説明

プレウロムチリンの製造方法

高純度製品の大量製造に適用可能な,次式:
【化11】


[式中,イオウ原子に結合しているピペリジン環の炭素原子は(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである]
の14−O−[(N−(3−メチル−2−アミノ−ブチリル−ピペリジニル)スルファニル)アセチル]ムチリン,および14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン−塩酸塩の新規結晶形を製造する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,14−O−[(N−(3−メチル−2−アミノ−ブチリル−ピペリジニル)スルファニル)アセチル]ムチリンを製造する新たな方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレウロムチリンは,次式:
【化1】

の化合物であり,例えばバシドマイセート(basidomycetes)であるPleurotus mutilusおよびP.passeckerianusにより産生される,天然に生ずる抗生物質である。例えば,The Merck Index,12版,アイテム7694を参照。プレウロムチリンの基本環構造を有し,ヒドロキシ基で置換されている多数の別のプレウロムチリンが,例えば抗微生物剤として開発されている。プレウロムチリン誘導体の一群であるバリル置換ピペリジニルスルファニルアセチルムチリン(WO02/22580に開示される)は,その顕著な抗微生物活性のため,特に興味が持たれている。この群の化合物の実質的に純粋な異性体を製造するためには,工業的規模で使用するのに便利であり,かつ高価な出発材料,環境に有害な試薬および溶媒,ならびに時間がかかり煩雑な精製工程の適用を回避するプロセスを開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO02/22580
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの観点においては,次式:
【化2】

[式中,イオウ原子に結合したピペリジン環の炭素原子は,(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかであり,ピペリジン環に結合した2−アミノ−3−メチル−ブチリル基は,(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである]
の化合物を製造する方法が提供され,この方法は,
a)次式:
【化3】

のN保護ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンを脱保護して,次式:
【化4】

[式中,イオウ原子に結合したピペリジン環の炭素原子は,(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである]
の化合物を遊離形でまたは酸付加塩の形で単離し,
b)前記式IIIの化合物を,エナミンとして保護され,炭酸混合無水物として活性化された(R)−または(S)−バリンのいずれかでアシル化して,次式:
【化5】

