説明

プラズマ発生装置

【課題】電極棒を空気によって効率よく冷却することができ、電極棒に印加する電圧が低下した場合であっても、十分な量の放電が行え、電極棒の放電が行われる面を適宜変更することができる発生装置を提供する。
【解決手段】第一電極棒11と第二電極棒12との間に電圧を印加して放電を起してプラズマを発生させるプラズマ発生装置1であって、第一電極棒11及び第二電極棒12を、それぞれ高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成して、互いの外周面が対向するように配置し、第一支持部材13及び第二支持部材14を、それぞれ高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成し、反応容器15の軸線回りに移動させて、反応容器15に対して所定の位置に保持可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電を起して、プラズマを発生させるプラズマ発生装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無声放電によりプラズマを発生させる方法が知られている(例えば特許文献1参照)。無声放電法は、一対の電極間にガラス板、マイカ又はセラミックス等の誘電体を挟み、酸素含有気体(例えば空気)を前記電極間に平行して流しながら、前記一対の電極に交流高電圧を供給して、対電極間で垂直に放電する方法である。
【0003】
この無声放電によるプラズマ発生方法は、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、又はオゾン等の活性酸素を発生させる方法として使用される。無声放電によって発生したプラズマ中の自由電子は、酸素分子と衝突して酸素を原子へ解離し、又は励起酸素分子を生成させる。酸素分子及び生成された励起酸素分子は、他の酸素分子と反応して活性酸素を発生させる。
【0004】
また、前記電極としてステンレス等の金属によって構成された電極棒からなる電極ユニットを備えるプラズマ発生装置が知られている(例えば特許文献2参照)。このプラズマ発生装置は、互いに平行で等間隔に配設して電極棒間で放電を行うことにより、放電領域を広範囲とし、温度が上昇するのを防止している。
【特許文献1】特開2008−251521号公報
【特許文献2】特開平7−157302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無声放電によりプラズマを発生させる方法を使用した場合、電極間での放電によって電極が非常に高温となるため、電極を冷却しなければ、電極が溶融してしまう可能性があった。しかし、電極を空気により冷却する場合には、冷却効率が悪かった。また、冷却水による冷却では、漏電による電力のロスが問題となっていた。
【0006】
また、電極棒を使用した場合、従来の実施形態のように、電極棒を固定したときには、電極棒間の距離を調整することができない。そのため、電極棒に印加する電圧が低下した場合には、電極間で十分な量の放電が行われず、プラズマを発生させることができなかった。
【0007】
また、電極棒の放電が行われる面では、高温により溶融が激しくなる。そのため、放電が行われる面が常に一定の方向を向いている場合には、電極棒の寿命が短くなっていた。
【0008】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、電極棒を空気によって効率よく冷却して、電極棒の長寿命化を図ることができ、電極棒に印加する電圧が低下した場合であっても、十分な量の放電を行い、プラズマを発生させることができるプラズマ発生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、一対又は複数対の電極棒と、前記各一対の電極棒のうち、一方の電極棒を取り付ける第一支持部材と、前記各一対の電極棒のうち、他方の電極棒を取り付ける第二支持部材と、両開口部をそれぞれ前記第一支持部材と前記第二支持部材とにより閉塞し、前記電極棒を収容する筒状の容器と、前記各一対の電極棒に電圧を印加する電圧供給装置と、を備え、電圧を前記各一対の電極棒間に印加して放電を起してプラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、各一対の電極棒を、それぞれ高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成して、互いの外周面が対向するように配置し、前記第一支持部材及び前記第二支持部材を、それぞれ高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成し、前記容器の軸線回りに移動させて、前記容器に対して任意の位置に保持可能とするものである。
