説明

プラント制御ロジック設計支援装置、プログラムおよびプラント制御ロジック設計支援方法

【課題】プラントを制御する制御ロジックをソフトウェアとハードウェアを含めたCAD図上で表現することを実現する。
【解決手段】このプラント制御ロジック設計支援装置は、制御ロジック作画部、CADデータ保存部、シート判定抽出部、コンパイル&書き込み部を備える。制御ロジック作画部はソフトウェアのシートに命令語シンボルを用いて制御ロジックを作画し、ハードウェアのシートにソフトウェアのシートで使用したものと同じ命令語シンボルを用いてハードウェアの動作仕様をソフトウェアの制御ロジックと同じ形態で作画する。シート判定抽出部はプラント機器の制御系統を含むCADデータをCADデータ保存部から抽出する。コンパイル&書き込み部は抽出されたCADデータをプラント制御装置で実行可能な実行ファイルへ変換しプラント制御装置へダウンロードする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラント制御ロジック設計支援装置、プログラムおよびプラント制御ロジック設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電プラントや化学プラント等のプラントの制御を行う上では、ポンプやバルブ等のプラント機器をプラント制御装置が制御するための制御ロジックと呼ばれるソフトウェア(以後、制御ロジックまたは制御ロジック図と称す)を、設計・製作・保守するための装置としてプラント制御ロジック設計支援装置が用いられている。
【0003】
近年のプラント制御ロジック設計支援装置には、CAD(Computer Aided Design)が導入されるようになり、CADを用いて制御ロジックを設計・製作・保守することが一般的に行われている。
【0004】
なお、既にCADに関する技術が公開されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−265734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、プラントを制御する制御ロジックをソフトウェアとハードウェアを含めたCAD図上で表現することを実現することが望まれている。
【0007】
本発明は、プラントを制御する制御ロジックをソフトウェアとハードウェアを含めたCAD図上で表現することを実現することができるプラント制御ロジック設計支援装置、プログラムおよびプラント制御ロジック設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置は、CAD機能を有し、このCAD機能により作成したプラント機器の制御ロジックを示すCADデータをシート単位に管理するプラント制御ロジック設計支援装置である。制御ロジック作画部はシート毎にソフトウェアとハードウェアというシート種別を登録可能であり、ソフトウェアのシート種別を持つCADデータシートには命令語シンボルを用いて制御ロジックを作画し、ハードウェアのシート種別を持つCADデータシートにはソフトウェアのCADデータシートで使用したものと同じ命令語シンボルを用いてハードウェアの動作仕様をソフトウェアの制御ロジックと同じ形態で作画する。CADデータ保存部には前記制御ロジック作画部により作画されたソフトウェアのシート種別を持つCADデータシートとハードウェアのシート種別を持つCADデータシートが保存される。シート判定抽出部は前記プラント機器の制御系統に含まれるCADデータシートを、シート種別毎に前記CADデータ保存部から抽出する。シート判定抽出部は、前記シート判定抽出部により抽出されたCADデータシートをプラント制御装置で実行可能な実行ファイルへ変換し、変換した実行ファイルをプラント制御装置へ送出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の構成を示す図である。
【図2】プラント制御ロジック設計支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】プラントの制御ロジックを作画したソフトウェアシートの一例を示す図である。
【図4】ハードウェアに関する情報をソフトウェアの制御ロジックと同じ形態で作画したハードウェアシートの一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の構成を示す図である。
【図6】第3の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
