プリント配線板およびプリント配線板の製造方法
【課題】ブラインドビアについて良否判別容易なプリント配線板、およびブラインドビアについて規格外か否かについて判定することができるプリント配線板を提供する。
【解決手段】絶縁層3を間に挟む第1導電層2と第2導電層4とを導電体7により接続したブラインドビア5を有するプリント配線板の製造方法であって、規格外ブラインドビアが断線し、かつ規格内ブラインドビアが断線しない通電条件で、ブラインドビア5を通電する。
【解決手段】絶縁層3を間に挟む第1導電層2と第2導電層4とを導電体7により接続したブラインドビア5を有するプリント配線板の製造方法であって、規格外ブラインドビアが断線し、かつ規格内ブラインドビアが断線しない通電条件で、ブラインドビア5を通電する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドビアを有するプリント配線板、およびプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板のブラインドビアは第1導電層と第2導電層とを導電体により接続する。導電体と第1導電層または第2導電層との接続状態が良好でないとき、プリント配線板の長期の使用により断線するおそれがある。例えば、プリント配線板が実装された電子機器の環境変化により、プリント配線板が膨張および収縮にサイクルを繰り返すことにより、ブラインドビアの不良箇所で断線に至ることがある。このため、プリント配線板の製造工程上で接続状態が良好でないブラインドビアを検出する。
【0003】
ブラインドビアホール内に充填される導電体が少なく、ブラインドビアの表面が凹んでブラインドビア底が見えている不良品は、外観検査により検出することができる。一方、ブラインドビア内部における導電体と金属層との接着不良に起因する不良品やブラインドビア内部に気泡や絶縁性異物がある不良品は、外観検査により検出することができない。
【0004】
外観で検出することのできない不良ブラインドビアを検出する方法として、例えば、特許文献1の記載の方法がある。この方法では、ブラインドビアの開口部に皮膜を形成した上で、プリント配線板を加熱する。不良ブラインドビアは加熱によりガスを発生させるため、不良ブラインドビア上の皮膜が変形する。そこで、皮膜の変形の有無について外観検査することによりブラインドビアを良否判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−173543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記に挙げた技術では、規格外のブラインドビアの検出するためのテスト用のブラインドビアについて検査するものであり、回路を構成するブラインドビアについては検査を行っていない。プリント配線板の信頼性を向上させるためには、個々のブラインドビアについて良品と不良品を判別する必要がある。
【0007】
ブラインドビアについて規格内のものであるか否かについて判定することができる技術が要求されている。また、ブラインドビアについて規格内にあるものと規格外にあるものとを容易に判別することのできるプリント配線板が要求されている。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラインドビアについて良否判別容易なプリント配線板、およびブラインドビアについて規格外か否かについて判定することができるプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1に記載の発明は、絶縁層を間に挟む第1導電層と第2導電層とを導電体により接続したブラインドビアを有するプリント配線板の製造方法において、前記ブラインドビアのうち、前記ブラインドビアが規格内にあるものを規格内ブラインドビアとし、前記ブラインドビアが規格外にあるものを規格外ブラインドビアとして、前記規格外ブラインドビアが断線しかつ前記規格内ブラインドビアが断線しない通電条件で前記ブラインドビアを通電することを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、通電により、規格内ブラインドビアを断線させず、かつ規格外ブラインドビアを断線させることができる。これにより、電気検査により、規格内ブラインドビアと規格外ブラインドビアとを容易に判別することが可能となる。
【0011】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプリント配線板において、前記ブラインドビアの通電後、前記ブラインドビアの断線状態について電気検査することにより前記規格外ブラインドビアと前記規格内ブラインドビアとを区別することを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、規格内ブラインドビアと規格外ブラインドビアとを区別するため、プリント配線板内に規格外ブラインドビアがあるか否かについて容易に把握することができる。
【0013】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法において、前記ブラインドビアの導電材料充填容積に対する前記導電体の充填率が第1基準値以下である前記ブラインドビアを前記規格外ブラインドビアとして、前記通電条件を前記第1基準値の2乗に基づいて設定することを要旨とする。
【0014】
ブラインドビアの導電材料充填容積に対する導電体の充填率が小さいとき、次の2つの作用がある。第1に、第1導電層と第2導電層とを接続する導電体の断面積が小さくなる。これにより、ブラインドビアの抵抗が大きくなり、通電による発熱量が増大する。第2に、断線状態に至るまでに必要な熱容量が小さくなる。第1の作用および第2の作用は、ともに、ブラインドビアの断線を促進させる。
【0015】
本発明では、この点を鑑み、充填率が第1基準値以下のものを規格外ブラインドビアとした場合に、通電条件を上記第1基準値の2乗に基づいて設定する。これにより、充填率が第1基準値以下のものを規格外ブラインドビアとして選択的に断線状態にする確率を高くすることができる。
【0016】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のプリント配線板の製造方法において、前記充填率が1である前記ブラインドビアを断線状態にするために必要な熱量を熱容量とし、前記充填率が1の前記ブラインドビアに前記通電条件で通電することにより前記ブラインドビアが発する熱量を発熱量として、前記熱容量に対する前記発熱量の比が前記第1基準値の2乗以上かつ1より小さい値となるように、前記通電条件を設定することを要旨とする。
【0017】
熱容量に対する発熱量の比を1以上として通電条件を設定するとき、充填率が1のブラインドビアが断線するおそれがある。一方、熱容量に対する発熱量の比を第1基準値の2乗未満として通電条件を設定するとき、充電率が第1基準値以下のブラインドビアが断線しないおそれがある。
【0018】
この点、本発明では、上記構成とすることにより、充填率が1のブラインドビアが断線することを抑制し、かつ充填率が第1基準値以下のブラインドビアが断線しないことを抑制することができる。
【0019】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法において、前記第1導電層が前記導電体と接触するものとして、前記第1導電層と前記導電体との接触面に対する接触率が第2基準値以下である前記ブラインドビアを前記規格外ブラインドビアとして、前記通電条件を前記第2基準値に基づいて設定することを要旨とする。
【0020】
第1導電層と導電体との間の接触率が小さくなるとき、第1導電層と導電体との接触抵抗が増大する。これは、ブラインドビアの断線を促進させるように作用する。本発明では、この点を鑑み、接触率が第2基準値以下であるブラインドビアを規格外ブラインドビアとした場合に、通電条件を、上記第2基準値に基づいて設定する。これにより、接触率が第2基準値以下のものを規格外ブラインドビアとして選択的に断線状態にする確率を高くすることができる。
【0021】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のプリント配線板の製造方法において、前記接触率が1である前記ブラインドビアを断線状態にするために必要な熱量を熱容量とし、前記接触率が1である前記ブラインドビアに前記通電条件で通電することにより前記ブラインドビアが発熱する熱量を発熱量として、前記熱容量に対する前記発熱量の比が前記第2基準値以上かつ1より小さい値となるように、前記通電条件を設定することを要旨とする。
【0022】
熱容量に対する発熱量の比を1以上として通電条件を設定するとき、接触率が1のブラインドビアが断線するおそれがある。一方、熱容量に対する発熱量の比を第2基準値未満として通電条件を設定するとき、接触率が第2基準値以下のブラインドビアが断線しないおそれがある。
【0023】
本発明では、上記構成とすることにより、接触率が1のブラインドビアが断線することを抑制し、かつ接触率が第2基準値以下のブラインドビアが断線しないことを抑制することができる。
【0024】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、前記導電体には、平均粒径が0.5μm〜2.0μmの銀粒子と平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子とが含まれることを要旨とする。
【0025】
正常なブラインドビアにおいて、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれていない導電性ペーストを用いて形成されたブラインドビアに対して上記の通電を行うと、通電による加熱によりブラインドビアが膨張することに起因して銀粒子同士の接点が離れ、抵抗が高くなることがある。
【0026】
これに対して、正常なブラインドビアにおいて、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含む導電性ペーストを用いて形成されたブラインドビアに対して上記の通電を行うと、抵抗が高くなることは殆どない。これは、通電による加熱により10nm〜500nmの銀粒子の表面または全体の溶融等によりブラインドビア内に導通経路を増大させるためである。すなわち、この種のブラインドビアでは、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれていない導電性ペースト30に比べて通電前後の抵抗の上昇が小さい。
【0027】
この発明では、上記組成のブラインドビアを有したプリント配線板に対して通電を行う。これにより、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれていないブラインドビアに通電を行う場合と比べて通電前後におけるブラインドビアの抵抗上昇を小さくすることができる。
【0028】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、前記第1導電層および前記第2導電層の少なくとも一方をステンレスにより形成することを要旨とする。
【0029】
導電層を形成する材料のうちステンレスは表面が酸化しやすいことで知られている。このため、第1導電層または第2導電層がステンレスにより形成されている場合、ステンレスの表面酸化により、導電体と導電層との接着力が低下するとともに導電体とこれら導電層との間での接触抵抗が大きくなる。表面酸化しているブラインドビアは、将来的に断線するおそれがあるため、回路の構成として使用しないことが望ましい。
【0030】
本発明では、第1導電層および第2導電層の少なくとも一方をステンレスにより形成されているプリント配線板に本発明を適用する。これにより、ステンレスの酸化により導電体と導電層との間の接着力が小さくなっているブラインドビアまたは導電体と導電層と間の接触抵抗が増大しているブラインドビアを、規格内ブラインドビアから電気的に判別可能とすることができる。
【0031】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、前記ブラインドビアを被覆層により覆うことを要旨とする。
ブラインドビアを通電すると、規格外ブラインドビアが焼損し、粉塵が生じることがある。粉塵がプリント配線板上に残存する場合、その後プリント配線板に電子部品等が搭載されて電気回路として動作させるときに粉塵が電子部品の端子の間に挟まって、動作不良を生じさせるおそれがある。本発明では、この点を考慮し、焼損による粉塵が移動しないように、ブラインドビアを被覆層により覆う。これにより、上記のような粉塵による動作不良が生じることを抑制することができる。
【0032】
(10)請求項10に記載のプリント配線板は上記製造方法により製造されていることを要旨とする。
この発明によれば、上記製造方法によりブラインドビアが通電されているため、通電により選別された規格内ブラインドビアには規格外ブラインドビアが殆ど含まれていない。このため、プリント配線板が周囲の環境変化により変形または膨張収縮することがあっても、規格内ブラインドビアが断線することは殆どない。すなわち、通電を行っていないプリント配線板に比べて、プリント配線板の変形または膨張収縮により、ブラインドビアが断線する頻度を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ブラインドビアについて良否判別容易なプリント配線板、およびブラインドビアについて規格外か否かについて判定することができるプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態のプリント配線板について、その断面構造を示す断面図。