【0011】
請求項2においては、前記容器を円筒状に構成し、前記第一支持部材及び第二支持部材の本体部を断面視円状に構成し、前記電極棒を、第一支持部材又は第二支持部材の軸心を中心とした同心円状に配置するものである。
【0012】
請求項3においては、前記各電極棒、前記第一支持部材及び前記第二支持部材を、炭素を含む高密度複合体で構成するものである。
【0013】
請求項4においては、前記各一対の電極棒に印加する電圧を交流電圧から直流電圧に変換する機能を、前記電圧供給装置に備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
即ち、請求項1においては、プラズマ発生時に生じる電極棒の熱が第一支持部材及び第二支持部材を介して外部へ放散されることとなる。したがって、電極棒を効率良く冷却することができるとともに、電極棒の長寿命化を図ることができる。また、第一支持部材及び第二支持部材を移動させて、各一対の電極棒間の距離を調節することが可能となる。したがって、電極棒に印加する電圧が低下した場合であっても、各一対の電極棒間の距離を調節することによって、各一対の電極棒間で放電を十分に行い、プラズマを安定して発生させることができる。
【0016】
請求項2においては、第一支持部材又は第二支持部材を前記容器の軸線周りに回動させることにより、電極棒の放電が行われる面をそれまで放電が行われていた面と異なる面にすることができ、電極棒の長寿命化を図ることができる。
【0017】
請求項3においては、各一対の電極棒、第一支持部材及び第二支持部材が高い熱伝導性を有することとなり、プラズマ発生時に生じる電極棒の熱が第一支持部材及び第二支持部材を介して外部へ放散されることとなる。したがって、電極棒をさらに効率良く冷却することができるとともに、電極棒の耐久性を向上させることができる。しかも、電極棒の耐腐蝕性を、電極棒を金属で構成した場合よりも向上させることができる。
【0018】
請求項4においては、交流電圧を直流電圧に変換したのち、一方の電極棒に印加し、他方の電極棒を接地することが可能となる。したがって、プラズマ発生装置の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ発生装置の全体的な構成を示した右側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るプラズマ発生装置の右側面一部断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るプラズマ発生装置の図2におけるA−A矢視断面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るプラズマ発生装置の第一支持部材の構成を示した図。(a)正面図。(b)右側面図。(c)背面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るプラズマ発生装置の容器内の状態を示す図2におけるA−A矢視断面図。(a)第一支持部材を容器に対して任意の回動位置で保持した状態を示す図。(b)第一支持部材を(a)の状態から一方向に回動させたときの状態を示す図。(c)第一支持部材を(a)の状態から逆方向に回動させたときの状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、プラズマ発生装置1の全体構成について図1から図3を用いて説明する。
ここで、図1において、紙面左方向を後方向とし、紙面右方向を前方向とし、また、紙面手前方向を右方向とし、紙面奥方向を左方向とする。また、紙面上下方向を上下方向とする。
【0021】
図1から図3に示すように、プラズマ発生装置1は、複数対の電極棒を備える。本実施形態においては、プラズマ発生装置1は、二つの一対の電極棒11・12を備える。プラズマ発生装置1は、さらに軸心方向を前後方向とする円柱状の第一支持部材13と、軸心方向を前後方向とする円柱状の第二支持部材14と、軸心方向を前後方向とする円筒状の反応容器15と、各一対の電極棒11・12に電圧を印加する電圧供給装置16と、を備える。
【0022】
各一対の電極棒11・12は、それぞれ円柱状に形成されている。
一方の電極棒である第一電極棒11は、その長手方向を前後方向として、第一支持部材13及び反応容器15の軸心方向と平行に配置され、その基端部、即ち後端部で第一支持部材13に取り付けられる。
他方の電極棒である第二電極棒12は、その長手方向を前後方向として、第二支持部材14及び反応容器15の軸心方向と平行に配置され、その基端部、即ち前端部で第二支持部材14に取り付けられている。
【0023】
第一電極棒11・11は、図3に示すように、正面視で第一支持部材13の軸心を中心とした同心円上に位置するように、第一支持部材13の前方に設けられている。二つの第一電極棒11と第一電極棒11とは、互いの間の角度が180度となるように、言い換えれば互いの位置が正面視で第一支持部材13の軸心を中心として点対称となるように配置されている。
