説明

プランジャポンプ

【課題】液圧発生源からの作動液の入力があるときでも、液圧発生源からの作動液の入力がないときと同様の操作フィーリングを得る。
【解決手段】ポンプハウジング10に、外部の液圧発生源に連通する吸入路からの作動液が入力される吸入口12が設けられており、プランジャ20内に、前記吸入口に入力された作動液をポンプハウジング10内に設けられたポンプ室25に導く作動液導入路21が設けられているプランジャポンプ1であって、吸入口12における作動液の液圧の大きさが大きくなるにつれて、吸入口12から作動液導入路21への作動液の通流を絞る絞り手段30を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のアンチロックブレーキ制御や車両の挙動制御を行うブレーキ液圧制御装置等に、プランジャポンプを用いて構成された技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
プランジャポンプは、ポンプハウジングと、ポンプハウジング内に摺動可能に設けられたプランジャ(ピストンとも呼ばれる)とを備えており、偏心カムによってプランジャを軸方向に往復動させることで作動液を吐出するように構成されている。
ポンプハウジング内にはポンプ室が形成されており、このポンプ室に作動液を供給するための作動液の流路がプランジャ内に形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−162579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記したプランジャポンプにおいて、プランジャ内に形成される流路は、外部の液圧発生源となるマスタシリンダからの流路に連通しており、運転者がブレーキ操作子等を操作したときに、マスタシリンダからの液圧が作用するようになっていた。
このため、運転者がブレーキ操作子等を操作してマスタシリンダからの液圧がプランジャ内の流路に作用している状況において、例えば、車両の特定の車輪に対する挙動制御やブレーキアシスト制御等によりプランジャポンプが駆動されると、運転者がブレーキ操作子等を操作していない場合に比べて、プランジャポンプの吸入率が増加してしまい、その結果、プランジャポンプからの吐出量が増加してしまうといった問題があった。
【0005】
このように、プランジャポンプからの吐出量が増加すると、プランジャポンプの作動音が大きくなったり、ブレーキ操作子に対して操作反力が生じたりして、ブレーキ操作時の操作フィーリングを低下させる可能性があるため、その改善が望まれていた。
【0006】
このような観点から、本発明は、液圧発生源からの作動液の入力があるときでも、液圧発生源からの作動液の入力がないときと同様の操作フィーリングが得られるプランジャポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明のプランジャポンプは、ポンプハウジングと、前記ポンプハウジング内に摺動可能に設けられたプランジャと、を有し、前記ポンプハウジングに、外部の液圧発生源に連通する吸入路からの作動液が入力される吸入口が設けられており、前記プランジャ内に、前記吸入口に入力された作動液を前記ポンプハウジング内に設けられたポンプ室に導く作動液導入路が設けられているプランジャポンプであって、前記吸入口における作動液の液圧の大きさが大きくなるにつれて、前記吸入口から前記作動液導入路への作動液の通流を絞る絞り手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
このプランジャポンプによれば、絞り手段は、吸入口における作動液の液圧の大きさが大きくなるにつれて、吸入口から作動液導入路への作動液の通流を絞るようになっているので、例えば、液圧発生源から入力された作動液が所定以上の液圧である場合には、絞り手段によって作動液の通流が所定量絞られるようになり、絞り手段がオリフィスとして機能することとなる。これによって、液圧発生源から入力された作動液の液圧が所定以上の液圧である場合でも、プランジャポンプの吐出量が好適に抑えられて、作動音の発生や、液圧発生源に設けられる操作子に対して操作反力が生じるのを好適に抑制することができるようになり、液圧発生源からの作動液の入力があるときでも、液圧発生源からの作動液の入力がないときと同様の操作フィーリングが得られるようになる。
【0009】