[式中,RおよびRはC1−4アルキルであり,Rは水素またはC1−4アルキルである]
の化合物を形成し;
c)式IVの化合物を脱保護し,そして式Iの化合物を単離する,
の各工程を含む。
【0005】
好ましい態様においては,式Iの化合物は,薬学的に許容しうる塩の形で単離される。さらに好ましい態様においては式Iの化合物は塩酸塩として単離される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は,14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩の粉末回折図形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
式Iaの化合物において,ピペリジン環の炭素原子は,イオウ原子に結合している。この結合は,ピペリジン環のいずれの位置でもよく,例えば,,α,βまたはγ位であることができるが,好ましくはピペリジン環の窒素原子に対してβ位である。
【0008】
式IIのN保護化合物の脱保護は,保護基を酸分解して,酸付加塩を形成することにより行い,酸付加塩は,式IIの化合物中のイオウ原子に結合したピペリジン環の炭素原子のコンフィギュレーションに関して異性体混合物である。好ましくは,式IIの化合物のムチリン環におけるコンフィギュレーションは,天然に生成するムチリンと同じである。異性体混合物は,イオウ原子に結合しているピペリジン環の炭素原子が(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである実質的に純粋な異性体が得られるように,結晶化により都合良く分離することができる。結晶化工程は高い精製効果につながり,したがって,結晶形の式IIIの化合物は,ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンの製造プロセスにおいて,特に工業的規模で,中間体として非常に適している。さらに,式IIIの化合物を結晶形で使用することは,結晶形の式IIIの化合物の純度はバリル−置換ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンの製造に十分なものであるため,他の精製工程,例えばクロマトグラフィーを省略しうるという利点を有する。
【0009】
式IIの化合物の脱保護には,無機酸または有機酸を用いることができる。好ましい態様においては,メタンスルホン酸を用いて,それぞれのメシレートを酸付加塩として形成する。式IIの化合物においてProtで示される保護基としては,慣用のN−保護基を用いることができる。好ましくは,tert−ブトキシカルボニル基を用いる。
【0010】
適当な脱保護剤を選択することにより,異性体の(S)−コンフィギュレーションを(R)−コンフィギュレーションから分離できるように,(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかの溶解度を選択的に高めることができることが見いだされた。例えば,メタンスルホン酸を脱保護剤として用いると,結晶化した生成物は純粋な(S)−異性体であり,一方,(R)−異性体は溶液中に残る(実施例1Fを参照)。
【0011】
続く工程においては,式IIIの化合物の実質的に純粋な異性体に対して,エナミンとして保護された(R)−または(S)−バリンのいずれかで前記化合物をアシル化することによりバリル成分を導入して,式IVの化合物を形成する。保護されたバリンは,(R)−または(S)−バリンを式R−CO−CH(R)−COOR(R,R,およびRは上で定義したとおりである)のβ−ケトエステルと反応させることにより製造する。好ましくは,アセト酢酸メチルエステルを用いる。好ましくは,バリンは,炭酸混合無水物法にしたがって活性化する。混合無水物は,インサイチューで,例えば,塩化ピバリン酸を加えることにより製造する。工程a)で生成した式IIIの化合物を加えると,式IVの保護された化合物が得られる。これらの化合物は,他の保護基,例えばtert−ブトキシカルボニルを有する化合物と比較して,優れた結晶化特性を有する。これらの優れた結晶化特性を有する化合物は,製造および単離に関して取り扱いが容易であり,さらなる精製の優れた機会を提供する。例えば,式Iの3−置換ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンについては,式IVのエナミン保護化合物を単離し,結晶化により精製することができるが,一方,対応するtert−ブトキシカルボニルで保護された誘導体は,退屈かつ煩雑なクロマトグラフィー工程を用いて精製しなければならない。
【0012】
式IVの化合物の保護基は酸分解により除去する。アセト酢酸エステルを除去し,抽出した後,式Iの化合物を遊離形で単離することができ,あるいは,薬学的に許容しうる塩を与える酸を加えた後,それぞれの水性相を凍結乾燥すると,アモルファス形の薬学的に許容しうる塩,例えば,塩酸塩が得られる。
【0013】
好ましい態様においては,イオウ原子に結合しているピペリジン環の炭素原子は,ピペリジン環の窒素原子に対してβ位である。すなわち,これは式Iの3−置換ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンである。より好ましくは,本発明は,14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩に関する。
