説明

プレストレスが付与された構造部材およびその製造方法

車両構造部材(132)にプレストレスを付与する方法は、支持構造を形成する段階と、該支持構造に対して、刺激の付与時に寸法が変化するサイズ変化材料を有するという事前形成された補強構成要素(130)を適用する段階と、上記事前形成された補強構成要素を、第1形態から第2形態へと形態変化させる段階とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略的に、補強された構造、および、構造を補強する方法に関し、更に詳細には、補強構成要素を用いて構造部材にプレストレスを付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体構造は、車両に対して課される負荷を吸収もしくは偏向させるために提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの場合、斯かる車体構造は金属から形成され、これは車両に対して大きな重量を付与する傾向があり得る。可能な箇所にて比較的に軽量である補強された構造を使用することで、車両重量と、種々の車両構成要素に対する負荷とを低減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、車両構造部材にプレストレスを付与する方法は、支持構造を形成する段階と、上記支持構造が使用の間において圧縮されるであろう一つ以上の箇所を特定する段階と、上記支持構造に対し、刺激の付与時に寸法が変化するサイズ変化材料を備える事前形成された補強構成要素を適用する段階と、上記事前形成された補強構成要素を、上記サイズ変化材料が第1寸法を有するという第1形態から、該サイズ変化材料が上記第1寸法とは異なる第2寸法を有するという第2形態へと形態変化させる段階であって、上記事前形成された補強構成要素は、該事前形成された補強構成要素が上記第1形態から上記第2形態へと形態変化されると上記一つ以上の箇所にて上記支持構造における引張応力が増大する如く上記支持構造に対して適用されるという段階と、を含む。
【0005】
別実施形態において、プレストレスが付与された車両構造部材は支持構造を含む。上記支持構造に対しては、事前形成された補強構成要素が第1形態とされて接続される。上記事前形成された補強構成要素は、刺激の付与時に寸法が変化するサイズ変化材料を含んでいる。上記事前形成された補強構成要素は、上記サイズ変化材料が第1寸法を有するという上記第1形態から、該サイズ変化材料が上記第1寸法とは異なる第2寸法を有するという第2形態へと形態変化される。上記事前形成された補強構成要素は、該事前形成された補強構成要素が上記第2形態に在るときに該事前形成された補強構成要素は上記支持構造における引張応力および/または圧縮応力を増大する如く、上記支持構造に対して接続される。
【0006】
別実施形態において、車両構造部材を用いた車両組立ての方法は、支持構造を形成する段階と、上記支持構造が使用の間において圧縮されるであろう一つ以上の箇所を特定する段階と、永続的形状と一時的形状とを有する補強構成要素を形状記憶ポリマで形成する段階と、上記一時的形状に在る上記補強構成要素を上記支持構造に対して適用する段階と、上記車両構造部材を、車両組立ての間において車両に対して装着する段階と、上記補強構成要素を上記一時的形状から上記永続的形状へと形態変化させる段階であって、上記補強構成要素は、該補強構成要素が上記一時的形状から上記永続的形状へと形態変化されると上記一つ以上の箇所にて上記支持構造における引張応力が増大する如く上記支持構造に対して適用されるという段階と、を含む。
【0007】
本発明の実施形態により提供されるこれらのおよび付加的な特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明に鑑みれば更に十分に理解されよう。
【0008】
図面中に示された実施形態は本質的に例証的かつ例示的であり、各請求項により定義された発明を限定することを意図していない。代表的実施形態に関する以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で表される以下の各図と併せて読破されたときに理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車体の実施形態の斜視図である。