また、前記絞り手段は、前記ポンプハウジングの内周面と前記プランジャの外周面との間に配置され、前記プランジャの摺動方向にスライド可能に設けられることで、吸入口の開口面積の大きさを調節するスライドスリーブと、前記吸入口から前記作動液導入路への作動液の通流が開放されるように、開放側へ向けて前記スライドスリーブを付勢する付勢手段と、を備え、前記スライドスリーブは、前記液圧発生源から入力された作動液を受けて、前記付勢手段に抗して前記吸入口の開口面積を絞る側へスライドする構成とするのがよい。
【0010】
このプランジャポンプによれば、液圧発生源から吸入口に作動液が入力されると、その作動液の液圧によってスライドスリーブが付勢手段に抗して吸入口の開口面積を絞る側へスライドし、作動液の通流量が絞られることとなる。これによって、液圧発生源から入力された作動液の液圧が所定以上の液圧である場合でも、プランジャポンプの吐出量が好適に抑えられて、作動音の発生や、操作子に対して操作反力が生じるのを好適に抑制することができる。したがって、液圧発生源からの作動液の入力があるときでも、液圧発生源からの作動液の入力がないときと同様の操作フィーリングが得られるようになる。
【0011】
また、前記スライドスリーブには、前記液圧発生源から入力された作動液を受ける受圧面が形成されており、前記スライドスリーブは、前記受圧面に作用する作動液の液圧を受けて前記吸入口の開口面積を絞る側にスライドする構成とするのがよい。
【0012】
このプランジャポンプによれば、液圧発生源から入力された作動液がスライドスリーブに形成された受圧面に直接作用してスライドスリーブが吸入口の開口面積を絞る側にスライドするので、レスポンスのよいスライドスリーブの絞り動作を得ることができ、操作フィーリングがより良好となる。
【0013】
また、前記スライドスリーブには、その外周面に、軸方向に沿う溝部が形成されており、前記溝部は、前記スライドスリーブが前記吸入口の開口面積を絞る側へスライドした状態であっても、前記入口部と前記作動液吸入路との間を作動液の通流可能に連通する構成とするのがよい。
【0014】
このプランジャポンプによれば、液圧発生源から吸入口に作動液が入力され、その作動液の液圧によりスライドスリーブが吸入口の開口面積を絞る側へスライド(フルスライド)しても、溝部を通じて吸入口と作動液導入路との連通が図られるようになり、吸入口と作動液導入路との通流が確保されて、プランジャポンプの吐出量を常に確保することができる。
【0015】
また、前記スライドスリーブは、前記吸入口の開口面積を絞る側へスライドして後退限の位置に後退したとき、前記吸入口の開口を通じた前記作動液の所定の通流が確保された状態で保持されるように設定されている構成とするのがよい。
【0016】
このプランジャポンプによれば、液圧発生源から吸入口に作動液が入力されて、その作動液の液圧によりスライドスリーブが吸入口の開口面積を絞る側へスライドして、後退限の位置(フルスライド位置)に後退しても、吸入口の開口を通じた作動液の所定の通流が確保された状態で保持されるように設定されているので、吸入口の開口面積が完全に絞られることがなくなり、プランジャポンプの吐出量を常に確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液圧発生源からの作動液の入力があるときでも、液圧発生源からの作動液の入力がないときと同様の操作フィーリングが得られるプランジャポンプが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の実施形態では、自動車等の車両に搭載されるブレーキ液圧制御装置の液圧発生装置として用いられるプランジャポンプを例として説明する。
なお、以下の説明において、一端側とは図1の右側に対応し、他端側とは図1の左側に対応している。
【0019】
(第1実施形態)
[プランジャポンプの全体構成]
プランジャポンプ1は、図1に示すように、ポンプボディ100に形成された取付孔101に装着されるポンプハウジング10と、ポンプハウジング10の内部に摺動自在に装着されたプランジャ20と、ポンプハウジング10等が取付孔101から抜け出すのを防止する蓋部材2と、プランジャ20の一端側の端面に設置される吸入弁体3と、ポンプハウジング10の一端側の底壁に形成されたテーパ状の弁座部11に設置される吐出弁体4とを備えて構成されている。
