説明

プリズムシート用積層フィルム、プリズムシート用積層フィルムの製造方法、プリズムシート、及び表示装置

【課題】プリズム層頂点の接触痕が残ることを防ぐ。
【解決手段】プリズムシート16は、ポリエステルからなる支持体11と、支持体11の一方の面に形成される易接着層12と、支持体11の他方の面に形成される裏面層13と、易接着層12の上に形成されるプリズム層14とから構成される。裏面層13は、ガラス転移点温度(Tg)が90℃以上の非水溶性ポリマーを主たる構成成分とし、波長が380nm〜780nmの光に対する平均反射率が3.5%以下である。裏面層13を、ガラス転移点温度(Tg)が90℃以上の非水溶性ポリマーを主たる構成成分することで、プリズム層頂点の接触痕がもう一方のプリズムシートの裏面層に残ることがない。また、裏面層13の平均反射率を3.5%以下とすることで、輝度向上特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイに搭載されるプリズムレンズシートなどのプリズムシート用部材として好適に用いられるプリズムシート用積層フィルム、プリズムシート用積層フィルムの製造方法、プリズムシート、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、特に二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性、低吸湿性から各種の光学フィルムとして多く利用されている。例えば、液晶ディスプレイでは、プリズムシート、反射防止シート、光拡散シート、ハードコートシートなどのベースフィルムに用いられている。また、プラズマディスプレイでは、IR吸収シート、電磁波シールドシート、調色シート、反射防止シート、防眩シート、ハードコートシートなどのベースフィルムに用いられている。
【0003】
液晶ディスプレイのプリズムシート用途では、ポリエステルフィルムの片面に、紫外線硬化性樹脂等により形成されるプリズム層が設けられる。このプリズム層はポリエステルフィルムとの接着性が要求される。一般に、ポリエステルフィルムの上に直接プリズム層を設けると良好な接着性が得られないため、ポリエステルフィルムの上に易接着層と呼ばれる塗布層を設けて、この上にプリズム層を塗設することが行われている。例えば特許文献1にはポリエステルをバインダとした易接着層が、特許文献2には、ポリエステルとウレタンをバインダとした易接着層が示されている。
【0004】
プリズム層と反対側の裏面には、裏面保護層やニュートンリング防止層等を設置することが可能である。しかしながら、保護層等の機能付与よりも、コスト削減に重点を置く観点から、ポリエステル支持体そのものが裏面である場合、あるいはプリズム層と支持体との接着に用いた易接着層が、そのままポリエステル支持体の裏面に設置されている場合がほとんどである。
【0005】
ここで、ポリエステル支持体そのものが裏面である場合には、輝度特性の低下が発生するという問題がある。これは、2軸延伸ポリエステルフィルム支持体の特性として、延伸方向である面方向の屈折率が高く、高反射率表面特性を示すことに起因する。つまり、裏面側の高反射表面特性のために、裏面から入射してくるバックライト光の透過率が低下してしまうからである。
【0006】
また、プリズム層と支持体との接着に用いた易接着層をそのままポリエステル支持体の裏面に設置した場合、通常、易接着層の屈折率は、2軸延伸ポリエステルフィルム支持体の面方向屈折率より低いため、表面反射率が低下し透過率の向上が期待できる。例えば、特許文献3では、低屈折易接着層を両面にコーティングし、比較的高い透過率および輝度特性を得るようにしている。
【0007】
さらに、ポリエステル支持体は、比較的簡単に帯電する。特に液晶ディスプレイのプリズムシートなどのレンズシートの用途としては、レンズシートを覆う保護シートの剥離時などに帯電しやすい。その際、電気的なエネルギーによって、レンズシートは周囲の塵や埃などの異物を吸着する。吸着した塵や埃などは、光学特性や外観の悪化を招くため、可能な限り取り除かれることが好ましい。このような事情の下で、レンズシートの帯電に起因する様々な不都合を解消する技術がいくつか提案されている。
【0008】
例えば、特許文献4では、レンズシートのレンズ面あるいはその裏面の少なくとも一方の面に帯電防止処理を施している。また、特許文献5では、レンズシートのレンズ層を、導電性微粒子が分散された樹脂組成物で構成することによって、レンズ層の表面抵抗を所定値以下にしている。また、特許文献6では、レンズフィルムに対して導電性層を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−294826号公報
【特許文献2】特開2000−229395号公報
【特許文献3】特開2007−55217号公報
【特許文献4】特開平8−286004号公報
【特許文献5】特開平11−23815号公報
【特許文献6】特開平11−202104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に近年の薄型液晶ディスプレイ用のバックライト構成では、プリズムシートは通常2枚重ねで使用されるため、プリズムシート間のクリアランスが狭くなる。このとき、一方のプリズムシートのプリズム層頂点は他方のプリズムシートの裏面側易接着層に接した形で、重ね合わされる。そのため、特許文献3に示すようなプリズムシートを2枚重ねにした場合には、重ね合わせによって、一方のプリズムシートのプリズム層頂点の接触痕が、経時で他方のプリズムシートの裏面側易接着層に残ることとなる。このプリズム層頂点の接触痕はスジ状の故障とみなされ、液晶ディスプレイの表示性能に影響を与えることとなる。
【0011】
さらに特許文献3に示されるようなプリズムシートの場合には、易接着性を確保する必要性から十分な低屈折率化が期待できなく、その場合十分な輝度向上特性が得られない。逆に、低屈折率化のために易接着層の組成内容に制約が発生するため、多種多様なプリズム層樹脂に対して十分な易接着性を得ることが困難になるという問題がある。また、特許文献4に示されるプリズムシートでは、特許文献3同様、重ね合わせて使用した場合にはプリズム層レンズ頂点の接触痕の問題が発生するおそれがある。特許文献5のレンズシートや特許文献6のレンズフィルムは、帯電防止性能を有しているものの、高反射率裏面特性を有すると考えられ、十分な輝度向上特性が期待できない。
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、多種多様なプリズム層に対して充分な接着性が得られるとともに、プリズム層頂点の接触痕がスジ状に残ること無く、さらには、輝度向上特性が得られるようにしたプリズムシート用積層フィルム、プリズムシート用積層フィルムの製造方法、プリズムシート、及び表示装置を提供することを目的とする。加えて、帯電防止性能を有するプリズムシート用積層フィルム、プリズムシート用積層フィルムの製造方法、プリズムシート、及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のプリズムシート用積層フィルムは、二軸延伸ポリエステルからなる支持体と、前記支持体の一方の面に設けられる易接着層と、前記支持体の他方の面に設けられ、ガラス転移点温度(Tg)が90℃以上であり、且つ非水溶性の熱可塑性樹脂を主たる構成成分とする裏面層とを有することを特徴とする。
【0014】
前記裏面層は、波長が380nm〜780nmの光に対する平均反射率が3.5%以下であることが好ましい。前記裏面層の屈折率は1.20〜1.51であることが好ましい。
【0015】
裏面層と易接着層の少なくとも一方が表面抵抗値1012Ω/□以下の導電性を有することが好ましい。裏面層と易接着層の少なくとも一方に金属酸化物粒子を含むことが好ましい。裏面層と易接着層の少なくとも一方に導電性ポリマーを含むことが好ましい。
【0016】
前記金属酸化物は、その短軸に対する長軸の比が3〜50の範囲にある針状構造を有する酸化スズであることが好ましい。前記導電性ポリマーはπ電子共役系であってポリチオフェン系であることが好ましい。
【0017】
前記裏面層は複数の層からなり、前記複数の層のうち空気と接する最外層の屈折率が1.20〜1.51であることが好ましい。前記裏面層は、前記支持体の他方の面上に設けられる帯電防止層と、前記帯電防止層の上に設けられる低屈折率層とからなり、前記帯電防止層は表面抵抗値1012Ω/□以下の導電性を有し、前記低屈折率層は前記最外層であって屈折率が1.20〜1.51であることが好ましい。
【0018】
本発明のプリズムシート用積層フィルムの製造方法は、ポリエステルからなる支持体を二軸延伸した後に、前記支持体の一方の面に前記易接着層を塗布し、前記支持体の他方の面に前記裏面層を塗布する工程によって、上記記載の本発明のプリズムシート用積層フィルムを製造することを特徴とする。
【0019】
