説明

プリンタおよび粘着ラベル製造方法

【課題】 感熱性粘着シートが一方向に巻かれたロール体からの感熱性粘着シートを円滑に撓ませて、所定の長さに容易に切断できるようにする。
【解決手段】 ロール体収納部のロール体から引き出した感熱性粘着シート1を印字装置に挿入し、印字用サーマルヘッドで加熱して印字可能層に印字する。印字後の感熱性粘着シート1をガイド部6まで進行させ、その先端をガイド屋根部材6aに突き当てる。先端がガイド屋根部材6aに突き当たったまま、感熱性粘着シート1をガイド屋根部材6aに沿って摺動させ下降させる。感熱性粘着シート1の先端を1対の挿入ローラ13のニップ部まで導いて先端をそこに保持し、挿入ローラ13を停止または低速回転させ、さらに感熱性粘着シート1を送って、下方に凸状に撓ませる。そして、カッター装置4によって所望の長さに切断し、熱活性化装置5で感熱性粘着剤層1aを加熱して熱活性化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時には非粘着性を示し、加熱されて熱活性化されると粘着性を発現する感熱性粘着剤層がシート状基材の片面に形成された感熱性粘着シートから、所望の文字や記号や数字や画像が記録され、かつ記録面の裏面が粘着面になっている粘着性ラベルを製造するプリンタと、粘着ラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、加熱されることによって粘着性を発現する感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートが実用化されている。このような感熱性粘着シートは、加熱前のシートの取り扱いが容易であること、剥離紙を必要としないため産業廃棄物が生じないことなどの利点を有している。このような感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層の粘着力を発現させるために、一般にサーマルプリンタの印字ヘッドとして用いられているサーマルヘッドを利用して加熱する場合がある。また、感熱性粘着シートの、感熱性粘着剤層の反対側の面が感熱性の印字可能層である場合には、同様なサーマルヘッドで印字と熱活性化を行えるという利点がある。
【0003】
このような感熱性粘着シートの印字可能層に所望の文字や記号や数字や画像等を印字し、所定の長さに切断した上で、感熱性粘着剤層に粘着性を発現させて、例えば商品に貼り付けられて価格や商品名等を表示する粘着ラベルを製造するプリンタが開発されている(図5参照)。このようなプリンタは、印字可能層100bに所望の文字や数字や記号や画像を記録するための印字装置101と、感熱性粘着シート100を切断してラベル状にするカッター装置102と、感熱性粘着剤層100aを熱活性化させて粘着性を発現させるための熱活性化装置103と、プリンタ全体にわたって感熱性粘着シート100を搬送する搬送機構を備えている。印字装置101は、印字可能層100bに接触してそれを加熱する印字用加熱手段(印字用サーマルヘッド104)と、感熱性粘着シート100を搬送する第1の搬送装置(印字用プラテンローラ105)を有し、熱活性化装置103は、感熱性粘着剤層100aに接触してそれを加熱する熱活性化用加熱手段(熱活性化用サーマルヘッド106)と、感熱性粘着シート100を搬送する第2の搬送装置(挿入ローラ対107aおよび熱活性化用プラテンローラ107b)を有している。通常、カッター装置102は印字装置101と熱活性化装置103の間に位置し、印字後の感熱性粘着シート100を切断してラベル状にする。
【0004】
ところで、このようなプリンタにおいては、カッター装置102による切断動作を行う際、可動刃が上下動するのに要する時間(例えば0.4秒)だけ感熱性粘着シート100の進行を停止する必要がある。すなわち、印字装置101および熱活性装置103の搬送装置の駆動を停止させた状態で、カッター装置102による切断が行われる。このため、製造すべき粘着ラベルの長さが、カッター装置102の切断位置から熱活性化装置103の熱活性化用サーマルヘッド106までの距離よりも長い場合には、感熱性粘着シート100が熱活性化用サーマルヘッド106と熱活性化用プラテンローラ105との間に挟まれた状態で停止する。その結果、粘着性が発現した感熱性粘着剤層が熱活性化用サーマルヘッド106に貼り付いてしまい、切断が完了してラベル状になった後に搬送が再開されても、スムースに搬送されずに、いわゆるジャムを生じたり、搬送不良を生じてしまうという不具合が生じる。また、熱活性化用サーマルヘッド106からの熱が印字可能層100bにまで伝わって発色してしまうという問題がある。
