説明

プリンター及びその制御方法

【課題】プリンタの印刷処理時にインクリボンマーカーの検出時間の短縮及び停止精度の向上を図る。
【解決手段】供給軸部に巻装されている印刷用のリボンを引き出して巻き取り軸部を駆動して巻き取るリボン搬送部と、第1マーカー及び第2マーカーを含む先頭マーカーを検出可能なリボンマーカー検出部と、印刷動作を制御する制御部と、を備える。制御部は、予め設定された低速度で印刷用のリボンを搬送しながらリボンマーカー検出部で第1マーカーを検出してから第2マーカーを検出するまでの通過時間を計測する。この通過時間に基づき演算して求めた、予め設定された低速度より早い印刷用のリボンの搬送速度で、印刷用のリボンを次回以降搬送するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷に用いるインクリボンを巻き上げながらマーカーをサーチし、マーカーで指定された位置に短時間で高精度に停止させるよう制御可能としたプリンター及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱昇華型のカラープリンターでは、熱昇華インクリボン上のサーマルインク材又はオーバーコート(OC)材を、サーマルヘッドにより印刷用紙に昇華吸着させて諧調を表現して画像を形成している。
【0003】
この熱昇華型のカラープリンター(カラーサマールプリンター)で用いる熱昇華カラーインクリボンは、1本のリボン中に複数のブロックを設け、各ブロックにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバーコート(OC)が配置されている。
【0004】
さらに、熱昇華カラーインクリボンには、各色のインクの先頭検出を行えるようにするため、イエローのインク領域の開始位置に2本の先頭マーカーが設けられている。これと共に、熱昇華カラーインクリボンには、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバーコート(OC)のインク領域の開始位置に1本の先頭マーカーが設けられている。
【0005】
この熱昇華カラーインクリボンを用いるカラーサマールプリンターは、先頭マーカーを検出するためのリボンマーカーセンサーを備える。
【0006】
このカラーサマールプリンターでは、熱昇華カラーインクリボンを巻き取ってプリントしようとする色の領域の頭出しを行い、サーマルヘッドによってこの色のサーマルインクを用紙に熱転写している。
【0007】
このため、カラーサマールプリンターでは、カラーインクリボンを巻き取りながら、リボンマーカーセンサーにより先頭マーカーの検出動作を行う。
【0008】
そして、このカラーサマールプリンターでは、リボンマーカーセンサーがイエローのインク領域の開始位置にある2本線の先頭マーカーを検出したことを基準とし、その後1本の先頭マーカーを検出した回数をカウントすることにより、各色を特定している。
【0009】
さらに、このカラーサマールプリンターでは、各色の領域の先頭にある先頭マーカーを検出したときにカラーインクリボンの巻き取り動作を停止することにより、各色の領域ごとの頭出しを行っている。
【0010】
このようなカラーサマールプリンターでは、カラーインクリボンを巻き取って、各色の領域の頭出し動作を正確に行う必要がある。
【0011】
そこで、従来のカラーサマールプリンターでは、マーカー検出センサーを複数配置してマーカー検出直前かどうかを判定可能に構成し、検出直前であればインクリボンの巻き上げ速度を低下させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
また、従来のカラーサマールプリンターには、印字中のインクリボンの搬送速度を一定とするため、インクリボンのインクを頭出しする際に、インクリボンの搬送速度を検出するものが提案されている。そして、この従来のカラーサマールプリンターでは、検出した頭出し動作の際のインクリボンの搬送速度に基づいて、印字中にインクリボンが一定の速度で搬送されるようにインクリボンの駆動モータの電力制御を行っている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−32036号公報
【特許文献2】特開平7−214849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前述した色順次のリボンマーカー検出方法では、以下のような問題を内包していた。それは、カラーサマールプリンターでのインクリボンの巻き取り動作において、インクリボンの搬送速度が、インクリボンの巻き取り駆動軸側にインクリボンが巻き取られた量に比例して増大し、搬送速度が一定とならない。
