説明

プリンタ

【課題】 ICラベルの大きさや種類によらず、目的とするICラベルのみと確実に通信することができるようにする。
【解決手段】 CPU52は、ICラベル14の種別に応じて設定された出力値をROM56から読み出し、通信手段72からアンテナ46を介して送信される電波の出力値をROM56から読み出した出力値となるように可変手段73を制御する。また、CPU52は、ICラベル14の形状によっては、アンテナ駆動装置を制御して、アンテナ46を幅方向に移動させ、可変手段73を制御してアンテナ46からの電波の出力値を調整することにより、搬送方向の長さが幅方向の長さより短く、隣接するICラベル14同士の間隔が狭い場合であっても、目的とするICラベル14のみと通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタに関し、特にラベルやタグ等の表示札に内蔵されたICチップに対してデータの書き込みおよび読み込みを行うプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICチップとアンテナコイルを加工して製造された無線ICタグ(RFID)インレットを備えたラベル(厚紙タグなども含む)に対して、データの書き込みおよび読み取りを行うRFID機能を内蔵し、その用紙の表面に印字を行うことができるラベルプリンタは、印字機構(サーマルヘッド等からなる)の他に、RFIDリーダライタおよびアンテナコイルを備えている。このラベルプリンタは、ラベルプリンタ毎に設定された仕様に基づいて加工されたラベルに対して、データの読み取り、書き込み、および表面への印字を行うようになっている。また、特殊な形状のラベルに対しては、プリンタやアンテナコイルの取り付け位置等に小変更を加えて対応している。
また、表示札に内蔵されたICチップと通信を行う通信部と、表示札に印字を行う印字ヘッドを備えたプリンタにおいて、通信部のアンテナの幅を、このアンテナの送受信エリアが印字ヘッドの幅に対応するように設定することにより、プリンタに適用できる最大幅の表示札のいずれの位置にICチップが内蔵されていても、ICチップと通信を行うことができるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−211075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、使用されるラベルは、大きさや幅、形状等が同一ではなく、顧客の希望により柔軟に対応する必要がある。また、形状が同一であっても、加工されるICチップが配置される部分は突起となり、表面の印字品質を損ねるため、印字レイアウトによりRFIDインレットの位置を設定できるようにする必要がある。ところが、RFIDインレットの配置は、RFIDリーダライタのアンテナコイルの位置によって決定されてしまう。従って、ラベルの形状に拘わらず、RFIDインレットの配置位置はある範囲内に限られる。このため、表面の印字レイアウトに制限が生じてしまう場合があった。また、ラベルサイズを小さくすると、帯状に形成された台紙に多数のラベルが一定の間隔で仮着されて構成される用紙において、隣接するラベル同士の間隔が狭くなり、アンテナコイルに対する動作範囲に複数のラベルが入ることとなり、リーダライタからアンテナコイルを介して送信される信号に対して目的とするラベルの前後のラベルも応答し、データの書き込みができなくなる場合がある。そのため、隣接するラベル同士の間隔を広く取ると、捨てラベルを設けなければならないなどの無駄が生じるという問題があった。
また、表示札の搬送方向の長さが、幅方向の長さより短い場合、目的とする表示札に隣接する他の表示札のICチップと通信を行ってしまうことがあった。そのため、隣接する表示札同士の間隔を、幅方向よりも大きくする必要があり、ラベル用紙にラベル(表示札)を効率的に仮着させることができないという問題があった。
【0004】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ラベルの形状や大きさに拘わらず、所望のラベルのICチップとだけ通信を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のプリンタは、ICチップと第1のアンテナからなるRFIDインレットを有するラベルに対して、データの読み取りおよび書き込みを行うリードライト手段と、データに対応する電波を第1のアンテナとの間で送受信する第2のアンテナと、第2のアンテナから送信される電波の出力値を変更する出力値変更手段とを備えることを特徴とする。
