説明

プリンタ

【課題】インクの着弾位置のばらつきを抑制し、色ずれの発生を抑制できるプリンタを提供すること。
【解決手段】プリンタによれば、用紙Pがユニット間距離HDを搬送される間に、駆動ローラ32はほぼa回転し、従動ローラ33はほぼb回転し、上流側ピンチローラ35はほぼc回転し、下流側ピンチローラ36はほぼc回転し、クリーニングローラ37はほぼd回転し、クリーニングピンチローラ38はほぼd回転する。よって、あるインクノズルユニットによって形成されるドットと、用紙Pが搬送方向Aにユニット間距離HDだけ搬送されて、次のインクノズルユニットによって形成されるドットとは、各ローラ32,33,35〜38の回転に伴って用紙Pが蛇行したとしても、用紙P上のほぼ同じ位置に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色ずれの発生を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より知られているラインプリンタは、ノズルが設けられた長尺のインクノズルユニットを備え、ライン毎に印刷動作を行う。カラープリンタの場合は、色毎にインクノズルユニットが設けられる。
【0003】
図10(a)は、従来のカラーラインプリンタの複数のインクノズルユニット100を、インク吐出面側から見た図である。各インクノズルユニット100は、長手方向に配列された複数のノズル形成部101を備え、各ノズル形成部101にはインクを吐出するためのノズルが稠密に設けられているが、図10(a)においては図示を省略している。
【0004】
図10(a)に示すように、4つのインクノズルユニット100は所定間隔HD毎に設けられ、各インクノズルユニット100は互いに異なる色のインクをノズルから吐出する。印刷動作においては、4つのインクノズルユニット100の各々からインクを吐出することにより、例えば、用紙上に互いに色が異なる4ラインを印刷する。そして、用紙を搬送方向Aへ搬送し、再び4ラインを印刷する。
【0005】
なお、図10(a)に示す例では、用紙の搬送方向上流側から、Y(イエロ),C(シアン),M(マゼンタ),K(ブラック)のインクを吐出するインクノズルユニット100Y,100C,100M,100Kの順に配置されている。
【0006】
したがって、印刷と用紙の搬送とを繰り返すうちに、インクノズルユニット100Yにより最初に用紙上に印刷されたYのラインは、インクノズルユニット100Cの直下に位置することとなり、用紙においては、Yのラインに重なるように、Cのラインが印刷される。すなわち、Yのラインが印刷された後、所定間隔HDだけ用紙が搬送されると、同ラインにはCのラインが重ねて印刷され、さらに所定間隔HDだけ用紙が搬送されると、同ラインにはMのラインが重ねて印刷され、さらに所定間隔HDだけ用紙が搬送されると、同ラインにはKのラインが重ねて印刷される。これにより、用紙にはカラー画像が印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−168497号公報
【特許文献2】特開平8−281983号公報
【特許文献3】特開平11−147328号公報
【特許文献4】特開平11−198460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ラインプリンタは、メカのばらつきによる印刷品質の劣化が生じやすく、用紙上の同じ位置にインクを着弾させようとしても、着弾位置がずれてしまい色ずれが発生するという問題点があった。すなわち、用紙の搬送は、複数のローラおよび駆動を伝えるギヤによって行われる。この搬送系を構成するローラやギヤは、製造時の誤差、経時変動、環境変動などによりばらつきが発生する。ローラが真円からずれたり、ギヤの噛み合わせで振動が生じたりすると、用紙の搬送に蛇行が生じる。その結果、異なる色のインクを同じ位置に着弾させようとしても、位置がずれてしまうのである。
【0009】
図10(b)は、インクの着弾位置のばらつきが発生するメカニズムを模式的に示した図である。図面左には、各色のノズル形成部101の配置を図示し、図面右には、用紙の蛇行の様子をグラフ化して示す。なお、図面右のグラフは、用紙の蛇行の振幅を横軸にとり、用紙の搬送距離を縦軸にとって両者の関係を示している。また、図面右のグラフに示す丸印は、各搬送距離におけるインクの着弾位置102を示す。
【0010】
上述したように、Y、C、M、Kの順でラインを重ねて印刷する場合、まずYのインクを用紙に着弾させ、その後、用紙が所定間隔HD搬送されると、同位置にCのインクを着弾させ、次に用紙が所定間隔HD搬送されると、同位置にMのインクを着弾させ、次に用紙が所定間隔HD搬送されると、同位置にKのインクを着弾させる。すなわち、図10(b)の図面右のグラフにおいて、理想的には、Yのインク着弾位置102Y,Cのインク着弾位置102C,Mのインク着弾位置102M、Kのインク着弾位置102Kが、縦一列に並ぶことが望ましい。
【0011】
しかしながら、実際には、用紙は蛇行しながら搬送される。よって、各色のインクを用紙上の同じ一点に着弾させようとしても、実際には、図10(b)に示すように、各インクの着弾位置がばらつき、色ずれ発生の原因となるのである。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、インクの着弾位置のばらつきを抑制し、色ずれの発生を抑制できるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明のプリンタは、被記録媒体を第1方向に搬送するための駆動ローラと、前記第1方向に搬送される前記被記録媒体上にドットを形成するための複数のインクノズルユニットであって、前記各インクノズルユニットは、前記各インクノズルユニットの長手方向が前記第1方向と直交する第2方向に沿うように、配置されており、前記複数のインクノズルユニットのうちの隣り合う2つのインクノズルユニットは、所定の間隔だけ離れた位置に配置されている、前記複数のインクノズルユニットと、を備え、前記駆動ローラの外周の長さは、前記駆動ローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向に搬送される距離がほぼHD/aになるように、設定されており、前記HDは、前記所定の間隔を示し、前記aは、1以上の整数を示す。
