説明

プリント配線板の製造方法及び搬送用ローラ

【課題】導体層を有する絶縁フィルムへの、搬送用ローラによる傷及び異物付着を低減する。
【解決手段】導体層を有する絶縁フィルムをロールツーロール法により搬送しながら処理液30に浸漬して処理するプリント配線板の製造方法であって、処理液30中に設けられ、処理液30中で絶縁フィルムを搬送する搬送用ローラ51側から絶縁フィルムに対して流体を噴射することにより、絶縁フィルムを搬送用ローラ51に接触させることなく搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールツーロール法によるプリント配線板の製造方法及び前記プリント配線板の製造方法に用いる搬送用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板には、可撓性の絶縁フィルム上に銅箔等により導体パターンを形成した、TAB(Tape Automated Bonding)方式やCOF(Chip On Film)方式等のプリント配線板(以降、これらを代表してTABと記す)がある。TABの製造工程には、例えば導体層を有する絶縁フィルム等のTAB用フィルムをロールツーロール法により搬送しながら処理液に浸漬して、上記TAB用フィルムにエッチングや洗浄等の処理を実施する工程がある。
【0003】
図5は、従来の搬送用ローラ351を備える浸漬処理装置3により、TAB用フィルム310を浸漬して処理する様子を表す模式図である。従来の浸漬によるTAB用フィルム310の処理工程では、例えば送り出し用ローラ341により、処理槽320内に収容した処理液330中にTAB用フィルム310を送り出し、処理液330中に設けられた複数の搬送用ローラ351により処理液330中でTAB用フィルム310を搬送しつつ、TAB用フィルム310に所定の処理を施して、引き出し用ローラ342により処理液330中からTAB用フィルム310を引き出していた。処理槽320にはポンプ361を備えた処理液330の循環路362が接続され、例えばバブリング処理等を行う再生装置360を介して処理液330を循環させることにより、処理槽20内の処理液330を所定品質に保ちつつ、処理槽320内の処理液330の均一化を図ることができるようになっている。
【0004】
ロールツーロール法を用いた例としては、上記のような処理液中での搬送ではないものの、例えば特許文献1に以下の開示がなされている。特許文献1によれば、長尺状の金属素材を搬送する際、製造工程におけるキズの発生等を防止するため、金属素材の使用されない廃棄部分に接触する凸部を設けた鼓状の搬送用ローラを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−020986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、TAB用フィルム310を処理液330に浸漬して処理する際に、処理液330中に設けられた複数の搬送用ローラ351のローラ面は、TAB用フィルム310の搬送方向を変換する位置351tにおいて、TAB用フィルム310と接触する。このように、TAB用フィルム310にローラ面が接触してしまうと、TAB用フィルム310に傷が生じてしまったり、TAB用フィルム310上に搬送用ローラ351からの異物が転写されてしまったりする場合があった。
【0007】
そこで、例えば上記特許文献1の技術を適用し、搬送用ローラに凸部を設けた鼓状の搬送用ローラを使用してTAB用フィルムと搬送用ローラとの接触面積を減らすことで、傷や異物を低減することも考えられる。しかしながら、TAB用フィルムと搬送用ローラとの接触面積を減らすとTAB用フィルムの搬送が不安定となり、TAB用フィルムが位置ずれを起こしたり、弛んだりしてしまうおそれがある。また、TABの導体パターンやデ
ザインは多種多様であるため、TABの種類ごとに凸部位置の異なる搬送用ローラを用意しなければならず、さらに、製造するTABの種類が変わるたびに、例えば浸漬処理装置内の数百本にも及ぶ搬送用ローラを交換しなければならず、時間やコストが掛ってしまう。
【0008】
本発明の目的は、導体層を有する絶縁フィルムへの、搬送用ローラによる傷及び異物付着を低減することが可能なプリント配線板の製造方法及び搬送用ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、導体層を有する絶縁フィルムをロールツーロール法により搬送しながら処理液に浸漬して処理するプリント配線板の製造方法であって、前記処理液中に設けられ、前記処理液中で前記絶縁フィルムを搬送する搬送用ローラ側から前記絶縁フィルムに対して流体を噴射することにより、前記絶縁フィルムを前記搬送用ローラに接触させることなく搬送するプリント配線板の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、前記流体は、処理液又は気体の少なくともいずれかである第1の態様に記載のプリント配線板の