【0005】
こうして製造された粘着ラベルがプリンタから排出されても、外観が悪いため粘着ラベルとしての使用には耐えられない。また、この粘着ラベルが熱活性化用サーマルヘッド106に強固に接着した場合には、プリンタの処理を停止してメンテナンスを行う必要がある。このように、粘着ラベルの製造効率が悪くなっている。
【0006】
そこで、特許文献2には、印字装置101と熱活性化装置103の搬送装置の速度を制御して、カッター装置102と熱活性化装置103の間で感熱性粘着シート100を上方に凸状に撓ませ、搬送手段の動作を停止して、カッター装置102によって感熱性粘着シート100の切断を行う構成が開示されている(図6参照)。具体的には、感熱性粘着シート100の搬送経路に対して略平行にその下方に位置するガイド床部材108と、感熱性粘着シート100の搬送経路の上方に位置しガイド部の前端側と後端側に位置する1対の誘導ガイド109が設けられている。そして、ガイド床部材108上を進行する感熱性粘着シート100の先端側を減速または停止させ、後端側を先端側よりも速い相対速度で進行させることによって、ガイド床部材108上に感熱性粘着シート100の余剰長さの部分が生じ、その余剰長さの部分を、1対の誘導ガイド109の間でそれに沿って上方に凸状に撓ませることができる。このようにして、所望の長さの粘着ラベルを効率よく製造することができる。
【特許文献1】特開平11−79152号公報
【特許文献2】特開2003−316265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、多数の粘着ラベルを製造するために、予め感熱性粘着シート100を巻いたロール体110を用意し、このロール体110から感熱性粘着シート100を順次引き出して、印字、切断、熱活性化を行うのが一般的である。
【0008】
特許文献2に記載のプリンタでは、印字装置101の印字用サーマルヘッド104が感熱性粘着シート100の搬送経路の上方に、熱活性化装置103の熱活性化用サーマルヘッド106が、感熱性粘着シート100の搬送経路の下方にそれぞれ配置されている。従って、印字可能層100bが上方に、感熱性粘着剤層100aが下方に向いた状態で感熱性粘着シート100が搬送される。この場合、図6に示すように、印字可能層100bが外側に、感熱性粘着剤層100aが内側になるように感熱性粘着シート100が巻かれてロール体110が構成されていると、このロール体110の巻き癖の方向と、カッター装置102と熱活性化装置103の間で感熱性粘着シート100を撓ませる向きとが一致するため、感熱性粘着シート100を円滑に撓ませることができ、その搬送および切断が円滑に行える。
【0009】
しかし、印字可能層100bは、粘着ラベルの完成時に文字や記号や数字や画像等を表示する面であり、汚れることが好ましくないため、この印字可能層100bが内側になるように感熱性粘着シート100が巻かれてロール体110を構成することが望まれる場合がある。この場合には、図7に示すように、ロール体110の巻き癖の方向と感熱性粘着シート100の撓み方向とを反対向きにせざるを得ないため、感熱性粘着シート100を円滑に撓ませることができず、所望の長さに適切に切断することができず、かつ円滑な搬送が行えない可能性がある。その結果、所望の長さの粘着ラベルを製造できなくなり、非常に精度が低く歩留まりが悪くなる。
【0010】
