説明

プリント基板の製造方法及びプリント基板

【課題】例えば70μm以上の厚銅回路パターンを形成する際に、高い電流密度を用いることなく、したがって膜厚分布を揃えることができるプリント基板の製造方法及びプリント基板を提供する。
【解決手段】板状の支持体に銅薄膜2を形成し、銅薄膜の表面に第1のレジストを形成し、銅薄膜2の表面に銅めっきして内側銅回路5を形成し、第1のレジストを除去し、内側銅回路5を覆うように銅薄膜2の表面に絶縁基材7を積層し、支持体を除去し、銅薄膜2の支持体を除去した側の裏面に、第2のレジストを形成し、銅薄膜2の裏面に銅めっきして外側銅回路10を形成し、前記第2のレジストを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚銅回路を好適に形成できるプリント基板の製造方法及びプリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば70μm以上の厚銅回路基板を製造する際、回路厚相当の銅箔、若しくは銅張積層板を用いて銅回路をエッチングして回路パターン形成を行っている。しかし、このようなエッチング方式で製造されている銅回路の断面は、工法の性質上、パターン上部が設計値より狭くなってしまい、台形形状になってしまう。さらに、回路厚70μm以上の厚銅基板となると、パターン上部が必要以上に細くなってしまい、銅回路パターン形成後の部品実装が困難になってしまう。また、上述した銅張積層板は、厚銅である場合とても高価であり、エッチング法を用いると銅の消費が激しいため、無駄な銅が多いことになる。
【0003】
上述したエッチング法の問題点が特許文献1に記載されている。特許文献1では、エッチング法は配線パターンの断面形状が基板側の底部の幅が広い台形状になると指摘し、これを解決するためにパターンめっき法があると記載している(特許文献1の段落0002〜段落0003)。そして、厚さ70μmの厚銅めっきパターンを形成している例が示されている(特許文献1の段落0035)。
【0004】
しかしながら、このような70μmもの厚銅回路を形成する場合、従来では、電流密度を上げて形成している。このように電流密度を上げて厚銅回路を形成すると、電流が集中するため、膜厚分布がばらつく原因となる。特許文献1は、銅配線パターンを形成したプリント基板における下地銅箔のサイドエッチング量を減少させることを目的としているため、この問題点は解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−152101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、例えば70μm以上の厚銅回路パターンを形成する際に、高い電流密度を用いることなく、したがって膜厚分布を揃えることができるプリント基板の製造方法及びプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、板状の支持体に銅薄膜を形成し、前記銅薄膜の表面に、表側配線パターンに対応した第1の開口部を有し且つこの第1の開口部にて前記銅薄膜の表面を露出させる第1のレジストを形成し、前記銅薄膜の表面に前記第1の開口部を通じて銅めっきし、前記表側配線パターンからなる内側銅回路を形成し、前記第1のレジストを除去し、前記内側銅回路を覆うように前記銅薄膜の表面に絶縁基材を積層し、前記支持体を除去し、前記銅薄膜の前記支持体を除去した側の裏面に、前記表側配線パターンの少なくとも一部に相当する裏側配線パターン対応した第2の開口部を有し且つこの第2開口部にて前記銅薄膜の裏面を露出させる第2のレジストを形成し、前記銅薄膜の裏面に前記第2の開口部を通じて銅めっきし、前記裏側配線パターンからなる外側銅回路を形成し、前記第2のレジストを除去することを特徴とするプリント基板の製造方法を提供する。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記支持体はシリコン系樹脂又はゴム製のキャリアシートであることを特徴としている。
また、請求項3の発明では、板状の絶縁基材と、前記絶縁基材の少なくとも一方の面側に設けられたパターン配線とを備え、前記パターン配線は、前記一方の面から突出して形成された外側銅回路と、前記外側銅回路と対応する部位にて前記絶縁基材に埋設された内側銅回路と、前記外側銅回路と前記内側銅回路との間に挟み込まれた銅薄膜とを有することを特徴とするプリント基板を提供する。
