説明

プリント配線板の製造方法

【課題】信頼性を向上したプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】プリント配線板10の製造方法は、以下の工程を備えている。第1の貫通穴を有する炭素繊維強化プラスチックを含むコアを形成する。第1の貫通穴を覆うようにコアの下面に第1のフィルムを形成し、第1の貫通穴に第1の絶縁部材を充填する。第1のフィルムを除去する。コアに第2の貫通穴を形成する。第2の貫通穴を覆うようにコアの上面に第2のフィルムを形成し、第2の貫通穴に第2の絶縁部材を充填する。第2のフィルムを除去する。第1および第2の絶縁部材の少なくとも一方に回路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板の製造方法に関し、特に、炭素繊維強化プラスチックを含むコアを有するプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板は、電子部品の高密度化に伴い、放熱性の良い基板が望まれるようになっている。放熱性に優れたプリント配線板として、金属コア基板が知られており、既に実用化されている。金属コア基板は、コア材として熱伝導率の高い金属を用いることで、発熱部品からの熱をプリント配線板全体に分散し、発熱部品の温度上昇を抑えることが可能である。中でも、比重の小さいアルミニウムがコア材として一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、アルミニウムの熱膨張率は約24ppm/Kと高く、セラミック部品の熱膨張率は約7ppm/Kと低い。このため、ヒートサイクル試験を行なうと、アルミニウムとセラミック部品との熱膨張率差によって、はんだ接合部にクラックが発生し、実装信頼性が得られないといった課題がある。
【0004】
上記、課題を解決できるコア材として、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics:以下、CFRPとも称する)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。CFRPは、カーボン繊維と樹脂とからなる複合材料である。カーボン繊維の熱膨張率は±2ppm/Kと低く、カーボン繊維の中には500Wm-1-1以上の熱伝導率を有する繊維もある。また、カーボン繊維の比重は約2g/cm3と低い。このCFRPを用いてコア基板を作製できれば、高熱伝導で、かつアルミニウムよりも実装信頼性に優れた基板を得ることができる。
【0005】
上述のコア材は、いずれも導電性であるため、コア材上下の配線を接続する貫通スルーホールとコア材とは、貫通穴の穴埋め樹脂で絶縁する必要がある。通常、貫通穴の穴埋めは、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸した半硬化状態のプリプレグを貫通穴形成後のコア材の上下に重ねて、積層することで達成される。すなわち、積層時の熱でプリプレグが溶融し、加圧によって流れた樹脂が貫通穴に充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−40902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、貫通穴の穴埋めに従来のプリプレグを用いると、CFRPコアの上下面に形成され、かつ貫通穴に充填された樹脂の熱膨張率が60ppm/Kであるのに対し、CFRPコアの熱膨張率は約0ppm/Kである。このため、樹脂の収縮により基板端面が剥離するという課題があった。基板端面が剥離すると、プリント配線板の信頼性が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、信頼性を向上したプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプリント配線板の製造方法は、以下の工程を備えている。第1の貫通穴を有する炭素繊維強化プラスチックを含むコアを形成する。第1の貫通穴を覆うようにコアの下面に第1のフィルムを形成し、第1の貫通穴に第1の絶縁部材を充填する。第1のフィルムを除去する。コアに第2の貫通穴を形成する。第2の貫通穴を覆うようにコアの上面に第2のフィルムを形成し、第2の貫通穴に第2の絶縁部材を充填する。第2のフィルムを除去する。第1および第2の絶縁部材の少なくとも一方に回路を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプリント配線板の製造方法によれば、第1および第2の貫通穴でプリント配線板となるべき領域の外周を囲むように第1および第2の貫通穴を形成することにより、その外周を囲むように第1および第2の絶縁部材を配置することができる。