プレキシブルプリント配線板の接合部の非破壊検査方法
人体に悪影響を与え得るX線やガンマ線を使用せず、接合部における不都合な欠陥を容易かつ確実に検出できる非破壊検査方法を提供する。非破壊検査方法を実施するための装置は、被検査体を支持可能なステージと、被検査体の接続部の表面を加熱するためのストロボ光源と、被検査体の接続部の表面温度の経時変化を測定可能な赤外線サーモグラフとを有する。ステージは、加熱された被検査体の温度変化すなわち冷却を促進するために被検査体を載置可能なヒートシンクを有することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板の接合部が電気的に接合されているかを判別する非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接合部の非破壊検査方法は、例えば、X線又はガンマ線を用いて接合部の形状を調べるものである。例えば特許文献1には、試料の内部の非破壊検査に用いられる、X線を利用した非破壊検査方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−251917号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線又はガンマ線を用いた方法では、接合部間の微小な隙間(例えば1μm以下のギャップ)の存在を見逃す可能性がある。またX線やガンマ線は人体に悪影響を与える虞があるため、その取り扱いには十分注意しなければならない。
【0005】
そこで本発明は、人体に悪影響を与え得るX線やガンマ線を使用せず、接合部における不都合な欠陥を容易かつ確実に検出できる非破壊検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、互いに電気的に導通接続されたフレキシブルプリント基板及び基材を用意するステップと、前記フレキシブルプリント基板と前記基材との接合部の表面全体が略均一な温度になるように前記接合部を加熱するステップと、前記接合部の加熱後から前記接合部の表面温度の経時変化を測定するステップと、前記接合部の表面温度の経時変化の測定結果に基づいて、前記接合部の電気的接続状態を検査するステップと、を有する非破壊検査方法を提供する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の非破壊検査方法において、前記フレキシブルプリント基板及び前記基材は前記接合部において互いに部分的に導通接続され、前記検査するステップは、前記接合部における部分的な導通接続部位の表面温度が前記接合部の前記部分的な導通接続部位以外の部位の表面温度よりも速く低下することをもって、該部分的な導通接続部位において導通接続がなされていると判断することを含む、非破壊検査方法を提供する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の非破壊検査方法において、前記加熱するステップは、前記接合部の外側に配置された光源からの照射光によって前記接合部を加熱することを含む、非破壊検査方法を提供する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の非破壊検査方法において、前記光源は環状形状を有する、非破壊検査方法を提供する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非破壊検査方法において、前記測定するステップにおいて赤外線サーモグラフが使用される、非破壊検査方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る非破壊検査方法によれば、人体に悪影響を与え得るX線又はガンマ線を使用せず、接合部の導通接続状態を容易かつ確実に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
図1〜図5は、本発明に係る非破壊検査方法の適用に適した被検査体の作製方法を示す図である。なおこの作製方法は、非導電性フィルムを用いてフレキシブルプリント配線板を接続するものである。
【0013】
先ず図1a及び図1bに示すような、ポリイミド等からなるベース板14上に導電体12が形成されたフレキシブルプリント基板(以降、FPCと略称する)10を用意する。次に図2に示すように、FPC10の導電体12の一部をエンボス加工して導電体12の表面に凹凸を形成する。次に図3に示すように、導電体12のエンボス加工された部位に例えばエポキシ樹脂系の接着剤16をラミネート状に形成する。次に図4aに示すような、FPC10の導電体12に導通接続すべき導電体20がガラエポ等の剛性基板22上に形成された基材(以降、PCBと略称する)18を用意し、最後に図4bに示すようにPCB18の導電体20をFPC10の導電体12に熱プレス等により接着する。このとき導電体12の凸部と導電体20との間の接着剤は凸部の周囲に押し出され、導電体12と導電体20とが直接接触すなわち導通接続される。このようにして、図6に示すような接合部24を備えた被検査体30が作製される。
