説明

プリント基板

【課題】ソルダーレジスト層のパターニング時に、ソルダーレジスト層の材料自体がビア内に詰まることがなく歩留まりの高い、はんだ付け用の貫通ビアを有するプリント基板を得る。
【解決手段】貫通ビア17のプリント基材部貫通部分11hの内径d11とシルク印刷層15(16)の貫通ビア17用(のシルク層貫通部分15h)の内径d15とが同一に設定される。一方、ソルダーレジスト層13(15)の貫通ビア17用(のソルダーレジスト貫通部分13h)の内径d13はビア径d11より広く形成される。上記関係により、貫通ビア17の近傍領域においてシルク印刷層15の一部が銅パターン12上に直接形成されるシルク印刷層延在構造を呈している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント基板に関し、特にはんだ付け用の貫通ビア(スルーホールビア)を有するプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、はんだ付け用の貫通ビアを有する、従来のプリント基板の貫通ビア周辺構造を模式的に示す説明図である。
【0003】
同図に示す様に、従来のプリント基板2は、ベースとなる絶縁性の基材21の所定箇所に基材21を貫通ビア(スルーホールビア)27が設けられている。貫通ビア27の内周及び貫通ビア27の周辺の基材21の表面及び裏面は銅パターン22が形成されている。
【0004】
そして、ビア27の周辺領域となる基材21の表面及び裏面に形成された銅パターン22上において、熱硬化性エポキシ樹脂皮膜等の絶縁被膜からなるソルダーレジスト23及び24が形成されている。さらに、ソルダーレジスト23及び24上にシルク印刷層25及び26が形成されている。
【0005】
なお、図2のように、ソルダーレジスト及びシルク印刷層が形成されたプリント基板として、例えば、特許文献1に開示されたプリント基板がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−312074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図2で示した従来のプリント基板2では、基材21及び銅パターン22からなるプリント基材部における貫通ビア27用の径d21(ビア径)と、ソルダーレジスト層23(24)における貫通ビア27用の径d23と、シルク印刷層25(26)における貫通ビア27用の径d25とが同径(d21=d23=d25)に設定されていた。
【0008】
すなわち、貫通ビア27は基材21、銅パターン22、ソルダーレジスト層23,24、及びシルク印刷層25,26を貫通する径d21(=d23=d25)のビアとなる。
【0009】
したがって、従来のプリント基板2は以下の工程を経て製造されるのが一般的であった。
【0010】
まず、図2で示すような径d21(ビア径)の貫通ビア27を有し、貫通ビア27の内周及び周辺における基材21の表裏面に形成された銅パターン22を有するプリント基材部を準備する。
【0011】
そして、プリント基材部の表裏面において、熱硬化性エポキシ樹脂皮膜をソルダーレジスト用のレジスト液を塗布し、はんだ付けが不要な部分を覆うようにパターニングして、ソルダーレジスト層23及び24を得る。この際、ソルダーレジスト層23(24)の貫通ビア27用の径d23はビア径d21と同一になるように設定する。
【0012】
その後、プリント基材部の表面及び裏面に形成されたソルダーレジスト層23及び24上にシルク印刷層25及び26を選択的に形成する。この際、シルク印刷層25(26)の貫通ビア27用の径d25はビア径d21と同一になるように設定する。
【0013】
このように、ソルダーレジスト層23(24)における貫通ビア27用の径d23は、プリント基材部におけるビア径d21と同一に設定されていた。
【0014】
このため、ソルダーレジスト層23(24)のパターニング時に、ソルダーレジスト層23の材料自体が貫通ビア27内(特に符号A23,A24で示すソルダーレジスト貫通部分及びその近傍領域)に詰まり、このレジスト材料にさらに導通性のある他の物質が混在し、最終的に貫通ビア27内に詰まり固まった結果、異物となり残存するという問題点があった。
【0015】