本発明のプリズムシートは、上記記載の本発明のプリズムシート用積層フィルムの前記易接着層にプリズム層が設けられていることを特徴とする。本発明の表示装置は、上記記載の本発明のプリズムシート用積層フィルムを搭載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラス転移点温度(Tg)が90℃以上で非水溶性の熱可塑性樹脂を主たる構成成分とする裏面層を支持体の他方の面に設けることで、プリズムシートを2枚重ねで使用した際に、プリズム層頂点の接触痕がもう一方のプリズムシートの裏面層に残ることがない。また、裏面層と易接着層の少なくとも一方が表面抵抗値1012Ω/□以下の導電性を有することにより、塵や埃などの異物がプリズムシートに吸着することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態のプリズムシート用積層フィルムの要部断面図である。
【図2】第1実施形態のプリズムシートの要部断面図である。
【図3】プリズム層頂点の接触痕のランク付けに用いられるガラス板、荷重、及び裏面側が1層構造のプリズムシートを示す断面図である。
【図4】第2実施形態のプリズムシート用積層フィルムの要部断面図である。
【図5】第2実施形態のプリズムシートの要部断面図である。
【図6】プリズム層頂点の接触痕のランク付けに用いられるガラス板、荷重、及び裏面側が2層構造のプリズムシートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、本発明の第1実施形態のプリズムシート用積層フィルム10は、支持体11と、支持体11の一方の面に形成される易接着層12と、支持体11の他方の面に形成される裏面層13とから構成される。
【0023】
図2に示すように、本発明の第1実施形態のプリズムシート15は、図1に示すプリズムシート用積層フィルム10の易接着層12の上に、プリズム層14を形成することで、構成されている。プリズムシート15は二枚重ねにして液晶ディスプレイなどの表示装置に組み込まれる。
【0024】
[支持体]
支持体11はポリエステルからなる。ポリエステルとしては、特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなどを用いることができる。これらの中でコストや機械的強度の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0025】
支持体11は、機械的強度を向上させるために、延伸を行ったものであることが好ましい。特に二軸延伸したものが好ましい。延伸倍率には特に制限はないが1.5〜7倍が好ましく、より好ましくは2〜5倍程度である。特に縦横方向に同じ倍率で、例えば2〜5倍程度延伸することが好ましい。これら範囲内の延伸倍率で二軸延伸することで、十分な機械的強度が得られ、また均一な厚みを得ることができる。一方、延伸倍率がこれら範囲より小さいと充分な機械的強度が得られず、逆に大きすぎると均一な厚みを得ることが難しくなる。
【0026】
支持体11の厚みは20〜400μmが好ましく、より好ましくは35〜350μmであり、さらに好ましくは50〜250μm程度である。支持体11の厚みをこれら範囲内に収めることによって、腰を有するため取り扱いやすくなり、また、表示装置の小型化を妨げることがないためコスト上有利である。一方、厚みが20μmより小さいものは腰がないため取り扱いにくく、厚みが400μmを超えるものは表示装置の小型化の妨げとなるだけでなくコスト上も不利となる。
【0027】
[易接着層]
易接着層12は、支持体11との易接着性を重視した第一層12a、プリズム層14との易接着性を重視した第二層12bからなる二層構成とされる。易接着層12の膜厚(第一層12a及び第二層12bの総膜厚)は20〜300nmが好ましく、より好ましくは40〜200nm程度である。これら範囲内の膜厚とすることで、光干渉による着色の問題なく、プリズム層14との十分な接着性能が得られる。
【0028】
第一層12aには、支持体11に対して親和性を有するポリエステル樹脂などのバインダが含まれる。ポリエステル樹脂とは主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常、ジカルボン酸とジオールの反応で得られる。ジカルボン酸としては例えばフマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などがあり、ジオールとしては例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオールなどがある。ポリエステル樹脂およびその原料については例えば「ポリエステル樹脂ハンドブック」(滝山栄一郎著、日刊工業新聞社、昭和63年発行)に記載されている。さらに好ましくは、ナフタレンジカルボン酸をジカルボン酸成分として使用したものがよい。ナフタレン環を含有することにより、塗工層としての屈折率の向上が可能で、二層構成時の光干渉による着色を軽減することができる。また、支持体11のオリゴマー析出を防止する効果が得られる。
【0029】
第二層12bにはプリズム層14に対して親和性を有するバインダが含まれている。プリズム層14にはアクリル系の紫外線硬化樹脂が多く含まれるため、これに親和性のあるアクリル樹脂、さらにはポリウレタン樹脂を第二層12bのバインダとすることが好ましい。またアクリル樹脂とポリウレタン樹脂をブレンドしたものを第二層12bのバインダとしても良い。
【0030】
アクリル樹脂とはアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレートなどを主成分としてこれらと共重合可能なモノマー(例えばスチレン、ジビニルベンゼンなど)を共重合したポリマーである。
【0031】
ポリウレタン樹脂とは主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI、MDI、NDI、TODI、HDI、IPDIなどがあり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオールなどがある。
さらに、本発明のイソシアネートとしてはポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用することができる。以上述べたポリイソシアネート、ポリオール及び、鎖延長処理については例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社、昭和62年発行)に記載されている。
【0032】
第一層12a及び第二層12bのバインダとしては、上記のポリマーを有機溶剤に溶解して用いてもよいし、水分散物を用いてもよい。また、環境負荷を抑えるために、水分散物を用いて水系塗布することが好ましい。水分散物としては下記のような市販ポリマーを用いてもよい。スーパフレックス830、460、870、420、420NS(第一工業製薬(株)製ポリウレタン)、ハイドランAP-40F、WLS-202、HW-140SF(大日本インキ化学工業(株)製ポリウレタン)、オレスターUD500、UD350(三井化学(株)製ポリウレタン)、ジュリマーET325、ET410、SEK301(日本純薬(株)製アクリル)、ボンコートR3380E、SFA-33(大日本インキ化学工業(株)製アクリル)、ネオクリルXK-12、XK-220(楠本化成(株)製アクリル)、ファインテックスES650、ES2200(大日本インキ化学工業(株)製ポリエステル)、バイロナールMD1400、MD1480(東洋紡(株)製ポリエステル)、プラスコートZ-221、Z-561、Z-730、RZ-142、Z-687(互応化学工業(株)製ポリエステル)。
【0033】
第一層12a及び第二層12bのバインダとして用いるポリマーの分子量には特に制限はないが、通常重量平均分子量で2000から1000000程度のものが好ましい。この範囲の重量平均分子量とすることで、塗布層の強度を充分に確保することができ、優れた塗布面状にすることができる。
【0034】
易接着層12(第一層12a及び第二層12b)には、分子内にカルボジイミド構造を複数個有する化合物(以下「カルボジイミド系化合物」と称する)を添加することが好ましい。カルボジイミド系化合物としては、分子内に複数のカルボジイミド基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。易接着層12にカルボジイミド系化合物を含有することで、ポリエステルフィルムのカルボキシル基末端との反応性に優れるのみならず、プリズム層14との易接着性が向上する。これは、易接着層12の弾性率低下によると推定される。
【0035】
ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。ここで分子内にカルボジイミド構造を複数有する化合物の合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能であるが、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。
【0036】
合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。