【0015】
これは、インクリボン巻き上げを行う巻き取り駆動軸の角速度が同じでも、巻き上げられるインクリボンの量が軸径に応じて増えてしまい、インクリボンマーカーがマーカーセンサー上を通過する相対速度が大きくなって行くためである。
【0016】
その結果、カラーサマールプリンターでは、インクリボンの先頭マーカーを検出してインクリボンの巻上げを停止しても、インクリボンの巻き取り速度が速すぎると先頭マーカーを通過してから停止する事象が発生する場合がある。このような場合には、印刷終盤に次色のインクリボンマーカーが印刷用紙に転写されてしまい、インクリボンと印刷用紙の張り付きを起こす要因となっていた。
【0017】
また、このような事態を回避するためにインクリボンの巻き上げ速度が常に一定速度以下となるように遅くすることが考えられる。しかし、インクリボンの巻き上げ速度が常に一定速度以下となるように遅くした場合には、インクリボンマーカーの検出にかかる時間が増大し、印刷時間の増加となり、使用者にとって快適な操作性を提供する事ができなくなる。
【0018】
本発明の目的は、インクリボンの停止精度を向上させ、インクリボンマーカーの検出時間を増大させること無く、使用者にとって快適な操作性が得られるプリンター及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明のプリンターは、面順次に配置された複数の領域と、各々の前記領域の搬送方向の先端に先端を検出するための先頭マーカーが設けられたリボンを用いて印刷するプリンターにおいて、前記リボンが巻装されている供給軸部から引き出した前記リボンを、巻き取り軸部を駆動させることにより前記巻き取り軸部に巻き取るように構成されたリボン搬送部と、前記先頭マーカーを検出するリボンマーカー検出部と、前記リボン搬送部によるリボンの搬送を制御する制御する制御部と、を備え、前記制御部は、まずは、所定の搬送速度で前記リボン搬送部によりリボンを搬送させ、前記リボンマーカー検出部により前記先頭マーカーを検出する期間の通過時間またはリボン搬送部による駆動量に基づいて、搬送速度を決定し、次回からは、前記決定した搬送速度で前記リボン搬送部によりリボンを搬送させることを特徴とする。 上記目的を達成するために、本発明のプリンターの制御方法は、面順次に配置された複数の領域と、各々の前記領域の搬送方向の先端に先端を検出するための先頭マーカーが設けられたリボンを用いて印刷するプリンターの制御方法において、前記プリンターは、前記リボンが巻装されている供給軸部から引き出した前記リボンを、巻き取り軸部を駆動させることにより前記巻き取り軸部に巻き取るように構成されたリボン搬送部と、前記先頭マーカーを検出するリボンマーカー検出部と、前記リボン搬送部によるリボンの搬送を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、まずは、所定の搬送速度で前記リボン搬送部によりリボンを搬送させるステップと、前記リボンマーカー検出部により前記先頭マーカーを検出する期間の通過時間またはリボン搬送部による駆動量に基づいて、搬送速度を決定するステップと、次回からは、前記決定した搬送速度で前記リボン搬送部によりリボンを搬送させるステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、インクリボンの巻き取り量が変化しても適切にインクリボンの巻き上げ速度を制御できる。よって、本発明によれば、著しい停止精度の低下を防ぎ、インクリボンと印刷用紙とが張り付くような事態の発生を抑制できる。そして、インクリボンマーカーの検出時間を増大させること無く、使用者にとって快適な操作性が得られるプリンター及びその制御方法を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係わるカラーサマールプリンターでイエローマーカーサーチを行うときの動作の手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係わるカラーサマールプリンターの熱昇華型印刷部が印刷前の状態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わるカラーサマールプリンターの熱昇華型印刷部が印刷中の状態を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わるカラーサマールプリンターの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わるカラーサマールプリンターで使用する熱昇華型インクリボンの構成を示す概略構成説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係わるカラーサマールプリンターで、印刷を行うときの動作の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係わるカラーサマールプリンターの熱昇華型印刷部が印刷中の状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のプリンターの実施の形態に係わるカラーサマールプリンターについて図面を参照しながら説明する。