そこで本発明の目的は、感熱性粘着シートのロール体の巻き癖の方向に一致する方向に、その感熱性粘着シートを円滑に撓ませることを実現でき、所定の長さに容易に切断できるプリンタおよび粘着ラベルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプリンタは、シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの印字可能層に印字する印字装置と、印字装置の後段に設けられ感熱性粘着シートを所定の長さに切断するカッター装置と、カッター装置の後段に設けられ、感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化装置と、カッター装置と熱活性化装置の間に設けられ、感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませることができるガイド部とを有し、熱活性化装置の感熱性粘着シートの進入部は、カッター装置の感熱性粘着シートの送出部よりも下方に位置し、ガイド部には、カッター装置の送出部から熱活性化装置の進入部に至る感熱性粘着シートの経路の上方に位置し、カッター装置の送出部から送出された感熱性粘着シートの先端が突き当てられ、その当接状態を保ちつつ摺動させることによって、感熱性粘着シートを熱活性化装置の進入部に導く平板状のガイド屋根部材が設けられている。
【0012】
この構成によると、熱活性化装置に進入する前に感熱性粘着シートを切断することができるため、感熱性粘着シートが熱活性化装置に貼り付いてジャムを生じるなどの不具合を防止でき、ジャムの処理のためのメンテナンスが不要となり、貼着用ラベルの製造効率が格段に向上する。また、感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませて、所定の長さに切断できるようにするため、感熱性粘着シートの巻き癖に従って円滑に撓ませることが容易に可能になる。
【0013】
印字装置の前段に位置し、印字装置に供給される感熱性粘着シートが巻かれたロール体を保持するロール体収納部をさらに含んでいてもよい。この構成によると、従来のプリンタの構成に加えて、ロール体の巻き癖に応じた感熱性粘着シートの撓み方向を選択するための選択肢を広げることができる。
【0014】
印字装置は、印字可能層に接触してそれを加熱する印字用加熱手段と、感熱性粘着シートを搬送する第1の搬送装置とを含み、熱活性化装置は、感熱性粘着剤層に接触してそれを加熱する熱活性化用加熱手段と、感熱性粘着シートを搬送する第2の搬送装置とを含み、第2の搬送装置と第1の搬送装置の速度制御によって、ガイド部で、感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませることができる。これによって、感熱性粘着シートを非常に簡単に撓ませることができ、切断する長さを精度よく設定できる。
【0015】
本発明の粘着ラベルの製造方法は、シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの印字可能層を、印字装置によって加熱して印字する印字工程と、印字工程後に、カッター装置によって感熱性粘着シートを所定の長さに切断する切断工程と、切断工程後に、熱活性化装置によって感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化工程と、切断工程前に、カッター装置の送出部から送出された感熱性粘着シートの先端からカッター装置に対向する部分までの長さが所望の粘着ラベルの長さになるまで、感熱性粘着シートを、カッター装置と熱活性化装置の間で下方に凸状に撓ませる工程とを含み、感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませる工程は、カッター装置の送出部から該送出部よりも下方に位置する熱活性化装置の進入部に至る感熱性粘着シートの経路の上方に位置する平板状のガイド屋根部材に、感熱性粘着シートの先端を突き当てて、その当接状態を保ちつつ摺動させることによって、感熱性粘着シートを熱活性化装置の進入部に導く工程を含む。
【0016】
この方法によると、感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませて、所定の長さに切断できるため、感熱性粘着シートの巻き癖に従って円滑に撓ませることが容易に可能になる。
【0017】
感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませる工程は、印字装置の、感熱性粘着シートを搬送する第1の搬送装置と、熱活性化装置の、感熱性粘着シートを搬送する第2の搬送装置の速度を制御することによって感熱性粘着シートを撓ませる工程である。