【0014】
次に図7は、本発明の好適な非破壊検査方法を実施するための装置40の概要を示す図である。装置40は、上述の被検査体30を支持可能なステージ42と、被検査体30の接合部24の表面を加熱するための、キセノンランプ等のストロボ光源44と、被検査体30の接合部24の表面温度の経時変化を(例えば0.1秒間隔で)測定可能な赤外線サーモグラフ46とを有する。サーモグラフ46としては、赤外線放射を利用する公知の赤外線サーモグラフが使用可能である。なおステージ42は、加熱された被検査体30の温度変化すなわち冷却を促進するために被検査体30を載置可能なヒートシンク48を有することが好ましく、またヒートシンク48はX、Y及びZいずれの方向にも可動すなわち任意の方向に位置調節可能であることが好ましい。
【0015】
装置40は、被検査体30の接合部24の表面温度が接合部全体にわたって均一になるように、接合部24の表面を均一に加熱できる構造を有する。そのためにストロボ光源44は、接合部24の外側から均一に光を照射できる形状、例えば環状形状を有することが好ましい。ただしこのような光源形状であっても接合部24の中央付近と外周付近とでは光源との距離差がまだ存するため、この差により生じ得る接合部の表面温度差を解消するために、装置40は、ストロボ光源44から接合部24の表面に直接向かわない照射光を接合部24の表面に向けて反射する反射鏡50をさらに有することが好ましい。
【0016】
またサーモグラフ46の代わりに、赤外線サーモグラフと同様に赤外線放射を利用する赤外線カメラを用いてもよい。この場合も、接合部全体の温度分布を画像表示によって知ることができる。
【0017】
また被検査体30の接合部24の温度分布を画像表示する赤外線サーモグラフ又は赤外線カメラの代わりに、測定すべき部位(すなわち導通接続部位及びそれ以外の部位)をスポット計測可能な分光放射計又はスポット放射温度計を用いてもよい。この場合は、接合部24全体の温度分布を視覚的に示す代わりに、各部位の温度が数値によって表されることになるが、導通接続状態を確認すべき部位及びそれ以外の部位の温度変化を適当な時間間隔(例えば0.1秒刻み)で測定することにより、本発明の非破壊検査方法に必要な経時変化のデータを得ることができる。
【0018】
本発明においては一般に、サーモグラフ46はFPC10のベース板14の裏側の面すなわちPCB18と接続されない側の面の表面温度を測定する。従って本発明に係る上述の非破壊検査方法を適用するためには、ベース板14の厚さは所定の厚さ以下であることが望まれる。一例として図8に示す接合部24の断面において、FPC10のベース板14は厚さが100μm以下であることが好ましく、より好ましくは、厚さが12.5、25、50及び75μmのポリイミドフィルムである。またFPC10の導電体12は、厚さが50μm以下であることが好ましく、より好ましくは、厚さが4、9、12、18及び35μmの銅箔である。
【0019】
一方PCB18の導電体20は、FPC10の導電体12と同様に、厚さが50μ以下であることが好ましく、より好ましくは、厚さが4、9、12、18及び35μmの銅箔である。またPCB18の剛性基板22は、厚さが約100〜500μmのガラエポであることが好ましいが、FPC10のベース板14と同様に可撓性を備えたポリイミド等の基板であってもよい。
【0020】
またFPC10の導電体12の凸部12a〜12dの高さ(すなわち導電体12の凹部12eと導電体20との厚さ方向距離)dは、約3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは約5μmである。また隣接する凸部間のピッチpは、約0.1〜0.3mmであることが好ましく、より好ましくは約0.2mmである。またピッチpに関連し、サーモグラフ46の分解能はピッチpよりも小さいことが必要とされる。
【0021】
次に本発明の非破壊検査方法の手順について説明する。
上述のような、互いに電気的に導通接続されたFPC10及びPCB18からなる被検査体30を用意し、ヒートシンク48上に載置する(図7参照)。次に被検査体30の接合部24の表面全体が略均一な温度になるように、ストロボ光源44の発光によって接合部24を加熱する。ストロボ光源44の発光直後(すなわち接合部24の表面温度が均一に昇温されたとき)からの接合部24の表面温度の経時変化を、サーモグラフ46を用いて測定する。なお一般に表面温度の冷却は比較的迅速であり、故に経時変化の測定はストロボ発光直後から0.1〜0.3秒間隔で数秒間にわたって行われることが好ましい。