【0014】
本発明はさらに,新規結晶形の14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩に関する。上述した反応順序によって得られる14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩の凍結乾燥したアモルファス化合物を,水性媒体中での結晶化プロセスを用いて結晶形に変換する。このプロセスは,シード結晶を用いることにより促進および加速することができる。再結晶により,結晶14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩を所望の整合性の化学的および光学的純度の形にすることができる。このようにして,3−(S)−位に関して97%以上のジアステレオマー過剰を有する実質的に純粋な異性体が得られる。
【0015】
結晶14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩は,6.2±0.2,10.9±0.2,12.3±0.2,13.4±0.2,14.1±0.2,20.8±0.2度(2−シータ,CuK−アルファ)にピーク2−シータを有するX線粉末回折パターンにより特徴づけられる。これはまた,約2927,1721,1645,1462,1403,1142cm−1に特徴的バンドを有する赤外線スペクトルにより特徴づけられる。
【0016】
図1に,14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩の粉末回折図形を示す。
【0017】
結晶形においては,14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩は,アモルファスの凍結乾燥形より高い純度および優れた安定性を与え,このことは,結晶14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩を活性成分として含有する医薬組成物の製造において有利である。
【0018】
式IIのN保護ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンは,14−O−メルカプトアセチル−ムチリンをピペリジン環の窒素原子のα,βまたはγ位に脱離基を有するN保護ヒドロキシピペリジン,例えば,WO02/22580に開示されているN−BOC−3(R)−メチルスルホニルオキシ−ピペリジンと反応させることにより製造することができる。
【0019】
より簡便には,かつ本発明の別の観点においては,N保護ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンは,プレウロムチリン−22−O−スルホネート(例えば,メシレート,ベシレートまたはトシレート)をN保護ピペリジンチオールと反応させることにより製造することができる。保護基には,適切な保護基,例えば,慣用の保護基が含まれる。好ましくは,tert−ブトキシカルボニル基をN−保護基として用い,別の好ましい態様においては,ピペリジン環の3位にチオール基を有するN保護ピペリジンを用いる。ラセミ体のまたはチオール基を有する炭素原子のまわりに(R)−または(S)−コンフィギュレーションのいずれかを有する,エナンチオマー的に純粋なN保護ピペリジンチオールを用いることができる。
【0020】
好ましくは,N保護ピペリジンチオールをラセミ体として用いて,高価なキラル出発物質の使用を回避する。N保護ピペリジンチオールは,適当なヒドロキシピペリジンから出発して,N−保護基(例えばtert−ブトキシカルボニル)を加え,塩化スルホン酸,または無水物(例えば塩化メタンスルホニル)と反応させることにより製造することができる。チオール基は,イオウ含有求核基,例えばチオ酢酸と反応させ,対応するチオエステル(例えばN−BOC−3−(R,S)−アセチルチオ−ピペリジン)を塩基分解することにより導入する。
【0021】
ヒドロキシピペリジンを単一のエナンチオマー(例えば3−(R)−ヒドロキシピペリジン)の形で用いる場合には,チオ酢酸を用いる求核置換を含む上述の反応順序は制御された様式で進行し(ワルデン反転),イオウ原子に結合しているピペリジン環の炭素原子が(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである,対応するN保護ピペリジンチオール(例えば3−(S)−ピペリジンチオール)が得られる。
【0022】
さらにプレウロムチリン−22−O−スルホネートと反応させることにより,イオウ原子に結合しているピペリジン環の炭素原子が(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである式IIのN保護ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンが得られる。
【0023】
下記の実施例は本発明を例示し,ここでは,温度は摂氏で表す。
【0024】
以下の略号を用いる:
N−BOC=N−ブトキシカルボニル
RT=室温
MTBE=メチルtert−ブチルエーテル
【0025】
実施例で示されるムチリン環の番号付けは下記の次式:
【化6】