【図2】同実施形態のプリント配線板について、ブラインドビアの断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態のプリント配線板の製造方法について、各製造工程の基板の断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態のプリント配線板について、規格外ブラインドビアの断面構造を示し、(A)は未充填があるブラインドビアの断面図、(B)は絶縁性異物を含むブラインドビアの断面図、(C)は接触面の一部が非接触状態にあるブラインドビアの断面図。
【図5】同実施形態のプリント配線板についてブラインドビアの検査方法を模式的に示す模式図。
【図6】未充填がある規格外ブラインドビアについて、通電条件を導くためのモデル。
【図7】同実施形態のプリント配線板について、各通電条件におけるブラインドビアの断線結果を示すテーブル。
【図8】同実施形態のプリント配線板について、充填率と選択断線可能範囲との関係を示すグラフ。
【図9】接触面に非接触部分があるブラインドビアについて、通電条件を導くためのモデル。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
図1を参照して、プリント配線板の断面構造について説明する。
プリント配線板1は、金属箔により形成された第1導電層2と、第1導電層2の表面上に設けられた絶縁層3と、絶縁層3の表面上に設けられ、所定の配線パターンを形成する第2導電層4と、第1導電層2と第2導電層4とを接続するブラインドビア5と、第2導電層4を被覆する被覆層11とを備えている。なお、第1導電層2と第2導電層4とはブラインドビア5以外の部分では電気的に接続されていない。
【0036】
第1導電層2はステンレスにより形成され、第1導電層2の厚みは1μm〜100μmとされている。なお、第1導電層2としては、ステンレスのほか、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、亜鉛等からなる金属箔を用いてもよい。
【0037】
絶縁層3としては、柔軟性にすぐれた樹脂材料が用いられる。例えば、ポリエステル系の樹脂、ポリアミド系の樹脂、ポリイミド系の樹脂により形成される。絶縁層3の厚みは5μm〜200μmとされている。
【0038】
第2導電層4は銅により形成されている。銅のほか、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金等により第2導電層4を形成してもよい。また、第2導電層4と、絶縁層3の間に、密着力を高めるために、ニッケルおよびクロムを含有させてもよい。また、第2導電層4が銅および銅合金の場合、第2導電層4と絶縁層3の間の層を設け、この層を、第2導電層4の表面に形成されるニッケルめっき層とこのニッケルめっき層の表面上に形成される金めっき層とにより構成してもよい。
【0039】
被覆層11は、上記絶縁層3と同様の樹脂材料により形成されている。例えば、ポリエステル系の樹脂、ポリアミド系の樹脂、ポリイミド系の樹脂が被覆層11の形成のために用いられる。被覆層11の厚みは5μm〜200μmとされている。
【0040】
ブラインドビア5は、第1導電層2と第2導電層4とを接続する導電体7により構成されている。導電体7は、導電性ペースト30を加熱硬化したものである。ブラインドビア5の直径は10μm〜200μmとされ、深さは5μm〜200μmとされる。導電体7は導電性フィラーとエポキシ樹脂(硬化物)とを含む。導電性フィラーとエポキシ樹脂との容積比は60対40とされている。
【0041】
導電性ペースト30としては、バインダ中に平均粒径の異なる2種類の導電性フィラーがエポキシ樹脂に分散されたものが用いられる。第1導電性フィラー21としては平均粒径0.5μm〜2.0μmの銀粉末が用いられ、第2導電性フィラー22としては平均粒径10nm〜500nmの銀粉末が用いられている。なお、第1導電性フィラー21および第2導電性フィラー22としては、銀粉末のほか、銀コート銅粉末、白金、金、銅、ニッケルおよびパラジウムの粉末を用いることができる。なお、平均粒径とは、粒径の積算分布における積算値50%の値(D50)を示す。積算分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した500個の粒子の画像解析により測定した円半径から体積換算して求めた値、動的光散乱式粒子径・粒度分布測定装置により求められる。
【0042】
バインダとしては、熱硬化性のエポキシ樹脂が用いられている。バインダは有機溶剤に溶かして用いられる。導電性ペースト30はスクリーン印刷等により貫通孔6に充填されるため、導電性ペースト30の有機溶剤としては印刷性に優れた溶媒が用いられる。例えば、カルビトールアセテートやブチルカルビトールアセテートが用いられる。
【0043】
図2を参照して、ブラインドビア5の断面構造について説明する。
ブラインドビア5は、貫通孔6に導電性ペースト30を充填し加熱処理することにより形成される。加熱処理により、溶剤が除去されるとともにバインダは硬化収縮して、導電性フィラー同士が互いに押圧された状態で接触する。導電性フィラーとして、平均粒径の異なる2種類のものが用いられているため、貫通孔6に導電性ペースト30を充填したとき、第1導電性フィラー21同士の隙間に第2導電性フィラー22が入り込む。このため、平均粒径の異なる2種類の導電性フィラーを用いて形成されたブラインドビア5は、第1導電性フィラー21のみを用いて形成されたブラインドビア5に比べて、貫通孔6の内部の導電性フィラーの密度が高く、かつ抵抗値が小さい。また、導電性フィラー同士の接点が多いため、導電体7が膨張したときの抵抗変化は、第1導電性フィラー21のみを用いて形成されたブラインドビア5に比べて小さい。
【0044】
図3を参照して、プリント配線板1の製造方法の一例を説明する。図3(A)〜(C)は、プリント配線板1の製造方法を説明するための断面図である。
図3(A)に示すように、絶縁層3の一方の面にセミアディティブ法により第2導電層4を形成する。
【0045】
次に、図3(B)に示すように、貫通孔6に導電性ペースト30を充填することにより、第1導電層2と第2導電層4とを当該導電性ペースト30を介して電気的に接続する。導電性ペースト30の充填はスクリーン印刷法により行なわれる。そして、導電性ペースト30の充填後、当該導電性ペースト30を加熱処理して硬化させる。
【0046】
次に、図3(C)に示すように、第2導電層4の表面上に被覆層11を積層して、第2導電層4および導電体7を被覆層11で被覆する。具体的には、ポリイミド系の感光性カバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工した後、乾燥し、さらに、露光現像して、第2導電層4の表面および導電体7の表面上に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の被覆層11を形成する。以上の工程により、プリント配線板1が形成される。
【0047】
ところで、導電性ペースト30の性質にはロット間にばらつきがあり、導電性ペースト30の性質は時間とともに変化する。また、印刷作業にばらつきがあり、第1導電層2の表面状態も様々であり、表面が酸化しているもの、表面の凹凸の小さいもの、表面にメッキ液が付着しているもの等がある。これらの要因により、ブラインドビア5の製造過程において種々の不良品が形成される。
【0048】
図4を参照して、ブラインドビア5の各種不良品について説明する。
図4(A)に示されるようにブラインドビア5の内部に未充填部50が形成される場合や、ブラインドビア5の内部に気泡が含まれる場合がある。以降では、内部に未充填部50が存在するブラインドビア5や気泡を含むブラインドビア5を「未充填ブラインドビア5X」という。
【0049】
ブラインドビア5の内部の未充填部50は、導電性ペースト30の粘度が適切でないこと、あるいは印刷工程が速すぎること等により発生する。ブラインドビア5の内部に気泡が入る要因としては、導電性ペースト30内に気泡が含まれることがあること、印刷法等により導電性ペースト30を貫通孔6に充填する際に気泡が形成されること等が挙げられる。気泡または未充填部50の一部は、ブラインドビア5の加熱処理工程により消滅するが、一部が残存する。気泡または未充填部50は、ブラインドビア5内の導電体7の量を少なくするため、ブラインドビア5の抵抗値を増大させる要因となる。
【0050】
図4(B)に示すように、ブラインドビア5の内部には絶縁性異物51が存在する場合もある。以降では、絶縁性異物51が含まれるブラインドビア5を「含異物ブラインドビア5Y」という。
【0051】
ブラインドビア5の内部に気泡が入る要因としては、導電性ペースト30内に絶縁性異物51が含まれることがあること、印刷法等により導電性ペースト30を貫通孔6に充填する際に絶縁性異物51が混入すること等が挙げられる。絶縁性異物51は、例えばプリント配線板1の搬送工程等で絶縁層3が欠けることにより発生する。絶縁性異物51は電気を通さないため、ブラインドビア5の抵抗が増大する。
【0052】
図4(C)に示すように、導電体7と第1導電層2との接触面7Aで両者が接触していない場合もある。以降では、導電体7と第1導電層2とが部分的に接触しているブラインドビア5、または導電体7と第1導電層2とが接触していないブラインドビア5を「部分接触ブラインドビア5Z」という。
【0053】
導電体7と第1導電層2の非接触状態は、ブラインドビア5の加熱処理工程における導電体7の膨張また収縮により導電体7と第1導電層2とが剥離すること、製造工程においてプリント配線板1に外力が加わることにより形成される。また、第1導電層2の表面が酸化することにより接着力が低下することに起因して非接触状態のブラインドビア5が形成される。導電体7と第1導電層2とが非接触状態にあるとき、ブラインドビア5の抵抗は大きくなる。
【0054】
上記未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yは、ブラインドビア5の軸方向において断面積が小さくなっている部分が存在する。当該部分は、断面積が小さいために力が集中しやすいこと、また電流が集中して過熱状態になりやすいことに起因して、当該部分で断線するおそれがある。
【0055】
また、部分接触ブラインドビア5Zは、非接触状態のないブラインドビア5と比べて、導電体7と第1導電層2との間の接触抵抗が大きいこと、当該非接触状態の部分を起点として剥離し易くなっていることに起因して、当該部分で断線するおそれがある。
【0056】
以上のように、未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yおよび部分接触ブラインドビア5Zは、正常ブラインドビア5に比べて、断線が生じやすい。このため、プリント配線板1から正常ブラインドビア5と判別するために、製造工程中でブラインドビア5の良否判定検査が行われている。
【0057】
図5を参照して、ブラインドビア5の良否判定検査について説明する。
良否判定検査では、規格外ブラインドビア5Bを断線状態にするとともに、規格内ブラインドビア5Aと規格外ブラインドビア5Bとを判別し、さらに、目視で両者の判別をすることができるように、マーキングをする。
【0058】
規格内ブラインドビア5Aは、ブラインドビア5の導電材料充填容積に対する充填率が第1基準値Cよりも大きいもの、および導電体7と第1導電層2との接触面7Aにおける接触率が第2基準値Dよりも大きいものを示す。
【0059】
規格外ブラインドビア5Bは、ブラインドビア5の導電材料充填容積に対する充填率が第1基準値C以下、および導電体7と第1導電層2との接触面7Aにおける接触率が第2基準値D以下のものを示す。
【0060】
なお、上記導電材料充填容積とは、貫通孔6および第1導電層2により形成される孔の容積を示す。充填率が1のとき、導電体7の体積とブラインドビア5の導電材料充填容積とが一致するものとする。
【0061】
通電および電気検査は1つの検査機により行われる。検査機のヘッドには、通電用の第1プローブ40Aと電気検査用の第2プローブ40Bとが設けられている。第1プローブ40Aは、軸方向に対向する第1端子41と第2端子42とにより構成されている。第1端子41は電流回路に接続されている。第2プローブ40Bは、軸方向に対向する第3端子43と第4端子44とにより構成されている。第3端子43と第4端子44は両端子の間の電圧を測定する電圧測定器60に接続され、電流と電圧から抵抗値を導いている。
【0062】
ブラインドビア5の通電および電気検査を行うときは、第1端子41および第3端子43を導電体7に接続するともに、第2端子42および第4端子44を第1導電層2に接続する。
【0063】
ブラインドビア5の良否判定検査は、ブラインドビア5に通電を行う工程(以下、「通電工程」)と、所定時間経過後、このブラインドビア5の電気検査をする工程(以下、「電気検査工程」)と、電気検査の結果に基づいてブラインドビア5にマーキングをする工程(以下、「マーキング工程」)とを含む。以下、各工程について説明する。
【0064】
通電工程では、所定条件(以下、「通電条件」)の電流をブラインドビア5に流すことにより、規格外ブラインドビア5Bを断線させる。これにより、規格内ブラインドビア5Aと規格外ブラインドビア5Bとを電気検査により判別することができるようにする。
【0065】
電気検査工程での判定は、次のように行う。ブラインドビア5の抵抗値が判定値以上のとき、ブラインドビア5が断線状態にある旨すなわち規格外ブラインドビア5Bである旨判定する。ブラインドビア5の抵抗値が判定値未満のときブラインドビア5が断線状態にない旨すなわち規格内ブラインドビア5Aである旨判定する。
【0066】