【0023】
本実施の形態に係わるカラーサマールプリンター(熱昇華型印刷装置)の概略構成を示す図4のブロック図で、1119は、印刷装置本体の印刷処理を制御するMPU(Micro Processor Unit)である。このMPU1119は、マイクロプロセッサ機能に加えて画像処理機能、メモリーカードアクセス機能及び通信インターフェース等が複合された専用ICとして構成されている。
【0024】
このMPU1119には、印刷装置本体の制御プログラムが格納されたフラシュメモリー等のROM(Read Only Memory)1107が接続されている。これと共に、このMPU1119には、印刷画像データ作成などに使われ、印刷画像データが展開される書き換え可能なRAM(Randam Access Memory)1108が接続されている。
【0025】
このMPU1119は、印刷時に、この1108RAMに展開された印刷画像データを元にサーマルヘッド1110の制御を実行する。
【0026】
また、このMPU1119には、印刷用紙先端検出センサー、インクリボン先頭検出センサー等の状態検出を行うセンサー群1101が接続されている。
【0027】
さらに、このMPU1119は、ステッピングモータードライバ1103を介して、印刷用紙の搬送を行うステッピングモーター1102を駆動制御するよう構成されている。これと共に、このMPU1119は、DCモータードライバ1106を介して、ポジションチェンジモーター1104とリボンフィードモーター1105とを駆動制御するよう構成されている。このDCモータードライバ1106は、PWM(Pulse Width Modulation)等の手法により速度制御を実行可能に構成されている。
【0028】
このポジションチェンジモーター1104は、サーマルヘッドとインクリボン(印刷用のリボン)、印刷用紙を圧着、離間させるためのものである。また、リボンフィードモーター1105は、リボン搬送部に装着され、インクリボンの巻き取り軸部を回転駆動してインクリボンを巻き上げるためのものである。このインクリボンは、供給軸部に巻装されており、この供給軸部から引き出されたインクリボンが、所定の搬送路上を引き回されて、巻き取り軸部に巻き取られるように構成されている。
【0029】
このMPU1119には、ダイレクトプリント用の通信インターフェースA1116と、パーソナルコンピューター接続用の通信インターフェースB1115とが接続されている。このインターフェースA1116は、デジタルカメラが接続可能に構成されており、このインターフェースA1116を用いて、デジタルカメラ上の操作から印刷を行う事が可能に構成されている。
【0030】
また、インターフェースBは、これを用いることにより、パーソナルコンピューターからの遠隔操作で、このプリンターに印刷を行わせられるように構成されている。
【0031】
このMPU1119には、メモリカード1117を装着するためのメモリーカードスロット1118が接続されている。なお、図4には、単数のメモリーカードスロット1118が記載されているが、複数のメモリーカードスロットにしても良い。
【0032】
このMPU1119は、熱制御IC1109を介して、サーマルヘッド1110を駆動制御するよう構成されている。
【0033】
さらに、このMPU1119は、LCDドライバ1111を介して、表示装置LCD(Liquid Cristal Display)を駆動制御するよう構成されている。
【0034】
このMPU1119には、電源スイッチ、印刷指示、画像選択等を行う操作部材1113が接続されている。さらに、このMPU1119には、カラーサマールプリンター(熱昇華型印刷装置)に装着される用紙カセット種検出のため印刷用紙カセット、インクリボンカセットの種別を判別する用紙カセット種判別部1114が接続されている。
【0035】
上述のように構成されたカラーサマールプリンター(熱昇華型印刷装置)では、MPU1119が、操作部材1113の状態検出、センサー群1101の状態検出及びシーケンス上の判定と判断とを司る。
