説明

プリンター

【課題】2組の印刷ヘッドにおけるプラテンギャップを一定に保持可能なプラテンギャップ調整機構を備えたプリンターを提供する。
【解決手段】小切手処理装置1は、表書き用印刷ヘッド20、第1媒体搬送ローラー24、裏書き用プラテン19を備えた表書き用ヘッドユニット14と、第2媒体搬送ローラー25、表書き用プラテン21が搭載され、第1媒体搬送ローラー24に対して接近および離れる方向に移動可能なプラテンレバーユニット16と、これを、第1媒体搬送ローラー24に接近する方向に付勢して第2媒体搬送ローラー25を第1媒体搬送ローラー24に押し付けている引張りコイルバネ35と、裏書き用印刷ヘッド18が搭載され、第1媒体搬送ローラー24に対して接近および離れる方向に移動可能な裏書き用ヘッドユニット15と、これをプラテンレバーユニット16に押し付けている引張りコイルバネ36とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小切手等の記録媒体の各面に印刷を行う複数組の印刷ヘッドを備えたプリンターに関し、特に、それぞれの印刷ヘッドのプラテンギャップを適切に設定可能な機構を備えたプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプリンターとしては、小切手に印刷されている磁気インク文字を読み取る磁気ヘッドと共に小切手の表書きおよび裏書きを行う2組の印刷ヘッドを備えたものが知られている。特許文献1、2にはこのようなプリンター(媒体処理装置、複合処理装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−43339号公報
【特許文献2】特開2010−20809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、小切手などの記録媒体の表裏にそれぞれ印刷を行う表書き用印刷ヘッドと裏書き用印刷ヘッドは、記録媒体の搬送経路の両側に位置する各装置フレーム部分に搭載される。これに対して、表書き用印刷ヘッドの印刷位置を規定するプラテンは裏書き用印刷ヘッド側の装置フレームに搭載され、裏書き用印刷ヘッドのプラテンは逆に表書き用印刷ヘッド側の装置フレーム部分に搭載される。
【0005】
双方の印刷ヘッドにおけるプラテンギャップは例えば0.5mm以下と狭く、このような狭いギャップが正確に得られるように、異なる装置フレーム部分に搭載された2組の印刷ヘッドおよびプラテンのそれぞれを精度良く対向配置することは、単一の印刷ヘッド、プラテンの場合に比べて容易ではない。特に、外力が作用した場合などにおいて、双方の装置フレーム部分が変位して、双方のプラテンギャップが異なる状態で変化しやすく、一か所においてプラテンギャップ調整を行えば良い場合に比べて、プラテンギャップの調整が困難である。
【0006】
一方、印刷ヘッドおよびプラテンのギャップが一定であっても、異なる厚みの記録媒体が搬送されると、記録媒体の印刷面と印刷ヘッドの間のプラテンギャップが変化してしまい、印刷品質が低下するなどの弊害が発生する。従来では、記録媒体の厚みに応じて双方の印刷ヘッドのプラテンギャップを追従させることができないという問題点がある。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、複数箇所のプラテンギャップを一定に保持可能なプラテンギャップ調整機能を備えたプリンターを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のプリンターは、
第1印刷ヘッド、第1媒体搬送ローラー、および第2プラテンが搭載されている第1ヘッドユニットと、
前記第1印刷ヘッドに対峙可能な位置に第1プラテンが搭載され、前記第1媒体搬送ローラーに当接可能な位置に第2媒体搬送ローラーが搭載され、前記第2プラテンに対峙可能な位置に第2印刷ヘッドが搭載されていると共に、前記第1媒体搬送ローラーに対して接近および離れる方向に移動可能な第2ヘッドユニットと、
前記第2ヘッドユニットを第1媒体搬送ローラーに接近する方向に付勢して前記第2媒体搬送ローラーを前記第1媒体搬送ローラーに押し付けている付勢部材とを有していることを特徴としている。
【0009】