そして、ポンプハウジング10の外周面には、外部の液圧発生源としての図示しないマスタシリンダに連通する吸入口12が開口形成されており、この吸入口12とプランジャ20内に形成された作動液導入路21とが、絞り手段30を構成するスライドスリーブ31に形成された貫通孔32を介して連通するようになっている。
【0020】
(ポンプボディの構成)
ポンプボディ100は、図示しない車両に搭載される金属製のブロックであり、その内部には複数の油路(図示せず)が形成され、プランジャポンプ1が挿入される円形断面の取付孔101が設けられている。取付孔101の他端は、ポンプボディ100の外面に凹設された円形断面の収納穴100aに連通している。
本実施形態では、収納穴100aは図1の紙面に対して垂直方向に延設され、取付孔101は、収納穴100aに直交する方向(紙面に対して左右方向)に延設されている。取付孔101は、一端側の開口から他端側に向けて、その円形断面が段状に順次縮径しており、開口部101aに通じる第一孔壁部102と、この第一孔壁部102よりも径の小さい第二孔壁部103と、この第二孔壁部103よりも径の小さい第三孔壁部104と、この第三孔壁部104よりもさらに径の小さい第四孔壁部105とを備えている。そして、第一孔壁部102の内側面にはプランジャポンプ1の排出路107が開口形成されており、また、第二孔壁部103の内側面には吸入路106が開口形成されている。
【0021】
吸入路106は、取付孔101と図示しないリザーバとを連通している流路であり、この吸入路106を通じてプランジャポンプ1にブレーキ液が吸入される。また、吸入路106には、吸入口12まわりの凹部12aを通じて、前記したように図示しないマスタシリンダからのブレーキ液(作動液)が入力される流路108が連通しており、運転者のブレーキ操作時に、流路108から凹部12a、吸入口12、貫通孔32を通じて作動液導入路21にマスタシリンダからのブレーキ液が入力されるようになっている。
【0022】
プランジャポンプ1の駆動手段である偏心カム109は、ポンプボディ100に取り付けられた電動モータ(図示せず、駆動手段)の回転軸に設けられており、ポンプボディ100に形成された収納穴100aに収められている。この偏心カム109の中心位置は、回転軸の軸中心に対して偏心しており、偏心カム109は、回動軸の回転に伴って、回転軸の軸中心回りに回転するように構成されている。
【0023】
(プランジャポンプの構成)
ポンプハウジング10は、取付孔101にシール部材10A、10Bを介して装着される段付き筒状の部材であり、取付孔101の第二孔壁部103に装着される第二周壁部13と、同じく第三孔壁部104に装着される第三周壁部14と、第四孔壁部105に装着される第四周壁部15とを備えている。また、ポンプハウジング10は、その内周面が小径部、中径部、大径部からなる段付き状とされており、小径部の内周側にスプリング25aが設けられ、中径部とされた内周面16にバックアップリング20B、シール部材20Cを介してプランジャ20が軸方向摺動自在に挿入されている。また、大径部とされた内周面17の内側には、シール部材30A、20Aを介して、プランジャ20の他端側外周面22との間に絞り手段を構成するスライドスリーブ31が軸方向摺動自在に配置されている。
【0024】
また、ポンプハウジング10の他端側の外周面には、周状に凹部12aが形成されており、その凹部12aに臨むようにして吸入口12が形成されている。本実施形態では、吸入口12が吸入路106と流路108とにそれぞれ対向するように円周上に複数(図1では上下に計2個)設けられている。なお、吸入口12は、3個以上設けてもよい。
【0025】
ポンプハウジング10の一端側には、縮径された第一周壁部11aが形成されており、この第一周壁部11aと第二周壁部13との間に形成される段部13aに、後記する蓋部材2との間に圧縮状態で配置される取付用ばね18の他端側が当接している。これにより、ポンプハウジング10は、取付孔101の他端側へ向けて押圧された状態で装着される。
また、ポンプハウジング10の一端部には、一端部から蓋部材2へ向けてテーパ状に拡径された弁座部11が形成されており、この弁座部11に球状の前記吐出弁体4が着座することでポンプハウジング10の一端部を封止している。
吐出弁体4は、ポンプ室25内のブレーキ液圧から吐出室26内のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(ばね部材4bの付勢力)以上になったときに、ばね部材4bの付勢力に抗して弁座部11から離間することで開弁するように構成されている。