【0036】
また、このカラーサマールプリンターでは、メモリーカードスロット1118に装着されたメモリーカード1117から圧縮画像ファイルを読み出し、MPU1119で伸張処理したものを表示装置1112に画像として表示可能に構成されている。さらに、このカラーサマールプリンターでは、操作部材1113で選択した画像を、印刷することが可能に構成されている。
【0037】
次に、このカラーサマールプリンターにおける、熱昇華式の印刷部の概略構成について、図2により説明する。
【0038】
この熱昇華式の印刷部では、印刷用紙2−1の給紙用の搬送路が、給紙ローラー対2−5、2−6からサーマルヘッド2−7、プラテンローラー2−12間を経由してグリップローラー2−8、ピンチローラー2−9へ掛けて構成されている。さらに、この搬送路におけるピンチローラー2−9の出口近傍には、印刷用紙の先端を検出するためのセンサーである印刷用紙先端検出センサー2−13が配置されている。
【0039】
この熱昇華式の印刷部には、未使用のインクリボン(印刷用のリボン)を巻回した供給リール(供給軸部)が装着されている。この供給リールから引き出されたインクリボンは、サーマルヘッド2−7とプラテンローラー2−12との間を通し、リボンマーカーセンサー2−10を通してから巻き取りリール(巻き取り軸部)へ巻き取られるように構成されている。この巻き取りリールは、図示しないDCモーターにより巻き上げ動作を行うように構成されている。
【0040】
この熱昇華式の印刷部では、サーマルヘッド2−7とプラテンローラー2−12との間に、印刷用紙2−1及びインクリボンを図3に示すように挟み付けた状態で搬送しながら、サーマルヘッド2−7により画像形成の処理を行うよう構成されている。
【0041】
次に、このカラーサマールプリンターで使用するインクリボンについて、図5により説明する。このインクリボンには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバーコート(OC)の層が形成された領域が順番に配置されている。
【0042】
このインクリボンには、イエロー(Y)の搬送方向の先端に、2重線(相互に接近して配置された2本の平行な線)に形成された先頭マーカー701、702が形成されている。他のマゼンタ(M)の搬送方向の先端の先頭マーカー704、シアン(C)の搬送方向の先端の先頭マーカー706、オーバーコート(OC)の搬送方向の先端の先頭マーカー708は、1本の線分に形成されている。
【0043】
このインクリボンの先頭マーカー701、702、先頭マーカー704、706、708は、インクリボンの搬送動作時に、リボンマーカーセンサーで検知可能に構成されている。
【0044】
次に、リボンマーカーセンサーについて説明する。
【0045】
このリボンマーカーセンサー2−10は、反射板2−11に向かってLED光を照射しその反射光をリボンマーカーセンサー2−10で受光して電気信号に変換し、その電圧値により検出を行うように構成されている。
【0046】
インクリボンマーカー部分は、透過率がインク部分より低く形成されているため反射光がインク部に比べて低くなる。そこで、このカラーサマールプリンターでは、リボンマーカーセンサー2−10の出力がインク部とリボンマーカー部で出力電圧が図5の710に示すように変わる事を利用して、各先頭マーカー701、702、704、706、708の検出を行う。
【0047】
次に、カラーサマールプリンターで実行される印刷動作の処理について、図6のフローチャートによって説明する。
【0048】
このカラーサマールプリンターでは、MPU1119が、操作部材1113、通信インターフェースA1116、通信インタフェースB経由でデジタルカメラ又はパーソナルコンピューターから印刷が指示されると、印刷動作の処理が開始される。
【0049】
図6のフローチャートに示すように、印刷動作の処理が開始されると、給紙のため、印刷用紙を搬送路上で搬送する(ステップS801)。
【0050】
そして、印刷用紙が、印刷用紙先端検出センサー2−13で検出されると、MPU1119は、印刷用紙2−1の搬送量をグリップローラー2−8を駆動するステッピングモーター(不図示)の駆動ステップ数により制御する。
【0051】
次に、MPU1119は、イエロー印刷を行うか否かを判別し、イエロー印刷を行うと判定した場合(ステップS803でYES)に、次のステップS804へ進み、イエローマーカーサーチが実行される。
【0052】