【0018】
感熱性粘着シートが印字可能層を内側にして巻かれたロール体から、感熱性粘着シートを引き出して印字装置に供給してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、従来と異なる巻き癖を有する感熱性粘着シートを用いる場合にも、容易に円滑に撓ませることができるため、感熱性粘着シートの長さを調節して所望の粘着ラベルを製造することが容易にでき、その製造効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、感熱性粘着シートから粘着ラベルを製造するための、本発明のプリンタの内部構成を示す概略断面図である。この感熱性粘着シート用プリンタの基本構成について簡単に説明すると、感熱性粘着シート1が巻かれたロール体11を保持するロール体収納部2と、感熱性粘着シート1の印字可能層1d(図2参照)に印字する印字装置3と、感熱性粘着シート1を所定の長さに切断するカッター装置4と、感熱性粘着シート1の感熱性粘着剤層1a(図2参照)を熱活性化させる熱活性化装置5と、カッター装置4から熱活性化装置5まで感熱性粘着シート1を誘導するガイド部6が設けられている。
【0022】
ロール体収納部2には、感熱性粘着シート1が巻かれたロール体11が収納されている。
【0023】
印字装置3は、ドット印字が可能なように幅方向(図1に垂直な方向)に並べて配設された、比較的小さな抵抗体からなる複数の発熱素子を有する印字用サーマルヘッド(印字用加熱手段)7と、印字用サーマルヘッド7に圧接される印字用プラテンローラ8(第1の搬送装置)などから構成されている。印字用サーマルヘッド7は、ロール体収納部2から送られる感熱性粘着シート1の印字可能層1dに接するように位置し、この印字用サーマルヘッド7に印字用プラテンローラ8が圧接している。印字用サーマルヘッド7は、セラミック基板上に形成された複数の発熱抵抗体の表面に結晶化ガラスの保護膜が設けられている構成など、公知のサーマルプリンタの印字ヘッドと同様の構成である。
【0024】
カッター装置4は、印字装置3によって印字が行われた感熱性粘着シート1を所定の長さに切断してラベル状にするためのものであり、電動モータ等の駆動源(図示せず)によって作動される可動刃4aと、それに対向する固定刃4b等から構成されている。
【0025】
ガイド部6には、カッター装置4から熱活性化装置5への感熱性粘着シート1の搬送経路の上方に設けられたガイド屋根部材6aが設けられている。後述するが、このガイド屋根部材6aは、感熱性粘着シート1を熱活性化装置5へ円滑に導入するとともに、カッター装置4によって感熱性粘着シート1を所望の長さに切断するために、カッター装置4の送出部と熱活性化装置5の進入部の間で、感熱性粘着シート1を下方に凸状に撓ませて保持するためのものである(図4(a)〜(d)参照)。
【0026】
熱活性化装置5は、複数の発熱素子(図示せず)を有する熱活性化用サーマルヘッド9と、熱活性化用プラテンローラ10と、1対の挿入ローラ13と、排出ローラ12を有している。熱活性化用サーマルヘッド9は、感熱性粘着シート1の感熱性粘着剤層1aに接するように位置し、この熱活性化用サーマルヘッド9には熱活性化用プラテンローラ10が圧接している。ここでは、特に1対の挿入ローラ13を第2の搬送装置と呼ぶ。
【0027】
熱活性化用サーマルヘッド9は、前記した印字装置3の印字用サーマルヘッド7と同様の構成のもの、すなわち、セラミック基板上に形成された複数の発熱抵抗体の表面に結晶化ガラスの保護膜が設けられている構成など、公知のサーマルプリンタの印字ヘッドと同様の構成である。このように、印字用サーマルヘッド7と熱活性用サーマルヘッド9を同じ構成のものにすることにより、部品を共通化してコストの低減を図ることができる。また、このサーマルヘッドの構成は、多数の小型の発熱素子(発熱抵抗体)を用いて加熱する構成であるため、単一の(またはごく少数の)大型の発熱素子を用いて加熱する構成に比べて、温度分布を広い範囲にわたって均一にし易いという利点がある。ただし、熱活性用サーマルヘッド9の発熱素子は、印刷用サーマルヘッド7の発熱素子のようにドット単位で分割されている必要はなく、連続した抵抗体としてもよい。