このような構造の従来のプリント基板2をECU(電子制御装置)に用いた場合、ECU製造工程内、車両へのECU取付工程内、あるいは車両走行時のECU振動発生時において、貫通ビア27から上記異物が剥がれ落ちた結果、プリント基板上で絶縁関係を有すべきピン同士が導通してしまうショート破壊が引き起こるという問題点があった。上記ショート破壊は特にピン間隔が比較的狭いマイコンのリードピン間等に生じ易く、ショート破壊によってECUが異常停止し、誤動作する危険性があった。
【0016】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、ソルダーレジスト層のパターニング時に、ソルダーレジスト層の材料自体がビア内に詰まることがなく歩留まりの高い、はんだ付け用の貫通ビアを有するプリント基板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る請求項1記載のプリント基板は、貫通ビアを有するプリント基板であって、前記貫通ビアに対応した基材貫通部分が設けられ、前記基材貫通部分の内側領域並びに前記貫通ビアの周辺領域における表面及び裏面に導電性領域を有するプリント基材部と、前記プリント基材部の少なくとも一つの主面の前記貫通ビアの周辺領域における前記導電性領域上に形成され、前記貫通ビアに対応したレジスト貫通部分を有するソルダーレジスト層と、前記ソルダーレジスト層上に形成され、前記貫通ビアに合致したシルク貫通部分を有するシルク印刷層とを備え、前記基材貫通部分の内径と前記シルク貫通部分の内径とが同一に設定され、前記レジスト貫通部分の内径は前記基材貫通部分の内径より広く形成されることにより、前記貫通ビアの近傍領域において前記シルク印刷層の一部が前記導電性領域上に直接形成されるシルク印刷層延在構造を呈する。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載のプリント基板であって、前記少なくとも一つの主面は表面及び裏面双方を含み、前記ソルダーレジスト層は、前記プリント基材部の表面及び裏面の前記貫通ビアの周辺領域における前記導電性領域上に形成される第1及び第2のソルダーレジスト層を含み、前記レジスト貫通部分は、前記第1及び第2のソルダーレジストに設けられた第1及び第2のレジスト貫通部分を含み、前記シルク印刷層は、前記第1及び第2のソルダーレジスト層上に形成される第1及び第2のシルク印刷層を含み、前記シルク貫通部分は、前記第1及び第2のシルク印刷層に設けられた第1及び第2のシルク貫通部分を含む。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の本願発明におけるプリント基板は、レジスト貫通部分の内径が基材貫通部分の内径より広く形成されるビア径マージン処理が施されているため、レジスト貫通部分を有するソルダーレジストパターニング時に、貫通ビア(基材貫通部分やレジスト貫通部分)にソルダーレジスト層の材料が詰まる可能性を大幅に減少させることができ、歩留まりの向上を図ることができる。
【0020】
また、プリント基板部の少なくとも一つの主面の貫通ビアの近傍領域上にはシルク印刷層が形成されているため、フローはんだによる溶けたはんだの流れをシルク印刷層によって抑制することにより、貫通ビア内に溶けたはんだが流れこむことを防ぐことができる。
【0021】
請求項2記載の本願発明におけるプリント基板は、第1及び第2のレジスト貫通部分の内径が基材貫通部分の内径より広く形成されるビア径マージン処理が施されているため、第1及び第2のレジスト貫通部分を有する第1及び第2のソルダーレジストパターニング時に、貫通ビア(基材貫通部分や第1及び第2のレジスト貫通部分)にソルダーレジスト層の材料が詰まる可能性を大幅に減少させることができる。その結果、プリント基材部の両面にソルダーレジスト層を有するプリント基板の歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1のプリント基板の貫通ビア周辺構造を模式的に示す説明図である。
【図2】従来のプリント基板の貫通ビア周辺構造を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態>
図1はこの発明の実施の形態であるプリント基板の貫ビア周辺構造を模式的に示す説明図である。
【0024】
