説明

プラットフォームサービス提供システム、プラットフォーム装置

【課題】多様な機能をシンクライアント端末で実現させつつも、導入やメンテナンスにかかる費用、時間、手間を極力少なくするシステムを提供する。
【解決手段】 プラットフォームサービス提供システム100は、複数のアプリケーションプログラムを管理するプラットフォーム装置200と、プラットフォーム装置200とはネットワーク回線400によって相互接続されており動作時にプラットフォーム装置200からアプリケーションプログラムをダウンロードして実行するシンクライアント端末300と、を備える。プラットフォーム装置200のサービスコンテンツ群は、複数のユーザーによって共用可能に基本設計された複数のアプリケーションプログラムをサービス提供に先立って予め用意して保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットフォームサービス提供システム、プラットフォーム装置に関する。例えば、クライアント端末およびその周辺装置の機能を必要最小限に限定するとともにプラットフォームサービスを提供するサーバー側に各種のソフトウェア資源を持たせることによって、クライアント端末の処理負担の軽減および小型・軽量化を図るとともに多様なアプリケーションサービスを手間や経費をかけずに効率よくユーザーに提供するプラットフォームサービス提供システムおよびプラットフォーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シンクライアントシステムと呼ばれるクライアントサーバシステムが知られている。これは、クライアント端末側には入出力機能やネットワーク接続機能など必要最小限の機能だけを持たせ、サーバー側にハードウェアやソフトウェア資源を持たせる。そして演算処理等はサーバー側に実行させるなどにより、クライアント端末における処理負担を軽減したり、クライアント端末の小型・軽量化を実現するシステムである。
【0003】
このようなシンクライアントシステムを用いたシステムとしては種々のものが知られている。例えばPOSシステムに適用した例が特許文献1に開示されている。特許文献1では、無線通信手段を有する携帯可能な小型のPOS端末を用いて店舗外でも支払清算処理を行い得るPOSシステムが開示されている。そしてこのPOSシステムは、販売員が店舗外に携行する携帯POS端末と、店舗に据え置きされて注文受付や配達管理を行う店舗POS端末と、携帯POS端末からのデータを会計する会計サーバーと、無線通信によって携帯POS端末と接続されているとともにネットワークを介して店舗POS端末および会計サーバーに接続するウェブサーバーと、を備えて構成されている。
このような構成において、販売員は小型のPOS端末を持って店舗外で接客および商品購入の決済処理をする。携帯POS端末で入金や支払の情報を入力すると、会計等の集計処理が携帯POS端末からの転送データに基づいて会計サーバーによって行われる。このようにシンクライアント端末である携帯POS端末には入出力機能と無線通信機能だけを持たせて、中央の会計サーバーに集計処理を集中させることによって、販売員が身軽に店舗外で接客しながらその場で決済でき、しかも、その決済情報を即座に集計して管理できるという効果を奏する。
しかしながら、このようなシステムを導入するとなると、それぞれの店舗ごとに携帯POS端末、店舗POS端末、会計サーバーおよびウェブサーバーといった大掛かりなITネットワークシステムを導入する必要があり、初期導入コストが多額にかかる。
また、今日のコンピュータシステムではOSバージョンアップやソフトウェアの変更等などが頻繁にあるため、当該POSシステムのアプリケーションの変更やバージョンアップ等のメンテナンスが当然に予定されるところ、メンテナンスのたびに総ての携帯POS端末の仕様を変更したり、極端な場合は総てのシステムを交換したりしていては初期投資以上に経費がかかり、手間もかかる。
【0004】
また、特許文献2には、システムサーバーから一般に利用されている携帯電話機にPOSアプリケーションプログラムをダウンロードし、通常の据え置きタイプのPOS端末で実行可能な支払決済処理を携帯電話POS端末で行う構成が開示されている。
さらに、システムサーバーは、店舗ごとに生成されたPOSアプリケーションソフトを保持しており、各店舗の店舗サーバーが各店舗用のPOSアプリケーションをシステムサーバーから読み出して書き換え、更新し、携帯電話POS端末にはこのように書き換え・更新されたPOSアプリケーションソフトをダウンロードして使用することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−133516号公報