【図2】車両構造部材の実施形態の概略的側面図である。
【図3A】プレストレス付与プロセスを概略的に表現した図である。
【図3B】プレストレス付与プロセスを概略的に表現した図である。
【図3C】プレストレス付与プロセスを概略的に表現した図である。
【図4】車両構造部材の別実施形態を示す図である。
【図5A】プレストレス付与プロセスの別実施形態を概略的に表現した図である。
【図5B】プレストレス付与プロセスの別実施形態を概略的に表現した図である。
【図5C】プレストレス付与プロセスの別実施形態を概略的に表現した図である。
【図6A】プレストレス付与プロセスの別実施形態を概略的に表現した図である。
【図6B】プレストレス付与プロセスの別実施形態を概略的に表現した図である。
【図7】形状記憶ポリマをプログラムする段階の実施形態を示す図である。
【図8】車両構造部材を用いて車両を形成する方法の実施形態を概略的に示す図である。
【図9】車両構造部材の別実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図を参照すると、車両に対する車体10の各部分であって、一個以上の事前形成された補強構成要素を用いてプレストレスが付与されて補強された車両構造部材で形成され得るという各部分が示される。“車両構造部材”という語句は、車両12を形成する多数の種々の部材であって、ピラー、レール、フレーム部材、バンパ構成要素などの如き部材もしくはその一部分の内の任意のものを指し得る。車両構造部材は、挿入物もしくは嵌合物の如き一個以上の事前形成された補強構成要素を備えた、壁部構造、スリーブ、管材などの如き複数の構成要素から形成され得る。各車両構造部材は、金属、ガラス、プラスチックなどの如き種々の材料で形成され得る。“事前形成された補強構成要素”という語句は、車両構造部材を形成すべく位置決めされるに先立ち所定形状へと形成される補強構成要素を指している。たとえば、上記事前形成された補強構成要素は、車両構造部材を形成すべく位置決めされるに先立ち、所定形状へと型成形、押出し成形、加圧成形、機械加工などされ得る。“プレストレス(prestress)”という語句は、車両構造部材に対して導入された内部応力であって、付与された負荷から帰着する応力に対抗し得るという内部応力を意味している。
【0011】
車両構造部材は概略的に、金属の如き第1材料で形成された壁部構造、管材、スリーブなどの如き構造的構成要素と、プラスチックの如き第2の異なる材料で形成された挿入物もしくは嵌合物の如き事前形成された補強構成要素とを含み得る。上記事前形成された補強構成要素は、熱、電気などの如き刺激の付与時に寸法が変化するサイズ変化材料で形成され得る。上記事前形成された補強構成要素は、該事前形成された補強構成要素の寸法が変化したときに構造的構成要素に対して応力が導入される如く、選択されて該構造的構成要素に対して固着され得る。
【0012】
図1を参照すると、車体10は、ルーフ16を備えた上側車両部分14と、フロア20を備えた下側車両部分18とを含んでいる。上側車両部分14と下側車両部分18との間には、(車体の一側面上に示された)Aピラー22、Bピラー24およびCピラー26が在る。車体10は、示されたAピラー22、Bピラー24およびCピラー26よりも多いもしくは少ない、Dピラーの如きピラーを含んでも良い。Aピラー22、Bピラー24およびCピラー26は、サイドルーフ・レール28とフロアロッカビーム30との間に延在する。Aピラー22に対してはヒンジ・ピラー32が交わると共に、サイドルーフ・レール28はフロント・ヘッダ34とリヤ・ヘッダ36との間に延在する。ヒンジ・ピラー32に対しては、エンジン・クレードルの各長手レール38も接続される。各長手レール38は、エンジン・クレードルのインスツルメントパネル・ビーム40およびフロント結着バー42と交わる。タイヤ・ブロッカ44およびキックアップ部46も配備され得る。
【0013】
上述の箇所の内の任意の箇所であって、車体10を形成すべくそれらの間における一切の接続部を含むという任意の箇所における如く、任意の適切な箇所においては車両構造部材48、50および52が使用され得る。たとえば、車両構造部材48はBピラー22の一部分であり、車両構造部材50はサイドルーフ・レール28の一部分であり、且つ、車両構造部材52はキックアップ部46の一部分である。車両構造部材48、50および52は、中実金属で形成された構造部材と比較して軽量であり乍らも、屈曲および圧壊に対する抵抗のために配備される。
