説明

プリント回路基板(PCB)用の強化基材、及びその作成方法

【課題】 プリント回路基板内での導電性陽極フィラメント(CAF)の成長を防止すること。
【解決手段】 プリント回路基板を作成するための強化基材は、ガラス繊維基材に塗布されたシラン・カップリング剤と混合するシラン組成物の疎水性シラン被覆を含む。シラン・カップリング剤は、基材をワニス被覆に結合させるために基材の表面に塗布される。シラン・カップリング剤を基材の表面に塗布すると、表面シラノールが生成し、これが導電性陽極フィラメント(CAF)の成長に関与する。表面シラノールと反応するシラン組成物を、シラン・カップリング剤を塗布された基材の表面に塗布して疎水性シラン被覆を形成する。疎水性シラン被覆/基材によって与えられる表面は疎水性であり、基本的にシラノールを有しない。次にこの表面を乾燥させ、それにワニスを塗布する。次に、基材、疎水性シラン被覆及びワニスを硬化条件下に置いてPCBを確定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、プリント回路基板(PCB)の作成に用いるための被覆ガラス繊維基材に関する。より具体的には、本発明は、ガラス繊維基材に塗布されたシラン・カップリング剤と混合するシラン組成物の疎水性シラン被覆を含む強化基材によって、PCB内での導電性陽極フィラメント(CAF)の成長を防止することに関する。
【背景技術】
【0002】
カップリング剤の背後にある基本的なコンセプトは、2つの異質な表面を接合することである。プリント回路基板(PCB)の場合、シラン・カップリング剤を用いてワニス被覆(例えば、エポキシ・ベースの樹脂)を基材(例えば、ガラス繊維布)に接合して積層体、又は積層構造体を確定することが多い。シラン・カップリング剤は、典型的にはワニス被覆に結合する有機官能基及び基材の表面に結合する加水分解性基から構成される。具体的には、ケイ素上のアルコキシ基が、水の添加又は基材表面上の残留水により加水分解してシラノールになる。次いで、シラノールが基材表面上のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合(Si−O−Si)を形成して水を排除する。
【0003】
エポキシをベースとする積層体の特定の場合、多くの基準に基づく望ましい性能を示すことが見出されている有機官能基はビニルベンジルアミノエチルアミノプロピル及びベンジルアミノエチルアミノプロピルである。この有機官能基を含んだシラン・カップリング剤は、伝統的なエポキシ・ベースの樹脂、例えば、周知のFR4エポキシ樹脂のエポキシド官能基と、アミノ基の2級窒素を介して共有結合すると考えられる。おびただしい数のシラン・カップリング剤が存在するが、エポキシ・ベースの樹脂を結合するための主力工業製品は、これまでのところビニルベンジルアミノエチルアミノプロピル−トリメトキシシラン(Dow Corning Z−6032として市販されている)であった。
【0004】
PCB業界は、最近伝統的なFR4エポキシ・ベースの樹脂から離れている(無鉛要件及びスズ銀銅合金に関わる高いハンダ付け温度のために)。従って、現在のワニス被覆は通常、もはやFR4エポキシを含まず、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂又はポリフェニレンオキシド/トリアリルイソシアヌレート(PPO/TAIC)相互貫入網であることが多い。典型的には、当初伝統的なFR4エポキシ樹脂用に開発されたビニルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランが、依然としてガラス繊維布基材を積層ワニスに接合又は結合するのに用いられている。しかし、他のシラン・カップリング剤を高温PCBの作成に使用することが提案されている。例えば、Gelorme他による2010年1月26日出願の「プリント回路基板用のシラン・カップリング剤(SILANE COUPLING AGENTS FOR PRINTED CIRCUIT BOARDS)」と題する米国特許出願第12/694,005号は、Gelorme他による2009年2月24日出願の「プリント回路基板用のシラン・カップリング剤(SILANE COUPLING AGENTS FOR PRINTED CIRCUIT BOARDS)」と題する米国特許出願第12/391,500号の一部継続出願であり、ジアリルプロピルイソシアヌレートトリメトキシシランを含む、そのようなカップリング剤を開示している。
【0005】
PCBが遭遇する1つの問題は、導電性陽極フィラメント(CAF)であり、これは回路の陽極から生じ、表面下で陰極に向かって、多くの場合分離したガラス繊維/ワニス被覆の界面に沿って「成長する」銅溶解から生じる。PCBを用いる場合、陽極/陰極対は通常、めっきされたスルーホールである。CAF形成は、多くの信頼性の問題を引き起こし、PCBの破局的故障を生じる可能があり、場合によっては発火を生じさせる可能性がある。ワニスと基材との間の接合は、ワニス/基材界面における水の存在と同様にCAFの重要な因子であることが分かる。
【0006】
一般に、PCBにおいて、銅の源、電気的バイアス、ガラス繊維、及び水分が存在する場所には、CAFを形成する可能性が存在する。通常、CAFは、ガラス繊維がワニスから剥離して水拡散の経路が生成される界面で生じる。この経路が一般にCAF形成に関連する理由は、ガラス繊維上の表面シラノールの露出のためである。シラノールはガラス繊維の表面上に必ず存在するので、CAF形成の経路が必ず存在する。この経路は、剥離が起らなくても生じる。さらに、CAFは、ガラス繊維の表面に吸着されて前から存在する水(即ち、水はガラス繊維の処理中に付着する可能性がある)から起こり得る。
【0007】
表面シラノールは、上述のように、ガラス繊維の表面には常に存在する。これらの表面シラノールは、ビニルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン又はジアリルプロピルイソシアヌレート−トリメトキシシランのようなシラン・カップリング剤がガラス布基材を積層ワニスに結合又は接合するのに用いられるときに反応する。上述のように、シラン・カップリング剤のケイ素上のアルコキシ基は、水の添加により、又は基材の表面上の残留水により加水分解してシラノールになる。次いで、シラノールが基材表面上のヒドロキシ基と反応してシロキサン結合(Si−O−Si)を形成して水を排除する。不都合なことに、シラン・カップリング剤上の残留アルコキシ基が加水分解してより多くのシラノールを生成する。従って、より多くの表面シラノールがシラン・カップリング剤によって生成される。