【0022】
上述の方法によって得られるサーモグラフ46の測定結果の一例を図9に示す。なお図9はサーモグラフによる接合部24の一部の出力画像を模式的に示した図であり、ストロボ発光後のある時点での表面温度分布を示すものである。図8に示したように接合部24におけるFPC10の導電体12は凹凸を有するので、接合部24において実際に導通接続されているのは導電体12の凸部のみとなる。本発明に係る非破壊検査方法は、実際に導通接続されている部位(図8の例では凸部12a〜12d)とされていない部位とでFPC10からPCB18への熱伝導率が大きく異なることを利用する。すなわち、金属同士が直接当接する部位すなわち凸部での熱伝導率は、一般には樹脂系の接着剤が介在する(場合によっては接着剤もない単なる空隙である)部位すなわち凹部での熱伝導率より数十倍から数百倍であるため、ストロボ発光による加熱後は凸部及びその近傍の方が凹部及びその近傍より速く冷却(すなわちFPC10からPCB18へ熱移動)することになる。例えば図9に示す例の場合は、複数の凸部12a〜12dのうち凸部12cのみ、他よりもある時点での温度が高く(すなわち冷却速度が遅い)、故に何らかの原因により確実な導通接続がなされていないことを示す。このように、接合部の表面温度の経時変化を測定することにより、接合部の各導通接続部位すなわち凸部の電気的接合状態を非破壊検査することができる。またX線やガンマ線を用いた非破壊検査では見落とす可能性がある導通接続部位間の1μm程度の微小な隙間があっても、その隙間により熱伝導性は下がるので、本発明による非破壊検査はそのような隙間を見落とすことはない。
【0023】
本発明は、FPCのベース板を光照射により短時間で一様に昇温させ、その後の冷却すなわち熱移動を追跡する方法であるので、FPCと接合する相手はいかなる材料であってもよい。具体的には、FPCと、FPC、硬質プリント配線プリント板、ガラス基板又は半導体チップとの接合が検査可能である。また本発明は、部分的に導通接続された接合部位の非破壊検査に特に好適であるが、無論他の方法による接合部位にも適用可能であり、いずれの場合も接続部位の導通接続状態を簡易かつ確実に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1a】本発明に係る非破壊検査方法により検査される被検査体が有するFPCの概略図である。
【図1b】図1aのFPC上の導電体の部分拡大図である。
【図2】図1bの導電体にエンボス加工を施した図である。
【図3】図2の導電体上に接着剤をラミネートした図である。
【図4a】図1aのFPCに導通接続すべきPCBの概略図である。
【図4b】図4aの部分拡大図である。
【図5】FPCとPCBとの接合を示す図である。
【図6】導通接続されたFPC及びPCBの概略図である。
【図7】本発明に係る非破壊検査方法を実施するための概略の装置構成を示す図である。
【図8】被検査体の導通接続部の概略断面図である。
【図9】サーモグラフによる被検査体の測定結果の一例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板の接合部が電気的に接合されているかを判別する非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接合部の非破壊検査方法は、例えば、X線又はガンマ線を用いて接合部の形状を調べるものである。例えば特許文献1には、試料の内部の非破壊検査に用いられる、X線を利用した非破壊検査方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−251917号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線又はガンマ線を用いた方法では、接合部間の微小な隙間(例えば1μm以下のギャップ)の存在を見逃す可能性がある。またX線やガンマ線は人体に悪影響を与える虞があるため、その取り扱いには十分注意しなければならない。
【0005】