にしたがう。
【実施例】
【0026】
実施例1
14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩
A.N−BOC−3−(R,S)−ヒドロキシ−ピペリジン
10Lのリアクター中で202.4gの3−(R,S)−ヒドロキシピペリジンを4.5Lの脱イオン水に溶解した。1.1Lの水に溶解した336gの炭酸水素ナトリウムを加えた。激しく撹拌した溶液に,534gのジ−tert−ブチル−二炭酸を室温で加えた。一晩撹拌した後に,混合物をCHClで抽出した(3x)。合わせた抽出物を脱イオン水で洗浄し,溶媒を留去した。残渣を再びCHClに溶解し,溶液を蒸発乾固させた。423gのN−BOC−3(R,S)−ヒドロキシ−ピペリジンが得られ,これはさらに精製することなく次の工程で用いることができる。
【0027】
B.N−BOC−3−(R,S)−メチルスルホニルオキシ−ピペリジン
5LのCHCl中の216gのN−BOC−3(R,S)−ヒドロキシピペリジンの溶液に,222mlのトリエチルアミンを0−5℃で加えた。300mlのCHCl中の137gの塩化メタンスルホニルを,温度を0−5℃に維持しながら45分間かけて滴加した。さらに70分間撹拌した後,2Lの脱イオン水を加え,約90mlの2N HClを加えることによりpHを5.9に調節した。水性相を分離し,有機相を水で洗浄した。溶液を蒸発乾固させて,270−280gの油状残渣を得た。1Lのn−ヘプタンで処理した後に,結晶化が生じた。結晶を単離し,真空下で乾燥した。250gのN−BOC−3(R,S)−メチルスルホニルオキシ−ピペリジンを得た。
Mp.:69℃
H NMR(CDCl):4.71(m,1H,CHOSOCH),3.2−3.6(m,4H,CHN),3.05(s,3H,CHSO),1.94(m,2H,H4),1.83,1.54(2xm,2H,H5),1.46(m,9H,tert−ブチル)
【0028】
C.N−BOC−3−(R,S)−アセチルチオ−ピペリジン
2.7Lのジメチルホルムアミドを不活性雰囲気下でリアクター中に入れた。251.4gのN−BOC−3(R,S)−メチルスルホニルオキシ−ピペリジンを暖めながら加えた。初期温度50℃で,256.8gのチオ炭酸カリウムを一度に加えた。95℃で90分間撹拌した後,反応混合物を4Lの水で満たしたリアクターに移した。4.2Lの石油エーテルを加えた。5分間激しく撹拌した後に,水性相を除去した。再び水を加えた後,水酸化ナトリウムでpHを>8に調節した。有機相を分離し,水で洗浄し,活性炭で処理した。溶液を蒸発乾固させた。石油エーテル,トルエン,および酢酸エチルでシリカでフラッシュクロマトグラフィーを行い,溶液を含む生成物を濃縮した後,冷却すると結晶化が生じ,110gのN−BOC−3(R,S)−アセチルチオ−ピペリジンを得た。
Mp.:46−48℃(n−ヘプタン)
H NMR(CDCl):3.79(dd,1H,H2),3.5−3.6(m,2H,H3,H6),3.17−3.27(m,2H,H2,H6),2.32(s,3H,CHSO),1.99(m,1H,H4),1.55−1.72(m,H4,H5),1.47(s,9H,tert−ブチル)
【0029】
D.N−BOC−ピペリジン−3−(R,S)−チオール
200gのN−BOC−3(R,S)−アセチルチオ−ピペリジンを,不活性雰囲気下で3.4Lのメタノールを入れた10Lのリアクターに加えた。この溶液に,42gのメタノール中のナトリウムメトキシドを15分間かけて加えた。さらに撹拌した後,170mlの5N HClを加えて,pHを2.6−3とした。溶液をエバポレータで濃縮した。得られた二相混合物を1.7Lのメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)および1.7Lの水に入れた。振盪した後,水性相を分離し,MTBE相を単離し,蒸発させて,170gの油状物を得た。
H NMR(DMSO−d):3.92(b,1H,H6),3.69(d,1H,H2),2.7−2.9(m,3H,H2,H3,H6),2.61(d,1H,SH),2.00(m,1H,H4),1.64(m,1H,H5),1.45−1.31(m,2H,H4,H5),1.39(s,9H,tert−ブチル)
【0030】
E.14−O−[(N−BOC−ピペリジン−3−(R,S)−イル)−スルファニルアセチル]−ムチリン