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、前記処理液及び前記流体は酸化剤であり、前記処理液の酸化作用により前記絶縁フィルムを処理し、前記流体の噴射により前記処理液を酸化して再生する第1又は第2の態様に記載のプリント配線板の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、前記搬送用ローラのローラ面に開口した噴射口から前記流体を噴射する第1〜第3の態様のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、第1〜第4の態様のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法に用いられる搬送用ローラであって、前記搬送用ローラは、ローラ本体と、前記ローラ本体の軸方向に設けられ、前記ローラ本体の内部に前記流体を導入する流体導入路と、前記流体導入路から前記ローラ本体のローラ面に連通し、前記流体導入路に導入された前記流体を噴射する噴射口と、を備える搬送用ローラが提供される。
【0014】
本発明の第6の態様によれば、前記噴射口は、前記ローラ面に垂直な方向に対して前記流体を前記絶縁フィルムの搬送方向に向けて所定角度傾けて噴射する第5の態様に記載の搬送用ローラが提供される。
【0015】
本発明の第7の態様によれば、前記ローラ本体の少なくとも前記ローラ面側は多孔質体で構成され、前記多孔質体の有する孔が前記噴射口を構成する第5又は第6の態様に記載の搬送用ローラが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導体層を有する絶縁フィルムへの、搬送用ローラによる傷及び異物付着を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造方法を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造方法に用いる搬送用ローラを説明する図であって、(a)は搬送用ローラの斜視図であり、(b)は搬送用ローラを装着した浸漬処理装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態の変形例に係る搬送用ローラを示す部分断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造方法を示す模式図である。
【図5】従来例に係るプリント配線板の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造方法及び係る製造方法に用いられる搬送用ローラについて説明する。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法では、例えば導体層を有する絶縁フィルムをエッチング液、洗浄液、現像液等の処理液中に浸漬して実施される、エッチング、洗浄、現像等の処理がなされる。
【0019】
上記処理を実施する絶縁フィルムは、例えばポリイミド(PI)等の可撓性を有する有機樹脂材からなり、少なくとも片面に導体層を有し、TAB等のプリント配線板に用いるフィルム(以下、TAB用フィルムと記載)として構成されている。導体層は、例えば絶縁フィルム上に形成された銅(Cu)箔等の金属薄膜、或いは、エッチング等によりパターニングが施され、配線やパッド等が形成された導体パターンである。
【0020】
以下においては、絶縁フィルムが有する金属薄膜である導体層に対して、エッチング液によりハーフエッチングを施す場合について説明する。上記ハーフエッチングにより、例えば導体層の表面に付着する油脂を除去したり、導体層の表面を粗化したりする。導体層を表面粗化することでアンカー効果が得られ、例えば後の工程で導体層上に形成される上層との密着性を向上させることができる。
【0021】
(1)浸漬処理装置の構造
まずは、上記処理に使用する浸漬処理装置及び浸漬処理装置が備える搬送用ローラの構造について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法を示す模式図である。図2は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法に用いる搬送用ローラを説明する図であって、(a)は搬送用ローラの斜視図であり、(b)は搬送用ローラが装着された浸漬処理装置を示す概略構成図である。図1に示す浸漬処理装置1は、例えば導体層を有する絶縁フィルムとしてのTAB用フィルム10を、ロールツーロール法により搬送しながら処理液30に浸漬して処理する落とし込み型装置として構成されている。
【0022】
