プレハブマンホール用の吊り上げ治具と、プレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法
【課題】本発明は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、作業員の手が届く高さの位置にアンカーを取り付けることにより、プレハブマンホールの天壁における作業員の各種作業を排除して、作業員がプレハブマンホールから落下してしまう危険性を無くすことのできるプレハブマンホール用の吊り上げ治具と、プレハブマンホール用の吊り上げ方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具においては、角筒状に形成されているプレハブマンホールを、プレハブマンホールに取り付けているアンカーを介して吊り上げるための、プレハブマンホール用の吊り上げ治具であり、クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材と、水平部材の両端部にそれぞれ2本ずつ取り付けたワイヤーにより構成され、個々のワイヤーの先端部に、プレハブマンホールのアンカーに掛け止めする掛止体を備えている。
【解決手段】本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具においては、角筒状に形成されているプレハブマンホールを、プレハブマンホールに取り付けているアンカーを介して吊り上げるための、プレハブマンホール用の吊り上げ治具であり、クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材と、水平部材の両端部にそれぞれ2本ずつ取り付けたワイヤーにより構成され、個々のワイヤーの先端部に、プレハブマンホールのアンカーに掛け止めする掛止体を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンクリート基礎等の据付場所において、複数のプレハブマンホールを接合させて管路マンホールを構築するための、プレハブマンホール用の吊り上げ治具と、プレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプレハブマンホールPは、例えば、図15・図16に示すように、所定の大きさと厚みを有する角筒状のコンクリート躯体により形成されている。そして、プレハブマンホールPを立てた状態にした際に位置付けられる上面側を天壁とし、その天壁に4個のフックFが打設されている。
【0003】
この様なプレハブマンホールPを吊り上げて移動させる場合には、例えば、図16に示すように、天壁のフックFにワイヤーWを掛けて、このワイヤーWをクレーン重機のフックKにより吊っている。
【0004】
その為、プレハブマンホールPをクレーン重機により吊り上げて運搬車輌QにプレハブマンホールPを載せるとき、また、運搬車輌Qに載せているプレハブマンホールPを運搬車輌Qから降ろして特定の場所に設置するときには、作業員がプレハブマンホールPの天壁に昇って種々の作業を実施しなければならない。
【0005】
具体的には、運搬車輌Qに載せているプレハブマンホールPを運搬車輌Qから降ろして特定の場所に設置する作業の場合、まず、図15に示すように、プレハブマンホールPに梯子Sを立て掛けて、作業員が梯子Sを介してプレハブマンホールPの天壁側に移動する。
【0006】
そして、図16に示すように、作業員がプレハブマンホールPの天壁上で、天壁の四隅に打設されている合計4個のフックFに、ワイヤーWの端部を手作業で接続する。
【0007】
次に、作業員は、天壁上でクレーン重機のフックKにワイヤーWを引っ掛ける作業を行って、クレーン重機により運搬車輌Qの荷台に乗せているプレハブマンホールPを吊り上げ、特定の場所に設置するのである。
【0008】
一方、特許文献1に開示されているように、前後端にそれぞれ上部落とし込み用の凸部及び凹部を形成している、角筒状のボックスカルバートが存在する。このボックスカルバートにおいても、天壁に2個のフックFが打設されていることから(特許文献1の図1参照)、作業員が天壁に昇って種々の作業を実施しなければならない点は、図15・図16に示すプレハブマンホールPの場合と全く同様である。
【0009】
この他、プレハブマンホールPにおいては、所定の据付場所に吊り上げて移送した後に、コンクリート基礎の所定位置にプレハブマンホールPを設置し、これに隣接するように次のプレハブマンホールPを基礎上に設置した後、水平方向に移動させて、既に設置されているプレハブマンホールPの端面に接合させる必要がある。
【0010】
この様な、プレハブマンホールPの水平方向の移動(横引き)に際し、プレハブマンホールPの上方である地面付近に切梁Hが存在する場合には、プレハブマンホールPを吊り上げているワイヤーWがこの切梁Hに当たってしまうため、切梁Hを回避する措置が必要となる。
【0011】
しかし、従来においては、プレハブマンホールPの据付場所における水平方向の移動(横引き)に際し、切梁Hを回避するための工夫がなされていないことから、ワイヤーWによりプレハブマンホールPを吊り上げている状態のまま、プレハブマンホールPを水平方向に移動(横引き)させ、既に設置されているプレハブマンホールPの端面に接合させることは困難である。
【0012】