【0009】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、前記パターン配線が複数形成されていて、個々のパターン配線の前記外側銅回路同士或いは前記内側銅回路同士の厚さ、又は、同一のパターン配線における前記外側銅回路と前記内側銅回路の厚さが異なっていることを特徴としている。
請求項5の発明では、請求項3の発明において、前記絶縁基材の両面に前記パターン配線が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、例えば70μm以上の厚銅回路パターンを形成する場合でも、この厚さの厚銅回路を内側銅回路と外側銅回路の二つに分けて形成するので、高い電流密度を用いなくても迅速にその回路パターンを形成することができ、したがって膜厚(めっき厚)のばらつきを抑えることができ、膜厚分布を揃えることができる。また、内側銅回路又は外側銅回路のそれぞれの厚さは適宜調整可能であるため、所望に応じたパターン厚の回路を形成することが可能となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、支持体がシリコン系樹脂又はゴム製のキャリアシートで形成されているため、銅薄膜から支持体を剥がす工程をスムーズに行うことができる。
請求項3の発明によれば、外側銅回路と内側銅回路とが接触していることにより、これらを合わせて厚銅の銅回路を形成することができる。
請求項4の発明によれば、異なる厚さの外側銅回路又は内側銅回路を基板内で形成しているので、所望の銅厚の回路パターンを有するプリント基板を得ることができる。
【0012】
請求項5の発明によれば、厚銅回路を有するいわゆる両面基板を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図2】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図3】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図4】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図5】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図6】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図7】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図8】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図9】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図10】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図11】本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
【図12】本発明に係るプリント基板の概略図である。
【図13】本発明に係るプリント基板を用いた積層基板の製造を順番に示す概略図である。
【図14】本発明に係るプリント基板を用いた積層基板の製造を順番に示す概略図である。
【図15】本発明に係るプリント基板を用いた積層基板の製造を順番に示す概略図である。
【図16】本発明に係るプリント基板を用いた積層基板の製造を順番に示す概略図である。
【図17】本発明に係るプリント基板を用いた積層基板の製造を順番に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図11は本発明に係るプリント基板の製造方法を順番に示す概略図である。
図1に示すように、板状の支持体1に銅薄膜2を堆積させる。支持体1は、例えばSUS板(SUSベルト)やシリコン系樹脂、又はゴム製のキャリアシート等を用いることができる。SUS板を用いた場合、銅薄膜2を堆積する側の面に表面研磨等を施すことが好ましい。この場合、SUS板に直接銅薄膜2を形成する。例えば、電極間距離を3mm〜10mmとし、陽極は不溶性、陰極はグラファイト板を摺動する表面研磨・活性済みSUSベルト(0.1mm(t)〜0.6mm(t))とし、電解液は乱流状態で撹拌、同時に電解銅溶液濃度・温度を特定し、電流密度が0.5A/cm〜2.5A/cmを採用する高速めっき装置で銅薄膜2を製造する。キャリアシートを用いる場合は、屈曲性・耐薬品性のある粘着シートを用いることが好ましい。この場合は、一旦SUS板に形成した銅薄膜2を剥がし、これをキャリアシートに接着する。このような支持体1を用いることにより、薄い銅薄膜2を含めて以下のパターン形成のための支持体として用いることができる。銅薄膜2は、例えば9μm厚の銅箔である。