【特許文献2】特開2004−164195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の商品販売のスタイルは非常に多様で複雑化してきている。決済だけを取り上げても、現金決済の他、電子マネー、クレジットカード、デビットカードによる支払いやポイントカードのポイント利用による支払いなどがある。さらに、電子マネーとしては、Edy(登録商標)、SUICA(登録商標)、おサイフケータイ(登録商標)など、多種多様である。
このような状況下において、特許文献1の構成では専用の携帯POS端末を利用することを前提とするため近年の多様な決済方式に対応するように多様な機能を持たせた端末を投入することも可能かとも考えられる。
しかしながら、店舗ごとにシステムを構築する投資費用はさらに高くなり、また、市場で使われる決済方式が変わったり、新たな決済方式が市場に導入されればすぐに時勢に遅れたシステムとなってしまう。
また、新たなポイントサービスや決済方式を導入しようとすれば、端末を総て取り換えたり、システム全体を入れ替えるなど、莫大な費用と手間がかかってしまう。
また、特許文献2では、店舗ごとに必要なPOSアプリケーションを生成して、システムサーバーからPOSアプリケーションプログラムを携帯電話機にダウンロードすることによってサービスを提供するとするが、1つのアプリケーションプログラムの開発には長期の時間がかかるため、申し出を受けてから一つ一つのアプリケーションを店舗ごとに生成していては時機に応じた販売機会を逃してしまう。
さらにいうならば、決済方式のみならず、流通過程などにおいても個々の商品情報を細かく厳密に管理していくことが求められているため、それに適したシステムが求められているが、上記POSシステムで述べたのと同じように、導入やメンテナンスに膨大な費用がかかるため、要求に見合うシステムの導入が困難である。
このような問題に鑑みて、多様な機能をシンクライアント端末で実現させつつも、導入やメンテナンスにかかる費用、時間、手間を極力少なくするシステムが強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラットフォームサービス提供システムは、複数のアプリケーションプログラムを管理するプラットフォーム装置と、前記プラットフォーム装置とはネットワーク回線網によって相互接続されており動作時に前記プラットフォーム装置から前記アプリケーションプログラムをダウンロードして実行するシンクライアント端末と、を備えるプラットフォームサービス提供システムであって、前記プラットフォーム装置は、複数のユーザーによって共用可能に基本設計された複数のアプリケーションプログラムをサービス提供に先立って予め用意して保持しているサービスコンテンツ群と、前記サービスコンテンツ群のアプリケーションプログラムのなかからユーザーごとに前記シンクライアント端末にダウンロードするものを適宜選択した契約に基づいて前記アプリケーションプログラムの利用を管理する管理プログラム群と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成において、プラットフォーム装置は、複数のユーザーで共用可能な複数のアプリケーションプログラムをサービスコンテンツ群に備えている。
これらのアプリケーションプログラムは、ユーザーからの申し出を受けて開発されるものではなく、様々な業種・業態で複数のユーザーが共通に利用できるように汎用性を持ったアプリケーションプログラムとして予め開発されてプラットフォーム装置に格納されているものである。そして、事前のサービス提供契約によってそれぞれのユーザーが利用したいアプリケーションプログラムを選択すると、その情報は管理プログラム群にて管理される。
ユーザーは所定処理を実行したい場合にはプラットフォーム装置からシンクライアント端末に必要なアプリケーションプログラムをダウンロードして実行する。
【0008】
このような構成によれば、プラットフォーム装置側に各種のアプリケーションプログラムが予め用意されているため、ユーザーは自分の事業等に応じて必要なアプリケーションプログラムを選択して利用することができる。
このように必要な時に必要なプログラムだけをプラットフォーム装置に接続して利用することができるので、ユーザー側ではアプリケーションの開発やIT基盤の構築および維持管理などを行う必要がなく、費用や労力をほとんど掛けることなく事業な必要なIT環境を整備することができる。
また、プラットフォーム装置のサービスコンテンツ群としては単一のアプリケーションプログラムではなく、ユーザーが必要に応じて適宜選択できるように複数のアプリケーションプログラムに分けて用意しているので、ユーザーが必要なものだけを随時選択して利用することができ、利用料金もその時々に応じて必要最低限に抑えることができる。
本発明ではプラットフォーム装置側でアプリケーションプログラムを集中管理しているため、アプリケーションプログラムのバージョンアップ等の整備はプラットフォーム事業者がまとめて行うことができ、ユーザーによるメンテナンスの労力負担はほとんどかからないようにできる。
