説明

プリンタ及び記録媒体搬送装置

【課題】
記録媒体の無駄及び記録媒体の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、複数のカラー画像を記録する場合のプリンタの処理能力を向上させると共に、切断部によって切断されたカット屑を適正に廃棄する。
【解決手段】
用紙供給部40から巻き解かれた用紙を印字部70のサーマルヘッド71a〜73aに対向させつつカラー画像の印字を行わないで搬送方向下流側に向かって搬送する。そして、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字可能な長さの用紙が印字部70よりも搬送方向下流側に搬送された時点で、用紙の搬送を停止する。その後、印字部70よりも搬送方向上流側に配置された搬送ローラ対34によって、用紙を搬送方向上流側に向かって逆送させながら、印字部70のサーマルヘッド71a〜73aによって複数のカラー画像を連続して印字する。切断部50における切断位置の搬送方向上流側及び搬送方向下流側に通路57、58を設けて、切断されたカット屑を切りくずボックス53に落下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を記録媒体上に記録するプリンタ及び記録媒体を搬送する記録媒体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録媒体上に記録可能なプリンタについては、種々の技術が知られている。例えば、特許文献1には、イエロー、マゼンタ、シアンの各色をそれぞれ個別に記録可能な3つのサーマルヘッドを備えており、記録紙ロールから引き出された記録紙を給紙方向に搬送しながら3つのサーマルヘッドでカラー画像を記録する1パス方式のカラーサーマルプリンタが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、3パス方式のカラーサーマルプリンタが開示されている。かかるプリンタでは、記録紙ロールから引き出された1コマ分の長さのカラー感熱記録紙が1つのサーマルヘッドに対向するように送り出された後で引き戻されながらイエロー画像が記録され、その後、記録紙の送り出しと引き戻しが交互に行われて、2回目の引き戻し時にマゼンタ画像の記録が行われ、3回目の引き戻し時にシアン画像の記録が行われる。
【0004】
また、特許文献3には、イエロー、マゼンタ、シアンの3つのサーマルヘッドを備えており、記録紙ロールから引き出された記録紙を給紙方向に搬送して印画準備を完了した後に、記録紙を引き戻し方向に搬送しながら1コマのカラー画像を記録する1パス方式のカラーサーマルプリンタが開示されている。かかるプリンタでは、1コマのカラー画像が記録されると、記録紙は再び給紙方向に搬送されてカラー画像の後端部で切断される。そして、カラー画像が記録された記録紙は排紙されると共に、印画準備が完了した記録紙を引き戻し方向に搬送しながら次の1コマのカラー画像が記録される。
【特許文献1】特開平8−174876号公報
【特許文献2】特開平9−99572号公報
【特許文献3】特開2001−246769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のプリンタでは、記録紙を往復搬送しなくても、記録紙を一方向に搬送するだけでカラー画像を記録することができる。しかしながら、かかるプリンタにおいて、3つのサーマルヘッドをそれらの印字位置に記録紙が到達したものから順に記録紙に圧接させた場合には、記録紙の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化することがある。従って、かかるプリンタでは、画像の悪化を防止するために、3つのサーマルヘッドの全てを記録紙に圧接させた後でカラー画像の記録が開始される。そのため、記録紙の先端近傍つまり記録紙の先端から給紙方向について最も上流側のサーマルヘッドと最も下流側のサーマルヘッドとの間の長さの部分が、両サーマルヘッド間に掛け渡された状態でカラー画像の記録が開始される。このため、記録紙の掛け渡された長さ部分は画像が形成されず、余白部となり無駄になるという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2及び特許文献3に記載のプリンタでは、記録紙の先端近傍に対してもカラー画像を記録することができるので、記録紙が無駄になるのを抑制することができる。ここで、特許文献3に記載のプリンタでは、記録紙が引き戻し方向に搬送されるときには3つのサーマルヘッドは全て記録紙に圧接されているので、記録紙の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化することはほとんどない。
【0007】
しかしながら、特許文献2のプリンタでは、1コマのカラー画像を記録するために記録紙の送り出し及び引き戻しを3回繰り返す必要がある。また、特許文献3のプリンタでは、1コマのカラー画像ごとに、記録紙の送り出し及び引き戻しを1回行う必要がある。従って、これらのプリンタにおいて、複数コマのカラー画像を記録するためには、記録紙の往復搬送を数多く繰り返さなければならない。
【0008】
ここで、特許文献2及び特許文献3のプリンタでは、記録紙ロールとサーマルヘッドとの間に搬送ローラ対が配置されており、この搬送ローラ対の駆動方向を切り換えることによって、記録紙の搬送方向が給紙方向及び引き戻し方向のいずれかに変更される。従って、複数のmコマ(mは2以上の整数)のカラー画像を記録するためには、特許文献2のプリンタでは記録紙を3m回往復搬送しなければならず、搬送ローラ対の駆動方向を(6m−1)回だけ切り換える必要があり、特許文献3のプリンタでは記録紙をm回往復搬送しなければならず、搬送ローラ対の駆動方向を(2m−1)回だけ切り換える必要がある。
【0009】
このように、搬送ローラ対の駆動方向が切り換えられる場合、その切り換えに基づく時間的な搬送ロスが生じてしまう。従って、搬送ローラ対の駆動方向を切り換える回数が多くなれば、それに伴って時間的な搬送ロスも増加するので、プリンタの処理能力が低下することになる。
【0010】
また、記録紙に複数の画像が記録される場合には、記録紙の先端部や複数の画像間に余白部が形成されることが多い。従って、記録紙が各画像の端部で切断された場合に、カット屑となる余白部が通過して落下するように、切断刃近傍には記録紙の裏面を支持するガイドが設けられていない。ここで、例えば記録紙を給紙方向に搬送した後で、搬送方向が切り換えられ、引き戻し方向に搬送されつつ、画像の印字及び記録紙の切断が行われる場合を考える。この場合、複数の画像間に形成された余白部は、各画像の後端部(給紙方向上流側の端部)で切断されることによって切り離され、切断刃よりも給紙方向上流側に配置される。そのため、記録紙が各画像の後端部で切断された場合に切り離される余白部は、カット屑が落下する通路が切断刃の給紙方向上流側に設けられていれば、搬送経路から落下することができる。しかしながら、記録紙の先端部に形成された余白部は、記録紙の最も先端側に記録された最終画像の先端部(給紙方向下流側の端部)で切断されることによって切り離され、切断刃よりも給紙方向下流側に配置される。そのため、記録紙が最終画像の先端部で切断された場合に切り離される余白部は、カット屑が落下する通路が切断刃の給紙方向上流側に設けられていても、搬送経路から落下することができない。従って、記録紙が切断された場合に切り離される余白部が、切断刃よりも給紙方向上流側及び下流側の両方に配置される場合には、カット屑が落下する通路が切断刃の両側にそれぞれ設けられているのが望ましい。
【0011】
そこで、本発明の主な目的は、記録媒体の無駄及び記録媒体の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、複数の画像を記録する場合の処理能力を向上させることができるプリンタを提供することである。
【0012】
また、本発明のその他の目的は、切断機構によって切断されたカット屑を適正に廃棄できるプリンタ及び記録媒体搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0013】
本発明のプリンタは、記録媒体に画像を記録可能な画像記録部と、長尺の記録媒体を貯留した供給部と、記録媒体を前記画像記録部に対向させつつ前記供給部から前記画像記録部に向かう第1の方向と、前記第1の方向と反対方向である第2の方向とに搬送可能な搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される記録媒体を支持する支持機構と、前記支持機構によって支持されつつ搬送される記録媒体を切断可能な切断機構と、記録媒体の先端が前記画像記録部から前記第1の方向に離れた位置に達するまで記録媒体が前記第1の方向に搬送された後に前記第2の方向に搬送されるように、前記搬送機構を制御する搬送制御手段と、前記搬送機構によって前記第2の方向に搬送されている記録媒体に前記画像記録部によって複数の画像が記録されると共に、各画像の上流側及び下流側に廃棄領域が形成されるように、前記画像記録部を制御する画像記録制御手段と、記録媒体が各画像と廃棄領域との境界において切断されるように、前記切断機構を制御する切断制御手段とを備えており、前記支持機構には、前記切断機構の上流側及び下流側において、廃棄領域に対応した記録媒体が搬送経路から外れる方向に通過する通路がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0014】