そこで本発明は、人体に悪影響を与え得るX線やガンマ線を使用せず、接合部における不都合な欠陥を容易かつ確実に検出できる非破壊検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、互いに電気的に導通接続されたフレキシブルプリント基板及び基材を用意するステップと、前記フレキシブルプリント基板と前記基材との接合部の表面全体が略均一な温度になるように前記接合部を加熱するステップと、前記接合部の加熱後から前記接合部の表面温度の経時変化を測定するステップと、前記接合部の表面温度の経時変化の測定結果に基づいて、前記接合部の電気的接続状態を検査するステップと、を有する非破壊検査方法を提供する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の非破壊検査方法において、前記フレキシブルプリント基板及び前記基材は前記接合部において互いに部分的に導通接続され、前記検査するステップは、前記接合部における部分的な導通接続部位の表面温度が前記接合部の前記部分的な導通接続部位以外の部位の表面温度よりも速く低下することをもって、該部分的な導通接続部位において導通接続がなされていると判断することを含む、非破壊検査方法を提供する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の非破壊検査方法において、前記加熱するステップは、前記接合部の外側に配置された光源からの照射光によって前記接合部を加熱することを含む、非破壊検査方法を提供する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の非破壊検査方法において、前記光源は環状形状を有する、非破壊検査方法を提供する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非破壊検査方法において、前記測定するステップにおいて赤外線サーモグラフが使用される、非破壊検査方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る非破壊検査方法によれば、人体に悪影響を与え得るX線又はガンマ線を使用せず、接合部の導通接続状態を容易かつ確実に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
図1〜図5は、本発明に係る非破壊検査方法の適用に適した被検査体の作製方法を示す図である。なおこの作製方法は、非導電性フィルムを用いてフレキシブルプリント配線板を接続するものである。
【0013】
先ず図1a及び図1bに示すような、ポリイミド等からなるベース板14上に導電体12が形成されたフレキシブルプリント基板(以降、FPCと略称する)10を用意する。次に図2に示すように、FPC10の導電体12の一部をエンボス加工して導電体12の表面に凹凸を形成する。次に図3に示すように、導電体12のエンボス加工された部位に例えばエポキシ樹脂系の接着剤16をラミネート状に形成する。次に図4aに示すような、FPC10の導電体12に導通接続すべき導電体20がガラエポ等の剛性基板22上に形成された基材(以降、PCBと略称する)18を用意し、最後に図4bに示すようにPCB18の導電体20をFPC10の導電体12に熱プレス等により接着する。このとき導電体12の凸部と導電体20との間の接着剤は凸部の周囲に押し出され、導電体12と導電体20とが直接接触すなわち導通接続される。このようにして、図6に示すような接合部24を備えた被検査体30が作製される。
【0014】
次に図7は、本発明の好適な非破壊検査方法を実施するための装置40の概要を示す図である。装置40は、上述の被検査体30を支持可能なステージ42と、被検査体30の接合部24の表面を加熱するための、キセノンランプ等のストロボ光源44と、被検査体30の接合部24の表面温度の経時変化を(例えば0.1秒間隔で)測定可能な赤外線サーモグラフ46とを有する。サーモグラフ46としては、赤外線放射を利用する公知の赤外線サーモグラフが使用可能である。なおステージ42は、加熱された被検査体30の温度変化すなわち冷却を促進するために被検査体30を載置可能なヒートシンク48を有することが好ましく、またヒートシンク48はX、Y及びZいずれの方向にも可動すなわち任意の方向に位置調節可能であることが好ましい。
【0015】
装置40は、被検査体30の接合部24の表面温度が接合部全体にわたって均一になるように、接合部24の表面を均一に加熱できる構造を有する。そのためにストロボ光源44は、接合部24の外側から均一に光を照射できる形状、例えば環状形状を有することが好ましい。ただしこのような光源形状であっても接合部24の中央付近と外周付近とでは光源との距離差がまだ存するため、この差により生じ得る接合部の表面温度差を解消するために、装置40は、ストロボ光源44から接合部24の表面に直接向かわない照射光を接合部24の表面に向けて反射する反射鏡50をさらに有することが好ましい。
【0016】
またサーモグラフ46の代わりに、赤外線サーモグラフと同様に赤外線放射を利用する赤外線カメラを用いてもよい。この場合も、接合部全体の温度分布を画像表示によって知ることができる。
【0017】