プラント制御ロジック設計支援装置にCADを導入する上で、CADを用いて作画した制御ロジック図(CADデータ)をそのままプリントアウトし、プラント制御装置のソフトウェアのドキュメントとする。制御ロジック図は印刷に便利なようにシート単位で管理される。
【0011】
そして、このようなプラント制御ロジック設計支援装置を用いて設計・製作された制御ロジックは、コンパイルと呼ばれるプラント制御装置本体で実行可能な実行ファイルへの変換を行った後、プラント制御装置へダウンロードされる。
【0012】
プリンタからプリントアウトされる制御ロジック図に記載される範囲がプラント制御装置で実行処理させたい制御ロジックというソフトウェアの範囲に限られると、利便性に欠ける。
【0013】
なぜならば、プラント制御システムという広い視野で見ると、プラントを制御するための構成要素としては、制御ロジックというソフトウェアだけではなく、ポンプ、ファン、バルブ等のプラント機器(プラント制御装置により制御される機器)、そして温度、圧力、流量等の各種センサー類等の現場機器も重要な構成要素だからである。
【0014】
また、これらの現場機器とプラント制御装置とを結ぶインターフェースもプラント制御システムという観点からは重要な構成要素である。つまり、制御ロジックというソフトウェアと、現場機器というハードウェアが組み合わされて始めてプラント制御システムが機能するのである。
【0015】
そこで、プラント制御ロジックというソフトウェアだけではなく、プラント制御システムを構成するハードウェアについても、プラント制御ロジック設計支援装置のCAD図上で表現可能とする。
【0016】
以後、説明を簡単にするために、制御ロジックまたは制御ロジック図等のプラント機器を制御するためのソフトウェアのことを単に「ソフトウェア」と称し、ポンプやバルブといったプラント制御機器およびこれらの現場機器とプラント制御装置とを結ぶインターフェースも含めて単に「ハードウェア」と称す。
【0017】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置1の構成を示す図である。
図1に示すように、この実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置1は、CAD機能を有しており、このCAD機能により作成したプラント機器の制御ロジックを示すCADデータをシート単位に管理する装置であり、例えばハードディスク装置、メモリ、入力装置としてのキーボード、表示装置としてのモニタなどを有するコンピュータなどで実現されている。
【0018】
プラント制御ロジック設計支援装置1には、プラント制御装置2が接続されている。プラント制御装置2には、ポンプ、ファン、バルブ等のプラント機器、および温度、圧力、流量等の各種センサー類等の現場機器が接続されている。プラント機器および現場機器はプラント制御装置2により制御される機器である。換言すると、プラント制御装置2はプラント機器および現場機器を制御する機器である。
【0019】
このプラント制御ロジック設計支援装置1は、制御ロジック作画部3、CADデータ保存部4、ハードシート/ソフトシート判定部5、コンパイル&書き込み部6などを有している。これらの構成要素(制御ロジック作画部3、CADデータ保存部4、ハードシート/ソフトシート判定部5、コンパイル&書き込み部6など)は、ハードディスク装置にインストールされたプログラム(ソフトウェア)により実現されている。これは一例であり、それぞれの要素は個々のハードウェア(例えば制御ボードなど)で実現してもよい。
【0020】
制御ロジック作画部3は、CADの機能により、ソフトウェアとハードウェアという2つのシート種別を持たせたシート(以後それぞれソフトウェアシート、ハードウェアシートと称す)を作画する。
【0021】
換言すると、制御ロジック作画部3は、シート毎にソフトウェアとハードウェアというシート種別を登録可能であり、ソフトウェアのシートには命令語シンボルを用いて制御ロジックを作画し、ハードウェアのシートにはソフトウェアのシートで使用したものと同じ命令語シンボルを用いてハードウェアの動作仕様をソフトウェアの制御ロジックと同じ形態で作画する。
【0022】
すなわち、この制御ロジック作画部3は、CADの機能により、ソフトウェアとハードウェアという2つのシート種別を持たせたシートを作画し、例えばソフトウェアシートには本来のソフトウェアである制御ロジックを作画し、ハードウェアシートにはプラント機器の機能をソフトウェアの制御ロジックと同じシンボル・同じ手法で作画する。
【0023】