【0014】
上記のプリンタによれば、被記録媒体が所定の間隔HDだけ搬送される毎に駆動ローラは、ほぼ同じ位相をとる。よって、あるインクノズルユニットによって形成されるドットと、被記録媒体が第1方向に所定の間隔HDだけ搬送されて、次のインクノズルユニットによって形成されるドットとは、駆動ローラの回転に伴って被記録媒体が蛇行したとしても、被記録媒体上のほぼ同じ位置に形成される。よって、インクの着弾位置のばらつきを抑制し、色ずれの発生を抑制できる。
【0015】
上記のプリンタにおいて、さらに、前記駆動ローラに従動する従動ローラを備え、前記従動ローラの外周の長さは、前記従動ローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向に搬送される距離がほぼHD/bになるように、設定されており、前記bは、1以上の整数を示すことが好ましい。こうすれば、従動ローラの回転に伴って被記録媒体が蛇行したとしても、複数のインクノズルユニットは被記録媒体上のほぼ同じ位置にドットを形成することができるため、インクの着弾位置のばらつきを抑制し、色ずれの発生を抑制できる。
【0016】
上記のプリンタにおいて、さらに、前記第1方向に搬送される前記被記録媒体に接触するピンチローラを備え、前記ピンチローラの外周の長さは、前記ピンチローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向へ搬送される距離がほぼHD/cになるように、設定されており、前記cは、1以上の整数を示すことが好ましい。こうすれば、ピンチローラの回転に伴って被記録媒体が蛇行するとしても、複数のインクノズルユニットは被記録媒体上のほぼ同じ位置にドットを形成することができるため、インクの着弾位置のばらつきを抑制し、色ずれの発生を抑制できる。
【0017】
上記のプリンタにおいて、さらに、前記駆動ローラによって駆動されて、前記被記録媒体を前記第1方向に搬送する無端ベルトと、前記無端ベルトに接触し、前記第1方向に搬送される前記被記録媒体には接触しない非接触ローラを備え、前記非接触ローラの外周の長さは、前記非接触ローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向へ搬送される距離がほぼHD/dになるように、設定されており、前記dは、1以上の整数を示すことが好ましい。こうすれば、非接触ローラの回転に伴って被記録媒体が蛇行するとしても、複数のインクノズルユニットは被記録媒体上のほぼ同じ位置にドットを形成することができるため、インクの着弾位置のばらつきを抑制し、色ずれの発生を抑制できる。
【0018】
上記のプリンタにおいて、さらに、前記駆動ローラによって駆動されて、前記被記録媒体を前記第1方向に搬送する無端ベルトを備え、前記無端ベルトの内周側に存在するローラの外周の長さは、前記無端ベルトの厚みを考慮した値に設定されており、前記無端ベルトの外周側に存在するローラの外周の長さは、前記無端ベルトの厚みに無関係な値に設定されていることが好ましい。
【0019】
上記のプリンタにおいて、前記aは、1から3のうちいずれかの整数であることが好ましい。こうすれば、aがより大きな整数である場合と比較して、ロバストな設計とすることができる。
【0020】
上記のプリンタにおいて、さらに、前記インクノズルユニットには、当該インクノズルユニットの長手方向に沿って並ぶ複数のノズルから構成されるノズル列が、複数列設けられ、前記インクノズルユニットの長手方向に直交する方向において前記インクノズルユニットの両端に位置するノズル間の距離をNDとする場合、前記駆動ローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向に搬送される距離がほぼND/fとなるように、前記駆動ローラの外周の長さが設定されており、前記fは、1以上の整数を示すことが好ましい。
【0021】
上記のプリンタによれば、インクノズルユニットの長手方向に直交する方向の両端に位置するノズル間における、インク着弾位置のばらつきが、被記録媒体の蛇行による影響を受けてより大きくなることを抑制できる。
【0022】
上記のプリンタにおいて、前記複数のインクノズルユニットのうち、M色のドットを形成するインクノズルユニットと、C色のドットを形成するインクノズルユニットとは、隣り合うように配置されていることが好ましい。
【0023】
上記のプリンタによれば、インク着弾位置のばらつきがより目立ちやすい色について、特に、インクの着弾位置のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態であるプリンタの部分断面図であり、(b)は、インクノズルユニットの下面図である。
【図2】ノズル形成部に形成されるノズルの配置を説明する図であり、横軸には、インクノズルユニットの長手方向における位置をとり、縦軸には搬送方向における位置をとって示す図である。
【図3】インクノズルユニットによる1ライン分のドット列形成の動作を説明する図である。
【図4】各ローラの一回転当たりの用紙の搬送量と、その一回転当たりの用紙の搬送量から導き出される各ローラの外周と直径との関係を示す表である。
【図5】(a)は、搬送機構の構成を模式的に示す図であり、(b)は、無端ベルトの内周側に配置されるローラの一回転当たりの用紙の搬送量と、外周側に配置されるローラの一回転当たりの用紙の搬送量とを比較して示す図である。
【図6】本実施形態のプリンタによって、インク着弾位置のばらつきが抑制されるメカニズムを説明する図である。
【図7】用紙の蛇行の周期と、インクの着弾位置のばらつきとの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図8】(a)は、理想的な取り付け角度で取り付けられたインクノズルユニットによって形成される1ライン分のドット列を説明する図であり、(b)は、理想的な取り付け角度から傾いて取り付けられたインクノズルユニットによって形成される1ライン分のドット列を説明する図である。
【図9】変形例のプリンタの搬送機構を模式的に示す図である。