このイエローマーカーサーチでは、熱昇華型インクリボン2−3をDCモーター(不図示)により矢印2−16方向に巻き上げながら、リボンマーカーセンサーにより熱昇華型インクリボンのイエロー領域の先頭マーカー701、702を検出する。なお、イエローマーカーサーチの詳細については、後述する。
【0053】
リボンマーカーセンサー2−10でイエロー領域の先頭マーカー701、702が検出されたときに、熱昇華型インクリボンのイエローの頭出しがされ、イエローマーカーサーチが完了する。
【0054】
次に、MPU1119は、印刷処理を開始し、サーマルヘッド2−7をプラテンローラー2−12に圧接してサーマルヘッド2−7に通電を開始する。さらに、MPU1119は、インクリボンを巻き上げながら、印刷用紙2−1を矢印2−14方向へ搬送していくよう制御し、熱昇華型インクを昇華させ印刷用紙に吸着させて印刷する(ステップS806)。この印刷処理では、印刷用紙2−1の搬送にあたり、搬送距離の管理を、グリップローラー2−8を駆動するステッピングモーター(不図示)のステップ数によって管理する。そして、MPU1119は、規定のステップ数印刷用紙の搬送が完了するとステッピングモーター(不図示)を停止し、サーマルヘッド2−7への通電を停止し、プラテンローラー2−14との圧接を解除してイエロー(Y)の印刷処理を終了する。
【0055】
次に、MPU1119は、オーバーコート(OC)の印刷が完了しているかの判定を行う。そして、オーバーコートの印刷が完了していないと判定した場合(ステップS807でNO)に、インクリボンの面順次の配列に従って次色マゼンタ(M)の印刷処理を行うため、用紙逆搬送の処理を行う(ステップS808)。
【0056】
この用紙逆搬送の処理では、イエロー印刷時に印刷用紙搬送した分だけ印刷用紙2−1を戻すため、イエロー(Y)の印刷用紙の搬送を行ったステップ数分印刷時と逆方向(矢印2−14)に印刷用紙を搬送する。
【0057】
次に、用紙逆搬送の処理で印刷用紙が印刷開始位置へ復帰してから、MPU1119は、次に印刷する色がイエローか否かを判別する。そして、MPU1119は、イエロー以外と判定した場合(ステップS803でNO)に、次のステップS805へ進み、次に印刷する色(ここでは、インクリボンの面順次の配列に従って次色マゼンタ(M))のインクリボン先頭マーカーサーチを行う。
【0058】
次に、MPU1119は、マーカーサーチが完了すると、前述したステップS806へ進み、次に印刷する色(ここではマゼンタ)の印刷処理を実行する。
【0059】
このようにして、MPU1119は、ステップS803からステップS808までのルーチンを繰り返すことにより、シアン(C)、オーバーコート(OC)の印刷処理を実行する。
【0060】
そして、MPU1119は、ステップS807で、オーバーコートの印刷処理が完了したと判定した場合(ステップS807でYES)に、印刷物を排紙する処理(ステップS809)を実行して印刷動作の処理を完了する。
【0061】
次に、印刷動作の処理におけるステップS804に対応したイエローマーカーサーチの詳細について、図1のフローチャートに従って説明する。
【0062】
このイエローマーカーサーチの処理は、イエロー印刷を行うのに先立って処理が開始される。イエローマーカーサーチが開始されると、リボンマーカーセンサー2−10は、マーカー検出を開始する(ステップS101)。
【0063】
これと共に、MPU1119は、インクリボンカセットの挿抜が行われた直後の印刷動作であるか否かの挿抜判定を行う(ステップS102)。
【0064】
そして、MPU1119は、挿抜判定でインクリボンカセット挿抜直後の印刷動作であると判定した場合(ステップS102でYES)に、インクリボンを予め定められた低速度で巻上げるように設定する(ステップS103)。この予め定められた低速度は、巻き取り軸部に巻回されたインクリボンの量にかかわらず第1マーカー701及び第2マーカー702をリボンマーカーセンサー2−10が検出できるよう予め設定された低速度である。
【0065】
次に、MPU1119は、インクリボンを、ステップS103で設定された低速で巻上げる動作を開始する(ステップS104)。インクリボンカートリッジ挿抜直後に低速で巻上げを行う場合には、図7に示すようにインクリボンがほぼ消費された巻き終わり付近であっても、高速でインクリボンマーカーを通過することを防ぎインクリボンマーカーを確実に検出できる。
【0066】
次に、MPU1119は、低速で巻上げる動作を継続しながら、イエロー領域先頭の第1マーカー701の検出を待つ。MPU1119は、イエロー領域先頭の第1マーカー701が検出されると(ステップS105でYES)、リボンマーカー通過時間の計測を開始する(ステップS106)。
【0067】