本発明では、第2ヘッドユニットが移動可能であり、付勢部材によって第2ヘッドユニットに搭載されている第2媒体搬送ローラーを固定側の第1ヘッドユニットに搭載されている第1媒体搬送ローラーに押し付けているので、第1、第2媒体搬送ローラーによって双方のユニットの相対位置が規定される。外力などが作用して双方のユニットが変位した場合においても、付勢部材の付勢力によって第1媒体搬送ローラーおよび第2媒体搬送ローラーの当接状態が維持され、双方のユニットの相対位置が一定に維持されるので、第1、第2印刷ヘッドそれぞれのプラテンギャップが一定に保持される。
【0010】
また、第1媒体搬送ローラーおよび第2媒体搬送ローラーの間隔は、これらの間を通って搬送される記録媒体の厚みに追従して変化する。これにより、これらのローラーの当接によって規定されている第1ヘッドユニットおよび第2ヘッドユニットの相対位置が変化する。この結果、搬送される記録媒体の厚みに追従して、第1ヘッドユニット側の第1印刷ヘッドと、第2ヘッドユニット側の第1プラテンの間隔が変化する。同様に、第2ヘッドユニット側の第2印刷ヘッドと、第1ヘッドユニット側の第2プラテンの間隔が変化する。したがって、搬送される記録媒体の厚みに応じてプラテンギャップが増加するため、ヘッドユニットと記録媒体の距離が一定値以上に保たれる。
【0011】
ここで、第2媒体搬送ローラーおよび第2プラテンを、第2ヘッドユニットとは別の部材に搭載し、当該部材を介して、第1ヘッドユニットと第2ヘッドユニットを位置決めすることもできる。
【0012】
この場合における本発明のプリンターは、
第1印刷ヘッド、第1媒体搬送ローラー、および第2プラテンが搭載されている第1ヘッドユニットと、
前記第1媒体搬送ローラーに当接可能な位置に第2媒体搬送ローラーが搭載され、前記第1印刷ヘッドに対峙可能な位置に第1プラテンが搭載されていると共に、前記第1媒体搬送ローラーに対して接近および離れる方向に移動可能な移動部材と、
前記移動部材を第1媒体搬送ローラーに接近する方向に付勢して前記第2媒体搬送ローラーを前記第1媒体搬送ローラーに押し付けている第1付勢部材と、
前記第2プラテンに対峙可能な位置において第2印刷ヘッドが搭載されていると共に、前記第1媒体搬送ローラーに対して接近および離れる方向に移動可能な第2ヘッドユニットと、
前記第2ヘッドユニットを前記第1媒体搬送ローラーに接近する方向に付勢して前記移動部材に押し付けている第2付勢部材とを有していることを特徴としている。
【0013】
本発明では、第1ヘッドユニットに搭載されている第1媒体搬送ローラーに、移動部材に搭載されている第2媒体搬送ローラーが第1付勢部材によって押し付けられている。第1媒体搬送ローラーと第2媒体搬送ローラーの当接により、第1ヘッドユニットと移動部材の間の相対位置が規定され、第1ヘッドユニットに搭載されている第1印刷ヘッドと移動部材に搭載されている第1プラテンとの相対位置が規定され、当該第1印刷ヘッドにおけるプラテンギャップが規定される。
【0014】
また、第1ヘッドユニットに対して位置決めされた移動部材に対しては、第2ヘッドユニットが第2付勢部材によって押し付けられており、移動部材と第2ヘッドユニットの当接により、これらの相対位置が規定される。したがって、移動部材を介して、第1ヘッドユニットと第2ヘッドユニットの相対位置が規定され、第2ヘッドユニットに搭載されている第2印刷ヘッドと第1ヘッドユニットに搭載されている第2プラテンとの間の相対位置が規定され、当該第2印刷ヘッドにおけるプラテンギャップが規定される。
【0015】
このように、第1ヘッドユニットと移動部材の間において第1印刷ヘッドの側のプラテンギャップが調整され、第1ヘッドユニットと第2ヘッドユニットの間において第2印刷ヘッドの側のプラテンギャップが調整される。第1ヘッドユニットと第2ヘッドユニットの2部材を用いて、それらの間のプラテンギャップ調整を行う場合に比べて、3部材を用いることにより、プラテンギャップ調整を容易に行うことができる。
【0016】
また、第1ヘッドユニット、移動部材および第2ヘッドユニットのいずれかが外力などによって変位した場合、例えば、第1ヘッドユニットが変位した場合には、それに追従して移動部材が変位し、移動部材の変位に追従して第2ヘッドユニットが変位する。したがって、3つの部位の相対位置関係は常に一定に保持されるので、第1印刷ヘッドと第1プラテンによって規定されるプラテンギャップ、第2印刷ヘッドと第2プラテンによって規定されるプラテンギャップも一定に保持される。
【0017】