CADデータ保存部4には、制御ロジック作画部3により作画されたソフトウェアのシート種別を持つCADデータとハードウェアのシート種別を持つCADデータとが保存されている。すなわちCADデータ保存部4には、制御ロジック作画部3によって生成されたCADデータがシート単位で保存される。
【0024】
ハードシート/ソフトシート判定部5は、シート単位のCADデータの、ハードウェアシートとソフトウェアシートのシート種別を判別し、プラント機器の制御系統に含まれるCADデータシートを、指定シート種別毎にCADデータ保存部4から抽出するシート判定抽出部として機能する。
【0025】
ハードシート/ソフトシート判定部5は、例えばコンパイル対象として「ソフトウェア」というシート種別が指定されていた場合、CADデータ保存部4からソフトウェアシートを抽出する。
【0026】
またコンパイル対象として既定の「ソフトウェア」だけでなく、指定部8により「ハードウェア」というシート種別が指定された場合、ハードシート/ソフトシート判定部5は、「ソフトウェア」および「ハードウェア」というシート種別を持つCADデータシートをCADデータ保存部4から抽出し、コンパイル&書き込み部6に渡す。
【0027】
コンパイル&書き込み部6は、ハードシート/ソフトシート判定部5により抽出されたCADデータシートをプラント制御装置2で実行可能な実行ファイルへ変換し、変換した実行ファイルをプラント制御装置2へ送出(ダウンロード)する。
【0028】
次に、図2乃至図4を参照してこの第1実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の動作を説明する。
このプラント制御ロジック設計支援装置1では、制御ロジック作画部3は、CAD機能によりプラント機器の制御ロジック図、つまりCADデータを、ソフトウェアシートとハードウェアシートでそれぞれ作画し(図2のステップS101)、作画したシート単位にCADデータシートをCADデータ保存部4に保存する(ステップS102)。
【0029】
この際の作画手順としては、最初の段階でソフトウェアシートまたはハードウェアシートの何れかを選択してから作画を開始する方法と、作画を完了もしくは作画の途中で、そのCADデータをハードウェアシートとするかソフトウェアシートとするかを選択できるようにする方法があり、いずれかの方法でシート種別(ソフトウェアかハードウェアかを示すシート識別情報)が決定され、決定されたシート種別(シート識別情報)がシート毎に登録されるものとする。
【0030】
ソフトウェアシートに関しては、従来と同様にポンプやバルブ等のプラント機器を制御するための制御ロジックを作画する。
【0031】
図3に示すように、CADデータシート20は、シート種別が「ソフトウェア」のCADシート(ソフトウェアシート)の例である。このCADデータシート20は、シートの左側から入力した信号を用いて、論理和、論理積といった演算を表す命令語シンボルを配置し、それらの命令語シンボルを結線することで制御ロジックを構成し、シート右側へ制御ロジックの演算結果を出力するようにしたものである。
【0032】
一方、ハードウェアシートに関してもソフトウェアシートと同様に、ソフトウェアシートで使用したものと同じ命令語シンボルを配置し結線することで、プラント機器というハードウェアの動作仕様をソフトウェアと同じルールで作画するようにする。
【0033】
ハードウェアの動作仕様をソフトウェアで使用する命令語シンボルを使って表現するというのは一見矛盾するようにも思われるが、ポンプやバルブのようなプラント機器については、起動指令/停止指令、開指令/閉指令というプラント制御装置からの動作指令信号を入力信号と考え、起動状態/停止状態、全開状態/全閉状態という機器からの状態打ち返し信号を出力信号と考えると、ソフトウェアの制御ロジックと同じ形態でハードウェアの動作仕様についても表現可能であることが判る。また、ポンプやバルブといったプラント制御機器の動作仕様についても、フリップフロップ等の制御ロジックで使用する命令語シンボルで表すことが可能である。
【0034】
図4はシート種別が「ハードウェア」のCADデータシート30(ハードウェアシート)の例を示す図である。この図4に示すCADデータシート30の例は、ハードウェアに関する情報をソフトウェアの制御ロジックと同じ形態で作画したシートである。
【0035】
図3および図4の例で明らかなように、ソフトウェアシート20とハードウェアシート30の間で信号の呼び合いがされており、ソフトウェアとハードウェアのインターフェースについても表現されている。
【0036】