マーキング工程では、規格外ブラインドビア5Bである旨判定されたものに対して当該ブラインドビア5の周囲にマーキングを行う。マーキングの印の大きさは、目視により判別することができるものとする。
【0067】
図6〜図9を参照して、ブラインドビア5の通電条件を導き出すための通電条件設定式について説明する。
通電工程では、規格内ブラインドビア5Aを断線させず、かつ規格外ブラインドビア5Bを断線させる必要がある。このような通電条件は通電条件設定式により設定される。通電条件設定式は、規格外ブラインドビア5Bをモデル化したものに基づいて求められる。
【0068】
不良モデルとしては2種類考えられる。第1モデルは、上記未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yに対応するモデルである。第2モデルは、部分接触ブラインドビア5Zに対応するモデルである。各モデルに対応して通電条件設定式が異なるため、モデルに対応する通電条件設定式をそれぞれ説明する。
【0069】
図6を参照して、第1モデルについて説明する。
第1モデルでは、気泡または未充填部50または絶縁性異物51には電流が流れないものとして扱う。そして、気泡および未充填部50および絶縁性異物51の形状や個数に関係なく、ブラインドビア5内の導電材料充填容積に対する導電体7の体積の比率を示す充填率に応じて、ブラインドビア5の断面積を小さくする。例えば、完全に充填されているブラインドビア5の充填率を1とし、導電体7の断面積をSとするとき、充填率が0.3のブラインドビア5の断面積を「S×0.3」とする。
【0070】
このような第1モデルにおいて、充填率が第1基準値C以下を規格外とする通電条件を導き出すための通電条件設定式は以下のように求められる。なお、「充填率が第1基準値C以下を規格外とする通電条件」とは、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして、規格外ブラインドビア5Bを断線させるための通電条件をいう。
【0071】
通電条件は、第一に、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線させること、第二に、充填率が1であるブラインドビア5を断線させないことを要件とする。以下、要件ごとに説明する。
【0072】
充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5を断線させるための条件は次のようになる。
通電によるブラインドビア5の発熱量をJ1とする。一方、ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量をQ1とする。すると、充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5を断線させるための条件式は次のように与えられる。
J1/Q1≧1 … (1)
一方、充填率が1であるブラインドビア5を断線させない条件は次のようになる。
【0073】
通電によるブラインドビア5の発熱量をJAとする。一方、ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量をQAとする。すると、充填率が1であるブラインドビア5を断線させないための条件式は次のように与えられる。
JA/QA<1 … (2)
一般に、発熱量(J)は、通電の電流を「I」、通電時間を「t」、ブラインドビア5の抵抗を「R」とするとき、「J=I2・t・R」として与えられる。導電体7の比抵抗を「ρ」、導電体7と第1導電層2との接触抵抗を「Rc」、接触抵抗による発熱が導電体7の加熱に寄与する割合を「α」、導電体7の断面積を「S」とするとき、抵抗は「R=(ρ・d+α・Rc)/S」として与えられる。第1モデルでは充填率と断面積とを比例関係にあると仮定するため、この仮定と上記抵抗の式に基づけば、抵抗は充填率に反比例する。すなわち、充填率が1のブラインドビア5の発熱量(JA)と、充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5の発熱量(J1)との関係は次のようになる。
J1=JA/C … (3)
ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量(Q)は、導電体7の熱容量密度を「A」とし、ブラインドビア5の導電材料充填容積を「V」とし、室温と導電体7の溶融温度との差を「Td」とするとき、「Q=A・V・Td」として与えられる。この式において、「A」と「Td」は定数であるため、熱容量(Q)は導電体7の体積に比例する。すなわち、充填率が1のブラインドビア5の熱容量(QA)と、充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5の熱容量(Q1)との関係は次のようになる。
Q1=QA・C … (4)
上記式(1)および式(2)をまとめ、上記式(3)および式(4)に基づいて変形すると、以下の式(通電条件設定式)が成立する。
C2≦JA/QA<1 … (5)
すなわち、上記式(5)を満たすように電流および通電時間を設定することにより、充填率が1であるブラインドビア5を断線させず、かつ充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線させることができる。
【0074】
図7および図8を参照して、充填率が1のブラインドビア5と充填率が0.4のブラインドビア5とを各種通電条件で通電したときの断線結果について説明する。そして、充填率が0.4以下であるブラインドビア5を断線するとともに充填率が1であるブラインドビア5を断線しない通電条件を導き出すための上記通電条件設定式が有効なものである否かについて検討する。
【0075】
この試験の試料を次のように作成した。充填率が1であるブラインドビア5としては、半径30μm、深さ25μmの貫通孔6をUV−YAGレーザにより形成し、貫通孔6に導電性ペースト30を充填し、導電性ペースト30を加熱硬化したものを用いた。
【0076】
充填率が0.4のブラインドビア5としては、半径19μm、深さ25μmの貫通孔6をレーザにより形成し、この貫通孔6に導電性ペースト30を充填し、導電性ペースト30を加熱硬化したものを用いた。すなわち、第1モデルに基づいて規格外ブラインドビア5Bを形成した。
【0077】
式(5)のJA/QAを求めるため、発熱量(JA)は次のように求めた。
発熱量は上記したように「JA=I2・t・R」として与えられる。抵抗Rは「R=(ρ・d+α・Rc)/S」により与えられる。電流Iと通電時間t以外の各パラメータとして次の値を用いた。
・導電体7の比抵抗(ρ)を1.0×10−4Ω・cmとした。
・ブラインドビア5の深さ(d)は25μmとした。
・導電体7の断面積(S)を半径30μmの円面積とした。
・導電体7と第1導電層2(ステンレス)との接触抵抗Rcは2.4×10−6Ω・cm2とした。
・接触抵抗による発熱が導電体7の加熱に寄与する割合αは0.5とした。接触部分における発熱量の半分が導電体7に伝わり、残りの半分が第1導電層2に伝わると仮定して、この値を設定した。
【0078】
熱容量(QA)は次のように求めた。
熱容量は上記したように「QA=A・V・Td」として与えられる。ここで、各パラメータとして次の値を用いた。
・導電材料充填容積(V)は、ブラインドビア5の貫通孔6を半径30μm、深さ25μmの円柱とみなして算出した。
・室温と導電体7の溶融温度との差(Td)は、銀が溶融温度962℃と室温20℃とを用いて算出した。
・導電体7の熱容量密度(A)は2.02J/(K・cm3)とした。
【0079】
導電体7の熱容量密度(A)の値は、導電性フィラー(銀粒子)とエポキシ樹脂との容積比が60対40であることを考慮して、導電性フィラーの熱容量と導電性フィラーの容積比との積に、エポキシ樹脂の熱容量とエポキシ樹脂の容積比との積を足して得た値とした。ここで、導電性フィラー(銀粒子)の熱容量密度として2.48J/(K・cm3)を用いた。エポキシ樹脂の熱容量密度として1.32J/(K・cm3)を用いた。
【0080】
図7に示す各通電条件は、充填率が0.4以下であるブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして断線させるための通電条件設定式(上記式(5))が有効か否かを確認するために設定した条件である。
【0081】
第1条件〜第3条件は、JA/QAの値が上記式(5)を満たすように設定した条件である。すなわち、JA/QAの値が0.16(0.42)〜1.0の間の値をとるように設定した通電条件である。この通電条件で通電を行った場合、充填率が0.4のブラインドビア5を断線させることができた。また、充填率が1のブラインドビア5を断線させずに存在させることができた。
【0082】
第4条件および第5条件は、JA/QAの値が上記式(5)の下限値よりも小さい値となるように設定した条件である。すなわち、JA/QAの値が0.16(0.42)よりも小さい値となるように設定した通電条件である。この通電条件で通電を行った場合、充填率が0.4のブラインドビア5を断線させることができなかった。
【0083】
第6条件は、JA/QAの値が上記式(5)の上限値よりも大きい値となるように設定した条件である。すなわちJA/QAの値が1よりも大きい値となるように設定した通電条件である。この通電条件で通電を行った場合、充填率が1のブラインドビア5が断線した。
【0084】
以上の結果によれば、上記式(5)を満たすように通電条件を設定することにより、充填率が0.4以下であるブラインドビア5を断線させることができ、かつ充填率が1のブラインドビア5を断線させないことができる。
【0085】
図8は、通電条件設定式を図示したものである。縦軸は、JA/QAの値を示す。横軸は、規格外ブラインドビア5Bの充填率の上限値を示す。図上の各点は、図7に示す各通電条件における断線結果を示す。
【0086】
JA/QAが1以上である範囲は、充填率が1〜0までの全てのブラインドビア5が断線する範囲(全ブラインドビア断線範囲)を示す。すなわち、この範囲の通電条件では、全てのブラインドビア5が断線する可能性がある。
【0087】
JA/QAが「C2≦JA/QA<1」を満たす範囲は、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線させることができ、かつ充填率が1のブラインドビア5を断線させない範囲(選択断線可能範囲)を示す。すなわち、この範囲の通電条件では、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線することができる。
【0088】
「JA/QA<C2」を満たす範囲は、充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5を断線させることがでない範囲(断線不可能範囲)を示す。すなわち、この範囲の通電条件では、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線することができない。
【0089】
図9を参照して、第2モデルに対応する通電条件設定式について以下に説明する。
第2モデルは、導電体7と第1導電層2との接触面7Aに未接触の部分があるブラインドビア5をモデル化したものである。このモデルでは、ブラインドビア5には、気泡または未充填部50または絶縁性異物51が含まれていないものとする。すなわち、充填率を1とする。
【0090】
このような第2モデルにおいて、接触率が第2基準値D以下を規格外とする通電条件を導き出すための通電条件設定式は以下のように求められる。なお、「接触率が第2基準値D以下を規格外とする通電条件」とは、接触率が第2基準値D以下のブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして、この規格外ブラインドビア5Bを断線させるための通電条件をいう。ここで、接触率は、導電体7と第1導電層2との接触面7Aの大きさを基準面積として、基準面積に対する導電体7と第1導電層2との接触面積の比率とする。
【0091】
通電条件は、第一に、接触率が第2基準値D以下のブラインドビア5を断線させること、第二に、接触率が1であるブラインドビア5を断線させないことを要件とする。以下、要件ごとに説明する。
【0092】
接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5を断線させるための条件は次のようになる。
通電によるブラインドビア5の発熱量をJ2とする。一方、ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量をQ2とする。すると、接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5を断線させるための条件式は次のように与えられる。
J2/Q2≧1 … (6)
接触率が1であるブラインドビア5を断線させない条件は、第1モデルと同様に求められる。すなわち、次の条件式が成立する。
JA/QA<1 … (7)
一般に、発熱量(J)は、上記したように「J=I2・t・R」として与えられる。抵抗は、接触率に反比例すると考えられるため、接触率が1の抵抗をRAとすると、接触率が第2基準値Dの抵抗は「RA/D」となる。すると、接触率が1のブラインドビア5の発熱量(JA)と、接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5の発熱量(J2)との関係は、次のようになる。
J2=JA/D … (8)
ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量(Q)は、接触率とは無関係であるため、接触率が1のブラインドビア5の熱容量(QA)と、接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5の熱容量(Q2)との関係は次のようになる。