その為、苦肉の策として、プレハブマンホールPを降ろし、プレハブマンホールPを吊り上げている4本のワイヤーWの端部の全てを、プレハブマンホールPの天壁に打設されている4個のフックFからそれぞれ取り外して、プレハブマンホールP自体を水平方向に移動(横引き)させていた。
【0013】
その具体的な措置は、例えば、図17に示すように、プレハブマンホールPを移動用鋼棒Tに乗せた状態で、プレハブマンホールPを吊り上げている4本のワイヤーWをそれぞれ取り外す。そして、複数の作業員がバール等の工具を用いてプレハブマンホールPを一方側から強く押し込んで、プレハブマンホールPを移動用鋼棒Tと共に水平方向に移動(横引き)させるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第2665164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来においては、図15・図16に示すように、作業員が梯子Sを使ってプレハブマンホールPの天壁に上り、天壁の四隅に打設されているフックFにワイヤーWの端部を接続する作業や、クレーン重機のフックKにワイヤーWを引っ掛ける作業を実施しなければならないが、プレハブマンホールPの天壁部分とその周囲には、作業員の安全ベルトを掛けることのできる部材が全く存在していない。
【0016】
その為、作業員が梯子Sを昇るとき、また、プレハブマンホールPの天壁においてフックFにワイヤーWの端部を接続するとき、さらには、クレーン重機のフックKにワイヤーWを引っ掛けるときのいずれにおいても、作業員の安全が確保されていない、所謂無胴綱状態になってしまう。
【0017】
その結果、梯子Sや、比較的に高所となるプレハブマンホールPの天壁から、作業員が落下してしまう危険性が常に伴っていた。
【0018】
この様な作業員の無胴綱状態を要因として作業員が落下してしまう危険性が伴うことは、特許文献1に開示されているボックスカルバートにおいても全く同様である。
【0019】
尚、作業員の無胴綱状態を解消して、作業員の安全を確保するために、例えば、プレハブマンホールPを載せている運搬車輌Qに、作業員の安全ベルトを掛けるための親綱を張設する治具を設置する措置も存在するが、設置費用が高額となることから、殆ど採用されていないのが実状である。
【0020】
この他、プレハブマンホールPの水平方向の移動(横引き)に際し、プレハブマンホールPの上方である地面付近に切梁Hが存在する場合に、切梁Hを回避するために、図17に示すように、プレハブマンホールPを移動用鋼棒Tに乗せた状態で、プレハブマンホールPを吊り上げているワイヤーWを全て取り外して、複数の作業員がバール等の工具を用いてプレハブマンホールPを一方側から強く押し込むと、プレハブマンホールPが転倒してしまう危険性がある。
【0021】
即ち、図17に示すように、プレハブマンホールPを移動用鋼棒Tに乗せたとき、プレハブマンホールPは、移動用鋼棒Tの移動する方向に、自身の内部空間を向けている。そのため、移動用鋼棒Tに接している自身の底壁において、底壁の長手方向に直交する方向に作業員による押し込み力が作用したときに、その押し込み力が強いと、プレハブマンホールPの天壁が作業員側に向けて転倒してしまうのである。
【0022】
また、特許文献1には、前後端にそれぞれ上部落とし込み用の凸部及び凹部を形成してなるボックスカルバートの頂板に設けられた一対のフックの合力の作用点は、ボックスカルバートの重心位置よりも凸部側に距離eだけ偏心しており、クレーン等で吊り上げた場合、ボックスカルバートは水平状態とならず凹部側に傾いた状態となり、この状態で既設のボックスカルバートに他のボックスカルバートを接合する旨の記載は存在する。
【0023】
しかし、特許文献1には、プレハブマンホールPの水平方向の移動(横引き)に際し、プレハブマンホールPの上方である地面付近に切梁Hが存在する場合に、この切梁Hを回避する措置については、何ら記載されていない。
【0024】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、作業員の手が届く高さの位置にアンカーを取り付けることにより、プレハブマンホールの天壁における作業員の各種作業を排除して、作業員がプレハブマンホールから落下してしまう危険性を無くすことを第1の目的とする。
【0025】
また、本発明は、プレハブマンホールの水平方向の移動(横引き)に際し、据付場所の地面付近に切梁が存在する場合であっても、水平部材と水平部材の両端部にそれぞれ2本ずつ取り付けたワイヤーによりプレハブマンホールを吊り上げ、必要に応じてプレハブマンホールを地面に降ろし、ワイヤーのプレハブマンホールへの取り付けと取り外しを適宜行うことにより、プレハブマンホールの転倒を防止しながら切梁を回避することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具においては、角筒状に形成されているプレハブマンホールを、プレハブマンホールに取り付けているアンカーを介して吊り上げるための、プレハブマンホール用の吊り上げ治具であり、
クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材と、水平部材の両端部にそれぞれ2本ずつ取り付けたワイヤーにより構成され、
個々のワイヤーの先端部に、プレハブマンホールのアンカーに掛け止めする掛止体を備えていることで、上述した課題を解決した。
【0027】