浸漬処理装置1は、例えば塩化第二銅(CuCl)を含むエッチング液等の処理液30を収容する処理槽20を備えている。処理槽20の一端側の上方には、TAB用フィルム10を処理液30中に送り出す送り出し用ローラ41が設けられている。また、処理槽20内には、処理液30中でTAB用フィルム10をガイドして搬送する搬送用ローラ51が、処理液30中に浸漬された状態で複数設けられている。送り出し用ローラ41と対向する位置、つまり、処理槽20の他端側の上方には、処理液30中からTAB用フィルム10を引き出す引き出し用ローラ42が設けられている。複数の搬送用ローラ51は、浸漬処理装置1の処理槽20にそれぞれ回転自在に装着されている。以上の構成を用い、例えばエッチング液中に含まれる塩化第二銅の酸化作用を利用したエッチング等、処理液30中でTAB用フィルム10に対して所定の処理を施す。
【0023】
処理槽20には、処理槽20内の処理液30を外部に取り出し、再び処理槽20内に戻す循環路62が形成されている。循環路62には、処理液30を循環させて流すポンプ61が設けられている。循環路62のポンプ61吸引側の端部は、処理槽20の底部に接続
され、循環路62のポンプ61吐出側の端部は、処理槽20内に設けられた複数の搬送用ローラ51にそれぞれ接続されている。循環路62には、処理液30に例えばバブリング処理等の再生処理を施す再生装置60が設けられている。バブリングガスとしては、例えば酸素(O)ガスを含むドライエア等の酸化剤を用いることができる。処理槽20から循環路62内へと排出された使用済みの処理液30は、再生装置60により再生処理を施され、ポンプ61の吐出圧により、搬送用ローラ51を介して再び処理槽20へと供給される。
【0024】
なお、図1において、処理槽20内の同じ高さに並ぶ搬送用ローラ51を2つ示したが、搬送用ローラ51の個数や配置はこれに限られない。処理液30中、搬送用ローラは1つまたは複数設けることができ、その配置を様々に変えることで、TAB用フィルム10の搬送方向を様々に変化させながら処理液30中を搬送させることができる。例えば、処理槽20内に上下、交互に搬送用ローラを配置し、処理液30中を蛇行させてTAB用フィルム10を搬送することで、処理槽20内のTAB用フィルム10の搬送距離を長くするようにしてもよい。
【0025】
図2に、本実施形態に係る搬送用ローラ51の構造を示す。図2(a)に示すように、各々の搬送用ローラ51は、ローラ本体511と、ローラ本体511の軸方向に設けられ、ローラ本体511の内部に、ローラ本体511から噴射する流体としての再生後の処理液30を導入する流体導入路512と、流体導入路512からローラ本体511のローラ面に連通し、流体導入路512に導入された処理液30を噴射する噴射口513と、を備えている。
【0026】
搬送用ローラ51が備える噴射口513は、例えば流体導入路512から放射状にローラ面へと延び、ローラ面の全面に分散状に配置されて、例えば直径1.0mm以下の円形状にローラ面に開口している。ローラ本体511の軸方向の両端には、TAB用フィルム10が搬送ずれ等を起こさないよう、搬送方向を制御するフランジ部514が形成されている。また、フランジ部514は、噴射口513から噴射された流体を一時的にローラ面上に保ち、この流体によって、搬送用ローラ51とTAB用フィルム10との接触を有効に抑制する。
【0027】
図2(b)に示すように、各々の搬送用ローラ51の一端部は、処理槽20の内壁に設けられた支軸21に図示省略のベアリングを介して回転自在に支持されている。また、ローラ本体511の他端部には、循環路62の一端がロータリージョイント63を介して接続されており、ロータリージョイント63により、搬送用ローラ51が回転可能に、かつ、循環路62からの再生後の処理液30が漏れないようにシールされている。循環路62に設けられたポンプ61の吐出圧により、循環路62からローラ本体511の流体導入路512内に導入された再生後の処理液30は、ローラ本体511のローラ面に連通する噴射口513から、TAB用フィルム10に対して略垂直に噴射される。
【0028】
(2)プリント配線板の製造方法
次に、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法について、以下に説明する。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法では、導体層を有する絶縁フィルムとしてのTAB用フィルム10を、ロールツーロール法により搬送しながら処理液30に浸漬して処理する。以下においては、上述のとおり、図1に示す浸漬処理装置1を用い、TAB用フィルム10に対して塩化第二銅を含むエッチング液を用いたハーフエッチングを実施する場合について説明する。
【0029】
まず、送り出し用ローラ41により、処理液30中にTAB用フィルム10を送り出す。このとき、例えば導体層が形成された面(処理面)が、送り出し用ローラ41のローラ
面側とは反対側に向くよう、TAB用フィルム10が送り出される。次に、複数の搬送用ローラ51により、搬送方向を変化させながら処理液30中でTAB用フィルム10を搬送し、例えばエッチング液中の塩化第二銅による酸化作用を利用したエッチング等をTAB用フィルム10に対して行う。このとき、例えばTAB用フィルム10の処理面は、搬送用ローラ51側を向いている。エッチング等の所定の処理が施されたTAB用フィルム10は、処理面を引き出し用ローラ42とは反対側に向けて、引き出し用ローラ42により処理液30中から引き出され、TAB用フィルム10の処理が終了する。