【0037】
具体的には、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメ
チルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。また、本発明に用いうるカルボジイミド系化合物は、例えば、カルボジライトV−02−L2、V−02、V−04(日清紡(株)製)などの市販品として入手可能である。
【0038】
カルボジイミド系化合物は易接着層12のバインダに対して1〜200質量%の範囲で添加することが好ましく、5〜100質量%の範囲で添加することがより好ましい。これら範囲内で添加することで、充分な易接着性を得ることができ、優れた塗布面状にすることができる。
【0039】
[裏面層]
裏面層13は、反射防止の観点から、波長550nmの光に対する屈折率が1.20〜1.51であることが好ましく、より好ましくは1.28〜1.50である。また、裏面層13は、可視光領域(380nm〜780nm)の光に対する反射率の平均値(平均反射率)が3.5%以下であることが好ましい。裏面層13の屈折率を1.20〜1.51又は1.28〜1.50の範囲に収めることで、平均反射率を3.5%以下にすることができるため、十分な輝度特性を得ることができる。特に、裏面層13の屈折率を1.28にした場合には、平均反射率を確実に3.5%以下にすることができるため、極めて高い輝度特性を得ることができる。一方、裏面層13の屈折率が1.51を超えると、裏面層13としての平均反射率3.5%以下を達成することが困難な場合があり、十分な輝度特性を得ることができないことがある。一方、裏面層13の屈折率を1.20未満にすることは技術的に困難な場合がある。
【0040】
また、裏面層13の膜厚は(550/(4n))±40nmの範囲内が好ましく、より好ましくは(550/(4n))±30nmの範囲内である(ただしnは裏面層13の屈折率)。これら範囲内の膜厚とすることで、顕著な着色を生じさせることなく、十分な低反射性能を得ることができる。
【0041】
裏面層13を構成する主たる熱可塑性樹脂、つまりバインダは、複素環、芳香環を含まないアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が好ましい。バインダのガラス転移点温度(Tg)は、90℃以上が好ましく、さらに好ましくは100℃以上が良い。裏面層13のバインダを複素環、芳香環を含まないアクリル樹脂等とし、90℃又は100℃以上のTgとすることで、高温環境下でプリズムシートを二枚重ねで使用した場合においても時間の経過とともに、一方のプリズムシートの裏面層13に、他方のプリズムシートのプリズム層頂点の接触痕がスジ状の凹みとして残ることがない。この接触痕は、液晶ディスプレイの表示性能を落とす要因の一つとなるが、バインダのガラス転移点温度(Tg)を90℃以上とすることで、このような表示性能の劣化が起こることがない。
【0042】
さらには裏面層13のバインダを非水溶性とすることで、80%RH以上の高湿環境下でも前記接触痕が残ることがない。
【0043】
非水溶性のバインダとしては、例えば、有機溶剤に可溶なポリマーが好ましく、非水溶性ポリマーを水分散化したラテックスポリマーが環境上好ましい。なお、ラテックスポリマーとしては、共重合ポリエステル樹脂、芳香族系ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂共重合体などが挙げられる。
【0044】
裏面層13の平均反射率を低下させるためには、低屈折率素材の選択が好ましく、MMA(メタクリル酸メチル)含有率が高いアクリル樹脂が特に好ましい。なお、プリズム層頂点の接触痕が裏面層13に残る可能性を避けるために、裏面層13には非水溶性且つ高Tgのポリマーを主成分として含有していることが必要である。このようにすることによって、本願発明のプリズムシート用積層フィルムは、高温高湿環境下で液晶ディスプレイに用いた場合に、プリズムシートを二枚重ねで使用した場合においても、低い平均反射率を維持しコントラストが高く、均一で優れた表示性能を得ることが出来る。
【0045】
易接着層12及び裏面層13には、必要に応じてマット剤、界面活性剤、滑り剤などを含有してもよい。
【0046】
易接着層12及び裏面層13に含有させるマット剤としては、有機又は無機の微粒子のいずれでもよい。たとえばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのポリマー微粒子やシリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの無機微粒子を用いることができる。これらの中でポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカはすべり性改良効果、コストの観点から好ましい。
【0047】
マット剤の平均粒径は0.01〜12μmが好ましく、より好ましくは0.03〜9μmの範囲である。これら範囲内の平均粒径とすることで、表示装置の表示品位の低下をきたすことなく、すべり性改良効果を充分に得ることができる。また平均粒径の異なるマット剤を2種類以上用いることもできる。
【0048】
マット剤の添加量は、平均粒径によっても異なるが、0.1〜100mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜50mg/mの範囲である。これら範囲内の添加量とすることで、表示装置の表示品位の低下をきたすことなく、すべり性改良効果を充分に得ることができる。
【0049】
易接着層12及び裏面層13に含有させる界面活性剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤については例えば「界面活性剤便覧」(西 一郎、今井 怡知一郎、笠井 正蔵編 産業図書(株) 1960年発行)に記載されている。界面活性剤の添加量としては0.1〜30mg/mが好ましく、より好ましくは0.2〜10mg/mの範囲である。これら範囲内の添加量とすることで、ハジキを発生させることなく、面状を良好にすることができる。
【0050】
易接着層12及び裏面層13に用いることができる滑り剤としては、合成又は天然ワックス、シリコーン化合物、R-O-SOM(ただしRは置換又は無置換のアルキル基、アルキル基の炭素数は3から20の整数、Mは一価の金属原子を表す)。
【0051】
すべり剤の具体例としてはセロゾール524、428、732-B、920、B-495、ハイドリンP-7、D-757、Z-7-30、E-366、F-115、D-336、D-337、ポリロンA、393、H-481、ハイミクロンG-110F、930、G-270(以上中京油脂(株)製)、ケミパールW100、W200、W300、W400、W500、W950(以上三井化学(株)製)などのワックス系、KF‐412、413、414、393、859、8002、6001、6002、857、410、910、851、X−22−162A、X−22−161A、X−22−162C、X−22−160AS、X−22−164B、X−22−164C、X−22−170B、X−22−800、X−22−819、X−22−820、X−22−821、(以上信越化学工業(株))などのシリコーン系、C16H33−O−SO3Na、C18H37−O−SO3Naなどの上記一般式で表される化合物などを挙げることができる。これらのすべり剤は0.1から50mg/mの範囲で添加することが好ましく、1〜20mg/mの範囲で添加することがより好ましい。これら範囲内で添加することで、面状を良好にしつつ、すべり性を充分に得ることができる。
【0052】
[プリズム層]
プリズム層14は液晶ディスプレイのバックライトユニットの正面輝度を向上させるために設けられるものであり、アクリル系の紫外線硬化樹脂などが用いられ、表面にはプリズム層パターンが形成されている。紫外線硬化樹脂の例としては、2,4−ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,3,5−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビズ(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフォン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(メタクロイルチオフェニル)スルフォイド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ジ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フォスフェート等の多官能(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。これらは、単独または2種以上を混合して使用することもできる。
【0053】
[易接着層及び裏面層の塗設方法]