359.7gの22−O−プレウロムチリントシレートを3.2LのMTBEに懸濁した。1350mlの1n水酸化ナトリウムおよび21.1gの塩化ベンジル−トリブチルアンモニウムを加えた。混合物を15℃に冷却し,800mlのMTBE中の161.6gのN−BOC−ピペリジン−3(R,S)−チオールの溶液を滴加した。二相の反応混合物を20℃で1時間撹拌した。反応が完了した後,相を分離した。有機相を乾燥し,蒸発させて,521.5gの14−O−[(N−BOC−ピペリジン−3(R,S)−イル)−スルファニルアセチル]−ムチリンを油状物として得て,これをさらに精製することなく次の工程で用いた。
H NMR(CDCl):6.48(dd,1H,H19,J=17.4Hz,J=11.2Hz),5.77(d,1H,H14,J=8.4Hz),5.34,5.20(2xdd,2H,H20,J=11.2Hz,J=1.3Hz;J=17.4Hz,J=1.3Hz),4.0,3.75,2.96,2.01(b,6H,ピペリジン),3.37(dd,1H,H11,J=10.5Hz,J=6.6Hz),3.19(m,2H,SCH),2.85(m,1H,CHS),2.36(dq,1H,H10,J=6.6Hz,J=6.5Hz),2.11(b,1H,H4)1.47(s,12H,(CH3,(CH)15),1.18(s,3H,(CH)18),0.89(d,3H,(CH)17,J=6.9Hz),0.75(d,3H,(CH)16,J=6.5Hz)
【0031】
F.14−O−[(ピペリジン−3−(S)−チオアセチル)]−ムチリンメタンスルホン酸塩
521gの14−O−[(N−BOC−ピペリジン−3(R,S)−イル)−スルファニルアセチル]−ムチリンを4Lの2−プロパノールに溶解し,55℃に加熱した。165mlのメタンスルホン酸を加えた後,溶液をこの温度で5時間撹拌した。BOC基の切断が完了した後,反応混合物を0℃に冷却し,さらに2時間撹拌した。結晶化した生成物を濾別し,2−プロパノールで洗浄し,真空下で乾燥した。159.8gの14−O−[(ピペリジン−3(S)−チオアセチル)]−ムチリンメタンスルホン酸塩を得た。
Mp.:250−255℃
H NMR(DMSO−d):8.58(m,2H,NH),6.15(dd,1H,H19,J=17.2Hz,J=11.5Hz),5.57(d,1H,H14,J=8.2Hz),5.07(m,2H,H20),4.5(b,1H,OH),3.41(s,2H,SCH),2.4(b,1H,H4),2.32(s,3H,CHSO),1.37(s,3H,(CH)15),1.07(s,3H,(CH)18),0.83(d,3H,(CH)17,J=7.0Hz),0.64(d,3H,(CH)16,J=6.6Hz)
【0032】
G.N−(3−メトキシ−1−メチル−3−オキソ−1−プロペニル)−R−バリン,カリウム塩(R−バリンデーン塩)
36.6gの固体KOHを1250mlの2−プロパノールに少し暖めながら溶解した。65gのR−バリンおよび65.9mlのメチルアセトアセテートを加えた。混合物を撹拌し,2時間還流した。還流冷却器をクライゼン冷却器および短いカラムに交換して,約1Lの2−プロパノールを留去することにより縮合反応の間に形成された水を除去した。次に,500mlの2−プロパノールを加え,再び500mlを留去した。暖かい溶液を3LのMTBEに注加し,氷冷しながら約3時間撹拌した。得られた懸濁液を4℃で一晩放置し(水分を排除),濾過し,500mlのMTBEで洗浄し,乾燥して,N−(3−メトキシ−1−メチル−3−オキソ−1−プロペニル)−R−バリンカリウム塩を得た。
【0033】
H.14−O−[(N−(3−メチル−2−(R)−N−(3−メトキシ−1−メチル−3−オキソ−1−プロペニル−アミノ)−ブチリル)−ピペリジン−3−(S)−イル)−スルファニルアセチル]−ムチリン(デーン化合物)
2175mlのMTBE中の88.2gのR−バリンデーン塩の懸濁液に,14.5mlの水を加え,混合物を室温で10分間撹拌した。混合物を0℃に冷却し,3.5mlの4−メチルモルホリンおよび41mlの塩化ピバロイルを加え,1時間撹拌した。2175mlの冷水(0−4℃)および166.4gの14−O−[(ピペリジン−3(S)−チオアセチル)]−ムチリンメタンスルホン酸塩を加えた。約210mlの2N NaOHを加えることにより,混合物のpH値を7.0に保持した。冷却した混合物(0℃)を30分間撹拌すると,デーン化合物の結晶化が生じた。反応を完了させるため,懸濁液を30℃に暖め,1時間撹拌した。次に,約85mlの2N NaOHを加えることによりpH値を9.5とした。0℃に冷却し,さらに2時間撹拌した後,結晶を濾別し,冷水およびMTBEで洗浄し,真空下で乾燥した。195.4gのデーン化合物をMTBE溶媒和として得た。