図3のCADデータシート20の下部には、シート番号と、シート種別と、シート名称が示されており、それぞれ、「S−012」、「ソフトウェア」、「A弁制御ロジック」となっている。つまり図3に示すCADデータシート20は、S−012というシート番号が付けられた、A弁に関する制御ロジックを表したソフトウェアシートであるということを示す。
【0037】
一方、図4のCADデータ30の下部にも、シート番号と、シート種別と、シート名称が示されており、それぞれ、「H−201」、「ハードウェア」、「A弁ハードロジック」となっており、H−201というシート番号が付けられたA弁に関するハードウェアの動作仕様を表したハードウェアシートであることを示す。
【0038】
そして、図3の例のCADデータシート20にも図4の例のCADデータシート30にも、シートの左端に入力信号欄があり、シートの右端に出力信号欄がある。入力信号欄は、From欄、ID欄、信号名称欄に分かれており、From欄は当該入力信号の発生元のシート番号を示し、ID欄は当該信号を発生元シート上で識別するためのID番号を示し、信号名称欄は当該入力信号の名称を示す。
【0039】
一方、出力信号欄は、To欄、ID欄、信号名称欄に分かれており、To欄は当該出力信号の行き先のシート番号を示し、ID欄は当該入力シートの発生元シートでのID番号を示し、信号名称欄は当該入力信号の名称を示している。
【0040】
例えば図3の例のCADデータシート20の出力信号欄の最上部の出力信号を見ると、「A弁開指令」という、IDが「01」の信号が、「H−201」というハードウェアシートに出力されていることが解る。次いで、行き先シートである図4のCADデータシート30の入力信号欄の最上部の入力信号を見ると、「S−012」というソフトウェアシートから、「A弁開指令」という、IDが「01」の信号が、入力されていることが解る。
【0041】
このように、これまではソフトウェアシート同士間での信号呼び合いのみ表現していたものから、同様の形態にてソフトウェアシートとハードウェアのシートの間の信号呼び合いを表現している。言い換えると、これらCADデータシート20、30はソフトウェアとハードウェアの間のインターフェースを表現していると言える。
【0042】
ハードシート/ソフトシート判定部5は、CADデータ保存部4に保存された前述の図3および図4に例示したCADデータデータ20,30をCADデータ保存部4から読み出し、シート種別が「ソフトウェア」となっているCADデータを抽出し(ステップS103)、コンパイル&書き込み部6へ渡す。
【0043】
コンパイル&書き込み部6は、ハードシート/ソフトシート判定部5から渡されたシート種別が「ソフトウェア」となっているCADデータシートを、プラント制御装置2で実行可能な実行ファイルへ変換し(ステップS104)、変換した実行ファイルをプラント制御装置2へダウンロード(送出)する(ステップS105)。
【0044】
このようにこの第1の実施形態によれば、プラント制御ロジック設計支援装置にてソフトウェアとハードウェアの情報を、それぞれソフトウェアのCADデータシート20と、ハードウェアのCADデータシート30というそれぞれのシート種別を持ったデータシートにCAD機能により作画することができる。
【0045】
また、ハードウェアに関する情報についても、ソフトウェアで使用する命令語シンボルを用いてソフトウェアと同じ形態で記述し、ハードウェアとソフトウェアのインターフェースについてもハードウェアシートとソフトウェアシートのシート間の信号呼び合いと言う形で表現することができる。
【0046】
そして、これらのCADデータから、シート種別を判定するだけで、ソフトウェアシートのみを簡単に抽出し、ソフトウェアの部分のみの制御ロジックをコンパイルし、プラント制御装置2へ書き込むことができる。
【0047】
すなわち、プラントを制御する制御ロジックをCAD図上で表現し、それをプラント制御装置2へ容易に書き込むことができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、図5を参照して第2実施形態について説明する。
図5は第2の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の構成を示す図である。なお上記第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0049】
図5に示すように、この第2の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置は、第1実施形態の構成要素に、さらにハードシートシミュレータ利用部7と指示部8を増設したものである。
【0050】