【0014】
車両構造部材48、50および52はプレストレスが付与され得ることで、該車両構造部材の許容荷重を高め得る。図2は、構造的構成要素54と、事前形成された補強構成要素56および58とを含む車両構造部材50の概略図である。構造的構成要素54の壁厚は、約1mmの如く、約2mm以下であり得る。事前形成された補強構成要素56および58は各々、構造的構成要素54の丈に沿い延在する溝60および62内に配置された細長片の形態である。事前形成された補強構成要素56および58は、溝60および62の端面64、66、68および70に当接して着座され得る。幾つかの実施形態において、端面64、66、68および70は、事前形成された補強構成要素56および58が構造的構成要素54に対して力を加えることで該構造的構成要素にプレストレスを付与し得るという箇所に配備され得る。2本の溝60および62および2個の事前形成された補強構成要素56および58が示されるが、2つより多いもしくは少ない溝および事前形成された補強構成要素が使用され得る。溝60および62は、構造的構成要素54を形成する材料を除去することにより形成され得る。幾つかの実施形態において、構造的構成要素54は、鋼鉄、アルミニウム、合金などの如き金属で形成される。金属材料を除去すると、車両構造部材50の全重量が減少され得る。幾つかの実施形態においては、事前形成された補強構成要素56および58を溝60および62内に固着すべく樹脂または他の接着材料が使用され得る。
【0015】
図3Aから図3Cは、例示目的で、プレストレスが付与された車両構造部材74の動作を概略的に示している。車両構造部材74は、構造的構成要素76と、該構造的構成要素内に形成された溝80内に配置された事前形成された補強構成要素78とを含んでいる。事前形成された補強構成要素78は、溝80の夫々の表面86および88に当接して着座された端部82および84を有する。図3Aは、プレストレスを付与する前において、付与応力下に在るという車両構造部材74を示している。理解され得る如く、車両構造部材74の部分90は圧縮下であり且つ部分92は引張下である。車両構造部材74は引張下においてよりも圧縮下において破損する可能性が高いので、車両構造部材74はプレストレスが付与される。図3Bは、事前形成された補強構成要素78を用いて導入されたプレストレスを示している。事前形成された補強構成要素78は、熱、電気などの如きエネルギの付与時に寸法が変化することで応力を導入する材料で形成される。プレストレスを付与する力は、構造的構成要素76における張力として作用する。図3Cは、プレストレスが付与された複合的な車両構造部材74であって、付与された応力下に在るという部材74を示している。理解され得る如く、事前形成された補強構成要素78により導入されたプレストレスの故に、複合的な車両構造部材74においては圧縮応力が減少される。幾つかの実施形態においては、プレストレスのない車両構造部材と比較して、モーメント支持力の約20%〜約30%の向上が在り得る。
【0016】
図3Aから図3Cは、事前形成された補強構成要素78を活性化することにより、長手方向において(すなわち構造的構成要素76の長さ方向において)該事前形成された補強構成要素の幾何学形状の変化を引き起こす段階を示している。事前形成された補強構成要素78の幾何学形状が外側方向に変化すると、複合的な車両構造部材74の屈曲が引き起こされることで、上記車両構造部材の圧壊抵抗が増大され得る。
【0017】
図4を参照すると、別の車両構造部材91は、(たとえば板金を屈曲することにより形成された)ハット部材の形態の構造的構成要素97を含んでいる。車両構造部材91は、(たとえば、構造的構成要素97を形成する材料とは異なるプラスチックの如き材料で形成された)事前形成された補強構成要素93を含む。事前形成された補強構成要素93は、車両構造部材91の基礎部分95に対して接続(たとえば、接着、締着など)され得る櫛状構造の形態である。幾つかの実施形態において補強構成要素93は、矢印99により表される如く、刺激(たとえば熱)の付与時に長さ方向に膨張して上記基礎部分を張力下に置く材料で形成され得る。別実施形態において補強構成要素93は、刺激の付与時に長さ方向に収縮して基礎部分95を圧縮力下に置く材料で形成され得る。図4の実施形態においては一例として、上記ハット区画を60Mpaの圧縮力でプレストレス付与すると、(たとえば、約449kN-mmから約584kN-mmへの)許容荷重の約30%の増加に帰着し得る。