Q2=QA … (9)
上記式(6)および式(7)をまとめ、上記式(8)および式(9)に基づいて変形すると、以下の式(通電条件設定式)が成立する。
D≦JA/QA<1 … (10)
すなわち、上記式(10)を満たすように電流および通電時間を設定することにより、接触率が1であるブラインドビア5を断線させず、かつ接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5を断線させることができる。
【0093】
以上のように、上記式(5)または式(10)に基づく通電条件によれば、所定のパラメータを用いて規格外として設定した規格外ブラインドビア5Bを断線させることができる。なお、2つの式のうちいずれを採用するかについては、例えば、プリント配線板1の製造工程において発生しやすい不良の種類に基づいて、その種類に対応する式を選択する。すなわち、プリント配線板1の製造過程において、未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yが発生することが多く、部分接触ブラインドビア5Zが殆ど発生しないときは、充填率について不良規格を設定し、上記式(5)に基づいて通電条件を設定する。一方、部分接触ブラインドビア5Zが発生することが多いときは、接触率について不良規格を設定し、上記式(10)に基づいて通電条件が設定する。また、未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yおよび部分接触ブラインドビア5Zのいずれの不良も発生するときは、上記式(5)および上記式(10)に基づいて通電条件を導き、最も厳しい条件すなわち通電条件(I2・t)の大きい通電条件を選択する。
【0094】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、規格外ブラインドビア5Bが断線しかつ規格内ブラインドビア5Aが断線しない通電条件で、ブラインドビア5を通電する。この構成によれば、通電により、規格内ブラインドビア5Aを断線させず、かつ規格外ブラインドビア5Bを断線させることができる。これにより、規格内ブラインドビア5Aと規格外ブラインドビア5Bとを電気検査により容易に判別することが可能となる。
【0095】
(2)本実施形態では、ブラインドビア5の通電後、ブラインドビア5の断線状態について電気検査することにより規格内ブラインドビア5Aと規格外ブラインドビア5Bとをマーキングにより区別する。これにより、プリント配線板1内に規格外ブラインドビア5Bがあるか否かについて容易に把握することができる。
【0096】
(3)本実施形態では、ブラインドビア5内の導電材料充填容積に対する導電体7の充填率が第1基準値C以下であるブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとする場合に、通電条件を第1基準値Cの2乗に基づいて設定する。これにより、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして選択的に断線状態にする確率を高くすることができる。
【0097】
(4)本実施形態では、熱容量に対する発熱量の比(JA/QA)が第1基準値Cの2乗以上かつ1より小さい値となるように、通電条件を設定する。これにより、充填率が1のブラインドビア5が断線することを抑制し、かつ充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5が断線しないことを抑制することができる。
【0098】
(5)本実施形態では、第1導電層2と導電体7との接触面7Aに対する接触率が第2基準値D以下であるブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとする場合に、通電条件を第2基準値Dに基づいて設定する。これにより、接触率が第2基準値D以下のブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして選択的に断線状態にする確率を高くすることができる。
【0099】
(6)本実施形態では、熱容量に対する発熱量の比(JA/QA)が第2基準値D以上かつ1より小さい値となるように、通電条件を設定する。これにより、接触率が1のブラインドビア5が断線することを抑制し、かつ接触率が第2基準値D以下のブラインドビア5が断線しないことを抑制することができる。
【0100】
(7)本実施形態では、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれるブラインドビア5を有するプリント配線板1に対して、上記通電および電気検査を行う。この構成では、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれていないブラインドビア5に通電を行う場合と比べて、通電前後におけるブラインドビア5の抵抗の上昇を小さくすることができる。すなわち、上記通電によって生じうる規格内ブラインドビア5Aの劣化を抑制することができる。
【0101】
(8)本実施形態では、第1導電層2がステンレスにより形成されているブラインドビア5について通電を行う。これにより、ステンレスの酸化により導電体7と第1導電層2との間の接着力が小さくなっているブラインドビア5、または導電体7と第1導電層2と間の接触抵抗が増大している規格外ブラインドビア5Bを、規格内ブラインドビア5Aから電気的に判別可能とすることができる。さらに、電気検査を行ってマーキングすることにより規格外ブラインドビア5Bが含むプリント配線板1であるか否かを容易に判別することができる。これにより、電気機器の部材としてプリント配線板1が用いられている場合、規格外ブラインドビア5Bを含むプリント配線板1を容易に除去することができる。
【0102】
(9)本実施形態では、焼損による粉塵が移動しないように、ブラインドビア5が被覆層により覆う。これにより、プリント配線板1を用いた電子機器において上記粉塵による動作不良が生じることを抑制することができる。
【0103】
(10)本実施形態のプリント配線板1はブラインドビア5の良否判定検査が行われている。通電して選別された規格内ブラインドビア5Aには規格外ブラインドビア5Bが殆ど含まれて入ないため、プリント配線板1に環境変化により変形または膨張収縮することがあっても、規格内ブラインドビア5Aが断線することは殆どない。すなわち、通電を行っていないプリント配線板に比べて、プリント配線板1の変形または膨張収縮により、ブラインドビア5が断線する頻度を小さくすることができる。
【0104】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記各実施形態にて例示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0105】
・上記実施形態では、JA/QAが上記式(5)または式(10)を満たす通電条件を求めるとき、JA/QAの各パラメータのうち電流および通電時間以外のパラメータを物理量に基づいて設定している。すなわち、JA/QA=(I2・t・R)/(A・V・Td)のうち、「R/(A・V・Td)」の値を物理量から定めている。
【0106】
これに対して、次のように実測値により求めることもできる。例えば、JA/QA=1となる「I2・t」の値の最小値Xを実測により求め、この最小値Xに基づいて「R/(A・V・Td)」を求める。
【0107】
・上記実施形態では、条件式(5)または条件式(10)に基づいて通電条件を設定しているが、これに代えて、条件式(5)または条件式(10)を実際の検査結果に基づいて補正し、この補正式に基づいて通電条件を求めてもよい。
【0108】
・上記実施形態では、電気検査では、ブラインドビア5の抵抗の計測値に基づいてブラインドビア5の断線状態を判定する。これに対して、ブラインドビア5の電流量または電圧値に基づいてブラインドビア5の断線状態を判定してもよい。
【0109】
・上記実施形態では、第1導電層2と第2導電層4とがブラインドビア5のみで接続されているものについて本発明を適用しているが、以下の条件を備える場合には、ブラインドビア5以外の部分で電気的に接続されているプリント配線板1についても本発明を適用することができる。例えば、第1導電層2と第2導電層4とが2つのブラインドビア5で接続されている場合、一方のブラインドビア5が不良品であるとしてこのブラインドビア5に通電したとき、他のブラインドビア5に殆ど電流が流れない程度に両ブラインドビア5の距離が離れている場合、本発明を適用することができる。すなわち、ブラインドビア5の通電の際、第1導電層と第2導電層との間には対象のブラインドビア5以外の経路を通じて電流が流れないこと、あるいは電流が流れたとしても電流値が判定結果に影響を及ぼさないことが条件となる。
【0110】
・上記実施形態では、導電体7と第1導電層2と間で通電を行なっているが、導電体7と第2導電層4と間で通電を行なってもよい。導電体7と第2導電層4との間では、両者間の接触率の低下がブラインドビアの品質に影響を与えるため、上記第2モデルに近似するモデルに基づいて通電条件を設定する。すなわち、導電体7と第2導電層4との接触面に対する接触率が第3基準値以下であるブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとするとき、第3基準値に基づいて通電条件を設定する。
【0111】
・上記実施形態では、導電性ペースト30により形成されたブラインドビア5を有するプリント配線板1について本発明を適用しているが、電気メッキにより形成されたブラインドビア5を有するプリント配線板1について本発明を適用することもできる。
【0112】
・上記実施形態では、導電体7に接続されている第1導電層2がステンレスであるプリント配線板1について本発明を適用しているが、第1導電層2の形成材料はこれに限定されない。例えば、第1導電層2を銅により形成したプリント配線板1についても本発明を適用することができる。
【0113】
・上記実施形態では、導電層が2層のプリント配線板1に本発明の製造方法を適用しているが、導電層が3層以上の多層プリント配線板についても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1…プリント配線板、2…第1導電層、3…絶縁層、4…第2導電層、5…ブラインドビア、6…貫通孔、7…導電体、7A…接触面、11…被覆層、21…第1導電性フィラー、22…第2導電性フィラー、30…導電性ペースト、40A…第1プローブ、40B…第2プローブ、41…第1端子、42…第2端子、43…第3端子、44…第4端子、50…未充填部、51…絶縁性異物、60…電圧測定器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドビアを有するプリント配線板、およびプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板のブラインドビアは第1導電層と第2導電層とを導電体により接続する。導電体と第1導電層または第2導電層との接続状態が良好でないとき、プリント配線板の長期の使用により断線するおそれがある。例えば、プリント配線板が実装された電子機器の環境変化により、プリント配線板が膨張および収縮にサイクルを繰り返すことにより、ブラインドビアの不良箇所で断線に至ることがある。このため、プリント配線板の製造工程上で接続状態が良好でないブラインドビアを検出する。
【0003】
ブラインドビアホール内に充填される導電体が少なく、ブラインドビアの表面が凹んでブラインドビア底が見えている不良品は、外観検査により検出することができる。一方、ブラインドビア内部における導電体と金属層との接着不良に起因する不良品やブラインドビア内部に気泡や絶縁性異物がある不良品は、外観検査により検出することができない。
【0004】
外観で検出することのできない不良ブラインドビアを検出する方法として、例えば、特許文献1の記載の方法がある。この方法では、ブラインドビアの開口部に皮膜を形成した上で、プリント配線板を加熱する。不良ブラインドビアは加熱によりガスを発生させるため、不良ブラインドビア上の皮膜が変形する。そこで、皮膜の変形の有無について外観検査することによりブラインドビアを良否判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−173543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記に挙げた技術では、規格外のブラインドビアの検出するためのテスト用のブラインドビアについて検査するものであり、回路を構成するブラインドビアについては検査を行っていない。プリント配線板の信頼性を向上させるためには、個々のブラインドビアについて良品と不良品を判別する必要がある。
【0007】
ブラインドビアについて規格内のものであるか否かについて判定することができる技術が要求されている。また、ブラインドビアについて規格内にあるものと規格外にあるものとを容易に判別することのできるプリント配線板が要求されている。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラインドビアについて良否判別容易なプリント配線板、およびブラインドビアについて規格外か否かについて判定することができるプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1に記載の発明は、絶縁層を間に挟む第1導電層と第2導電層とを導電体により接続したブラインドビアを有するプリント配線板の製造方法において、前記ブラインドビアのうち、前記ブラインドビアが規格内にあるものを規格内ブラインドビアとし、前記ブラインドビアが規格外にあるものを規格外ブラインドビアとして、前記規格外ブラインドビアが断線しかつ前記規格内ブラインドビアが断線しない通電条件で前記ブラインドビアを通電することを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、通電により、規格内ブラインドビアを断線させず、かつ規格外ブラインドビアを断線させることができる。これにより、電気検査により、規格内ブラインドビアと規格外ブラインドビアとを容易に判別することが可能となる。