【0030】
上述のように、処理液30中でTAB用フィルム10を搬送するときは、搬送用ローラ51側からTAB用フィルム10に対して、流体としての再生後の処理液30を噴射することにより、TAB用フィルム10を搬送用ローラ51に接触させることなく搬送する。以下、その詳細について説明する。
【0031】
例えばエッチング液等の処理液30中に含まれる塩化第二銅は、酸化作用によりTAB用フィルム10が有する銅箔等(図示せず)をエッチングする。つまり、エッチングの進行とともに塩化第二銅自体は還元される。そこで、循環路62を循環する間に処理液30を再生装置60により再生し、処理槽20内に戻す。再生装置60は、例えばドライエア等を用いたバブリング処理により、ドライエア中の酸素ガスを酸化剤として、処理液30を再び酸化して再生する。
【0032】
後述するように、搬送用ローラ51から再生後の処理液30を処理槽20内に噴射供給することで、処理槽20内の処理液30を所定品質に保つことができ、TAB用フィルム10に対する処理特性を安定させることができる。また、処理液30を循環させることで、処理槽20内の処理液30が流動するので、処理液30を均一に保つことができる。さらに、処理槽20内に生じた液流により、エッチング等の処理が促進される。
【0033】
再生された処理液30は、ポンプ61の吐出圧により、搬送用ローラ51のローラ本体511内部の流体導入路512へと導入される。そして、処理液30は、搬送用ローラ51のローラ面に開口した噴射口513から噴射され、搬送中のTAB用フィルム10の表面に略垂直に当たる。TAB用フィルム10は、噴射された処理液30の勢いで搬送用ローラ51のローラ面から離れた状態のまま、搬送用ローラ51に沿って搬送方向を変化させながら、処理液30中を搬送されていく。つまり、搬送用ローラ51とTAB用フィルム10との間には、搬送用ローラ51から噴射された処理液30の流体層が形成され、搬送用ローラ51とTAB用フィルム10とが直接的に接触することがないように、TAB用フィルム10が搬送される。
【0034】
(3)第1実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示すひとつ又は複数の効果を奏する。
【0035】
本実施形態では、処理液30中に設けられ、処理液30中でTAB用フィルム10を搬送する搬送用ローラ51側からTAB用フィルム10に対して再生後の処理液30を噴射することにより、TAB用フィルム10を搬送用ローラ51に接触させることなく搬送する。これにより、例えばTAB用フィルム10が搬送用ローラ51と接触して、TAB用フィルム10が有する導体層に傷が生じてしまったり、搬送用ローラ51から異物が転写されてしまったりするのを抑制することができる。傷や異物付着を抑制することで、プリント配線板の不良を低減し、歩留まりを向上させることができる。
【0036】
また、搬送用ローラ51が備える噴射口513から再生後の処理液30を噴射することで、例えば搬送用ローラ51側に向いたTAB用フィルム10の処理面に、処理能力の高い新鮮な処理液30を供給することができ、エッチング等の処理を促進させることができ
る。
【0037】
また、搬送用ローラ51が備える噴射口513の直径は、直径1.0mm以下である。これにより、噴射口513から処理液30を噴射させる際、ポンプ61の容量をあまり増大させることなく、所定圧力で処理液30を噴射させることができる。
【0038】
(4)第1実施形態の変形例
続いて、第1実施形態の変形例に係る搬送用ローラについて、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態の変形例に係る搬送用ローラ52を示す部分断面図である。この変形例に係る搬送用ローラ52は、噴射口523の形状が上述の実施形態とは異なる。
【0039】
図3に示すように、搬送用ローラ52が備える噴射口523は、ローラ面521に垂直な方向に対して再生後の処理液30をTAB用フィルム10の搬送方向mに向けて所定角度θ、傾けて噴射するよう構成されている。すなわち、噴射口523は、流体導入路522からローラ本体521のローラ面に所定角度θ、傾いた状態で連通している。
【0040】
これによって、TAB用フィルム10をより確実に搬送方向mへと送り出すことができ、TAB用フィルム10の搬送を安定させることができる。
【0041】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造方法及び係る製造方法に用いられる搬送用ローラについて、図4を用いて以下に説明する。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、搬送用ローラ53からドライエア等の気体を噴射する点が、上述の実施形態とは異なる。図4においては、上述の実施形態と同様の構成に同様の符号を付し、以下においてはその説明を省略する。本実施形態においても、TAB用フィルム10に対して塩化第二銅を含むエッチング液を用いたエッチングを行うものとする。