易接着層12及び裏面層13を支持体11に対して塗設する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター塗布、スライドコーター塗布などの公知の方法が用いられる。塗布溶媒も水、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンなど、及びこれらの混合系などの水系、有機溶剤系の塗布溶剤を用いることができる。これらのうちで水を塗布溶媒として用いる方法は、コスト及び製造の簡便さを考えると好ましい。なお、二軸延伸前の支持体11に対して易接着層12及び裏面層13を塗布し、その後に二軸延伸を行うのではなく、二軸延伸後の支持体11に対して、易接着層12及び裏面層13を塗布することによって、光学特性が均一で、且つ面状に優れたプリズムシート用積層フィルム10を作ることができる。
【0054】
塗布は、横延伸後の支持体11の耳部回収を可能にするため、二軸延伸した後に行う。易接着層12の第二層12bは、第一層12aと同時に塗布して乾燥してもよいし、第一層12aを塗布乾燥した後に塗布してもよい。裏面層13は、易接着層の第一層12aの塗布時か第二層12bの塗布時に支持体11の裏面側に塗布乾燥することが生産上都合が良い。
【0055】
図4に示すように、本発明の第2実施形態のプリズムシート用積層フィルム30は、支持体11の他方の面に、帯電防止層32a及び低屈折率層32bの二層構造からなる裏面層32を形成した以外は、第1実施形態のプリズムシート用積層フィルム10と同様である。裏面層32は、支持体11側から帯電防止層32a、低屈折率層32bの順で形成され、低屈折率層32bは、裏面層32のうち最も外側に位置する層であり、空気と接する最外層となっている。また、図5に示すように、本発明の第2実施形態のプリズムシート36は、支持体11の他方の面に帯電防止層32a及び低屈折率層32bの二層構造からなる裏面層32を形成した以外は、第1実施形態のプリズムシート15と同様である。プリズムシート36は二枚重ねにして液晶ディスプレイなどの表示装置に組み込まれる。なお、第2実施形態のプリズムシート用積層フィルム30及びプリズムシート36の具体的な構成については、裏面層32以外は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
[帯電防止層]
帯電防止層32aは、第1実施形態の裏面層13と同様に、ガラス転移点温度(Tg)が好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上の熱可塑性樹脂、つまりバインダを主として含んでいる。Tgが90℃未満では、プリズムシートを重ね合わせて使用する場合にはプリズム層頂点によって接触痕が発生することがある。また、帯電防止層32aのバインダとしては、非水溶性であり、例えば有機溶剤に可溶なポリマーが使用できる。またバインダとして、非水溶性ポリマーを水分散化したラテックスポリマーが環境上好ましい。非水溶性ポリマーのバインダを使用した場合には、高湿環境下でもプリズム層頂点による接触痕が発生しない。なお、非水溶性、且つ高Tgポリマーとしては、MMA含有率が高いアクリル樹脂が好適に用いることができる。また、ラテックスポリマーとしては、共重合ポリエステル樹脂、芳香族系ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂共重合体などが挙げられる。
【0057】
帯電防止層32aには、電子導電により導電性を発現する金属酸化物粒子が含まれている。金属酸化物粒子としては、一般の金属酸化物を使用することができ、例えば、ZnO、TiO、SnO、Al、In、MgO、BaO、MoO、これらの複合酸化物、またはこれらの金属酸化物に更に異種元素を少量含む金属酸化物、等が挙げられる。このような金属酸化物のうち、SnO、ZnO、TiO、Inが好ましく、SnOが特に好ましい。なお、帯電防止層32aには、電子導電により導電性を発現する金属酸化物粒子の代わりに、ポリチオフェン系などπ電子共役系の導電性ポリマーを含有させてもよい。また、帯電防止層32aには、第1実施形態の易接着層12及び裏面層13と同様に、必要に応じてマット剤、界面活性剤、滑り剤などを含有してもよい。
【0058】
ここで、金属酸化物粒子を有する帯電防止層32aにおいては、バインダーに対して金属酸化物粒子を50〜500重量%で含有させることが好ましく、100〜300重量%で含有させることがより好ましく、120〜170重量%で含有させることがさらに好ましい。これら範囲で含有させることにより、着色、耐傷性の悪化を起こすことなく、帯電防止性能を得ることができる。また、導電性ポリマーを有する帯電防止層32aにおいては、バインダーに対して導電性ポリマーを1〜20重量%で含有させることが好ましく、3〜10重量%で含有させることがより好ましく、4〜8重量%で含有させることがさらに好ましい。これら範囲で含有させることにより、着色、耐傷性の悪化を起こすことなく、帯電防止性能を得ることができる。
【0059】
異種元素を少量含む金属酸化物としては、例えば、ZnOに対してAlまたはInを少量ドープしたもの、TiOに対してNbまたはTaを少量ドープしたもの、Inに対してSnを少量ドープしたもの、或いはSnOに対してSb、Nb又はハロゲン元素を少量ドープしたもの、等が挙げられる。特にSbがドープされたSnO粒子が好ましい。ここで、金属酸化物に対してドープする異種元素のドープ量としては、0.01〜30モル%が好ましく、0.1〜10モル%がより好ましい。これら範囲内でドープすることで、金属酸化物の粒子自体の黒化度を増加させることなく、十分に導電性を得ることができる。なお、異種元素のドープ量が0.01モル%未満の場合には、十分な導電性を得ることができない場合がある。一方、異種元素のドープ量が30モル%を超えると、金属酸化物の粒子自体の黒化度が増して帯電防止層32aが黒ずみ、その結果、プリズムシート用途として適さなくなることがある。
【0060】
帯電防止層32aに含有される金属酸化物粒子の構造としては、針状構造をもつものが良い。針状構造を持つ金属酸化物粒子は、帯電防止層32aを薄膜状に塗布したときの金属酸化物粒子同士の接触確率が高くなり、少量で所望の導電性を得ることが出来るため、黒ずみの観点、さらにはコストの面で有利である。針状粒子の金属酸化物の平均長軸長は、0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.4μmがより好ましい。平均長軸長をこれら範囲内とすることで、針状構造を確実に形成することができるとともに、帯電防止層32aの平面性を維持することができる。
【0061】
また、短軸に対する長軸の比が3〜50の範囲が好ましく、4〜40の範囲がさらに好ましい。これら範囲内の比にすることで、金属酸化物粒子同士の接触確率を向上させることができるとともに、針状構造を確実に形成することができる。
【0062】
帯電防止層32aは、その上の裏面層32の表面抵抗値が1012Ω/□以下となるように構成することが好ましく、1011Ω/□以下に構成することがより好ましい。1012Ω/□以下又は1011Ω/□以下の表面抵抗値にすることで、十分な帯電防止性を得ることができるため、プリズムシートに塵や埃が吸着することがない。
【0063】
帯電防止層32aは、反射防止の観点から、波長550nmの光に対する屈折率に関しての制限は特に無い。なお、屈折率1.2未満にすることは技術的に困難であり、屈折率1.70以上は、塗布層の耐傷性が損なわれるため好ましくない。
【0064】
帯電防止層32aの膜厚は30〜120nmが好ましく、40nm〜100nmがより好ましい。膜厚をこれら範囲内とすることで、耐傷性、透明性を悪化させることなく、帯電防止性能を十分に確保することができる。また、帯電防止層32a及び低屈折率層32bからなる裏面層32全体としての膜厚は(550/(4n))±40nmの範囲内が好ましく、より好ましくは(550/(4n))±30nmの範囲内であることが好ましい(ただし、nは帯電防止層32aと裏面層32の屈折率の平均)。
【0065】
[低屈折率層]
低屈折率層32bは、膜厚以外は第1実施形態の裏面層13と同様の構成を有している。低屈折率層32bの膜厚は、帯電防止層32aとの膜厚の関係を満たせばよいが、塗布面状を損なうことなく、帯電防止層32aに添加している架橋アクリル単分散粒子などのマット剤の脱落を防止するためには、10〜3000nmが好ましく、より好ましくは20〜1500nm程度である。膜厚をこれら範囲にすることによって、光干渉による着色の問題なく、十分な低屈折率特性を確保することができる。
【0066】
[易接着層、裏面層の塗設方法]
易接着層12、裏面層32を支持体11に対して塗設する方法には、第1実施形態の塗設方法と同様であり、二軸延伸した後に行われる。易接着層12の第二層12bは、第一層12aを塗布乾燥した後に塗布乾燥され、低屈折率層32bも同様に、帯電防止層32aを塗布乾燥した後に塗布乾燥する。好ましくは、易接着層の第一層12aと帯電防止層32aを支持体11の表面及び裏面に塗布乾燥した後に、易接着層の第二層12bと低屈折率層32bを支持体11の表面及び裏面に塗布乾燥することが、生産上都合がよい。