なお、「記録媒体の先端が前記画像記録部から前記第1の方向に離れた位置に達する」とは、「記録媒体が供給部から画像記録部に向かう第1の方向に搬送されて、記録媒体の先端が画像記録部よりも下流側の位置に到達する」ことを意味している。また、本明細書において、「上流側」及び「下流側」とは、供給部から画像記録部に向かう第1の方向に関するものである。
【0015】
この構成によると、供給部から画像記録部に向かう第1の方向に記録媒体を搬送した後で第2の方向に搬送される記録媒体に複数の画像を記録することができる。そのため、記録媒体の先端近傍(第1の方向に搬送された後で第2の方向に逆送される記録媒体部分の先端からの領域)に画像を記録可能であると共に、記録媒体の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを抑制することができる。また、複数の画像を記録媒体に記録する場合でも、記録媒体を1往復させるだけでよく、搬送機構における記録媒体の搬送方向を1回切り換えるだけでよいので、搬送方向の切り換えに基づく時間的な搬送ロスを低減できる。その結果、複数の画像を記録媒体に記録する場合において、記録媒体の無駄及び記録媒体の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、プリンタの処理能力を向上させることができる。
【0016】
また、廃棄領域に対応した記録媒体が搬送経路から外れる方向に通過する通路が切断機構の上流側及び下流側の両方にそれぞれ設けられているので、記録媒体の先端近傍及び各画像間のそれぞれに形成された廃棄領域が切断されると、その廃棄領域の全てが搬送経路から外れるように移動する。従って、切断機構によって切断されたカット屑となる廃棄領域に対応した記録媒体を搬送経路から取り除いて適正に廃棄することができる。
【0017】
本発明のプリンタにおいて、前記搬送機構は、前記供給部と前記画像記録部との間において記録媒体に搬送力を付与することによって、記録媒体を前記第2の方向に搬送可能であってもよい。
【0018】
この構成によると、第2の方向に搬送される記録媒体に複数の画像が記録される際に、記録媒体の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを効果的に抑制することができる。
【0019】
本発明のプリンタにおいて、前記切断機構によって切断された後で前記通路を通過した廃棄領域に対応した記録媒体を収納する収納部材をさらに備えていてもよい。
【0020】
この構成によると、切断された後で通路を通過することによって搬送経路から外れた廃棄領域に対応した記録媒体を収納することができるので、カット屑の廃棄を容易に行うことができる。
【0021】
本発明のプリンタにおいて、前記切断機構は、前記搬送機構による搬送経路に対して前記支持機構側に固定配置され且つ可動刃との相互作用によって記録媒体を切断可能な固定刃を有しており、前記固定刃の先端部における前記可動刃と反対側の部分には面取りが施されていてもよい。
【0022】
この構成によると、固定刃に対して可動刃と反対側において分割された廃棄領域に対応した記録媒体が通路を通過し易くなる。従って、カット屑が搬送経路から取り除かれなくなるのを抑制することができる。
【0023】
本発明の記録媒体搬送装置は、複数の画像の上流側及び下流側に廃棄領域が形成された記録媒体を搬送可能な搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される記録媒体を支持する支持機構と、前記支持機構で支持されつつ搬送される記録媒体を切断可能な切断機構とを備えており、前記支持機構には、前記切断機構の上流側及び下流側において、廃棄領域に対応した記録媒体が搬送経路から外れる方向に通過する通路がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0024】
この構成によると、廃棄領域に対応した記録媒体が搬送経路から外れる方向に通過する通路が切断機構の上流側及び下流側の両方にそれぞれ設けられているので、記録媒体の先端近傍及び各画像間のそれぞれに形成された廃棄領域が切断されると、その廃棄領域の全てが搬送経路から外れるように移動する。従って、切断機構によって切断されたカット屑となる廃棄領域に対応した記録媒体を搬送経路から取り除いて適正に廃棄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るプリンタの外観斜視図である。図2は、図1のプリンタのプリント部の概略構成を示す図である。図3は、図2のプリント部に含まれる切断機構における切断位置近傍の構成を示す図である。図4は、図1のプリンタの搬送ローラ対及び送り込みローラ対の動作を説明する図である。図5及び図6は、図2のプリント部に含まれるカール除去ローラ対の動作を説明する図である。図7は、図1のプリンタの主要部及びこれらが接続された制御装置についてのブロック図である。
【0026】
図1に示す熱昇華方式のサーマルプリンタ1(以下、「プリンタ1」と称する)は、操作部10と、制御装置20と、プリント部30とを有している。操作部10は、オペレータがプリンタ1に対する操作を行うものであって、プリンタ1に関する様々な情報を表示してオペレータに告知するディスプレイ11を有している。ここで、本実施の形態では、操作部10にはタッチパネル方式が採用されており、ディスプレイ10には様々なボタンを含む操作画面12が表示される。従って、オペレータは、操作画面12に触れることによってプリンタ1に対する操作を実行することができる。
【0027】
制御装置20は、操作部10からの入力を受信すると共に、プリンタ1における各種の動作を制御するためのものである。また、制御装置20は、カードスロットやディスクドライブなどの種々の記憶媒体からプリントデータを取得するための複数のデータ入力部20aを有している。なお、記憶媒体としては、例えばCD−ROM、メモリーカードなど、プリントデータを記憶可能なものであればどのようなものであってもよい。
【0028】
操作部10及び制御装置20は、プリント部30を収容する筐体30aの上面に固定配置されている。ここで、操作部10のディスプレイ11の表示面及び制御装置20のデータ入力部20aの記憶媒体挿入面は、プリンタ1(筐体30a)の正面(図1では左手前側の面)とほぼ一致している。従って、プリンタ1の正面に向かうオペレータにとって、ディスプレイ11及びデータ入力部21に対する操作が行い易くなっている。
【0029】
また、筐体30aは、略直方体形状を有しており、その横幅(正面の幅)D1は奥行きD2よりも小さくなっている。従って、プリンタ1は、横幅の比較的狭い空間においても設置することが可能である。さらに、筐体30aの正面には、筐体30a内に収納された後述するプリントボックス96を筐体30a外に引き出すための開口95が形成されている。
【0030】
プリント部30は、図2に示すように、筐体30a内に、ロール状に巻回された用紙を保持する用紙供給部40と、用紙供給部40から巻き解かれた用紙を巻き取る用紙巻取部80と、用紙供給部40と用紙巻取部80との間で、一方向に湾曲した搬送経路に沿って用紙を搬送可能な搬送機構38とを有している。また、用紙供給部40と用紙巻取部80との間には、搬送経路の上流側から下流側に向かって、切断部50、オーバーコート部60及び印字部70が配置されている。また、用紙供給部40と切断部50との間の搬送経路近傍には、プリントボックス96が設けられている。
【0031】
なお、本実施の形態では、「用紙の搬送方向(搬送方向)」とは、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かう方向を意味するものとする。また、「用紙の先端部」及び「画像の先端部」とは、用紙または画像の搬送方向下流側の端部を意味するものとし、「用紙の後端部」及び「画像の後端部」とは、用紙または画像の搬送方向上流側の端部を意味するものとする。
【0032】
用紙供給部40は、搬送経路の最上流に設けられたマガジンケース41を有しており、その中には、長尺の用紙がその印字面が外側になるように回転軸43の周りに巻回された巻回部45が装填されている。ここで、回転軸43は、モータ43a(図7参照)によって、用紙供給部40から用紙が巻き解かれて搬送方向下流側に向かって搬送される場合には図2において反時計回りに回転駆動され、一旦巻き解かれた用紙が用紙供給部40に巻き取られる場合には図2において時計回りに回転駆動される。なお、回転軸43は、後述するワンウェイクラッチ34c、35cと同様の機能を有するワンウェイクラッチ43cを介して、モータ43aにより回転駆動されるシャフト(図示せず)と連結されている。
【0033】
搬送機構38は、搬送方向上流側から順に配置されている、用紙供給部40の巻回部45から巻き解かれた用紙を上方に向かって搬送可能な給紙ローラ対31と、切断部50よりも搬送方向上流側に配置されており上方に向かって搬送される用紙の搬送方向を変更するターンローラ対32と、切断部50の上流側近傍に配置されており用紙を圧着可能な第1カール除去ローラ対36と、切断部50の下流側近傍に配置されており用紙を圧着可能な第2カール除去ローラ対37と、印字部70の搬送方向上流側に配置されており用紙を搬送可能な搬送ローラ対34と、印字部70よりも搬送方向下流側に配置されており印字部70よりも搬送方向下流側に向かって搬送される用紙を用紙巻取部80の内部に送り込むための送り込みローラ対35とを有している。
【0034】