【図10】(a)は、従来のカラーラインプリンタのインクノズルユニットを、インク吐出面側から見た図であり、(b)は、インクの着弾位置のばらつきが発生するメカニズムを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態であるプリンタ1の部分断面図である。プリンタ1は、インクジェット方式のラインプリンタである。
【0026】
プリンタ1には、給紙機構20、搬送機構30、記録機構40、排紙機構60が設けられている。給紙機構20には、複数枚の用紙P(被記録媒体の一例)を収納することが可能な給紙トレイ21と、給紙ローラ22とが設けられる。給紙ローラ22は、給紙トレイ21に積層して収納された複数の用紙Pのうち、最も上方にある用紙Pを後述する搬送機構30へ1枚ずつ送り出す。
【0027】
給紙機構20と搬送機構30との間には、用紙Pの搬送経路に沿って、送りローラ対23a,23bと送りローラ対24a,24bとが配置されている。給紙機構20から送り出された用紙Pは、送りローラ対23a,23b及び送りローラ対24a,24bによって案内されながら、搬送機構30へと送り出される。
【0028】
搬送機構30には、無端ベルト31と、駆動ローラ32と、従動ローラ33と、プラテン34と、上流側ピンチローラ35と、下流側ピンチローラ36と、クリーニングローラ37と、クリーニングピンチローラ38とが設けられる。無端ベルト31は、駆動ローラ32と従動ローラ33とに巻き掛けられている。駆動ローラ32は、用紙Pを搬送方向Aに搬送するためのローラであって、図示しない搬送モータが接続されており、この搬送モータからの回転力によって図1(a)中矢印B方向に回転する。そして、無端ベルト31は、駆動ローラ32によって駆動されて、用紙Pを搬送方向Aに搬送するように走行し、従動ローラ33も駆動ローラ32に従動して回転する。無端ベルト31の外周面31aは、シリコーン処理が施されており、粘着性を有している。
【0029】
プラテン34は、インクノズルユニット41Y、41C、41M,41K(以後、特に区別して説明する必要がない場合はインクノズルユニット41と示す)と対向する無端ベルト31の部分を無端ベルト31の内周面31b側から支持する。
【0030】
上流側ピンチローラ35は、従動ローラ33の上方に回転可能に設置され、下流側ピンチローラ36は、駆動ローラ32の上方に回転可能に設置される。上流側ピンチローラ35および下流側ピンチローラ36は、図示しないバネによって下方に付勢されて無端ベルト31の外周面31aと接触し、無端ベルト31の走行に伴って回転する。また、用紙Pが搬送されてきた場合、上流側ピンチローラ35および下流側ピンチローラ36は、それぞれ用紙Pに接触することにより、搬送方向Aへ搬送される用紙Pを無端ベルト31との間に挟んで回転する。
【0031】
クリーニングローラ37は、無端ベルト31の外周面31aに接触して回転することにより、無端ベルト31の外周面31aに付着したゴミなどを除去する。クリーニングピンチローラ38は、無端ベルト31の内周面31bに接触し、クリーニングローラ37との間で無端ベルト31を挟むように配置されている。クリーニングローラ37およびクリーニングピンチローラ38は、無端ベルト31に接触するが、無端ベルト31によって搬送方向Aに搬送される用紙Pには接触しない位置に配置される。
【0032】
この構成において、給紙機構20から搬送機構30へと送り出された用紙Pは、無端ベルト31の外周面31aに粘着保持され、無端ベルト31の走行に伴って、記録機構40のインクノズルユニット41と対向する領域に搬送される。
【0033】
記録機構40について説明する。記録機構40には、搬送方向Aに搬送される用紙Pにドットを形成するためのインクノズルユニット41と、フレーム43とが設けられる。図1(a)に示すように、インクノズルユニット41は、搬送方向Aの上流側から、Y,C,M,Kのインクを吐出するインクノズルユニット41Y、41C、41M、41Kの順に、搬送方向Aに沿って所定間隔毎に配置され、フレーム43に支持される。各インクノズルユニット41は、4つのインクカートリッジ44から供給されるインクをそれぞれ吐出する。各インクノズルユニット41は、吐出面41aと無端ベルト31の外周面31aとの間にわずかな間隙をあけて配置されている。
【0034】
無端ベルト31によって搬送された用紙Pは、インクノズルユニット41と無端ベルト31との間隙を通過する。その際に、吐出面41aに形成された複数のノズルから用紙Pの上面である印刷面に向けてインクが吐出され、用紙Pに所望のカラー画像が形成される。
【0035】
排紙機構60は、搬送機構30から用紙Pが搬送される湾曲した一対のガイド61a、61bと、一対のガイド61a,61bよりも搬送方向下流側に配置された排紙ローラ対62a、62bと、送りローラ対62a、62bよりも搬送方向下流側で排紙口64に近接して配置された排紙ローラ対63a,63bとを有している。
【0036】
搬送機構30によって搬送方向Aに搬送されてきた用紙Pは、図示しない剥離部材によって外周面31aから剥離された後、排紙機構60に搬送される。そして、一対のガイド61a,61b間に搬送されてきた用紙Pが、送りローラ対62a,62b及び送りローラ対63a,63bによって、上方に搬送され、排紙口64を通して排出される。
【0037】
図1(b)は、インクノズルユニット41の下面図である。なお、以下の説明においては、用紙Pの印刷面において、搬送方向Aと直交する方向をC方向とする。図1(b)に示すように、各インクノズルユニット41は、その長手方向がC方向に沿うように配置される。インクノズルユニット41の長手方向とC方向とは平行であることが望ましいが、インクノズルユニット41の長手方向とC方向とが所定の範囲内(例えば±1°の範囲内)の角度を有していてもよい。ただし、本第1実施形態においては、各インクノズルユニット41は、その長手方向がC方向と平行に配置されている場合を想定している。
【0038】
インクノズルユニット41には、それぞれ8つのノズル形成部42が吐出面41aに形成されている。台形状の各ノズル形成部42の上底と下底とは、インクノズルユニット41の長手方向に平行であり、隣接するノズル形成部42の斜辺42b同士は、インクノズルユニット41の長手方向に直交する方向に関して互いに重なり合っている。
【0039】