【0018】
次に図5Aから図5Cを参照すると、事前形成された補強構成要素94は、該事前形成された補強構成要素の活性化時に構造的構成要素96の断面幾何学形状の変化を提供すべく使用され得る。この実施形態において、事前形成された補強構成要素94のサイズ変化材料は、断面サイズ(たとえば、幅Wおよび/または高さH)が増大すべく選択される。事前形成された補強構成要素94の斯かる断面サイズの変化は、構造的構成要素96に付与されるプレストレスに帰着することで、車両構造部材98の圧壊抵抗を増大し得る。
【0019】
図3Cから図5Cは、事前形成された補強構成要素78および94がサイズを増大するという実施形態を示しているが、事前形成された補強構成要素は、サイズが減少することで構造的構成要素にプレストレスを導入する様に選択され得る。たとえば、図6Aおよび図6Bは、第1溝106を備える第1部分104と第2溝110を備える第2部分108とを有する構造的構成要素102を含む車両構造部材100を示している。第1溝106内には第1の事前形成された補強構成要素112が配置され、且つ、第2溝110内には第2の事前形成された補強構成要素114が配置される。この実施形態において、第1の事前形成された補強構成要素112は、活性化刺激の付与時にサイズが減少するサイズ変化材料を含み、且つ、第2の事前形成された補強構成要素114は、活性化刺激の付与時にサイズが増大するサイズ変化材料を含んでいる。図6Bを参照すると、第1の事前形成された補強構成要素112および第2の事前形成された補強構成要素114は協働することで、構造的構成要素102にプレストレスを導入する。
【0020】
適切なサイズ変化材料としては、形状記憶ポリマ(SMP)が挙げられる。SMPは、変形された状態(一時的形状)から、温度変化の如き外部刺激により誘起されてその元の(永続的な)形状へと戻る機能を有するポリマ材料である。温度の変化により引き起こされる形状の変化は、熱誘起形状記憶効果と称され得る。図7は、SMPをプログラミングするプロセス116、および、形状の復元を示している。プログラミング・プロセス116は、サンプルを加熱する段階、サンプルを変形させる段階、および、サンプルを冷まして永続的形状118を提供する段階の内の任意の段階を含み得る。永続的形状118は、サンプルが一時的形状120に在る間、保存され得る。適切な外部刺激を付与すると、永続的形状122が復元されるという形状記憶効果が誘起され得る。幾つかの実施形態においては、上記SMPを転移温度より高く加熱すると、形状記憶効果が誘起され得る。上記SMPを上記転移温度より低く冷ますと、材料は固化し得る。幾つかの実施形態においては、一時的形状からの復元が無いこともあり、これは一方向形状記憶効果と称され得る。上記SMPを、必ずしも最初の一時的形状に合致しないこともある一時的形状へと再びもたらすために、たとえば機械的変形を含む更なるプログラミングが使用され得る。
【0021】
SMPの永続的形状は、該SMPを、該SMPに対する最高の熱的転移温度すなわちその融点より高い温度にて溶融もしくは処理し、次にその熱的転移温度より低く冷ますことにより、設定され得る。幾つかの実施形態において、SMPの永続的形状を設定する温度は、約100℃〜約300℃とされ得る。一時的形状は、上記SMPを、上記熱的転移温度より高いが、最高の熱的転移温度すなわち融点よりは低いという温度まで加熱することにより設定され得る。上記一時的形状は、上記SMPを上記熱的転移温度より高温に処理し乍ら外部応力を付与し、次に、冷ますことでその一時的形状を固定することにより設定される。上記SMPを上記一時的形状として、それは、車両構造部材の構造的構成要素に対して適用され得る。上記SMPは次に、該SMPを、上記熱的転移温度より高いが、上記最高の熱的転移温度すなわちその融点よりは低く加熱することにより、上記永続的形状へと戻され得る。上記永続的形状は、上記構造的構成要素に対してプレストレスを導入すべく使用され得るサイズ変化を伴う。幾つかの実施形態においては、2つの形状を記憶に保存し得る三重形状記憶材料が使用され得る。
【0022】