【0067】
なお、上記第1及び第2実施形態では、易接着層を第一層12a及び第二層12bの二層構造で構成したが、これに限らず、複数の層又は単層であってもよい。例えば、易接着層12を単層で構成する場合、バインダとして、二層構成時の第一層12aのバインダ又は第二層12bのバインダのいずれか一方を用いてもよく、また、第一層12aのバインダと第二層12bのバインダをブレンドしたものを用いても良い。また、易接着層12を単層で構成した場合であっても、上記実施形態で示したカルボジイミド系化合物、マット剤、界面活性剤、及び滑り剤などを含有させることが好ましい。
【0068】
また、上記第2実施形態では、裏面層32を帯電防止層32a及び低屈折率層32bの二層構造で構成し、帯電防止層32aに帯電防止機能を付与したが、二層構造ではなく一層構造の裏面層に対して、電子導電により導電性を発現する金属酸化物粒子とπ電子共役系導電性ポリマーとのいずれか一方、または双方を裏面層32に含有させることにより、裏面層の表面抵抗を1012Ω/□以下に抑えてもよい。また、易接着層の第一層12aまたは第二層12bに、電子導電により導電性を発現する金属酸化物粒子とπ電子共役系導電性ポリマーとのいずれか一方を含有させることにより、易接着層の第二層12bの表面抵抗を1012Ω/□以下に抑えてもよい。
【実施例】
【0069】
[実施例1]
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
[支持体]
Ge化合物を主たる触媒として重縮合した固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒータ温度が280〜300℃の設定温度の押し出し機内で溶解させた。溶解させたPET樹脂をダイ部より静電印加されたチルロール上に吐出させ、非結晶ベースを得た。得られた非結晶ベースをベース走行方向に3.1倍に延伸後、幅方向に3.8倍延伸し、厚さ125μmの支持体11を得た。
【0071】
[易接着層]
上記支持体11(面方向平均屈折率1.66)の一方の面にコロナ放電処理を施し、下記組成からなる易接着層用第一層塗布液Xをバーコート法により支持体11上に塗布した。塗布量を7.1cc/mとし、170℃で1分乾燥した。これにより、支持体11上に易接着層の第一層12aを形成した。
【0072】
[易接着層用第一層塗布液X]
ポリエステル樹脂バインダ 45.1質量部
(互応化学(株)製、プラスコート Z-687、固形分25質量%、Tg=約110℃)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 15.9質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
オキサゾリン化合物 7.1質量部
(日本触媒(株)製、エポクロスK-2020E、固形分40質量%)
界面活性剤A 12.7質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 15.5質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0073】
易接着層の第一層12aの形成に引き続いて、第一層12a上にコロナ放電処理を施した。そして、下記組成からなる易接着層用第二層塗布液Yをバーコート法により第一層12a上に塗布した。塗布量を7.1cc/mとし、145℃で1分乾燥した。これにより、支持体11上に易接着層の第二層12bを形成した。
【0074】
[易接着層用第二層塗布液Y]
アクリル樹脂バインダ 34.1質量部
(ダイセル化学工業(株)製、EM48D、固形分 27.5質量%、Tg=約42℃)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 4.7質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
オキサゾリン化合物 7.1質量部
(日本触媒(株)製、エポクロスK-2020E、固形分40質量%)
界面活性剤A 12.5質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 15.5質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
シリカ微粒子分散液 1.6質量部
(日本アエロジル(株)製、アエロジルOX-50の水分散物、固形分10質量%)
コロイダルシリカ 0.6質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
すべり剤 1.6質量部
(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30質量%)
防腐剤 1.0質量部
(1,2-ベンゾチアゾリン-3-オンのメタノール溶液、固形分3.5質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0075】
[裏面層]
支持体11の一方の面に易接着層12を形成した後、その他方の面に下記組成からなる裏面層用塗布液Aをバーコート法により塗布した。塗布量を7.1cc/mとし、170℃で1分乾燥した。これにより、易接着層12が形成された面とは反対側に、膜厚約90nmの裏面層13が形成された。
【0076】
[裏面層用塗布液A]
[化1]に示すアクリル樹脂バインダの水分散物 86.9質量部
(固形分15質量%、ラテックスポリマー、Tg=約100℃、)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 6.5質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 17.6質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 21.5質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
シリカ微粒子分散液 0.2質量部
(日本触媒(株)製、シーホスターKE-W10の水分散物、固形分15質量%)
コロイダルシリカ 0.9質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
すべり剤 2.2質量部
(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【化1】

【0077】
[プリズム層]
易接着層12及び裏面層13を支持体11に形成した後、易接着層12側に下記プリズム層塗工液をバーコート法により#24バーで塗工した。そして、60℃で3分乾燥を行った後に、プリズム層パターンを形成した金型をプリズム層塗工面に押し当て、支持体11側からUV光(ウシオ電機(株)製メタルハライドランプUVL−1500M2)を2000mJ/cmの条件で照射し、樹脂を硬化させた。前記金型から支持体11を引き剥がすことで、頂角90°、ピッチ50μm、高さが28μmのプリズム層14を形成し、プリズムシート15とした。
[プリズム層塗工液]
[化2]に示す化合物 34.3質量部
[化3]に示す化合物 13.7質量部
[化4]に示す化合物 13.7質量部
[化5]に示す化合物 6.9質量部
[化6]に示す化合物 1.4質量部
メチルエチルケトン 15.0質量部
プロピレングリコールモノメチルアセテート 15.0質量部
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0078】
[実施例2]
実施例1と同様に、易接着層の第一層12a及び第二層12bを支持体11の一方の面に形成した。その後、支持体11の他方の面に対してコロナ放電処理を施し、下記組成からなる裏面層用塗布液Bをバーコート法により塗布した。塗布量を7.1cc/mとし、120℃で1分乾燥した。これにより、易接着層12が形成された面とは反対側に、膜厚約90nmの裏面層13を形成した。その後、実施例1と同様に、易接着層12上にプリズム層14を形成した。
【0079】
[裏面層用塗布液B]
アクリル樹脂バインダ 14.5質量部
(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナール BR-87、Tg=約105℃)
シリカ微粒子分散液 15.5質量部
(日本触媒(株)、シーホスターKE-P10の1質量%MEK分散液)
メチルエチルケトン 全体が1000質量部になるよう添加
【0080】
[実施例3]
実施例1と同様に、易接着層の第一層12a及び第二層12bを支持体11の一方の面に形成した。その後、支持体11の他方の面に対して、コロナ放電処理を施し、下記組成からなる帯電防止層用塗布液Cをバーコート法により塗布した。塗布量を6.1cc/mとし、170℃で1分乾燥した。これにより、易接着層12が形成された面とは反対側に、膜厚約70nmの帯電防止層32aを形成した。引き続き下記組成からなる低屈折率層用塗布液Dを、バーコート法により帯電防止層32a上に塗布した。塗布量を6.1cc/mとし、145℃で1分乾燥した。これにより、膜厚約40nmの低屈折率層32bを形成した。その後、実施例1と同様に、易接着層12上にプリズム層14を形成した。これにより、プリズムシート36を得た。なお、下記「長軸長/短軸長比」は、塗布液Cに含まれる金属酸化物について、その平均粒径における長軸長と短軸長との比を示している。この「長軸長/短軸長比」については、以下の実施例5及び9においても同様である。