【0042】
(1)浸漬処理装置の構造
図4に示すように、本実施形態に係る浸漬処理装置2は、ドライエア等の流体としての気体を処理槽20内に送り込む送風機71を、処理槽20の外側に備えている。送風機71には、送風管72の一端が接続され、送風管72の他端は、処理槽20内に設けられた複数の搬送用ローラ53にそれぞれロータリージョイント73を介して接続されている。送風機71から送風された気体は、複数の搬送用ローラ53に送られ、搬送用ローラ53のローラ面から処理槽20へと噴射供給される。
【0043】
複数の搬送用ローラ53は、ローラ本体と、ローラ本体の軸方向に設けられ、ローラ本体の内部に流体としての気体を導入する流体導入路と、流体導入路からローラ本体のローラ面に連通し、流体導入路に導入された気体を噴射する噴射口と、をそれぞれ備えている(いずれも図示せず)。
【0044】
本実施形態のローラ本体は、例えばセラミックス等の多孔質体で構成されている。この多孔質体が有する多数の孔が連なることで、流体導入路からローラ面に連通する噴射口が構成される。各々の孔の直径は、例えば0.1mm以上1.0mm以下である。
【0045】
なお、上記構成においては、ローラ本体の少なくともローラ面側が多孔質体で構成されていればよい。すなわち、ローラ本体の全体が多孔質体より構成される必要はなく、例えば上述の第1実施形態のローラ本体511の外周部に所定厚さの多孔質体を形成した構成としてもよい。また、多孔質体を用いない構成、例えば上述の実施形態の搬送用ローラ51と同様の構成を、本実施形態に適用することも可能である。
【0046】
浸漬処理装置2が備える循環路63は、一端が処理槽20の底部に接続され、他端が処理槽20の側面に接続され、ポンプ61の吐出圧により、再生装置60を介して処理液30を循環させる。なお、処理液30の再生処理は、専ら搬送用ローラ53から噴射するドライエアにより行うこととし、循環路63に再生装置60を設けなくともよい。
【0047】
(2)プリント配線板の製造方法
上記浸漬処理装置2においては、搬送用ローラ53側からTAB用フィルム10に対してドライエア等の流体としての気体を噴射することにより、TAB用フィルム10を搬送用ローラ53に接触させることなく搬送する。TAB用フィルム10は、処理槽20内の処理液30中を搬送されて処理される。
【0048】
(3)第2実施形態に係る効果
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
また、本実施形態では、塩化第二銅を含むエッチング液等の処理液30中に、酸素ガスを含むドライエアを供給することで、処理液30を酸化して再生することができる。
【0050】
また、本実施形態では、孔の直径の下限を、例えば0.1mmと小さくすることで、ドライエア等の気体を細かい泡状に噴射することができ、TAB用フィルム10を圧縮性の流体である気体(気体層)で弾性的に支持することができる。よって、例えばTAB用フィルム10と搬送用ローラ53とが接触して、TAB用フィルム10が有する銅箔等に傷が生じるのを、いっそう抑制することができる。
【0051】
また、ドライエア等の気体を細かい泡状に噴射することで、気体と処理液30との接触の機会を増やし、処理液30の再生処理を促進させることができる。
【0052】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0053】
例えば、上述の実施形態においては、搬送用ローラ51,52,53は、円形状の噴射口513,523や多孔質体の孔より構成される噴射口を備えるものとしたが、噴射口の形態はこれに限られない。例えば、スリット状や網目状の噴射口等とすることが可能である。
【0054】
また、上述の実施形態においては、搬送用ローラは、処理槽20内に回転自在に装着される従動ローラとしたが、搬送用ローラが装着される支軸をモータと接続し、搬送用ローラをTAB用フィルムの搬送方向に駆動・回転させて、例えば搬送用ローラの回転によるローラ面の移動速度をTAB用フィルムの搬送速度に合わせるようにしてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態においては、搬送用ローラが備える噴射口から流体を噴射するものとしたが、例えば搬送用ローラとは別体のノズルを搬送用ローラ近傍に設け、この搬送用ローラ側のノズルからTAB用フィルムに対して流体を噴射するようにしてもよい。
【0056】
また、上述の第1実施形態においては、循環路62により再生装置60を介して処理液30を循環させ、流体としての再生後の処理液30を搬送用ローラ51から噴射するものとしたが、再生していない処理液を噴射してもよい。或いは、新品の処理液をローラ本体に導入し、噴射口より噴射してもよい。また、処理液が複数の成分からなる混合液である場合は、特定の成分のみを噴射するようにしてもよい。これによって、例えば消耗や蒸発の激しい成分を補充したり、所定成分の濃度を高めたりすることができる。