また被検査体30の接合部24の温度分布を画像表示する赤外線サーモグラフ又は赤外線カメラの代わりに、測定すべき部位(すなわち導通接続部位及びそれ以外の部位)をスポット計測可能な分光放射計又はスポット放射温度計を用いてもよい。この場合は、接合部24全体の温度分布を視覚的に示す代わりに、各部位の温度が数値によって表されることになるが、導通接続状態を確認すべき部位及びそれ以外の部位の温度変化を適当な時間間隔(例えば0.1秒刻み)で測定することにより、本発明の非破壊検査方法に必要な経時変化のデータを得ることができる。
【0018】
本発明においては一般に、サーモグラフ46はFPC10のベース板14の裏側の面すなわちPCB18と接続されない側の面の表面温度を測定する。従って本発明に係る上述の非破壊検査方法を適用するためには、ベース板14の厚さは所定の厚さ以下であることが望まれる。一例として図8に示す接合部24の断面において、FPC10のベース板14は厚さが100μm以下であることが好ましく、より好ましくは、厚さが12.5、25、50及び75μmのポリイミドフィルムである。またFPC10の導電体12は、厚さが50μm以下であることが好ましく、より好ましくは、厚さが4、9、12、18及び35μmの銅箔である。
【0019】
一方PCB18の導電体20は、FPC10の導電体12と同様に、厚さが50μ以下であることが好ましく、より好ましくは、厚さが4、9、12、18及び35μmの銅箔である。またPCB18の剛性基板22は、厚さが約100〜500μmのガラエポであることが好ましいが、FPC10のベース板14と同様に可撓性を備えたポリイミド等の基板であってもよい。
【0020】
またFPC10の導電体12の凸部12a〜12dの高さ(すなわち導電体12の凹部12eと導電体20との厚さ方向距離)dは、約3〜10μmであることが好ましく、より好ましくは約5μmである。また隣接する凸部間のピッチpは、約0.1〜0.3mmであることが好ましく、より好ましくは約0.2mmである。またピッチpに関連し、サーモグラフ46の分解能はピッチpよりも小さいことが必要とされる。
【0021】
次に本発明の非破壊検査方法の手順について説明する。
上述のような、互いに電気的に導通接続されたFPC10及びPCB18からなる被検査体30を用意し、ヒートシンク48上に載置する(図7参照)。次に被検査体30の接合部24の表面全体が略均一な温度になるように、ストロボ光源44の発光によって接合部24を加熱する。ストロボ光源44の発光直後(すなわち接合部24の表面温度が均一に昇温されたとき)からの接合部24の表面温度の経時変化を、サーモグラフ46を用いて測定する。なお一般に表面温度の冷却は比較的迅速であり、故に経時変化の測定はストロボ発光直後から0.1〜0.3秒間隔で数秒間にわたって行われることが好ましい。
【0022】
上述の方法によって得られるサーモグラフ46の測定結果の一例を図9に示す。なお図9はサーモグラフによる接合部24の一部の出力画像を模式的に示した図であり、ストロボ発光後のある時点での表面温度分布を示すものである。図8に示したように接合部24におけるFPC10の導電体12は凹凸を有するので、接合部24において実際に導通接続されているのは導電体12の凸部のみとなる。本発明に係る非破壊検査方法は、実際に導通接続されている部位(図8の例では凸部12a〜12d)とされていない部位とでFPC10からPCB18への熱伝導率が大きく異なることを利用する。すなわち、金属同士が直接当接する部位すなわち凸部での熱伝導率は、一般には樹脂系の接着剤が介在する(場合によっては接着剤もない単なる空隙である)部位すなわち凹部での熱伝導率より数十倍から数百倍であるため、ストロボ発光による加熱後は凸部及びその近傍の方が凹部及びその近傍より速く冷却(すなわちFPC10からPCB18へ熱移動)することになる。例えば図9に示す例の場合は、複数の凸部12a〜12dのうち凸部12cのみ、他よりもある時点での温度が高く(すなわち冷却速度が遅い)、故に何らかの原因により確実な導通接続がなされていないことを示す。このように、接合部の表面温度の経時変化を測定することにより、接合部の各導通接続部位すなわち凸部の電気的接合状態を非破壊検査することができる。またX線やガンマ線を用いた非破壊検査では見落とす可能性がある導通接続部位間の1μm程度の微小な隙間があっても、その隙間により熱伝導性は下がるので、本発明による非破壊検査はそのような隙間を見落とすことはない。
【0023】
本発明は、FPCのベース板を光照射により短時間で一様に昇温させ、その後の冷却すなわち熱移動を追跡する方法であるので、FPCと接合する相手はいかなる材料であってもよい。具体的には、FPCと、FPC、硬質プリント配線プリント板、ガラス基板又は半導体チップとの接合が検査可能である。また本発明は、部分的に導通接続された接合部位の非破壊検査に特に好適であるが、無論他の方法による接合部位にも適用可能であり、いずれの場合も接続部位の導通接続状態を簡易かつ確実に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1a】本発明に係る非破壊検査方法により検査される被検査体が有するFPCの概略図である。