また、水平部材は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成され、その短辺が立設するように板片を配置し、板片の長手方向における両側面に、補強用リブが設けられていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0028】
さらに、プレハブマンホールに取り付けているアンカーは、所定の長さの棒体の先端部に、薄板円形状の頭部を取り付けて形成し、棒体の基端部が、プレハブマンホールに設けている窪み部に固定されており、
このアンカーに掛け止めするワイヤーの掛止体は、ワイヤーの先端部に取り付けた、端部に略円形の孔を有する接続片と、接続片の孔に回転可能に取り付けた中空円環状のカプラーにより構成され、
カプラーの周面に、アンカーの頭部を挿入する開口部を設け、この開口部に、幅狭な長孔を連設していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0029】
また、カプラーの開口部に隣接するように、爪部を設けていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0030】
この他、本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法においては、プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールに対し、請求項1ないし4に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用してプレハブマンホールを吊り上げることで、同じく上述した課題を解決した。
【0031】
また、本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法においては、プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、その切梁を避けるために、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、プレハブマンホールの他方側の2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
切梁に近接した他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように他方側の2本のワイヤーを前方に移動させ、他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施する、請求項1ないし4に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用してプレハブマンホールを吊り上げることで、同じく上述した課題を解決した。
【0032】
さらに、本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法においては、プレハブマンホールを構成する矩形状の天壁において、天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカーを取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカーを取り付けている場合において、水平部材の両端部に取り付けている2本のワイヤーを利用し、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしてプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、その切梁を避けるために、
2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしている掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
一方の掛止体を、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めし、他方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、天壁を形成する対角部の他方側に位置しているアンカーに掛け止めする工程、
水平部材が切梁と交差するように斜めに配置した状態で、プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしている一方のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
天壁を形成する対角部に位置しているそれぞれのアンカーに掛け止めしている掛止体を取り外す工程、
天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしていた一方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、両掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施する、請求項1または2に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用してプレハブマンホールを吊り上げることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具によれば、プレハブマンホールの天壁における作業員の各種作業を排除して、作業員がプレハブマンホールから落下してしまう危険性を無くすことができる。