Mp.:136−142℃
H NMR(DMSO−d,2つの安定な回転異性体の1:1混合物):
8.87,8.83(2xd,1H,NH,J=9.3Hz),6.15(m,1H,H19),5.60,5.56(2xd,1H,H14,J=8.3Hz),5.04(m,2H,H20),4.50(m,1H,α−H−Val),4.37(s,1H,CH−エナミン),3.50(s,3H,OCH),2.42,2.40(2xb,1H,H4),1.87,1.85(2xs,3H,CH−エナミン),1.36(2xs,3H,(CH)15),1.07(s,3H,(CH)18),0.96−0.77(m,9H,(CH)17,(CHVal),0.64(m,3H,(CH)16)
【0034】
I.14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩
145gのデーン化合物を1.8LのMTBEおよび1.8Lの水の混合物に懸濁した。混合物を約50℃に暖め,激しく撹拌した。2N HClを滴加することによりpH値を1.0に保持した。エナミン保護基の切断の完了はHPLCによりモニターした。有機相を分離し,水性相をMTBE(各1.6L)で2回抽出してアセト酢酸メチルを除去した。撹拌水性相に,1.6LのMTBEを加え,10N NaOHを加えることによりpHを10に調節した。相を分離し,MTBE相を1.6Lずつの水で2回抽出した。1.5Lの水を加えた後,約100mlの2N HClを加えることによりpHを3.2に調節した。水性相をロータリーエバポレータで濃縮した。残留溶液を凍結乾燥して,117.4gの表題化合物を得た。
H NMR(DMSO−d,2つの安定な回転異性体の約1:1混合物):
7.95(b,3H,NH),6.15(dd,1H,H19,J=17.6Hz,J=11.2Hz),5.6(d,1H,H14,J=8.2Hz),5.05(m,2H,H20),4.53(m,1H,OH),4.24,4.30(2xd,1H,α−H−Val,J=4.8Hz),4.08(dd,0.5H,H2−ピペリジン,J=13.7Hz,J=3.3Hz),3.08(dd,0.5Hz,H2−ピペリジン,J=13.7Hz,J=9.8Hz),3.89(dd,0.5H,H2−ピペリジン,J=13.1Hz,J=3.2Hz),3.41(m,0.5H,H2−ピペリジン),AB系:A=3.44,B=3.33(2H,SCH,J=14.9Hz),3.42(m,1H,H11),2.83,2.96(2xm,1H,CHS),2.4(b,1H,H4),1.34(s,3H,(CH)15),1.05(s,1H,(CH)18),0.9,1.0(2xm,6H,(CHVal),0.81(d,3H,(CH)17,J=6.9Hz),0.63(m,3H,(CH)16)
【0035】
実施例2
結晶形の14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3−(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩
3.0Lの水をリアクターに入れ,40℃に暖めた。1kgの凍結乾燥14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩を加え,添加装置を1.0+Lの水ですすいだ。約10分後,淡黄色溶液が得られた。溶液にシードを加え,40℃で6時間ゆっくり撹拌した。次に,加熱を停止し,結晶懸濁液を周囲温度でさらに64時間撹拌した。生成物を濾過し,1.5Lの冷水で洗浄し,乾燥せずに再結晶させるか,または湿潤生成物を40℃で真空下で乾燥して,819gの結晶化表題化合物を得た。
【0036】
再結晶
1.5Lの水を反応器に入れ,50℃に暖めた。1回目の結晶化からの湿潤生成物を加え,添加装置を1.0Lの水ですすいだ。生成物が溶解するまで懸濁液を70−75℃に加熱した。溶液を冷却し,シードを加え,40℃で6時間ゆっくり撹拌した。次に,加熱を停止し,結晶懸濁液を周囲温度でさらに24時間撹拌した。生成物を濾過し,1.3Lの冷水で洗浄し,40℃で真空下で乾燥して,765gの結晶化表題化合物を得た。
Mp.:150−155°C



