説明

プレカラム

【課題】血液あるいは血漿をはじめとした生体試料中の被検物質を免疫学的測定法により定量する際、検体中の澱状の不溶物や浮遊性の凝集物、内因性ペルオキシダーゼ様活性物質などが測定を阻害する。
【解決手段】免疫学的測定に先立って、生体試料をプレカラムを用いて前処理することにより、生体試料中の測定阻害成分を除去し、精度、感度、再現性の良い測定を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は正確かつ高感度な免疫学的分析の可能にするプレカラムに関する。
【背景技術】
【0002】
旧来から血液や尿中には生物の健康状態を示す様々な物質が存在するとされ、タンパク質を中心とする様々な物質が人間の健康状態を診断するためのマーカーとして検査に活用されてきた。現在までにがんや成人病、免疫疾患などの病態を判別しうる様々なマーカーが同定されており、血液、尿などを検体として病気を診断する方法は、人体を損ねることなく簡便に診断できる方法として、長く行われてきている。
【0003】
例えば、日本人の死因の第一位であるがんの発見に血液診断は非常に有効である。特に早期発見には血液中の微量な腫瘍マーカー(主にタンパク質)の高感度な検出が必須である。さらに、発見だけではなく術後経過のモニタリングに血液中の腫瘍マーカーの測定が利用されている。
【0004】
一方、高齢化社会に伴い、生活習慣病はますます深刻化しており、健康状態や疾患の状態の変化を手軽に図ることのできる手段として、血液検査はさらに重要性となってきた。そのため、医療関係者ばかりでなく、患者自身が血液を採取し、簡便、迅速に分析することが可能な方法が望まれている。
【0005】
以上のような血液中の微量分子の検出、測定手段として、特異性が高く、高感度な免疫学的測定法が用いられてきた。以前は放射免疫測定法が主要な測定法であったが、放射性物質を使用するため、放射能汚染に注意を払う必要があり、コストが高く、特殊な設備を要するため、現在は放射性物質を用いない酵素免疫測定法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay:ELISA)が最も一般的に行われている。
【0006】
本手法は上記のような医療診断の他にも、検疫や環境汚染診断など様々な分野で広く用いられている確立された技術であるが、血液をサンプルとした場合のバックグラウンドノイズが比較的高いという問題点がある。
【0007】
検体が血液である場合、通常は全血を使用せず、血球成分を除去した後、血漿または血清のかたちで分析する。血球成分を除去する方法としては、遠心力を使う方法が最も一般的であり(特許文献1)、他にもフィルターを用いる方法がある(特許文献2)。ただし、一般的になんらかの疾患患者の血清または血漿は健常人と比較して、不溶物の量が多く、粘度も高い傾向にあり、さらに正確な測定が難しい。
【0008】
そこで、検体の不均一性等をなくして、種々の免疫学的測定法における測光分析の精度および感度を上昇させるべく、界面活性剤を添加して血清または血漿中の混濁を除去する方法(特許文献3)が知られている。
【0009】
また、血漿中物質の高感度酵素免疫測定法として、血漿を溶媒抽出する方法(特許文献4)が知られている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示される血液を遠心分離で処理する方法では、血球およびノイズ源となる物質のうち比重の大きい澱状の不溶物は除去可能であるが、浮遊性の凝集物や内因性ペルオキシダーゼ様活性物質は除去できない。また、内因性ペルオキシダーゼ様活性物質が存在する血清や血漿中の被検物質を免疫学的測定法で計測するとバックグラウンド値が上昇し、測定感度が低下する。
【0011】
遠心分離ではなく、特許文献2に開示されるフィルターを用いて血球を分離する方法では、血球成分にせん弾力がはたらき、血球を破壊させる恐れがある。赤血球や好中球、好酸球中には内因性ペルオキシダーゼが存在するので、血球の破壊は酵素免疫測定の阻害につながる。また、これらのフィルターは血球分離に最適化されているため、酵素免疫測定法のノイズ源となる澱状の不溶物や浮遊性の凝集物、内因性ペルオキシダーゼ様活性物質を完全に除去する機能を有していない。
【0012】
また、特許文献3に開示される界面活性剤を血漿、血清等の生物学的液体中に添加することによる生体試料中の澱状の不溶物や浮遊性の凝集物を除去する方法では、界面活性剤を使用するため免疫学的測定法による高感度分析に不向きである。
【0013】
さらに、特許文献4に開示される血漿を溶媒抽出する方法では、澱状の不溶物や浮遊性の凝集物、内因性ペルオキシダーゼ様活性物質を除去することが可能であると考えられるが、本方法における測定目的物質は加熱変性しない物質に限られ、血液マーカーとして一般的なタンパク質を測定することができない。