【0008】
例えば、ジアリルプロピルイソシアヌレートトリメトキシシランがシラン・カップリング剤として用いられるとき、トリアルコキシシランが付いたプロピル基は疎水性(樹脂/ガラス界面への水の侵入を抑制してCAF耐性を向上させる)ではあるが、それにも関わらず表面シラノールが生成される。これらの表面シラノールは依然として水拡散のための親水性経路をもたらし、これがCAF形成を引き起こす。
【0009】
CAFを防止するための従来の解決法では、通常、n−オクチルトリメトキシシラン及び3−メタクリルオキシプロピルトリメチルシランなどの表面修飾剤の添加を用いるが、これらのシランの添加はCO反応器を必要とし、これは大量生産には通常危険な高圧で稼働する。さらに、このプロセスで用いられるシランがシラノールを生成し、これが水拡散のための親水性経路をもたらし、これが結局CAF形成を引き起こす。このプロセスはCAF形成の可能性を減らすが、それにも関わらず、表面修飾剤として用いられるシランによりCAFが不可避的に生じる。
【0010】
被覆繊維ストランドを用いてCAFを防止するための他の従来の解決法が、Dana他による、2002年5月16日発行の「電子基材内の導電性陽極フィラメント形成を抑制するためのガラス繊維被覆(GLASS FIBER COATING FOR INHIBITING CONDUCTIVE ANODIC FILAMENT FORMATION IN ELECTRONIC SUPPORTS)」と題する特許文献1に説明されている。例えば、上記の特許文献1の要約には、ガラス繊維表面上での樹脂適合性被覆組成物の使用法が記載されており、この樹脂適合性被覆組成物は、(a)金属イオンに対する高親和性を有するシリケートを含んだ複数のばらばらの粒子と、(b)少なくとも1つの膜形成材料とを含む。上記の特許文献1に開示されているように、銅吸着性物質を含んだ粒子がポリマー被覆に埋め込まれる。従って、この解決法は、粒子を含んだポリマー被覆により銅の移動を防止しようとするものである。しかし、この解決法はガラス繊維/樹脂界面における水分にはなんら対処していない。この側面を処理しなければ、CAFの経路は依然として存在する。さらに、ポリマー被覆に埋め込まれた粒子は、決してガラス繊維と密着しないので、これらの粒子は銅の移動を効果的に最小にすることにはならない。さらに、銅吸着性物質が銅で飽和してもはや銅吸着性物質として機能しなくなるまでに吸着される銅の量は有限である。この飽和点に達すると、CAF形成の別の経路がさらに生じることになる。
【0011】
上記の特許文献1に開示された別の解決法においては、樹脂適合性被覆組成物中の粒子を疎水性ポリマー材料から形成して被覆ストランドによる水分吸収を減らすか又は制限することもできる。これらの粒子は、第1のサイズ組成物(シラン・カップリング剤)の第1の層の上に塗布された第2の層の中に含まれる。第2の層の中の粒子を疎水性ポリマー材料から形成することができても、それにも関わらず表面シラノールは下層の第1の層によって生成される。これらの表面シラノールは依然として水拡散の親水性経路をもたらし、CAF形成を引き起こす。
【0012】
さらに、上記の特許文献1に開示された解決法は幾つかの他の問題、例えば、厚いこと(数ミクロン)、ガラス繊維とは異なる熱膨張を示すこと、剥離が起る別の界面を作ること、ガラス布製造を大幅に変更すること、並びに、樹脂適合性被覆を調製するためだけに多数の材料が必要となる点で費用がかかり且つ複雑になることなどの問題を抱えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0058140A1号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Gerald L. Witucki、「シラン・プライマ:アルコキシシランの化学及び応用(A Silane Primer: Chemistry and Applications of Alkoxy Silanes)」、Journal of Coating Technology、1993年7月、65巻822号、57−60頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、プリント回路基板(PCB)内の導電性陽極フィラメント(CAF)の成長を防止するための強化機構に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の好ましい実施形態により、プリント回路基板(PCB)を作成するための強化された基材は、ガラス繊維基材に塗布されたシラン・カップリング剤と混合するシラン組成物の疎水性シラン被覆を含む。シラン・カップリング剤を基材表面に塗布して基材をワニス被覆に結合する。シラン・カップリング剤を基材表面に塗布すると、表面シラノールが生成し、これが導電性陽極フィラメント(CAF)の成長に関与する。表面シラノールと反応するシラン組成物を、シラン・カップリング剤を塗布された基材の表面に塗布して疎水性シラン被覆を形成する。疎水性シラン被覆/基材によって与えられる表面は疎水性であり、基本的にシラノールを有しない。次いでこの表面を乾燥させ、それにワニスを塗布する。次に、基材、疎水性シラン被覆及びワニスを硬化条件下に置いてPCBを確定する。
【0017】