図2は、ノズル形成部42に形成されるノズル42nの配置を説明する図であり、横軸には、インクノズルユニット41の長手方向における位置をとり、縦軸には搬送方向Aにおける位置をとる。図2に示すように、複数個のノズル42nは、インクノズルユニット41の長手方向(図2左右方向)に沿って並び、ノズル列42aを構成する。また、各ノズル形成部42には複数列のノズル列42aが形成される。なお、インクノズルユニット41において、1つのインクノズルユニット41に形成される複数のノズル42nは、長手方向位置が互いに異なるように配置されている。例えば、インクノズルユニット41の長手方向位置「100mm」には、1つのインクノズルユニット41につき、1つのノズル42nのみが形成される。
【0040】
図2に示すように、プリンタ1においては、複数のインクノズルユニット41は、ユニット間距離HD毎に配置される。第1実施形態のプリンタ1は、ユニット間距離HDに基づいて、搬送機構30を構成する各ローラの外周の長さを決定しているが、詳細は図4を参照して後述する。また、図2には、端ノズル間距離NDを示している。図2に示すように、端ノズル間距離NDは、1つのインクノズルユニット41において、インクノズルユニット41の長手方向に直交する方向の両端に位置するノズル間の距離である。端ノズル間距離NDについては、第2実施形態のプリンタ1を説明する際に詳細に説明する。
【0041】
図3は、インクノズルユニット41による1ライン分のドット列形成の動作を説明する図である。ただし、図3においては、図面を分かりやすくするために、各ノズル42nの大きさ及び相対的な位置関係を正確には図示していない。
【0042】
プリンタ1における印刷動作時、インクノズルユニット41は、多数のノズル列42aのうち、まず、搬送方向Aの最上流側にあるノズル列42a1からインクを吐出して、用紙P上にドットを形成した後、用紙Pをわずかに搬送し、次に、搬送方向Aにおいてノズル列42a1の次に配置されたノズル列42a2のノズル42nからインクを吐出して、用紙P上に先に形成されたドットの間に、さらにドットを形成した後、さらに、用紙Pをわずかに搬送する。そして、ノズル列42a2の次のノズル列42a3からインクを吐出し、用紙Pを搬送するという動作を繰り返すことにより、1つのインクノズルユニット41で、C方向を長手方向とする1ライン分のドット列70を形成する。
【0043】
そして、用紙Pに形成されたドット列70が、用紙Pが搬送されることによって、次のインクノズルユニット41の下方まで搬送されてくると、次のインクノズルユニット41は、用紙P上に既に形成されたドット列70に重ねて、新たなドット列70を形成する。したがって、プリンタ1においては、各インクノズルユニット41から吐出されるインクが用紙Pの同一位置に着弾する場合(すなわち、ドットが重なる場合)には、色ずれの発生が抑制される。一方、各インクノズルユニット41から吐出されるインクの着弾位置がばらつくと色ずれを発生させる。
【0044】
本第1実施形態のプリンタ1は、搬送機構30のローラの外周の長さをユニット間距離HDに基づく値に設定することにより、用紙Pの蛇行によるインク着弾位置のばらつきを抑制し、色ずれの発生を抑制できるように構成されている。
【0045】
図4は、搬送機構30に設けられる各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量と、その一回転当たりの用紙の搬送量から導き出される各ローラ32,33,35〜38の外周と直径との関係を示す表である。なお、図4に示す表において、HDは、ユニット間距離HDを示す。また,a,b,c,c,d,dは、それぞれ1以上の整数を示す。Δは無端ベルト31(図1(a))の厚みを示す。
【0046】
図4に示す「一回転当たりの用紙の搬送量」とは、各ローラ32,33,35〜38が一回転する間に無端ベルト31の外周面31aが移動する距離、換言すれば、各ローラ32,33,35〜38が一回転する間に、用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離を意味している。すなわち、駆動ローラ32は、駆動ローラ32が一回転したときに用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離がほぼHD/aになるように設定される。従動ローラ33は、従動ローラ33が一回転したときに用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離がほぼHD/bになるように設定される。上流側ピンチローラ35は、上流側ピンチローラ35が一回転したときに用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離がほぼHD/cになるように設定される。下流側ピンチローラ36は、下流側ピンチローラ36が一回転したときに用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離がほぼHD/cになるように設定される。クリーニングローラ37は、クリーニングローラ37が一回転したときに用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離がほぼHD/dになるように設定される。クリーニングピンチローラ38は、クリーニングピンチローラ38が一回転したときに用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離がほぼHD/dになるように設定される。
【0047】
換言すれば、プリンタ1においては、駆動ローラ32,従動ローラ33,上流側ピンチローラ35,下流側ピンチローラ36,クリーニングローラ37,クリーニングピンチローラ38が、それぞれa,b,c,c,d,d回転すると、用紙PがHDだけ搬送される。
【0048】
プリンタ1において、各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量をこのように設定することにより、用紙Pの蛇行に起因するインクの着弾位置のばらつきを抑制できるのであるが、そのメカニズムについては、図6を参照して後述する。
【0049】