SMPは、多くの形態および形状で構成され得る。永続的形状の復元のために必要とされる温度は、約−60℃〜約160℃などの如く、任意の適切な温度に設定され得る。SMPの組成および構造を処理操作すれば、特定用途に対して選ばれた温度の選択が許容され得る。
【0023】
SMPとしては、限定的なものとしてで無く、熱可塑性プラスチック、熱硬化樹脂、相互貫入網目構造、準相互貫入網目構造、または、混合網目構造が挙げられる。各ポリマは、単一種のポリマ、または、複数種のポリマの配合物とされ得る。各ポリマは、側鎖もしくは樹枝状の構造要素を備えた直鎖状もしくは分岐状の熱可塑性エラストマであり得る。形状記憶ポリマを形成する代表的なポリマ成分としては、限定的なものとしてで無く、ポリフォスファゼン類、ポリ(ビニル・アルコール)類、ポリアミド類、ポリエステルアミド類、ポリ(アミノ酸)類、ポリ無水物類、ポリカーボネート類、ポリアクリレート類、ポリアルキレン類、ポリアクリルアミド類、ポリアルキレングリコール類、ポリアルキレンオキシド類、ポリアルキレンテレフタレート類、ポリオルソエステル類、ポリビニルエーテル類、ポリビニルエステル類、ハロゲン化ポリビニル類、ポリエステル類、ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリシロキサン類、ポリウレタン類、ポリエーテル類、ポリエーテルアミド類、ポリエーテルエステル類、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルフェノール、ポリビニルピロリドン、塩化ポリブチレン、ポリ(オクタデシルビニルエーテル)エチレンビニルアセテート、ポリエチレン、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエチレン/ナイロン(グラフト共重合体)、ポリカプロラクトン−ポリアミド(ブロック共重合体)、ポリ(カプロラクトン)ジメタクリレート−n−ブチルアクリレート、ポリ(ノルボルニル−ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン)、ポリ塩化ビニル、ウレタン/ブタジエン共重合体類、ポリウレタンブロック共重合体類、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体類など、および、上述のポリマ成分の内の少なくとも一つを含む組み合わせが挙げられる。ポリアクリレート類の例としては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、および、ポリ(オクタデシルアクリレート)、が挙げられる。
【0024】
厳密な形状復元は別として、上記事前形成された補強構成要素に対しては、直線状に膨張もしくは収縮すべく構成され得る任意の材料が使用され得る。たとえば、上記事前形成された補強構成要素を形成するために、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が使用されても良い。幾つかの実施形態においては、上記事前形成された補強構成要素を形成するために、低い密度、少なくとも約60Mpaの最大抗張力、少なくとも約5%の破壊伸び、少なくとも約4GPaの弾性率、低い曲げ降伏強度、および、少なくとも約50(A'μm/m-A'℃)の熱膨張率を有する材料を使用することが好適であり得る。幾つかの実施形態において該材料は、該材料を非活性の弾性部材と組み合わせることによりアクチュエータを製造すべく使用され得る。これは、ユニモルフ・アクチュエータと称され得る。もし両方の構成要素が同一の材料で作成され乍らも、逆方向に変形されるなら、その材料はバイモルフとなる。
【0025】
幾つかの実施形態において、熱的転移温度の選択は、多数の要因に依存し得る。たとえば、上記SMPに対する熱的転移温度は、略々室温、または、製造環境における周囲温度とされることが不好適であり得る。幾つかの実施形態において、上記転移温度は、車両構造部材を用いて形成された車両に対する処理温度であって、車両と共に補強構成要素が処理され得る様に車両組立て工場において直面する如きであるという処理温度に対応することが好適であり得る。車両組立て操作において直面する温度は約150℃〜約205℃の範囲内であり得るが、車体および塗装工場用途は約130℃以下であり得る。
【0026】