指示部8は、ハードシート/ソフトシート判定部5に対して、ソフトウェアだけでなくハードウェアというシート種別のCADデータシートもコンパイル対象として抽出するように指示する。
【0051】
ハードシートシミュレータ利用部7は、オペレータからのハードウェアシートに記載された制御ロジックをシミュレータとして利用したい旨の指示(要求)を指示部8から受ける。
【0052】
指示部8により、コンパイル対象として「ソフトウェア」というシート種別が指示された場合、ハードシートシミュレータ利用部7は、シート種別が「ソフトウェア」のCADデータシートを抽出しコンパイル&書き込み部6に渡す。なお「ソフトウェア」というシート種別については、既定のシートとすることで、指示しなくてもコンパイル対象としてもよい。
【0053】
またハードシートシミュレータ利用部7は、例えば「ソフトウェア」だけでなく「ハードウェア」というシート種別のCADデータシートを抽出するよう指示(要求)を受けた場合、ハードシート/ソフトシート判定部5に対してハードウェアシートについてもコンパイル対象として抽出するように指示し、ハードウェアシートについては、シートに記載されたプラント機器の動作仕様を表す制御ロジックをそのままシミュレータとして動作させるようにする。
【0054】
続いて、この第2の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の動作を説明する。この第2の実施形態の場合、ハードシートシミュレータ利用部7は、オペレータからのハードウェアシートに記載されたロジックをシミュレータとして利用したい旨の要求を受けると、ハードシート/ソフトシート判定部5に対してハードウェアシートもコンパイル対象として抽出するように指示する。
【0055】
これにより、ハードシート/ソフトシート判定部5は、シート種別が「ソフトウェア」となっているCADシート20(なおこれを「ソフトウェアシート」という)と、シート種別が「ハードウェア」となっているCADシート30(なおこれを「ハードウェアシート」という)の両方のCADデータを抽出し、コンパイル&書き込み部6へ渡す。
【0056】
コンパイル&書き込み部6は、ハードシート/ソフトシート判定部5から渡されたシート種別が「ソフトウェア」及び「ハードウェア」となっているCADシート20,30(CADデータ)を、プラント制御装置2で実行可能な実行ファイルへ変換し、変換した実行ファイルをプラント制御装置2へダウンロード(送出)する。
【0057】
このように、ハードウェアシートに作画されたプラント機器の動作仕様を制御ロジックの形態で記載したハードウェアロジックについても制御ロジックと同様にコンパイルされ、プラント制御装置2へダウンロードされる。
【0058】
ハードウェアシートには、第1実施形態で示したように、ソフトウェアシート20と同様に、ソフトウェアシートで使用したものと同じ命令語シンボルを配置し結線することで、プラント機器というハードウェアの動作仕様をソフトウェアと同じルールで作画したものであるので、コンパイルしてプラント制御装置2へダウンロードするだけでシミュレータとしてそのまま動作可能となる。
【0059】
また、ソフトウェアシートの制御ロジックとハードウェアシートのハードウェアロジックはシート間の信号呼び合いの形で元々呼び合いがされているため、制御ロジックの出力信号はハードウェアロジックの入力信号となり、ハードウェアロジックの出力信号は制御ロジックの入力信号となる。
【0060】
つまり、ソフトウェアシートから出力された制御指令信号は、ハードウェアシートで入力され、制御指令信号に対応してハードウェアロジックが演算される。こうして演算されたハードウェアロジックからの出力信号は、今度はソフトウェアシートで入力されることとなり、閉ループが構成されることとなる。
【0061】
ハードウェアシートに記載されたハードウェアロジックは、プラント機器の動作仕様を制御ロジックの形態で記載したものであるので、ハードウェアロジックからの出力信号は制御ロジックの出力に応じたプラント機器の動作を模擬することとなり、ハードウェアシートに記載されたハードウェアロジックをシミュレータソフトとして活用することが可能となる。
【0062】
このようにこの第2の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置によれば、ハードウェアシートに作画されたハードウェアロジックを有効に利用することで、プラント機器の動作を模擬するシミュレータソフトとして利用可能となり、制御ロジックの動作検証を行うためのシミュレータソフトを個別に作成する必要が無くなる。
【0063】