プリント配線板となるべき領域の外周に沿って外形加工すると、プリント配線板の端面に第1および第2の絶縁部材を形成することができる。これにより、第1および第2の絶縁部材でコアの端面を被覆したプリント配線板を製造することができる。このため、コアが剥離することを抑制することができる。したがって、信頼性を向上したプリント配線板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の構成を概略的に示し、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるIB−IB線に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるIIB−IIB線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるIIIB−IIIB線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図断面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるVB−VB線に沿った断面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図断面図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるVIIB−VIIB線に沿った断面図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図断面図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるIXB−IXB線に沿った断面図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図断面図である。
【図11】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図断面図である。
【図12】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図断面図である。
【図13】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図断面図である。
【図14】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図断面図である。
【図15】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるXVB−XVB線に沿った断面図である。
【図16】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)におけるXVIB−XVIB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0013】
図1(A)および(B)は、本発明の実施の形態におけるプリント配線板の構成を概略的に示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。図1(A)および(B)に示すように、プリント配線板10は、信号回路層6aと、CFRP層を含むコアとしてのCFRPコア1と、第1の穴埋め樹脂4aと、第2の穴埋め樹脂4bと、絶縁層5とを主に有している。
【0014】
信号回路層6aは、絶縁層5の表面上に形成され、配線を有している。配線は、たとえば銅よりなる。
【0015】
CFRPコア1は、信号回路層6aの間に設けられている。このCFRPコア1は、炭素繊維と樹脂とからなる複合材料であればよく、その複合材料中のカーボン繊維の含有率、構造(一方向材、クロス材)などは特に限定されるものではない。またCFRPコア1は、第1の1次貫通穴2aおよび第2の1次貫通穴2bを有している。
【0016】
上下1対の信号回路層6aは、2次貫通穴7aに銅めっきされた貫通スルーホール7によって電気的に導通している。CFRPコア1は導電性であるため、CFRPコア1と貫通スルーホール7とは絶縁する必要がある。第1の1次貫通穴2aの同軸上に、より小径の2次貫通穴7aが形成され、第1の穴埋め樹脂4aにより電気的に絶縁される。
【0017】
第1および第2穴埋め樹脂4a、4bは、絶縁層5とCFRPコア1との間に形成されている。また、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bは、プリント配線板10の端面10aに位置しており、CFRPコア1の端面を被覆している。
【0018】
第1および第2穴埋め樹脂4a、4bは、シリカを含有するエポキシ樹脂であることが好ましく、シリカと樹脂とから構成される熱膨張率が約30ppm/Kの絶縁部材であることがより好ましい。第1および第2穴埋め樹脂4a、4bにシリカを用いることが好ましい理由としては、2次貫通穴7aのドリル加工性、CFRPコア1と貫通スルーホール7との間の応力緩和のためである。