図8を参照すると、車両に対して車両構造部材を適用する方法124が示される。ステップ126にては、使用の間において車両構造部材がどの箇所にて圧縮されるかを特定する解析が実施される。ステップ128にては、たとえば、SMPまたは他の適切なプラスチック材料を用いて補強部材130が形成される。SMPを用いる実施形態において、上記補強部材は、永続的形状に設定されてから、一時的形状に設定される。他のプラスチック材料を用いる実施形態において、事前形成された補強部材130は一時的形状に設定され得る。ステップ134においては、構造的構成要素132が形成されると共に、該構造的構成要素内に補強部材130が載置される。構造的構成要素132は、ステップ136にて自身に対して補強部材130が適用された後、更に処理されても良い。幾つかの実施形態においては、上記補強部材を構造的構成要素132に対して接着すべく樹脂が使用され得る。ステップ138においては、車両構造部材142を含む車両140が組立てられる。車両140は、ステップ144にて塗装され得る。ステップ146にて車両140は、温度が約160℃〜約200℃に到達するという加熱炉内に載置される。幾つかの実施形態において、上記加熱炉内の温度によれば、上記プラスチック補強部材は架橋される。上記加熱炉内の温度は、上記SMPの熱的転移温度を超えることにより、補強部材130のサイズを変化させることで、構造的構成要素132にプレストレスを導入しても良い。幾つかの実施形態において、構造的構成要素132にプレストレスを付与すると、上記車両構造部材の許容荷重が少なくとも約30%だけ高められ得る。
【0027】
図9を参照すると、車両構造部材150は、構造的構成要素152と、該構造的構成要素の丈および幅の全体にわたり分散された複数の孤立した補強構成要素154の領域とを含む。上記と同様に、各補強構成要素154はサイズ変化材料で形成される。
【0028】
本明細書においては本発明の特定の実施形態および見地が図示かつ記述されたが、本発明の精神および有効範囲から逸脱せずに種々の他の変更および改変が為され得る。更に、本明細書においては種々の発明的見地が記述されたが、斯かる見地は組み合わせて利用される必要は無い。故に、添付の各請求項は、本発明の有効範囲内である斯かる変更および改変の全てを包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造を形成する段階と、
前記支持構造に対し、刺激の付与時に寸法が変化するサイズ変化材料を備える事前形成された補強構成要素を適用する段階と、
前記事前形成された補強構成要素を、前記サイズ変化材料が第1寸法を有するという第1形態から、該サイズ変化材料が前記第1寸法とは異なる第2寸法を有するという第2形態へと形態変化させる段階であって、前記事前形成された補強構成要素は、該事前形成された補強構成要素が前記第1形態から前記第2形態へと形態変化されると前記支持構造における応力が増大する如く前記支持構造に対して適用されるという段階とを有する、
車両構造部材にプレストレスを付与する方法。
【請求項2】
前記支持構造は金属で形成され、且つ、前記サイズ変化材料はプラスチックである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイズ変化材料は形状記憶ポリマである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記形状記憶ポリマは、前記支持構造に対して適用されたときに一時的形状に在る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記形状記憶ポリマが永続的形状へと戻る如く、該形状記憶ポリマを熱的転移温度より高温に加熱する段階を更に有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記支持構造を形成する段階は、該支持構造を貫通延在する中空開口と、少なくとも一つの開放端部とを有する該支持構造を形成する段階を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記事前形成された補強部材を前記支持構造に対して適用する段階は、前記事前形成された補強構成要素を前記開放端部を通して前記中空開口内へと挿入する段階を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記事前形成された補強構成要素を、前記サイズ変化材料が第1寸法を有するという第1形態から、該サイズ変化材料