なお、本実施の形態では、給紙ローラ対31、ターンローラ対32、送り込みローラ対35は樹脂製のローラから構成されており、搬送ローラ対34は金属製のローラから構成されている。また、第1カール除去ローラ対36及び第2カール除去ローラ対37は、樹脂製、ゴム製等のローラから構成されており、それらの表面の硬度は硬度20度よりも大きくなっている。
【0035】
ここで、給紙ローラ対31、ターンローラ対32、第1カール除去ローラ対36、第2カール除去ローラ対37、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35は、所定半径を有する円周(図2では二点鎖線で描かれている)に沿うように配置されている。なお、図2から分かるように、オーバーコート部60及び印字部70のヘッド部61、71〜73も上記円周に沿うように配置されていると共に、用紙供給部40及び用紙巻取部80は上記円周の内部に配置されている。
【0036】
給紙ローラ対31、第1カール除去ローラ対36、第2カール除去ローラ対37、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35は、搬送制御部27a(図7参照)によって制御されるモータ31a、36c、37c、34a、35a(図7参照)にそれぞれ接続されており、回転駆動可能である。
【0037】
ここで、第1カール除去ローラ対36及び第2カール除去ローラ対37の構成について、図3を参照して説明する。第1カール除去ローラ対36及び第2カール除去ローラ対37は、図3に示すように、搬送経路(図3(a))では二点鎖線で図示されている)よりも下方に配置された駆動ローラ36a、37aと、搬送経路より上方に配置された従動ローラ36b、37bとをそれぞれ有している。
【0038】
ここで、従動ローラ36b、37bの表面の硬度は、駆動ローラ36a、37aの表面の硬度よりも大きくなっている。なお、本実施の形態では、駆動ローラ36a、37aの表面の硬度は、硬度40度のゴムローラであり、従動ローラ36b、37bの表面の硬度は、ロックウェル硬度120度の樹脂ローラである。
【0039】
駆動ローラ36a、37aは、その外周面の上端がほぼ搬送経路上に配置されるように回転可能に固定されている。一方、従動ローラ36b、37bは、カール除去制御部27dによって制御される駆動機構36d、37d(図7参照)にそれぞれ接続されている。従動ローラ36b、37bは、回転可能に支持されていると共に、駆動機構36d、37dによって、駆動ローラ36a、37aに向かう方向にそれぞれ移動可能になっている。従って、従動ローラ36b、37bは、駆動ローラ36a、37aとの間で用紙を圧着する位置(図3(a)では実線で示す位置)と、駆動ローラ36a、37aとの間で用紙を圧着しない位置(図3(a)では破線で示す位置)とを取り得る。
【0040】
なお、本実施の形態では、駆動ローラ36aと従動ローラ36b、及び、駆動ローラ37aと従動ローラ37bは、用紙のカールを除去可能な程度の力で用紙を圧着する圧着状態と、用紙を小さな力で挟持する(用紙のカールを除去可能な程度の力よりも小さい力で用紙を圧着する)接触状態と、互いに離隔する離隔状態とのいずれかの状態を取り得る。
【0041】
ここで、図3(b)は、用紙が搬送方向下流側に搬送される場合において、用紙の先端近傍が第1カール除去ローラ対36の駆動ローラ36aと従動ローラ36bとに圧着されている様子が図示されている。上述したように、従動ローラ36bの表面の硬度は、駆動ローラ36aの表面の硬度よりも大きくなっているので、従動ローラ36bの外形はほとんど変化しないが、駆動ローラ36aの外形のなかで従動ローラ36bで押圧される部分は凹部が形成される。従って、駆動ローラ36aと従動ローラ36bとの間の用紙は、その凹部に沿って湾曲することによって、用紙の先端近傍が搬送方向上方に向かって持ち上げられる。なお、第2カール除去ローラ対37の駆動ローラ37aと従動ローラ37bとが圧着されている様子は、上述と同様である。
【0042】
切断部50は、第1カール除去ローラ対36と第2カール除去ローラ対37との間に配置されている。切断部50は、搬送経路よりも上方に配置されたローリングカッタ51と、搬送経路よりも下方に配置された固定刃52と、切りくずボックス53とを有している。
【0043】
ローリングカッタ51は、円板形状を有しており、その円周部には全周にわたって刃が形成されている。そして、ローリングカッタ51は、その中心部がシャフト51aで保持されている。ローリングカッタ51は、シャフト51aを介して、切断制御部27cによって制御される駆動機構55(図7参照)に接続されている。駆動機構55は、シャフト51aを介して、ローリングカッタ51を回転駆動すると共に、用紙の搬送経路を直交する方向に沿って(図2では紙面に直交する方向に沿って)往動または復動させる。一方、固定刃52は、用紙の搬送経路に直交するように配置されており、用紙の搬送経路の全幅よりも長い矩形刃である。ここで、固定刃52の先端部におけるローリングカッタ51と反対側の部分には面取りが施されている。
【0044】
従って、切断部50による切断位置に用紙が配置された状態において、切断制御部27cが駆動機構55を制御して、ローリングカッタ51を回転させつつ用紙の幅方向に沿って移動させると、ローリングカッタ51と固定刃52との相互作用によって用紙が切断される。なお、本実施の形態のプリンタ1では、後述するように切断部50は各画像の先端部及び後端部において用紙を切断する。
【0045】
また、切りくずボックス53は、ローリングカッタ51及び固定刃52の下方に配置されている。従って、各画像の先端部または後端部において用紙が切断されて余白部が切断されると、その余白部は通路57、58を通過して切りくずボックス53内に収納される。
【0046】
ここで、第1カール除去ローラ対36及び第2カール除去ローラ対37近傍を搬送される用紙は、搬送経路の下方に配置されたガイド55、56(図3では太線で図示されている)に支持されつつ搬送される。なお、第1カール除去ローラ対36の駆動ローラ36aの上端部はガイド55の開口(図示しない)から上方に突出しており、第2カール除去ローラ対37の駆動ローラ37aの上端部はガイド56の開口(図示しない)から上方に突出している。
【0047】
ガイド55は、切断部50における切断位置よりも搬送方向上流側に配置されており、その端部55a(搬送方向下流側の端部)は第1カール除去ローラ対36と切断位置との間に配置されている。従って、切断位置とガイド55との間には、切りくずを切りくずボックス53に落下させるための通路57が形成される。同様に、ガイド56は、切断部50における切断位置よりも搬送方向下流側に配置されており、その端部56a(搬送方向上流側の端部)は第2カール除去ローラ対37と切断位置との間に配置されている。従って、切断位置とガイド56との間には、切りくずを切りくずボックス53に落下させるための通路58が形成される。
【0048】
オーバーコート部60は、搬送ローラ対34の搬送方向下流側に配置されている。オーバーコート部60は、1つのヘッド部61を有している。ヘッド部61は、画像が印字された用紙の表面に対して無色透明なオーバーコート(OC)を行うためのものである。このように、用紙の表面に対してオーバーコートを行うことによって、用紙上に印字された画像の耐光性が向上すると共に、用紙表面を保護することができる。また、オーバーコートの材質を選ぶことで、プリントの光沢性が向上し、高品質のプリントを提供することができる。
【0049】
また、印字部70は、オーバーコート部60と送り込みローラ対35との間に配置されている。印字部70は、3つのヘッド部71〜73を有している。ヘッド部71〜73は、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に対応する印字を行うためのものである。ここで、プリンタ1では、搬送方向上流側から搬送方向下流側に向かって、シアンに対応するヘッド部71、マゼンタに対応するヘッド部72、イエローに対応するヘッド部73の順に設けられている。なお、プリンタ1では、オーバーコート部60及び印字部70の搬送方向上流側に搬送ローラ対34が配置されており、それらの搬送方向下流側に送り込みローラ対35が配置されていることになる。
【0050】
そして、本実施の形態のプリンタ1では、用紙供給部40から巻き解かれた用紙が搬送方向下流側に向かって搬送されるときはオーバーコート部60でのオーバーコート及び印字部70でのカラー画像の印字は行われないで、印字部70よりも搬送方向下流側に配置された用紙巻取部80に一旦巻き取られた用紙が搬送方向上流側に向かって逆送されるときに印字部70での画像の印字及びオーバーコート部60でのオーバーコートが行われる。従って、プリンタ1では、用紙表面に対して、イエロー、マゼンタ、シアンの順にカラー画像の印字が可能であると共に、さらに、カラー画像が印字された用紙表面に対してオーバーコートを行うことができる。
【0051】
次に、ヘッド部61、71〜73の概略構成について説明する。なお、ヘッド部61、71〜73の構成はいずれも同様であるので、ここではヘッド部73についてのみ詳細に説明する。
【0052】
ヘッド部73は、用紙の搬送経路の全幅にわたって配置された多数の発熱素子(図示しない)を有するサーマルヘッド73aと、サーマルヘッド73aの先端部(用紙の搬送経路近傍であって発熱素子が配置された端部)に対向するプラテンローラ73bと、イエローに対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン73cと、印字前のリボン73cが巻回されたリボン供給ローラ73dと、印字後のリボン73cを巻き取るリボン巻取ローラ73eとを有している。