さらに、第1ヘッドユニットと移動部材は、第1媒体搬送ローラーおよび第2媒体搬送ローラーの当接によって相対位置が規定されている。これらのローラーの間隔は、搬送される記録媒体の厚みに追従して変化する。これにより、これらのローラーの当接によって規定されている第1ヘッドユニットに対する移動部材の相対位置が変化し、移動部材によって規定されている第2ヘッドユニットの位置も変位する。この結果、搬送される記録媒体の厚みに追従して、第1ヘッドユニット側の第1印刷ヘッドと、移動部材側の第1プラテンの間隔が変化し、第2ヘッドユニット側の第2印刷ヘッドと、第1ヘッドユニット側の第2プラテンの間隔が変化する。したがって、搬送される記録媒体の厚みに応じてプラテンギャップが増加するため、ヘッドユニットと記録媒体の距離が一定値以上に保たれる。
【0018】
ここで、前記移動部材として、予め定めた回動支点を中心として回動可能な回動部材を使用し、前記第1付勢部材として、前記回動部材と前記第2ヘッドユニットの間に架け渡した引張りコイルバネを使用することができる。引張りコイルバネの架け渡し位置、および、回動部材の形状を適切に設定しておくことにより、引張りバネ力によって、移動部材と第2ヘッドユニットを相互に押し付けた状態に保持でき、これらの間のガタツキを抑制できる。
【0019】
次に、本発明のプリンターにおいて、前記第1媒体搬送ローラーおよび前記第2媒体搬送ローラーのニップ部を経由する記録媒体の搬送方向に沿って見た場合に、当該ニップ部を挟み、前記第1印刷ヘッドおよび前記第2印刷ヘッドの一方は前記搬送方向の上流側に位置し、他方は当該搬送方向の下流側に位置することが望ましい。搬送方向において、ニップ部から第1印刷ヘッドまでの距離と、ニップ部から第2印刷ヘッドまでの距離が大きく相違すると、媒体厚みによる第1、第2媒体搬送ローラーの開き量に対して、第1印刷ヘッドの側のプラテンギャップ、第2印刷ヘッド側のプラテンギャップの変化が大きく相違してしまう。搬送方向に沿ってニップ部の上流側および下流側に第1、第2印刷ヘッドを配置することにより、双方のプラテンギャップの媒体厚みに対する変化の差を小さくできる。
【0020】
次に、本発明のプリンターは、前記第1印刷ヘッドおよび前記第2印刷ヘッドがドットインパクトヘッドであり、前記第1ヘッドユニットおよび前記第2ヘッドユニットが、それぞれ、インクリボンカセット装着部を備えている構成とすることができる。第2ヘッドユニットが移動可能であるので、第2ヘッドユニットを第1ヘッドユニットの側から離れる方向に強制的に移動させると、第1印刷ヘッドと第1プラテンの間、および、第2印刷ヘッドと第2プラテンの間が広がるので、これらの間にインクリボンを装着する作業を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプリンターにおいては、第1ヘッドユニット側の第1媒体搬送ローラーに、移動可能な第2ヘッドユニットに搭載された第2媒体搬送ローラーを押し付けて、これらの間の相対位置を規定している。付勢部材によって第1、第2媒体搬送ローラーの当接状態を維持することにより、第1印刷ヘッドおよび第2印刷ヘッドにおけるプラテンギャップを一定に維持でき、プラテンギャップの外乱耐性を向上できる。また、第1、第2媒体搬送ローラーの間隔が搬送される記録媒体の厚みに応じて変位して、第1、第2印刷ヘッドにおけるプラテンギャップが変化するので、搬送される記録媒体の厚みに応じてプラテンギャップが増加するため、ヘッドユニットと記録媒体の距離が一定値以上に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る小切手処理装置の外観斜視図である。
【図2】小切手処理装置の内部機構部を示す側面図である。
【図3】小切手処理装置の内部機構部を示す斜視図である。
【図4】小切手処理装置の内部機構部を示す斜視図である。
【図5】小切手処理装置のプラテンギャップ調整機構を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る小切手処理装置(プリンター)を説明する。
【0024】
(全体構成)
図1は小切手処理装置の外観斜視図である。小切手処理装置1は、全体として略直方体状に形成された本体ケース2を備えている。本体ケース2の前面の左側寄りの部分には、記録媒体としての小切手(図示省略)を挿入するための媒体挿入口3が装置幅方向に沿って所定幅で設けられている。本体ケース2の上面の装置前後方向の中央部分には、処理後の小切手が排出される媒体排出口4が装置幅方向に沿って所定幅で設けられている。媒体挿入口3と媒体排出口4との間には、小切手が搬送される媒体搬送路5が形成されている。媒体搬送路5は、媒体挿入口3から装置後方に延びた後に上方へ湾曲して延びるように形成されている。また、媒体搬送路5は、本体ケース2の左側面において開口している。