また、出力値変更手段は、ラベルの種別に応じて電波の出力値を変更するようにすることができる。
また、第2のアンテナを幅方向に移動させるアンテナ移動手段をさらに備え、アンテナ移動手段は、ラベルの種別に応じて第2のアンテナを幅方向に移動させ、第2のアンテナがラベルのRFIDインレットを構成する第1のアンテナの直下に移動させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプリンタによれば、ラベルの形状や大きさに拘わらず、所望のラベルのICチップとだけ通信を行うことができる。また、隣接するラベル同士の間隔を大きく取る必要がないので、捨てラベルを設ける等の無駄をなくすことができ、資源を有効活用することができる。また、種々のラベルに対応することができるので、構成部品の標準化を進めることができ、コストを削減することができる。さらに、ICチップの位置に関係なくデータの読み書きができるので、顧客に対して印字レイアウトの制限を少なくすることができ、より充実したサービスを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のプリンタの一実施の形態の構成および動作について説明する。図1は、本実施の形態のプリンタで使用されるロール状に巻回されたラベル用紙12を示す斜視図である。同図に示すように、ラベル用紙12は、帯状に形成された台紙(剥離紙)16に、多数のIC(Integrated Circuit)ラベル14が所定の間隔で仮着されて構成されている。
【0008】
ICラベル14は、積層された上層14Aと下層14Bとからなり、上層14Aと下層14Bとの間にICチップ22およびアンテナ24からなるRFID(Radio Frequency−Identification)インレット25が配設されている。一方、台紙16は、ICラベル14を一枚毎に切断するためのミシン目20が形成されるとともに、裏面に検出マーク(不図示)が所定の間隔で印刷されている。なお、図1は、ラベル用紙12の一例であり、ラベル用紙12の構成はこれに限定されるものではない。例えば、台紙16にミシン目20が形成されていないものや、ICラベル14が連続的に連なっているものであってもよい。
【0009】
次に、本実施の形態のプリンタについて説明する。図2は、本実施の形態のプリンタ10の概略構造を示す断面図である。同図に示すように、プリンタ10は主として、供給手段26、通信手段28、印字手段30等から構成されている。
【0010】
供給手段26の供給軸32には、ロール状に巻回されたラベル用紙12が装着されている。ラベル用紙12は、印字手段30のプラテンローラ36を回転駆動することにより供給軸32から繰り出され、通信手段28を経て印字手段30に移送される。通信手段28と印字手段30との間には、センサ34が設けられており、このセンサ34によって台紙16の検出マーク(不図示)を検出する。そして、印字手段30は、センサ34が検出マークを検出したタイミングに基づいて、印字を開始する。
【0011】
印字手段30は、対向して配置されたプラテンローラ36とサーマルヘッド(印字ヘッド)38とによって構成される。このプラテンローラ36とサーマルヘッド38との間には、供給手段26から繰り出されたラベル用紙12と、供給リール42から繰り出されたインクリボン40とが供給される。そして、サーマルヘッド38の発熱素子(不図示)を発熱させてインクリボン40のインクを溶解させることによりラベル用紙12にインクを転写して印字する。印字後のラベル用紙12は、取出口48から取り出され、また印字後のインクリボン40は、巻き取りリール44に巻き取られる。なお、印字手段30の印字方式は、熱転写式に限定するものではなく、感熱式やインクジェット式であってもよい。
【0012】
一方、通信手段28は、供給手段26と印字手段30との間に配設されており、アンテナ46を備えている。アンテナ46は、ラベル用紙12に近接して配置されており、そのアンテナ46はアンテナ駆動部(不図示)によって幅方向に移動することができるようになっている。即ち、プリンタ10では、ラベル用紙12に仮着されたICラベル14のICチップ22の位置に応じて、ICチップ22の近傍にアンテナ46を移動させることができるようになっている。
【0013】
通信手段28は、このアンテナ46と、ICラベル14のアンテナ24とを介してICチップ22と通信し、ICチップ22にデータを書き込んだり、ICチップ22からデータを読み取るようになっている。
【0014】