これから、本発明の好ましい例示的な実施形態を、類似の記号が類似の要素を示す添付の図面に関連して説明することになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施形態による、導電性陽極フィラメント(CAF)形成を防止するための疎水性シラン被覆が、ワニス被覆と、シラン・カップリング剤によって修飾された表面を有するガラス繊維基材との間に設けられた、プリント回路基板(PCB)の一部分を示すブロック図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態により作成されるプリント回路基板(PCB)内の導電性陽極フィラメント(CAF)形成を防止する疎水性シラン被覆を形成するための、気相堆積によってシラン組成物を塗布する方法を示すフロー図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態により作成されるプリント回路基板(PCB)内の導電性陽極フィラメント(CAF)形成を防止する疎水性シラン被覆を形成するための、シラン/炭化水素溶媒溶液への浸漬によってシラン組成物を塗布する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施形態により、プリント回路基板(PCB)を作成するための強化基材は、ガラス繊維基材に塗布されたシラン・カップリング剤と混合するシラン組成物の疎水性シラン被覆を含む。シラン・カップリング剤を基材の表面に塗布して基材をワニス被覆に結合する。シラン・カップリング剤を基材表面に塗布すると、表面シラノールが生成し、これが導電性陽極フィラメント(CAF)の成長に関与する。表面シラノールと反応するシラン組成物を、シラン・カップリング剤を塗布された基材の表面に塗布して疎水性シラン被覆を形成する。疎水性シラン被覆/基材によって与えられる表面は疎水性であり、基本的にシラノールを有しない。次いでこの表面を乾燥させ、それにワニスを塗布する。次に、基材、疎水性シラン被覆及びワニスを硬化条件下に置いてPCBを確定する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態により、シラン組成物がガラス繊維基材の表面(先にシラン・カップリング剤が塗布された)に塗布されて疎水性シラン被覆が形成され、これは両方のシランを含む混合層である。即ち、本発明の好ましい実施形態によるシラン組成物は、シラン・カップリング剤の添加後に塗布される。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態による、導電性陽極フィラメント(CAF)形成を防止するための疎水性シラン被覆130が、ワニス被覆140とシラン・カップリング剤で表面が修飾されたガラス繊維基材110との間に設けられたプリント回路基板(PCB)100の一部分を示すブロック図である。疎水性シラン被覆130は、シラン組成物及びシラン・カップリング剤の両方を含む混合層である。
【0022】
基材110は従来のものであり、ガラス繊維を含む任意の適切な基材とすることができる。例えば、基材110はガラス織布とすることができる。
【0023】
ワニス被覆140は従来のものであり、任意の適切な有機又は無機表面被覆とすることができる。例えば、ワニス被覆140は、FR4エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、又はポリフェニレンオキシド/トリアリル−イソシアヌレート(PPO/TAIC)相互貫入網とすることができる。
【0024】
シラン・カップリング剤は従来のものであり、任意の適切なシラン・カップリング剤とすることができる。シラン・カップリング剤は、典型的には、ワニス被覆140に結合する有機官能基、及び基材110の表面に結合する加水分解性基で構成される。例えば、シラン・カップリング剤は、ビニルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン又はジアリルプロピルイソシアヌレート−トリメトキシシランとすることができる。典型的にはシラン・カップリング剤は単分子層厚である。
【0025】
本発明の好ましい実施形態により、疎水性シラン被覆130は両方のシランを含んだ混合層であり、疎水性(撥水性)である。従って、疎水性シラン被覆130の上に置かれた水滴は大きい接触角(即ち、少なくとも90°)を示すことになる。疎水性シラン被覆130は単分子層厚であることが好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態により、疎水性シラン被覆130を形成するのに用いられるシラン組成物は、一般構造式R−S−R(2−4)を有するシランを含み、ここで、Rはアルコール、水及び/又は表面シラノールと反応する官能基であり、R、R及びRは、それぞれ疎水性且つ非反応性の(即ち、R、R及びRのそれぞれは、Rが反応するアルコール、水及び/又は表面シラノールと反応しない)官能基である。本発明の好ましい実施形態によるシラン組成物の適切なシランの例としては(非限定的に)、クロロトリメチルシラン(即ち、(CHSiCl、トリメチルシリルクロライド又はTMSClとしても知られている)、ヘキサメチルジシラザン(即ち、[(CHSi]NH、HMDS又はHMDZとしても知られている)、ペルフルオロオクチル−1H,1H,2H,2H−ジメチルクロロシラン(即ち、C1010ClF13Si)、及び(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチル−クロロシラン(即ち、C10ClFSi)、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態により、疎水性シラン被覆を生成するのに用いられるシランは、基材の表面上に吸着された水と反応するので、ガラス繊維処理中に蓄積した全ての吸着水を脱水する。ひとたびガラス表面が脱水されると、次にこれらのシランが表面シラノールと反応して疎水性表面を生成する。この疎水性表面が、プリント回路基板内のワニス被覆(プリント回路基板を作成するプロセスにおいて後に塗布される)とガラス繊維との間の界面への水の拡散を防止することになる。プリント回路基板内でワニス被覆とガラス繊維の間の剥離が起る場合でも、普通は親水性のガラス繊維が疎水性となるので、最も一般的にCAF形成に関連する経路を排除する。
【0028】
本発明の好ましい実施形態により、CAF形成を防止するシラン(即ち、シラン組成物中のシラン)は、シラン・カップリング剤を塗布した後で添加することができる。CAF形成を防止するこれらのシランの添加は、一実施形態において(以下で説明する図2に示す)、ガラス繊維の表面上の気相堆積によって達成することができ、これは有利なことに溶媒を使用する必要性をなくすことができる。
【0029】
代替的に、別の実施形態(以下で説明する図3に示す)において、適切な炭化水素溶媒又は他の適切な無水溶媒中での簡単な湿式化学を用いて(典型的にはいずれの付加的な触媒も必要とせずに)ガラス繊維をシランで表面修飾してCAF形成を防止することができる。これにより、プロセスを多数の既存のガラス繊維修飾プロセスに合わせて調整することができる。適切な炭化水素溶媒の例としては(非限定的に)、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、キシレン、シクロヘキサン、及びトルエン、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0030】