【0081】
[帯電防止層用塗布液C]
[化1]に示すアクリル樹脂バインダの水分散物 46.5質量部
(固形分 15質量%、ラテックスポリマー、Tg=約100℃、)
二酸化スズ−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物 50.2質量部
(石原産業(株)製、FS-10D、固形分20質量%、長軸長/短軸長比=25)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 7.0質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 18.0質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 22.0質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
コロイダルシリカ 0.7質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0082】
[低屈折率層用塗布液D]
[化1]に示すアクリル樹脂バインダの水分散物 40.8質量部
(固形分 15質量%、ラテックスポリマー、Tg=約100℃、)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 3.1質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 16.6質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 20.4質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
シリカ微粒子分散液 0.2質量部
(日本触媒(株)製、シーホスターKE-W10の水分散物、固形分15質量%)
コロイダルシリカ 0.4質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
すべり剤 3.1質量部(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0083】
[実施例4]
低屈折率層用塗布液Dに代えて、下記組成からなる低屈折率層用塗布液Eを用いて裏面層32を形成し、低屈折率層32bの膜厚を約30nmにした以外は、実施例3と同様に各層を形成した。
【0084】
[低屈折率層用塗布液E]
ポリオレフィン樹脂バインダ 13.3質量部
(三井化学(株)製、ケミパールS−120、固形分27質量%)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 3.2質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 14.8質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 18.2質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
コロイダルシリカ 8.8質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスC、固形分20質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0085】
[実施例5]
易接着層用第一層塗布液Xに代えて、下記組成からなる易接着層用第一層塗布液Z1を用いて、易接着層の第一層12aを形成した以外は、実施例1と同様に各層を形成した。
【0086】
[易接着層用第一層塗布液Z1]
ポリエステル樹脂バインダ 45.1質量部
(互応化学(株)製、プラスコート Z-687、固形分25質量%、Tg=約110℃)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 15.9質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
オキサゾリン化合物 7.1質量部
(日本触媒(株)製、エポクロスK-2020E、固形分40質量%)
二酸化スズ−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物 77.5質量部
(石原産業(株)製、FS-10D、固形分20質量%、長軸長/短軸長比=25)
界面活性剤A 12.7質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 15.5質量部(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0087】
[実施例6]
易接着層用第二層塗布液Yに代えて、下記組成からなる易接着層用第二層塗布液Z2を用いて、易接着層の第二層12bを形成した以外は、実施例1と同様に各層を形成した。
【0088】
[易接着層用第二層塗布液Z2]
アクリル樹脂バインダ 34.1質量部
(ダイセル化学工業(株)製、EM48D、固形分 27.5質量%、Tg=約42℃)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 4.7質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
オキサゾリン化合物 7.1質量部
(日本触媒(株)製、エポクロスK-2020E、固形分40質量%)
ポリチオフェン化合物 47.2質量部
(日本アグファマテリアルズ(株)製、Orgacon HBS、固形分1.2質量%水溶液)
水酸化ナトリウム水溶液 22.6質量部
(固形分0.4質量%)
界面活性剤A 12.5質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 15.5質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
シリカ微粒子分散液 1.6質量部
(日本アエロジル(株)製、アエロジルOX-50の水分散物、固形分10質量%)
コロイダルシリカ 0.6質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
すべり剤 1.6質量部(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30質量%)
防腐剤 1.0質量部
(1,2-ベンゾチアゾリン-3-オンのメタノール溶液、固形分3.5質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0089】
[実施例7]
裏面層の帯電防止層32aの上に低屈折率層32bを形成せず、帯電防止層32aの膜厚を約70nmにする以外は、実施例3と同様に各層を形成した。
【0090】
[実施例8]
低屈折率層用塗布液Dに代えて、下記組成からなる低屈折率層用塗布液Fを用いて膜厚約40nmの低屈折率層32bを形成した以外は、実施例3と同様に各層を形成した。
【0091】
[低屈折率層用塗布液F]
ポリエステル樹脂バインダ 21.0質量部
(大日本インキ(株)製、ファインテックスES-650、固形分 29質量%)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 3.1質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 16.6質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 20.4質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
シリカ微粒子分散液 0.2質量部
(日本触媒(株)製、シーホスターKE-W10の水分散物、固形分15質量%)
コロイダルシリカ 0.4質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
すべり剤 3.1質量部(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0092】
[実施例9]
帯電防止層用塗布液Cに代えて、下記組成からなる帯電防止層用塗布液Gを用いて帯電防止層32aを形成し、低屈折率層用塗布液Dに代えて、下記組成からなる低屈折率層用塗布液Hを用いて、膜厚約750nmの低屈折率層32bを形成した以外は、実施例3と同様に各層を形成した。
【0093】
[帯電防止層用塗布液G]
[化1]に示すアクリル樹脂バインダの水分散物 365.4質量部