弁座部11には、金属製のリテーナ4aが外嵌されており、このリテーナ4aの内側に圧縮状態で配置されたばね部材4bで、吐出弁体4が弁座部11に着座するようになっている。また、リテーナ4aには、スリット状の連通孔4cが複数形成されており、リテーナ4a内と蓋部材2との間に形成される吐出室26とが連通している。
【0026】
プランジャ20は、前記したように、ポンプハウジング10の内周面16にバックアップリング20B、シール部材20Cを介して軸方向摺動自在に挿入されており、その他端側の外周面は、シール部材20Aを介して後記するスライドスリーブ31の内周面31aに軸方向摺動自在に接触している。
プランジャ20には、その外周面(側面)と一端面とに開口する作動液導入路21が形成されている。作動液導入路21は、外周面において、スライドスリーブ31に形成された貫通孔32を通じて吸入口12と連通しており、吸入路106を通じて図示しないリザーバからのブレーキ液が流入可能となっている。また、前記したように、吸入口12は、流路108に連通しているので、作動液導入路21には、流路108を通じて、図示しないマスタシリンダからのブレーキ液が入力可能となっている。
プランジャ20の一端側の側方には、ポンプハウジング10の一端側に形成される底面と内周面との間にポンプ室25が形成されている。なお、ポンプ室25には、戻しばね25aが圧縮状態で配置されており、この戻しばね25aの復元力によってプランジャ20は、他端側に押圧されている。これによって、プランジャ20の他端側は、ポンプボディ100の収納穴100a内に突出し、偏心カム109に当接している。
ところで、偏心カム109は、前記のように回転軸(図示せず)の軸中心回りに偏心して回転するため、回転軸を回転させたときには、プランジャ20は図1の位置から偏心カム109に押されて一端側に向けて軸方向に移動することになる。
【0027】
プランジャ20の一端側の端面には、作動液導入路21の開口縁に着座するようにして球状の吸入弁体3が設置されている。吸入弁体3とポンプハウジング10の底面との間には、ばね部材3aが圧縮状態で配置されており、このばね部材3aの復元力によって、作動液導入路21の開口縁に吸入弁体3が着座し、作動液導入路21の開口を封止している。
吸入弁体3は、吸入口12側(作動液導入路21側)のブレーキ液圧からポンプ室25側のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(ばね部材3aの付勢力)以上になったときに、ばね部材3aの付勢力に抗してプランジャ20の孔縁から離間することで開弁するように構成されている。
【0028】
絞り手段30は、スライドスリーブ31と、付勢手段としてのばね部材33とを備えており、液圧発生源としての図示しないマスタシリンダから吸入口12に入力されたブレーキ液の液圧の大きさが大きくなるにつれて、吸入口12から作動液導入路21へのブレーキ液の通流量を絞る(開口面積を絞る)ように構成されている。
スライドスリーブ31は、ポンプハウジング10の大径部の内周面17とプランジャ20の他端側外周面22との間に配置された円筒状の部材であり、プランジャ20の摺動方向(軸方向)にスライド可能に設けられている。そして、スライドスリーブ31には、吸入口12と作動液導入路21との双方に連通する貫通孔32が設けられている。本実施形態では、図2(a)に示すように、スライドスリーブ31がスライド方向の一端側(開放側)に位置して、その一端面(受圧面)31bがポンプハウジング10の対向面に形成された一端側規制部材10bに当接した状態で、吸入口12の略中心に貫通孔32の略中心が位置するように設定されている。つまり、スライドスリーブ31がスライド方向の一端側(開放側)に位置するときに、吸入口12を通じて入力されたブレーキ液が貫通孔32を介して作動液導入路21にスムーズに流入するようになっている。
また、換言すれば、スライドスリーブ31は、スライド方向に、他端部31A、貫通孔32および一端部31Bの3つの部位が連なる構成となっており、このうち、一端部31Bは、図2(c)に示すように、スライド方向の長さL1が吸入口12の径D1よりも大きい寸法に設定されている。これによって、後記するように、スライドスリーブ31が他端側にフルスライドした状態(後退限の位置にスライドした状態)で、その貫通孔32が吸入口12から外れると、この一端部31Bが、吸入口12の開口全体を塞ぐように位置して吸入口12の開口面積を絞るように作用する。