また、第二電極棒12・12は、図3に示すように、正面視で第二支持部材14の軸心を中心とした同心円上に位置するように、第二支持部材14の後方に設けられている。二つの第二電極棒12と第二電極棒12とは、互いの間の角度が180度となるように、言い換えれば互いの位置が背面視で第二支持部材14の軸心を中心として点対称となるように配置されている。
【0024】
そして、各対における第一電極棒11と第二電極棒12とが隣り合って配置され、互いの外周面の一部が対向するように、反応容器15内に収容されている。
ここで、第一電極棒11は、その先端部、即ち前端部が第二電極棒12の前後中途部付近に位置するように、第一支持部材13から前方へ向かって延出されている。
第二電極棒12は、その先端部、即ち後端部が第一電極棒11の前後中途部付近に位置するように、第二支持部材14から後方へ向かって延出されている。
【0025】
なお、一対の電極棒11・12の数は、特に限定するものではなく、一つ以上であればよい。例えば、一対の電極棒11・12の数が三つである場合、第一電極棒11・11・11は正面視で第一支持部材13の軸心を中心とした同心円上に位置するように設けられ、隣り合う第一電極棒11と第一電極棒11との間の角度が120度となるように配置される。
【0026】
第一電極棒11及び第二電極棒12は、高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成している。これにより、第一電極棒11及び第二電極棒12をタングステンなどの材料で構成する場合と比較して、熱伝導性が高くなっている。また、高密度複合体は加工が容易なので、電極棒の太さや長さを自由に構成することができる。
また、前記高密度複合体は、炭素を含む材質である。そのため、第一電極棒11及び第二電極棒12の過酸化水素、ヒドロキシラジカル、又はオゾン等の活性酸素に対する耐腐蝕性を、電極棒を金属で構成した場合よりも向上させることができる。
【0027】
各第一電極棒11には、図2に示すように、誘電筒21が外嵌されている。誘電筒21は、内径が第一電極棒11の直径とほぼ同一の筒状に形成されている。誘電筒21は、絶縁体である物質によって構成されており、本実施形態においては石英ガラスによって構成されている。
【0028】
第一支持部材13は、図2及び図4に示すように、円柱状に構成された本体部13aと、本体部13aの長手方向中途部に設けられた鍔部13bとから構成されている。鍔部13bは、円環状に形成されて、本体部13aの外周面から径方向へ突出されている。
また、第一支持部材13の軸心部には、反応容器15内から外部へ気体を排出するための気体排出孔13cが前後方向に貫通して設けられている。また、本体部13aの鍔部13bよりも前側、即ち反応容器15に差し入れる側の外周面には、溝13dが環状に形成されている。溝13dには、ゴム等で構成されたOリング22が外嵌可能とされている。
また、第一支持部材13には、第一電極棒11の直径とほぼ同一の直径を有する挿入孔13f・13fが軸心方向と平行に第一電極棒11と同数形成されている。挿入孔13f・13fは、正面視で第一支持部材13の軸心を中心とした同心円上に配置される。さらに、図4に示すように、第一支持部材13には、固定螺子28を挿入するための固定螺子孔13gが、各挿入孔13fと連通するように、各挿入孔13fと直交する方向、即ち第一支持部材13の半径方向に形成されている。第一電極棒11は、基端部側から挿入孔13f・13fに差し込まれて、固定螺子孔13gに螺合された固定螺子28によって固定される。これにより、第一電極棒11が第一支持部材13に取り付けられて支持される。
【0029】
また、図2に示すように、第二支持部材14は、第一支持部材13と同様に円柱状に構成された本体部14aと、本体部14aの長手方向中途部に設けられた鍔部14bとから構成されている。鍔部14bは、円環状に形成されて、本体部14aの外周面から径方向へ突出されている。
また、第一支持部材14の軸心部には、反応容器15内から外部へ気体を排出するための気体導入孔14cが前後方向に貫通して設けられている。
また、第二支持部材14の溝14d、挿入孔14f、及び固定螺子孔(図示せず)はそれぞれ第一支持部材の溝13d、挿入孔13f、及び固定螺子孔13gと同様の構成であるため説明を省略する。
【0030】
第一支持部材13及び第二支持部材14は、高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成されている。これにより、タングステンなどの材料で構成する場合と比較して、熱伝導性が高くなっている。また、第一電極棒11及び第二電極棒12も同種の高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成しているので、プラズマ発生時に第一電極棒11及び第二電極棒12が放電により高温となったときには、第一電極棒11及び第二電極棒12の熱が第一支持部材13及び第二支持部材14を介して外部へ放散されることとなる。