(固形分 15質量%、ラテックスポリマー、Tg=約100℃、)
二酸化スズ−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物 394.4質量部
(石原産業(株)製、FS-10D、固形分20質量%、長軸長/短軸長比=25)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 55.2質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 9.0質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の2質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 4.0質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL-95の5質量%水溶液、ノニオン性)
架橋アクリル単分散粒子A 75.0質量部
(綜研化学(株)製、MX−1500、平均粒子径15μ、単分散型)
架橋アクリル単分散粒子B 50.0質量部
(綜研化学(株)製、MX−350α、平均粒子径3.5μ)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0094】
[低屈折率層用塗布液H]
[化1]に示すアクリル樹脂バインダの水分散物 652.8質量部
(固形分 15質量%、ラテックスポリマー、Tg=約100℃、)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 49.6質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 132.8質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の2質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 65.3質量部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL-95の5質量%水溶液、ノニオン性)
シリカ微粒子分散液 3.2質量部
(日本触媒(株)製、シーホスターKE-W10の水分散物、固形分15質量%)
コロイダルシリカ 6.4質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
すべり剤 49.6質量部(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0095】
[比較例1]
実施例1と同様に、易接着層の第一層12a及び第二層12bを支持体11の一方の面に形成した。その後、実施例1と同様に、易接着層12上にプリズム層14を形成したものの、上記実施例1〜9のように帯電防止層や裏面層の形成は行わなかった。
【0096】
[比較例2]
裏面層用塗布液Aに代えて、下記組成からなる裏面層用塗布液Iを用いて裏面層を形成し、裏面層の膜厚を約100nmとした以外は、実施例1と同様に各層を形成した。
【0097】
[裏面層用塗布液I]
ポリエステル樹脂バインダ 58.0質量部
(互応化学(株)製、プラスコート Z-687、固形分25質量%、水溶性、Tg=約110℃)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 7.1質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 12.7質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 15.5質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
シリカ微粒子分散液 1.6質量部
(日本アエロジル(株)製、アエロジルOX-50の水分散物、固形分10質量%)
コロイダルシリカ 0.6質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
すべり剤 1.6質量部
(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0098】
[比較例3]
裏面層用塗布液Aに代えて、下記組成からなる裏面層用塗布液Jを用いて裏面層を形成し、裏面層の膜厚を約100nmとした以外は、実施例1と同様に各層を形成した。
【0099】
[裏面層用塗布液J]
アクリル樹脂バインダ 53.0質量部
(ダイセル化学工業(株)製、EM48D、固形分27.5質量%、ラテックスポリマー、Tg=約42℃)
カルボジイミド構造を複数個有する化合物 6.5質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV-02-L2、固形分40質量%)
界面活性剤A 17.5質量部
(日本油脂(株)、ラピゾールB-90の1質量%水溶液、アニオン性)
界面活性剤B 17.5質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティー CL-95の1質量%水溶液、ノニオン性)
シリカ微粒子分散液 2.1質量部
(日本アエロジル(株)製、アエロジルOX-50の水分散物、固形分10質量%)
コロイダルシリカ 0.9質量部
(日産化学工業(株)製、スノーテックスXL、固形分40.5質量%)
すべり剤 2.1質量部
(中京油脂(株)製、カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30質量%)
蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0100】
[比較例4]
実施例1と同様に、第一層12a及び第二層12bからなる易接着層を支持体11の一方の面(表面)に形成するとともに、同様にして支持体の他方の面(裏面)に第一層12a及び第二層12bからなる易接着層を、支持体の側から第一層12a,第二層12bの順で形成した。その後、表面の易接着層12上にプリズム層14を形成した。なお、裏面側の易接着層の第二層12bの膜厚を約85nmとした。
【0101】
[評価]
上記実施例1〜9及び比較例1〜4で得られたプリズムシートについて、以下の評価を行った。
【0102】
[バインダのTg]
DSC(島津製DSC-60)にて、10℃/分の昇温速度でポリマー(裏面層に含有されるバインダの中で質量部が最も大きいバインダ(主バインダ))のガラス転移温度を測定した。
[膜厚]
支持体11上に易接着層12のみを塗布した試料について透過型電子顕微鏡(JEM2010(日本電子化(株)製))を用いて倍率200000倍で測定した。
【0103】
[塗工層の屈折率]
シリコンウエハ上に、支持体11の裏面側の層のうち最も外側に位置する層(裏面最外層)を形成するために用いた塗布液(塗布液A,B,C,D,E,F,H,I,J,Y)を乾燥膜厚が3〜4μmになるように塗布し、105℃で10分乾燥した。この試料につきSPA−400(Sairon Technology,Inc.社製)を用いて、波長660nm、850nm、1310nm、1550nmでプリズムカプラ法にて屈折率測定を行った。これら屈折率、波長よりセルメイヤーの式から550nmの屈折率を求めた。
【0104】
[裏面反射率]
裏面層を有するプリズムシート用積層フィルムに対して、易接着層12側にマジックインキ(artline 油性マーカー補充インキKR−20クロ、shachihata(株)製)を塗工し、乾燥させて、500nmの光の透過率が1%以下となる前処理サンプルを作成した。そして、分光光度計(日本分光(株)製V−550)及び絶対反射率測定装置(日本分光(株)製ARV−474)を使用して、入射角5°、波長範囲380〜780nm、サンプリングピッチ1nm、スリット幅2nm、スキャン速度200nm/分、レスポンスMediumの条件で上記前処理サンプルの裏面最外層の絶対反射率を測定するとともに、380〜780nmの絶対反射率の平均値を求めた。
【0105】
[全光線透過率]
プリズムシート用積層フィルム10,30に関して、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株))を用い、JIS−K−7105に準じて、全光線透過率を測定した。
【0106】
[輝度]
反射シート、冷陰極管、及び拡散板で構成される液晶テレビ用直下型バックライトユニットの拡散板の上に、作成したプリズムシートを1枚載せ、色彩輝度計(BM−7、トプコンテクノハウス(株)製)を用いて、プリズム層14側の正面輝度を測定した。プリズムシートを載せないで測定した場合の輝度を100%とし、載せた場合の輝度上昇率を下記基準で評価した。
○:輝度上昇率が152%以上
△:輝度上昇率が150%以上152%未満
×:輝度上昇率が150%未満
【0107】
[表面抵抗]