また、図4に示す「ローラ外周(ローラ外周の長さ)」および「ローラ直径」は、各ローラ32,33,35〜38の「一回転当たりの用紙の搬送量」から導き出される値である。本実施形態においては、無端ベルト31の外周側に存在するローラについては、その外周の長さおよび直径が、無端ベルト31の厚みΔに無関係な値に設定される。図5を参照して詳細を説明する。一方、無端ベルト31の内周側に存在するローラについては、その外周の長さおよび直径が、無端ベルト31の厚みΔを考慮した値に設定される。なお、ローラ外周,ローラ直径の誤差の範囲は、±0.1%の範囲であることが好ましく、±0.05%の範囲であることがより好ましい。
【0050】
図5(a)は、搬送機構30の構成を模式的に示す図である。図5(a)に示すように、プリンタ1の搬送機構30においては、上流側ピンチローラ35、下流側ピンチローラ36、クリーニングローラ37は無端ベルト31の外周側に存在する。一方、駆動ローラ32、従動ローラ33、クリーニングピンチローラ38は無端ベルト31の内周側に存在する。
【0051】
図5(b)は、無端ベルト31の外周側に存在するローラについての一回転当たりの用紙の搬送量(2πr)と、無端ベルト31の内周側に存在するローラの一回転当たりの用紙の搬送量(2π(r+Δ))とを比較して示す図である。前述の一回転当たりの用紙の搬送量は、ローラが一回転する間に無端ベルト31の外周面31aが移動する距離と等しい。このため、無端ベルト31の外周面31aに接して回転するローラの場合、当該ローラの外周(2πr)と一回転当たりの用紙の搬送量とは等しい。よって、一回転当たりの用紙の搬送量とローラの半径rとは下記(1)式の関係を満たす。
一回転当たりの用紙の搬送量=2πr ・・・(1)
一方、無端ベルト31の内周面31bに接して回転するローラの場合、無端ベルト31の厚みΔのために、一回転当たりの用紙の搬送量は、ローラの外周の長さよりも大きくなる。すなわち、一回転当たりの用紙の搬送量とローラの半径rとは、下記(2)式の関係を満たす。
一回転当たりの用紙の搬送量=2π(r+Δ) ・・・(2)
本実施形態においては、無端ベルト31の外周側に存在するローラおよび内周側に存在するローラの各々について、上記(1)式と(2)式とを使い分けることにより、各ローラについて、適切な外周の長さおよび直径を設定することができる。
【0052】
図4に戻り説明する。無端ベルト31の外周側に存在するローラ(ローラ35,36,37)については、「一回転当たりの用紙の搬送量」と上記(1)式からローラの半径rが算出される。そして、このようにして算出されたローラの半径rに基づくローラの外周の長さと、ローラ直径とを図4の表に示す。一方、無端ベルト31の内周側に存在するローラ(ローラ32,33,38)については、「一回転当たりの用紙の搬送量」と上記(2)式からローラの半径rが算出される。そして、このようにして算出されたローラの半径rに基づくローラの外周の長さと、ローラ直径とを図4の表に示す。プリンタ1の各ローラ32,33,35〜38は、それぞれ、図4に示される外周の長さとローラ直径とを目標の寸法として製造される。
【0053】
図6を参照して、プリンタ1においてインク着弾位置のばらつきが抑制されるメカニズムを説明する。図6の図面左には、各色のノズル形成部42の配置を図示し、図面右には、用紙Pの蛇行の様子をグラフ化して示す。なお、図面右のグラフは、インクノズルユニット41の長手方向(C方向)における用紙Pの蛇行位置をとり、縦軸には搬送方向Aにおける用紙Pの搬送距離をとっている。また、図面右のグラフは、HD=82[mm]、a=2、b=2、c=5、c=5、d=1、d=4、Δ=0.1[mm]として各ローラ32,33,35〜38を設計する場合において、用紙Pが無端ベルト31上を搬送される間に、用紙P上のある一点が描く軌跡を示している。また、図面右のグラフ上の丸印は、インクの着弾位置76を示す。
【0054】
図6のグラフに示すように、プリンタ1において、無端ベルト31により搬送される用紙Pは蛇行する。ここで、プリンタ1において、ユニット間距離HDは、各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量の整数倍である。すなわち、無端ベルト31に当接する各ローラ32,33,35〜38の周期の整数倍である。よって、ユニット間距離HDは、各ローラ32,33,35〜38の回転によって生じる用紙Pの蛇行の周期の整数倍となる。
【0055】
すなわち、プリンタ1によれば、用紙Pがユニット間距離HDを搬送される間に、駆動ローラ32はほぼa回転し、従動ローラ33はほぼb回転し、上流側ピンチローラ35はほぼc回転し、下流側ピンチローラ36はほぼc回転し、クリーニングローラ37はほぼd回転し、クリーニングピンチローラ38はほぼd回転する。すなわち、用紙Pがユニット間距離HDだけ搬送される毎に各ローラ32,33,35〜38は、ほぼ同じ位相をとる。換言すれば、用紙Pの蛇行は、ユニット間距離HD毎に位相が揃うような波形を示す。よって、あるインクノズルユニット41によって形成されるドットと、用紙Pが搬送方向Aにユニット間距離HDだけ搬送されて、次のインクノズルユニット41によって形成されるドットとは、用紙Pが蛇行したとしても、用紙P上のほぼ同じ位置に形成される。よって、インクの着弾位置のばらつきを抑制し、色ずれの発生を抑制できる。
【0056】
ここで、上記a,b,c,c,d,dの各値を大きくするほど、各ローラ32,33,35〜38の直径を小さく設計でき、プリンタ1の小型化を図ることができる。一方、上記a,b,c,c,d,dの各値を小さくするほど、ロバストな設計とすることができる。上記a,b,c,c,d,dの各値とロバスト性との関係について図7を参照して説明する。
【0057】
図7は、用紙Pの蛇行の周期と、インクの着弾位置のばらつきとの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。図7のグラフにおいて、用紙Pの蛇行の周期を横軸にとり、インクの着弾位置のばらつきの平均値を縦軸にとっている。また、図7のグラフを作成するために、ユニット間距離HDが82mmであるものとし、用紙Pの蛇行の周期を変化させてシミュレーションを実施した。
【0058】