【0019】
絶縁層5は、ガラスクロスと樹脂とから構成されるものが好ましい。絶縁層5、および第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bを構成する樹脂は、特に限定されず、たとえばエポキシ、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリイミドなどを用いることができる。
【0020】
第1および第2穴埋め樹脂4a、4b、および絶縁層5は、それぞれ異なる材料であっても同じ材料であってもよい。対称構造とすることにより反りなどの応力を緩和できる観点から、第1および第2穴埋め樹脂4a、4bは、同じ材料であることが好ましい。
【0021】
続いて、本実施の形態のプリント配線板の製造方法について説明する。図2〜図16は本発明の実施の形態におけるプリント配線板の製造方法を工程順に示す概略図である。具体的には、たとえば以下の工程を実施する。
【0022】
まず、図2(A)および(B)に示すように、CFRPコア1を準備する。次に、図3(A)および(B)に示すように、CFRPコア1に第1の1次貫通穴2aを形成する。このとき、図3(B)に示すように、製品外形部(図1(A)および(B)に示すプリント配線板10となるべき領域の外周)の一部を第1の1次貫通穴2aの長穴で形成することが好ましい。
【0023】
第1の1次貫通穴2aは、たとえばドリルを用いて形成する。第1の1次貫通穴2aを形成した後、第1の1次貫通穴2aの内壁に付着した炭素粉などを除去するために、超音波洗浄を行なってもよい。
【0024】
次に、図4に示すように、第1の1次貫通穴2aを覆うようにCFRPコア1の下面に第1の裏張りフィルム3aを貼り付ける。
【0025】
次に、図5(A)および(B)に示すように、第1の1次貫通穴2aにペースト状の第1の穴埋め樹脂4aを印刷・充填し、硬化する。第1の裏張りフィルム3aが設けられているため、充填された樹脂が脱落することを抑制できる。特に、第1の裏張りフィルム3aが底の役割になるので、第1の1次貫通穴2aの径が大きくても、あるいは長穴(スリット)であっても、第1の穴埋め樹脂4aが第1の1次貫通穴2aから脱落することを抑制できる。これにより、第1の1次貫通穴2aに第1の穴埋め樹脂4aを充填することができる。
【0026】
ここで、ペースト状の第1の穴埋め樹脂4aは、シリカを含み、硬化後の熱膨張率が約30ppm/Kであることが好ましい。また、ペースト状の第1の穴埋め樹脂4aは真空コーターで印刷充填することが好ましい。
【0027】
次に、図6に示すように、第1の裏張りフィルム3aを除去する。第1の裏張りフィルム3aは、たとえば粘着材付きのポリエチレンテレフタレートを用いることができる。
【0028】
次に、図7(A)および(B)に示すように、CFRPコア1に第2の1次貫通穴2bを形成する。このとき、図7(A)に示すように、製品外周部の第1の1次貫通穴2aが形成されていない、CFRPコア1が残っている部分がなくなるように、第2の1次貫通穴2bを形成する。つまり、第1の1次貫通穴2aと連通するように、かつ第1および第2の1次貫通穴2a、2bでプリント配線板となるべき領域の外周を囲むように、第2の1次貫通穴2bを形成する。
【0029】
第2の1次貫通穴2bは、たとえばドリルを用いて形成する。第2の1次貫通穴2bを形成した後、第2の1次貫通穴2bの内壁に付着した炭素粉などを除去するために、超音波洗浄を行なってもよい。
【0030】
次に、図8に示すように、第2の1次貫通穴2bを覆うようにCFRPコア1の上面に第2の裏張りフィルム3bを貼り付ける。第2の裏張りフィルム3bは、第1の裏張りフィルム3aと同じ材料であっても、異なる材料であってもよい。
【0031】
次に、図9(A)および(B)に示すように、ペースト状の第2の穴埋め樹脂4bを印刷・充填し、硬化する。第2の穴埋め樹脂4bは、第1の穴埋め樹脂4aと同じ材料であることが好ましい。第2の裏張りフィルム3bが底の役割になるので、第2の1次貫通穴2bの径が大きくても、あるいは長穴であっても、第1の穴埋め樹脂4bが第2の1次貫通穴2bから脱落することを抑制できる。これにより、第2の1次貫通穴2bに第2の穴埋め樹脂4bを充填することができる。この工程を実施すると、プリント配線板の端面となるべき領域に、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bが配置される。
【0032】
次に、図10に示すように、第2の裏張りフィルム3bを除去して、積層体を形成する。
【0033】
次に、図11に示すように、図10の積層体の上下に、プリプレグよりなる絶縁層5および銅箔6を配置する。銅箔6は、信号回路層6aを構成する。
【0034】