また、高密度複合体は加工が容易なので、第一支持部材13及び第二支持部材14の太さや長さを自由に構成することができる。
【0031】
また、前記高密度複合体は、炭素を含む材質である。そのため、第一電極棒11及び第二電極棒12の活性酸素に対する耐腐蝕性を、電極棒を金属で構成した場合よりも向上させることができる。
【0032】
反応容器15は、図1、図2、及び図3に示すように、円筒状に形成され、高い絶縁耐力を有する部材、例えば石英ガラスによって構成されている。反応容器15の内径は、第一支持部材13及び第二支持部材14の本体部13a・14aの直径とほぼ同一に設定されている。また、反応容器15の外径は、第一支持部材13及び第二支持部材14の本体部13a・14aの直径と鍔部13b・14bの突出幅とを足し合わしたものとほぼ同一に設定されている。
反応容器は、その軸心方向を前後方向として配置されている。反応容器15の後側開口部に第一支持部材13における本体部13aの鍔部13bよりも前側部分が軸心を一致させて後方から差し込まれて、後側開口部の端面に第一支持部材13の鍔部13bの前面が当接される。反応容器15の前側開口部に第一支持部材13における本体部14aの鍔部14bよりも後側部分が軸心を一致させて前方から差し込まれて、前側開口部の端面に第二支持部材14の鍔部14bの後面が当接される。これにより、反応容器15の両開口部が第一支持部材13及び第二支持部材14にて閉塞される。
また、反応容器15の軸心方向の長さは、第一電極棒11及び第二電極棒12の長さよりも長く構成されている。第一支持部材13及び第二支持部材14がそれぞれ反応容器15の開口部を閉塞した状態において、第一電極棒11及び第二電極棒12が反応容器15内にその内周面と接しないように収容される。
【0033】
電圧供給装置16は、図2に示すように、第一電極棒及び第二電極棒12に電圧を印加する装置であり、交流電圧から直流パルス電圧に変換する交流/直流変換部16aを有する。
【0034】
プラズマ発生装置1は、図1、図2、及び図3に示すように、プラズマ発生装置支持部材30に固定されている。
プラズマ発生装置支持部材30は、地面等に載置される載置板部31と、載置板部31から略垂直に立設された一対の立ち上がり部32F・32Rとから構成されている。
【0035】
載置板部31は、平面視長方形状の板で構成されており、長方形の四角部分において、地面等と螺子35・35によって連結固定されている。また、載置板部31は導電体で構成されている。
【0036】
各立ち上がり部32F・32Rは、四角柱状に形成されており、立ち上がり部32Fは絶縁体で構成されており、立ち上がり部32Rは、導電体で構成されている。
【0037】
電圧供給装置16は第一電極棒11及び第二電極棒12へ電圧を印加するための導線25を有しており、該導線25は第一電極棒11を支持する第一支持部材13に接続されている。また、第二電極棒12を支持する第二支持部材14は、導電体である立ち上がり部32Fと接しており、さらに、立ち上がり部32Fは導電体である載置板部31と接触しており、載置板部31は接地されている。
このように構成することにより、電圧供給装置16は、直流パルス電圧を第一電極棒11に印加し、印加された第一電極棒11と接地された第二電極棒12との間で放電を起させ。プラズマを発生させる。このように構成することにより、プラズマ発生装置1の安全性を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、導線25を第一支持部材13に接続し、第二支持部材14を接地させたが、これに限定するものではない。導線25を第二支持部材14に接続し、第一支持部材13を接地させる場合には、立ち上がり部32Rを絶縁体で構成し、立ち上がり部32Fを、導電体で構成する。
【0039】
一対の立ち上がり部32F・32Rは、載置板部31に対して略垂直に立設されている。一対の立ち上がり部32F・32Rは、載置板部31と螺子36・36・・によって連結固定されている。一対の立ち上がり部32F・32Rの間の距離は、反応容器15の長手方向の長さに第一支持部材13の鍔部13bの厚さ(前後幅)及び第二支持部材14の鍔部14bの厚さ(前後幅)を足し合わせた長さと略等しい。
一対の立ち上がり部32F・32Rの長手方向中途部であって短手方向中心部に、支持孔32a・32aが設けられている。支持孔32a・32aは、第一支持部材13及び第二支持部材14の本体部13a・14aの外形と略同一に構成されている。
【0040】