【0025】
本体ケース2の上面において、媒体排出口4よりも前側は、前面カバー6によって覆われている。前面カバー6の前端部分には操作パネル7が設けられている。本体ケース2の上面の後端部分には、開口部8が設けられているとともに、この開口部8を開閉するための開閉蓋9が取り付けられている。開閉蓋9は、後端部分を中心として回動可能な状態で本体ケース2に取り付けられている。
【0026】
ここで、小切手処理装置1における前面カバー6によって覆われている部分は開閉式の開閉ユニット10となっており、その前側下端部の装置幅方向に延びる第1回動中心線CL1を中心として前方に開くことが可能となっている。開閉ユニット10を開くと、この開閉ユニット10と装置本体側の間に形成されている媒体搬送路5が開放状態に切り替わる。また、開閉ユニット10の開閉は、その右端上面部分に、操作端部11aが露出している操作レバー11を手前に引くことにより行うことができる。
【0027】
(内部構成)
図2は小切手処理装置1の本体ケース2を取り外してその内部機構部を示す側面図であり、図3は内部機構部を側方よりも僅かに装置後側から見た場合の斜視図であり、図4は内部機構部を装置前側から見た場合の斜視図である。これらの図を参照して説明すると、小切手処理装置1の内部機構部12は装置本体フレーム13を備えており、この装置本体フレーム13には、開閉ユニット10を構成している表書き用ヘッドユニット14と、裏書き用ヘッドユニット15と、プラテンレバーユニット16が搭載されている。
【0028】
表書き用ヘッドユニット14と裏書き用ヘッドユニット15は、媒体搬送路5における装置上方に延びている垂直搬送路部分5cを挟み対向配置されており、表書き用ユニット14が装置前側に位置している。表書き用ヘッドユニット14と装置本体フレーム13の間には、装置前側から後側に向かって直線状に延びる水平搬送路部分5aおよび上方に湾曲して垂直搬送路部分5cに繋がっている湾曲搬送路部分5bを挟み対向配置されており、表書き用ヘッドユニット14が装置上側に位置している。また、表書き用ヘッドユニット14は、その装置前側の下端部が回動中心線CL1を中心として装置前方に回動可能な状態で装置本体フレーム13によって支持されている。裏書き用ヘッドユニット15は装置前後方向にスライド可能な状態で装置本体フレーム13によって支持されている。
【0029】
媒体搬送路5における水平搬送路部分5aには、小切手に印刷された磁気インク文字を読み取るための磁気ヘッド17が配置されている。磁気ヘッド17は、その磁気ギャップを下側に向けた状態で、水平搬送路部分5aの上側に配置されている。
【0030】
媒体搬送路5における垂直搬送路部分5cには、その下側部分に、小切手の裏面に印刷を行う裏書き用印刷ヘッド18および裏書き用プラテン19が垂直搬送路部分5cを挟み対向配置されている。裏書き用印刷ヘッド18は、インクリボンに記録ワイヤーを打ち当ててインクリボンのインクを小切手に付着させて印刷を行うシリアル・インパクト・ドット・マトリクス(SIDM)印刷ヘッドである。裏書き用印刷ヘッド18は、垂直搬送路部分5cの装置後側に配置されている裏書き用ヘッドユニット15に搭載されており、裏書き用プラテン19は表書き用ヘッドユニット14に搭載されている。
【0031】
垂直搬送路部分5cの上端部分には、小切手の表面に印刷を行う表書き用印刷ヘッド20および表書き用プラテン21が垂直搬送路部分5cを挟み対向配置されている。表書き用印刷ヘッド20は、裏書き用印刷ヘッド18と同じくSIDM印刷ヘッドであり、表書き用ヘッドユニット14に搭載されている。表書き用プラテン21はプラテンレバーユニット16に搭載されている。
【0032】
一方、水平搬送路部分5aと湾曲搬送路部分5bとの境界部分には、小切手を磁気ヘッド17による読取位置を経由させて搬送する一対の媒体搬送ローラー22、23が当接状態に配置されている。また、垂直搬送路部分5cにおける裏書き用印刷ヘッド18と表書き用印刷ヘッド20の間における略中間の位置に、小切手を搬送する一対の第1、第2媒体搬送ローラー24、25が当接状態に配置されている。装置前側に位置する第1媒体搬送路ローラー24は表書き用ヘッドユニット14に回転自在の状態で搭載されており、装置後側に位置する第2媒体搬送ローラー25は、プラテンレバーユニット16に回転自在の状態で搭載されている。