次に、図12に示すように、図10の積層体の上下に、絶縁層5を介して、銅箔を配置し、積層する。この工程では、たとえば図11の状態で真空プレスを用いて、所定の条件で第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bに絶縁層5を接触するように積層する。
【0035】
次に、図13に示すように、第1の1次貫通穴2aの同軸上に、第1の1次貫通穴2aより小径の2次貫通穴7aを形成する。なお、第1の1次貫通穴2aおよび2次貫通穴7aの軸は異なっていてもよい。
【0036】
次に、図14に示すように、銅めっきなどのめっきを行ない、2次貫通穴7aに導電層を形成する。導電層を形成すると、図14に示すように、貫通スルーホール7が形成される。
【0037】
次に、図15(A)および(B)に示すように、銅箔6をパターニングし、信号回路層6aを形成する。この後、ソルダーレジスト加工、はんだレベラー処理などを行なう。
【0038】
次に、図16(A)および(B)に示すように、製品外周部(図1におけるプリント配線板10の外周)を形成する第1の1次貫通穴2aに充填された第1の穴埋め樹脂4aおよび第2の1次貫通穴2bに充填された第2の穴埋め樹脂4bで外形加工し、製品(図1におけるプリント配線板10)をワークから取り出す。この工程では、たとえば製品外周部に貫通穴8を形成することで、製品(プリント配線板10)を取り出すことができる。
【0039】
以上の工程により、図1(A)および(B)に示すプリント配線板10を製造することができる。このプリント配線板の端面10aは、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bが位置する。
【0040】
続いて、本実施の形態におけるプリント配線板10の製造方法の効果について、従来の積層方式でのプリント配線板の製造方法と比較して説明する。
【0041】
従来の積層方式でのプリント配線板の製造方法は、CFRPコアの上面および下面にガラスエポキシプリプレグを積層して、溶融したエポキシ樹脂を1次貫通穴に充填していた。1次貫通穴内およびCFRPコアの上下面にはエポキシ樹脂が充填されるため、CFRPコアとの熱膨張率差が生じる。このため、熱サイクル試験を行なうと、樹脂やCFRPコアにクラックが発生したり、CFRPコア端面が剥離したりする。その結果、プリント配線板の信頼性低下の原因となっていた。
【0042】
一方、本実施の形態におけるプリント配線板10の製造方法は、第1の貫通穴(第1の1次貫通穴2a)を有するCFRPコア1を形成する工程と、第1の貫通穴(第1の1次貫通穴2a)を覆うようにCFRPコア1の下面に第1のフィルム(第1の裏張りフィルム3a)を形成し、第1の貫通穴(第1の1次貫通穴2a)に第1の絶縁部材(第1の穴埋め樹脂4a)を充填する工程と、第1のフィルム(第1の裏張りフィルム3a)を除去する工程と、CFRPコア1に第2の貫通穴(第2の1次貫通穴2b)を形成する工程と、第2の貫通穴(第2の1次貫通穴2b)を覆うようにCFRPコア1の上面に第2のフィルム(第2の裏張りフィルム3b)を形成し、第2の貫通穴(第2の1次貫通穴2b)に第2の絶縁部材(第2の穴埋め樹脂4b)を充填する工程と、第2のフィルム(第2の裏張りフィルム3b)を除去する工程と、第1および第2の絶縁部材(第1および第2の穴埋め樹脂4a、4b)の少なくとも一方に回路(信号回路層6a)を形成する工程とを備えている。
【0043】
なお、回路と、第1および第2の絶縁部材の少なくとも一方との間には絶縁層がさらに配置されていてもよく、第1および第2の絶縁部材に接して設けられていてもよい。
【0044】
本実施の形態におけるプリント配線板10の製造方法によれば、第1および第2の1次貫通穴2a、2bでプリント配線板10となるべき領域の外周を囲むように第1および第2の1次貫通穴2a、2bを形成することにより、その外周を囲むように第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bを配置することができる。プリント配線板10となるべき領域の外周に沿って外形加工すると、プリント配線板10の端面10aに第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bを露出させることができる。これにより、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bでCFRPコア1の端面を被覆したプリント配線板10を製造することができる。このため、熱サイクル試験を行なっても、端面に位置するCFRPコア1が剥離することを抑制することができる。つまり、熱膨張率差による応力が加えられた場合であっても、端面10aに位置する第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bによって、CFRPコア1のカーボン繊維と樹脂との接着力の低下を抑制できる。したがって、信頼性を向上したプリント配線板10を製造することができる。
