説明

プレキャスト部材の生産管理システム

【課題】プレキャスト部材の生産を効率良く行う。
【解決手段】不図示の発注手段を使って作業者が作業開始要求コマンドを送信すると、1次側ヤード(例えば、バッチングプラント)A,…ではその情報が表示され、作業者は所定の作業工程を実施する。この発注手段により、1次側ヤードからの生産物(例えば、練り混ぜたコンクリート)の搬送先の2次側ヤード(例えば、B22)も指定でき、その情報は搬送装置C,…の操作者に告知される。これにより、プレキャスト部材の生産が効率良く行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材の生産を管理する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンション等の建物を構築するに際し、床や柱や梁や壁等の鉄筋コンクリート部材(以下、“プレキャスト部材”と称する)を予め工場で製造しておいて、該プレキャスト部材を現場まで搬送し、組立てるという工法が実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図2は、そのようなプレキャスト部材の生産設備の一例を示す模式図である。図中の符号A,A,…は、セメントや水や砂や砂利等を練り混ぜてコンクリートを作製するためのバッチングプラントを示す。また、符号B11,…は、プレキャスト部材を作製するための製作ヤードを示し、この製作ヤードB11,…においては、公知の工程(つまり、型枠組立、配筋、コンクリート打設、養生、脱型等)が実施されてプレキャスト部材が製造される。符号C,C,…は、練り混ぜたコンクリートをバッチングプラントA,A,…から製作ヤードB11,…に搬送するための搬送装置を示す。
【特許文献1】特開平11−10626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような生産設備においては、プレキャスト部材の生産を効率良く行うことが望まれる。また、プレキャスト部材の生産に従事する作業者への情報伝達を確実にして、プレキャスト部材の品質を適正に確保することが望まれる。
【0005】
本発明は、プレキャスト部材の生産を効率良く行うことのできる、プレキャスト部材の生産管理システムを提供することを目的とするものである。
【0006】
また、本発明は、作業開始告知手段を用いて、生産すべきプレキャスト部材の仕様についての情報を他の作業者(つまり、プレキャスト部材の生産に直接関わる作業者)に対して表示することにより、該作業者への情報伝達を確実にする、プレキャスト部材の生産管理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に例示するものであって、プレキャスト部材の生産のための所定の工程を実施する少なくとも1つの1次側ヤード(A,…)と、次の工程を実施する複数の2次側ヤード(B11,…)と、該1次側ヤード(A,…)から該2次側ヤード(B11,…)に掛けての搬送を行う搬送手段(C)と、を備えた生産設備を管理する、プレキャスト部材の生産管理システムにおいて、
前記1次側ヤード(A,…)における作業の開始を要求する作業開始要求コマンド、及び前記搬送手段(C)の搬送先である2次側ヤード(B11,…)を指定する搬送先指定コマンドを出力する発注手段(2)と、
前記作業開始要求コマンドに基づき、前記1次側ヤード(A,…)の作業者に対して作業開始を告知する作業開始告知手段(3)と、
前記搬送先指定コマンドに基づき搬送先を表示する搬送先表示手段(4)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記搬送手段(C)は、前記1次側ヤード(A,…)を横切る主搬送路(D)に沿って駆動される主搬送装置(C)と、該主搬送路(D)からそれぞれの2次側ヤード(B11,…)に掛けて配置された複数の副搬送路(D,…)に沿ってそれぞれ駆動される複数の副搬送装置(C,…)と、からなり、
前記発注手段(2)は、前記複数の2次側ヤード(B11,…)の全て又は一部について複数設けられ、
それら複数の発注手段(2,…)と前記作業開始告知手段(3)との間に介装されて、前記複数の発注手段(2,…)からの複数の作業開始要求コマンドが競合した場合に1つの作業開始要求コマンドを抽出して前記作業開始告知手段(3)に送信する生産ライン管理コンピュータ(5)を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記生産ライン管理コンピュータ(5)は、
それぞれの副搬送装置(C,…)が停止中か、前記主搬送路(D)に近づく方向に移動中か、或いは前記主搬送路(D)から遠ざかる方向に移動中かを判別する移動モード判別手段(50)と、
該移動モード判別手段(50)及び前記発注手段(2,…)からの信号に基づき、前記主搬送路(D)に近づく方向に副搬送装置(C,…)が移動中である副搬送路(D,…)に沿った2次側ヤード(B11,…)であって、前記発注手段(2,…)が前記作業開始要求コマンドを出力しているところの2次側ヤード(B11,…)を抽出する2次側ヤード抽出手段(51)と、を備え、
前記作業開始告知手段(3)は、前記2次側ヤード抽出手段(51)により抽出された2次側ヤード(B11,…)についての作業開始要求コマンドに基づき、前記1次側ヤード(A,…)の作業者に対して作業開始を告知することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記発注手段(2,…)は、生産すべきプレキャスト部材の仕様についての情報を送信し、