【図1b】図1aのFPC上の導電体の部分拡大図である。
【図2】図1bの導電体にエンボス加工を施した図である。
【図3】図2の導電体上に接着剤をラミネートした図である。
【図4a】図1aのFPCに導通接続すべきPCBの概略図である。
【図4b】図4aの部分拡大図である。
【図5】FPCとPCBとの接合を示す図である。
【図6】導通接続されたFPC及びPCBの概略図である。
【図7】本発明に係る非破壊検査方法を実施するための概略の装置構成を示す図である。
【図8】被検査体の導通接続部の概略断面図である。
【図9】サーモグラフによる被検査体の測定結果の一例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気的に導通接続されたフレキシブルプリント基板及び基材を用意するステップと、
前記フレキシブルプリント基板と前記基材との接合部の表面全体が略均一な温度になるように前記接合部を加熱するステップと、
前記接合部の加熱後から前記接合部の表面温度の経時変化を測定するステップと、
前記接合部の表面温度の経時変化の測定結果に基づいて、前記接合部の電気的接続状態を検査するステップと、
を有する非破壊検査方法。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板及び前記基材は前記接合部において互いに部分的に導通接続され、前記検査するステップは、前記接合部における部分的な導通接続部位の表面温度が前記接合部の前記部分的な導通接続部位以外の部位の表面温度よりも速く低下することをもって、該部分的な導通接続部位において導通接続がなされていると判断することを含む、請求項1に記載の非破壊検査方法。
【請求項3】
前記加熱するステップは、前記接合部の外側に配置された光源からの照射光によって前記接合部を加熱することを含む、請求項1又は2に記載の非破壊検査方法。
【請求項4】
前記光源は環状形状を有する、請求項3に記載の非破壊検査方法。
【請求項5】
前記測定するステップにおいて赤外線サーモグラフが使用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非破壊検査方法。
【請求項1】
互いに電気的に導通接続されたフレキシブルプリント基板及び基材を用意するステップと、
前記フレキシブルプリント基板と前記基材との接合部の表面全体が略均一な温度になるように前記接合部を加熱するステップと、
前記接合部の加熱後から前記接合部の表面温度の経時変化を測定するステップと、
前記接合部の表面温度の経時変化の測定結果に基づいて、前記接合部の電気的接続状態を検査するステップと、
を有する非破壊検査方法。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板及び前記基材は前記接合部において互いに部分的に導通接続され、前記検査するステップは、前記接合部における部分的な導通接続部位の表面温度が前記接合部の前記部分的な導通接続部位以外の部位の表面温度よりも速く低下することをもって、該部分的な導通接続部位において導通接続がなされていると判断することを含む、請求項1に記載の非破壊検査方法。
【請求項3】
前記加熱するステップは、前記接合部の外側に配置された光源からの照射光によって前記接合部を加熱することを含む、請求項1又は2に記載の非破壊検査方法。
【請求項4】
前記光源は環状形状を有する、請求項3に記載の非破壊検査方法。
【請求項5】
前記測定するステップにおいて赤外線サーモグラフが使用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非破壊検査方法。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2008−532009(P2008−532009A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557032(P2007−557032)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/003608
【国際公開番号】WO2006/093613
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/003608
【国際公開番号】WO2006/093613
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
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