次に、MPU1119は、2重線の如く連続して配置された先頭マーカー701、702を検出するために低速で巻上げる動作を継続しながら、計測を開始したリボンマーカー通過時間と予め設定されている規定時間とを比較する(ステップS108)。ここで、予め設定された規定時間は、2重線の先頭の第1マーカー701と、第2マーカー702とが通過する時間より大きく、また、各先頭マーカー704、706、708の何れかが2回連続して検出されるより小さい時間に設定する。
【0068】
次に、MPU1119は、ステップS108で、先頭マーカーの通過時間が規定時間より大きくなったと判定した場合(ステップS108でNO)に、イエロー領域の先頭マーカー701、702が検出されない場合であると判断する。この場合にMPU1119は、他のマゼンタ、シアン、オーバーコートの先端の各先頭マーカー704、706、708の検出を待つために、ステップS109へ進む。
【0069】
次に、MPU1119は、リボンマーカー通過時間の計測を停止(ステップS109)し、ステップS105に戻る。
【0070】
また、MPU1119は、ステップS108の規定時間内において、先頭マーカー702の検出動作を継続する(ステップS110でNO)。
【0071】
次に、MPU1119は、先頭マーカー701が検出されてから規定時間以内に先頭マーカー702が検出された場合に、イエロー領域先頭の第1マーカー701、第2マーカー702が検出されたと判定する(ステップS110でYES)。
【0072】
次に、MPU1119は、ステップS111へ進み、リボン巻上げ動作を停止する。
【0073】
次に、MPU1119は、第2マーカー702が検出された時点で、ステップS106から開始されているインクリボンマーカーの通過時間を記憶する(ステップS112)。
【0074】
次に、MPU1119は、リボンマーカー通過時間計測を停止する(ステップS113)。これと共に、MPU1119は、リボンマーカー検出動作を停止する(ステップS114)。
【0075】
次に、MPU1119は、ステップS112で記憶したイエローリボンマーカーの通過時間に基づいて次色以降のマーカー巻上げ時間を算出して次色以降のリボンマーカーサーチに備え(ステップS115)この処理を終了する。
【0076】
本処理では、通過時間を計測したが、タイマーを持たないプリンターの場合は、通過時間ではなく、リボンフィードモーター1105の回転数または駆動量を使用して、次色以降のマーカー巻上げ時間を算出してもよい。
【0077】
次に、前述したイエローマーカーサーチの処理のステップS115で実行される巻き上げ速度算出方法の具体例について説明する。
【0078】
本実施の形態では、イエロー領域先頭の第1マーカー701が検出されてから第2マーカー702が検出されるまでの通過時間から、適切なPWMのデューティー値を算出する。このPWMのデューティー値は、インクリボンマーカーを検出可能で、かつ即時停止可能な巻き上げ速度にするための値に設定する。
【0079】
ここでPWMとは、周期的に繰り返すパルスのデュティーを制御することによりDCモーターにかかる実効電圧を変える電圧制御方法である。パルスデューティーは、これを上げることによりDCモーターの回転速度が上がり、反対にパルスデューティーを下げることによりDCモーターの回転速度が下がることになる。
【0080】
本実施の形態に係わるカラーサマールプリンターでは、インクリボンの巻上げをPWM駆動可能なDCモーターにより行うように構成している。このカラーサマールプリンターでは、一定の低速で巻上げる動作を継続しながら、イエロー領域先頭の2重線の第1マーカー701が検出されてから第2マーカー702が検出されるまでの時間(CurrentTime)を検知するよう構成されている。また、カラーサマールプリンターでは、現在のインクリボン巻上げのPWMデューティー設定値(CurrentPWMDuty)と、次回イエローインクリボンマーカー検出に要する目標時間(TargetTime)とが特定できる。
【0081】
よって、このカラーサマールプリンターでは、(CurrentTime)、(CurrentPWMDuty)及び(TargetTime)との値が得られる。このカラーサマールプリンターでは、これらの値に基づいて、次回のインクリボン巻き上げのPWMデューティー(NextPWMDuty)を下記〔式1〕より算出することができる。
[数1]
NextPWMDuty = (CurrentTime/TargetTime) × (CurrentPWMDuty) 〔式1〕
