説明

プレストパウダー

【課題】液状油剤を用いず、各種粉体の混合処理が一段階で完了するプレストパウダーを提供する。
【解決手段】液状油剤を含有せず、ポリステアリン酸スクロースを含有するプレストパウダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレストパウダーに関する。
【背景技術】
【0002】
プレストパウダーは無機顔料等を圧縮成形して調製される固形化粧料である。その際、プレストパウダーの成形強度を維持するために、無機顔料等を予備混合した後に、結合剤として液状油剤を添加混合し、その後成形することが行われている。結合剤としてシリコーン油、揮発性シリコーン油を用いる技術(特許文献1:特開平8−268838号公報)、結合剤としてシリコーン油、フッ素系油剤を用いる技術(特許文献2:特開平9−221404号公報)等が知られている。無機顔料等と結合剤である油剤との混合の不均一性を解消するために、揮発性の分散媒を用いて無機顔料等と油剤をスラリー化し、分散媒を除去して成形することも行われている(特許文献3:特開2001−322912号公報)。
本発明に用いるポリステアリン酸スクロースは、液状油のゲル化剤として用いられたり(特許文献4:特開2005−22987号公報)、液状油を含有する固形状油性化粧料に界面活性剤として用いられることが知られている(特許文献5:特開2008−260736号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−268838号公報
【特許文献2】特開平9−221404号公報
【特許文献3】特開2001−322912号公報
【特許文献4】特開2005−22987号公報
【特許文献5】特開2008−260736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレストパウダーの結合剤として液状油剤を使用する場合、各種粉体と液状油剤を同時に混合すると、成分が不均一となる問題が生ずるために、まず、各種粉体を予備混合し、その後に液状油剤を混合しなければならかった。そのため、作業が二段階となり作業効率が悪かった。また、ニキビを気にする消費者からは、液状油剤を用いない化粧料が求められている。
そこで、液状油剤を用いず、各種粉体の混合処理が一段階で完了するプレストパウダーの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1. 液状油剤を含有せず、ポリステアリン酸スクロースを含有することを特徴とするプレストパウダー。
2.ポリステアリン酸スクロースの配合量が10〜20質量%であることを特徴とする1.に記載のプレストパウダー。
3.シリカ粒子及び/又はシリコーン樹脂粒子をさらに含有することを特徴とする1.又は2.に記載のプレストパウダー。
【発明の効果】
【0006】
オイルフリーのプレストパウダーを提供することができる。
油剤を用いないので、ニキビなどを気にすることなくプレストパウダー化粧料を用いることができる。
また、製造に当たっては、粉末全成分を一括して混合成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のプレストパウダーとは携帯時に無機顔料等が飛散しないように、結合剤を加えて皿に圧縮成形した固形化粧料である。結合剤として一般的に液状油剤や、界面活性剤を加えた液状油剤が用いられるが、本発明のプレストパウダーは液状油剤を含有しない。
【0008】
本発明に用いるポリステアリン酸スクロースは、ステアリン酸とスクロースの多価エステルの混合物であり、HLBは1〜2である。ポリステアリン酸スクロースとしては市販品を用いることができ、例えば、コスメライクS−10(第一工業製薬)、サーフホープSE COSME C−1800、サーフホープSE COSME C−1801、サーフホープSE COSME C−1802(三菱化学フーズ)が挙げられる。本発明に用いるポリステアリン酸スクロースの配合量は10質量%以上20質量%以下が好ましい。10質量%未満であるとプレストパウダーの強度を確保することが困難となる場合があり、20質量%を超えると、強度は強まるが、ケーキングが生じて、プレストパウダーから粉体をとり難く、メーキャップが困難となる場合がある。
【0009】
本発明に用いるシリカ粒子は二酸化ケイ素の粒子であり、市販品を用いることができる。例えば、ゴッドボール シリーズ(鈴木油脂工業)、サンスフェア、サンラブリーC(旭硝子エスアイテック)、SILICA MICRO BEAD(触媒化成工業)、AEROSILR シリーズ(日本アエロジル)等が挙げられる。シリカ粒子の配合量は1〜10質量%が好ましい。
【0010】
本発明に用いるシリコーン樹脂粒子は、メチルトリメトキシシランの網状重合体の粒子であり、化粧品表示名称はポリメチルシルセスキオキサンである。市販品を用いることができ、例えば、TOSPEARL シリーズ(1110A、120A、145A、2000B)(GE東芝シリコーン)が挙げられる。シリコーン樹脂粒子の配合量は1〜10質量%が好ましい。
【0011】
本発明のプレストパウダーには、液状油剤を除き、化粧料に通常用いられる原料を、本発明の効果を損なわない範囲内で配合することができる。例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、香料等の原料が挙げられる。また、ビタミン類や植物抽出液等の美容成分が挙げられる。
【実施例】
【0012】
表1の処方にて実施例1〜5、比較例1〜4のプレストパウダーを調製した。1〜9の全成分をブレンダーミキサー(HANIL製LAB.MIXER)で4分間、均一に混合し、丸型の金皿に一定量(7g)採取し、プレス圧1.5MPaで1.0秒間、1回圧縮成形した。
表1中のポリステアリン酸スクロースはコスメライクS−10(第一工業製薬)、シリカ粒子はゴッドボールD−25C(鈴木油脂工業)を用いた。
【0013】
のび試験
得られたプレストパウダーについて、官能評価により「のび」を以下の基準により評価した。プレストパウダーをパフでこすりとり、腕にのばし、そのときの抵抗感を「のび」として評価した。
○:なめらかでのびがよい
△:やや抵抗感がある
×:のびが悪い
【0014】
ケーキング試験
得られたプレストパウダーについて、スポンジによる粉体の取り易さを以下の基準により評価した。
○:取り易い
△:やや取り難い
×:ケーキングしており、粉体が取れない

【0015】
落下強度試験
得られたプレストパウダーを50cmの高さから床に落下し、割れるまでの回数を調べた。3回以上であれば、製品として必要な強度であると判断した。
【0016】
【表1】

【0017】
これらの試験データから、ポリステアリン酸スクロースを用いることにより、粉末状固形化粧料として、使用感としてののび、取りの良さ、製品強度とも優れたプレストパウダーを得ることができた。そして、全成分を一回のミキシングによって混合でき、1回でプレス成形することができ、製造工程も容易であることが確認できた。
ポリステアリン酸スクロースの配合量は、10〜20質量%が適当な配合量であり、配合量を増やすと、剤の強度を向上させることができる。実施例3と実施例5の対比によるとシリカ粒子はケーキングを向上させる機能に有効である。実施例4と実施例5の対比によるとシリコーン樹脂粒子は、ケーキング及び剤強度に対して有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状油剤を含有せず、ポリステアリン酸スクロースを含有することを特徴とするプレストパウダー。
【請求項2】
ポリステアリン酸スクロースの配合量が10〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載のプレストパウダー。
【請求項3】
シリカ粒子及び/又はシリコーン樹脂粒子をさらに含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレストパウダー。


【公開番号】特開2011−184315(P2011−184315A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48513(P2010−48513)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】