前記作業開始告知手段(3)は、前記1次側ヤード(A,…)の作業者に対して該仕様についての情報を表示することを特徴とする。
【0011】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、1次側ヤードの作業者は、発注手段から出力される作業開始要求コマンドに基づき作業を開始するので、プレキャスト部材の生産を効率良く行うことができる。また、搬送先表示手段によって搬送先の表示が行われるので、搬送ミスを回避することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、2次側ヤードが複数であって、複数の作業開始要求コマンドが競合した場合であっても、プレキャスト部材の生産を効率良く行うことができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、搬送手段の移動状態を考慮して作業が進められるので、プレキャスト部材の生産を効率良く行うことができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、プレキャスト部材の仕様についての情報が1次側ヤードの作業者に対して表示されるので、正しい仕様のプレキャスト部材が生産される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1及び図2に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ここで、図1は、本発明に係るプレキャスト部材の生産管理システムの一例を示すブロック図であり、図2は、プレキャスト部材の生産設備の一例を示す模式図である。
【0017】
本発明に係るプレキャスト部材の生産管理システムは、図2に例示するように、
・ プレキャスト部材の生産のための所定の工程を実施する少なくとも1つの1次側ヤードA,A,…と、
・ 次の工程を実施する複数の2次側ヤードB11,…と、
・ 該1次側ヤードA,A,…から各2次側ヤードB11,…に掛けての搬送を行う搬送手段Cと、
を備えた生産設備に適用されるものである。なお、1次側ヤードとしては、コンクリートの練り混ぜを行うバッチングプラントを挙げることができ、2次側ヤードとしては、該練り混ぜたコンクリートを使用してプレキャスト部材を製作する製作ヤードを挙げることができる。また、その製作ヤードを1次側ヤードとし、製作したプレキャスト部材をストックするストックヤードを2次側ヤードとしても良い。
【0018】
ここで、搬送手段Cとしては、前記1次側ヤードA,A,…を横切る主搬送路Dに沿って駆動される主搬送装置Cと、該主搬送路Dから前記2次側ヤードB11,…に掛けて配置された副搬送路D,D,Dに沿って駆動される副搬送装置C,C,Cとにより構成すると良い。この場合、2次側ヤードB11,…は前記主搬送路Dに沿って(つまり、図2の左右方向に)複数配置し、副搬送路D,D,D及び副搬送装置C,C,Cも複数配置すると良い。
【0019】
そして、本発明に係る生産管理システムは、図1に符号1で例示するものであって、
・ 前記1次側ヤードA,A,…における作業の開始を要求する作業開始要求コマンドを出力する発注手段2と、
・ 前記作業開始要求コマンドに基づき、前記1次側ヤードA,…の作業者に対して作業開始を告知する作業開始告知手段3と、
を少なくとも備えている。本発明によれば、1次側ヤードの作業者は、発注手段2から出力される作業開始要求コマンドに基づき作業を開始するので、プレキャスト部材の生産を効率良く行うことができる。
【0020】
この場合、前記発注手段2は、前記作業開始要求コマンドと共に、前記搬送手段Cの搬送先である2次側ヤードを指定する搬送先指定コマンドを出力するようにすると良い。そして、該搬送先指定コマンドに基づき搬送先を表示する搬送先表示手段4を、前記搬送手段Cの操作者が視認できる位置に配置しておくと良い。この場合、搬送先表示手段4によって搬送先の表示が行われるので、搬送ミスを回避することができる。
【0021】
その場合、複数の発注手段2,…を、前記複数の2次側ヤードB11,…の全て又は一部について設けておくと良い。そして、複数の発注手段2,…と前記作業開始告知手段3との間に生産ライン管理コンピュータ5を介装しておいて、前記複数の発注手段2,…からの複数の作業開始要求コマンドが競合した場合に1つの作業開始要求コマンドを抽出して前記作業開始告知手段3に送信するようにしても良い。これにより、2次側ヤードB11,…が複数であって、複数の作業開始要求コマンドが競合した場合であっても、プレキャスト部材の生産を効率良く行うことができる。
【0022】
ところで、図示のように副搬送装置C,C,Cを設けた場合においては、副搬送装置C,C,Cは、
(1) 副搬送路中で停止しているモード
(2) 主搬送路Dに近づく方向に移動しているモード
(3) 主搬送路Dから遠ざかる方向に移動しているモード
のいずれかのモードを取ることとなる。そこで、それぞれの副搬送装置C,C,Cについて、
(1) 停止中
(2) 主搬送路Dに近づく方向に移動中
(3) 主搬送路Dから遠ざかる方向に移動中
のいずれであるかを判別する移動モード判別手段50を前記生産ライン管理コンピュータ5に設けておき、さらに、該移動モード判別手段50及び前記発注手段2からの信号に基づき、上記(2)のモードの副搬送路において、該副搬送路に沿ったいずれかの2次側ヤードであって、前記発注手段2が前記作業開始要求コマンドを出力している2次側ヤードを抽出する2次側ヤード抽出手段51を該生産ライン管理コンピュータ5に設けておき、前記作業開始告知手段3は、前記2次側ヤード抽出手段51により抽出された2次側ヤード(B11,…のいずれか)についての作業開始要求コマンドに基づき、前記1次側ヤードA,…の作業者に対して作業開始を告知するようにすると良い。このように構成した場合には、搬送手段Cの移動状態を考慮して作業が進められるので、プレキャスト部材の生産を効率良く行うことができる。