第一支持部材13における本体部13aの鍔部13bよりも後側部分が、立ち上がり部32Rに設けられた支持孔32aに差し込まれる。支持孔32aは、立ち上がり部32の上端の螺子37・37を締結することにより、孔径を小さくすることができるよう構成されている。
また、第二支持部材14における本体部14aの鍔部14bよりも前側部分が、立ち上がり部32Fに設けられた支持孔32aに差し込まれる。
【0041】
立ち上がり部32F・32Rの左右中心上部には、図3に示すように、締付け調整用の切込み32bが設けられており、切込み32bの下端は支持孔32aと連続している。また、立ち上がり部32F・32Rの上部であって切込み32bの右側には螺子37を挿入するための挿入孔32cが設けられており、前記挿入孔32cと同一軸心上であって切込み32bの左側には螺子37と螺合するための螺子孔32dが設けられている。
このように構成することで、螺子37・37を正面視右側の挿入孔32cから挿入して、螺子孔32dに締結することにより、切込み32bの左右方向の幅が狭まる。そして、この切込み32bの幅の狭まりに伴って、支持孔32aの孔径が小さくなる。
【0042】
立ち上がり部32F・32Rの上端の螺子37・37を締結することにより、本体部13a・14aが締付けられて、第一支持部材13が立ち上がり部32Rに、第二支持部材14が立ち上がり部32Fにそれぞれ固定支持される。また、立ち上がり部32F・32Rの上端の螺子37・37を緩めることにより、第一支持部材13または第二支持部材14のいずれか一方を、反応容器15の軸線回りに回動させることができる。
【0043】
第二支持部材14の気体導入孔14cには、コンプレッサ40からの気体を導入するための導入管41が前側から接続されている。ここで、気体は酸素を含有する気体であり、本実施形態においては、気体は空気である。導入管41の先端は螺子部を有するソケット41aとなっており、第二支持部材14の気体導入孔14c端部にも対応する螺子部14eが設けられている。ソケット41aが気体導入孔14c側の螺子部14eに螺合されて、導入管41が気体導入孔14cに接続される。
【0044】
また、第一支持部材13の気体排出孔13cには、気体を排出するための排出管42が後側から接続されている。排出管42の先端は螺子部を有するソケット42aとなっており、第二支持部材14の気体排出孔13c端部にも対応する螺子部13eが設けられている。ソケット42aが気体排出孔13c側の螺子部13eに螺合されて、排出管42が気体排出孔13cに接続される。
【0045】
次にプラズマ発生装置1におけるプラズマ発生過程、およびこのプラズマの発生により活性酸素を発生させる過程について説明する。ここで、前記活性酸素は強い酸化力を示す化学種であり、例えば、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、又はオゾン等を指す。
まず、図2に示すコンプレッサ40から送り出された圧縮された空気は、導入管41を介して第二支持部材14の気体導入孔14cに至り、ここから反応容器15内へと導かれる。反応容器15内において、空気は第一電極棒11及び第二電極棒12の周囲を通過して、前から後へ流れる。
また、隣り合う第一電極棒11と第二電極棒12との間には、第一電極棒11に外嵌された誘電筒21の壁面が誘電体として位置していることから、第一電極棒11に直流電圧を印加することで、一対の電極間において第一電極棒11の長手方向に対して直交する方向に放電が行われる。この放電により、反応容器15内にプラズマが発生する。
【0046】
この放電により発生したプラズマ中の電子は、反応容器15内を流れている空気に含まれる酸素分子と衝突して、酸素を原子へ解離し、又は励起酸素分子を生成させる。
そして、酸素分子及び励起酸素分子は他の酸素分子と反応して活性酸素を生成する。
【0047】
このようなプラズマ発生方法において、放電に最適な第一電極棒11及び第二電極棒12の間の距離は、印加する直流電圧によって異なる。すなわち、印加する直流電圧が低ければ低いほど、放電に最適な第一電極棒11及び第二電極棒12の間の距離は短くなる。
【0048】
そこで、本実施形態では、第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離を調整可能に構成している。ここで、距離を調整する方法とは、第一支持部材13または第二支持部材14のいずれか一方を反応容器15の軸線回りに回動させて、反応容器15に対して任意の回動位置に保持可能とする方法である。以下、図5を用いて第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離の調整方法について説明する。なお、以下では、第一支持部材13を反応容器15の軸線周りに回動させて、反応容器15に対して所定の回動位置に保持可能とする方法について説明する。
【0049】