【0034】
具体的には、吊り上げるプレハブマンホール自体について、左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーを水平に取り付けていることから、ワイヤーの端部をアンカーに接続するときに、作業員がプレハブマンホールの天壁に昇る必要性が無い。
【0035】
そのため、プレハブマンホールの天壁から作業員が落下してしまう事態が、そもそも生じないのである。
【0036】
同様に、梯子も使用しないことから、作業員が梯子から落下してしまう事態も生じない。
【0037】
また、吊り上げ治具は、クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材と、水平部材の両端部にそれぞれ取り付けた2本のワイヤーにより構成されていることから、水平部材とワイヤーにより、プレハブマンホールを安定した状態で吊り上げることができる。
【0038】
さらに、ワイヤーの先端部には、プレハブマンホールのアンカーに掛け止めする掛止体を備えていることから、アンカーへの掛止体の取り付けと、アンカーからの掛止体の取り外しが容易である。
【0039】
また、水平部材は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成されており、板片の両端部において、ワイヤーを真っ直ぐに降ろした状態で、ワイヤーの端部を左右の側壁部に固定したアンカーに接続することから、プレハブマンホールを安定した状態で吊り上げることができる。
【0040】
加えて、略長方形の板片は、その短辺が立設するように板片を配置し、板片の長手方向における両側面に、補強用リブが設けられていることから、水平部材自体の堅牢性を維持することができる。
【0041】
その為、重量のあるプレハブマンホールを、この水平部材を介して確実に吊り上げることができ、水平部材の破損によりプレハブマンホールが落下してしまう事態の発生を確実に阻止することができる。
【0042】
加えて、プレハブマンホールに取り付けているアンカーは、所定の長さの棒体の先端部に、薄板円形状の頭部を取り付けて形成し、棒体の基端部が、プレハブマンホールの側壁部に設けている窪み部に固定されており、
このアンカーに掛け止めするワイヤーの掛止体は、ワイヤーの先端部に取り付けた、端部に略円形の孔を有する接続片と、接続片の孔に回転可能に取り付けた中空円環状のカプラーにより構成され、
カプラーの周面に、アンカーの頭部を挿入する開口部を設け、この開口部に幅狭な長孔を連設していることから、アンカーの頭部にカプラーの開口部を宛がってアンカーの頭部をカプラー内に導入し、カプラーの長孔が上方に移動するようにカプラーを回転させて、カプラーの長孔にアンカーの頭部を係合させることで、プレハブマンホールのアンカーに、ワイヤーの掛止体を簡単に取り付けることができる。
【0043】
また、ワイヤーによりプレハブマンホールを吊り上げているとき、アンカーの頭部は、常にカプラーの幅狭な長孔に係合しているので、アンカーの頭部からカプラーが外れることが無い。
【0044】
さらに、プレハブマンホールのアンカーから、ワイヤーの掛止体を取り外すときは、プレハブマンホールを降ろしている状態において、カプラーの長孔が下方に移動するようにカプラーを回転させる。そして、アンカーの頭部に係合しているカプラーの長孔を移動させて、カプラーの開口部をアンカーの頭部の位置に配置する。このカプラーの開口部を介して、アンカーの頭部からカプラーを簡単に取り外すことができる。
【0045】
また、カプラーの開口部に隣接するように爪部を設けていることから、この爪片を介して、カプラーの回転操作が、極めて容易である。
【0046】
この他、本発明に係るプレハブマンホールの吊り上げ方法においては、プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールに対し、プレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用してプレハブマンホールを吊り上げることから、プレハブマンホールの天壁における作業員の各種作業を排除して、作業員がプレハブマンホールから落下してしまう危険性を無くすことができる。
【0047】
また、プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、プレハブマンホールの他方側の2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
切梁に近接した他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように他方側の2本のワイヤーを前方に移動させ、他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程を実施することにより、その切梁を避けることができる。
【0048】
その結果、ワイヤーが切梁を避けながら、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)ことが可能となり、既に設置されているプレハブマンホールの端面に、他のプレハブマンホールを容易に接合させることができる。