図3はプリンタ10とICラベル14の要部を示すブロック図である。同図に示すように、プリンタ10の制御部本体を構成するCPU52は、バス54を介してROM(Read Only Memory)56、RAM(Random Access Memory)58と接続されている。ROM56には制御プログラムが記憶され、RAM58にはCPU52がROM56に記憶されている制御プログラムに従って各種処理を実行する上で必要となるデータや、その他の各種データを記憶するようになっている。CPU52は、ヘッドコントローラ60にも接続されており、このヘッドコントローラ60によってサーマルヘッド38を制御するようになっている。
【0015】
また、CPU52は、バス54を介して駆動制御コントローラ62に接続され、この駆動制御コントローラ62によってモータドライバ64を制御し、パルスモータ66を駆動させてラベル用紙12を搬送するようになっている。また、駆動制御コントローラ62は、A/D変換器68を介してセンサ34に接続されており、センサ34が台紙16の検出マーク(不図示)を検出したタイミングに基づいてパルスモータ66を駆動するようになっている。
【0016】
また、CPU52は、通信手段72を介してアンテナ46に接続され、このアンテナ46を介してICラベル14のアンテナ24にデータを送受信するようになっている。また、通信手段72とアンテナ46の間には、可変抵抗等からなる可変手段73が設けられており、通信手段72からアンテナ46に対して供給される所定のデータに対応する所定の周波数帯域の信号(RF出力)の大きさを調整し、アンテナ46からの電波の出力を調整することができるようになっている。この可変手段73は、CPU52の制御下、アンテナ46からの電波の出力を調整するようにしてもよいし、手動によって調整されるようにしてもよい。
【0017】
一方、ICラベル14は、マイクロプロセッサ(MPU)74を有しており、このMPU74が、通信手段75を介してアンテナ24からプリンタ10のアンテナ46に対して信号の送受信を行うようになっている。
【0018】
また、ROM56には、ICラベル14の種別毎に、アンテナ46からの電波の出力値を対応付けた出力テーブルが記憶されており、CPU52は、ICラベル14の種別に応じた出力値をROM56から読み出し、アンテナ46からの電波の出力値がROM56から読み出した出力値となるように、可変手段73を調整する。
【0019】
これにより、アンテナ46からの電波によってICチップ22が応答する交信範囲の大小を調整することができ、目的とするICラベル14のICチップ22と通信を行うことができる。
【0020】
例えば、図4に示すように、ICラベル14の中央部にRFIDインレット25が設けられている場合、通常、アンテナ46はICラベル14の幅方向の中心に配置されているので、可変手段73により通信手段72からのRF出力の大きさを調整し、アンテナ46からの電波の出力値を比較的小さくしても、交信範囲内にRFIDインレット25が入り、通信手段72はアンテナ46を介してICラベル14のRFIDインレット25と通信を行うことができる。
【0021】
また、図5に示すように、ICラベル14の端部にRFIDインレット25が設けられている場合、通常、アンテナ46はICラベル14の幅方向の中心に配置されているので、アンテナ46からの電波の出力値を比較的大きくして、交信範囲内にRFIDインレット25が入るようにすることにより、通信手段72はアンテナ46を介してICラベル14のRFIDインレット25と通信を行うことができる。
【0022】
しかしながら、図6に示すように、ICラベル14の搬送方向の長さが幅方向の長さより短く、かつ、RFIDインレット25がICラベル14の端部に設けられているような場合、アンテナ46からの電波の出力値を図5に示すように比較的大きくすると、隣接する他のICラベル14のRFIDインレット25が応答してしまうことがある。そのような場合、CPU52の制御下、アンテナ駆動装置(不図示)が駆動され、アンテナ46がRFIDインレット25の直下に位置するように幅方向に移動する。これにより、アンテナ46からの電波の出力値を比較的小さくして、目的とするICラベル14のみと通信を行うことができるようになる。
【0023】
また、ラベル種別毎に通信に使用する電波の周波数を設定することができる。また、ラベル種別とは別に、複数段(例えば、弱い周波数から20%ずつ)周波数を切り換え、ICラベル14からデータの読み取りができたところで書き込みを行うようにすることができる。
【0024】
次に、RFIDインレット25に対するデータの書き込みにおいて、変調度10%と100%の2方式に対応すべきところが、通信手段28を組み込んだ状況によっては、変調度10%と変調度100%のいずれか一方でしか通信できない場合がある問題を解決するため、書き出し読み取りエラーに対するリトライを行うときに変調度も10%と100%で交互に切り替える方法について説明する。