また、プラットフォーム事業者としては、アプリケーションの更新等の場合でもユーザーの事業所まで出張する必要がないため、アップデートしたアプリケーションプログラムの提供サービスを効率よく行うことができる。
【0009】
本発明では、前記プラットフォーム装置のサービスコンテンツ群は、二つ以上の前記アプリケーションプログラムを統合的に運用させる統合運用サービスプログラムを有することが好ましい。
【0010】
このような構成において、ユーザーがサービスコンテンツ群のアプリケーションプログラム群から二つ以上のアプリケーションプログラムを選択して利用する場合、統合運用サービスプログラムによって二つ以上のアプリケーションプログラムを統合的に利用できる。
本発明では、ユーザーの必要に応じて必要なサービスを選択して利用できるように複数のアプリケーションプログラムを用意しているので、必要に応じて個々のアプリケーションプログラムを利用できる利点があるが、個々のアプリケーションプログラムを独立に用いるだけでは不便な場合もありうる。
特に、特定用途ごとにアプリケーションプログラムを選択可能に細かく用意した場合にはこのような不便さがかえってサービスの低下につながることになる。
この点、本発明では、分離独立して用意してあるアプリケーションプログラムであってもユーザーが統合的な利用を望む場合には統合運用サービスプログラムによってデータの共有等の統合的利用が可能になる。
例えば、決済アプリケーションプログラムとポイント管理アプリケーションプログラムとが別個に用意されている場合に、決済金額をポイントに反映させたり、ポイント分を決済金額から値引きするなどのデータのやり取りをアプリケーション間で行わせてより高度のサービス提供を可能とする。
【0011】
本発明では、前記シンクライアント端末は、入力機能および出力機能のうち少なくともいずれかの機能を有する複数の周辺デバイスと接続されており、一の周辺デバイスにて取得されたデータに基づいて前記二つ以上のアプリケーションプログラムで協働処理した結果を他の周辺デバイスに送信して出力することが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、一の周辺デバイスで取得したデータを複数のアプリケーションプログラムで共有して相互処理を行ったうえで、他の周辺デバイスに送信することができ、複数の入出力端末を用いた複合的な処理を行うことできる。
例えば、バーコードリーダーでバーコード情報を読みとり、その情報を決済アプリケーションプログラムやPOSアプリケーションプログラムで共用して処理したのち、電子マネー処理端末(例えばFelica(登録商標)処理端末)に送信出力することが例として挙げられる。
あるいは、バーコードリーダーでバーコード情報を読みとり、また、ポイントカード処理端末で会員IDや現有ポイント情報を読みとり、それら情報に基づいてポイント管理アプリケーションプログラムでは購入金額をポイントに加算する一方、決済アプリケーションプログラムでは現有ポイントに応じて値引き処理を行う。そして、このように処理された請求金額を電子マネー処理端末に送信出力し、決済結果をプリンターにて出力させる。
【0013】
本発明のプラットフォーム装置は、前記プラットフォームサービス提供システムを構成するプラットフォーム装置であって、複数のユーザーによって共用可能に基本設計された複数のアプリケーションプログラムをサービス提供に先立って予め用意して保持しているサービスコンテンツ群と、前記サービスコンテンツ群のアプリケーションプログラムのなかからユーザーごとに前記シンクライアント端末にダウンロードするものを適宜選択した契約に基づいて前記アプリケーションプログラムの利用を管理する管理プログラム群と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このようなプラットフォーム装置によれば、上記発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態について図示例を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明のプラットフォームサービス提供システムに係る第1実施形態について説明する。
図1は、プラットフォームサービス提供システム100の全体構成を示す図である。
プラットフォームサービス提供システム100は、複数のユーザーが共用可能に生成された複数のアプリケーションプログラムを集中管理するプラットフォーム装置200と、プラットフォーム装置200とはネットワーク回線網400によって相互接続されたシンクライアント端末300と、を備える。
【0016】
プラットフォーム装置200は、CPU、ROM、RAM等を備えた中央コンピュータであって、主として、ネットワーク回線400を介したプログラム配信サーバーとしての機能を有している。そして、プラットフォーム装置200は、プログラム配信サーバーとして、配信するためのアプリケーションプログラムを保持するサービスコンテンツ群210と、システム運用管理のための管理プログラム群230と、を有している。