【0045】
特に、本実施の形態では、CFRPコア1の下面または上面に形成した第1および第2の裏張りフィルム3a、3bを底にして第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bを充填することができる。これにより、積層圧力を加える前に予め第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bを充填することができる。このため、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bの溶融などの条件を加味した厚みまでは必要としない。つまり、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bを、厚みを低減し、かつボイドの発生を抑制して形成することができる。このため、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bが端面10aに配置するプリント配線板10を容易に製造することができる。
【0046】
上記プリント配線板10の製造方法において好ましくは、第2の1次貫通穴2bを形成する工程では、第1の1次貫通穴2aと連通するように、かつ第1および第2の1次貫通穴2a、2bでプリント配線板10となるべき領域の外周を囲むように、第2の1次貫通穴2bを形成する。
【0047】
これにより、第1および第2の1次貫通穴2a、2b内に第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bを充填するので、プリント配線板10となるべき領域の外周となるべき領域で外形加工すると、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bを端面として有するプリント配線板10を製造することができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、第1および第2の1次貫通穴2a、2bでプリント配線板10となるべき領域の外周を形成しているが、第1および第2の1次貫通穴2a、2bと、第3の貫通穴とでプリント配線板10となるべき領域の外周を形成してもよい。
【0049】
上記プリント配線板の製造方法において好ましくは、第1および第2の絶縁部材(第1および第2の穴埋め樹脂4a、4b)がシリカを含有するエポキシ樹脂である。
【0050】
シリカを含有するエポキシ樹脂は、約30ppm/Kの低熱膨張率の材料である。このため、CFRPコア1と第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bとの熱膨張率の差を緩和することができる。これにより、熱サイクル試験を行っても、第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bやCFRPコア1にクラックが発生することを抑制できる。したがって、信頼性をより向上したプリント配線板10を製造することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、単層のプリント配線板の製造方法について説明したが、本発明のプリント配線板の製造方法は、多層プリント配線板にも適用することもできる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。
(実施例1)
実施例1では、基本的には、上述した実施の形態におけるプリント配線板10の製造方法にしたがった。
【0053】
具体的には、まず、熱伝導率が500W/(m・K)のカーボン繊維(クロス材)からなるCFRPコア1(厚み0.5mm、サイズ340mm×250mm)を準備した(図2(A)(B)参照)。
【0054】
次に、CFRPコア1にドリル穴あけを行ない、直径1.5mmの第1の1次貫通穴2aを設けた(図3(A)(B)参照)。このとき、図3(A)に示すように、製品外形部の一部を第1の1次貫通穴2aの長穴で形成した。
【0055】
次に、CFRPコア1の下面に第1の裏張りフィルム3aを貼り付けた(図4参照)。第1の裏張りフィルム3aは、粘着材付きのポリエチレンテレフタレートを用いた。
【0056】
次に、第1の穴埋め樹脂4aとして、シリカ含有エポキシ樹脂(太陽インキ製、THP−100DX1、33ppm/K)を真空コーターで印刷充填し、オーブンで120℃/1h保持し硬化した(図5(A)(B)参照)。次に、第1の裏張りフィルム3aを除去した(図6参照)。
【0057】
次に、製品外周部の第1の1次貫通穴2aが形成されていない、CFRPコア1が残っている部分がなくなるように、ドリル穴あけを行ない、第2の1次貫通穴2bを形成した(図7(A)(B)参照)。
【0058】