【0057】
また、上述の第2実施形態においては、搬送用ローラ53から噴射する気体は酸素ガスを含むドライエアであるとしたが、塩化第二銅を含むエッチング液中に噴射する気体としては、例えば酸素ガス単体や、オゾン(O)ガス等、酸化剤として作用する気体であれば用いることができる。
【0058】
また、上述の実施形態においては、主に、塩化第二銅を含むエッチング液を用いたエッチングを行うものとしたが、例えば純水等を用いた洗浄や、アルカリ液を用いた現像等、導体層を有する絶縁フィルムを処理液に浸漬して処理する種々の手法に対して本発明を適用することができる。この場合、搬送用ローラから噴射する流体の種類を適宜選択することができる。例えばアルカリ液を用いた現像を行う場合、アルカリ液は還元剤として作用し、自身は酸化され易いので、流体として窒素(N)ガス等の不活性ガスを噴射すれば、アルカリ液中の酸素量を低減することができ、アルカリ液の酸化を抑制し、長寿命化を図ることができる。この他、複数ある搬送用ローラから噴射する流体を異ならせて、例えば、複数の搬送用ローラのうち一部の搬送用ローラからは処理液等のような液体を噴射し、他の搬送用ローラからは気体を噴射してもよい。更には、液体と気体とを混合した混合流体を噴射してもよい。
【0059】
また、上記各種処理の対象となる導体層を有する絶縁フィルムも、種々の材料より構成された種々の構造を有するものとすることができる。例えば、上述の実施形態においては、絶縁フィルムは例えばPIからなるとしたが、PI以外にも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリマ(LCP)、アラミド、ガラスエポキシ樹脂等の有機樹脂を成分とする材料を使用することができる。また、本発明は、両面に導体層を有する絶縁フィルムを用いた2メタル構造のプリント配線板の製造方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 TAB用フィルム
30 処理液
51,52,53 搬送用ローラ
511,521 ローラ本体
512,522 流体導入路
513,523 噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層を有する絶縁フィルムをロールツーロール法により搬送しながら処理液に浸漬して処理するプリント配線板の製造方法であって、
前記処理液中に設けられ、前記処理液中で前記絶縁フィルムを搬送する搬送用ローラ側から前記絶縁フィルムに対して流体を噴射することにより、前記絶縁フィルムを前記搬送用ローラに接触させることなく搬送する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記流体は、処理液又は気体の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記処理液及び前記流体は酸化剤であり、
前記処理液の酸化作用により前記絶縁フィルムを処理し、
前記流体の噴射により前記処理液を酸化して再生する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記搬送用ローラのローラ面に開口した噴射口から前記流体を噴射する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法に用いられる搬送用ローラであって、
前記搬送用ローラは、
ローラ本体と、
前記ローラ本体の軸方向に設けられ、前記ローラ本体の内部に前記流体を導入する流体導入路と、
前記流体導入路から前記ローラ本体のローラ面に連通し、前記流体導入路に導入された前記流体を噴射する噴射口と、を備える
ことを特徴とする搬送用ローラ。
【請求項6】
前記噴射口は、
前記ローラ面に垂直な方向に対して前記流体を前記絶縁フィルムの搬送方向に向けて所定角度傾けて噴射する
ことを特徴とする請求項5に記載の搬送用ローラ。
【請求項7】
前記ローラ本体の少なくとも前記ローラ面側は多孔質体で構成され、
前記多孔質体の有する孔が前記噴射口を構成する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の搬送用ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−178526(P2012−178526A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41910(P2011−41910)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(508196494)日立電線フィルムデバイス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】