【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化7】

[式中,イオウ原子に結合しているピペリジン環の炭素原子は(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかであり,ピペリジン環に結合している2−アミノ−3−メチル−ブチリル基は,(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである]
のピペリジニルスルファニルアセチルムチリンを製造する方法であって,
a)次式:
【化8】

のN保護ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンを脱保護し,そして次式:
【化9】

[式中,イオウ原子に結合しているピペリジン環の炭素原子は(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである]
の化合物を,遊離形または酸付加塩の形で単離し;
b)前記式IIIの化合物を,エナミンとして保護され炭酸混合無水物として活性化された(R)−または(S)−バリンのいずれかでアシル化して,次式:
【化10】

[式中,RおよびRはC1−4アルキルであり,Rは水素またはC1−4アルキルである]
の化合物を形成し;そして
c)式IVの化合物を脱保護し,そして式Iの化合物を単離する,
の各工程を含む方法。
【請求項2】
式Iの化合物は薬学的に許容しうる塩の形で単離される,請求項1記載の方法。
【請求項3】
式Iの化合物は塩酸塩として単離される,請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記式IIIの化合物は,メタンスルホン酸の付加塩である,請求項1記載の方法。
【請求項5】
N−保護基は,tert−ブトキシ−カルボニル基である,請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記N保護ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンは,プレウロムチリン−22−O−スルホネート(例えばメシレート,ベシレートまたはトシレート)をN保護ピペリジンチオールと反応させることにより製造される,請求項1記載の方法。
【請求項7】
N保護ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンは,プレウロムチリン−22−O−スルホネートをN保護ピペリジンチオールと反応させることにより製造され,ここで,イオウ原子に結合しているピペリジン環の炭素原子は(S)−コンフィギュレーションまたは(R)−コンフィギュレーションのいずれかである,請求項6記載の方法。
【請求項8】
式Iの単離された化合物は3−置換ピペリジニルスルファニルアセチルムチリンである,請求項1−7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記3−置換ピペリジニル−スルファニルアセチルムチリンは,14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩である,請求項1−8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1で定義される式IVの化合物。
【請求項11】
およびRはメチルであり,Rは水素である,請求項10記載の化合物。
【請求項12】
結晶形の請求項11記載の化合物。
【請求項13】
結晶形の式IIIの化合物の酸付加塩。
【請求項14】
結晶14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩。
【請求項15】
97%以上の3−(S)−ジアステレオマー過剰である,請求項14記載の化合物。
【請求項16】
下記のXRDピーク2シータ
角度[2シータ]
6,2±0.2
10,9±0.2
12,3±0.2
13,4±0.2
14,1±0.2
20,8±0.2
を有する,請求項14記載の化合物。
【請求項17】
請求項14記載の結晶化合物を製造する方法であって,
14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩を水性媒体に溶解して暖め
任意に溶液にシードを加え,そして高温で撹拌し;
得られた懸濁液を冷却し,そして周囲温度で撹拌し;
結晶生成物を単離し,そして任意に上記方法を繰り返す;
の各工程を含む方法。
【請求項18】
結晶14−O−[(N−3−メチル−2−(R)−アミノ−ブチリル−ピペリジン−3(S)−イル)スルファニル)アセチル]ムチリン−塩酸塩を含有する医薬組成物。



【公表番号】特表2010−505771(P2010−505771A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530732(P2009−530732)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国際出願番号】PCT/AT2007/000468
【国際公開番号】WO2008/040043
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(507421957)ナブリヴァ セラピュティクス アクチエンゲゼルシャフト (8)
【Fターム(参考)】