【0017】
サービスコンテンツ群210は、本システムのサービスを受ける各種のユーザーが共有して使用できるように基本設計されたアプリケーションプログラムを複数備える。
図2にサービスコンテンツ群210に含まれるアプリケーションプログラムの例を示す。
サービスコンテンツ群210に用意されるアプリケーションプログラムとしては、POSサービス211、決済サービス212、ポイント管理サービス213、会員管理サービス214、物流管理サービス215、統合運用サービス216、ファイル転送サービス217、バックアップサービス218、カスタマイズサービス219などが例として挙げられる。
【0018】
POSサービス211、決済サービス212、ポイント管理サービス213、会員管理サービス214、物流管理サービス215などはそれぞれが特定の処理を独立して実行するサービスアプリケーションプログラムである。
統合運用サービスとは、上記のPOSサービス211、決済サービス212、ポイント管理サービス213、会員管理サービス214、物流管理サービス215などの複数のアプリケーションプログラムを統合的に運用させるためのプログラムである。プラットフォーム装置200では、上記の各種アプリケーションプログラムを一つのプラットフォーム上に持っているため、複数のアプリケーションプログラムを統合的に運用することができる。たとえば、決済サービス212とポイント管理サービス213と会員管理サービス214とを統合的に運用する場合が考えられる。
なお、これらは代表的な例であってこれらに限定されるものではない。
【0019】
管理プログラム群230は、ユーザーに対して契約に応じたサービス提供を行うようにシステム運用をするためのプログラムを複数備える。
図3は、管理プログラム群230に含まれるプログラムの例を示す図である。
管理プログラム群230としては、認証プログラム231、運用管理プログラム232、課金プログラム233、外部連携プログラム234などが含まれる。
なお、これらは代表的な例であってこれらに限定されるものではない。
【0020】
シンクライアント端末300は、このシステムのサービスを受けるユーザーが適宜必要に応じて設置するクライアント端末である。
シンクライアント端末300は、プラットフォーム装置200と所定のネットワーク回線400によって接続されており、プラットフォーム装置200と双方向の通信が可能である。
また、シンクライアント端末300が周辺装置としての複数の入出力デバイス310と接続されている場合、シンクライアント端末300はこれら入出力デバイス310がプラットフォーム装置に接続するためのゲートウェイもしくはルータとしての役割も果たす。そして、シンクライアント端末300には、デバイス制御や、グラフィック表示、通信制御などの最小限必要なOSイメージや書き換え可能な記憶装置は搭載されている必要があるが、各種のアプリケーションプログラムは記憶されていなくてもよい。
各ユーザーは、本プラットフォームサービスの提供を受けるにあたって、シンクライアント端末300の認証IDをプラットフォーム装置200に登録しておくとともに、プラットフォーム装置200に用意されているサービスコンテンツ群210の中からサービス提供を望むアプリケーションプログラムを選択しておく。
プラットフォーム装置200側では、シンクライアント端末300からのアクセスを認証IDによって認証すると、予め選択されているアプリケーションプログラムをシンクライアント端末300に送信する。
シンクライアント端末300は、このように送信されたアプリケーションプログラムを記憶装置に一時保存して利用する。
【0021】
なお、シンクライアント端末300とプラットフォーム装置200とを結ぶネットワーク回線網400としては特に限定されるものではなく、インターネット回線網、固定電話回線網、公衆携帯電話回線網、同軸ケーブル網、光ケーブル網、など、各種の商用ネットワーク回線を利用することができる。
【0022】
さらに、プラットフォーム装置200は、ネットワーク回線400を介して、外部アプリケーションベンダー510や外部サービス業者520と接続連携されている。
外部アプリケーションベンダー510とは、プラットフォーム装置200のサービスコンテンツ群210に用意されるアプリケーションプログラム等とは別に、特色あるアプリケーションプログラムを開発してネットを介した提供サービスを行っているような事業者である。
また、外部サービス業者520としては、たとえばクレジットカード会社や銀行など決済サービスのホストコンピュータを備える事業者などが例として挙げられる。
プラットフォーム装置200と外部事業者との接続連携は、外部連携プログラム234によって制御される。
【0023】
また、シンクライアント端末300は、周辺デバイスとしての入出力デバイス310と接続されている。