【0049】
また、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)とき、地面に降ろしている状態のプレハブマンホールにおいて、4本のワイヤーのうちの2本が、必ずプレハブマンホールのアンカーに接続されていることから、地面に降ろしている状態のプレハブマンホールが転倒してしまう事態の発生を確実に防止している。
【0050】
さらに、水平部材は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成されており、水平部材の端部において、ワイヤーを真っ直ぐに降ろした状態で、ワイヤーの端部をプレハブマンホールの側壁部に固定したアンカーに接続している。
【0051】
その為、移動方向側に位置している2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程と、切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに、再度掛け止めする工程を、容易に実施することができる。
【0052】
また、他方側に位置している2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程と、切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに、再度掛け止めする工程も容易に実施でき、切梁を避けることができるのである。
【0053】
この様に、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合にも、プレハブマンホールの側壁部に取り付けているアンカーを利用してプレハブマンホールを吊り上げるのであるが、プレハブマンホールを設置する場所において、その幅スペースが非常に狭くなっており、作業員がプレハブマンホールの側壁部の近傍でワイヤーの掛止体をアンカーから取り外し、アンカーに掛け止めする作業を実施し難い場合には、プレハブマンホールを構成する天壁にも、アンカーを取り付けておくと良い。
【0054】
具体的には、プレハブマンホールを構成する矩形状の天壁において、天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカーを取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカーを取り付けておくのである。
【0055】
そして、水平部材の両端部に取り付けている2本のワイヤーを利用し、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしてプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、
2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしている掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
一方の掛止体を、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めし、他方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、天壁を形成する対角部の他方側に位置しているアンカーに掛け止めする工程、
水平部材が切梁と交差するように斜めに配置した状態で、プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしている一方のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
天壁を形成する対角部に位置しているそれぞれのアンカーに掛け止めしている掛止体を取り外す工程、
天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしていた一方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、両掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施することにより、その切梁を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】水平部材を介して、プレハブマンホールを吊り上げている状態を示す斜視図である。
【図2】水平部材を介して、プレハブマンホールを吊り上げている状態を示す正面図である。
【図3】掛止体としてのカプラーを、プレハブマンホールの側壁部に設けている窪み部内に固定されているアンカーに掛け止めする状態を示す分解斜視図である。
【図4】掛止体としてのカプラーを、プレハブマンホールの側壁部に設けている窪み部内に固定されているアンカーに掛け止めした状態を示す斜視図である。
【図5】アンカーへの掛止体の取り付け状態を示すもので、(a)は、アンカーの頭部に、掛止体としてのカプラーの開口部を宛がって、アンカーの頭部をカプラー内に導入する状態を示す分解斜視図、(b)はアンカーの頭部をカプラー内に導入した状態を示す斜視図、(c)はカプラーを回転させて、カプラーの長孔にアンカーの頭部を係合させている状態を示す斜視図である。