【0053】
ここで、サーマルヘッド73aは、昇降機構73f(図7参照)によって、用紙の搬送経路に対して進退可能になっている。従って、サーマルヘッド73aは、その先端部近傍とプラテンローラ73bとの間で、リボン73c及び用紙を圧接するプリント位置と圧接しない待避位置とを選択的に取り得る。
【0054】
そして、ヘッド部73では、サーマルヘッド73aがプリント位置に配置されている状態で、サーマルヘッド73aとプラテンローラ73bとの間を用紙が搬送されると、サーマルヘッド73aにより加熱されたリボン73cのインクによって用紙上にイエローに対応するカラー画像を印字することができる。なお、このとき、サーマルヘッド73aとプラテンローラ73bとの間を用紙が搬送される際には、用紙が搬送されるのに伴ってリボン73cもリボン供給ローラ73dからリボン巻取ローラ73eに向かって送られる。
【0055】
なお、ヘッド部61及びヘッド部71、72は、ヘッド部73と同様に、サーマルヘッド61a、71a、72aと、プラテンローラ61b、71b、72bと、リボン61c、71c、72cと、リボン供給ローラ61d、71d、72dと、リボン巻取ローラ61e、71e、72eと、昇降機構61f、71f、72fとをそれぞれ備えている。
【0056】
ここで、ヘッド部61及びヘッド部71、72では、ヘッド部73のイエローに対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン73cの代わりに、無色透明、シアン、マゼンタにそれぞれ対応するインクが付着したインク領域を有するテープ状のリボン61c、71c、72cが用いられている。
【0057】
また、オーバーコート部60のヘッド部61及び印字部70の各ヘッド部71〜73間には、一対のガイド75a〜75cがそれぞれ配置されている。一対のガイド75a〜75cは、いずれも2枚の板状部材を含んでおり、ヘッド部61、71〜73間をそれぞれ搬送される用紙(主に用紙の先端部)を案内するためのものである。従って、一対のガイド75a〜75cは、用紙の搬送経路を挟んで所定間隔を隔てて対向するように配置されている。
【0058】
用紙巻取部80は、搬送経路の最下流に設けられた格納ケース81を有している。格納ケース81は、略円筒形状を有しており、その一部が用紙の挿入口82として開口している。本実施の形態では、図2に示すように、挿入口82となる部分の中心角は約90度であって、その一方の縁部82aは格納ケース81の左端部近傍にあって、他方の縁部82bは格納ケース81の上端部近傍にある。
【0059】
ここで、送り込みローラ対35は、格納ケース81の縁部82aの上方近傍に配置されており、送り込みローラ対35によって下方に搬送された用紙は挿入口82の端部82a近傍から格納ケース81内に挿入される。そして、用紙巻取部80に挿入された用紙は、格納ケース81の内周面に当接することによって案内される。その結果、格納ケース81内では、用紙が有する巻き癖にしたがって、その印字面が外側面になるように用紙の先端部から順に巻き取られる。また、格納ケース81には、4つの巻き取りローラ83a〜83dが回転自在に設けられている。そして、各巻き取りローラ83a〜83dの一部が格納ケース81の内周面よりも内側に突出している。従って、用紙が格納ケース81の内周面に当接する際の摩擦力が軽減されるので、用紙に傷が付くのが抑制される。
【0060】
プリントボックス96は、印字部70における画像の印字及びオーバーコート部60におけるオーバーコートが行われた後、さらに切断部50によって切断された各カラー画像が印字された用紙(プリント)を排出するためのものである。また、プリントボックス96は、上端部が開口された箱状の部材であって、その下端部において支持軸97によって回動可能に支持されている。従って、プリントボックス96は、筐体30a内に収納された状態(図2で実線で示す状態)と、筐体30aの正面(図2では右面)に設けられた開口95を介してその上端部近傍が筐体30a外に引き出された状態(図2で破線で示す状態)とを取り得る。よって、オペレータは、プリントボックス96の上端部をプリンタ1(筐体30a)の正面から外部に引き出すことによって、各カラー画像が印字された用紙を容易に取り出すことができる。
【0061】
なお、プリントボックス96の上方には、ターンローラ対32よりも搬送方向上流側の搬送経路に近接するように振り分け機構(図示しない)が設けられている。この振り分け機構は、用紙が用紙供給部40に巻き取られる場合と、各カラー画像が印字された用紙がプリントボックス96に排出される場合とで、用紙が搬送方向上流側に向かって逆送される際の用紙の搬送経路を切り換えることができる。従って、振り分け機構を制御することによって、各カラー画像が印字された用紙だけをプリントボックス96内に収納することができる。
【0062】
また、切断部50よりも搬送方向上流側には、搬送経路に沿って搬送される用紙上に印字された画像の端部(主に画像の後端部)を検出可能な画像検出センサ90が設けられている。一方、オーバーコート部60よりも搬送方向上流側には、用紙の端部を検出可能な用紙検出センサ91が設けられている。なお、本実施の形態では、オーバーコート部60の搬送方向上流側の端部と用紙検出センサ91による検出位置とはほぼ一致している。
【0063】
次に、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動作について、図4を参照して説明する。図4(a)は、用紙が搬送方向下流側に搬送される際の搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動作を表しており、図4(b)は、用紙が搬送方向上流側に逆送される際の搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35の動作を表している。図4に示すように、搬送ローラ対34は、駆動ローラ34dと従動ローラ34eとから構成されている。そして、駆動ローラ34dは、ワンウェイクラッチ34cを介して、モータ34aにより回転駆動されるシャフト34bと連結されている。同様に、送り込みローラ対35は、駆動ローラ35dと従動ローラ35eとから構成されており、駆動ローラ35dは、ワンウェイクラッチ35cを介して、モータ35aにより回転駆動されるシャフト35bと連結されている。
【0064】
ワンウェイクラッチ34c、35cは、いずれも同様の機能を有しているので、ここではワンウェイクラッチ34cの機能について説明する。ワンウェイクラッチ34cは、駆動ローラ34dに固定されており、駆動ローラ34dと一体となって回転する。そして、駆動ローラ34dが、シャフト34bの回転速度よりも速く回転する場合には、シャフト34bの回転力は駆動ローラ34dに伝達されず、駆動ローラ35dはシャフト34bに対して空回りする。また、それ以外の場合には、シャフト34bの回転力がワンウェイクラッチ34cを介して駆動ローラ34dに伝達され、シャフト34bと駆動ローラ34dとが一体となって回転する。
【0065】
したがって、搬送ローラ対34が用紙を挟持している際に、用紙の搬送速度が、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度よりも遅い場合には、モータ34aの駆動力が搬送ローラ対34に伝達される。そして、用紙は、搬送ローラ対34により与えられる搬送力で搬送される。一方、用紙の搬送速度が、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度よりも速い場合には、モータ34aの駆動力は搬送ローラ対34に伝達されず、搬送ローラ対34は空回りする。つまり、搬送ローラ対34は、用紙の搬送速度に応じた回転数で従動回転する。
【0066】
ここで、モータ34aによって駆動される搬送ローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度をV1、モータ35aによって駆動される送り込みローラ対34の回転力に基づく用紙の搬送速度をV2とし、図4(a)を参照しつつ、用紙を搬送方向下流側に搬送する場合について考える。このとき、後述するように、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達して挟持されてからは、搬送ローラ対34の駆動が停止されるので、搬送速度V1は0となる。一方、送り込みローラ対35は、モータ35aの駆動力がシャフト35b及びワンウェイクラッチ35cを介して伝達されて回転駆動される。そして、搬送ローラ対34が挟持している用紙は、搬送速度V2で搬送されるようになるので、ワンウェイクラッチ34cの機能により、搬送ローラ対34は空回りする。
【0067】
次に、図4(b)を参照しつつ、用紙を搬送方向上流側に逆送する場合について考える。このとき、後述するように、送り込みローラ対35の駆動が停止されるので、搬送速度V2は0となる。一方、搬送ローラ対34は、モータ34aの駆動力がシャフト34b及びワンウェイクラッチ34cを介して伝達されて回転駆動される。そして、送り込みローラ対35が挟持している用紙は、搬送速度V1で逆送されるようになるので、ワンウェイクラッチ35cの機能により、送り込みローラ対35は空回りする。
【0068】
