説明

プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー

【課題】
効率上昇のためにローターとローターハウジングの一様な加熱を実現し、その結果、空隙量を可能か限り小さく保持することができるという目的のもと両部材の間にできる限り低い温度差が発生することが可能であるプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーを提供する。
【解決手段】
自動車の内燃機関に設けるためのプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー(1)であって、ローター(2)及びローターハウジング(3)を有するものにおいて、ローターハウジング(3)が、熱放射の吸収のための皮膜層(4)をローターハウジング内表面(5)に備えていることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローター及びローターハウジングを有する、自動車の内燃機関に設けるためのプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のための内燃機関は、その効率を高めるために過給される。新排気交換過程(Ladungswechselvorgang)は、吸入サイクルにおいてシリンダーの充填効率を高めることにより改善される。
【0003】
加給されるエンジンは、加給されないエンジンに対して、特有の少ない消費量を有する。加給されるエンジンは、同じままである内部抵抗のもと、排気量の大きなエンジンと同じ空気・燃料混合物量を燃焼する。その結果高い効率を有することとなる。
【0004】
閉じたガス管路中でガスダイナミックなプロセスをつくり、そして加給のために使用される加給システムは、一般的にプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーや圧力波機械と呼ばれる。圧力波機械で使用されるセルローター(Zellenrotoren)は、通常シリンダー状に形成され、そして少なくとも断面が一定に延在する管路を有している。これら管路は、ホットガス側からコールドガス側へと延在している。
【0005】
内燃機関の加給空気コンプレッサーとして使用されるプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーにおいて、セルローターを積極的に駆動することが公知である。なるほど特許文献1によっても、ガス力によって駆動され、自由に動作するプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーが先行技術とみなされる。セルローターの駆動は、セル分離壁の付勢により高圧排気ガスにより行われる。これは、相応な付勢角度でもってローターハウジング内に通じており、排気ガスが進入することによりセルローターを回転するに至らしめる。
【0006】
今日のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー構造において問題であるのは、セルローターの全部材形状がさらされる温度上の負荷の集中(Belastungskollektiv)である。セルローターのホット側では、原理制限上、1100度までの温度があり、コールド側では最高200度の温度がある。温度上発生する部材の歪み(Bauteilverzug)とこれに起因するプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーの最善で無い効率が、その結果である可能性がある。
【0007】
この問題提起の解決アプローチは、ローターのセル隔離壁とローターハウジングの間の最善の空隙を調整するよう、発生する運転状態に対するローターとローターハウジングの温度による熱膨張を見積もることである。しかしながら、更に問題であるのは、最初にコールドスタート過程から、ホットガスでもって付勢されるローターが、温度上、後にホットガスと接触し発生するローターハウジングよりも著しく膨張することである。
【0008】
プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーの達成可能な効率は、ローターとローターハウジングの間の空隙量に直接影響されるので、効率は、関与するコンポーネントの熱機械的なふるまい方が決定的に関係する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願明細書 EP0235609A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、効率上昇のためにローターとローターハウジングの一様な加熱を実現し、その結果、空隙量を可能か限り小さく保持することができるという目的のもと両部材の間にできる限り低い温度差が発生することが可能であることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、発明にしたがい請求項1に記載の特徴により解決される。
【0012】
有利な改良形は、従属請求項の構成要素である。
【0013】
発明に従う一つの実施形では、プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーのローターハウジングに、熱放射の吸収のための皮膜層が、ローターハウジング内表面にもたらされる。熱放射の吸収のためのローターハウジング内表面の皮膜層によってローターハウジングが、セル室内を通り流れるホットガスの対流(Konvektion)によってのみならず、ホットガスの取り上げられる熱放射やローターの熱放射によっても加熱されない。本発明の枠内で、熱放射を吸収するための皮膜層とは、ローターハウジング内表面を基本的に放射黒体として形成する皮膜層であると理解されるべきである。ホットガスによってとローターによって放出される熱放射は、よってローターハウジング内表面で熱に変換され、これは、皮膜層によって、これによって熱放射の最大限が吸収されることができるというように最適化される。
【0014】
ローターとハウジングの間の温度差は減少される。よって空隙量は小さく保たれることが可能である。というのは、部材部材が互いに比例して膨張するからである。より小さな空隙量は、効率の上昇へと通じる。
【0015】