同図に示す様に、本実施の形態のプリント基板1は、ベースとなる絶縁性の基材11の所定箇所に基材11を貫通ビア(スルーホールビア)17が設けられている。貫通ビア17の内周及び貫通ビア17の周辺の基材11の表面及び裏面は導電性領域となる銅パターン12が形成されている。こられ基材11及び銅パターン12によりプリント基材部を構成する。
【0025】
そして、貫通ビア17の周辺領域となる基材11の表面及び裏面上それぞれに形成された銅パターン12上に、熱硬化性エポキシ樹脂皮膜等の絶縁被膜からなるソルダーレジスト層13及び14が形成されている。
【0026】
さらに、ソルダーレジスト層13及び14上にシルク印刷層15及び16が形成されている。
【0027】
貫通ビア17のプリント基材部貫通部分11hの内径d11(ビア径d11)とシルク印刷層15(16)の貫通ビア17用(のシルク層貫通部分15h(16h))の内径d15とが同一に設定される。すなわち、プリント基材部貫通部分11hとシルク層貫通部分15h(16h)とは平面視合致するように設定される。
【0028】
一方、ソルダーレジスト層13(15)の貫通ビア17用(のソルダーレジスト貫通部分13h(14h))の内径d13はビア径d11より広く形成される。すなわち、平面視して、ソルダーレジスト貫通部分13h(14h)内にプリント基材部貫通部分11hが形成される。
【0029】
このように、図1で示した、実施の形態のプリント基板1では、基材11及び銅パターン12からなるプリント基材部における貫通ビア17用のd11(ビア径)と、ソルダーレジスト層13(14)における貫通ビア17用の径d13と、シルク印刷層15(16)における貫通ビア17用の径d15とが以下の関係{d11=d15<d13}を満足するように設定されている。
【0030】
そして、上記関係により、貫通ビア17の近傍領域においてシルク印刷層15(16)の一部が銅パターン12上に直接形成されるシルク印刷層延在構造を呈している。
【0031】
図1で示した構造の実施の形態1のプリント基板1は例えば以下の工程を経て製造される。
【0032】
まず、図1で示すようなd11(ビア径)の貫通ビア17を有し、貫通ビア17の内周及び周辺領域において基材11の表裏面に形成された銅パターン12を有するプリント基材部を準備する。
【0033】
そして、プリント基材部の表裏面において、熱硬化性エポキシ樹脂皮膜をソルダーレジスト用のレジスト液(ソルダーレジスト材料)を塗布し、はんだ付けが不要な部分を覆うようにパターニングして、銅パターン12上にソルダーレジスト層13及び14を形成する。この際、ソルダーレジスト層13(14)の貫通ビア17用の径d13はビアd11より大きくなるように設定する。したがって、ソルダーレジスト層13(14)のパターニング直後は、貫通ビア17の近傍領域において、銅パターン12上にソルダーレジスト層13(14)が形成されることなく、銅パターン12が露出した態様を呈している。
【0034】
その後、シルク印刷法を用いて、プリント基材部の表面及び裏面に形成されたソルダーレジスト層13及び14上にシルク印刷層15及び16を選択的に形成する。この際、プリント基材部貫通部分11hにシルク層貫通部分15h(16h)が平面視合致するように、シルク印刷層15(16)の貫通ビア17用の径d15はビア径d11と同一になるように設定する。したがって、貫通ビア17の近傍領域において、ソルダーレジスト層13(14)が形成されなかった銅パターン12上に直接、シルク印刷層15(16)が形成される。
【0035】
このように、実施の形態1のプリント基板1では、ソルダーレジスト層13(14)における貫通ビア17用の径d13は、プリント基材部におけるビア径d11より大きな値に設定するビア径マージン処理がなされている。
【0036】
このため、ソルダーレジスト層13(14)のパターニング時に、ソルダーレジスト層13の材料自体が貫通ビア17内に詰まることを確実に回避することができる。
【0037】
上述したように、本実施の形態のプリント基板1は、ソルダーレジスト層13(14)に対し上記ビア径マージン処理がなされているため、ソルダーレジスト層13(14)のパターニング時に、貫通ビア17内にソルダーレジスト層の材料(レジスト液)が詰まる可能性を大幅に減少させることができ、プリント基板1の歩留まりの向上を図ることができる。