【0015】
図2に示すように、銅薄膜2の表面にレジストパターンとなる第1のレジスト3を形成する。この第1のレジスト3は、銅めっきパターン(表側配線パターン)となる箇所を第1の開口部4として所定の位置に形成される。第1のレジスト3の厚さは、形成すべき銅回路の厚さに対して1.4倍以上であることが好ましい。そして、図3に示すように、第1の開口部4に表側配線パターンからなる内側銅回路5を形成する。この内側銅回路5は銅薄膜2の表面を活性させた後、所定の電流密度(例えば10ASD〜20ASD)で行われる。より詳しくは、5%(wt)硫酸浴に室温で、30秒間浸漬活性後、硫酸銅の銅濃度85g/L、硫酸60g/L、不溶性陽極との極間距離20mm、カソードロック100mm/秒、噴流吐出量600L/分(ノズルピッチ25mm)、浴温40℃、CD11ASDで20分間電解し、50μm/分の厚銅回路めっきとなる内側銅回路5を形成する。そして、図4に示すように、第1のレジスト3を剥離除去する。この除去には、例えば水酸化ナトリウム溶液が用いられ、これを水洗後、常温の5%硫酸で30秒間中和処理を施し、再び水洗される。これにより、内側銅回路5の銅めっきによる回路パターンが形成される。
【0016】
次に、図5に示すように、積層の前処理となるプロファイル6を形成する(黒化処理)。このプロファイル6と内側銅回路5との接着性を高めるために、予め内側銅回路5に表面処理を施してもよい。プロファイル6は、伝送損失を抑えるために形成される。そして、図6に示すように、絶縁基材7で回路パターンを転写し、これを熱プレスで硬化させる。この絶縁基材7には、例えば0.2mm(t)プリプレグ(樹脂量52%)が2枚用いられる。熱プレスは、例えば真空度4.0kPaの170℃で40分行う。そして、図7に示すように、支持体1を剥がして除去する。このとき、支持体1をシリコン系樹脂又はゴム製のキャリアシートで形成すれば、銅薄膜2から支持体1を剥がす工程をスムーズに行うことができる。なお、図では、支持体1の除去後に上下反転させている。
【0017】
次に、図8に示すように、銅薄膜2の支持体1を除去した側の裏面に、第2のレジスト8を形成する。第2のレジスト8は、銅めっきパターン(裏側配線パターン)となる箇所を第2の開口部9として所定の位置に形成される。第2の開口部9は、少なくとも一部において内側銅回路5が露出するように形成される。図の例(断面視)では、3つの第2の開口部9のうち、2つの第2の開口部9に内側銅回路5が露出している。第2のレジスト8の厚さは、第1のレジスト3と同様に形成する。そして、図9に示すように、第2の開口部9に外側銅回路10を形成する。外側銅回路10は、内側銅回路5と同様にして形成される。そして、図10に示すように、第2のレジスト8を剥離除去する。これにより、外側銅回路10の銅めっきによる回路パターンが形成される。
【0018】
次に、フラッシュエッチングにより、除去された第2のレジスト8のレジストパターン下に形成されている銅薄膜2を除去する。この場合、エッチング液としては、例えばSPS(過硫酸ナトリウム)水溶液等を使用する。そして、銅薄膜2の側面及び外側銅回路10の表面にプロファイル6を形成する。プロファイル6の形成は、内側銅回路5のプロファイル6の形成と同様である。
【0019】
以上により、本発明に係るプリント基板11が製造される。これにより、例えば70μm以上の厚銅回路パターンを形成する場合で、この厚さの厚銅回路を内側銅回路5と外側銅回路10の二つに分けたパターン配線16として形成するので、高い電流密度を用いなくても迅速にその回路パターンを形成することができ、したがって膜厚(めっき厚)のばらつきを抑えることができ、膜厚分布を揃えることができる。なお、本発明に係る製造方法は、いわゆるセミアディティブ法によるプリント基板の製造方法であり、銅薄膜2がシード層に該当する。
【0020】
本発明に係るプリント基板の製造方法を用いた場合、図12に示すようなプリント基板を製造可能である。図示したように、内側銅回路5と、外側銅回路10と、これらに挟み込まれた銅薄膜2からなるパターン配線16が複数備わっている場合において、各パターン配線16の回路厚、すなわち個々のパターン配線16の外側銅回路10同士又は隣り合う内側銅回路5同士の厚さ、又は同一のパターン配線16における外側銅回路10と内側銅回路5の厚さをそれぞれ変更可能である。これにより、所望に応じたパターン厚の回路を形成することが可能となる。また、絶縁基材7を介して両面に外側銅回路10、内側銅回路5、銅薄膜2を形成することも可能である。このように、本発明に係るプリント基板は、使用態様に応じて適宜回路厚や回路パターンを設定可能である。