好ましくは、ローターハウジング外側上のローターハウジングは、ローターハウジング内表面よりも低い表面粗さを有している。ローターハウジングの内部には、熱放射と対流によって取り出される熱によって、熱伝導が生じる。熱は、より温度が低いローターハウジング外側へと向かう温度勾配に通じる。ローターハウジング外側には、再び熱が、ローターハウジングからの熱放射と対流によって流出し、それによってこれを冷却する。
【0016】
ローターハウジング内に保持される熱エネルギーの熱放射への変換に関して、ローターハウジング外側での熱の発生を最小とするために、ローターハウジング外側は出来る限り低い表面粗さを有する。本発明の枠内で、金属の薄板部材において、出来る限り低い表面粗さを有する表面とは、圧延平滑化された(walzglatt)表面であると理解される。表面はまた、更に低い表面粗さを有するので、可能な限り光輝く(spiegelnd)ということも可能である。それによって、ローターハウジングによって導かれる熱の最大限と、表面で熱放射に変化するエネルギーが、その材料内に反射される。ローターハウジング外側の熱放射の発生は、本発明による表面状態によって最小化される。
【0017】
特に有利な実施バリエーションでは、表面が、ローターハウジング外側に、機械的及び/又は化学的及び/又は物理的処理によってつくられる。これによってローターハウジングの表面状態は、製造プロセスの後、反射する熱放射に関して更に最適化されることが可能であり、表面粗さは本発明の枠内で、更なる処理によってつくり出されることができる。ここで機械的な処理とは、例えば、表面のポリッシュであると理解されるべきである。このポリッシュは、追加物、例えばポリッシュ媒体によって更に改善可能である。化学的な処理過程とは、例えば表面の腐食(Aetzung)または化学気相成長法(Chemical-Vapour-Deposition-Verfahren)であると理解されるべきである。物理的な処理過程とは、例えば物理気相成長法(Physikal-Vapour-Deposition)であると理解されるべきである。
【0018】
更なる有利な実施バリエーションでは、ローターハウジング外側は、コーティングを施すことにより製造される。ローターハウジングの製造される部材は、コーティングを施すことによって、熱放射によるローターハウジング外側を介しての熱エネルギーの発生が、最小化されるように、他の処理無しに外側にコーティングを施されることができる。皮膜層は、一つの表面処理に対して追加的に行われることも可能である。同様に本発明の枠内で、皮膜層自体が、他の方法によってその表面上に処理されるということも想定される。
【0019】
好ましくは、ローターハウジングは、隔離カバーによって取り巻かれている。その際、隔離カバーは、ローターハウジングの周囲に対する追加的な熱的隔離を行うためのアイソレーションである。ローターハウジングの表面を介しての熱放射又は対流によって流出する熱は、隔離カバーによって更に最小化される。これによって、プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーの加熱フェーズにおいて、熱の少ない部分のみがローターハウジングから周囲に放出されるというメリットが生じる。結果として、ローターハウジングはより早く加熱され、ローターにとって最適な、相応運転温度に達し、この基礎の上に、ローターとローターハウジングの間の最適な空隙量が常に生じる。
【0020】
有利な実施形では、隔離カバーは、隔離カバー内側と隔離カバー外側で、ローターハウジング内表面よりも低い表面粗さを有する。ここで再び同様に、表面粗さのもと圧延平滑化された、可能な限り光輝く面が熱放射の反射のために備えられている。隔離カバー内側は、ローターハウジングより放出される熱をその上に反射して戻す。これによって、ローターハウジングが暖機フェーズ内ですぐにすばやく加熱されるというメリットが生ずる。
【0021】
隔離カバー外側の出来る限り鏡面化された(verspiegelt)または金属光沢化された表面は、ローターハウジング外側の表面状態と同じような効果を奏する。隔離カバー内に保持された熱エネルギーは、熱放射の形で隔離カバーから流出することを妨げられている。結果として、隔離カバー内では、より低い温度勾配が現われ、これによってより少ない熱が、ローターハウジング自体から隔離カバーを介して周囲へと流出される。
【0022】
本発明の特に有利な実施形では、隔離カバーとローターカバーの間に空隙が形成されている。空隙は、空気の低い熱伝導性に基づき、ローターハウジング外側と隔離カバーの内側の間に追加的な隔離層を与える。これによってローターハウジングのより迅速な加熱が助けられる。
【0023】
隔離カバーは、好ましくは、金属材料から形成される。プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーの部材自体は、およそ100度から最大400度まで上昇し、排気ガスからプレッシャーウェーブスーパーチャージャー内に運ばれるホットガスは、およそ1100度までの温度を有していて、そして内燃機関の直接の周囲は、およそ70度から130度の運転温度にある。隔離カバーの金属材料は、これによって特に有利に、隔離カバーの耐久性に作用する。
【0024】
本発明の特に有利な実施形では、ローターハウジングの材料は、ローター材料の熱膨張係数よりも大きいかまたはこれと同じ熱膨張係数を有する。熱エネルギーによる部材の付勢によって、結果として、個々の部材の熱膨張が現われる。様々な構造と、ホットガスとの様々な接触集中度に基づいて、個々の構造要素の膨張は互いに比例していない。ローターハウジングの熱膨張係数は、ローターの熱膨張係数と少なくとも同じかこれより高い値を有するので、ローターとローターハウジングの間の最小に調整された空隙量のもと、ローターがローターハウジング内で固着されるという危険が回避されることが可能である。ローターハウジングの少なくとも同じか、高い熱膨張係数は、暖機フェーズ中にローターに対してローターハウジングがより素早く膨張することに供する。結果、通常の運転中に、ローターとローターハウジング間の先に見積もった最善の空隙が現われる。
【0025】
本発明の更なるメリット、特徴、特性および観点は、以下の記載、図面に基づく有利な実施形から生じる。これらは単に本発明の簡単な理解のために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】発明にかかる隔離構造を有するプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー1