例えば、搬送系の各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量を41mm(82mm/2)とする場合、用紙Pの蛇行の周期を41mmとすることができる(図7において点Dとして示す)。この場合のシミュレーション結果は、図7に示すように、インクの着弾位置のばらつきの平均値は0となる。同様に、各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量を約27.3mm(82mm/3)とする場合、用紙Pの蛇行の周期を27.3mmとすることができる(図7において点Eとして示す)。この場合のシミュレーション結果も、図7に示すように、インクの着弾位置のばらつきの平均値は0となる。すなわち、図6を参照して説明したように、ユニット間距離HDを整数で除した値を、各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量とすることにより、インクの着弾位置のばらつきを抑制できる。
【0059】
ここで、各ローラ32,33,35〜38は、通常、製造誤差を有する。このため、製造誤差によって、用紙Pの蛇行の周期が目標値からずれるおそれがある。また、図示は省略しているが、駆動力をローラに伝達するためのギヤの噛み合わせが影響して、用紙Pの蛇行の周期が目標値からずれるおそれがある。
【0060】
図7の点Fは、用紙Pの蛇行の周期が、41mm+αとなる場合を示す。また、図7の点Gは、用紙Pの蛇行の周期が、27.3mm+αとなる場合を示す。図7から明らかなように、用紙Pの蛇行の周期が41mm+αとなった場合(点Fの場合)の方が、27.3mm+αとなった場合(点Gの場合)よりもインク着弾位置のばらつきの平均値が小さい。すなわち両者は共に、用紙Pの蛇行の周期が目標値からαだけずれた例であるが、用紙Pの蛇行の周期が大きい点Fの方が、インク着弾位置のばらつきは抑えられ、ロバスト性が良いことが分かる。
【0061】
このように、ロバスト性を得るためには、用紙Pの蛇行の周期は大きい方が有利である。すなわち、a,b,c,c,d,dが小さい方が有利である。一方で、装置の小型化を図る上では、a,b,c,c,d,dが大きい方が有利である。ここで、a,b,c,c,d,dは、1から3のいずれかの整数であることが好ましい。このようにすれば、装置の大型化を抑制しつつ、ロバストな設計とすることができる。また、用紙Pの搬送に係るローラやギヤの設計公差を比較的大きくとることができるので、プリンタ1の製造コストを低減できる。
【0062】
なお、図7の点F,点Gに示すように、用紙Pの蛇行の周期が、理想的な周期からずれる場合、その蛇行のずれは、搬送方向Aの距離が大きくなるほど累積して大きくなる。その結果、搬送方向Aにおける2つのインクノズルユニット41間の距離が大きくなるほど、インク着弾位置のばらつきに起因する色ずれが発生しやすくなる。よって、本実施形態のプリンタ1においては、図1を参照して説明したように、M色のドットを形成するインクノズルユニット41MとC色のドットを形成するインクノズルユニット41Mとは、隣り合うように配置されている。このようにすれば、インク着弾位置のばらつきがより目立ちやすい2つの色(すなわち、M色およびC色)について、特に、インクの着弾位置のばらつき及び色ずれを抑制できる。
【0063】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態のプリンタ1のうち、第1実施形態のプリンタ1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
上記第1実施形態のプリンタ1において、各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量は、ユニット間距離HDに相関する値であった。これに対し、第2実施形態のプリンタ1において、各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量は、ユニット間距離HDだけではなく端ノズル間距離NDにも相関する値である。
【0065】
なお、第2実施形態のプリンタ1において、ユニット間距離HDと、端ノズル間距離ND(図2参照)とは、HD/m=ND/nの関係を満足する(ただし、m>n,mは2以上の整数、nは1以上の整数)。そして、第2実施形態のプリンタ1において、各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量は、それぞれ以下のように決定される。
駆動ローラ32の一回転当たりの用紙の搬送量 =HD/a=ND/f
従動ローラ33の一回転当たりの用紙の搬送量 =HD/b=ND/g
上流側ピンチローラ35の一回転当たりの用紙の搬送量 =HD/c=ND/h
下流側ピンチローラ36の一回転当たりの用紙の搬送量 =HD/c=ND/h
クリーニングローラ37の一回転当たりの用紙の搬送量 =HD/d=ND/i
クリーニングピンチローラ38の一回転当たりの用紙の搬送量=HD/d=ND/i
ただし、a,b,c,c,d,dは、2以上の整数であり、f,g,h,h,i,iは、1以上の整数である。
また、a>f,b>g,c>h,c>h,d>i,d>iの関係を満たす。
【0066】
すなわち、駆動ローラ32については、(a,f)=(2,1),(3,1),(3,2),(4,1)・・・等を取り得る。ただし、ユニット間距離HDと端ノズル間距離NDとが、例えば、HD:ND=3:1に設定される場合(すなわち、m=3,n=1の場合)には、(a,f)=(3,1),(6,2)・・・等を取り得る。同様に、例えば、HD:ND=3:2に設定される場合(すなわち、m=3,n=2の場合)には、(a,f)=(3,2),(6,4)・・・等を取り得る。なお、(b,g)、(c,h)、(c,h)、(d,i)、(d,i)についても同様に、ユニット間距離HDと端ノズル間距離NDとの比に応じた整数の組を取り得る。
【0067】
第2実施形態のプリンタ1においては、上記の「一回転当たりの用紙の搬送量」が得られるように各ローラ32,33,35〜38の外周の長さおよび直径が設定される。なお、外周の長さおよび直径の算出方法は、上記第1実施形態で説明した算出方法と同じであるため、説明を省略する。そして、第2実施形態のプリンタ1によれば、さらに、インクノズルユニット41の取り付け時の誤差に起因するインク着弾位置のばらつきを抑制できる。図8を参照してそのメカニズムを説明する。
【0068】