【0038】
また、基材11及び銅パターン12よりなるプリント基板部の表面及び裏面の貫通ビア17の近傍領域上には、銅パターン12上に直接、シルク印刷層15(16)が形成されているため、電子部品のはんだ付け時においてフローはんだによる溶けたはんだの流れをシルク印刷層15によって抑制することにより、貫通ビア17内に溶けたはんだが流れこむことを防ぐことができる。
【0039】
加えて、本実施の形態のプリント基板1は、プリント基材部の表面及び裏面双方に形成されるソルダーレジスト層13及び14それぞれに上記ビア径マージン処理を施しているため、ソルダーレジスト層13及び14双方のパターニング時に、貫通ビア17にソルダーレジスト層13及び14の材料が詰まる可能性を減少させることができる。その結果、両面にソルダーレジスト層13及び14を有するプリント基板1の歩留まりの向上を図ることができる。
【0040】
<その他>
図1で示した実施の形態では、プリント基材部の表面及び裏面双方にソルダーレジスト層13及び14並びにシルク印刷層15及び16を形成した構造を示したが、プリント基材部の表面及び裏面のうち少なくとも一方の面に上記ビア径マージン処理を施したソルダーレジスト及び上記シルク印刷層延在構造を有するシルク印刷層を形成することにより、プリント基材部の少なくとも一方の面に関し、歩留まりの向上を図るとともに、貫通ビア27内に溶けたはんだが流れ込むことを防ぐことができる効果を奏することができる。
【0041】
また、図1はプリント基板1の貫通ビア17及びその周辺構造を示しており、ソルダーレジスト層13及び14は見かけ上、貫通ビア17及び貫通ビア17の近傍領域以外の銅パターン12上に全面に形成されているが、他の領域においては選択的に形成されている。同様に、シルク印刷層15及び16は見かけ上、貫通ビア17以外のプリント基材部の全面における銅パターン12及びソルダーレジスト層13(14)上に形成されているが、他の領域においては選択的に形成されている。
【符号の説明】
【0042】
1 プリント基板
11 基材
12 銅パターン
13,14 ソルダーレジスト
15,16 シルク印刷層
17 貫通ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通ビアを有するプリント基板であって、
前記貫通ビアに対応した基材貫通部分が設けられ、前記基材貫通部分の内側領域並びに前記貫通ビアの周辺領域における表面及び裏面に導電性領域を有するプリント基材部と、
前記プリント基材部の少なくとも一つの主面の前記貫通ビアの周辺領域における前記導電性領域上に形成され、前記貫通ビアに対応したレジスト貫通部分を有するソルダーレジスト層と、
前記ソルダーレジスト層上に形成され、前記貫通ビアに合致したシルク貫通部分を有するシルク印刷層とを備え、
前記基材貫通部分の内径と前記シルク貫通部分の内径とが同一に設定され、前記レジスト貫通部分の内径は前記基材貫通部分の内径より広く形成されることにより、前記貫通ビアの近傍領域において前記シルク印刷層の一部が前記導電性領域上に直接形成されるシルク印刷層延在構造を呈することを特徴する、
プリント基板。
【請求項2】
請求項1記載のプリント基板であって、
前記少なくとも一つの主面は表面及び裏面双方を含み、
前記ソルダーレジスト層は、前記プリント基材部の表面及び裏面の前記貫通ビアの周辺領域における前記導電性領域上に形成される第1及び第2のソルダーレジスト層を含み、
前記レジスト貫通部分は、前記第1及び第2のソルダーレジストに設けられた第1及び第2のレジスト貫通部分を含み、
前記シルク印刷層は、前記第1及び第2のソルダーレジスト層上に形成される第1及び第2のシルク印刷層を含み、
前記シルク貫通部分は、前記第1及び第2のシルク印刷層に設けられた第1及び第2のシルク貫通部分を含む、
プリント基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−55101(P2013−55101A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190422(P2011−190422)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】