【0011】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプリント配線板において、前記ブラインドビアの通電後、前記ブラインドビアの断線状態について電気検査することにより前記規格外ブラインドビアと前記規格内ブラインドビアとを区別することを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、規格内ブラインドビアと規格外ブラインドビアとを区別するため、プリント配線板内に規格外ブラインドビアがあるか否かについて容易に把握することができる。
【0013】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法において、前記ブラインドビアの導電材料充填容積に対する前記導電体の充填率が第1基準値以下である前記ブラインドビアを前記規格外ブラインドビアとして、前記通電条件を前記第1基準値の2乗に基づいて設定することを要旨とする。
【0014】
ブラインドビアの導電材料充填容積に対する導電体の充填率が小さいとき、次の2つの作用がある。第1に、第1導電層と第2導電層とを接続する導電体の断面積が小さくなる。これにより、ブラインドビアの抵抗が大きくなり、通電による発熱量が増大する。第2に、断線状態に至るまでに必要な熱容量が小さくなる。第1の作用および第2の作用は、ともに、ブラインドビアの断線を促進させる。
【0015】
本発明では、この点を鑑み、充填率が第1基準値以下のものを規格外ブラインドビアとした場合に、通電条件を上記第1基準値の2乗に基づいて設定する。これにより、充填率が第1基準値以下のものを規格外ブラインドビアとして選択的に断線状態にする確率を高くすることができる。
【0016】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のプリント配線板の製造方法において、前記充填率が1である前記ブラインドビアを断線状態にするために必要な熱量を熱容量とし、前記充填率が1の前記ブラインドビアに前記通電条件で通電することにより前記ブラインドビアが発する熱量を発熱量として、前記熱容量に対する前記発熱量の比が前記第1基準値の2乗以上かつ1より小さい値となるように、前記通電条件を設定することを要旨とする。
【0017】
熱容量に対する発熱量の比を1以上として通電条件を設定するとき、充填率が1のブラインドビアが断線するおそれがある。一方、熱容量に対する発熱量の比を第1基準値の2乗未満として通電条件を設定するとき、充電率が第1基準値以下のブラインドビアが断線しないおそれがある。
【0018】
この点、本発明では、上記構成とすることにより、充填率が1のブラインドビアが断線することを抑制し、かつ充填率が第1基準値以下のブラインドビアが断線しないことを抑制することができる。
【0019】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法において、前記第1導電層が前記導電体と接触するものとして、前記第1導電層と前記導電体との接触面に対する接触率が第2基準値以下である前記ブラインドビアを前記規格外ブラインドビアとして、前記通電条件を前記第2基準値に基づいて設定することを要旨とする。
【0020】
第1導電層と導電体との間の接触率が小さくなるとき、第1導電層と導電体との接触抵抗が増大する。これは、ブラインドビアの断線を促進させるように作用する。本発明では、この点を鑑み、接触率が第2基準値以下であるブラインドビアを規格外ブラインドビアとした場合に、通電条件を、上記第2基準値に基づいて設定する。これにより、接触率が第2基準値以下のものを規格外ブラインドビアとして選択的に断線状態にする確率を高くすることができる。
【0021】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のプリント配線板の製造方法において、前記接触率が1である前記ブラインドビアを断線状態にするために必要な熱量を熱容量とし、前記接触率が1である前記ブラインドビアに前記通電条件で通電することにより前記ブラインドビアが発熱する熱量を発熱量として、前記熱容量に対する前記発熱量の比が前記第2基準値以上かつ1より小さい値となるように、前記通電条件を設定することを要旨とする。
【0022】
熱容量に対する発熱量の比を1以上として通電条件を設定するとき、接触率が1のブラインドビアが断線するおそれがある。一方、熱容量に対する発熱量の比を第2基準値未満として通電条件を設定するとき、接触率が第2基準値以下のブラインドビアが断線しないおそれがある。
【0023】
本発明では、上記構成とすることにより、接触率が1のブラインドビアが断線することを抑制し、かつ接触率が第2基準値以下のブラインドビアが断線しないことを抑制することができる。
【0024】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、前記導電体には、平均粒径が0.5μm〜2.0μmの銀粒子と平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子とが含まれることを要旨とする。
【0025】
正常なブラインドビアにおいて、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれていない導電性ペーストを用いて形成されたブラインドビアに対して上記の通電を行うと、通電による加熱によりブラインドビアが膨張することに起因して銀粒子同士の接点が離れ、抵抗が高くなることがある。
【0026】
これに対して、正常なブラインドビアにおいて、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含む導電性ペーストを用いて形成されたブラインドビアに対して上記の通電を行うと、抵抗が高くなることは殆どない。これは、通電による加熱により10nm〜500nmの銀粒子の表面または全体の溶融等によりブラインドビア内に導通経路を増大させるためである。すなわち、この種のブラインドビアでは、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれていない導電性ペースト30に比べて通電前後の抵抗の上昇が小さい。
【0027】
この発明では、上記組成のブラインドビアを有したプリント配線板に対して通電を行う。これにより、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれていないブラインドビアに通電を行う場合と比べて通電前後におけるブラインドビアの抵抗上昇を小さくすることができる。
【0028】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、前記第1導電層および前記第2導電層の少なくとも一方をステンレスにより形成することを要旨とする。
【0029】
導電層を形成する材料のうちステンレスは表面が酸化しやすいことで知られている。このため、第1導電層または第2導電層がステンレスにより形成されている場合、ステンレスの表面酸化により、導電体と導電層との接着力が低下するとともに導電体とこれら導電層との間での接触抵抗が大きくなる。表面酸化しているブラインドビアは、将来的に断線するおそれがあるため、回路の構成として使用しないことが望ましい。
【0030】
本発明では、第1導電層および第2導電層の少なくとも一方をステンレスにより形成されているプリント配線板に本発明を適用する。これにより、ステンレスの酸化により導電体と導電層との間の接着力が小さくなっているブラインドビアまたは導電体と導電層と間の接触抵抗が増大しているブラインドビアを、規格内ブラインドビアから電気的に判別可能とすることができる。
【0031】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、前記ブラインドビアを被覆層により覆うことを要旨とする。
ブラインドビアを通電すると、規格外ブラインドビアが焼損し、粉塵が生じることがある。粉塵がプリント配線板上に残存する場合、その後プリント配線板に電子部品等が搭載されて電気回路として動作させるときに粉塵が電子部品の端子の間に挟まって、動作不良を生じさせるおそれがある。本発明では、この点を考慮し、焼損による粉塵が移動しないように、ブラインドビアを被覆層により覆う。これにより、上記のような粉塵による動作不良が生じることを抑制することができる。
【0032】
(10)請求項10に記載のプリント配線板は上記製造方法により製造されていることを要旨とする。
この発明によれば、上記製造方法によりブラインドビアが通電されているため、通電により選別された規格内ブラインドビアには規格外ブラインドビアが殆ど含まれていない。このため、プリント配線板が周囲の環境変化により変形または膨張収縮することがあっても、規格内ブラインドビアが断線することは殆どない。すなわち、通電を行っていないプリント配線板に比べて、プリント配線板の変形または膨張収縮により、ブラインドビアが断線する頻度を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ブラインドビアについて良否判別容易なプリント配線板、およびブラインドビアについて規格外か否かについて判定することができるプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態のプリント配線板について、その断面構造を示す断面図。
【図2】同実施形態のプリント配線板について、ブラインドビアの断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態のプリント配線板の製造方法について、各製造工程の基板の断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態のプリント配線板について、規格外ブラインドビアの断面構造を示し、(A)は未充填があるブラインドビアの断面図、(B)は絶縁性異物を含むブラインドビアの断面図、(C)は接触面の一部が非接触状態にあるブラインドビアの断面図。
【図5】同実施形態のプリント配線板についてブラインドビアの検査方法を模式的に示す模式図。
【図6】未充填がある規格外ブラインドビアについて、通電条件を導くためのモデル。
【図7】同実施形態のプリント配線板について、各通電条件におけるブラインドビアの断線結果を示すテーブル。
【図8】同実施形態のプリント配線板について、充填率と選択断線可能範囲との関係を示すグラフ。
【図9】接触面に非接触部分があるブラインドビアについて、通電条件を導くためのモデル。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
図1を参照して、プリント配線板の断面構造について説明する。
プリント配線板1は、金属箔により形成された第1導電層2と、第1導電層2の表面上に設けられた絶縁層3と、絶縁層3の表面上に設けられ、所定の配線パターンを形成する第2導電層4と、第1導電層2と第2導電層4とを接続するブラインドビア5と、第2導電層4を被覆する被覆層11とを備えている。なお、第1導電層2と第2導電層4とはブラインドビア5以外の部分では電気的に接続されていない。
【0036】
第1導電層2はステンレスにより形成され、第1導電層2の厚みは1μm〜100μmとされている。なお、第1導電層2としては、ステンレスのほか、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、亜鉛等からなる金属箔を用いてもよい。
【0037】
絶縁層3としては、柔軟性にすぐれた樹脂材料が用いられる。例えば、ポリエステル系の樹脂、ポリアミド系の樹脂、ポリイミド系の樹脂により形成される。絶縁層3の厚みは5μm〜200μmとされている。
【0038】
第2導電層4は銅により形成されている。銅のほか、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金等により第2導電層4を形成してもよい。また、第2導電層4と、絶縁層3の間に、密着力を高めるために、ニッケルおよびクロムを含有させてもよい。また、第2導電層4が銅および銅合金の場合、第2導電層4と絶縁層3の間の層を設け、この層を、第2導電層4の表面に形成されるニッケルめっき層とこのニッケルめっき層の表面上に形成される金めっき層とにより構成してもよい。
【0039】
被覆層11は、上記絶縁層3と同様の樹脂材料により形成されている。例えば、ポリエステル系の樹脂、ポリアミド系の樹脂、ポリイミド系の樹脂が被覆層11の形成のために用いられる。被覆層11の厚みは5μm〜200μmとされている。
【0040】
ブラインドビア5は、第1導電層2と第2導電層4とを接続する導電体7により構成されている。導電体7は、導電性ペースト30を加熱硬化したものである。ブラインドビア5の直径は10μm〜200μmとされ、深さは5μm〜200μmとされる。導電体7は導電性フィラーとエポキシ樹脂(硬化物)とを含む。導電性フィラーとエポキシ樹脂との容積比は60対40とされている。
【0041】