図8(a)は、インクノズルユニット41が理想的な取り付け角度で取り付けられた場合に形成される1ライン分のドット列70を説明する図である。「理想的な取り付け角度で取り付けられる」場合とは、インクノズルユニット41の長手方向XがC方向と完全に平行に、すなわち、用紙Pの印刷面に平行な面において、インクノズルユニット41の長手方向Xが搬送方向Aに対してなす角度θが90°となる取り付け角度で取り付けられることを意味している。
【0069】
なお、以下の説明では、インクノズルユニット41の長手方向Xに直交する方向をY方向と定義する。また、インクノズルユニット41には、実際には多数のノズル列42aが形成されているが、図面を分かりやすくするために、図8においては、1つのインクノズルユニット41において、Y方向の一端に位置するノズル列42a1、Y方向の他端に位置するノズル列42a3、ノズル列42a1とノズル列42a3との中間に位置するノズル列42a2のみを図示している。
【0070】
図8(a)に示すように、インクノズルユニット41が理想的な取り付け角度で取り付けられる場合、インクは所定の間隔x毎に着弾する。すなわち、Y方向一端のノズル列42a1により形成されるドットの位置を基準位置(0)とする場合、ノズル列42a2により形成されるドットは、基準位置からxだけ離れた位置に形成され、Y方向他端のノズル列42a3により形成されるドットは、基準位置から2xだけ離れた位置に形成される。
【0071】
しかしながら、取り付け作業時の誤差により、インクノズルユニット41が理想的な取り付け角度から傾いて、フレーム43に取り付けられる場合がある。すなわち、用紙Pの印刷面に平行な面において、インクノズルユニット41の長手方向Xが搬送方向Aに対してなす角度θが90°をなさない場合がある。
【0072】
図8(b)は、理想的な取り付け角度から傾いて取り付けられたインクノズルユニット41によって形成される1ライン分のドット列70を説明する図である。図8(b)に示すように、インクノズルユニット41が理想的な取り付け角度から傾いて取り付けられる場合、インク着弾位置のばらつきは、Y方向両端のノズル間において最も問題となりやすい。なお、図8(b)では、説明の便宜上、インクノズルユニット41は、かなり傾いた状態で示されている。
【0073】
すなわち、Y方向一端のノズル列42a1により形成されるドットの位置を基準位置(0)とする場合、ノズル列42a2により形成されるドットは、理想的には基準位置からxだけ離れた位置に形成されるべきであるのにも関わらずx’だけ離れた位置に形成される。また、ノズル列42a3により形成されるドットは、理想的には基準位置から2xだけ離れた位置に形成されるべきにも関わらず基準位置から2x’だけ離れた位置に形成される。
【0074】
したがって、Y方向一端のノズル列42a1により形成されるドットの位置を基準位置(0)とする場合、ノズル列42a2により形成されるドットの理想位置からのずれ量は、(x’−x)である。同様に、Y方向他端のノズル列42a3により形成されるドットの理想位置からのずれ量は、2(x’−x)である。すなわち、Y方向一端のノズル列42a1により形成されるドットの位置を基準位置として、各ノズル列42aによって形成されるドットの位置をずれ量を求めると、Y方向他端のノズル列42a3により形成されるドットにおいて、最もずれ量が大きくなる。
【0075】
上述したように第2実施形態のプリンタ1においては、各ローラ32,33,35〜38の一回転当たりの用紙の搬送量は、端ノズル間距離NDにも相関する値として設定されている。
【0076】
例えば、駆動ローラ32が一回転したときに用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離がほぼND/fとなるように、駆動ローラ32の外周の長さが設定されている。すなわち、用紙Pが搬送方向Aに端ノズル間距離NDだけ搬送される間に、駆動ローラ32はほぼf回転する。同様に、用紙Pが搬送方向Aに端ノズル間距離NDだけ搬送される間に、従動ローラ33はほぼg回転し、上流側ピンチローラ35はほぼh回転し、下流側ピンチローラ36はほぼh回転し、クリーニングローラ37はほぼi回転し、クリーニングピンチローラ38はほぼi回転する。
【0077】
その結果、第2実施形態のプリンタ1において、Y方向一端のノズル列42a1によりドットが形成されるときの用紙Pの蛇行の位相は、Y方向他端のノズル列42a3によりドットが形成されるときの用紙Pの蛇行の位相にほぼ等しい。よって、インクノズルユニット41のY方向両端に位置するノズル間における、インク着弾位置のばらつきが、用紙Pの蛇行による影響を受けてより大きくなることを抑制できる。
【0078】
なお、上記実施形態において、搬送方向Aが第1方向の一例に相当し、C方向が第2方向の一例に相当する。また、クリーニングローラ37およびクリーニングピンチローラ38がそれぞれ非接触ローラの一例に相当する。
【0079】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0080】
例えば、上記実施形態では、無端ベルト31により用紙Pが搬送されるものとして説明したが、無端ベルト31を有しないプリンタにも本発明を適用することができる。
【0081】
図9は、変形例のプリンタの搬送機構90を模式的に示す図である。図9に示すように、変形例のプリンタの搬送機構90には、インクノズルユニット92の下方において用紙Pを搬送する複数個の駆動ローラ94が設けられている。この場合も、駆動ローラ94の外周の長さが、駆動ローラ94が一回転したときに用紙Pが搬送方向Aに搬送される距離がほぼHD/aになるように設定することにより、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0082】
また、上記実施形態においては、搬送機構30を構成する主なローラ32,33,35〜38について、ユニット間距離HDまたは端ノズル間距離NDに基づく外周の長さを設定するものとして説明した。しかしながら、用紙Pの蛇行の周期に影響を与える他のローラ(例えば用紙Pを無端ベルト31に静電吸着するための帯電ローラや無端ベルト31にテンションをかけるためのテンションローラなど)が搬送機構30に設けられている場合、当該ローラについても、ユニット間距離HDまたは端ノズル間距離NDに基づく外周の長さを設定しても良い。
【0083】