この結果、プラントを制御する制御ロジックをハードウェアおよびソフトウェアを含めてCAD図上で表現し、一連の動作を模擬することで、制御ロジックの動作検証を容易に行うことができる。
【0064】
(第3の実施形態)
次に、図6を参照して第3実施形態について説明する。
図6は第3の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の構成を示す図である。なお上記第1および第2実施形態と同様の構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0065】
図6に示すように、この第3の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置は、第2実施形態の構成要素に、さらにエミュレータ部9を増設したものである。
【0066】
エミュレータ部9は、コンパイル&書き込み部6からコンパイルされた実行ファイルを受け取り、プラント制御装置2と同様の制御ロジック演算を行う。
【0067】
続いて、この第3の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置の動作を説明する。この第3の実施形態の場合、オペレータが指示部8からダウンロード先を指定(選択)することにより、コンパイル&書き込み部6は、コンパイル後の実行ファイルのダウンロード先を、プラント制御装置2とエミュレータ部9のいずれか一方に切り換える。
【0068】
ダウンロード先に、例えばプラント制御装置2が指定(選択)された場合は、実行ファイルはプラント制御装置2へダウンロード(送出)され、プラント制御装置2で演算が実行される。つまり前述した第2実施形態と同じ動作(作用)となる。
【0069】
一方、ダウンロード先に、例えばエミュレータ部9が指定(選択)された場合は、実行ファイルはエミュレータ部9へダウンロードされ、エミュレータ部9で演算が実行される。
【0070】
このようにこの第3の実施形態のプラント制御ロジック設計支援装置によれば、ダウンロード先をエミュレータ部9とすることで、プラント制御装置2が無くてもプラント制御ロジック設計支援装置1だけで作成した制御ロジックのシミュレーションが可能となる。通常、プラント制御ロジック設計支援装置1は一般的なコンピュータにて実現されることから、コンピュータを1台準備するだけで、制御ロジックの設計とシミュレーション試験を行えるようになるということで、金額的にも(コスト面でも)納期的にも設置スペース的にも大きな負担となるプラント制御装置2の準備が不要となる。
【0071】
なお、本願発明の実施形態は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形してもよい。例えば実施形態で説明した各要素の拡張、一部の削除を含む変更を行った形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
すなわち、上記実施形態に開示した複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0073】
また上記実施形態に示した各構成要素を、コンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。
【0074】
電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…プラント制御ロジック設計支援装置、2…プラント制御装置、3…制御ロジック作画部、4…CADデータ保存部、5…ハードシート/ソフトシート判定部、6…コンパイル&書き込み部、7…ハードシートシミュレータ利用部、8…指示部、9…エミュレータ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAD機能を有し、このCAD機能により作成したプラント機器の制御ロジックを示すCADデータをシート単位に管理するプラント制御ロジック設計支援装置において、
シート毎にソフトウェアとハードウェアというシート種別を登録可能であり、ソフトウェアのシート種別を持つCADデータシートには命令語シンボルを用いて制御ロジックを作画し、ハードウェアのシート種別を持つCADデータシートにはソフトウェアのCADデータシートで使用したものと同じ命令語シンボルを用いてハードウェアの動作仕様をソフトウェアの制御ロジックと同じ形態で作画する制御ロジック作画部と、
前記制御ロジック作画部により作画されたソフトウェアのシート種別を持つCADデータシートとハードウェアのシート種別を持つCADデータシートが保存されたCADデータ保存部と、