また、給紙ローラ対31についても、上述のワンウェイクラッチ34c、35cと同様の機能を有するワンウェイクラッチ31cを介して、モータ31aにより回転駆動されるシャフト(図示せず)と連結されている。従って、給紙ローラ対31、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35は、搬送制御部27aによってモータ31a、34a、35aが個別に制御されることによって、用紙供給部40から巻き解かれた用紙を搬送方向下流側に向かって搬送して用紙巻取部80に巻き取り可能であると共に、用紙巻取部80内に一旦巻き取られた用紙を再度巻き解きつつ、用紙巻取部80から巻き解かれた用紙を搬送方向上流側に向かって逆送させることができる。
【0069】
また、プリント部30は、搬送ローラ対34の回転数を検出可能なエンコーダ33を有している。ここで、上述したように、搬送ローラ対34は、用紙を搬送するためにモータ34aにより駆動されて回転する状態と、送り込みローラ対35により搬送される用紙に伴って従動回転する状態とを取り得る。エンコーダ33は、搬送ローラ34が上記のいずれの状態である場合でも、搬送ローラ対34の回転数を検出することができる。
【0070】
次に、第1カール除去ローラ対36及び第2カール除去ローラ対37の動作について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、用紙が搬送方向下流側に搬送される際の様子を示しており、図6は、用紙が搬送方向上流側に逆送される際の様子を示している。
【0071】
まず、用紙が搬送方向下流側に搬送される場合において、用紙の先端が第1カール除去ローラ対36に到達するまでは、図5(a)に示すように、従動ローラ36bは駆動ローラ36aと接触しない位置に配置されていると共に、従動ローラ37bは駆動ローラ37aと接触しない位置に配置されている。
【0072】
そして、用紙の先端が第1カール除去ローラ対36を通過すると、図5(b)に示すように、従動ローラ36bが駆動ローラ36aと圧着する位置に配置される。すると、駆動ローラ36aと従動ローラ36bとに圧着されることによって、用紙の先端近傍は搬送経路の上方に向かって湾曲して持ち上げられる。
【0073】
引き続き、用紙の先端近傍が上方に持ち上げられた状態で、第1カール除去ローラ対36の駆動ローラ36aが駆動されると、用紙の先端は、図5(c)に示すように、固定刃52上、ガイド56上の順に到達する。なお、用紙の先端が固定刃52上、ガイド56上に到達すると、従動ローラ36bが移動されることによって、駆動ローラ36aと従動ローラ36bとは圧着状態から接触状態に切り換えられる。
【0074】
その後、用紙がさらに搬送されると、図5(d)に示すように、従動ローラ36bが移動されることによって、駆動ローラ36aと従動ローラ36bとは接触状態から離隔状態に切り換えられる。
【0075】
このように、用紙の先端が、ガイド55と切断位置との間の通路57及びガイド56と切断位置との間の通路58の上方を搬送される際には、用紙の先端近傍が上方に持ち上げられているので、用紙の先端が通路57、58の縁部に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0076】
一方、用紙が搬送方向上流側に逆送される場合において、用紙の先端が第2カール除去ローラ対37に到達するまでは、図6(a)に示すように、従動ローラ36bは駆動ローラ36aと接触しない位置に配置されていると共に、従動ローラ37bは駆動ローラ37aと接触しない位置に配置されている。
【0077】
そして、用紙の先端が第2カール除去ローラ対37を通過すると、図6(b)に示すように、従動ローラ37bが駆動ローラ37aと圧着する位置に配置される。すると、駆動ローラ37aと従動ローラ37bとに圧着されることによって、用紙の先端近傍は搬送経路の上方に向かって湾曲して持ち上げられる。
【0078】
引き続き、用紙の先端近傍が上方に持ち上げられた状態で、第2カール除去ローラ対37の駆動ローラ37aが駆動されると、用紙の先端は、図6(c)に示すように、固定刃52上、ガイド55上の順に到達する。なお、用紙の先端が固定刃52上、ガイド56上に到達すると、従動ローラ37bが移動されることによって、駆動ローラ37aと従動ローラ37bとは圧着状態から接触状態に切り換えられる。
【0079】
その後、用紙がさらに搬送されると、図6(d)に示すように、従動ローラ37bが移動されることによって、駆動ローラ37aと従動ローラ37bとは接触状態から離隔状態に切り換えられる。
【0080】
このように、用紙の先端が、ガイド56と切断位置との間の通路58及びガイド55と切断位置との間の通路57の上方を搬送される際には、用紙の先端近傍が上方に持ち上げられているので、用紙の先端が通路57、58の縁部に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0081】
制御装置20には、図7に示すように、用紙供給部40の回転軸43を駆動するモータ43aと、給紙ローラ対31、駆動ローラ36a、37a、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35をそれぞれ駆動するモータ31a、36c、37c、34a、35aと、搬送ローラ対34の回転数を検出するエンコーダ33と、切断部50のローリングカッタ51の駆動機構55と、オーバーコート部60及び印字部70のサーマルヘッド61a、71a〜73aの昇降機構61f、71f〜73f及びドライバ61g、71g〜73gと、画像検出センサ90と、用紙検出センサ91と、操作部10とがそれぞれ接続されている。
【0082】
また、制御装置20は、適切なソフトウェアにより制御されるCPUやROM、RAMなどのハードウェアを備えており、最大巻取量記憶部21と、プリント情報記憶部22と、必要巻取量算出部23と、比較部24と、巻取量決定部25と、搬送量検知部26と、搬送制御部27aと、印字制御部27bと、切断制御部27cと、カール除去制御部27dとを有している。
【0083】
最大巻取量記憶部21は、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送される場合に、印字部70よりも搬送方向下流側に搬送可能な用紙の最大長さを最大巻取量として記憶する。この最大巻取量は、印字部70の搬送方向について最も下流側に配置されたヘッド部73による印字位置と用紙巻取部80の挿入口82との間の搬送経路の長さと、用紙巻取部80の格納ケース81内に巻き取り可能な用紙の長さとを足し合わせることによって算出される値である。なお、最大巻取量は、オペレータによって最大巻取量記憶部21に対して入力される。
【0084】
ここで、最大巻取量は、主として格納ケース81の大きさによって大きく変化する。なお、格納ケース81内に巻き取り可能な用紙の長さは、実際に格納ケース81内に収容可能な用紙の最大長さであってもよいし、格納ケース81内に収容可能な用紙の最大長さより短くてもよく、任意に設定可能である。そこで、本実施の形態では、最大巻取量が算出される際に用いられる格納ケース81内に巻き取り可能な用紙の長さは、格納ケース81内において用紙が破損したり傷が付いたりしない範囲の長さであって、格納ケース81内に収容可能な用紙の最大長さよりは短い長さが設定されている。
【0085】
プリント情報記憶部22は、カラー画像が印字される際の種々の設定値を記憶する。ここで、設定値としては、プリント種類毎の1コマのプリント長さ(搬送方向長さ)、プリント枚数(コマ数)、隣り合う画像間に形成される余白部の長さ、ヘッド放熱用の追加長さなどが含まれる。プリント種類毎の1コマのプリント長さは、例えば標準サイズ、パノラマサイズなどの複数のプリントの種類毎に複数の値が記憶されている。プリント枚数は、プリント開始前に、オペレータによってオーダー毎に入力される値が記憶される。また、画像間の余白部の長さ及びヘッド放熱用の追加長さは、プリント開始前に、オペレータによって入力される値が記憶される。なお、追加長さは、画像を印字するために発熱したサーマルヘッド71a、72a、73a及び、オーバーコートを行うために発熱したサーマルヘッド61aの温度が、通電終了後にその周囲温度と実質的に同じになるまで用紙が各サーマルヘッド61a、71a〜73aと対向しているような長さに設定されている。本実施の形態では、発熱した各サーマルヘッド61a、71a〜73aが、いずれもその周囲温度と実質的に同じになるまでに必要な時間と、搬送方向上流側に向かって逆送される用紙の搬送速度との積によって追加長さが算出される。
【0086】
必要巻取量算出部23は、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するために必要な用紙の長さを必要巻取量として算出する。つまり、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するためには、印字部70でのカラー画像の印字を開始する前に、これらのカラー画像を印字可能な長さの用紙を印字部70よりも搬送方向下流側に搬送しておく必要がある。従って、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送される場合に、1オーダーに含まれる複数のカラー画像の全てを印字するために、印字部70のヘッド部73による印字位置を超えて搬送されるべき用紙の長さが必要巻取量として算出される。
【0087】
ここで、必要巻取量について、図8を参照して説明する。図8は、1オーダーに含まれる複数のカラー画像が用紙の先端部近傍に印字されるときの様子を示す図である。なお、図8では、1オーダーには同じプリント種類の画像が6個含まれる場合について図示している。図8に示すように、用紙の先端(図8では左端部)近傍にヘッド放熱用の追加長さzに対応する領域が設けられ、そこから上流側(図8では右方)に向かって、プリント長さxに対応する領域と余白部長さyに対応する領域がプリント枚数nだけ交互に設けられる。