入出力デバイス310は、シンクライアント端末300と通信接続された端末であり、所定の入力手段や出力手段を備えている。
図4は、入出力デバイス310の例を示す図である。
入出力デバイス310としては、ユーザーの事業によって必要なデバイスが異なってくる。例えば、商品の販売事業(小売業)であれば、バーコードリーダー311、クレジットカード処理端末312、電子マネー処理端末313、ポイントカード処理端末314、小型プリンター315、ディスプレイ316などが必要な入出力デバイス310となってくる。
また、この他、顧客会員登録を管理する場合には、デジタルペン・シート317などが必要となる。各種の商品物流管理業務の場合には、ハンディターミナル318とよばれる携帯情報端末(PDA)が利用される。
なお、入出力デバイス310としては、例えば、ハンディターミナルにプリンターやバーコードリーダーなどが一体化された複合型ハンディターミナルであってもよい。さらに、例えば、プリンター、バーコードリーダー、電子マネー処理端末、クレジットカードリーダーが一体化された決済専用端末であってもよい。
【0024】
ここで、入出力デバイス310とシンクライアント端末300との通信方式は限定されるものではないが、無線通信であればBluetoothなどを利用してもよく、また、有線で接続されていてもよいことはもちろんである。
【0025】
このような構成を備えるプラットフォームサービス提供システム100の具体的な運用について説明する。
(事業者準備段階)
まず、サービス提供前の準備段階について説明する。
プラットフォームサービス事業者は、予めサービスコンテンツ群210を用意しておく。
このサービスコンテンツ群210には、多くのユーザーで共用できる汎用性を持たせた各種のアプリケーションプログラムを用意しておく。次に、このサービスの提供を希望するユーザーからの申し出を受けてユーザーの要望をヒアリングし、要望されたサービスプログラムの提供を契約する。この場合、提供するアプリケーションプログラムは一つに限らず、複数のアプリケーションプログラムをまとめて提供する契約をしてもよいことはもちろんである。
【0026】
次に、ユーザーの店舗や催事場などのユーザー事業所にシンクライアント端末300を設置する。あわせて、必要な入出力デバイス310を必要数配置する。そして、シンクライアント端末300に認証IDを発行し、この認証IDと提供するサービスのアプリケーションプログラムとを関連付けて管理登録する。発行されたIDは、認証プログラム231で管理され、認証IDに関連付けられたアプリケーションプログラムのセットは運用管理プログラム232で管理される。また、契約によって選択された課金方式を課金プログラム233に設定し、利用料金の管理を設定する。
【0027】
ここで、各種サービスを提供するにあたり、ユーザーごとにカスタマイズが必要になることが考えられる。例えば、ポイントサービス制度などではユーザーごとに加算方法や交換方法が異なることが想定される。
また、例えば、発行するレシートに印字する店舗名や住所は当然にユーザーごとに異なる。そこで、このようなユーザーごとに仕様が変わる部分はカスタマイズし、ユーザーごとにカスタマイズサービス219として設定しておく。
また、ユーザーが複数のサービスを選択して複数のサービスを統合的に利用したい場合には、統合運用サービス216に複数のアプリケーションプログラム間の連携をユーザーの要求に合わせて設定しておく。
このような準備により事業者準備段階が終了する。
【0028】
(ユーザー準備段階)
次に、ユーザーが本プラットフォームサービス提供システム100を利用するにあたっての準備について説明する。
ユーザーは、このシステムを利用するにあたり、まず、シンクライアント端末300を起動させる。起動すると、シンクライアント端末300はネットワーク回線を介してプラットフォーム装置200にアクセスする。アクセス時にプラットフォーム装置200の認証プログラム231によってIDの認証を受ける。認証プログラム231によってID認証に成功した場合、運用管理プログラム232に設定された提供サービスのリストに基づいて提供サービスが特定される。
このように特定されたサービスに対応したコンテンツアプリケーションプログラムと必要な設定ファイルとがネットワーク回線を介してプラットフォーム装置200からシンクライアント端末300に送信される。これにより、シンクライアント端末300にアプリケーションプログラムと設定ファイルがダウンロードされてインストールされる。さらに、入出力デバイス310に必要なアプリケーションプログラムおよび設定ファイルがシンクライアント端末300からそれぞれの入出力デバイス310に送信され、入出力デバイス310にインストールされる。
このような準備によりユーザー準備段階が終了する。
【0029】
(実動段階)
上記の事業者準備段階およびユーザー準備段階に続いて実動段階について説明する。
実動段階におけるデータフローの一例を説明する。