【図6】アンカーへの掛止体の取り付け状態を示すもので、(a)は、アンカーの頭部に、掛止体としてのカプラーの開口部を宛がって、アンカーの頭部をカプラー内に導入する状態を示す分解断面図、(b)はアンカーの頭部をカプラー内に導入した状態を示す断面図、(c)はカプラーを回転させて、カプラーの長孔にアンカーの頭部を係合させている状態を示す断面図である。
【図7】プレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用して、プレハブマンホールを運搬車輌の荷台に載せた状態を示す斜視図である。
【図8】既に設置されているプレハブマンホールの端面に、新たなプレハブマンホールの端面を接合させるときに、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう状況を説明した、概略の側面図である。
【図9】プレハブマンホールの側壁部に取り付けたアンカーを利用して、切梁を避けながら、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)手順を説明した概略の側面図である。
【図10】プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカーを取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカーを取り付けている状態を示す斜視図である。
【図11】プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに、2本のワイヤーの掛止体を掛け止めしている状態を示す斜視図である。
【図12】プレハブマンホールの天壁を形成する一方の対角部のそれぞれに位置しているアンカーに、2本のワイヤーの掛止体を掛け止めしている状態を示す斜視図である。
【図13】プレハブマンホールの天壁に取り付けたアンカーを利用して、切梁を避けながら、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)手順(前半)を説明した斜視図である。
【図14】プレハブマンホールの天壁に取り付けたアンカーを利用して、切梁を避けながら、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)手順(後半)を説明した斜視図である。
【図15】作業員が、梯子を介してプレハブマンホールに昇っている状態を示す斜視図である。
【図16】作業員が、プレハブマンホールの天壁上で、種々の作業を実施している状態を示す斜視図である。
【図17】プレハブマンホールを移動用鋼棒に乗せた状態で、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーを全て取り外して、プレハブマンホールを一方側から強く押し込んだとき、プレハブマンホールが転倒してしまう状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0058】
本発明に係るプレハブマンホールP用の吊り上げ治具1は、図1・図2に示すように、プレハブマンホールPを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールPの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカー2を水平に取り付けている構成のプレハブマンホールPを吊り上げるものである。
【0059】
この様な構成のプレハブマンホールPを吊り上げる、プレハブマンホール用の吊り上げ治具1は、図1・図2に示すように、クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材11と、水平部材11の両端部にそれぞれ取り付けた2本のワイヤーWにより構成され、それぞれのワイヤーWの先端部に、プレハブマンホールPのアンカー2に掛け止めする掛止体3を備えている。
【0060】
プレハブマンホールPは、左右の側壁部において、図3に示すように、それぞれ水平となる2箇所に、略半円球状に抉られた窪み部4が設けられている。この窪み部4の奥部中央には、図2・図3に示すように、アンカー2が固定されている。このアンカー2は、図5(a)に示すように、棒体2aの両端に薄板円形状の頭部2bを備えている。そして、図6(a)に示すように、アンカー2の一方の頭部2bが側壁内に埋め込まれ、他方の頭部2bは、窪み部4内に突出している。
【0061】
このプレハブマンホールPの窪み部4とアンカー2は、プレハブマンホールPの側壁において、プレハブマンホールPの重心位置よりも上側で、作業員の手の届く高さ(例えば、底面から1m〜1.5m程度の高さ)に配置されている。
【0062】
また、プレハブマンホールPを吊り上げる水平部材11は、図1・図2に示すように、プレハブマンホールPを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成され、その短辺が立設するように板片を配置し、板片の長手方向における両側面に、補強用リブ12が設けられている。
【0063】
さらに、図1・図2に示すように、水平部材11の両端部のそれぞれにおいて、上方に1個の取付孔13aが設けられている。また、下方に2個の取付孔13bが設けられている。
【0064】
この上方の取付孔13aには、クレーン重機のフックKに掛けられている2本のワイヤーWの端部が接続されている。また、下方の2個の取付孔13bにおいて、内側の取付孔13bには、プレハブマンホールPを吊り上げている2本のワイヤーWが接続されている。この2本のワイヤーWは、取付孔13bに掛け止めしている、閉鎖した逆U字状の取付治具Vを介して、取付孔13bに接続されている。