図5(a)に示すように、第一支持部材13を反応容器15に対して任意の回動位置で保持した状態において、各対における第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離を、それぞれの軸心間の距離D1で表す。第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離D1は、第一電極棒11に嵌設された誘電筒21が第二電極棒12に接したときに最も短くなって、この誘電筒21の厚さとなる。
【0050】
第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離D1が最適な距離より長くなったとき、言い換えれば、第一電極棒11に印加する直流電圧が図5(a)の状態で最適となる直流電圧と比較して低くなったときには、螺子37・37を緩めて、図5(b)に示すように、第一支持部材13をその軸心を中心として軸線周りに図5(b)の矢印方向(正面視時計回り方向)に回動させる。
第一支持部材13の回動に伴い、第一電極棒11も第一支持部材13の軸心を中心として図5(b)の矢印方向へ回動する。そして、螺子37・37を締付けて、第一支持部材13を所望の回動位置で保持する。これにより、第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離を、放電に最適な距離である距離D2に調整することができる。
この際、正面視同一円周上に第一電極棒11及び第二電極棒12を配置したことから、第一支持部材13の回動により、全対の第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離D1を一度に距離D2に変更調整することが可能となる。
【0051】
また、放電を継続して行った場合には、第一電極棒11、誘電筒21または第二電極棒12が高温により消耗する。主に消耗する部分は放電が行われる部分であり、言い換えれば、互いに向かい合う面が主に消耗する。
そこで、放電を一定時間継続して行った後には、螺子37・37を緩めて、図5(c)に示すように、第一支持部材13をその軸心を中心として軸線周りに図5(c)の矢印方向(正面視反時計回り方向)に回動させる。
第一支持部材13の回動に伴い、一方の対における第一電極棒11も第一支持部材13の軸心を中心として図5(c)の矢印方向へ回動する。そして、螺子37・37を締付けて、第一支持部材13を所望の回動位置で保持する。これにより、この第一電極棒11はこれまで放電を行っていた同対の第二電極棒12とは別の、他方の対における第二電極棒12との間で放電を行う。ここで、第一電極棒11と別の第二電極棒12との間の距離はD3となる。このように構成することにより、第一電極棒11及び誘電筒21は、一定期間の間に同対の第二電極棒12と向かい合っていた面と反対側の面を、別対の第二電極棒12と向かい合わせることが可能となって、面の消耗を抑制しつつ放電を継続して行うことができ、電極棒11・12の長寿命化を図ることができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、反応容器15を円筒で構成し、第一支持部材13の本体部13a及び第二支持部材14の本体部14aを円柱状で形成したが、例えば、反応容器15を断面視多角形の筒で形成し、第一支持部材13の本体部13a及び第二支持部材14の本体部14aを反応容器15の断面内周面と同一形状の多角形で構成することも可能である。このように構成した場合、第一支持部材13及び第二支持部材14は、多角形の頂点に対応する角度(例えば、四角形であれば90度、五角形であれば72度)ずつ、反応容器15の軸線回りに移動させる。
【0053】
以上のように、プラズマ発生装置1は、第一電極棒11及び第二電極棒12と、第一電極棒11を取り付ける第一支持部材13と、第二電極棒12を取り付ける第二支持部材14と、両開口部をそれぞれ第一支持部材13と第二支持部材14とにより閉塞し、第一電極棒11及び第二電極棒12を収容する筒状の反応容器15と、第一電極棒11及び第二電極棒12に電圧を印加する電圧供給装置16と、を備え、電圧を第一電極棒11と第二電極棒12との間に印加して放電を起してプラズマを発生させるプラズマ発生装置1であって、第一電極棒11及び第二電極棒12を、それぞれ高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成して、互いの外周面が対向するように配置し、第一支持部材13及び第二支持部材14を、それぞれ高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成して、反応容器15の軸線回りに移動させて、反応容器15に対して所定の回動位置に保持可能とするものである。