【0029】
スライドスリーブ31の一端面31bは、前記したように、一端側規制部材10bに当接するようになっており、一端面31bと対向するポンプハウジング10の段差面との間には、ブレーキ液の流入スペースS1が形成されるようになっている。一方、スライドスリーブ31の外周面31cとポンプハウジング10の対向面となる内周面との間には、ブレーキ液の通流可能な隙間S2が形成されており、この隙間S2を通じて吸入口12に入力されたブレーキ液が流入スペースS1側に流入するようになっている。したがって、液圧発生源としての図示しないマスタシリンダから吸入口12にブレーキ液が入力されると、ブレーキ液は隙間S2を通じて流入スペースS1に流れ込み、流入スペースS1内でスライドスリーブ31の一端面31bを押圧するように作用する。これによって、スライドスリーブ31は、ブレーキ液の液圧の大きさが大きくなるにつれて、他端側へ押圧(スライド)される。
【0030】
ばね部材33は、吸入口12から作動液導入路21へのブレーキ液の通流が開放されるように、開放側へ向けて前記スライドスリーブ31を付勢する。つまり、スライド方向の一端側(開放側)へ向けてスライドスリーブ31を付勢するようになっている。そのために、ばね部材33は、スライドスリーブ31と、ポンプハウジング10の他端部に設けられた他端側規制部材10aとの間に、圧縮状態で配置されている。なお、ばね部材33は、後記するように、図示しないマスタシリンダからブレーキ液が入力されたときに、その液圧を受けて応答性よく他端側にスライドスリーブ31がスライドするように、前記一端面31bの受圧面積等を考慮してばね定数が設定されている。
【0031】
このようなスライドスリーブ31は、図示しないマスタシリンダから入力されたブレーキ液の液圧により、ばね部材33に抗して、一端側から他端側へ向けてばね部材33の反力(復元力)と押圧力とがつり合うまでスライドし、その際に、貫通孔32が吸入口12に対して偏倚することで、吸入口12から作動液導入路21に通じるブレーキ液の通流量を絞るようになっている。
本実施形態では、スライドスリーブ31が、他端側へ向けてスライドし、図2(c)に示すように、その先端部が他端側規制部材10aに当接した状態で、吸入口12の開口面積を完全に絞るように設定してある。この状態で、隙間S2は、吸入口12と作動液導入路21との間をブレーキ液の通流可能に連通するようになっており、吸入口12に入力されたブレーキ液は、吸入口12から隙間S2、S2に分流して貫通孔32および一端面31bに沿って作動液導入路21に流入する。つまり、スライドスリーブ31が他端側規制部材10aに当接した状態で、吸入口12から作動液導入路21へのブレーキ液の通流が確保されるようになっている。
【0032】
蓋部材2は、取付孔101の一端の開口部101aに内嵌される有底円筒状の部材であり、ポンプボディ100の一端側との間に、吐出室26を形成している。吐出室26は、排出路107に通じており、吐出室26から排出路107へのブレーキ液の吐出を可能にしている。蓋部材2の外周面には、シール溝2aが全周に形成されており、このシール溝2aに装着されるシール部材2bを介して取付孔101に取り付けられ、C字形状のクリップ2cを開口側から嵌め込むことで固定されている。
また、蓋部材2の他端部には、ポンプハウジング10の段部13aとの間に配置される取付用ばね18の一端側が当接している。
【0033】
[プランジャポンプの動作]
以上のように構成されたプランジャポンプ1の動作について説明する。はじめに、液圧発生源としての図示しないマスタシリンダからのブレーキ液の入力がない場合の動作について説明する。この場合、ブレーキ液の入力がないので、絞り手段30のスライドスリーブ31は、図2(a)に示す一端側に位置することとなる。
プランジャポンプ1のポンプハウジング10内のポンプ室25および吐出室26内にブレーキ液が満たされた状態において、回転する偏心カム109に押されて、プランジャ20が図1の状態から一端側に向けて軸方向に往動作すると、ポンプ室25の容積が減少し、ポンプ室25内のブレーキ液の液圧が上昇する。
これにより、ポンプ室25内のブレーキ液圧から吐出室26内のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、吐出弁体4の開弁圧以上になり、吐出弁体4が開弁してポンプ室25内のブレーキ液が吐出室26に流入する。そして、ブレーキ液は吐出室26から排出路107に排出される。