【特許文献1】特開平3−270748号公報
【特許文献2】特開2006−38512号公報
【特許文献3】特開平3−16620号公報
【特許文献4】特開平10−19894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、酵素免疫測定法により血漿または血清中のタンパク質をはじめとした被検成分を測定するとき、澱状の不溶物、浮遊性の凝集物および内因性ペルオキシダーゼ様活性物質を除去し、再現性があり精度、感度の高い免疫学的測定を可能にする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1]生体試料中の被検物質を免疫学的測定に供するためのプレカラムであって、カラム内に生体試料中の測定阻害物質を除去するビーズを収容するプレカラム。
[2]前記生体試料が細胞成分を除去した液体であることを特徴とする[1]に記載のプレカラム。
[3]前記液体が生体試料の遠心分離により得られることを特徴とする[2]に記載のプレカラム。
[4]前記生体試料が血漿または血清であることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載のプレカラム。
[5]前記被検物質がタンパク質であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載のプレカラム。
[6]前記ビーズの平均粒径が30〜100μmであることを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載のプレカラム。
[7]前記ビーズの材質が樹脂であることを特徴とする[1]から[6]のいずれかに記載のプレカラム。
[8][1]から[7]に記載のプレカラムによる測定阻害物質除去工程を含む、生体試料中の被検物質の免疫学的測定方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の前処理方法によれば、被検物質を含む液体(以下、検体ということがある。)の免疫学的測定における、再現性、精度、感度の上昇が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明で言うプレカラムとは、免疫学的測定に先立って生体試料の前処理を行う一つ以上の小室のことで、前記小室内に測定阻害物質を除去するビーズが充填されることを特徴とする。前記プレカラムにはリザーバがあってもかまわない。また、免疫学的測定用要素とプレカラムが連結もしくは一体化していてもかまわない。
【0019】
本発明で言う測定阻害物質とは、免疫学的測定の際の測光分析に大きなバックグラウンドノイズを与えるとともに、検体が不均一化する原因となり、正確で再現性のある免疫学的測定を不可能にするような物質であり、例えば生体試料中に含まれる内因性測定阻害物質を挙げることができる。内因性測定阻害物質には、生体試料溶液中の澱状の不溶物、浮遊性の凝集物、内因性ペルオキシダーゼ様活性物質などが挙げられる。本発明のプレカラムは前記測定阻害物質を除去するために使用される。
【0020】
前記内因性ペルオキシダーゼ様活性物質は、酵素免疫測定法の検出を著しく阻害することがある。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼを標識酵素として使用する酵素免疫測定法で、生体試料として血漿や血清を用いた場合、内因性のミエロペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼをはじめとした内因性ペルオキシダーゼ様活性物質が検出の精度を低下させることがしばしば問題となる。本発明のプレカラムは生体試料中から前記内因性ペルオキシダーゼ様活性物質を好ましく取り除くことができる。
【0021】
本発明の適用対象は生体試料である。生体試料とは生体から採取されるあらゆる液体、例えば、血液、尿、唾液、汗、涙、精液、リンパ液、髄液、滑液、および細胞懸濁液などが挙げられるが、このうち血液が好ましい。また、前記生体試料中から細胞を除去した試料がより好ましい。
【0022】
血液は、無処理の状態のものでもよいが、血球成分を除去し、血漿もしくは血清であることが好ましい。血球成分の除去には遠心力やフィルターを使用する方法を用いても良いが、最も好ましくは遠心力を用いた分離方法である。遠心力により比重で分離すると、血球や比重の大きい澱状の浮遊物が除去される。その上で本発明のプレカラムを用いると、浮遊性の凝集物や内因性ペルオキシダーゼ様活性物質など比重で分離不可能な測定阻害物質を除去することが可能で、測定ノイズが減少し、精度が向上する。
【0023】