導電性ペースト30としては、バインダ中に平均粒径の異なる2種類の導電性フィラーがエポキシ樹脂に分散されたものが用いられる。第1導電性フィラー21としては平均粒径0.5μm〜2.0μmの銀粉末が用いられ、第2導電性フィラー22としては平均粒径10nm〜500nmの銀粉末が用いられている。なお、第1導電性フィラー21および第2導電性フィラー22としては、銀粉末のほか、銀コート銅粉末、白金、金、銅、ニッケルおよびパラジウムの粉末を用いることができる。なお、平均粒径とは、粒径の積算分布における積算値50%の値(D50)を示す。積算分布は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した500個の粒子の画像解析により測定した円半径から体積換算して求めた値、動的光散乱式粒子径・粒度分布測定装置により求められる。
【0042】
バインダとしては、熱硬化性のエポキシ樹脂が用いられている。バインダは有機溶剤に溶かして用いられる。導電性ペースト30はスクリーン印刷等により貫通孔6に充填されるため、導電性ペースト30の有機溶剤としては印刷性に優れた溶媒が用いられる。例えば、カルビトールアセテートやブチルカルビトールアセテートが用いられる。
【0043】
図2を参照して、ブラインドビア5の断面構造について説明する。
ブラインドビア5は、貫通孔6に導電性ペースト30を充填し加熱処理することにより形成される。加熱処理により、溶剤が除去されるとともにバインダは硬化収縮して、導電性フィラー同士が互いに押圧された状態で接触する。導電性フィラーとして、平均粒径の異なる2種類のものが用いられているため、貫通孔6に導電性ペースト30を充填したとき、第1導電性フィラー21同士の隙間に第2導電性フィラー22が入り込む。このため、平均粒径の異なる2種類の導電性フィラーを用いて形成されたブラインドビア5は、第1導電性フィラー21のみを用いて形成されたブラインドビア5に比べて、貫通孔6の内部の導電性フィラーの密度が高く、かつ抵抗値が小さい。また、導電性フィラー同士の接点が多いため、導電体7が膨張したときの抵抗変化は、第1導電性フィラー21のみを用いて形成されたブラインドビア5に比べて小さい。
【0044】
図3を参照して、プリント配線板1の製造方法の一例を説明する。図3(A)〜(C)は、プリント配線板1の製造方法を説明するための断面図である。
図3(A)に示すように、絶縁層3の一方の面にセミアディティブ法により第2導電層4を形成する。
【0045】
次に、図3(B)に示すように、貫通孔6に導電性ペースト30を充填することにより、第1導電層2と第2導電層4とを当該導電性ペースト30を介して電気的に接続する。導電性ペースト30の充填はスクリーン印刷法により行なわれる。そして、導電性ペースト30の充填後、当該導電性ペースト30を加熱処理して硬化させる。
【0046】
次に、図3(C)に示すように、第2導電層4の表面上に被覆層11を積層して、第2導電層4および導電体7を被覆層11で被覆する。具体的には、ポリイミド系の感光性カバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工した後、乾燥し、さらに、露光現像して、第2導電層4の表面および導電体7の表面上に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の被覆層11を形成する。以上の工程により、プリント配線板1が形成される。
【0047】
ところで、導電性ペースト30の性質にはロット間にばらつきがあり、導電性ペースト30の性質は時間とともに変化する。また、印刷作業にばらつきがあり、第1導電層2の表面状態も様々であり、表面が酸化しているもの、表面の凹凸の小さいもの、表面にメッキ液が付着しているもの等がある。これらの要因により、ブラインドビア5の製造過程において種々の不良品が形成される。
【0048】
図4を参照して、ブラインドビア5の各種不良品について説明する。
図4(A)に示されるようにブラインドビア5の内部に未充填部50が形成される場合や、ブラインドビア5の内部に気泡が含まれる場合がある。以降では、内部に未充填部50が存在するブラインドビア5や気泡を含むブラインドビア5を「未充填ブラインドビア5X」という。
【0049】
ブラインドビア5の内部の未充填部50は、導電性ペースト30の粘度が適切でないこと、あるいは印刷工程が速すぎること等により発生する。ブラインドビア5の内部に気泡が入る要因としては、導電性ペースト30内に気泡が含まれることがあること、印刷法等により導電性ペースト30を貫通孔6に充填する際に気泡が形成されること等が挙げられる。気泡または未充填部50の一部は、ブラインドビア5の加熱処理工程により消滅するが、一部が残存する。気泡または未充填部50は、ブラインドビア5内の導電体7の量を少なくするため、ブラインドビア5の抵抗値を増大させる要因となる。
【0050】
図4(B)に示すように、ブラインドビア5の内部には絶縁性異物51が存在する場合もある。以降では、絶縁性異物51が含まれるブラインドビア5を「含異物ブラインドビア5Y」という。
【0051】
ブラインドビア5の内部に気泡が入る要因としては、導電性ペースト30内に絶縁性異物51が含まれることがあること、印刷法等により導電性ペースト30を貫通孔6に充填する際に絶縁性異物51が混入すること等が挙げられる。絶縁性異物51は、例えばプリント配線板1の搬送工程等で絶縁層3が欠けることにより発生する。絶縁性異物51は電気を通さないため、ブラインドビア5の抵抗が増大する。
【0052】
図4(C)に示すように、導電体7と第1導電層2との接触面7Aで両者が接触していない場合もある。以降では、導電体7と第1導電層2とが部分的に接触しているブラインドビア5、または導電体7と第1導電層2とが接触していないブラインドビア5を「部分接触ブラインドビア5Z」という。
【0053】
導電体7と第1導電層2の非接触状態は、ブラインドビア5の加熱処理工程における導電体7の膨張また収縮により導電体7と第1導電層2とが剥離すること、製造工程においてプリント配線板1に外力が加わることにより形成される。また、第1導電層2の表面が酸化することにより接着力が低下することに起因して非接触状態のブラインドビア5が形成される。導電体7と第1導電層2とが非接触状態にあるとき、ブラインドビア5の抵抗は大きくなる。
【0054】
上記未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yは、ブラインドビア5の軸方向において断面積が小さくなっている部分が存在する。当該部分は、断面積が小さいために力が集中しやすいこと、また電流が集中して過熱状態になりやすいことに起因して、当該部分で断線するおそれがある。
【0055】
また、部分接触ブラインドビア5Zは、非接触状態のないブラインドビア5と比べて、導電体7と第1導電層2との間の接触抵抗が大きいこと、当該非接触状態の部分を起点として剥離し易くなっていることに起因して、当該部分で断線するおそれがある。
【0056】
以上のように、未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yおよび部分接触ブラインドビア5Zは、正常ブラインドビア5に比べて、断線が生じやすい。このため、プリント配線板1から正常ブラインドビア5と判別するために、製造工程中でブラインドビア5の良否判定検査が行われている。
【0057】
図5を参照して、ブラインドビア5の良否判定検査について説明する。
良否判定検査では、規格外ブラインドビア5Bを断線状態にするとともに、規格内ブラインドビア5Aと規格外ブラインドビア5Bとを判別し、さらに、目視で両者の判別をすることができるように、マーキングをする。
【0058】
規格内ブラインドビア5Aは、ブラインドビア5の導電材料充填容積に対する充填率が第1基準値Cよりも大きいもの、および導電体7と第1導電層2との接触面7Aにおける接触率が第2基準値Dよりも大きいものを示す。
【0059】
規格外ブラインドビア5Bは、ブラインドビア5の導電材料充填容積に対する充填率が第1基準値C以下、および導電体7と第1導電層2との接触面7Aにおける接触率が第2基準値D以下のものを示す。
【0060】
なお、上記導電材料充填容積とは、貫通孔6および第1導電層2により形成される孔の容積を示す。充填率が1のとき、導電体7の体積とブラインドビア5の導電材料充填容積とが一致するものとする。
【0061】
通電および電気検査は1つの検査機により行われる。検査機のヘッドには、通電用の第1プローブ40Aと電気検査用の第2プローブ40Bとが設けられている。第1プローブ40Aは、軸方向に対向する第1端子41と第2端子42とにより構成されている。第1端子41は電流回路に接続されている。第2プローブ40Bは、軸方向に対向する第3端子43と第4端子44とにより構成されている。第3端子43と第4端子44は両端子の間の電圧を測定する電圧測定器60に接続され、電流と電圧から抵抗値を導いている。
【0062】
ブラインドビア5の通電および電気検査を行うときは、第1端子41および第3端子43を導電体7に接続するともに、第2端子42および第4端子44を第1導電層2に接続する。
【0063】
ブラインドビア5の良否判定検査は、ブラインドビア5に通電を行う工程(以下、「通電工程」)と、所定時間経過後、このブラインドビア5の電気検査をする工程(以下、「電気検査工程」)と、電気検査の結果に基づいてブラインドビア5にマーキングをする工程(以下、「マーキング工程」)とを含む。以下、各工程について説明する。
【0064】
通電工程では、所定条件(以下、「通電条件」)の電流をブラインドビア5に流すことにより、規格外ブラインドビア5Bを断線させる。これにより、規格内ブラインドビア5Aと規格外ブラインドビア5Bとを電気検査により判別することができるようにする。
【0065】
電気検査工程での判定は、次のように行う。ブラインドビア5の抵抗値が判定値以上のとき、ブラインドビア5が断線状態にある旨すなわち規格外ブラインドビア5Bである旨判定する。ブラインドビア5の抵抗値が判定値未満のときブラインドビア5が断線状態にない旨すなわち規格内ブラインドビア5Aである旨判定する。
【0066】
マーキング工程では、規格外ブラインドビア5Bである旨判定されたものに対して当該ブラインドビア5の周囲にマーキングを行う。マーキングの印の大きさは、目視により判別することができるものとする。
【0067】
図6〜図9を参照して、ブラインドビア5の通電条件を導き出すための通電条件設定式について説明する。
通電工程では、規格内ブラインドビア5Aを断線させず、かつ規格外ブラインドビア5Bを断線させる必要がある。このような通電条件は通電条件設定式により設定される。通電条件設定式は、規格外ブラインドビア5Bをモデル化したものに基づいて求められる。
【0068】
不良モデルとしては2種類考えられる。第1モデルは、上記未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yに対応するモデルである。第2モデルは、部分接触ブラインドビア5Zに対応するモデルである。各モデルに対応して通電条件設定式が異なるため、モデルに対応する通電条件設定式をそれぞれ説明する。
【0069】
図6を参照して、第1モデルについて説明する。
第1モデルでは、気泡または未充填部50または絶縁性異物51には電流が流れないものとして扱う。そして、気泡および未充填部50および絶縁性異物51の形状や個数に関係なく、ブラインドビア5内の導電材料充填容積に対する導電体7の体積の比率を示す充填率に応じて、ブラインドビア5の断面積を小さくする。例えば、完全に充填されているブラインドビア5の充填率を1とし、導電体7の断面積をSとするとき、充填率が0.3のブラインドビア5の断面積を「S×0.3」とする。
【0070】
このような第1モデルにおいて、充填率が第1基準値C以下を規格外とする通電条件を導き出すための通電条件設定式は以下のように求められる。なお、「充填率が第1基準値C以下を規格外とする通電条件」とは、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして、規格外ブラインドビア5Bを断線させるための通電条件をいう。
【0071】
通電条件は、第一に、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線させること、第二に、充填率が1であるブラインドビア5を断線させないことを要件とする。以下、要件ごとに説明する。
【0072】
充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5を断線させるための条件は次のようになる。
通電によるブラインドビア5の発熱量をJ1とする。一方、ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量をQ1とする。すると、充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5を断線させるための条件式は次のように与えられる。
J1/Q1≧1 … (1)
一方、充填率が1であるブラインドビア5を断線させない条件は次のようになる。
【0073】
通電によるブラインドビア5の発熱量をJAとする。一方、ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量をQAとする。すると、充填率が1であるブラインドビア5を断線させないための条件式は次のように与えられる。
JA/QA<1 … (2)
一般に、発熱量(J)は、通電の電流を「I」、通電時間を「t」、ブラインドビア5の抵抗を「R」とするとき、「J=I2・t・R」として与えられる。導電体7の比抵抗を「ρ」、導電体7と第1導電層2との接触抵抗を「Rc」、接触抵抗による発熱が導電体7の加熱に寄与する割合を「α」、導電体7の断面積を「S」とするとき、抵抗は「R=(ρ・d+α・Rc)/S」として与えられる。第1モデルでは充填率と断面積とを比例関係にあると仮定するため、この仮定と上記抵抗の式に基づけば、抵抗は充填率に反比例する。すなわち、充填率が1のブラインドビア5の発熱量(JA)と、充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5の発熱量(J1)との関係は次のようになる。