【0034】
続いて、プランジャ20が最も一端側まで移動し、ポンプ室25の容積が最小となった後に、回転する偏心カム109のカム面がプランジャ20から離れる方向に変位すると、プランジャ20は、戻しばね25aの押圧力によって、他端側に向けて軸方向に復動作し、ポンプ室25の容積が増大する。
このように、ポンプ室25の容積が増大することにより、ポンプ室25内は負圧状態となり、吸入口12側のブレーキ液圧からポンプ室25側のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、吸入弁体3の開弁圧以上になるため、吸入弁体3が開弁し、吸入口12を通じて吸入路106または吸入路108内のブレーキ液が、吸入口12、貫通孔32および作動液導入路21を介してポンプ室25に流入する。
そして、再び、前記したようにプランジャ20が往動作して、ブレーキ液が吐出室26から排出路107に排出される。
【0035】
次に、このような一連の動作において、運転者がブレーキ操作子等を操作してマスタシリンダからの液圧がプランジャ内の流路に作用している状況において、車両の特定の車輪に対する挙動制御等によりプランジャポンプが駆動されると、図2(b)に示すように、スライドスリーブ31が一端側から他端側へ向けてスライド移動する。
つまり、吸入口12にブレーキ液が入力されると、ブレーキ液は、貫通孔32を通じて作動液導入路21に流れる一方、吸入口12から隙間S2を通じて流入スペースS1に流れ込み、そのときのブレーキ液の液圧が、流入スペースS1内においてスライドスリーブ31の一端面31bに作用する。
【0036】
このようにして、スライドスリーブ31の一端面31bにブレーキ液の液圧が作用し、その液圧がばね部材33の付勢力以上になると、液圧の大きさが大きくなるにつれて、図2(b)に示すように、スライドスリーブ31が他端側へ押圧されてスライドする。
【0037】
液圧を受けてスライドスリーブ31が他端側へスライドすると、貫通孔32が吸入口12に対して偏倚し、その結果として、吸入口12から作動液導入路21に通じるブレーキ液の通流量が絞られることとなる。これによって、吸入口12から入力されたブレーキ液の流量が所定量絞られることとなり、絞り手段30(貫通孔32)がオリフィスとして機能することとなる。
これによって、必要以上のブレーキ液の入力が制限され、作動音の発生や、ブレーキ操作子に対して操作反力が生じるのを好適に抑制することができるようになり、プランジャポンプ1が作動している状態のブレーキ操作であっても、マスタシリンダからのブレーキ液の入力がないときと同様の操作フィーリングが得られるようになる。
【0038】
また、図2(c)に示すように、液圧を受けてスライドスリーブ31が他端側へフルスライドして後退限の位置に後退したときには、貫通孔32が吸入口12から外れて吸入口12の開口全体を塞ぐように位置することとなるが、隙間S2が吸入口12と作動液導入路21とを連通するようになっているので、ブレーキ液の通流量が確保されるようになり、プランジャポンプ1の吐出量を常に確保することができる。
【0039】
以上説明した本実施形態のプランジャポンプ1によれば、絞り手段30は、図示しないマスタシリンダから吸入口12に入力されたブレーキ液の液圧の大きさが大きくなるにつれて、吸入口12から作動液導入路21へのブレーキ液の流量を絞るようになっているので、ブレーキ液の通流が所定量絞られるようになり、絞り手段30(スライドスリーブ31の貫通孔32)がオリフィスとして機能することとなる。これによって、図示しないマスタシリンダから入力されたブレーキ液の液圧が所定以上の液圧である場合でも、プランジャポンプ1の吐出量が好適に抑えられるようになり、作動音の発生や、ブレーキ操作子に対して操作反力が生じるのを好適に抑制することができる。したがって、図示しないマスタシリンダからのブレーキ液の入力があるときでも、図示しないマスタシリンダからのブレーキ液の入力がないときと同様の操作フィーリングが得られるようになる。
【0040】
また、スライドスリーブ31は、図示しないマスタシリンダから入力されたブレーキ液の液圧を受けてスライドするようになっているので、スライドさせるための駆動機構を設ける必要がなく、操作フィーリングの向上を低コストで実現することができる。
【0041】