【0028】
熱活性化装置1の進入部、すなわち1対の挿入ローラ13のニップ部分は、カッター装置4の送出部、すなわち可動刃4aと固定刃4bの間の位置よりも低い位置にある。従って、ガイド屋根部材6aは、カッター装置4の送出部から熱活性化装置5の進入部に向かって斜め下方に傾斜した平板状であり、感熱性粘着シート1の搬送経路の上方に位置している。
【0029】
本実施形態で用いられる感熱性粘着シート1は、例えば、図2に示すように、シート状基材1bの表面側に断熱層1cおよび感熱発色層(印字可能層)1dが形成され、裏面側に感熱性粘着剤層1aが形成された構成である。なお、感熱性粘着剤層1aは、熱可塑性樹脂や固体可塑性樹脂等を主成分とする感熱性粘着剤が塗布され乾燥されて固化されたものである。ただし、感熱性粘着シート1は、この構成に限定されるものではなく、感熱性粘着剤層1aを有していれば様々な変更が可能である。例えば、断熱層1cを有しない構成や、図示しないが、印字可能層1dの表面に保護層または有色印字層(予め印字されている層)が設けられている構成や、サーマルコート層が設けられている構成の感熱性粘着シート1も使用可能である。そして、本実施形態のロール体11は、印字可能層1dを内側に、感熱性粘着剤層1aを外側にして巻かれた感熱性粘着シート1からなる。なお、このようなロール体11を用いる理由の1つは、例えば、所望の文字や記号や数字や画像が印字される印字可能層1dに汚れが付着しないように保護するためである。
【0030】
そして、印字用プラテンローラ8と、1対の挿入ローラ13と、熱活性化用プラテンローラ10と、排出ローラ12によって、プリンタ全体にわたって感熱性粘着シート1を搬送する搬送機構が構成されている。
【0031】
また、このプリンタは、図示しないが、前記した搬送機構、可動刃4a、印字用サーマルヘッド7、熱活性化用サーマルヘッド9等を駆動し、それらの動作を制御する制御装置を有している。
【0032】
このような構成のプリンタを用いて、感熱性粘着シート1からなる所望の粘着ラベルを製造する方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
まず、ロール体収納部2のロール体11から引き出した感熱性粘着シート1を、印字装置3の印字用サーマルヘッド7と印字用プラテンローラ8の間に挿入する。制御装置から印字用サーマルヘッド7に印字信号を供給して、印字用サーマルヘッド7の複数の発熱素子を適宜のタイミングで選択的に駆動して発熱させ、感熱性粘着シート1の印字可能層1dに印字を行う。この印字用サーマルヘッド7の駆動と同期して印字用プラテンローラ8を駆動して回転させ、感熱性粘着シート1を、印字用サーマルヘッド7の発熱素子が並んでいる方向に交差する方向、例えば発熱素子の列に対して垂直な方向に搬送する。具体的には、印字用サーマルヘッド7による1ライン分の印字と、印字用プラテンローラ8による感熱性粘着シート1の所定量(1ライン分)の搬送とを交互に繰り返すことにより、感熱性粘着シート1に所望の文字、数字、記号、画像等の印字を行う(ステップS1)。
【0034】
このようにして印字した感熱性粘着シート1を、カッター装置4の可動刃4aと固定刃4bの間を通過させて、ガイド屋根部材6aに到達させる。このガイド屋根部材6aにおいて、感熱性粘着シート1を適宜撓ませて、感熱性粘着シート1の先端部からカッター装置4の可動刃4aおよび固定刃4bの間に位置する部分までの長さを設定する(ステップS2)。ここで、感熱性粘着シート1を撓ませる工程について、図4(a)〜(d)を参照して詳細に説明する。
【0035】