図5は、実動段階におけるデータフローの一例を示す図である。
ここでは、ユーザーの事業が商品販売業(小売業)である場合を例にして説明する。
商品購入者が商品600の購入を望む場合、まず、販売員は、バーコードリーダー311にて商品購入者が購入を希望する商品600に付されたバーコード情報をスキャンする。スキャンされたバーコード情報は、バーコードリーダー311からシンクライアント端末300に送られる(S100)。シンクライアント端末300における一時バッファーを経て、バーコード情報は、シンクライアント端末300からプラットフォーム装置200中のPOSサービス211および決済サービス212にデータ送信される(S120、S130)。そして、POSサービス211では、受信したバーコード情報に基づいて販売管理データを更新する。決済サービス212では、バーコード情報に基づいて料金計算処理を行う。
【0030】
ここで、商品購入者がポイントカード610を持っている場合、そのポイントカード610の情報を処理端末314でスキャンする(S140)。カード610の顧客IDがシンクライアント端末300に送信され(S150)、さらに、プラットフォーム装置200のポイント管理サービス213に送られる(S160)。そして、ポイント管理サービス213と決済サービス212とが情報を相互に交換する(S170、S180)。たとえば、決済サービス212で計算された料金データをポイント管理サービス213に送る(S170)。すると、ポイント管理サービス213が料金データに応じてポイントを加算する。
また、ポイント管理サービス213から決済サービス212に対してこのカードID保有者の現有ポイントデータを送る(S180)。すると、決済サービス212は、現有ポイントデータに応じた値引き処理等を行って請求金額を計算し直す。
このようなアプリケーションプログラム間のデータのやり取りは統合運用サービス216によって制御される。
【0031】
このような処理がプラットフォーム装置200で行われた後、ネットワーク回線400を介してシンクライアント端末300に処理結果が送信される(S190)。そして、シンクライアント端末300からディスプレイ316にデータが送られて表示される(S200)。すなわち、決済サービス212で計算された請求金額のデータおよびポイント管理サービス213で更新されたポイントのデータが表示される。
【0032】
次に、商品購入者がクレジットカード620での決済を行う場合、クレジットカード処理端末312によってカード620のIDデータを読みとる(S210)。読み取ったIDデータは、シンクライアント端末300を介して(S220)、プラットフォーム装置200に送信される(S230)。
プラットフォーム装置200において、外部連携プログラム234により、クレジットカード620のID情報がクレジットカード620の外部サービス業者520が設置するホストコンピュータに送信される(S240)。そして、外部連携プログラム234によって外部サービス業者520のホストコンピュータと本プラットフォーム装置200との連携が行われる。
外部サービス業者520のホストコンピュータからの応答は外部連携プログラム234を介してクレジットカード処理端末312に送られるとともに、決済サービス212に送られ(S250)、クレジットカード620による決済処理が実行される。処理結果は、決済サービス212からシンクライアント端末300を介し(S260)、プリンター315に送信されて(S270)、印刷出力される。
このようにして商品販売の一連の処理が完了する。
【0033】
このような構成を備える第1実施形態によれば次の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、プラットフォーム装置200側に各種のアプリケーションプログラムが予め用意されている。したがって、ユーザーは自分の事業等に応じて必要なアプリケーションプログラムを選択して利用することができる。このように必要な時に必要なプログラムだけを契約して利用することができるので、ユーザー側ではアプリケーションの開発やIT基盤の構築および維持管理などを行う必要がなく、費用や労力をほとんど掛けることなく事業に必要なIT環境を整備することができる。
また、プラットフォーム装置200のサービスコンテンツ群210としては、単一の複合アプリケーションプログラムではなく、ユーザーが必要に応じて適宜選択できるように独立した複数のアプリケーションプログラムに分けて用意している。したがって、ユーザーが必要なものだけを随時選択して利用することができ、利用料金もその時々に応じて必要最低限に抑えることができる。さらに、プラットフォーム装置200は、汎用性のあるアプリケーションプログラムを備えるので、ユーザーからサービス提供の申し出を受ければその日からサービスを提供することができる。