次に、CFRPコア1の上面に第2の裏張りフィルム3bを貼り付けた(図8参照)。第2の裏張りフィルム3bは、粘着材付きのポリエチレンテレフタレートを用いた。
【0059】
次に、第2の穴埋め樹脂4bとして、シリカ含有エポキシ樹脂(太陽インキ製、THP−100DX1、33ppm/K)を真空コーターで印刷充填し、オーブンで120℃/1h保持し硬化した(図9(A)(B)参照)。次に、第2の裏張りフィルム3bを除去した(図10参照)。
【0060】
次に、絶縁層5として、60μmの厚みを有するガラスエポキシプリプレグ(日立化成工業株式会社製:GEA−67N、熱膨張率13ppm/K〜16ppm/K)を介して、18μmの銅箔6を配置した(図11参照)。この状態で、真空プレスを用いて昇温速度5℃/min、保持時間190℃/1h、積層圧力20kg/cm2の条件で加圧加熱した(図12参照)。
【0061】
次に、直径1.5mmの第1の1次貫通穴2aと同軸上に、直径0.9mmの2次貫通穴7aを設けた(図13参照)。次に、銅めっきを行なって、2次貫通穴7aに導電層として銅層を形成した(図14参照)。次に、パターニングを行った(図15(A)(B)参照)。
【0062】
次に、ソルダーレジスト塗工、ガスレベラー処理によるはんだコートをした後、製品外周部を形成する第1の1次貫通穴2a、2bの第1および第2の穴埋め樹脂4a、4bが存在する部分を外形加工し、製品をワークから取り出した(図16(A)(B)参照)。このようにして、図1(A)および(B)に示すようなプリント配線板10を得た。
【0063】
得られたCFRPコア基板の厚みは、約0.9mmであった。ヒートサイクル試験(−65℃/15分⇔125℃/15分、100サイクル)を実施したところ、短絡・断線などはなく、その後、断面観察を行ったところクラックや剥離などは見られなかった。
【0064】
(比較例1)
実施例1と同様にして、図2(A)(B)のCFRPコア1を準備した。次に、CFRPコア1にドリル穴あけを行ない、直径1.5mmの第1の1次貫通穴2aを設けた。得られたCFRPコア1の上下に100μmの厚みを有する3枚のガラスエポキシプリプレグ(GEA−67N)と、18μmの厚みを有する銅箔とをそれぞれ配置し、真空プレスを用いて昇温速度5℃/min、保持時間190℃/1h、積層圧力30kg/cm2の条件で加圧加熱した。
【0065】
その後、実施例1と同様にして、2次貫通穴あけ、銅めっき、パターニング等を実施しプリント配線板を得た。ここで、製品外周部には、第1の1次貫通穴2a、2bを形成しなかった。そのため、得られたプリント配線板の端面は、CFRPコアが露出していた。
【0066】
得られたCFRPコア基板の厚みは、約1.2mmであった。ヒートサイクル試験(−65℃/15分⇔125℃/15分、100サイクル)を実施したところ、貫通スルーホールの周囲の樹脂にクラックが発生し、基板端面のCFRPコア1に剥離が見られた。
【0067】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、CFRPを含むコアを有するプリント配線板の製造方法およびプリント配線板に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0069】
1 CFRPコア、2a 第1の1次貫通穴、2b 第2の1次貫通穴、3a 第1の裏張りフィルム、3b 第2の裏張りフィルム、4a 第1の穴埋め樹脂、4b 第2の穴埋め樹脂、5 絶縁層、6 銅箔、6a 信号回路層、7 貫通スルーホール、7a 2次貫通穴、8 貫通穴、10 プリント配線板、10a 端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板の製造方法であって、
第1の貫通穴を有する炭素繊維強化プラスチックを含むコアを形成する工程と、
前記第1の貫通穴を覆うように前記コアの下面に第1のフィルムを形成し、前記第1の貫通穴に第1の絶縁部材を充填する工程と、
前記第1のフィルムを除去する工程と、
前記コアに第2の貫通穴を形成する工程と、
前記第2の貫通穴を覆うように前記コアの上面に第2のフィルムを形成し、前記第2の貫通穴に第2の絶縁部材を充填する工程と、
前記第2のフィルムを除去する工程と、
前記第1および第2の絶縁部材の少なくとも一方に回路を形成する工程とを備えた、プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記第2の貫通穴を形成する工程では、前記第1の貫通穴と連通するように、かつ前記第1および第2の貫通穴で前記プリント配線板となるべき領域の外周を囲むように、前記第2の貫通穴を形成する、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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