また、スライドスリーブ31には、図示しないマスタシリンダから入力されたブレーキ液の液圧を受ける一端面31b(受圧面)が形成されており、スライドスリーブ31は、一端面31bに作用するブレーキ液の液圧を受けて吸入口12の開口面積を絞る側にスライドするので、入力されたブレーキ液が一端面31bに直接作用するようになり、レスポンスのよいスライドスリーブ31の絞り動作を得ることができる。また、ブレーキ操作時における操作フィーリングがより良好となる。
【0042】
また、スライドスリーブ31が他端側へスライドした後、さらに、図2(c)に示すように、吸入口12の開口面積を完全に絞る状態となっても(スライドスリーブ31’で塞がれても)、隙間S2、S2を通じて吸入口12と作動液導入路21とが連通しているので、吸入口12と作動液導入路21との通流が確保され、スライドスリーブ31によるオリフィス機能が好適に維持されることとなる。したがって、プランジャポンプ1の吐出量を常に確保することができる。
【0043】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態のプランジャポンプの動作を示した説明図であり、(a)はスライドスリーブが一端側に位置する状態を示す図、(b)はスライドスリーブが他端側にスライドした状態を示す図、(c)はスライドスリーブが他端側にフルスライドした状態を示す図である。
【0044】
本実施形態のプランジャポンプが前記第1実施形態と異なるところは、絞り手段30’を構成するスライドスリーブ31’が、その外周面31cに、軸方向に沿う溝部35を備えている点である。
溝部35は、スライドスリーブ31’の外周面31cとポンプハウジング10の対向面となる内周面との間に、ブレーキ液の通流可能な通路を形成しており、図3(a)に示すように、スライドスリーブ31’が一端側にある状態では、吸入口12に入力されたブレーキ液を流入スペースS1側に導く役割をなす。これにより、吸入口12に入力されたブレーキ液は、図3(b)に示すように、スライドスリーブ31’の溝部35を通じて流入スペースS1側に流入し、スライドスリーブ31’の一端面31bを押圧する。
【0045】
そして、図3(c)に示すように、他端側にスライドスリーブ31’がフルスライドした状態(後退限の位置に後退した状態)では、貫通孔32が吸入口12から外れて、吸入口12がスライドスリーブ31’で塞がれる状態(吸入口12の開口面積を完全に絞った状態)となるが、吸入口12の開口には、溝部35が位置することとなり、溝部35を通じてた通流が可能となる。
【0046】
これによって、吸入口12に入力されたブレーキ液は、吸入口12から溝部35を通じて一端側と他端側とに分流し、貫通孔32および一端面31bを通じて作動液導入路21に流入することとなる。
【0047】
したがって、このプランジャポンプ1によれば、吸入口12の開口面積を一端側部材31B’で完全に絞った状態においても、溝部35を通じて吸入口12と作動液導入路21との連通が図られるようになり、吸入口12と作動液導入路21との通流が確保されて、スライドスリーブ31’によるオリフィス機能が好適に維持されるとともに、プランジャポンプ1の吐出量を常に確保することができる。
【0048】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
【0049】
例えば、図4(b)に示すように、スライドスリーブ31’を構成する一端部31B’のスライド方向の長さL2が、吸入口12の径D1よりも小さい寸法となるように設定することができる。このように構成することによって、スライドスリーブ31’が一端側から(図4(a)の状態から)他端側にフルスライドした状態(後退限の位置にスライドした状態)で、吸入口12の開口の側方に一端部31B’を位置させることができ、吸入口12の開口面積が一端部31B’で完全に絞られない(塞がれない)ように設定することができる。これによって、スライドスリーブ31’が他端側にフルスライドした状態で、吸入口12に入力されたブレーキ液は、貫通孔32に沿って流れ、プランジャ20の外周面に開口する作動液導入路21に流入することとなる。つまり、スライドスリーブ31’が他端側規制部材10aに当接した状態で、吸入口12から作動液導入路21へのブレーキ液の通流が確保されるようになっており、プランジャポンプ1の吐出量を常に確保することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、自動車等の車両に搭載されるブレーキ用液圧制御装置の油圧発生装置として用いられるプランジャポンプを例として説明したが、本発明のプランジャポンプは、車両のブレーキ系統に限定されるものではなく、各種の液圧路に適用可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施形態のプランジャポンプを示した側断面図である。