【0088】
従って、必要巻取量算出部23では、プリント開始前に、オペレータによって、1オーダーに含まれるカラー画像のプリント種類及びプリント枚数が入力されると、プリント情報記憶部22に記憶された各値に基づいて、1オーダーに対応する必要巻取量Lが下記の式によって算出される。
L=z+x×n+y×(n−1)
【0089】
比較部24は、必要巻取量算出部23で算出された必要巻取量と最大巻取量記憶部21に記憶された最大巻取量とを比較する。そして、比較部24は、必要巻取量と最大巻取量との間の大小関係についての比較結果を得る。
【0090】
巻取量決定部25は、用紙の搬送方向が搬送方向下流側に向かう方向から搬送方向上流側に向かう方向に変更される前に、実際に印字部70よりも搬送方向下流側に搬送される用紙の長さ(実際の巻取量)、すなわち、実際に印字部70のヘッド部73に対向する位置を超えて搬送される用紙の長さを決定する。ここで、巻取量決定部25は、比較部24による比較結果に基づいて巻取量を決定する。つまり、巻取量決定部25は、比較部24において必要巻取量が最大巻取量以下であるという比較結果が得られた場合は、実際の巻取量を必要巻取量に決定し、一方、比較部24において必要巻取量が最大巻取量より長いという比較結果が得られた場合は、実際の巻取量を最大巻取量に決定する。
【0091】
搬送量検知部26は、用紙検出センサ91によって用紙の先端が検出された後にエンコーダ33により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて、用紙の搬送量を検知する。つまり、搬送量検知部26は、用紙検出センサ91による検出位置よりも搬送方向下流側に搬送された用紙の長さを検知する。その結果、搬送量検知部26は、用紙の搬送方向が搬送方向下流側に向かう方向から搬送方向上流側に向かう方向に変更される前に、印字部70よりも搬送方向下流側に搬送された用紙の長さを検知することができる。なお、後述するように、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達した後は、搬送ローラ対34から与えられる搬送力ではなく送り込みローラ対35から与えられる搬送力によって用紙が搬送されるようになるが、この場合でも、搬送量検知部26では、常に搬送ローラ対34の回転数に基づいて用紙の搬送量が検知される。
【0092】
搬送量検知部26は、用紙が搬送方向下流側に向かって搬送される場合だけでなく、用紙が搬送方向上流側に向かって搬送される場合にも、用紙の搬送量を検知することができる。従って、用紙の搬送方向が搬送方向下流に向かう方向から搬送方向上流に向かう方向に変更された場合には、搬送方向が変更される前の搬送方向下流側への搬送量から、搬送方向が変更された後の搬送方向上流側への搬送量を差し引くことによって、用紙の先端位置を検知することができる。
【0093】
搬送制御部27aは、回転軸43、給紙ローラ対31、第1カール除去ローラ対36、第2カール除去ローラ対37、搬送ローラ対34及び送り込みローラ対35を駆動するモータ43a、31a、36c、37c、34a、35aを制御することによって、用紙を用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって搬送すると共に、用紙を用紙巻取部80から用紙供給部40に向かって逆送させる。
【0094】
印字制御部27bは、オーバーコート部60のサーマルヘッド61a及び印字部70のサーマルヘッド71a〜73aの昇降タイミング及び印字タイミングを制御する。詳細には、印字制御部27bは、用紙が搬送方向下流側に搬送される際には、サーマルヘッド61a、71a〜73aを退避位置とし、用紙が搬送方向上流側に逆送される前に、サーマルヘッド61a、71a〜73aをプリント位置とするように昇降タイミングを制御する。また、印字制御部27bは、搬送方向上流側に逆送されている用紙に対して、1オーダーに含まれる複数のカラー画像が余白部の長さ分だけ隔ててそれぞれ印字され、且つ、最後に印字されたカラー画像よりも用紙の先端部側の追加長さに対応する領域には画像が印字されないように印字タイミングを制御する。さらに、印字制御部27bは、用紙のカラー画像が印字された領域のみにオーバーコートを行うようにオーバーコート部60を制御する。
【0095】
切断制御部27cは、切断部50での切断タイミングを制御する。詳細には、切断制御部27cは、搬送量検知部26によって検知される、用紙の搬送方向が搬送方向下流に向かう方向から搬送方向上流に向かう方向に変更された後の搬送方向上流側への用紙の搬送量に基づいて、最も搬送方向上流側に印字されたカラー画像の後端部が、切断部50による切断位置に到達したことを検知し、そのカラー画像の後端部が切断されるように切断部50を制御する。また、切断制御部27cは、搬送量検知部26によって検知される、画像検出センサ90において画像の後端部が検出された後の搬送方向上流側への用紙の搬送量に基づいて、カラー画像の先端部が、切断部50による切断位置に到達したことを検知し、そのカラー画像の先端部が切断されるように切断部50を制御する。さらに、切断制御部27cは、搬送量検知部26によって検知される、カラー画像の先端部での用紙の切断が行われた後の搬送方向上流側への用紙の搬送量に基づいて、搬送方向下流側において隣接するカラー画像の後端部が、切断部50による切断位置に到達したことを検知し、そのカラー画像の後端部が切断されるように切断部50を制御する。
【0096】
カール除去制御部27dは、カール除去ローラ対36、37の従動ローラ36b、37bを移動させるために駆動機構36d、37dを制御する。
【0097】
次に、プリンタ1において、画像の印字が行われる際の動作について、図9を参照して説明する。図9は、プリンタ1での動作手順を示すフローチャートである。
【0098】
まず、用紙供給部40に装填された用紙の巻回部45から回転軸43が回転駆動されることによって巻き解かれた用紙の先端部が、給紙ローラ対31から与えられる搬送力だけによって搬送される(ステップS101)。なお、上述したように、搬送方向下流側に搬送される用紙の先端近傍が切断部50近傍の通路57、58の上方を搬送される際には、第1カール除去ローラ対36で用紙を圧着することによって、用紙の先端近傍が搬送経路の上方に持ち上げられた状態で搬送される。
【0099】
そして、用紙の先端部が搬送ローラ対34を通過して用紙検出センサ91に到達するまで給紙ローラ対31による搬送が継続される(ステップS102)。ここで、用紙検出センサ91により用紙の先端部が検出されると、用紙検出センサ91から制御装置20に対して用紙の先端部を検出した旨の検出信号が送信される。
【0100】
このようにして、用紙の先端部が用紙検出センサ91に到達した時点で、用紙の搬送が停止されて待機状態になる(ステップS103)。このとき、サーマルヘッド61a、71a〜73aがプリント位置に配置されている場合は、サーマルヘッド61a、71a〜73aが待避位置に移動させられる(ステップS104)。
【0101】
その後、オペレータからの注文(オーダー)の受付があって、1オーダーに含まれるカラー画像のプリント種類及びプリント枚数が入力されると(ステップS105)、用紙の搬送を開始する準備として、プリント情報記憶部22に記憶された情報に基づいて、その1オーダーに対応する必要巻取量が必要巻取量算出部23によって算出される(ステップS106)。すると、比較部24によって、この必要巻取量と最大巻取量記憶部21に記憶された最大巻取量とが比較される(ステップS107)。その比較結果に基づいて、巻取量決定部25によって、実際の巻取量が決定される(ステップS108)。このようにして、用紙の搬送準備が終了した後で、搬送ローラ対34から与えられる搬送力だけによって用紙が搬送される(ステップS109)。なお、このとき、用紙供給部40の回転軸43及び給紙ローラ対31はいずれも回転自在になっている。
【0102】
その後、サーマルヘッド61a、71a〜73aが待避位置に配置された状態において、用紙の先端部が、オーバーコート部60及び印字部70をオーバーコート及び画像の印字が行われないまま通過して送り込みローラ対35に到達するまで、搬送ローラ対34から与えられる搬送力だけによって搬送が継続される(ステップS110)。そして、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達して挟持されるようになると、それ以後は送り込みローラ対35から与えられる搬送力だけによって用紙が搬送されて、用紙の先端部から用紙巻取部80の格納ケース81内に順次送り込まれる(ステップS111)。このとき、用紙が格納ケース81内に送り込まれるにつれて、用紙の先端部が格納ケース81の内周面及び巻き取りローラ83a〜83dに案内されて、格納ケース81内において、用紙がその巻き癖にしたがって巻き取られる。なお、用紙の先端部が送り込みローラ対35に到達した時点で、搬送ローラ対34は、ワンウェイクラッチ34cの機能により、用紙に搬送力を与える状態から送り込みローラ対35により搬送される用紙に伴って従動回転する状態に切り換えられる。
【0103】