が前記第1寸法とは異なる第2寸法を有するという第2形態へと形態変化させる段階は、前記事前形成された補強構成要素の丈を変化させる段階を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記事前形成された補強構成要素を、前記サイズ変化材料が第1寸法を有するという第1形態から、該サイズ変化材料が前記第1寸法とは異なる第2寸法を有するという第2形態へと形態変化させる段階は、前記事前形成された補強構成要素の断面形状を変化させる段階を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記事前形成された補強構成要素が前記第1形態から前記第2形態へと形態変化されると前記支持構造における応力が約60Mpa以上増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
支持構造と、
第1形態とされて前記支持構造に対して接続された事前形成された補強構成要素であって、刺激の付与時に寸法が変化するサイズ変化材料を備えるという事前形成された補強構成要素とを備え、
前記事前形成された補強構成要素は、前記サイズ変化材料が第1寸法を有するという前記第1形態から、該サイズ変化材料が前記第1寸法とは異なる第2寸法を有するという第2形態へと形態変化されており、
前記事前形成された補強構成要素は、該事前形成された補強構成要素が前記第2形態に在るときに該事前形成された補強構成要素は前記支持構造における引張応力および/または圧縮応力を増大する如く、前記支持構造に対して接続されている、
プレストレスが付与された車両構造部材。
【請求項12】
前記支持構造は金属で形成され、且つ、前記サイズ変化材料はプラスチックである、請求項11に記載のプレストレスが付与された車両構造部材。
【請求項13】
前記サイズ変化材料は形状記憶ポリマである、請求項12に記載のプレストレスが付与された車両構造部材。
【請求項14】
前記形状記憶ポリマは、前記支持構造に対して接続されたときに一時的形状に在る、請求項13に記載のプレストレスが付与された車両構造部材。
【請求項15】
前記第1形態から前記第2形態へと、前記事前形成された補強構成要素の丈が変化する、請求項11に記載のプレストレスが付与された車両構造部材。
【請求項16】
前記第1形態から前記第2形態へと、前記事前形成された補強構成要素の断面形状が変化する、請求項11に記載のプレストレスが付与された車両構造部材。
【請求項17】
車両構造部材を用いた車両組立ての方法であって、
支持構造を形成する段階と、
永続的形状と一時的形状とを有する補強構成要素を形状記憶ポリマで形成する段階と、
前記一時的形状に在る前記補強構成要素を前記支持構造に対して適用する段階と、
前記車両構造部材を、車両組立ての間において車両に対して装着する段階と、
前記補強構成要素を前記一時的形状から前記永続的形状へと形態変化させる段階であって、前記補強構成要素は、該補強構成要素が前記一時的形状から前記永続的形状へと形態変化されると前記支持構造における引張応力が増大する如く前記支持構造に対して適用されるという段階とを有する、方法。
【請求項18】
前記補強構成要素を形態変化させる段階は、前記補強構成要素を熱的転移温度より高温に加熱する段階を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記補強構成要素を形態変化させる段階は、前記補強構成要素の丈を変化させる段階を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記補強構成要素を形態変化させる段階は、前記事前形成された補強構成要素の断面形状を変化させる段階を有する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−523989(P2012−523989A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506213(P2012−506213)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/031204
【国際公開番号】WO2010/121004
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【Fターム(参考)】