ひとたびガラス繊維がシランで処理されてCAF形成が防止されると、繊維処理中に吸着水の蓄積は起らなくなる。ワニス被覆(プリント回路基板を作成するプロセスにおいて後で塗布される)の熱膨張による剥離が起っても、ガラス繊維は疎水性のままであるのでCAF形成の経路を防止することになる。CAF形成を防止するためのシランの添加は、残留シラノール(このような残留シラノールは従来の手法に付随する)を少しも残さない。
【0031】
図2は、本発明の好ましい実施形態により作成されるプリント回路基板(PCB)内の導電性陽極フィラメント(CAF)形成を防止する疎水性シラン被覆を形成するための、シラン組成物を気相堆積によって塗布する方法200を示すフロー図である。方法200において、以下で説明するステップ(ステップ210−260)が実行される。これらのステップをそれらの好ましい順序で説明する。しかし、種々のステップは、互いに対して図示したのとは異なる時に行うことができ、又は同時に行うことができることを理解されたい。さらに当業者であれば、1つ又は複数のステップを省略することができることを認識するであろう。
【0032】
方法200は、ガラス繊維を含んだ基材を洗浄することで開始する(ステップ210)。基材は従来のものであり、ガラス繊維を含んだ任意の適切な基材とすることができる。例えば、基材はガラス織布とすることができる。基材は任意の適切な従来の洗浄プロセス、例えば、以下で説明するガラス織布を洗浄するための業界標準プロセスを用いて洗浄される。
【0033】
ガラス繊維は、通常、ガラス織工業者においてボビンに巻かれた状態で受け取られ、典型的にはガラス・フィラメントの約1.5重量%存在するサイズ剤を含む。サイズ剤はでんぷん及びオイルをベースとする配合物であり、製織プロセス中に織布に強度を付与する静電気防止剤及びスリップ剤として機能する。機械方向に織られるガラス・フィラメントに1重量%のPVAを含めて整経プロセス中に付加的な機械的強度を付与することができる。製織の後、織布は以下の業界標準プロセスによって洗浄される。
1)織布がマンドレルの上に巻き付けられて500℃を越える温度に数時間置かれる(当業者には、織布が琥珀色となるので「カラメル化」として知られるプロセス)。
2)次にマンドレルが200℃を越える温度に数日間置かれる(コアの中心の温度を織布表面の温度と平衡させるために)。
3)織布を一晩かけて周囲温度まで冷却させる。
【0034】
方法200は、続いてシラン・カップリング剤による基材表面の修飾に進む(ステップ220)。シラン・カップリング剤は従来のものであり、任意の適切なシラン・カップリング剤とすることができる。例えば、シラン・カップリング剤は、ビニルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン又はジアリルプロピルイソシアヌレート−トリメトキシシランとすることができる。シラン・カップリング剤は、任意の適切な従来の表面処理プロセスを用いて基材の表面に塗布される。
【0035】
ステップ210及び220は、表面がシラン・カップリング剤で既に修飾されている従来のガラス繊維基材を入手できる場合には省略することができる。そのような表面修飾されたガラス繊維基材はガラス織工業者から市販されている。これらのガラス織工業者が用いる表面修飾プロセスは、ガラス織工業者が所有権を有すると見なされる要素を含む可能性がある。
【0036】
従来の表面修飾プロセスの典型的なプロセス・パラメータは、ガラス布のぬれ性を高めると共に発泡を防止するためのシラン浴(即ち、通常、ガラス織布はシラン浴に浸される)への界面活性剤の添加を含む。シラン浴中のシラン・カップリング剤の濃度は、例えば、1重量%ほどにも高くすることができるが、通常は遥かに低い。シラン浴は通常酸性(pH3−5)にしてシランの自己縮合を防ぐ。
【0037】
1つの例示的な従来の表面修飾プロセスにおいては、ガラス布を0.1%乃至0.5%のシラン・カップリング剤/水溶液(又は水−エタノール溶液)に浸し、次いで空気乾燥させることができる。次に、ガラス布を乾燥機内に110−120℃で5−10分間置いて基材の表面上のシラン・カップリング剤を硬化させることができる。
【0038】
別の従来の表面修飾プロセスにおいては、基材の表面をシラン・カップリング剤でシリル化するのにアルコール溶液が用いられる。適切なアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)中の2%シラン溶液を調製することができる。この溶液で基材の表面を拭き、浸し、又は噴霧することができる。基材を溶液中に浸す場合、シランを基材の表面に移動させるのに十分な浸漬時間(例えば、1又は2分)が必要となり得る。次に基材を乾燥させる(例えば、空気乾燥)。基材表面が乾燥した後、余分な材料を穏やかに拭き取るか又はアルコールで素早くすすぎ落とすことができる。次に、シラン・カップリング剤の層を、基材表面上で、5−10分間110℃で又は24時間室温で硬化させることができる。
【0039】
方法200は、次ぎにシラン組成物の気相添加の準備のための基材表面(即ち、処理済みガラス布)の乾燥(ステップ230)に進むことができる。例えば、処理済みガラス布を110−120℃で5−10分間乾燥させることができる。しかし、ステップ230は、シラン・カップリング剤を基材表面上で硬化させるときの、上記のステップ220の一部分として少なくとも部分的に実施することができる。
【0040】
ひとたびガラス繊維がシラン・カップリング剤で処理されると、大部分の表面シラノールが残る。これは表面を親水性(水親和性)のままにし、CAF形成の機会を大きくする可能性が高い。
【0041】
従来技術においては、緩やかな硬化サイクル(110℃/15分間)がシラノール基を遊離形態のままにするであろうことが認識された。例えば、Gerald L. Wituckiによる非特許文献1を参照されたい。しかし、従来技術では、これらの表面シラノールは有利である(CAF形成に関する潜在的破壊的経路としてではなく)と間違って分類されたが、その理由は、シラノールが次の上塗りと結合して相互貫入ポリマー網(IPN)を形成することができ、改善された付着力をもたらすからである。
【0042】