また本発明のプレカラムは血球内の成分の検出系にも好ましく適用することができる。血球内の成分を測定対象とするときは、血球成分の破壊を行う、もしくは溶血を行う。血球中には測定阻害物質であるグルタチオンペルオキシダーゼやミエロペルオキシダーゼをはじめとした内因性ペルオキシダーゼ様物質が存在するが、本発明のプレカラムを使用することでそれらを除去し、酵素免疫学的測定が可能となる。
【0024】
生体試料中の被検物質とはタンパク質やペプチド、糖、コレステロール、ビタミン、ステロイド、DNA、RNAなどをはじめとした内因性の物質および、生体に投与した化合物やその代謝物などがある。本発明のプレカラムは界面活性剤や有機溶媒を使用しないので被検物質を破壊しないことを特徴としており、タンパク質は熱や界面活性剤、有機溶媒などにより変性しやすいので、本発明のプレカラムの適用対象として、タンパク質を被検対象物質とすることが好ましい。中でも、サイトカインや腫瘍マーカーなど疾患に関わるタンパク質を検出することにより好ましく用いられる。
【0025】
免疫学的測定法は、被検成分と選択的に結合する物質のなかでも抗体を利用する分析方法で、代表的なものとしてELISA、RIA(Radioimmuno assay)、FIA(Fluorescent immunoassay)、FLISA(Fluorescence−linked immunosorbent assay)等が挙げられるがこの限りではない。さらに、抗原抗体反応以外の被検成分と選択的に結合する物質を組み合わせて利用する分析方法もある。被検成分と選択的に結合する物質は、抗原と抗体、糖とレクチン、リガンドやレセプター、アビジンとビオチンなどがあり、好ましくは抗原または抗体である。
【0026】
本発明における好ましい免疫学的測定方法としては、以下の(1)〜(5)の測定方法が挙げられる。
(1)標識した抗体により標的物質を直接認識して検出する直接法。
(2)標的とする物質を抗体により認識し、標的物質と結合した抗体を、標識した抗体により認識し検出する間接法。
(3)抗体と酵素で標識した一定量の標的物質を加えた試料を反応させて検出する競合法、もしくは、未標識抗体と標識抗体を競合的に標的物質に結合させて検出する競合法。
(4)標的とする物質を固相化した抗体により捕捉し、さらに別の抗体により検出するサンドイッチ法。
(5)標的とする物質を固相化した抗体により捕捉し、さらに別の抗体により標的とする物質を認識し、標的とする物質を認識した抗体を、標識した抗体により検出する三抗体サンドイッチ法。
【0027】
標的物質の捕捉に、糖とレクチンの結合や、リガンドとレセプターの結合などを利用してもかまわない。また、ABC法やLSAB法など、アビジン、ストレプトアビジンなどを用いて、被検物質を検出する手法を利用しても良い。
【0028】
以上のように本発明のプレカラムは種々の免疫学的測定法に用いることができるが、内因性ペルオキシダーゼ様活性物質を好ましく除去する効果を有するため、酵素免疫測定法、特に酵素として西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を利用する酵素免疫測定法に最も好ましく用いることができる。
【0029】
前記プレカラムの素材としては、各種有機材料、無機材料をあげることができ、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコン等の樹脂、それらの高分子化合物を含む共重合体あるいは複合体;石英ガラス、パイレックス(商標登録)ガラス、ソーダガラス、ホウ酸ガラス、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス類、セラミックスおよびその複合体などが好ましく用いられる。製造方法としては、射出成形でも切削加工でもかまわないが、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)の射出成形品が特に好ましく用いられる。
【0030】
前記プレカラムの大きさは、測定阻害物質を除去する容量を有することが必須であり、測定対象となる試料の量に応じて異なる。カラムの形状は、横断面が円、多角形など特に限定されないが、短径(円の場合は直径、多角形の場合は中心を通る最も短い径を意味する)より流路長のほうが長い方が好ましい。例えば、血清または血漿0.1mLに対してプレカラムの容量は0.5μL程度で十分であり、血清または血漿10mLに対してプレカラムの容量は50μL程度で十分であるが、カラム長と断面積にも依存するのでこの限りではない。例えば、通常断面の短径が0.1mm〜30mm、流路長が0.2mm〜100mmの範囲とすることができる。
【0031】