このようなシステムは、たとえば、広域のフランチャイズ店で共通するポイントサービスを行う場合にはプラットフォーム装置で共通管理できるので非常にメリットがある。
また、商店街の複数の店舗が共通のポイントサービス制度を導入する場合でも、各店舗のパソコンをシンクライアント端末として登録すれば、その日から共通ポイントサービスの導入が可能になる。このように事業者が異なっている複数の店舗に共通サービスを導入する場合にも本システムは導入が簡易であるのでメリットが大きい。
【0034】
(2)プラットフォーム装置200側でアプリケーションプログラムを集中管理しているので、アプリケーションプログラムのバージョンアップ等の整備はプラットフォーム事業者がまとめて行うことができ、ユーザーによるメンテナンスの労力負担はほとんどかからないようにできる。また、プラットフォーム事業者としては、アプリケーションプログラムの更新等の場合でもユーザーの事業所まで出張する必要がないため、アップデートしたアプリケーションプログラムの提供サービスを効率よく行うことができる。
【0035】
(3)統合運用サービスプログラム216を備えているので、ユーザーがサービスコンテンツ群210のアプリケーションプログラム群から複数のアプリケーションプログラムを選択して利用する場合、統合運用サービスプログラム216によって複数のアプリケーションプログラムを統合的に利用でき、これにより、複数の入出力端末を用いた複合的な処理を行うことができる。
【0036】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
シンクライアント端末としては、例えば市販のパソコンであってもよく、あるいは携帯電話機でもよい。
プラットフォーム装置は、一つの大型コンピュータで構成されている必要はなく、プラットフォーム装置として統合されるように接続された複数のコンピュータからなっていてもよい。たとえば、各アプリケーションプログラムはそれぞれ独立したコンピュータに格納されており、これらが全体を統合するサーバーと接続されることによってプラットフォーム装置を構成していてもよい。
【0037】
上記実施形態では、認証IDをシンクライアント端末ごとに発行して、シンクライアント端末のIDを認証した場合に契約されたアプリケーションプログラムをシンクライアント端末に送信する場合を例にして説明した。ここで、IDの発行は、シンクライアント端末ではなく、ユーザーごとにIDを発行し、ユーザーが各人のIDをシンクライアント端末に入力することで契約したアプリケーションプログラムがダウンロードされるようにしてもよい。この場合、ユーザーの販売会場がイベントごとに移動した場合でもIDの再発行などは不要になる。
または、ユーザーの事業所の社員ごとに認証IDを発行してもよい。この場合、社員のIDごとに利用できるアプリケーションプログラムを適宜変えるようにしてもよい。これにより、職務に応じたアプリケーションプログラムだけを利用させることにより、情報管理上または利用料金上の利点がある。
さらには、シンクライアント端末とプラットフォーム装置間ではシンクライアント端末やユーザー事業所単位のIDによって契約されたすべてのアプリケーションプログラムをダウンロードしたのち、入出力デバイスに特定のアプリケーションプログラムをダウンロードする場合にはさらに社員ごとに発行されたIDによって管理してもよい。
なお、IDの入力はキーパット入力でもバーコードや磁気カードの読み取りによってもよいことはもちろんである。
【0038】
上記実施形態では、小売業を例にして説明したが、本プラットフォームサービス提供システムはユーザーの業態に関わらずサービスを提供できることはいうまでもない。
たとえば、物流サービス業にも適用できる。宅配便サービスや郵便事業においては、営業地域が全国的なのでシステムが大きくなり、メンテナンスやバージョンアップに非常に手間がかかる。また、物流の各段階で必要とされるハンディターミナルの機能も異なってところ、それぞれの段階に専用の端末を用意していてはシステムが複雑になり資金もかかる。そして、システムをバージョンアップする際にはすべての端末にアプリケーションソフトをインストールし直さなければならないとなると、その手間は甚大である。
この点、本発明のプラットフォームサービス提供システムによれば、ユーザー側ではアプリケーションの開発やIT基盤の構築および維持管理などを行う必要がなく、ユーザーが必要なものだけを随時選択して利用することができ、利用料金もその時々に応じて必要最低限に抑えることができる。
さらに、アプリケーションプログラムのバージョンアップ等もプラットフォーム事業者の方で集中管理する構成であるため、ユーザーの手間がかからず、アプリケーションプログラムが変わってもシンクライアント端末や入出力デバイスは変更する必要がない。
【0039】
上記実施形態では、シンクライアント端末はアプリケーションプログラムのうちの必要な部分や設定ファイルのみをダウンロードして、具体的な演算処理自体はプラットフォーム装置の各コンテンツサービスが実行する場合を説明したが、シンクライアント端末側にアプリケーションも統合運用サービスもダウンロードさせて、シンクライアント端末内で演算処理を実行してもよいことはもちろんである。