まず、印字用プラテンローラ8の作動によって進行してきた感熱性粘着シート1の先端を、カッター装置4の可動刃4aと固定刃4bの間を通過させて、図4(a)に示すように、ガイド屋根部材6aに突き当てる(ステップS2a)。感熱性粘着シート1をさらに前進させて、図4(b)に示すように、感熱性粘着シート1の先端がガイド屋根部材6aに突き当たったままの状態で、ガイド屋根部材6aに沿って摺動させて下降させる(ステップS2b)。そして、図4(c)に示すように、感熱性粘着シート1の先端を、ガイド屋根部材6aによって1対の挿入ローラ13のニップ部まで導く(ステップS2c)。この間、感熱性粘着シート1の先端はガイド屋根部材6aに突き当たったままである。こうして感熱性粘着シート1の先端がニップ部に導かれた時点では1対の挿入ローラ13は回転しており、ニップ部において感熱性粘着シート1の先端を保持できる程度に挟み込むと、1対の挿入ローラ13は停止するか、または印字用プラテンローラ8による搬送速度に比べて相対的に遅い搬送速度を生じるように低速回転する。従って、カッター装置4と熱活性化装置5の間の感熱性粘着シート1の搬送経路の直線距離よりも、このガイド部6内に存在する感熱性粘着シート1の長さが次第に長くなり、すなわち余剰長さが生じ、図4(d)に示すように、この余剰長さの部分が下方に凸状に撓む(ステップS2d)。このとき、搬送経路の上方はガイド屋根部材6aによって覆われており、このガイド屋根部材6aが斜め前方に降下しているため、感熱性粘着シート1は上方に凸状ではなく、下方に凸状に撓む。
【0036】
その後、図示しないセンサを利用し、かつ印字用プラテンローラ8および挿入ローラ13の速度と作動時間を監視することによって、撓んでいる感熱性粘着シート1の先端から、カッター装置4の可動刃4aと固定刃4bの間に位置する部分までの長さが、製造すべき粘着ラベルの長さと一致したことを確認すると、印字用プラテンローラ8を一旦停止して、可動刃4aを駆動して感熱性粘着シート1を切断する(ステップS3)。このようにして、感熱性粘着シート1を、所定の長さのラベル状にする。
【0037】
次に、挿入ローラ13および熱活性化用プラテンローラ10を回転させて、前記のようにして必要な印字が施され所定の長さに切断されたラベル状の感熱性粘着シート1を熱活性化装置5に送る。そして、熱活性化装置5において、熱活性化用サーマルヘッド9と熱活性化用プラテンローラ10の間にラベル状の感熱性粘着シート1を挟んだ状態で、制御装置が熱活性化用サーマルヘッド9を駆動して、それに接する感熱性粘着剤層1aを加熱して熱活性化させる。同時に、熱活性化用プラテンローラ10を回転させてラベル状の感熱性粘着シート1を送り、感熱性粘着シート1を、熱活性化用プラテンローラ10によって熱活性化用サーマルヘッド9に押し付けつつ、熱活性化用サーマルヘッド9を作動させて発熱させることによって、それに接する感熱性粘着剤層1aを加熱して熱活性化させる(ステップS4)。それと同時に熱活性化用プラテンローラ10が回転して感熱性粘着シート1が搬送されて、感熱性粘着剤層1aの全面が熱活性化用サーマルヘッド9に当接しながら通過することによって、感熱性粘着シート1の片面の感熱性粘着剤層10aに全面的に粘着性が発現する。
【0038】
このようにして、片面に所望の印字が施され反対面に粘着性が発現した、感熱性粘着シート10からなる所定の長さの粘着ラベルが完成し、それを排出ローラ12によってプリンタの外部に排出する(ステップS5)。
【0039】
なお、感熱性粘着シート1の先端が1対の挿入ローラ13のニップ部に導かれた時点で1対の挿入ローラ13を停止させる場合には、感熱性粘着シート1の先端が熱活性化用サーマルヘッド9に接触する前に、例えばニップ部に挟み込まれて保持されるとすぐに、1対の挿入ローラ13を停止させなければならない。これは、感熱性粘着シート1が熱活性化用サーマルヘッド9に接触した状態で挿入ローラ13および/または熱活性化用プラテンローラ10が停止すると、感熱性粘着シート1の接触部分が過熱されるからである。
【0040】
また、1対の挿入ローラ13を低速回転させて撓みを形成する場合には、前記したのと同様な理由で、少なくとも感熱性粘着シート1が熱活性化用サーマルヘッド9に接触した後は、挿入ローラ13および熱活性化用プラテンローラ10は停止させずに回転させ続けなければならない。感熱性粘着シート1をガイド部6において撓ませることによって、カッター装置4による切断工程の間も、熱活性化用サーマルヘッド9と熱活性化用プラテンローラ10を作動させ続けて熱活性化工程を並行して行うことができる。
【0041】