本発明で言う測定阻害物質を除去するビーズとは前記生体試料溶液中の測定阻害物質を除去するビーズで、前記内因性測定阻害物質である澱状の不溶物や浮遊性の凝集物、内因性ペルオキシダーゼ様活性物質を好ましく除去することが可能なビーズである。内因性ペルオキシダーゼ様活性物質を除去するビーズであるか否かは、試料を通した後のプレカラムにペルオキシダーゼの基質を添加して、酵素反応が生じることを確かめることで判定できる。他にも、ビーズに吸着したペルオキシダーゼを抗ペルオキシダーゼ抗体で検出することで判定することができる。
【0032】
本発明においてビーズの平均粒径は特に制限はないが、生体試料中の測定阻害物質除去能の観点からビーズの平均粒径は100μm以下が好ましい。また、ビーズの平均粒径が小さすぎるとプレカラムに目詰まりが生じるため、30μm以上が好ましい。より好ましいビーズの平均粒径としては30−80μmであり、さらに好ましくは40−60μmである。
【0033】
前記ビーズの平均粒径の測定方法としては、コールターカウンター(米国コールターエレクトロニクス社製)COULTER MULTISIZER II型を用い、約3万個測定し、平均化することで求められる。
【0034】
本発明のプレカラムに用いるビーズの材質としては、樹脂やガラス、セラミック、金属やそれらの複合体などが含まれるが、好ましくはタンパク質の吸着性が高く、非特異的に結合するタンパク質を吸着除去しやすい樹脂が用いられる。前記樹脂の具体例としては、ポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネートなどが挙げられるが、好ましくはポリメチルメタクリル酸メチル(PMMA)が用いられる。なお、前記ビーズの製造方法は特に限定されないが、例えばポリメチルメタクリル酸メチルのビーズの場合、例えば「川瀬進“ポリメチルメタクリレート粒子” 繊維学会誌, Vol.60,No.7, pp.P371−P375(2004) 」に記載の方法によって作成することができる。
【0035】
生体試料をプレカラムに送液する方法としては、重力による送液、遠心力による送液、加圧による送液、吸引による送液など、特に限定されないが、生体試料の回収率が高い遠心送液が好ましく用いられる。血球分離を遠心により行い、引き続き同じ駆動力である遠心力によりプレカラムに送液するため、新たにポンプなどを必要とせず、簡便な測定系を確立することができる。
【実施例】
【0036】
実施例1:プレカラムの有無と測定値の安定性
以下のようにしてプレカラムを作製した。前記プレカラムについては図1を用いて説明する。プレカラムはポリメチルメタクリル酸メチル製の樹脂(QMS株式会社製)の射出成形品で、管状の容量0.3μLのプレカラム1と円筒形でプレカラム側が絞り形状の検体リザーバ2を備え、両者はリザーバ出口3で連結している。
【0037】
まず、0.05%トゥイーン20含有リン酸緩衝液で洗浄したポリメチルメタクリル酸メチルビーズ(早川ゴム株式会社製、平均粒径:48.96μm)をプレカラムに充填した。0.05%トゥイーン20含有リン酸緩衝液100μLをプレカラムのリザーバに注いで1900Gで1分間遠心し、再度ビーズを洗浄してプレカラムを作製した。
【0038】
続いて、検体となるヒト血清を遠心分離法によって調製した。プレカラムのリザーバに前記ヒト血清100μLまたは100pg/mLのヒトインターロイキン8(hIL−8)(鎌倉テクノサイエンス社)を添加した前記ヒト血清100μLを注いで、1900Gで1分間遠心して送液することで、検体をプレカラム処理した。
【0039】
プレカラム処理した検体とプレカラム処理していない検体について、抗hIL-8マウス抗体(PEPROTECH社)およびHRP標識抗hIL−8マウス抗体(鎌倉テクノサイエンス社)を用いて酵素免疫測定法でヒトインターロイキン8を検出した。基質としては過酸化水素水およびAmplexRed(Molecular Probes社)を用い、産生されたレゾルフィンの蛍光強度を測定した。各サンプルの蛍光強度測定結果を図2に示す。
【0040】
図2に示すとおり、プレカラムを用いることでhIL−8濃度が0pg/mLの値が減少し、hIL−8濃度が100pg/mLの値は変化しないことが明らかになった。すなわち、プレカラムは測定対象物質であるhIL−8に影響を与えることなく、バックグラウンド上昇の原因となっている測定阻害物質の除去に成功しているといえる。また、図2に示すとおり、プレカラムを用いることで測定間のばらつきを抑えられることが明らかになった。以上より、本発明のプレカラムを用いることで、測定感度および精度の上昇が達成されたといえる。
【0041】
実施例2:各種プレカラムによる、測定阻害物質の除去
以下のようにしてプレカラムを作製した。前記プレカラムについては図1を用いて説明する。プレカラムはポリメチルメタクリル酸メチル製の樹脂(QMS株式会社製)の射出成形品で、管状の容量0.3μLのプレカラム1と円筒形でプレカラム側が絞り形状の検体リザーバ2を備え、両者はリザーバ出口3で連結している。