【0021】
図13〜図17は、本発明に係るプリント基板を用いた積層基板の製造を順番に示す概略図である。
図13に示すように、図の上側から第1層基板11a、第2層基板11b、第3層基板11c、第4層基板11d、第5層基板11eとして、各基板を積層する。第1層基板11a、及び第5層基板11eは積層基板の外側に位置する基板であり、いわゆる外層基板である。これらの基板11a、11eは内側銅回路5のみが外側に向けて形成され、銅薄膜2で覆われている。一方、内層基板たる第2層基板11b、第3層基板11c及び第4層基板11dのうち、基板11bと11dは上側銅回路10を持備えた厚銅回路が形成され、基板11cはこれを転写したプリプレグからなっている。この状態で、図14に示すように、スルーホール用の孔あけがされる。この孔あけは例えばドリルにより行われる。このようにして形成されたスルーホール12にデスミア処理、すなわちスルーホール12発生しているスミアの除去とめっきとの密着強度を上げるための樹脂粗化を目的とした処理を施し、スルーホール12に化学銅めっきからなるめっき13を形成する。
【0022】
次に、図15に示すように、外層基板となる第1層基板11a及び第5層基板11eの外側にレジスト15を形成する。そして、図16に示すように、銅めっきパターンである銅回路14を形成する。そして図17に示すように、レジスト15を除去し、フラッシュエッチングにより銅薄膜2を除去する。これにより、スルーホール12のめっき13を介して第1層基板11aの回路パターンと第5層基板11eの回路パターンが接続された積層基板を得ることができる。なお、レジスト15及び銅回路14の形成は、上述した第1及び第2のレジスト3,8、内側銅回路5及び外側銅回路10と同様にして形成される。
【符号の説明】
【0023】
1 支持体
2 銅薄膜
3 第1のレジスト
4 第1の開口部
5 内側銅回路
6 プロファイル
7 絶縁基材
8 第2のレジスト
9 第2の開口部
10 外側銅回路
11 基板
12 スルーホール
13 めっき
14 銅回路
15 レジスト
16 パターン配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の支持体に銅薄膜を形成し、
前記銅薄膜の表面に、表側配線パターンに対応した第1の開口部を有し且つこの第1の開口部にて前記銅薄膜の表面を露出させる第1のレジストを形成し、
前記銅薄膜の表面に前記第1の開口部を通じて銅めっきし、前記表側配線パターンからなる内側銅回路を形成し、
前記第1のレジストを除去し、
前記内側銅回路を覆うように前記銅薄膜の表面に絶縁基材を積層し、
前記支持体を除去し、
前記銅薄膜の前記支持体を除去した側の裏面に、前記表側配線パターンの少なくとも一部に相当する裏側配線パターン対応した第2の開口部を有し且つこの第2開口部にて前記銅薄膜の裏面を露出させる第2のレジストを形成し、
前記銅薄膜の裏面に前記第2の開口部を通じて銅めっきし、前記裏側配線パターンからなる外側銅回路を形成し、
前記第2のレジストを除去することを特徴とするプリント基板の製造方法。
【請求項2】
前記支持体はシリコン系樹脂又はゴム製のキャリアシートであることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項3】
板状の絶縁基材と、
前記絶縁基材の少なくとも一方の面側に設けられたパターン配線とを備え、
前記パターン配線は、
前記一方の面から突出して形成された外側銅回路と、
前記外側銅回路と対応する部位にて前記絶縁基材に埋設された内側銅回路と、
前記外側銅回路と前記内側銅回路との間に挟み込まれた銅薄膜とを有することを特徴とするプリント基板。
【請求項4】
前記パターン配線が複数形成されていて、
個々のパターン配線の前記外側銅回路同士或いは前記内側銅回路同士の厚さ、又は、同一のパターン配線における前記外側銅回路と前記内側銅回路の厚さが異なっていることを特徴とする請求項3に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記絶縁基材の両面に前記パターン配線が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−134758(P2011−134758A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290470(P2009−290470)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000243906)株式会社メイコー (34)
【Fターム(参考)】