なお、本実施の形態では、インクリボンの巻上げにDCモーターを使った構成で説明したが、ステッピングモーターを使用して駆動速度を変えてインクリボンの巻き上げ速度を制御するように構成しても良い。また、ステッピングモータの場合は、ステップ数を記憶して、ステップ数に基づいて次色以降のマーカー巻上げ時間を算出してもよい。
【0082】
また、本実施の形態では、インクリボンマーカーのセンサー通過時間計測を、イエロー領域先頭の2重線の第1マーカー701が検出されてから第2マーカー702が検出されるまでの時間(CurrentTime)としている。このため、インクリボン挿抜後二回目以降の印刷に於いて、前述のステップS102でインクリボン挿抜直後の印刷動作でなければ、前回印刷時にステップS115で算出された巻上げ速度でイエロー及び他色のリボンマーカーの検出が行われる。ここで、本来であればイエローに続くマゼンタ、シアン、オーバーコートで各々のインクリボンマーカーのセンサー通過時間が短くなって行くが、マクロ的にはほぼ同一の時間とみなして問題無い。
【0083】
但し、イエロー以外のリボンマーカーの通過時間を計測し、次色印刷のリボンマーカーサーチの巻き上げ速度に反映させるように構成しても良い。イエロー以外のリボンマーカーを検出して、巻き上げ速度を決定する場合は、1本のリボンマーカーしかないので、リボンマーカーを検出している期間の通過時間を計測して、計測した通過時間に基づいて巻き上げ速度を決定するとよい。
【0084】
以上説明した本実施の形態では、インクリボンマーカーサーチの低速設定の契機として、インクリボンカセットの挿抜を契機としたものについて説明した。しかし、インクリボンマーカーサーチの低速設定の契機を、電源投入時(電源投入後)、印刷処理に伴うエラー発生時(エラー発生直後)を契機とするように構成しても良い。
【0085】
ここで、電源投入を契機とした場合には、電源オフ時のインクリボンカセットの挿抜監視が必要なくなる。但し、エラー発生時、特にインクリボンの巻き上げ制御に起因するような場合には、計測した時間が一連の動作不良により正しい動作時間では無い可能性が高い。
【0086】
要するに、本実施の形態に係わるプリンターは、印刷用のリボンを用いて印刷するプリンターである。この印刷用のリボンは、面順次に配置された複数の領域(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の熱昇華インクの領域と、オーバーコート(OC)の領域)を備える。さらに、この印刷用のリボンには、各領域の搬送方向の先端に先端を検出するための先頭マーカーが設けられている。これと共に、この印刷用のリボンには、面順次で最も先頭となる領域(イエローの領域)の先頭マーカーが相互に接近して配置された2本の平行な線に形成された第1マーカー701及び第2マーカー702で構成されている。
【0087】
この印刷用のリボンは、供給軸部に巻装されている。この供給軸部から引き出された印刷用のリボンは、サーマルヘッド2−7とプラテンローラー2−12との間を通し、リボンマーカー検出部2−10を通って巻き取り軸部に巻き取られる。この印刷用のリボンは、巻き取り軸部を回転駆動して搬送するように構成されたリボン搬送部によって、搬送速度を制御して搬送される。
【0088】
リボンマーカー検出部2−10は、第1マーカー701及び第2マーカー702を含む先頭マーカーを検出可能に構成されている。
【0089】
このプリンターの制御を司る制御部は、リボンマーカー検出部2−10が、印刷用のリボンの第1マーカー701及び第2マーカー702を検出できるように印刷用のリボンを搬送する速度が不明の状態であることを判別する。この第1、第2マーカー検出のための搬送速度が不明の状態というのは、インクリボン交換後初回のインクリボン先頭色検出マーカーの検出動作時等の状態が該当する。このインクリボン先頭色検出マーカーの検出動作時等の状態のときに、制御部は、巻き取り軸部に巻回された印刷用のリボンの量にかかわらず第1マーカー701及び第2マーカー702を検出できるよう予め設定された低速度で搬送する。この予め設定された所定の低速度は、制御部で先頭マーカー検出の通過時間又はリボン搬送部による駆動量に応じて決定される搬送速度よりも低速に設定されている。
【0090】
そして、制御部は、予め設定された低速度で搬送されている印刷用のリボンから、リボンマーカー検出部2−10が第1マーカー701を検出してから第2マーカー702を検出するまでの通過時間を計測する。制御部は、計測された通過時間に基づいて演算して求めたリボンマーカー検出部2−10が第1マーカー701及び第2マーカー702を検出可能で、予め設定された低速度より早い印刷用のリボンの搬送速度で、印刷用のリボンを次回以降搬送するよう制御する。
【0091】