また、上記実施形態においては、搬送機構30を構成する主なローラ32,33,35〜38について、ユニット間距離HDまたは端ノズル間距離NDに基づく外周の長さを設定するものとして説明した。しかしながら、用紙Pの蛇行の周期に大きな影響を与えるローラ(例えば駆動ローラ32)のみについて、ユニット間距離HDまたは端ノズル間距離NDに基づく外周の長さを設定しても良い。
【0084】
また、上記実施形態において、プリンタ1は、4色のインクノズルユニット41を備えているものとして説明したが、2色,3色,5色以上の数のインクノズルユニットを用意しても良い。
【0085】
また、上記実施形態のプリンタ1においては、インクノズルユニット41に複数列のノズル列42aが設けられていたが、各インクノズルユニットに、1列ずつノズル列が設けられているプリンタについても、本発明を適用可能である。
【0086】
また、上記実施形態のプリンタ1においては、インクノズルユニット41には、台形状のノズル形成部42毎にノズル42nが設けられていたが、台形状のノズル形成部42を備えず、単に、インクノズルユニットの長手方向に沿ったノズル列が、各インクノズルユニットに複数列、設けられている構成のプリンタについても、本発明を適用可能である。例えば、インクノズルユニットの長手方向を長辺方向とする長方形型のノズル形成部が、各インクノズルユニットに1ずつ設けられ、そのノズル形成部内に複数列のノズル列が設けられているプリンタについても、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0087】
1 プリンタ
31 無端ベルト
32 駆動ローラ
33 従動ローラ
35 上流側ピンチローラ
36 下流側ピンチローラ
37 クリーニングローラ
38 クリーニングピンチローラ
41 インクノズルユニット
42a ノズル列
42n ノズル
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタであって、
被記録媒体を第1方向に搬送するための駆動ローラと、
前記第1方向に搬送される前記被記録媒体上にドットを形成するための複数のインクノズルユニットであって、前記各インクノズルユニットは、前記各インクノズルユニットの長手方向が前記第1方向と直交する第2方向に沿うように、配置されており、前記複数のインクノズルユニットのうちの隣り合う2つのインクノズルユニットは、所定の間隔だけ離れた位置に配置されている、前記複数のインクノズルユニットと、
を備え、
前記駆動ローラの外周の長さは、前記駆動ローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向に搬送される距離がほぼHD/aになるように、設定されており、
前記HDは、前記所定の間隔を示し、前記aは、1以上の整数を示す、プリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のプリンタであって、さらに、
前記駆動ローラに従動する従動ローラを備え、
前記従動ローラの外周の長さは、前記従動ローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向に搬送される距離がほぼHD/bになるように、設定されており、
前記bは、1以上の整数を示す、プリンタ。
【請求項3】
請求項1または2記載のプリンタであって、さらに、
前記第1方向に搬送される前記被記録媒体に接触するピンチローラを備え、
前記ピンチローラの外周の長さは、前記ピンチローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向へ搬送される距離がほぼHD/cになるように、設定されており、
前記cは、1以上の整数を示す、プリンタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプリンタであって、さらに、
前記駆動ローラによって駆動されて、前記被記録媒体を前記第1方向に搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルトに接触し、前記第1方向に搬送される前記被記録媒体には接触しない非接触ローラを備え、
前記非接触ローラの外周の長さは、前記非接触ローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向へ搬送される距離がほぼHD/dになるように、設定されており、
前記dは、1以上の整数を示す、プリンタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のプリンタであって、さらに、
前記駆動ローラによって駆動されて、前記被記録媒体を前記第1方向に搬送する無端ベルトを備え、
前記無端ベルトの内周側に存在するローラの外周の長さは、前記無端ベルトの厚みを考慮した値に設定されており、前記無端ベルトの外周側に存在するローラの外周の長さは、前記無端ベルトの厚みに無関係な値に設定されている、プリンタ。
【請求項6】
前記aは、1から3のうちいずれかの整数である請求項1から5のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のプリンタであって、さらに、
前記インクノズルユニットには、当該インクノズルユニットの長手方向に沿って並ぶ複数のノズルから構成されるノズル列が、複数列設けられ、
前記インクノズルユニットの長手方向に直交する方向において前記インクノズルユニットの両端に位置するノズル間の距離をNDとする場合、
前記駆動ローラが一回転したときに前記被記録媒体が前記第1方向に搬送される距離がほぼND/fとなるように、前記駆動ローラの外周の長さが設定されており、
前記fは、1以上の整数を示すプリンタ。
【請求項8】
前記複数のインクノズルユニットのうち、M色のドットを形成するインクノズルユニットと、C色のドットを形成するインクノズルユニットとは、隣り合うように配置されている、請求項1から7のいずれかに記載のプリンタ。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−30523(P2012−30523A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172955(P2010−172955)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】