その後、巻取量決定部25で決定された巻取量の長さの用紙が、ヘッド部73による印字位置よりも搬送方向下流側に搬送された時点で、用紙の巻き取りが終了して、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かって用紙が搬送されるのが停止される(ステップS112)。つまり、搬送量検知部26において、用紙検出センサ91によって用紙の先端部が検出された後にエンコーダ33により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて検知される用紙の搬送量が、巻取量決定部25で決定された巻取量と、オーバーコート部60及び印字部70における搬送経路の長さとを足し合わせた長さに一致した時点で、搬送制御部27aは用紙の巻き取りを終了し、用紙の搬送方向下流側への搬送を停止する。なお、このとき、ヘッド部73による印字位置には、巻取量の長さの用紙の最も搬送方向上流側に印字される画像の後端部が配置されている。
【0104】
そして、オーバーコート部60のサーマルヘッド61a及び印字部70のサーマルヘッド71a〜73aが待避位置からプリント位置に同時に移動させられる(ステップS113)。その後、給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34から与えられる搬送力によって用紙が搬送方向上流側に向かって逆送される(ステップS114)。従って、このとき、従動回転する状態であった給紙ローラ対31及び搬送ローラ対34は、用紙を搬送方向上流側に向かって搬送する方向に回転駆動されると共に、送り込みローラ対35は、ワンウェイクラッチ35cの機能により、従動回転するようになる。また、用紙供給部40の回転軸43はマガジンケース41内に用紙を巻き戻す方向に回転駆動される。
【0105】
そして、用紙が搬送方向上流側に向かって逆送されながら、1オーダーに含まれる各カラー画像について、ヘッド部73によってイエローに対応する印字、ヘッド部72によってマゼンタに対応する印字、ヘッド部71によってシアンに対応する印字が順次行われる。このようにして、各カラー画像について、イエロー、マゼンタ、シアンの順に印字が行われることによってカラー画像が完成する(ステップS115)。その後、引き続き、ヘッド部61によって、カラー画像が印字された用紙の表面に対してオーバーコートが行われる(ステップS116)。そして、用紙が搬送方向上流側へ逆送されながら、複数のカラー画像についての印字及びオーバーコートが終了すると、オーバーコート部60のサーマルヘッド61a及び印字部70のサーマルヘッド71a〜73aがプリント位置から待避位置に同時に移動させられる(ステップS117)。
【0106】
なお、本実施の形態では、必要巻取量が最大巻取量よりも短い場合には、用紙の搬送方向上流側への逆送が開始されると同時に、カラー画像の印字が開始され、1オーダーに含まれるカラー画像の全てが各画像間に所定幅の余白部が形成されるように断続的に印字される。一方、必要巻取量が最大巻取量よりも長い場合には、用紙の搬送方向上流側への逆送が開始されると同時に、カラー画像の印字が開始され、1オーダーに含まれるカラー画像の一部が各画像間に所定幅の余白部が形成されるように断続的に印字される。つまり、上述したように、用紙には、画像領域と余白部とが交互に配置されるようにカラー画像が印字される。ただし、用紙先端近傍のヘッド放熱用の追加長さに対応する領域には画像は印字されない。そして、印字部70では、3つのヘッド部71〜73のうちの少なくとも2つに対向する位置に同じタイミングで画像領域がある場合には、それらのヘッド部によって同時に印字が行われる。また、オーバーコート部60でのオーバーコートは、印字部70でのカラー画像の印字と並行して行われる。このようにして、印字部70及びオーバーコート部60では、巻取量決定部25により決定された巻取量の長さの用紙または最大巻取量の長さの用紙に対して印字可能な複数のカラー画像についての印字及びオーバーコートが行われる。
【0107】
最も搬送方向上流側に印字されたカラー画像の後端部(巻取量決定部25で決定された巻取量の長さの用紙の後端部と一致している)が、切断部50による切断位置に到達すると、用紙の逆送が停止され、そのカラー画像の後端部で用紙が切断される(ステップS118)。なお、カラー画像の後端部が切断部50による切断位置に到達するタイミングは、搬送量検知部26によって検知される搬送量に基づいて検知される。このように用紙が切断された後、最も搬送方向上流側のカラー画像よりも上流側の画像が形成されなかった用紙(巻取量決定部25で決定された巻取量の長さの用紙の後端部よりも搬送方向上流側の用紙)は、用紙供給部40に巻き戻される。
【0108】
引き続き、搬送ローラ対34から与えられる搬送力のみで用紙が逆送されて、最も搬送方向上流側の画像の後端部が画像検出センサ90による検出位置に到達すると、画像検出センサ90から制御装置20に対して画像の後端部を検出した旨の検出信号が送信される(ステップS119)。なお、搬送方向上流側に逆送される用紙の後端近傍が切断部50近傍の通路57、58の上方を搬送される際には、第2カール除去ローラ対37で用紙を圧着することによって、用紙の後端近傍が搬送経路の上方に持ち上げられた状態で搬送される。
【0109】
すると、搬送量検知部26は、画像検出センサ90によって画像の後端部が検出された後に、エンコーダ33により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて、搬送方向上流側への用紙の搬送量を検知する。そして、その搬送量に基づいて、切断制御部27cにより、カラー画像の先端部が切断部50による切断位置に到達したことが検知される。このとき、用紙の逆送が停止され、カラー画像の先端部で用紙が切断される(ステップS120)。このように、カラー画像の先端部及び後端部を切断された用紙は、プリントボックス96に収納される。
【0110】
ここで、各カラー画像の先端部及び後端部で用紙が切断される際の様子を、図10及び図11を参照して説明する。なお、図10及び図11では、用紙が切断される際の様子が、(a)から(c)の順に図示されている。また、図10及び図11では、用紙のカラー画像が形成された部分(上述のプリント長さ部分に対応している)は斜線領域で図示され、用紙の余白部(上述の余白長さ部分または追加長さ部分に対応している)は黒色領域で図示されている。なお、図10及び図11では、第1カール除去ローラ対36及び第2カール除去ローラ対37の図示は省略されている。
【0111】
各カラー画像間に形成される余白部は、各カラー画像の後端部で用紙が切断された際に、余白部分長さyの用紙として分割される。そして、この余白部分長さyの用紙は、図10に示すように、切断位置とガイド55との間の通路57を通過して、切りくずボックス53内に収納される。一方、用紙の先端に形成される余白部は、最も搬送方向下流側の画像の先端部で用紙が切断された際に、追加長さzの用紙として分割される。そして、この追加長さの用紙は、図11に示すように、切断位置とガイド56との間の通路58を通過して、切りくずボックス53内に収納される。
【0112】
カラー画像の先端部での用紙の切断が行われる度に、切断された用紙に印字されたカラー画像が用紙の先端部に最も近接して印字された最終画像であるか否かが判断される(ステップS121)。ここで、最終画像でないと判断されると、再び用紙が逆送される。すると、搬送量検知部26は、カラー画像の先端部での用紙の切断が行われた後、エンコーダ33により検出される搬送ローラ対34の回転数に基づいて、搬送方向上流側への用紙の搬送量を検知する。そして、切断制御部27cでは、その搬送量に基づいて、ステップS120で先端部が切断されたカラー画像と搬送方向下流側において隣接するカラー画像の後端部が、切断部50による切断位置に到達したことを検知する。このとき、用紙の逆送が停止され、そのカラー画像の後端部で用紙が切断される(ステップS122)。その後、ステップS119に戻って、上述と同様の処理が繰り返される。
【0113】
一方、最終画像であると判断されると、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了したか否かが判断される(ステップS123)。ここで、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了していないと判断されると、ステップS106に戻って、上述と同様の処理が繰り返される。一方、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了したと判断されると、処理が終了する。
【0114】
なお、ステップS123で、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了していないと判断される場合とは、例えば比較部24において必要巻取量が最大巻取量より長いと判断されて、巻取量決定部25が最大巻取量を最終的な巻取量として決定した場合である。つまり、この場合には、1オーダーに含まれるカラー画像のなかで最大巻取量の長さの用紙に印字することができなかった残りのカラー画像の印字が引き続き行われる。このようにして、1オーダーに含まれるカラー画像の全ての印字が終了するまで、上述と同様の処理が繰り返される。
【0115】