【0023】
また、前記発注手段2が、生産すべきプレキャスト部材の仕様(例えば、使用すべき鉄筋の径や本数、混合すべき砂の種類や量、セメントの種類や量、水、砂、砂利の量)についての仕様情報を送信するようにし、前記作業開始告知手段3が、前記1次側ヤードの作業者に対して該仕様情報を表示するようにしても良い。そのようにした場合には、プレキャスト部材の仕様についての情報が1次側ヤードの作業者に対して表示されるので、正しい仕様のプレキャスト部材が生産される。
【0024】
ここで、前記作業開始告知手段3としては、電光掲示板等の公知のディスプレイ装置を挙げることができ、これらの装置は、前記1次側ヤードの作業者が容易に視認できる位置に配置すると良い。
【0025】
一方、前記発注手段2からの仕様情報がICタグ等の情報担持手段(不図示)に担持されるようにし、該情報担持手段をプレキャスト部材に取付けておくと良い。このようにした場合には、各プレキャスト部材の仕様を簡単に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明に係るプレキャスト部材の生産管理システムの一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明が適用されるプレキャスト部材の生産設備の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0027】
1 生産管理システム
2 発注手段
3 作業開始告知手段
4 搬送先表示手段
5 生産ライン管理コンピュータ
50 移動モード判別手段
51 2次側ヤード抽出手段
,… 1次側ヤード
11,… 2次側ヤード
C 搬送手段
主搬送装置
,… 副搬送装置
主搬送路
,… 副搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャスト部材の生産のための所定の工程を実施する少なくとも1つの1次側ヤードと、次の工程を実施する複数の2次側ヤードと、該1次側ヤードから該2次側ヤードに掛けての搬送を行う搬送手段とを備えた生産設備を管理する、プレキャスト部材の生産管理システムにおいて、
前記1次側ヤードにおける作業の開始を要求する作業開始要求コマンド、及び前記搬送手段の搬送先である2次側ヤードを指定する搬送先指定コマンドを出力する発注手段と、
前記作業開始要求コマンドに基づき、前記1次側ヤードの作業者に対して作業開始を告知する作業開始告知手段と、
前記搬送先指定コマンドに基づき搬送先を表示する搬送先表示手段と、
を備えたことを特徴とするプレキャスト部材の生産管理システム。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記1次側ヤードを横切る主搬送路に沿って駆動される主搬送装置と、該主搬送路からそれぞれの2次側ヤードに掛けて配置された複数の副搬送路に沿ってそれぞれ駆動される複数の副搬送装置と、からなり、
前記発注手段は、前記複数の2次側ヤードの全て又は一部について複数設けられ、
それら複数の発注手段と前記作業開始告知手段との間に介装されて、前記複数の発注手段からの複数の作業開始要求コマンドが競合した場合に1つの作業開始要求コマンドを抽出して前記作業開始告知手段に送信する生産ライン管理コンピュータ、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材の生産管理システム。
【請求項3】
前記生産ライン管理コンピュータは、
それぞれの副搬送装置が停止中か、前記主搬送路に近づく方向に移動中か、或いは前記主搬送路から遠ざかる方向に移動中かを判別する移動モード判別手段と、
該移動モード判別手段及び前記発注手段からの信号に基づき、前記主搬送路に近づく方向に副搬送装置が移動中である副搬送路に沿った2次側ヤードであって、前記発注手段が前記作業開始要求コマンドを出力しているところの2次側ヤードを抽出する2次側ヤード抽出手段と、
を備え、
前記作業開始告知手段は、前記2次側ヤード抽出手段により抽出された2次側ヤードについての作業開始要求コマンドに基づき、前記1次側ヤードの作業者に対して作業開始を告知する、
ことを特徴とする請求項2に記載のプレキャスト部材の生産管理システム。
【請求項4】
前記発注手段は、生産すべきプレキャスト部材の仕様についての情報を送信し、
前記作業開始告知手段は、前記1次側ヤードの作業者に対して該仕様についての情報を表示する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプレキャスト部材の生産管理システム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−46721(P2008−46721A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219468(P2006−219468)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(501431958)三井プレコン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】