また、例えば、制御部は、リボンマーカー検出部が先頭マーカーを検出している期間の時間経過又はリボン搬送部による駆動量に基づいて、搬送速度を決定する。
【0092】
このように本実施の形態のカラーサマールプリンターによれば、インクリボンカセット交換直後は低速でインクリボンの巻上げを行う。そして、高速巻上げ可能な領域と判断されれば、その後高速で巻上げを行う。このため、このカラーサマールプリンターでは、インクリボンの巻き上げが一律に低速になることは無く、使用者に快適な操作性を提供することができる。
【0093】
また、本実施の形態のカラーサマールプリンターによれば、インクリボンマーカーの通過時間を一定に保つように動作するので停止精度を向上させることができる。なお、本実施の形態では、印刷用紙2−1が、切断済みの形態のものに付いて説明したが、本発明は、カッター機構を備えたロール状印刷用紙を用いたプリンターにも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面順次に配置された複数の領域と、各々の前記領域の搬送方向の先端に先端を検出するための先頭マーカーが設けられたリボンを用いて印刷するプリンターにおいて、
前記リボンが巻装されている供給軸部から引き出した前記リボンを、巻き取り軸部を駆動させることにより前記巻き取り軸部に巻き取るように構成されたリボン搬送部と、
前記先頭マーカーを検出するリボンマーカー検出部と、
前記リボン搬送部によるリボンの搬送を制御する制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、まずは、所定の搬送速度で前記リボン搬送部によりリボンを搬送させ、前記リボンマーカー検出部により前記先頭マーカーを検出する期間の通過時間またはリボン搬送部による駆動量に基づいて、搬送速度を決定し、次回からは、前記決定した搬送速度で前記リボン搬送部によりリボンを搬送させることを特徴とするプリンター。
【請求項2】
前記所定の搬送速度は、前記制御部で先頭マーカー検出の通過時間または、リボン搬送部による駆動量に応じて決定される搬送速度よりも低速であることを特徴とする請求項1に記載のプリンター。
【請求項3】
前記制御部は、前記プリンターの電源投入後、または、前記リボンが交換された後には、前記所定の速度でリボンを搬送させ、その後、決定した搬送速度でリボンを搬送させることを特徴とする請求項1に記載のプリンター。
【請求項4】
前記リボンの特定の領域には、2本の平行な線で形成された第1マーカー及び第2マーカーとが前記先頭マーカーとして設けられており、
前記制御部は、前記第1マーカーを検出してから、前記第2マーカを検出するまでの通過時間、または、リボン搬送部による駆動量に基づいて、搬送速度を決定することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のプリンター。
【請求項5】
前記制御部は、前記リボンマーカー検出部が前記先頭マーカーを検出している期間の時間経過またはリボン搬送部による駆動量に基づいて、搬送速度を決定することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のプリンター。
【請求項6】
面順次に配置された複数の領域と、各々の前記領域の搬送方向の先端に先端を検出するための先頭マーカーが設けられたリボンを用いて印刷するプリンターの制御方法において、
前記プリンターは、前記リボンが巻装されている供給軸部から引き出した前記リボンを、巻き取り軸部を駆動させることにより前記巻き取り軸部に巻き取るように構成されたリボン搬送部と、前記先頭マーカーを検出するリボンマーカー検出部と、前記リボン搬送部によるリボンの搬送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、まずは、所定の搬送速度で前記リボン搬送部によりリボンを搬送させるステップと、前記リボンマーカー検出部により前記先頭マーカーを検出する期間の通過時間またはリボン搬送部による駆動量に基づいて、搬送速度を決定するステップと、次回からは、前記決定した搬送速度で前記リボン搬送部によりリボンを搬送させるステップとを有することを特徴とするプリンターの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−11569(P2012−11569A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147601(P2010−147601)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】