このように構成することにより、プラズマ発生時に生じる第一電極棒11及び第二電極棒12の熱が第一支持部材13及び第二支持部材14を介して外部へ放散されることとなる。したがって、第一電極棒11及び第二電極棒12を効率良く冷却することができるとともに、第一電極棒11及び第二電極棒12の耐久性を向上させることができる。また、第一支持部材13及び第二支持部材14の回動位置を変更して、第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離を調節することが可能となる。したがって、第一電極棒11及び第二電極棒12に印加する電圧が低下した場合であっても、第一電極棒11と第二電極棒12との間の距離を調節することによって、第一電極棒11と第二電極棒12との間で放電を十分に行い、プラズマを安定して発生させることができる。
【0054】
また、反応容器15を円筒状に構成し、第一支持部材13及び第二支持部材14の本体部13a・13bを断面視円状に構成し、電極棒11・12を、第一支持部材13又は第二支持部材14の軸心を中心とした同心円状に配置するものである。
このように構成することにより、第一支持部材13又は第二支持部材14を反応容器15の軸線周りに回動させることにより、電極棒11・12の放電が行われる面をそれまで放電が行われていた面と異なる面にすることができ、電極棒11・12の長寿命化を図ることができる。
【0055】
また、第一電極棒11、第二電極棒12、第一支持部材13及び第二支持部材14を、炭素を含む高密度複合体で構成するものである。
このように構成することにより、第一電極棒11、第二電極棒12、第一支持部材13及び第二支持部材14が高い熱伝導性を有することとなり、プラズマ発生時に生じる第一電極棒11及び第二電極棒12の熱が第一支持部材13及び第二支持部材14を介して外部へ放散されることとなる。したがって、第一電極棒11及び第二電極棒12をさらに効率良く冷却することができるとともに、第一電極棒11及び第二電極棒12の耐久性を向上させることができる。しかも、第一電極棒11及び第二電極棒12の耐腐蝕性を、第一電極棒11及び第二電極棒12を金属で構成した場合よりも向上させることができる。
【0056】
また、第一電極棒11及び第二電極棒12に印加する電圧を交流電圧から直流電圧に変換する機能を、電圧供給装置16に備えるものである。
このように構成することにより、交流電圧を直流電圧に変換したのち、第二電極棒12に印加し、第一電極棒11を接地することが可能となる。したがって、プラズマ発生装置1の安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 プラズマ発生装置
11 第一電極棒
12 第二電極棒
13 第一支持部材
14 第二支持部材
15 反応容器
16 電圧供給装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対又は複数対の電極棒と、
前記各一対の電極棒のうち、一方の電極棒を取り付ける第一支持部材と、
前記各一対の電極棒のうち、他方の電極棒を取り付ける第二支持部材と、
両開口部をそれぞれ前記第一支持部材と前記第二支持部材とにより閉塞し、前記電極棒を収容する筒状の容器と、
前記各一対の電極棒に電圧を印加する電圧供給装置と、を備え、
電圧を前記各一対の電極棒間に印加して放電を起してプラズマを発生させるプラズマ発生装置であって、
各一対の電極棒を、それぞれ高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成して、互いの外周面が対向するように配置し、
前記第一支持部材及び前記第二支持部材を、それぞれ高い熱伝導性を有する高密度複合体で構成し、前記容器の軸線回りに移動させて、前記容器に対して任意の位置に保持可能とすることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記容器を円筒状に構成し、前記第一支持部材及び第二支持部材の本体部を断面視円状に構成し、前記電極棒を、第一支持部材又は第二支持部材の軸心を中心とした同心円状に配置することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記各電極棒、前記第一支持部材及び前記第二支持部材を、炭素を含む高密度複合体で構成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記各一対の電極棒に印加する電圧を交流電圧から直流電圧に変換する機能を、前記電圧供給装置に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプラズマ発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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