【0033】
なお、表書き用ヘッドユニット14にはインクリボンが収納されているインクリボンカセット26が着脱可能な状態で装着されているインクリボンカセット装着部27が備わっている(図4においてはインクリボンカセット26を省略してある。)。装着されたインクリボンカセット26から繰り出されるインクリボン(図示ぜず)は、表書き用印刷ヘッド20および表書き用プラテン21の間を通る状態にセットされる。同様に、裏書き用ヘッドユニット15にもインクリボンカセット28が着脱可能な状態で装着されているインクリボンカセット装着部29が備わっている。装着されたインクリボンカセット28から繰り出されるインクリボン(図示せず)が、裏書き用印刷ヘッド18と裏書き用プラテン19の間を通る状態にセットされる。
【0034】
次に、プラテンレバーユニット16は、装置幅方向の両側に配置されている左右のプラテンレバー31、32と、これらのプラテンレバー31、32の上端部の間において装置幅方向に架け渡されている連結板33とを備えている。連結板33は装置前方を向く状態に配置された一定幅のものであり、当該連結板33の装置前側の表面に、表書き用プラテン21が表書き用印刷ヘッド20のヘッド面に対峙する状態に取り付けられている。
【0035】
左右のプラテンレバー31、32は左右対称に配置された同一形状のものである。プラテンレバー31について説明すると、プラテンレバー31は、装置前後方向に直線状に延びる一定幅の水平腕部分31aと、水平腕部分31aの後端から装置上方に略直角に折れ曲がって直線状に延びている一定幅の垂直腕部分31bとを備えており、全体として、英文字の「L」形をしている。水平腕部分31aは、表書き用ヘッドユニット14の下側に位置している装置本体フレーム13の装置幅方向の両側に沿って配置されており、それらの装置前側の端部は、装置幅方向に延びる回動中心軸34を中心として上下に回動可能な状態で当該装置本体フレーム13に取り付けられている。垂直腕部分31bは、媒体搬送路5の垂直搬送路部分5cよりも装置後側の部位において、裏書き用ヘッドユニット15の装置幅方向の両側に沿って配置されている。垂直腕部分31bにおける連結板33よりも下側の部位の間に、第2媒体搬送ローラー25が装置幅方向に架け渡されている。他方のプラテンレバー32も同一構成であるので、その説明を省略する。
【0036】
ここで、左右のプラテンレバー31、32と、裏書き用ヘッドユニット15との間には、引張りコイルバネ35が引張り状態で架け渡されている。プラテンレバー31について説明すると、図2に示すように、その垂直腕部分31bの下端部に形成したバネ掛け31cと、これよりも後側で上側の裏書き用ヘッドユニット15の側の部位に形成したバネ掛け15aとの間に、レバー用引張りコイルバネ35が架け渡されている。引張りコイルバネ35の引張りバネ力によって、プラテンレバーユニット16は回動中心軸34を中心として上側に回動する方向に引張られ、そこに搭載されている第2媒体搬送ローラー25が装置前側の第1媒体搬送ローラー24に対して所定の押し付け力で当接している。プラテンレバー32の側においても同様に引張りコイルバネが配置されている。
【0037】
また、裏書き用ヘッドユニット15の左側面部分には、外方に突出した当接片15bが形成されている。当接片15bと、プラテンレバー31における垂直腕部分31bの後端面31dとは、レバー用引張りコイルバネ35の引張りバネ力によって相互に当接した状態に保持されている。プラテンレバー32の側においても同様な構成となっている。
【0038】
さらに、裏書き用ヘッドユニット15は、その装置幅方向の両側において、装置前後方向に引張り状態に配置したユニット用引張りコイルバネ36によって、装置前方に引張られている。図2に示すように、ユニット用引張りコイルバネ36の装置後側の端が裏書き用ヘッドユニット15の左右に形成されているバネ掛け15cに掛けられ、その装置前側の端が装置本体ケース13の左右に形成されたバネ掛け13aに掛けられている。このユニット用引張りコイルバネ36の引張りバネ力によって、裏書き用ヘッドユニット15は左右の当接片15bを介して、プラテンレバーユニット16の側に押し付けられている。
【0039】
(プラテンギャップ調整機構)