【図2】第1実施形態のプランジャポンプの動作を示した説明図であり、(a)はスライドスリーブが一端側に位置する状態を示す図、(b)はスライドスリーブが他端側にスライドした状態を示す図、(c)はスライドスリーブが他端側にフルスライドした状態を示す図である。
【図3】第2実施形態のプランジャポンプの動作を示した説明図であり、(a)はスライドスリーブが一端側に位置する状態を示す図、(b)はスライドスリーブが他端側にスライドした状態を示す図、(c)はスライドスリーブが他端側にフルスライドした状態を示す図である。
【図4】他の実施形態のプランジャポンプの動作を示した説明図であり、(a)はスライドスリーブが一端側に位置する状態を示す図、(b)はスライドスリーブが他端側にフルスライドした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 プランジャポンプ
10 ポンプハウジング
12 吸入口
20 プランジャ
21 作動液導入路
25 ポンプ室
30 絞り手段
31、31’ スライドスリーブ
31b 一端面(受圧面)
31B、31B’ 一端部
32 貫通孔
33 ばね部材(付勢手段)
35 溝部
100 ポンプボディ
106 吸入路
107 排出路
108 流路
109 偏心カム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングと、
前記ポンプハウジング内に摺動可能に設けられたプランジャと、を有し、
前記ポンプハウジングに、外部の液圧発生源に連通する吸入路からの作動液が入力される吸入口が設けられており、
前記プランジャ内に、前記吸入口に入力された作動液を前記ポンプハウジング内に設けられたポンプ室に導く作動液導入路が設けられているプランジャポンプであって、
前記吸入口における作動液の液圧の大きさが大きくなるにつれて、前記吸入口から前記作動液導入路への作動液の通流を絞る絞り手段を設けたことを特徴とするプランジャポンプ。
【請求項2】
前記絞り手段は、
前記ポンプハウジングの内周面と前記プランジャの外周面との間に配置され、前記プランジャの摺動方向にスライド可能に設けられることで、吸入口の開口面積の大きさを調節するスライドスリーブと、
前記吸入口から前記作動液導入路への作動液の通流が開放されるように、開放側へ向けて前記スライドスリーブを付勢する付勢手段と、を備え、
前記スライドスリーブは、
前記液圧発生源から入力された作動液を受けて、前記付勢手段に抗して前記吸入口の開口面積を絞る側へスライドすることを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ。
【請求項3】
前記スライドスリーブには、前記液圧発生源から入力された作動液を受ける受圧面が形成されており、前記スライドスリーブは、前記受圧面に作用する作動液の液圧を受けて前記吸入口の開口面積を絞る側にスライドすることを特徴とする請求項2に記載のプランジャポンプ。
【請求項4】
前記スライドスリーブには、その外周面に、軸方向に沿う溝部が形成されており、
前記溝部は、前記スライドスリーブが前記吸入口の開口面積を絞る側へスライドした状態であっても、前記入口部と前記作動液吸入路との間を作動液の通流可能に連通することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のプランジャポンプ。
【請求項5】
前記スライドスリーブは、前記吸入口の開口面積を絞る側へスライドして後退限の位置に後退したとき、前記吸入口の開口を通じた前記作動液の所定の通流が確保された状態で保持されるように設定されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のプランジャポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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