各実施例および各比較例で得られたプリズムシート用積層フィルムの表面抵抗SR(Ω/□)を、JIS−K−6911−1979の抵抗率に記載されている方法に基づいて測定した。この表面抵抗SR(Ω/□)の測定は、各プリズムシート用積層フィルムを23℃、65%RHの雰囲気下で6時間放置して調湿した後、同雰囲気下で定電圧電源(TR−300C、タケダ理研工業(株)製)、電流計(TR−8651、タケダ理研工業(株)製)、及びサンプルチャンバー(TR−42、タケダ理研工業(株)製)を用いて行われた。なお、測定に際して、実施例1〜9及び比較例1〜4の易接着層の第二層12bの表面(易接着面)の表面抵抗を測定するとともに、実施例1〜9及び比較例2〜4の裏面最外層と比較例1の支持体11の裏面側の表面(裏面)の表面抵抗を測定した。
【0108】
[プリズム層との接着性]
プリズム層14の表面に片刃カミソリを用いて縦、横それぞれ6本ずつのキズをつけて25個の桝目を形成した。なお、キズの幅は縦、横とも3mmであった。この上に、セロハンテープ(ニチバン(株)製405番、24mm幅)を貼り付けた上からケシゴムでこすって完全に付着させた。この後、90度方向に剥離し、剥離した桝目を数えた。そして、剥離した桝目数に応じて下記ランク付けを行った。
Aランク:剥れなし
Bランク:剥離した桝目数が1未満
Cランク:剥離した桝目数が1以上3未満
Dランク:剥離した桝目数が3以上20未満
Eランク:剥離した桝目数が20以上
なお、プリズム形状を形成すると剥離用のセロハンテープとプリズム層14との間の接着力が低下するため、充分な接着性を評価しにくい。そこで、強制条件としてプリズム形状を形成させずに接着性の評価を行っている。
【0109】
[プリズム層頂点の接触痕]
実施例1,2,5〜7及び比較例1〜3では、図3に示すように、ガラス板20上にプリズムシート21,22を2枚重ねて置き、さらにプリズムシート22の上にガラス板23を置いた。そして、ガラス板23上に1kg/10cmの荷重24を加え、プリズムシート21のプリズム層14とプリズムシート22の裏面側の層(実施例1,2,5,6では裏面層13、実施例7では帯電防止層32a、比較例1では支持体11、比較例2、3では裏面層)とを接触させた。同様にして、実施例3,4,8,9及び比較例4では、図6に示すように、ガラス板20上にプリズムシート41,42を2枚重ねて置き、さらにプリズムシート42の上にガラス板23を置いた。そして、ガラス板23上に1kg/10cmの荷重24を加え、プリズムシート41のプリズム層14とプリズムシート42の裏面側の層(実施例3,4,8,9では低屈折率層32b、比較例4では塗布液Yにより形成される層)とを接触させた。
【0110】
そして、80℃でDryのサーモ条件及び80℃で80%RHのサーモ条件の下で、48時間経時させた。サーモ後に、プリズムシート22を取り出し、その裏面側の層を目視、および顕微鏡(x100視野)で観察した。そして、下記基準で、プリズム層の頂点14a(プリズム層頂点)の接触痕故障(スジ状)(プリズム頂点痕)に関して、ランク付けを行った。なお、図3及び6では、プリズム層頂点の一部のみに符号14aを付している。
○:目視、顕微鏡観察の双方で、プリズム層頂点の接触痕が見えない。
△:目視では見えないが、顕微鏡観察でプリズム層頂点の接触痕が見える。
×:目視、顕微鏡観察の双方で、プリズム層頂点の接触痕が見える。
【0111】
[結果]
上記評価による結果を以下の表1及び表2に示す。なお、表1及び表2では、表面抵抗SRを常用対数を用いて表示している(Log SR(Ω/□))。
【表1】

【表2】

【0112】
表1に示すように、実施例1〜9では、裏面層13,32の主バインダとして、ガラス転移点温度(Tg)が90℃以上であり、且つ非水溶性の熱可塑性樹脂を含有させているため、裏面層13,32にはプリズム層頂点の接触痕が残らなかった。
【0113】
また、実施例1〜6では、380nm〜780nmの光に対する裏面層13,32の平均反射率が3.5%以下であることにより、輝度上昇率が152%以上に向上した。実施例4では、実施例3の低屈折率層32bに含有される「アクリル樹脂バインダ」を「ポリオレフィン樹脂バインダ」に変更することにより、平均反射率を若干減少させている。
【0114】
また、実施例3、4、7、8、9では帯電防止層32aに金属酸化物粒子を、実施例5では易接着層の第一層12aに金属酸化物を、実施例6では易接着層の第二層12bにポリチオフェン化合物を含有させたことにより、裏面層13,32や易接着層の第二層12bの表面抵抗が1012Ω/□以下(常用対数表示の場合には「12」以下)に抑さえられたため、プリズムシートへの塵や埃などの異物の付着を防ぐことができた。
【0115】
これらに対して、表2に示すように、比較例1では、実施例1〜9のように裏面層13,32が設けられていないため、輝度向上特性を得ることができず、また、実施例3〜9のように帯電防止のための層が設けられていないため、表面抵抗が1012Ω/□を超え、プリズムシートに異物が付着することがあった。
【0116】
比較例2では、裏面層の主バインダは、高Tgであるものの水溶性ポリマーであるため、高湿条件の下でプリズム層頂点の接触痕が残った。また、比較例2では、裏面層の屈折率が高いため、輝度向上特性を得ることができなかった。
【0117】
比較例3では、平均屈折率が3.5%以下に抑えられているため輝度向上特性を得ることができたが、裏面層の主バインダは非水溶性ポリマーであるものの低Tgであるため、プリズム層頂点の接触痕が残った。
【0118】
比較例4では、裏面側の層の主バインダが水溶性ポリマーであるため高湿条件の下でプリズム層頂点の接触痕が残った。また、比較例4では、支持体11の両面に易接着層12を設けたとしても、帯電防止性能及び十分な輝度向上特性を得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0119】
10,30 プリズムシート用積層フィルム
11 支持体
12 易接着層
12a 第一層
12b 第二層
13,32 裏面層
14 プリズム層
15,36 プリズムシート
32a 帯電防止層
32b 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルからなる支持体と、
前記支持体の一方の面に設けられる易接着層と、
前記支持体の他方の面に設けられ、ガラス転移点温度(Tg)が90℃以上であり、且つ非水溶性の熱可塑性樹脂を主たる構成成分とする裏面層とを有することを特徴とするプリズムシート用積層フィルム。
【請求項2】
前記裏面層は、波長が380nm〜780nmの光に対する平均反射率が3.5%以下であることを特徴とする請求項1記載のプリズムシート用積層フィルム。
【請求項3】
前記裏面層の屈折率は1.20〜1.51であることを特徴とする請求項1または2記載のプリズムシート用積層フィルム。
【請求項4】
裏面層と易接着層の少なくとも一方が表面抵抗値1012Ω/□以下の導電性を有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のプリズムシート用積層フィルム。
【請求項5】
裏面層と易接着層の少なくとも一方に金属酸化物粒子を含むことを特徴とする請求項4項記載のプリズムシート用積層フィルム。
【請求項6】
裏面層と易接着層の少なくとも一方に導電性ポリマーを含むことを特徴とする請求項4または5項記載のプリズムシート用積層フィルム。
【請求項7】
前記裏面層は複数の層からなり、前記複数の層のうち空気と接する最外層の屈折率が1.20〜1.51であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載のプリズムシート用積層フィルム。
【請求項8】
前記裏面層は、前記支持体の他方の面上に設けられる帯電防止層と、前記帯電防止層の上に設けられる低屈折率層とからなり、前記帯電防止層は表面抵抗値1012Ω/□以下の導電性を有し、前記低屈折率層は前記最外層であって屈折率が1.20〜1.51であることを特徴とする請求項7記載のプリズムシート用積層フィルム。
【請求項9】
ポリエステルからなる支持体を二軸延伸した後に、前記支持体の一方の面に前記易接着層を塗布し、前記支持体の他方の面に前記裏面層を塗布する工程によって、請求項1ないし8いずれか1項記載のプリズムシート用積層フィルムを製造することを特徴とするプリズムシート用積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし8いずれか1項記載のプリズムシート用積層フィルムの前記易接着層にプリズム層が設けられていることを特徴とするプリズムシート。
【請求項11】
請求項1ないし8いずれか1項記載のプリズムシート用積層フィルムを搭載することを特徴とする表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−49243(P2010−49243A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169294(P2009−169294)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】