から反射する測定光と前記参照光反射手段から反射する参照光との干渉を測定するための光検出器と、を有する温度測定手段の前記光源側コリメータを前記光源側窓の外側に配置するとともに、
前記受光側コリメータを前記受光側窓の外側に配置し、
前記光源側コリメータから射出された測定光が前記光源側窓を透過し、前記温度測定対象物の表面に斜めに照射され、反射された測定光が前記受光側窓を透過し、前記受光側コリメータに入射するようにして前記温度測定対象物の温度を測定する
ことを特徴とする温度測定方法。
【請求項5】
請求項4記載の温度測定方法であって、
前記温度測定対象物が、前記基板、前記処理室内に設けられ前記基板が載置される載置台と対向する上部電極、前記処理室内に前記基板の周囲を囲むように設けられたフォーカスリングのいずれかであることを特徴とする温度測定方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の温度測定方法であって、
前記処理室内の前記温度測定対象物に対して、予め前記測定光を照射し、反射された測定光を検出して光路長の温度較正データを得てデータベースに格納し、当該データベースに格納された温度較正データに基づいて前記温度測定対象物の温度を算出する
ことを特徴とする温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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