以上のように、本実施の形態のプリンタ1では、用紙供給部40から用紙巻取部80に向かう方向に用紙を搬送した後で、オーバーコート部60及び印字部70よりも搬送方向上流側に配置された搬送ローラ対34による搬送力によって搬送方向上流側に向かって逆送される用紙に複数のカラー画像を印字することができる。そのため、搬送後逆送される用紙部分の先端からの領域にカラー画像を印字可能であると共に、用紙の搬送中の負荷変動に起因して画像が悪化するのを抑制できる。また、複数のカラー画像を用紙に印字する場合でも、用紙を1往復させるだけでよく、搬送機構38における用紙の搬送方向を1回切り換えるだけでよいので、搬送方向の切り換えに基づく時間的な搬送ロスを低減できる。その結果、複数のカラー画像を用紙に印字する場合において、用紙の無駄及び用紙の搬送中の負荷変動に起因する画像悪化を防止しつつ、プリンタ1の処理能力を向上させることができる。
【0116】
また、余白部を落下させるための通路57、58が切断部50の上流側及び下流側の両方にそれぞれ設けられているので、用紙の先端近傍及び各カラー画像間のそれぞれに形成された余白部が切断されると、その余白部の全てが搬送経路から外れるように移動する。従って、切断部50によって切断されたカット屑となる余白部を搬送経路から取り除いて適正に廃棄することができる。
【0117】
また、通路57、58の下方には切りくずボックス53が配置されているので、切断された後で通路57、58を落下することによって搬送経路から外れた余白部を収納することができる。そのため、カット屑の廃棄を容易に行うことができる。
【0118】
また、固定刃52の先端部におけるローリングカッタ51と反対側の部分には面取りが施されているので、各カラー画像の搬送方向上流側の余白部が切断された場合に、この余白部が通路57から落下し易くなる。従って、カット屑が搬送経路から取り除かれなくなるのを抑制することができる。
【0119】
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、オーバーコート部60及び印字部70よりも搬送方向上流側に配置された搬送ローラ対34による搬送力によって搬送方向上流側に向かって逆送される用紙にカラー画像が印字されているが、これには限られない。従って、オーバーコート部60及び印字部70よりも搬送方向下流側に配置された搬送ローラ対による搬送力によって搬送方向上流側に向かって逆送される用紙にカラー画像が印字されてもよい。
【0120】
また、上述の実施の形態では、通路57、58の下方には切りくずボックス53が配置されているが、切りくずボックス53は配置されていなくてもよい。また、上述の実施の形態では、固定刃52の先端部におけるローリングカッタ51と反対側の部分には面取りが施されているが、面取りは施されていなくてもよい。
【0121】
また、上述の実施の形態では、印字部70が複数のヘッド部71〜73を有しており、用紙に対してカラー画像が印字されているが、印字部が1つのヘッド部だけを有しており、用紙に対して一色の画像が印字されてもよい。
【0122】
また、上述の実施の形態では、プリンタ1は、画像が印字された用紙の表面に対してオーバーコートを行うオーバーコート部60を備えているが、オーバーコート部60はなくてもよい。
【0123】
また、上述の実施の形態では、熱昇華方式のプリンタ1において、記録媒体である用紙と接触する3つのヘッド部71〜73によってカラー画像が印字されているが、カラー画像を記録可能なプリンタであれば、その画像記録部の構成はこれに限られない。従って、記録媒体と接触するヘッドを有するサーマルプリンタ(熱転写方式及び感熱記録方式を含む)であってもよいし、例えばインクジェットヘッド、FOCRT(Fiber Optic Cathode-Ray-Tube)、レーザ光源などを有しており、記録媒体と接触しないでカラー画像を記録可能なプリンタであってもよい。また、画像記録部は、必ずしも複数の画像記録ヘッドを有している必要はなく、カラー画像を記録可能な1つの画像記録ヘッドだけを有していてもよい。従って、例えばイエロー、マゼンタ、シアンのインクを吐出可能なノズルをそれぞれ有する3つのインクジェットヘッドを有しており、それらのヘッドが記録媒体の搬送方向に交差する方向に往復動しつつカラー画像を記録するプリンタであってもよいし、イエロー、マゼンタ、シアンのインクを吐出可能なノズルを有する1つのインクジェットヘッドを有しており、そのヘッドが記録媒体の搬送方向に交差する方向に往復動しつつカラー画像を記録するプリンタであってもよい。
【0124】
また、上述の実施の形態では、プリンタ1において、切断部50の搬送方向上流側及び搬送方向下流側に通路57、58がそれぞれ設けられている場合について説明しているが、プリンタには備えられていない搬送装置において、切断部の搬送方向上流側及び搬送方向下流側に通路がそれぞれ設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの外観斜視図である。
【図2】図1のプリンタの画像形成部の概略構成を示す図である。
【図3】図2のプリント部に含まれる切断機構における切断位置近傍の構成を示す図である。
【図4】図1のプリンタの搬送ローラ対及び送り込みローラ対の動作を表す図である。
【図5】図2のプリント部に含まれるカール除去ローラ対の動作を説明する図である。
【図6】図2のプリント部に含まれるカール除去ローラ対の動作を説明する図である。
【図7】図1のプリンタの主要部及びこれらが接続された制御装置についてのブロック図である。
【図8】1オーダーに含まれる複数のカラー画像が用紙の先端部近傍に印字されるときの様子を示す図である。
【図9】プリンタ1での動作手順を示すフローチャートである。
【図10】各カラー画像の後端部で用紙が切断される際の様子を示す図である。
【図11】最も搬送方向下流側のカラー画像の先端部で用紙が切断される際の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0126】
1 サーマルプリンタ(プリンタ)
10 操作部
20 制御装置
21 最大巻取量記憶部
22 プリント情報記憶部
23 必要巻取量算出部
24 比較部
25 巻取量決定部
26 搬送量検知部
27a 搬送制御部(搬送制御手段)
27b 印字制御部(画像記録制御手段)
27c 切断制御部(切断制御手段)
27d カール除去制御部
30 プリント部
38 搬送機構
40 用紙供給部(供給部)
50 切断部(切断機構)
53 切りくずボックス(収納部材)
55 ガイド(支持機構)
56 ガイド(支持機構)
60 オーバーコート部
61a サーマルヘッド
70 印字部(画像記録部)
71a〜73a サーマルヘッド
80 用紙巻取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録可能な画像記録部と、
長尺の記録媒体を貯留した供給部と、
記録媒体を前記画像記録部に対向させつつ前記供給部から前記画像記録部に向かう第1の方向と、前記第1の方向と反対方向である第2の方向とに搬送可能な搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される記録媒体を支持する支持機構と、
前記支持機構によって支持されつつ搬送される記録媒体を切断可能な切断機構と、
記録媒体の先端が前記画像記録部から前記第1の方向に離れた位置に達するまで記録媒体が前記第1の方向に搬送された後に前記第2の方向に搬送されるように、前記搬送機構を制御する搬送制御手段と、
前記搬送機構によって前記第2の方向に搬送されている記録媒体に前記画像記録部によって複数の画像が記録されると共に、各画像の上流側及び下流側に廃棄領域が形成されるように、前記画像記録部を制御する画像記録制御手段と、
記録媒体が各画像と廃棄領域との境界において切断されるように、前記切断機構を制御する切断制御手段とを備えており、
前記支持機構には、前記切断機構の上流側及び下流側において、廃棄領域に対応した記録媒体が搬送経路から外れる方向に通過する通路がそれぞれ設けられていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記搬送機構は、前記供給部と前記画像記録部との間において記録媒体に搬送力を付与することによって、記録媒体を前記第2の方向に搬送可能であることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記切断機構によって切断された後で前記通路を通過した廃棄領域に対応した記録媒体を収納する収納部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記切断機構は、前記搬送機構による搬送経路に対して前記支持機構側に固定配置され且つ可動刃との相互作用によって記録媒体を切断可能な固定刃を有しており、
前記固定刃の先端部における前記可動刃と反対側の部分には面取りが施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項5】
複数の画像の上流側及び下流側に廃棄領域が形成された記録媒体を搬送可能な搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される記録媒体を支持する支持機構と、
前記支持機構で支持されつつ搬送される記録媒体を切断可能な切断機構とを備えており、
前記支持機構には、前記切断機構の上流側及び下流側において、廃棄領域に対応した記録媒体が搬送経路から外れる方向に通過する通路がそれぞれ設けられていることを特徴とする記録媒体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−82244(P2006−82244A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266583(P2004−266583)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】