J1=JA/C … (3)
ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量(Q)は、導電体7の熱容量密度を「A」とし、ブラインドビア5の導電材料充填容積を「V」とし、室温と導電体7の溶融温度との差を「Td」とするとき、「Q=A・V・Td」として与えられる。この式において、「A」と「Td」は定数であるため、熱容量(Q)は導電体7の体積に比例する。すなわち、充填率が1のブラインドビア5の熱容量(QA)と、充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5の熱容量(Q1)との関係は次のようになる。
Q1=QA・C … (4)
上記式(1)および式(2)をまとめ、上記式(3)および式(4)に基づいて変形すると、以下の式(通電条件設定式)が成立する。
C2≦JA/QA<1 … (5)
すなわち、上記式(5)を満たすように電流および通電時間を設定することにより、充填率が1であるブラインドビア5を断線させず、かつ充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線させることができる。
【0074】
図7および図8を参照して、充填率が1のブラインドビア5と充填率が0.4のブラインドビア5とを各種通電条件で通電したときの断線結果について説明する。そして、充填率が0.4以下であるブラインドビア5を断線するとともに充填率が1であるブラインドビア5を断線しない通電条件を導き出すための上記通電条件設定式が有効なものである否かについて検討する。
【0075】
この試験の試料を次のように作成した。充填率が1であるブラインドビア5としては、半径30μm、深さ25μmの貫通孔6をUV−YAGレーザにより形成し、貫通孔6に導電性ペースト30を充填し、導電性ペースト30を加熱硬化したものを用いた。
【0076】
充填率が0.4のブラインドビア5としては、半径19μm、深さ25μmの貫通孔6をレーザにより形成し、この貫通孔6に導電性ペースト30を充填し、導電性ペースト30を加熱硬化したものを用いた。すなわち、第1モデルに基づいて規格外ブラインドビア5Bを形成した。
【0077】
式(5)のJA/QAを求めるため、発熱量(JA)は次のように求めた。
発熱量は上記したように「JA=I2・t・R」として与えられる。抵抗Rは「R=(ρ・d+α・Rc)/S」により与えられる。電流Iと通電時間t以外の各パラメータとして次の値を用いた。
・導電体7の比抵抗(ρ)を1.0×10−4Ω・cmとした。
・ブラインドビア5の深さ(d)は25μmとした。
・導電体7の断面積(S)を半径30μmの円面積とした。
・導電体7と第1導電層2(ステンレス)との接触抵抗Rcは2.4×10−6Ω・cm2とした。
・接触抵抗による発熱が導電体7の加熱に寄与する割合αは0.5とした。接触部分における発熱量の半分が導電体7に伝わり、残りの半分が第1導電層2に伝わると仮定して、この値を設定した。
【0078】
熱容量(QA)は次のように求めた。
熱容量は上記したように「QA=A・V・Td」として与えられる。ここで、各パラメータとして次の値を用いた。
・導電材料充填容積(V)は、ブラインドビア5の貫通孔6を半径30μm、深さ25μmの円柱とみなして算出した。
・室温と導電体7の溶融温度との差(Td)は、銀が溶融温度962℃と室温20℃とを用いて算出した。
・導電体7の熱容量密度(A)は2.02J/(K・cm3)とした。
【0079】
導電体7の熱容量密度(A)の値は、導電性フィラー(銀粒子)とエポキシ樹脂との容積比が60対40であることを考慮して、導電性フィラーの熱容量と導電性フィラーの容積比との積に、エポキシ樹脂の熱容量とエポキシ樹脂の容積比との積を足して得た値とした。ここで、導電性フィラー(銀粒子)の熱容量密度として2.48J/(K・cm3)を用いた。エポキシ樹脂の熱容量密度として1.32J/(K・cm3)を用いた。
【0080】
図7に示す各通電条件は、充填率が0.4以下であるブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして断線させるための通電条件設定式(上記式(5))が有効か否かを確認するために設定した条件である。
【0081】
第1条件〜第3条件は、JA/QAの値が上記式(5)を満たすように設定した条件である。すなわち、JA/QAの値が0.16(0.42)〜1.0の間の値をとるように設定した通電条件である。この通電条件で通電を行った場合、充填率が0.4のブラインドビア5を断線させることができた。また、充填率が1のブラインドビア5を断線させずに存在させることができた。
【0082】
第4条件および第5条件は、JA/QAの値が上記式(5)の下限値よりも小さい値となるように設定した条件である。すなわち、JA/QAの値が0.16(0.42)よりも小さい値となるように設定した通電条件である。この通電条件で通電を行った場合、充填率が0.4のブラインドビア5を断線させることができなかった。
【0083】
第6条件は、JA/QAの値が上記式(5)の上限値よりも大きい値となるように設定した条件である。すなわちJA/QAの値が1よりも大きい値となるように設定した通電条件である。この通電条件で通電を行った場合、充填率が1のブラインドビア5が断線した。
【0084】
以上の結果によれば、上記式(5)を満たすように通電条件を設定することにより、充填率が0.4以下であるブラインドビア5を断線させることができ、かつ充填率が1のブラインドビア5を断線させないことができる。
【0085】
図8は、通電条件設定式を図示したものである。縦軸は、JA/QAの値を示す。横軸は、規格外ブラインドビア5Bの充填率の上限値を示す。図上の各点は、図7に示す各通電条件における断線結果を示す。
【0086】
JA/QAが1以上である範囲は、充填率が1〜0までの全てのブラインドビア5が断線する範囲(全ブラインドビア断線範囲)を示す。すなわち、この範囲の通電条件では、全てのブラインドビア5が断線する可能性がある。
【0087】
JA/QAが「C2≦JA/QA<1」を満たす範囲は、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線させることができ、かつ充填率が1のブラインドビア5を断線させない範囲(選択断線可能範囲)を示す。すなわち、この範囲の通電条件では、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線することができる。
【0088】
「JA/QA<C2」を満たす範囲は、充填率が第1基準値Cであるブラインドビア5を断線させることがでない範囲(断線不可能範囲)を示す。すなわち、この範囲の通電条件では、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を断線することができない。
【0089】
図9を参照して、第2モデルに対応する通電条件設定式について以下に説明する。
第2モデルは、導電体7と第1導電層2との接触面7Aに未接触の部分があるブラインドビア5をモデル化したものである。このモデルでは、ブラインドビア5には、気泡または未充填部50または絶縁性異物51が含まれていないものとする。すなわち、充填率を1とする。
【0090】
このような第2モデルにおいて、接触率が第2基準値D以下を規格外とする通電条件を導き出すための通電条件設定式は以下のように求められる。なお、「接触率が第2基準値D以下を規格外とする通電条件」とは、接触率が第2基準値D以下のブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして、この規格外ブラインドビア5Bを断線させるための通電条件をいう。ここで、接触率は、導電体7と第1導電層2との接触面7Aの大きさを基準面積として、基準面積に対する導電体7と第1導電層2との接触面積の比率とする。
【0091】
通電条件は、第一に、接触率が第2基準値D以下のブラインドビア5を断線させること、第二に、接触率が1であるブラインドビア5を断線させないことを要件とする。以下、要件ごとに説明する。
【0092】
接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5を断線させるための条件は次のようになる。
通電によるブラインドビア5の発熱量をJ2とする。一方、ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量をQ2とする。すると、接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5を断線させるための条件式は次のように与えられる。
J2/Q2≧1 … (6)
接触率が1であるブラインドビア5を断線させない条件は、第1モデルと同様に求められる。すなわち、次の条件式が成立する。
JA/QA<1 … (7)
一般に、発熱量(J)は、上記したように「J=I2・t・R」として与えられる。抵抗は、接触率に反比例すると考えられるため、接触率が1の抵抗をRAとすると、接触率が第2基準値Dの抵抗は「RA/D」となる。すると、接触率が1のブラインドビア5の発熱量(JA)と、接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5の発熱量(J2)との関係は、次のようになる。
J2=JA/D … (8)
ブラインドビア5が室温にある状態から導電体7が溶融して断線状態に至るまでの熱容量(Q)は、接触率とは無関係であるため、接触率が1のブラインドビア5の熱容量(QA)と、接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5の熱容量(Q2)との関係は次のようになる。
Q2=QA … (9)
上記式(6)および式(7)をまとめ、上記式(8)および式(9)に基づいて変形すると、以下の式(通電条件設定式)が成立する。
D≦JA/QA<1 … (10)
すなわち、上記式(10)を満たすように電流および通電時間を設定することにより、接触率が1であるブラインドビア5を断線させず、かつ接触率が第2基準値Dであるブラインドビア5を断線させることができる。
【0093】
以上のように、上記式(5)または式(10)に基づく通電条件によれば、所定のパラメータを用いて規格外として設定した規格外ブラインドビア5Bを断線させることができる。なお、2つの式のうちいずれを採用するかについては、例えば、プリント配線板1の製造工程において発生しやすい不良の種類に基づいて、その種類に対応する式を選択する。すなわち、プリント配線板1の製造過程において、未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yが発生することが多く、部分接触ブラインドビア5Zが殆ど発生しないときは、充填率について不良規格を設定し、上記式(5)に基づいて通電条件を設定する。一方、部分接触ブラインドビア5Zが発生することが多いときは、接触率について不良規格を設定し、上記式(10)に基づいて通電条件が設定する。また、未充填ブラインドビア5Xおよび含異物ブラインドビア5Yおよび部分接触ブラインドビア5Zのいずれの不良も発生するときは、上記式(5)および上記式(10)に基づいて通電条件を導き、最も厳しい条件すなわち通電条件(I2・t)の大きい通電条件を選択する。
【0094】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、規格外ブラインドビア5Bが断線しかつ規格内ブラインドビア5Aが断線しない通電条件で、ブラインドビア5を通電する。この構成によれば、通電により、規格内ブラインドビア5Aを断線させず、かつ規格外ブラインドビア5Bを断線させることができる。これにより、規格内ブラインドビア5Aと規格外ブラインドビア5Bとを電気検査により容易に判別することが可能となる。
【0095】
(2)本実施形態では、ブラインドビア5の通電後、ブラインドビア5の断線状態について電気検査することにより規格内ブラインドビア5Aと規格外ブラインドビア5Bとをマーキングにより区別する。これにより、プリント配線板1内に規格外ブラインドビア5Bがあるか否かについて容易に把握することができる。
【0096】
(3)本実施形態では、ブラインドビア5内の導電材料充填容積に対する導電体7の充填率が第1基準値C以下であるブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとする場合に、通電条件を第1基準値Cの2乗に基づいて設定する。これにより、充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして選択的に断線状態にする確率を高くすることができる。
【0097】
(4)本実施形態では、熱容量に対する発熱量の比(JA/QA)が第1基準値Cの2乗以上かつ1より小さい値となるように、通電条件を設定する。これにより、充填率が1のブラインドビア5が断線することを抑制し、かつ充填率が第1基準値C以下のブラインドビア5が断線しないことを抑制することができる。
【0098】
(5)本実施形態では、第1導電層2と導電体7との接触面7Aに対する接触率が第2基準値D以下であるブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとする場合に、通電条件を第2基準値Dに基づいて設定する。これにより、接触率が第2基準値D以下のブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとして選択的に断線状態にする確率を高くすることができる。