前記プラント機器の制御系統に含まれるCADデータシートを、シート種別毎に前記CADデータ保存部から抽出するシート判定抽出部と、
前記シート判定抽出部により抽出されたCADデータシートをプラント制御装置で実行可能な実行ファイルへ変換し、変換した実行ファイルをプラント制御装置へ送出するコンパイル&書き込み部と
を具備することを特徴とするプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項2】
前記シート判定抽出部は、
前記CADデータ保存部に保存されたCADデータシートの中から、シート種別がソフトウェアと登録されているCADデータシートを抽出し、前記コンパイル&書き込み部へ渡すことを特徴とする請求項1記載のプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項3】
前記シート判定抽出部に対して、ソフトウェアだけでなくハードウェアというシート種別のCADデータシートもコンパイル対象として抽出するように指示する指示部と、
前記指示部により、コンパイル対象として指示されたCADデータシートを抽出するように指示された場合、シート種別がハードウェアのCADデータシートについては、シートに記載されたプラント機器の動作仕様を表すロジックをそのままシミュレータとして動作させるようにするハードウェアシートシミュレータ利用部と
を具備することを特徴とする請求項1記載のプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項4】
前記コンパイル&書き込み部からコンパイルされた実行ファイルを受け取り、前記プラント制御装置と同様の制御ロジック演算を行うエミュレータ部を具備することを特徴とする請求項1または2いずれか記載のプラント制御ロジック設計支援装置。
【請求項5】
CAD機能を有し、このCAD機能により作成したプラント機器の制御ロジックを示すCADデータをシート単位に管理するプラント制御ロジック設計支援装置に処理を実行させるプログラムにおいて、
前記プラント制御ロジック設計支援装置を、
シート毎にソフトウェアとハードウェアというシート種別を登録可能であり、ソフトウェアのシート種別を持つCADデータシートには命令語シンボルを用いて制御ロジックを作画し、ハードウェアのシート種別を持つCADデータシートにはソフトウェアのCADデータシートで使用したものと同じ命令語シンボルを用いてハードウェアの動作仕様をソフトウェアの制御ロジックと同じ形態で作画する制御ロジック作画部と、
前記制御ロジック作画部により作画されたソフトウェアのシート種別を持つCADデータシートとハードウェアのシート種別を持つCADデータシートが保存されたCADデータ保存部と、
前記プラント機器の制御系統に含まれるCADデータシートを、シート種別毎に前記CADデータ保存部から抽出するシート判定抽出部と、
前記シート判定抽出部により抽出されたCADデータシートをプラント制御装置で実行可能な実行ファイルへ変換し、変換した実行ファイルをプラント制御装置へ送出するコンパイル&書き込み部
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
CAD機能を有し、このCAD機能により作成したプラント機器の制御ロジックを示すCADデータをシート単位に管理するプラント制御ロジック設計支援装置におけるプラント制御ロジック設計支援方法において、
前記プラント制御ロジック設計支援装置が、
シート毎にソフトウェアとハードウェアというシート種別を登録可能であり、ソフトウェアのシート種別を持つCADデータシートには命令語シンボルを用いて制御ロジックを作画し、ハードウェアのシート種別を持つCADデータシートにはソフトウェアのCADデータシートで使用したものと同じ命令語シンボルを用いてハードウェアの動作仕様をソフトウェアの制御ロジックと同じ形態で作画し、CADデータ保存部に保存し、
前記プラント機器の制御系統に含まれるCADデータシートを、シート種別毎に前記CADデータ保存部から抽出し、
抽出したCADデータシートをプラント制御装置で実行可能な実行ファイルへ変換し、変換した実行ファイルをプラント制御装置へ送出する
ことを特徴とするプラント制御ロジック設計支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242933(P2011−242933A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113256(P2010−113256)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】