以上説明した通り、本実施形態では、カッター装置4と熱活性化装置5の間のガイド部6において、感熱性粘着シート1を下方に凸状に撓ませることによって、感熱性粘着シート1の長さを調整して所望の長さの粘着ラベルを容易に製造することができる。そして、ロール体11の巻き癖の方向と感熱性粘着シート1の撓み方向が一致するため、例えば図1に示す構成において、印字可能層1dを内側に、感熱性粘着剤層1aを外側に向けて巻かれた感熱性粘着シート1からなるロール体11を用いる場合にも、感熱性粘着シート1の円滑な搬送と、精度良く所望の長さに切断することができる。
【0042】
ところで、特許文献2に示す従来の構成において、図6に示すようにガイド床部材上で上方に凸状に撓ませるのは非常に容易にできるが、仮に、感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませようとしても、このガイド部の構成を上下逆にしただけでは不可能である。なぜならば、進行する感熱性粘着シートの先端は重力によって垂れ下がるため、一旦下方に凸状に撓んだ感熱性粘着シートの先端を水平位置まで持ち上げて搬送経路に復帰させることができないからである。従って、感熱性粘着シートの余剰長さ部分は重力によって下方に垂れ下がって、搬送経路から逸脱していくのみである。このように、従来は、仮に下方に凸状に撓ませることを望んだとしても、それを可能にする構成は実現されていなかった。
【0043】
これに対して本発明では、図4(a)〜(d)に示すように、第1に、熱活性化装置5の進入部をカッター装置4の送出部の下方に位置させ、第2に、この間の搬送経路の上方に、進行方向に沿って斜め下方に傾斜するガイド屋根部材6aを設けることによって、感熱性粘着シート1のこしの強さを利用して、下方に凸状に撓ませることを可能にしている。すなわち、図4(a)に示すように、感熱性粘着シート1の先端がガイド屋根部材6aに突き当たると、図4(b)に示すように、感熱性粘着シート1のこしによって先端がガイド屋根部材6aから離れることなく突き当たったまま摺動してガイド屋根部材6aに沿って降下し、図4(c)に示すように、1対の挿入ローラ13間のニップ部に導かれる。そして、図4(d)に示すように、回転しない、または低速回転の1対の挿入ローラ13間のニップ部に先端が挟まれて保持された状態で、感熱性粘着シート1がさらに送られると、下方に凸状に撓む。このような構成によって初めて、重力によって単純に垂れ下がるのを防ぎ、感熱性粘着シート1を円滑に下方に撓ませることが可能になる。
【0044】
なお、図4(a)〜(d)に示すように円滑な変形を達成するためには、先端がガイド屋根部材6aに突き当たった時点で折れてしまわず、かつ先端がガイド屋根部材6aから離れて垂れ下がってしまわないように、感熱性粘着シート1の材質や厚さ等によって決まるこしの強さを考慮して、ガイド屋根部材6aの角度や長さが適宜に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のプリンタの全体構成を示す概略側面図である。
【図2】図1のA部分における、感熱性粘着シートの拡大図である。
【図3】本発明の粘着ラベル製造方法のフローチャートである。
【図4】(a)〜(d)は感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませる工程を順番に示す説明図である。
【図5】従来のプリンタの第1の例の全体構成を示す概略側面図である。
【図6】従来のプリンタの第2の例の全体構成を示す概略側面図である。
【図7】図6に示すプリンタにおいて感熱性粘着シートの円滑な搬送が行えない場合を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 感熱性粘着シート
1a 感熱性粘着剤層
1b シート状基材
1c 断熱層
1d 印字可能層
2 ロール体収納部
3 印字装置
4 カッター装置
4a 可動刃
4b 固定刃
5 熱活性化装置
6 ガイド部
6a ガイド屋根部材
7 印字用サーマルヘッド(印字用加熱手段)
8 印字用プラテンローラ(第1の搬送装置)
9 熱活性化用サーマルヘッド(熱活性化用加熱手段)
10 熱活性化用プラテンローラ
11 ロール体
12 排出ローラ