図5は小切手処理装置1におけるプラテンギャップ調整機構に関与する構成部分を取り出して示す説明図である。主として図5を参照して、表書き用印刷ヘッド20および裏書き用印刷ヘッド18のプラテンギャップ調整機構を説明する。本例では、表書き用ヘッドユニット14に搭載されている第1媒体搬送ローラー24に、プラテンレバーユニット16に搭載されている第2媒体搬送ローラー25がレバー用引張りコイルバネ35によって押し付けられている(ニップ部C)。第1媒体搬送ローラー24と第2媒体搬送ローラー25の当接により、裏書き用ヘッドユニット15とプラテンレバーユニット16の間の相対位置が規定され、表書き用ヘッドユニット14に搭載されている表書き用印刷ヘッド20とプラテンレバーユニット16に搭載されている表書き用プラテン21との相対位置が規定され、これにより、表書き用印刷ヘッド20におけるプラテンギャップが規定される。
【0040】
また、表書き用ヘッドユニット14に対して位置決めされたプラテンレバーユニット16に対しては、裏書き用ヘッドユニット15がユニット用引張りコイルバネ36によって押し付けられており(点B)、プラテンレバーユニット16と裏書き用ヘッドユニット15の当接により、これらの相対位置が規定される。したがって、プラテンレバーユニット16を介して、表書き用ヘッドユニット14に対する裏書き用ヘッドユニット15の相対位置が規定され、裏書き用ヘッドユニット15に搭載されている裏書き用印刷ヘッド18と表書き用ヘッドユニット14に搭載されている裏書き用プラテン19との間の相対位置が規定され、当該裏書き用印刷ヘッド18におけるプラテンギャップが規定される。
【0041】
このように、表書き用ヘッドユニット14とプラテンレバーユニット16の間において表書き用印刷ヘッド20の側のプラテンギャップが調整され、表書き用ヘッドユニット14と裏書き用ヘッドユニット15の間において裏書き用印刷ヘッド18の側のプラテンギャップが調整される。したがって、表書き用ヘッドユニット14と裏書き用ヘッドユニット15の間において、双方のプラテンギャップの調整を行う場合に比べてギャップ調整が容易である。
【0042】
また、表書き用ヘッドユニット14、プラテンレバーユニット16および裏書き用ヘッドユニット15のいずれかが外力などによって変位した場合、例えば、表書き用ヘッドユニット14が変位した場合には、それに追従してプラテンレバーユニット16が変位し、プラテンレバーユニット16の変位に追従して裏書き用ヘッドユニット15が変位する。したがって、3つの部位の相対位置関係は常に一定に保持されるので、表書き用印刷ヘッド20と表書き用プラテン21によって規定されるプラテンギャップ、裏書き用印刷ヘッド18と裏書き用プラテン19によって規定されるプラテンギャップも一定に保持され、プラテンギャップの外乱耐性を向上させることができる。
【0043】
さらに、表書き用ヘッドユニット14とプラテンレバーユニット16は、第1媒体搬送ローラー24および第2媒体搬送ローラー25の当接によって相対位置が規定されている。これらのローラー24、25の間隔は、搬送される小切手(記録媒体)の厚みに追従して変化する。これにより、これらのローラー24、25の当接によって規定されている表書き用ヘッドユニット14に対するプラテンレバーユニット16の相対位置が変化し、プラテンレバーユニット16によって規定されている裏書き用ヘッドユニット15の位置も変位する。この結果、搬送される小切手の厚みに追従して、表書き用ヘッドユニット14側の表書き用印刷ヘッド20と、プラテンレバーユニット16側の表書き用プラテン21の間隔が変化し、裏書き用ヘッドユニット15側の裏書き用印刷ヘッド18と、表書き用ヘッドユニット14側の裏書き用プラテン19の間隔が変化する。したがって、搬送される小切手の厚みに対して、双方の印刷ヘッド18、20におけるプラテンギャップが追従して変化して、ヘッドユニットと記録媒体の距離が一定値以上に保たれる。
【0044】
さらには、プラテンレバーユニット16として、回動支点Aを中心として回動可能な回動部材を使用し、レバー用引張りコイルバネ35の引張りバネ力によって、プラテンレバーユニット16と裏書き用ヘッドユニット15を相互に押し付ける方向に付勢している。これにより、これらの間のガタツキを抑制できるので、プラテンギャップを一定に保持するために効果的である。
【0045】