【0042】
まず、0.05%トゥイーン20含有リン酸緩衝液で洗浄したポリメチルメタクリル酸メチルビーズ(早川ゴム株式会社製、平均粒径:48.96μm、69.4μm、101.4μm)を各々別のプレカラムに充填した。0.05%トゥイーン20含有20mMリン酸緩衝液100μLをプレカラムのリザーバに注いで1900Gで1分間遠心し、再度ビーズを洗浄して3種類のプレカラムを作製した。検体となるヒト血清を遠心分離法によって調製し、各種プレカラムに検体となるヒト血清100mLまたは100pg/mLのhIL−8を添加したヒト血清100μLを注いで1900Gで1分間遠心送液し、検体をプレカラム処理した。
【0043】
検体を処理した各種プレカラムに、200μM過酸化水素水、13mg/mL AmplexRedを含む20mMリン酸緩衝液pH7.0(基質溶液)を100μL注ぎ、1900Gで5秒間遠心して送液した。その後にプレカラム内で産生されたレゾルフィンの様子を蛍光顕微鏡IX−71(オリンパス社)を用いて観察し、撮影した結果を図3に示す。さらに、プレカラム内の蛍光強度を測定した結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
一方で、各種プレカラムで処理した検体について、抗hIL−8マウス抗体(PEPROTECH社)およびHRP標識抗hIL−8マウス抗体(鎌倉テクノサイエンス社)を用いて酵素免疫測定法でヒトインターロイキン8を検出した。基質としては過酸化水素水およびAmplexRed(Molecular Probes社)を用い、産生されたレゾルフィンの蛍光強度を測定した。各サンプルの蛍光強度測定結果を図4に示す。
【0046】
図3、表1に示すとおり、いずれの平均粒径(以下、ビーズ径ともいう)のプレカラムについても内因性ペルオキシダーゼ様活性物質を吸着除去する効果がみられたが、特にビーズ径48.96μmのプレカラムが最も内因性ペルオキシダーゼ様活性物質除去量が高かった。さらに、図4に示すとおり、hIL−8濃度100pg/mLの測定値は各プレカラムで同等であるが、バックグラウンドであるhIL−8濃度0pg/mLの測定値はビーズ径48.96μmのプレカラム処理サンプルが最も小さく、測定間のばらつきも最も小さかった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明で用いるプレカラムの一例を模式的に示す縦断面図である。
【図2】実施例1において、プレカラム処理した検体とプレカラム処理していない検体について酵素免疫測定法でhIL−8を測定した結果を示す図である。
【図3】実施例2において、検体を処理した各種プレカラムに基質溶液を送液した際、産生されたレゾルフィンの様子を撮影した結果を示す図である。
【図4】実施例2において、各種プレカラムで処理した検体について酵素免疫測定法でhIL−8を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 プレカラム
2 リザーバ
3 リザーバ出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の被検物質を免疫学的測定に供するためのプレカラムであって、カラム内に生体試料中の測定阻害物質を除去するビーズを収容するプレカラム。
【請求項2】
前記生体試料が細胞成分を除去した液体であることを特徴とする請求項1記載のプレカラム。
【請求項3】
前記液体が生体試料の遠心分離により得られることを特徴とする請求項2に記載のプレカラム。
【請求項4】
前記生体試料が血漿または血清であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプレカラム。
【請求項5】
前記被検物質がタンパク質であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプレカラム。
【請求項6】
前記ビーズの平均粒径が30〜100μmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプレカラム。
【請求項7】
前記ビーズの材質が樹脂であることを特徴とする請求項1から6のいずれか記載のプレカラム。
【請求項8】
請求項1から7に記載のプレカラムによる測定阻害物質除去工程を含む、生体試料中の被検物質の免疫学的測定方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−174938(P2009−174938A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12383(P2008−12383)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】