【0099】
(6)本実施形態では、熱容量に対する発熱量の比(JA/QA)が第2基準値D以上かつ1より小さい値となるように、通電条件を設定する。これにより、接触率が1のブラインドビア5が断線することを抑制し、かつ接触率が第2基準値D以下のブラインドビア5が断線しないことを抑制することができる。
【0100】
(7)本実施形態では、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれるブラインドビア5を有するプリント配線板1に対して、上記通電および電気検査を行う。この構成では、平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子が含まれていないブラインドビア5に通電を行う場合と比べて、通電前後におけるブラインドビア5の抵抗の上昇を小さくすることができる。すなわち、上記通電によって生じうる規格内ブラインドビア5Aの劣化を抑制することができる。
【0101】
(8)本実施形態では、第1導電層2がステンレスにより形成されているブラインドビア5について通電を行う。これにより、ステンレスの酸化により導電体7と第1導電層2との間の接着力が小さくなっているブラインドビア5、または導電体7と第1導電層2と間の接触抵抗が増大している規格外ブラインドビア5Bを、規格内ブラインドビア5Aから電気的に判別可能とすることができる。さらに、電気検査を行ってマーキングすることにより規格外ブラインドビア5Bが含むプリント配線板1であるか否かを容易に判別することができる。これにより、電気機器の部材としてプリント配線板1が用いられている場合、規格外ブラインドビア5Bを含むプリント配線板1を容易に除去することができる。
【0102】
(9)本実施形態では、焼損による粉塵が移動しないように、ブラインドビア5が被覆層により覆う。これにより、プリント配線板1を用いた電子機器において上記粉塵による動作不良が生じることを抑制することができる。
【0103】
(10)本実施形態のプリント配線板1はブラインドビア5の良否判定検査が行われている。通電して選別された規格内ブラインドビア5Aには規格外ブラインドビア5Bが殆ど含まれて入ないため、プリント配線板1に環境変化により変形または膨張収縮することがあっても、規格内ブラインドビア5Aが断線することは殆どない。すなわち、通電を行っていないプリント配線板に比べて、プリント配線板1の変形または膨張収縮により、ブラインドビア5が断線する頻度を小さくすることができる。
【0104】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記各実施形態にて例示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0105】
・上記実施形態では、JA/QAが上記式(5)または式(10)を満たす通電条件を求めるとき、JA/QAの各パラメータのうち電流および通電時間以外のパラメータを物理量に基づいて設定している。すなわち、JA/QA=(I2・t・R)/(A・V・Td)のうち、「R/(A・V・Td)」の値を物理量から定めている。
【0106】
これに対して、次のように実測値により求めることもできる。例えば、JA/QA=1となる「I2・t」の値の最小値Xを実測により求め、この最小値Xに基づいて「R/(A・V・Td)」を求める。
【0107】
・上記実施形態では、条件式(5)または条件式(10)に基づいて通電条件を設定しているが、これに代えて、条件式(5)または条件式(10)を実際の検査結果に基づいて補正し、この補正式に基づいて通電条件を求めてもよい。
【0108】
・上記実施形態では、電気検査では、ブラインドビア5の抵抗の計測値に基づいてブラインドビア5の断線状態を判定する。これに対して、ブラインドビア5の電流量または電圧値に基づいてブラインドビア5の断線状態を判定してもよい。
【0109】
・上記実施形態では、第1導電層2と第2導電層4とがブラインドビア5のみで接続されているものについて本発明を適用しているが、以下の条件を備える場合には、ブラインドビア5以外の部分で電気的に接続されているプリント配線板1についても本発明を適用することができる。例えば、第1導電層2と第2導電層4とが2つのブラインドビア5で接続されている場合、一方のブラインドビア5が不良品であるとしてこのブラインドビア5に通電したとき、他のブラインドビア5に殆ど電流が流れない程度に両ブラインドビア5の距離が離れている場合、本発明を適用することができる。すなわち、ブラインドビア5の通電の際、第1導電層と第2導電層との間には対象のブラインドビア5以外の経路を通じて電流が流れないこと、あるいは電流が流れたとしても電流値が判定結果に影響を及ぼさないことが条件となる。
【0110】
・上記実施形態では、導電体7と第1導電層2と間で通電を行なっているが、導電体7と第2導電層4と間で通電を行なってもよい。導電体7と第2導電層4との間では、両者間の接触率の低下がブラインドビアの品質に影響を与えるため、上記第2モデルに近似するモデルに基づいて通電条件を設定する。すなわち、導電体7と第2導電層4との接触面に対する接触率が第3基準値以下であるブラインドビア5を規格外ブラインドビア5Bとするとき、第3基準値に基づいて通電条件を設定する。
【0111】
・上記実施形態では、導電性ペースト30により形成されたブラインドビア5を有するプリント配線板1について本発明を適用しているが、電気メッキにより形成されたブラインドビア5を有するプリント配線板1について本発明を適用することもできる。
【0112】
・上記実施形態では、導電体7に接続されている第1導電層2がステンレスであるプリント配線板1について本発明を適用しているが、第1導電層2の形成材料はこれに限定されない。例えば、第1導電層2を銅により形成したプリント配線板1についても本発明を適用することができる。
【0113】
・上記実施形態では、導電層が2層のプリント配線板1に本発明の製造方法を適用しているが、導電層が3層以上の多層プリント配線板についても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1…プリント配線板、2…第1導電層、3…絶縁層、4…第2導電層、5…ブラインドビア、6…貫通孔、7…導電体、7A…接触面、11…被覆層、21…第1導電性フィラー、22…第2導電性フィラー、30…導電性ペースト、40A…第1プローブ、40B…第2プローブ、41…第1端子、42…第2端子、43…第3端子、44…第4端子、50…未充填部、51…絶縁性異物、60…電圧測定器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を間に挟む第1導電層と第2導電層とを導電体により接続したブラインドビアを有するプリント配線板の製造方法において、
前記ブラインドビアのうち、前記ブラインドビアが規格内にあるものを規格内ブラインドビアとし、前記ブラインドビアが規格外にあるものを規格外ブラインドビアとして、
前記規格外ブラインドビアが断線しかつ前記規格内ブラインドビアが断線しない通電条件で前記ブラインドビアを通電する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記ブラインドビアの通電後、前記ブラインドビアの断線状態について電気検査することにより前記規格外ブラインドビアと前記規格内ブラインドビアとを区別する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記ブラインドビアの導電材料充填容積に対する前記導電体の充填率が第1基準値以下である前記ブラインドビアを前記規格外ブラインドビアとして、
前記通電条件を前記第1基準値の2乗に基づいて設定する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記充填率が1である前記ブラインドビアを断線状態にするために必要な熱量を熱容量とし、
前記充填率が1の前記ブラインドビアに前記通電条件で通電することにより前記ブラインドビアが発する熱量を発熱量として、
前記熱容量に対する前記発熱量の比が前記第1基準値の2乗以上かつ1より小さい値となるように、前記通電条件を設定する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記第1導電層が前記導電体と接触するものとして、
前記第1導電層と前記導電体との接触面に対する接触率が第2基準値以下である前記ブラインドビアを前記規格外ブラインドビアとして、
前記通電条件を前記第2基準値に基づいて設定する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記接触率が1である前記ブラインドビアを断線状態にするために必要な熱量を熱容量とし、
前記接触率が1である前記ブラインドビアに前記通電条件で通電することにより前記ブラインドビアが発熱する熱量を発熱量として、
前記熱容量に対する前記発熱量の比が前記第2基準値以上かつ1より小さい値となるように、前記通電条件を設定する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記導電体には、平均粒径が0.5μm〜2.0μmの銀粒子と平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子とが含まれる
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記第1導電層および前記第2導電層の少なくとも一方をステンレスにより形成する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記ブラインドビアを被覆層により覆う
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法により製造されたプリント配線板。
【請求項1】
絶縁層を間に挟む第1導電層と第2導電層とを導電体により接続したブラインドビアを有するプリント配線板の製造方法において、
前記ブラインドビアのうち、前記ブラインドビアが規格内にあるものを規格内ブラインドビアとし、前記ブラインドビアが規格外にあるものを規格外ブラインドビアとして、
前記規格外ブラインドビアが断線しかつ前記規格内ブラインドビアが断線しない通電条件で前記ブラインドビアを通電する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記ブラインドビアの通電後、前記ブラインドビアの断線状態について電気検査することにより前記規格外ブラインドビアと前記規格内ブラインドビアとを区別する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記ブラインドビアの導電材料充填容積に対する前記導電体の充填率が第1基準値以下である前記ブラインドビアを前記規格外ブラインドビアとして、
前記通電条件を前記第1基準値の2乗に基づいて設定する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記充填率が1である前記ブラインドビアを断線状態にするために必要な熱量を熱容量とし、
前記充填率が1の前記ブラインドビアに前記通電条件で通電することにより前記ブラインドビアが発する熱量を発熱量として、
前記熱容量に対する前記発熱量の比が前記第1基準値の2乗以上かつ1より小さい値となるように、前記通電条件を設定する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記第1導電層が前記導電体と接触するものとして、
前記第1導電層と前記導電体との接触面に対する接触率が第2基準値以下である前記ブラインドビアを前記規格外ブラインドビアとして、
前記通電条件を前記第2基準値に基づいて設定する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記接触率が1である前記ブラインドビアを断線状態にするために必要な熱量を熱容量とし、
前記接触率が1である前記ブラインドビアに前記通電条件で通電することにより前記ブラインドビアが発熱する熱量を発熱量として、
前記熱容量に対する前記発熱量の比が前記第2基準値以上かつ1より小さい値となるように、前記通電条件を設定する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記導電体には、平均粒径が0.5μm〜2.0μmの銀粒子と平均粒径が10nm〜500nmの銀粒子とが含まれる
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記第1導電層および前記第2導電層の少なくとも一方をステンレスにより形成する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法において、
前記ブラインドビアを被覆層により覆う
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のプリント配線板の製造方法により製造されたプリント配線板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−204803(P2012−204803A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70894(P2011−70894)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】
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