本発明によるシラン組成物で表面を処理することにより、残留表面シラノールがそれと反応して除去されることになる。また、本発明によるシラン組成物で表面シラノールを処理することにより、表面は極めて疎水性(撥水性)となる。本発明によるシラン組成物の使用は、表面シラノールを除去するばかりでなく、ガラス繊維の表面に吸着したあらゆる水と反応して除去し、CAF形成の別の経路を防止する。
【0043】
方法200は、次ぎに本発明によるシラン組成物の気相中に基材(即ち、処理及び乾燥済みガラス布)を配置するステップに進む(ステップ240)。気相堆積技術を用いて、本発明によるシラン組成物でガラス繊維の表面を修飾するために、基材を、シラン組成物の蒸気圧を増加させるチャンバを通過させるか又はその中に配置する必要がある。そのような気相堆積技術は当業者には周知である。
【0044】
本発明によるシラン組成物は、一般構造式R−S−R(2−4)を有するシランを含み、ここで、Rはアルコール、水及び/又は表面シラノールと反応する官能基であり、R、R及びRは、それぞれ疎水性且つ非反応性の(即ち、R、R及びRは、それぞれ、Rが反応するアルコール、水及び/又は表面シラノールと反応しない)官能基である。本発明の好ましい実施形態によるシラン組成物の適切なシランの例としては(非限定的に)、クロロトリメチルシラン(即ち、(CHSiCl、トリメチルシリルクロライド又はTMSClとしても知られている)、ヘキサメチルジシラザン(即ち、[(CHSi]NH、HMDS又はHMDZとしても知られている)、ペルフルオロオクチル−1H,1H,2H,2H−ジメチルクロロシラン(即ち、C1010ClF13Si)、及び(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチル−クロロシラン(即ち、C10ClFSi)、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0045】
蒸気圧は、0.1乃至1000mmHg、好ましくは0.5乃至500mmHg、最も好ましくは2乃至7mmHgの範囲とすることができる。以下の実施例は、説明のためのものであり、非限定的なものである。この(非限定的な)実施例において、シラン蒸気は、シラン又はシラン/炭化水素溶媒溶液(シランと混合した炭化水素溶媒の分圧の寄与を利用する)を被覆するべき表面の下方の貯留器内に配置することによって生成される。貯留器を加熱して蒸気圧を発生させる。シランが低い蒸気圧を有する場合、チャンバを真空引きしてシランの蒸気濃度を増加させることができる。基材は、被覆される際、通常、25℃乃至150℃、好ましくは35℃乃至125℃、最も好ましくは45℃乃至90℃の高温に維持される。基材をシラン組成物の蒸気相に曝す継続時間は、所望の最終的シラン表面被覆率に応じて、例えば、0.1乃至1440分、好ましくは0.5乃至180分、最も好ましくは2乃至30分の範囲とすることができる。疎水性シラン被覆は単分子層厚であることが好ましい。当業者であれば、しかし、望ましい最終的な表面被覆率は特定の用途に応じて変わることを認識するであろう。また、シラン組成物の蒸気相に触媒(例えば、アミン)を加えて反応速度を増大させることが好ましい場合があり、これにより蒸気相への基材の露出時間を減らすことが可能になる。
【0046】
ひとたびチャンバから取り出されると、被覆基材(即ち、疎水性シラン被覆/基材)は、当業者には既知の任意の適切な従来の方法を用いて乾燥される(ステップ250)。例えば、被覆基材は110−120℃で5−10分間乾燥させることができる。被覆基材の表面は疎水性であるので、その上のあらゆる残留水はステップ250において容易且つ完全に除去される。
【0047】
被覆基材(即ち、疎水性シラン被覆/基材)は、次に従来のPCB製造技術を用いてさらに処理することができる(ステップ260)。例えば、従来のワニス(例えば、FR4エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、ポリフェニレンオキシド/トリアリル−イソシアヌレート(PPO/TAIC)相互貫入網など)を、当業者には既知の任意の適切な従来の方法を用いて、被覆基材に塗布することができる。その後、積層体を硬化条件下に置く、例えば、当技術分野で既知のように、真空下で加熱し、それにより架橋層が生じ、これがガラス繊維に共有結合して積層体又は積層PCBを確定する。被覆基材の疎水性表面は、積層PCB内のワニス被覆とガラス繊維との間の界面への水の拡散を防止する。PCB内のワニス被覆とガラス繊維の間の剥離が起きる場合にも、普通は親水性のガラス繊維が疎水性となるので、最も一般的にCAF形成に関連する経路を排除する。
【0048】
図3は、本発明の好ましい実施形態により作成されるプリント回路基板(PCB)内の導電性陽極フィラメント(CAF)形成を防止する疎水性シラン被覆を形成するためのシラン組成物を、シラン/炭化水素溶媒溶液中への浸漬によって塗布する方法300を示すフロー図である。方法300において、以下で説明するステップ(ステップ310−350)が実行される。これらのステップをそれらの好ましい順序で説明する。しかし、種々のステップは、互に対して図示したのとは異なる時に行うことができ、又は同時に行うことができることを理解されたい。さらに当業者であれば、1つ又は複数のステップを省略することができることを認識するであろう。
【0049】
方法300は、ガラス繊維を含んだ基材を洗浄することで開始する(ステップ310)。基材は従来のものであり、ガラス繊維を含んだ任意の適切な基材とすることができる。例えば、基材はガラス織布とすることができる。基材は任意の適切な従来の洗浄プロセス、例えば、以下で説明するガラス織布を洗浄するための業界標準プロセスを用いて洗浄される。
【0050】
ガラス繊維は、通常、ガラス織工業者においてボビンに巻かれた状態で受け取られ、典型的にはガラス・フィラメントの約1.5重量%存在するサイズ剤を含む。サイズ剤はでんぷん及びオイルをベースとする配合物であり、製織プロセス中に織布に強度を付与する静電気防止剤及びスリップ剤として機能する。機械方向に織られるガラス・フィラメントに1重量%のPVAを含めて整経プロセス中に付加的な機械的強度を付与することができる。製織の後、織布は以下の業界標準プロセスによって洗浄される。
1)織布がマンドレルの上に巻き付けられて500℃を越える温度に数時間置かれる(当業者には、織布が琥珀色となるので「カラメル化」として知られるプロセス)。