シンクライアント端末のハードウェア資源が持っている演算処理容量に応じてプラットフォーム装置とシンクライアント端末とで処理負担を調整することは適宜行いうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】プラットフォームサービス提供システムの全体構成を示す図。
【図2】サービスコンテンツ群に含まれるアプリケーションプログラムの例を示す図。
【図3】管理プログラム群に含まれるプログラムの例を示す図。
【図4】入出力デバイスの例を示す図。
【図5】データフローの一例を示す図。
【符号の説明】
【0041】
100…プラットフォームサービス提供システム、200…プラットフォーム装置、210…サービスコンテンツ群、211…POSサービス、212…決済サービス、213…ポイント管理サービス、214…会員管理サービス、215…物流管理サービス、216…統合運用サービス、217…ファイル転送サービス、218…バックアップサービス、219…カスタマイズサービス、230…管理プログラム群、231…認証プログラム、232…運用管理プログラム、233…課金プログラム、234…外部連携プログラム、300…シンクライアント端末、310…入出力デバイス、311…バーコードリーダー、312…クレジットカード処理端末、313…電子マネー処理端末、314…ポイントカード処理端末、315…小型プリンター、316…ディスプレイ、317 デジタルペン・シート、318…ハンディターミナル、400…ネットワーク回線、510…外部アプリケーションベンダー、520…外部サービス業者、600…商品、610…ポイントカード、620…クレジットカード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアプリケーションプログラムを管理するプラットフォーム装置と、
前記プラットフォーム装置とはネットワーク回線網によって相互接続されており動作時に前記プラットフォーム装置から前記アプリケーションプログラムをダウンロードして実行するシンクライアント端末と、を備えるプラットフォームサービス提供システムであって、
前記プラットフォーム装置は、
複数のユーザーによって共用可能に基本設計された複数のアプリケーションプログラムをサービス提供に先立って予め用意して保持しているサービスコンテンツ群と、
前記サービスコンテンツ群のアプリケーションプログラムのなかからユーザーごとに前記シンクライアント端末にダウンロードするものを適宜選択した契約に基づいて前記アプリケーションプログラムの利用を管理する管理プログラム群と、を備える
ことを特徴とするプラットフォームサービス提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載のプラットフォームサービス提供システムにおいて、
前記プラットフォーム装置のサービスコンテンツ群は、二つ以上の前記アプリケーションプログラムを統合的に運用させる統合運用サービスプログラムを有する
ことを特徴とするプラットフォームサービス提供システム。
【請求項3】
請求項2に記載のプラットフォームサービス提供システムにおいて、
前記シンクライアント端末は、入力機能および出力機能のうち少なくともいずれかの機能を有する複数の周辺デバイスと接続されており、
一の周辺デバイスにて取得されたデータに基づいて前記二つ以上のアプリケーションプログラムで協働処理した結果を他の周辺デバイスに送信して出力する
ことを特徴とするプラットフォームサービス提供システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプラットフォームサービス提供システムを構成するプラットフォーム装置であって、
複数のユーザーによって共用可能に基本設計された複数のアプリケーションプログラムをサービス提供に先立って予め用意して保持しているサービスコンテンツ群と、
前記サービスコンテンツ群のアプリケーションプログラムのなかからユーザーごとに前記シンクライアント端末にダウンロードするものを適宜選択した契約に基づいて前記アプリケーションプログラムの利用を管理する管理プログラム群と、を備える
ことを特徴とするプラットフォーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−15287(P2010−15287A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173158(P2008−173158)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(501275178)ソフトバンクBB株式会社 (112)
【Fターム(参考)】