次に、第1媒体搬送ローラー24および第2媒体搬送ローラー25のニップ部Cを経由する小切手の搬送方向に沿って見た場合に、当該ニップ部Cを挟み、表書き用印刷ヘッド20および裏書き用印刷ヘッド18のほぼ中間の位置にニップ部Cが位置している。搬送方向において、ニップ部Cから表書き用印刷ヘッド20までの距離と、ニップ部Cから裏書き用印刷ヘッド18までの距離が大きく相違すると、小切手の厚みによる第1、第2媒体搬送ローラー24、25の開き量に対して、表書き用印刷ヘッド20の側のプラテンギャップ、裏書き用印刷ヘッド18側のプラテンギャップの変化が大きく相違してしまう。搬送方向に沿ってニップ部Cを挟み下流側および上流側の近い位置に表書き用印刷ヘッド20および裏書き用印刷ヘッド18を配置することにより、小切手の厚みによる、双方のプラテンギャップの変化の差を小さくできる。
【0046】
これに加えて、本例では、表書き用印刷ヘッド20および裏書き用印刷ヘッド18がドットインパクトヘッドであり、表書き用印刷ヘッド20と表書き用プラテン21の間、および、裏書き用印刷ヘッド18と裏書き用プラテン19の間に、それぞれ、インクリボンを装着する必要がある。裏書き用ヘッドユニット18は装置前後方向にスライド可能であるので、これをバネ力に逆らって装置後方にスライドさせると、表書き用印刷ヘッド20と表書き用プラテン21の間、および、裏書き用印刷ヘッド18と裏書き用プラテン19の間が広がり、これらの間にインクリボンを装着する作業を簡単に行うことができる。
【0047】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、プラテンレバーユニットを配置し、これを介して、表書き用ヘッドユニットに対して、裏書き用ヘッドユニットを位置決めするようにしている。プラテンレバーユニットと裏書き用ヘッドユニットを一体化する構成を採用することも可能である。この場合のプリンターでは、表書き用ヘッドユニットに、表書き用印刷ヘッド、第1媒体搬送ローラーおよび裏書き用プラテンが搭載される。また、裏書き用ヘッドユニットには、表書き用印刷ヘッドに対峙可能な位置に表書き用プラテンが搭載され、第1媒体搬送ローラーに当接可能な位置に第2媒体搬送ローラーが搭載され、表書き用印刷ヘッドに対峙可能な位置に表書き用プラテンが搭載され、当該裏書き用ヘッドユニットは第1媒体搬送ローラーに対して接近および離れる方向に移動可能な状態で装置本体フレームに支持される。さらに、引張りコイルバネなどの付勢部材によって、裏書き用ヘッドユニットは第1媒体搬送ローラーに接近する方向に付勢されて、第2媒体搬送ローラーが第1媒体搬送ローラーに押し付けられた状態が形成される。
【0048】
この構成のプリンターにおいては、裏書き用ヘッドユニットが移動可能であり、付勢部材によって裏書き用ヘッドユニットに搭載されている第2媒体搬送ローラーを固定側の表書き用ヘッドユニットに搭載されている第1媒体搬送ローラーに押し付けており、第1、第2媒体搬送ローラーによって双方のユニットの相対位置が規定されている。外力などが作用して双方のユニットが変位した場合においても、裏書き用ヘッドユニットの側が変位に対応して移動し、付勢部材の付勢力によって第1媒体搬送ローラーおよび第2媒体搬送ローラーの当接状態が維持され、双方のユニットの相対位置が一定に維持されるので、表書き用、裏書き用の双方の印刷ヘッドのプラテンギャップの外乱耐性が改善される。
【0049】
また、表書き用ヘッドユニットと裏書き用ヘッドユニットは、第1媒体搬送ローラーおよび第2媒体搬送ローラーの当接によって相対位置が規定されている。これらのローラーの間隔は、搬送される記録媒体の厚みに追従して変化する。これにより、これらのローラーの当接によって規定されている表書き用ヘッドユニットおよび裏書き用ヘッドユニットの相対位置が変化する。この結果、搬送される記録媒体の厚みに追従して、表書き用ヘッドユニット側の表書き用印刷ヘッドと、裏書き用ヘッドユニット側の表書き用プラテンの間隔が変化し、裏書き用ヘッドユニット側の裏書き用印刷ヘッドと、表書き用ヘッドユニット側の裏書き用プラテンの間隔が変化する。したがって、搬送される記録媒体の厚みに対して、双方の印刷ヘッドにおけるプラテンギャップを追従させることができる。
【0050】
次に、上記の実施の形態では、プラテンレバーユニットとしてL状の腕部を備えたものを用いているが、これ以外の形状の腕部を備えたものを用いることもできる。また、回動式ではなく、装置前後方向にスライド式のプラテンレバーユニットを用いることも可能である。
【0051】
上述した実施の形態では、表書き用、裏書き用の印刷ヘッドは、SIDM印刷ヘッドであるが、これらを、インクジェットヘッドにすることも可能である。
【0052】