2)次にマンドレルが200℃を越える温度に数日間置かれる(コアの中心の温度を織布表面の温度と平衡させるために)。
3)織布を一晩かけて周囲温度まで冷却させる。
【0051】
方法300は、続いてシラン・カップリング剤による基材表面の修飾に進む(ステップ320)。シラン・カップリング剤は従来のものであり、任意の適切なシラン・カップリング剤とすることができる。例えば、シラン・カップリング剤はビニルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン又はジアリルプロピルイソシアヌレート−トリメトキシシランとすることができる。シラン・カップリング剤は、任意の適切な従来の表面処理プロセスを用いて基材の表面に塗布される。
【0052】
ステップ310及び320は、表面がシラン・カップリング剤で既に修飾されている従来のガラス繊維基材を入手できる場合には省略することができる。そのような表面修飾されたガラス繊維基材はガラス織工業者から市販されている。これらのガラス織工業者が用いる表面修飾プロセスは、ガラス織工業者が所有権を有すると見なされる要素を含む可能性がある。
【0053】
従来の表面修飾プロセスの典型的なプロセス・パラメータは、ガラス布のぬれ性を高めると共に発泡を防止するためのシラン浴(即ち、通常、ガラス織布はシラン浴に浸される)への界面活性剤の添加を含む。シラン浴中のシラン・カップリング剤の濃度は、例えば、1重量%ほどにも高くすることができるが、通常は遥かに低い。シラン浴は通常酸性(pH3−5)にしてシランの自己縮合を防ぐ。
【0054】
1つの例示的な従来の表面修飾プロセスにおいては、ガラス布を0.1%乃至0.5%のシラン・カップリング剤/水溶液(又は水−エタノール溶液)に浸し、次いで空気乾燥させることができる。次に、ガラス布を乾燥機内に110−120℃で5−10分間置いて基材の表面上のシラン・カップリング剤を硬化させることができる。
【0055】
別の従来の表面修飾プロセスにおいては、基材の表面をシラン・カップリング剤でシリル化するのにアルコール溶液が用いられる。適切なアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)中の2%シラン溶液を調製することができる。この溶液で基材の表面を拭き、浸し、又は噴霧することができる。基材を溶液中に浸す場合、シランを基材の表面に移動させるのに十分な浸漬時間(例えば、1又は2分)が必要となり得る。次に基材を乾燥させる(例えば、空気乾燥)。基材表面が乾燥した後、余分な材料を穏やかに拭き取るか又はアルコールで素早くすすぎ落とすことができる。次に、シラン・カップリング剤の層を、基材表面上で、5−10分間110℃で又は24時間室温で硬化させることができる。
【0056】
ひとたびガラス繊維がシラン・カップリング剤で処理されると、大部分の表面シラノールが残る。これは表面を親水性(水親和性)のままにし、CAF形成の機会を大きくする可能性が高い。
【0057】
従来技術においては、緩やかな硬化サイクル(110℃/15分間)がシラノール基を遊離形態のままにするであろうことが認識された。例えば、Gerald L. Wituckiによる非特許文献1を参照されたい。しかし、従来技術では、これらの表面シラノールは有利である(CAF形成に関する潜在的破滅的経路としてではなく)と間違って分類されたが、その理由は、シラノールが次の上塗りと結合して相互貫入ポリマー網(IPN)を形成することができ、改善された付着力をもたらすからである。
【0058】
本発明によるシラン組成物で表面を処理することにより、残留表面シラノールがそれと反応して除去されることになる。また、本発明によるシラン組成物で表面シラノールを処理することにより、表面は極めて疎水性(撥水性)となる。本発明によるシラン組成物の使用は、表面シラノールを除去するばかりでなく、ガラス繊維の表面に吸着したあらゆる水と反応して除去し、CAF形成の別の経路を防止する。
【0059】
方法300は、次に本発明によるシラン組成物及び適切な炭化水素溶媒の溶液を含むシラン表面修飾浴中に基材(即ち、処理済みガラス布)を配置するステップに進む(ステップ330)。ステップ330は当技術分野で既知の手段、例えば浸漬被覆プロセスによって実施することができる。
【0060】
本発明によるシラン組成物は、一般構造式R−S−R(2−4)を有するシランを含み、ここで、Rはアルコール、水及び/又は表面シラノールと反応する官能基であり、R、R及びRは、それぞれ疎水性且つ非反応性の(即ち、R、R及びRは、それぞれ、Rが反応するアルコール、水及び/又は表面シラノールと反応しない)官能基である。本発明の好ましい実施形態によるシラン組成物の適切なシランの例としては(非限定的に)、クロロトリメチルシラン(即ち、(CHSiCl、トリメチルシリルクロライド又はTMSClとしても知られている)、ヘキサメチルジシラザン(即ち、[(CHSi]NH、HMDS又はHMDZとしても知られている)、ペルフルオロオクチル−1H,1H,2H,2H−ジメチルクロロシラン(即ち、C1010ClF13Si)、及び(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチル−クロロシラン(即ち、C10ClFSi)、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0061】
適切な炭化水素溶媒の例としては(非限定的に)、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、キシレン、シクロヘキサン、及びトルエン、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0062】
シランの濃度は、0.01乃至100%(vol)、好ましくは0.05乃至10%(vol)、最も好ましくは0.1乃至3%(vol)とすることができる。基材をシラン表面修飾浴に曝す継続時間は、所望の最終的シラン表面被覆率に応じて、例えば、0.1乃至1440分、好ましくは0.5乃至180分、最も好ましくは2乃至30分とすることができる。疎水性シラン被覆は単分子層厚であることが好ましい。しかし、当業者であれば、望ましい最終的シラン表面被覆率は特定の用途に応じて変化することになることを認識するであろう。
【0063】