13 挿入ローラ(第2の搬送装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの前記印字可能層に印字する印字装置と、前記印字装置の後段に設けられ前記感熱性粘着シートを所定の長さに切断するカッター装置と、前記カッター装置の後段に設けられ、前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化装置と、前記カッター装置と前記熱活性化装置の間に設けられ、前記感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませることができるガイド部とを有し、
前記熱活性化装置の前記感熱性粘着シートの進入部は、前記カッター装置の前記感熱性粘着シートの送出部よりも下方に位置し、
前記ガイド部には、前記カッター装置の前記送出部から前記熱活性化装置の前記進入部に至る前記感熱性粘着シートの経路の上方に位置し、前記カッター装置の前記送出部から送出された前記感熱性粘着シートの先端が突き当てられ、その当接状態を保ちつつ摺動させることによって、前記感熱性粘着シートを前記熱活性化装置の進入部に導く平板状のガイド屋根部材が設けられている、プリンタ。
【請求項2】
前記印字装置の前段に位置し、前記印字装置に供給される前記感熱性粘着シートが巻かれたロール体を保持するロール体収納部をさらに含む、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記印字装置は、前記印字可能層に接触してそれを加熱する印字用加熱手段と、前記感熱性粘着シートを搬送する第1の搬送装置とを含み、
前記熱活性化装置は、前記感熱性粘着剤層に接触してそれを加熱する熱活性化用加熱手段と、前記感熱性粘着シートを搬送する第2の搬送装置とを含み、
前記第2の搬送装置と前記第1の搬送装置の速度制御によって、前記ガイド部で、前記感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませることができる、請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
シート状基材の一方の面に印字可能層が、他方の面に感熱性粘着剤層がそれぞれ形成されてなる感熱性粘着シートの前記印字可能層を、印字装置によって加熱して印字する印字工程と、
前記印字工程後に、カッター装置によって前記感熱性粘着シートを所定の長さに切断する切断工程と、
前記切断工程後に、熱活性化装置によって前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化工程と、
前記切断工程前に、前記カッター装置の送出部から送出された前記感熱性粘着シートの先端から前記カッター装置に対向する部分までの長さが所望の粘着ラベルの長さになるまで、前記感熱性粘着シートを、前記カッター装置と前記熱活性化装置の間で下方に凸状に撓ませる工程とを含み、
前記感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませる工程は、前記カッター装置の前記送出部から該送出部よりも下方に位置する前記熱活性化装置の進入部に至る前記感熱性粘着シートの経路の上方に位置する平板状のガイド屋根部材に、前記感熱性粘着シートの先端を突き当てて、その当接状態を保ちつつ摺動させることによって、前記感熱性粘着シートを前記熱活性化装置の前記進入部に導く工程を含む、粘着ラベルの製造方法。
【請求項5】
前記感熱性粘着シートを下方に凸状に撓ませる工程は、前記印字装置の、前記感熱性粘着シートを搬送する第1の搬送装置と、前記熱活性化装置の、前記感熱性粘着シートを搬送する第2の搬送装置の速度を制御することによって前記感熱性粘着シートを撓ませる工程である、請求項4に記載の粘着ラベルの製造方法。
【請求項6】
前記感熱性粘着シートが前記印字可能層を内側にして巻かれたロール体から、前記感熱性粘着シートを引き出して前記印字装置に供給する、請求項4または5に記載の粘着ラベルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−168166(P2006−168166A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363124(P2004−363124)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】