【発明を実施するための形態】
【0027】
プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー1は、内側にあるローター2およびローター2を取り巻くローターハウジング3から成っている。ローター2は、運転中、回転軸Dを中心に回転対称に回転する。ローターハウジング3は、図示されていない内燃機関に固定接続されている。ローターとローターハウジングの間には、空隙Sが表わされており、この空隙は、発明にかかる隔離構造によって、ローター2がローターハウジング3内で、固着されるという危険なく最小化されることができる。
【0028】
ローターハウジング3は、本発明の枠内で、熱放射の吸収のための皮膜層4をローターハウジング内表面5に有している。ローター2から、またはプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー1内に存在するホットガスから放出される熱放射は、よって、皮膜層4によりローターハウジング内表面5で可能な限り最大限に吸収される。
【0029】
ローターハウジング内表面5を介して吸収される熱エネルギーによってローターハウジング3内に、ローターハウジング内表面5からローターハウジング外側6に向かう温度勾配ΔTが図示されているように現われる。温度勾配ΔTは、ローターハウジング3内部の熱伝導のために供され、そしてローターハウジング外側6の表面7を介して熱放射及び対流の形で熱が流出するに至る。ローターハウジング6は、少なくとも圧延平滑化された表面7、特に鏡面化された表面7を有しているので、ローターハウジング3内で保持される熱は、ローターハウジング3によって発生される熱放射の最大限をローターハウジング3自体の中へ反射する。
【0030】
さらにローターハウジング3の周りには、隔離カバー8が存在している。隔離カバー8は、隔離カバー内側9と隔離化場外側10に同様に、可能な限り圧延平滑化された表面、特に鏡面化された表面を備えている。隔離カバー内側9は、その際、ローターハウジング外側6を介して流出する熱放射をこの上に戻して反射し、隔離カバー外側10は、ローターハウジング外側6と同じ原理にしたがってふるまい、隔離カバー8から発生される熱放射の最大限を隔離カバー8自体の中に戻し反射する。
【0031】
特に有利な、ここに表わされる構造では、プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー1は、ローターハウジング3と隔離カバー8の間に空隙11を有している。この空隙11は、空気の低い熱伝導性に基づいて、ローターハウジング3の更なる熱的隔離を行う。
【符号の説明】
【0032】
1 プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー
2 ローター
3 ローターハウジング
4 5に対する皮膜層
5 ローターハウジング内表面
6 ローターハウジング外側
7 6への表面
8 隔離カバー
9 隔離カバー内側
10 隔離カバー外側
11 空隙

S 間隔
ΔT 温度勾配
D 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内燃機関に設けるためのプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー(1)であって、ローター(2)及びローターハウジング(3)を有するものにおいて、ローターハウジング(3)が、熱放射の吸収のための皮膜層(4)をローターハウジング内表面(5)に備えていることを特徴とする前記プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。
【請求項2】
ローターハウジング(3)が、ローターハウジング外側(6)に、ローターハウジング内表面(5)よりも低い表面粗さを有していることを特徴とする請求項1に記載のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。
【請求項3】
ローターハウジング外側(6)の表面(7)が、機械的及び/又は化学的及び/又は物理的処理によって造られていることを特徴とする請求項2に記載のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。
【請求項4】
表面(7)が、ローターハウジング外側(6)にコーティングを施すことにより設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。
【請求項5】
ローターハウジング(3)が、隔離カバー(8)によって取り囲まれていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。
【請求項6】
隔離カバー内側(9)と隔離カバー(10)の上の隔離カバー(8)が、ローターハウジング内表目(5)より低い表面粗さを有することを特徴とする請求項5に記載のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。
【請求項7】
隔離カバー(8)とローターハウジング(3)の間に空隙(11)が形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。
【請求項8】
隔離カバー(8)が金属材料より形成されていることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。
【請求項9】
ローターハウジング(3)の材料が、ローター材料の熱膨張係数より大きいかまたは等しい熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー。

【図1】
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【公開番号】特開2011−169321(P2011−169321A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30448(P2011−30448)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】