ひとたびシラン浴から取り出されると、被覆基材(即ち、疎水性シラン被覆/基材)は、当業者には既知の任意の適切な従来の方法を用いて乾燥される(ステップ340)。例えば、被覆基材は110−120℃で5−10分間乾燥させることができる。被覆基材の表面は疎水性であるので、その上のあらゆる残留水はステップ340において容易且つ完全に除去される。
【0064】
被覆基材(即ち、疎水性シラン被覆/基材)は、次に従来のPCB製造技術を用いてさらに処理することができる(ステップ350)。例えば、従来のワニス(例えば、FR4エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、ポリフェニレンオキシド/トリアリル−イソシアヌレート(PPO/TAIC)相互貫入網など)を、当業者には既知の任意の適切な従来の方法を用いて、被覆基材に塗布することができる。その後、積層体を硬化条件下に置く、例えば、当技術分野で既知のように、真空下で加熱し、それにより架橋層が生じ、これがガラス繊維に共有結合して積層体又は積層PCBを確定する。被覆基材の疎水性表面は、積層PCB内のワニス被覆とガラス繊維の間の界面への水の拡散を防止する。PCB内のワニス被覆とガラス繊維の間の剥離が起きる場合にも、普通は親水性のガラス繊維が疎水性となるので、最も一般的にCAF形成に関連する経路を排除する。
【0065】
当業者であれば、本発明の範囲内の多くの変形物が可能であることを認識するであろう。従って、本発明をその好ましい実施形態に関して具体的に示し説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、形態及び細部においてこれら及び他の修正を施すことができることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0066】
100:プリント回路基板(PCB)
110:ガラス繊維基材
130:疎水性シラン被覆
140:ワニス被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板(PCB)用の強化基材であって、
ガラス繊維を含む基材と、
前記基材に塗布されたシラン・カップリング剤と混合するシラン組成物の疎水性シラン被覆と
を含み、
前記疎水性シラン被覆/基材は、疎水性であり基本的にシラノールを有しない表面を与える、
強化基材。
【請求項2】
前記基材は、ガラス繊維織布のシートを含む、請求項1に記載の強化基材。
【請求項3】
前記疎水性シラン被覆は、前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面にシラン組成物を塗布することによって形成され、
前記シラン組成物は、一般構造R−S−R(2,3,4)を有するシランを含み、
前記構造中、Rは、前記基材の前記表面に前記シラン・カップリング剤が塗布されるときに生成される1つ又は複数の表面シラノールと反応する官能基であり、
前記構造中、R、R及びRの各々は、疎水性であり、且つ前記1つ又は複数の表面シラノールと反応しない官能基である、
請求項1又は請求項2に記載の強化基材。
【請求項4】
前記疎水性シラン被覆は、前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面にシラン組成物を塗布することによって形成され、
前記シラン組成物は、クロロトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ペルフルオロオクチル−1H,1H,2H,2H−ジメチルクロロシラン、及び(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチル−クロロシラン、並びにこれらの組合せからなる群から選択されるシランを含む、
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の強化基材。
【請求項5】
前記疎水性シラン被覆は単分子層厚である、前記請求項のいずれかに記載の強化基材。
【請求項6】
前記疎水性シラン被覆/基材によって与えられる表面上にワニス被覆をさらに含み、
前記シラン・カップリング剤が前記ワニス被覆を前記基材に結合させる、
前記請求項のいずれかに記載の強化基材。
【請求項7】
前記請求項のいずれかに記載の強化基材の少なくとも1つを含んだプリント回路基板(PCB)。
【請求項8】
プリント回路基板用の強化基材を作成する方法であって、
ガラス繊維を含む基材を準備するステップと、
前記基材の表面にシラン・カップリング剤を塗布するステップであって、前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面は1つ又は複数の表面シラノールを含む、前記シラン・カップリング剤を塗布するステップと、
前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面にシラン組成物を塗布するステップであって、前記シラン組成物と前記シラン・カップリング剤の混合層を含んだ疎水性シラン被覆を形成し、前記シラン組成物は前記1つ又は複数の表面シラノールと反応し、前記疎水性シラン被覆/基材は、疎水性で基本的にシラノールを有しない表面を与える、前記シラン組成物を塗布するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記基材は、ガラス繊維織布のシートを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シラン組成物は、一般構造R−S−R(2,3,4)を有するシランを含み、
前記構造中、Rは、アルコール、水及び/又は前記1つ若しくは複数の表面シラノールと反応する官能基であり、
前記構造中、R、R及びRの各々は、疎水性であり、且つR1が反応する前記アルコール、水及び/又は前記1つ若しくは複数の表面シラノールと反応しない官能基である、
請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記シラン組成物は、クロロトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ペルフルオロオクチル−1H,1H,2H,2H−ジメチルクロロシラン、及び(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチル−クロロシラン、並びにこれらの組合せからなる群から選択されるシランを含む、