【0025】
ISO15693(JIS X6323)の定義によれば、RFIDインレット25に対してデータの書き込みおよび読み込みを行う通信手段72は、変調度が10%または100%いずれか一方の設定で動作し、RFIDインレット25は両方の設定に対応するように記載されている。変調度10%は、電磁波の振幅を10%減じることにより通信データの0と1を伝える方法である。一方、変調度100%は、一定のタイミングで電磁波の振幅を止め、その止まったタイミングをもって通信データの0と1を伝える方法である。
【0026】
ところが、プリンタ10内でICラベル14に設けられたRFIDインレット25は、印字搬送の動きの中で、ばたつきによりアンテナ46と近づいたり離れたりする(垂直方向の動き)。また、ラベル用紙12は、ロール紙として保管されているため、カールしており、できる限り平行となるべきRFIDインレット25のアンテナ24とアンテナ46の位置関係が傾斜する場合(傾斜)、ICラベル14のサイズの違いによりRFIDインレット25のアンテナ24の一部だけが通信手段28の交信範囲にある場合(水平方向の動き)など、通信の環境は変化している。
【0027】
そのため、通信手段28からRFIDインレット25に伝送される動力にバラツキが生じ、動作不良を招く場合がある。
【0028】
そこで、RFIDインレット25が、変調率10%および変調率100%の両方に対応していることとは別に、プリンタ10内の状況でRFIDインレット25がうまく稼動できない状況に対して、通信手段28の側で変調を変えてリトライすることで、通信の確実性を向上させることができる。
【0029】
なお、上記実施の形態の構成および動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態のプリンタで印字を施すICラベルのラベル用紙を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るプリンタの一実施の形態の概略構造を示す断面図である。
【図3】図2のプリンタの制御部を示すブロック図である。
【図4】ICラベルの位置と交信範囲の例を示す図である。
【図5】ICラベルの位置と交信範囲の他の例を示す図である。
【図6】ICラベルの位置と交信範囲の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 プリンタ
12 ラベル用紙
14 ICラベル(表示札)
22 ICチップ
24 アンテナ
25 RFIDインレット
26 供給手段
28 通信手段
30 印字手段
34 センサ
36 プラテンローラ
38 サーマルヘッド(印字ヘッド)
38a 発熱素子(印字素子)
46 アンテナ
52 CPU
54 バス
56 ROM
58 RAM
60 ヘッドコントローラ
62 駆動制御コントローラ
64 モータドライバ
66 パルスモータ
68 A/D変換器
72,75 通信手段
73 可変手段
74 MPU



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと第1のアンテナからなるRFIDインレットを有するラベルに対して、データの読み取りおよび書き込みを行うリードライト手段と、
前記データに対応する電波を前記第1のアンテナとの間で送受信する第2のアンテナと、
前記第2のアンテナから送信される前記電波の出力値を変更する出力値変更手段と
を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記出力値変更手段は、前記ラベルの種別に応じて前記電波の出力値を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第2のアンテナを幅方向に移動させるアンテナ移動手段をさらに備え、
前記アンテナ移動手段は、前記ラベルの種別に応じて前記第2のアンテナを幅方向に移動させ、前記第2のアンテナが前記ラベルの前記RFIDインレットを構成する前記第1のアンテナの直下に移動させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−18456(P2006−18456A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194139(P2004−194139)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】