上述した実施の形態は小切手処理装置に本発明を適用したものであるが、小切手以外の記録媒体に印刷を行うプリンターに対しても本発明を同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 小切手処理装置、2 本体ケース、3 媒体挿入口、4 媒体排出口、5 媒体搬送路、5a 水平搬送路部分、5b 湾曲搬送路部分、5c 垂直搬送路部分、6 前面カバー、7 操作パネル、8 開口部、9 開閉蓋、10 開閉ユニット、11 操作レバー、11a 操作端部、12 内部機構部、13 装置本体フレーム、13a バネ掛け、14 表書き用ヘッドユニット、15 裏書き用ヘッドユニット、15a バネ掛け、15b 当接片、15c バネ掛け、16 プラテンレバーユニット、17 磁気ヘッド、18 裏書き用印刷ヘッド、19 裏書き用プラテン、20 表書き用印刷ヘッド、21 表書き用プラテン、22 第1搬送ローラー、23 第2搬送ローラー、24 第1媒体搬送ローラー、25 第2媒体搬送ローラー、26 インクリボンカセット、27 インクリボンカセット装着部、28 インクリボンカセット、29 インクリボンカセット装着部、31 プラテンレバー、32 プラテンレバー、31a 水平腕部分、31b 垂直腕部分、31c バネ掛け、31d 後端面、33 連結板、34 回動中心軸、35 レバー用引張りコイルバネ、36 ユニット用引張りコイルバネ、CL1 回動中心線、A 回動支点、B 当接点、C ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1印刷ヘッド、第1媒体搬送ローラーおよび第2プラテンが搭載されている第1ヘッドユニットと、
前記第1印刷ヘッドに対峙可能な位置に第1プラテンが搭載され、前記第1媒体搬送ローラーに当接可能な位置に第2媒体搬送ローラーが搭載され、前記第2プラテンに対峙可能な位置に第2印刷ヘッドが搭載されていると共に、前記第1媒体搬送ローラーに対して接近および離れる方向に移動可能な第2ヘッドユニットと、
前記第2ヘッドユニットを第1媒体搬送ローラーに接近する方向に付勢して前記第2媒体搬送ローラーを前記第1媒体搬送ローラーに押し付けている付勢部材とを有していることを特徴とするプリンター。
【請求項2】
第1印刷ヘッド、第1媒体搬送ローラーおよび第2プラテンが搭載されている第1ヘッドユニットと、
前記第1媒体搬送ローラーに当接可能な位置に第2媒体搬送ローラーが搭載され、前記第1印刷ヘッドに対峙可能な位置に第1プラテンが搭載されていると共に、前記第1媒体搬送ローラーに対して接近および離れる方向に移動可能な移動部材と、
前記移動部材を第1媒体搬送ローラーに接近する方向に付勢して前記第2媒体搬送ローラーを前記第1媒体搬送ローラーに押し付けている第1付勢部材と、
前記第2プラテンに対峙可能な位置において第2印刷ヘッドが搭載されていると共に、前記第1媒体搬送ローラーに対して接近および離れる方向に移動可能な第2ヘッドユニットと、
前記第2ヘッドユニットを前記第1媒体搬送ローラーに接近する方向に付勢して前記移動部材に押し付けている第2付勢部材とを有していることを特徴とするプリンター。
【請求項3】
請求項2において、
前記移動部材は、予め定めた回動支点を中心として回動可能な回動部材であり、
前記第1付勢部材は、前記回動部材と前記第2ヘッドユニットの間に架け渡した引張りコイルバネであることを特徴とするプリンター。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記第1媒体搬送ローラーおよび前記第2媒体搬送ローラーのニップ部を経由する記録媒体の搬送方向に沿って見た場合に、当該ニップ部を挟み、前記第1印刷ヘッドおよび前記第2印刷ヘッドの一方は前記搬送方向の上流側に位置し、他方は当該搬送方向の下流側に位置することを特徴とするプリンター。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記第1印刷ヘッドおよび前記第2印刷ヘッドはドットインパクトヘッドであり、
前記第1ヘッドユニットおよび前記第2ヘッドユニットは、それぞれ、インクリボンカセット装着部を備えていることを特徴とするプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−201017(P2011−201017A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67509(P2010−67509)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】