請求項8、請求項9、又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記疎水性シラン被覆は単分子層厚である、請求項8乃至請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記シラン組成物を前記塗布するステップは、
前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面を乾燥させるステップと、
前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面を乾燥させるステップの後に、前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材を、前記シラン組成物の蒸気相中に配置して、気相堆積により前記疎水性シラン被覆を形成するステップと、
前記基材を前記シラン組成物の蒸気相中に前記配置するステップの後に、前記疎水性シラン被覆/基材によって与えられる前記表面を乾燥させるステップと、
を含む、請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記シラン組成物を前記塗布するステップは、
前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材を、前記シラン組成物及び炭化水素溶媒の溶液内に配置するステップと、
前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材を、前記シラン組成物の炭化水素溶媒中の溶液内に前記配置するステップの後に、前記疎水性シラン被覆/基材によって与えられる前記表面を乾燥させるステップと
を含む、請求項8乃至請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
プリント回路基板(PCB)を作成する方法であって、
ガラス繊維を含む基材を準備するステップと、
前記基材の表面にシラン・カップリング剤を塗布するステップであって、前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面は1つ又は複数の表面シラノールを含む、前記シラン・カップリング剤を塗布するステップと、
前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面にシラン組成物を塗布するステップであって、前記シラン組成物と前記シラン・カップリング剤の混合層を含んだ疎水性シラン被覆を形成し、前記シラン組成物は前記1つ又は複数の表面シラノールと反応し、前記疎水性シラン被覆/基材は、疎水性で基本的にシラノールを有しない表面を与える、前記シラン組成物を塗布するステップと、
前記シラン組成物を塗布するステップの後で、前記疎水性シラン被覆/基材によって与えられる前記表面を乾燥させるステップと、
前記乾燥させるステップの後で、前記疎水性シラン被覆/基材によって与えられる前記表面の上にワニスを塗布するステップであって、前記シラン・カップリング剤が前記ワニス被覆を前記基材に結合する、前記ワニスを塗布するステップと、
前記基材、前記疎水性シラン被覆及び前記ワニスを硬化条件下に置いてPCBを確定するステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記基材は、ガラス繊維織布のシートを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シラン組成物は、一般構造R−S−R(2−4)を有するシランを含み、
前記構造中、Rは、アルコール、水及び/又は前記1つ若しくは複数の表面シラノールと反応する官能基であり、
前記構造中、R、R及びRの各々は、疎水性であり、且つR1が反応する前記アルコール、水及び/又は前記1つ若しくは複数の表面シラノールと反応しない官能基である、
請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シラン組成物は、クロロトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ペルフルオロオクチル−1H,1H,2H,2H−ジメチルクロロシラン、及び(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチル−クロロシラン、並びにこれらの組合せからなる群から選択されるシランを含む、
請求項15、請求項16、又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疎水性シラン被覆は単分子層厚である、請求項15乃至請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記シラン組成物を前記塗布するステップは、
前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面を乾燥させるステップと、
前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材の前記表面を前記乾燥させるステップの後で、前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材を、前記シラン組成物の蒸気相中に配置して、気相堆積により前記疎水性シラン被覆を形成するステップと、
を含む、請求項15乃至請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記シラン組成物を前記塗布するステップは、前記シラン・カップリング剤が塗布された前記基材を、前記シラン組成物及び炭化水素溶媒の溶液中に配置するステップを含む、請求項15乃至請求項20のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521637(P2013−521637A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555377(P2012−555377)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052886
【国際公開番号】WO2011/107418
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】