【0065】
また、2本のワイヤーWの他端部には、所定の取付治具Vを介して、掛止体3を接続している。
【0066】
掛止体3は、図4・図5に示すように、プレハブマンホールPを構成する側壁部に設けている窪み部4内に固定されているアンカー2に、掛け止めするものである。
【0067】
この掛止体3は、図1・図3(a)(b)に示すように、ワイヤーWの取付治具Vにおけるリング部材に接続する接続片3cと、接続片3cに回転可能に取り付けたカプラー3aにより構成されている。
【0068】
接続片3cは、図3(a)(b)に示すように、略長方形状の板材に形成され、基端側部分の全体に矩形状の開口部3gが設けられている。この開口部3gに、取付治具Vに係合しているリング部材が取り付けられている。また、接続片3cの先端部分には、略円形の孔3fが設けられている。この孔3fに、カプラー3aが回転可能に取り付けられている。
【0069】
カプラー3aは、図5(a)・図6(a)に示すように、全体が中空円環状に形成されている。この中空円環状のカプラー3aの周面には、アンカー2の頭部2bを導入するための開口部5を設け、この開口部5に、幅狭な長孔6を連設している。
【0070】
中空円環状のカプラー3aは、プレハブマンホールPの側壁部に設けている窪み部4の内周面に沿って回転できる程度の大きさを備えている。また、カプラー3aの周面には、開口部5に隣接して、爪部3eが突設されている。
【0071】
カプラー3aの開口部5は、アンカー2の頭部2bにカプラー3aの開口部5を宛がって、アンカー2の頭部2bをカプラー3a内に導入するものである。また、カプラー3aの幅狭な長孔6は、この長孔6内にアンカー2の頭部2bを係合させて、アンカー2の頭部2bからのカプラー3aの離脱を阻止している。
【0072】
そして、図3・図4に示すように、プレハブマンホールPを構成する側壁部に設けている窪み部4内に固定されているアンカー2に、カプラー3aを取り付けるときは、まず、図5(a)(b)・図6(a)(b)に示すように、アンカー2の頭部2bにカプラー3aの開口部5を宛がって、アンカー2の頭部2bをカプラー3a内に導入する。
【0073】
次に、爪部3eを摘んでカプラー3aの長孔6が上方に移動するようにカプラー3aを回転させて、図5(c)・図6(c)に示すように、カプラー3の長孔6にアンカー2の頭部2bを係合させる。そして、ワイヤーWによりプレハブマンホールPを吊り上げると、アンカー2の頭部2bは、常にカプラー3aの幅狭な長孔6に係合した状態が維持されるので、アンカー2の頭部2bからカプラー3aが外れることが無い。
【0074】
これに対し、プレハブマンホールPのアンカー2から、カプラー3a取り外すときは、まず、プレハブマンホールPを地面に等に降ろす。そして、図5(c)・図6(c)に示す状態のカプラー3aの爪部3eを摘んで、カプラー3aの長孔6が下方に移動するようにカプラー3aを回転させる。そして、アンカー2の頭部2bに係合しているカプラー3aの長孔6を移動させて、図3(a)に示すように、カプラー3aの開口部5をアンカー2の頭部2bの位置に配置する。このカプラー3aの開口部5を介して、アンカー2の頭部2bからカプラー3aを離脱させるのである。
【0075】
本発明に係るプレハブマンホールP用の吊り上げ治具1を使用して、プレハブマンホールPを吊り上げるときは、図1・図2に示すように、クレーン重機のフックKに掛けられている2本のワイヤーWを水平部材11の両端部に接続し、この水平部材11の両端部のそれぞれにおいて、2本のワイヤーWを真っ直ぐに下方に降ろし、2本のワイヤーWに接続している掛止体3としてのカプラー3aを、プレハブマンホールPの左右の側壁部に設けている窪み部4内のアンカー2の頭部2bに取り付ける。
【0076】
この状態でクレーン重機を作動させて、フックKの下側に存在するプレハブマンホールPを、水平部材11を介して吊り上げる。そして、例えば、図7に示すように、プレハブマンホールPを運搬車輌Qの荷台に載せる。
【0077】
次に、水平部材11を若干降ろした状態とし、掛止体3としてのカプラー3aを、プレハブマンホールPの左右の側壁部に設けている窪み部4内のアンカー2の頭部2bから取り外す。
【0078】
そして、運搬車輌Qの荷台にプレハブマンホールPを固定する措置を施して、運搬車輌QによりプレハブマンホールPを運搬する。
【0079】
次に、運搬車輌Qの荷台からプレハブマンホールPを移動させるときは、例えば、図7に示すように、運搬車輌Qの荷台に作業員が乗り込んで、水平部材11の両端部のそれぞれにおいて、2本のワイヤーWを真っ直ぐに下方に降ろし、2本のワイヤーWに接続している掛止体3としてのカプラー3aを、プレハブマンホールPの左右の側壁部に設けている窪み部4内のアンカー2の頭部2bに再度取り付ける。
【0080】
この状態でクレーン重機を作動させて、フックKの下側に存在するプレハブマンホールPを、水平部材11を介して吊り上げるのである。
【0081】
以下に、プレハブマンホールP用の吊り上げ治具1を使用した、プレハブマンホールP用の吊り上げ方法において、切梁Hを避けながら、プレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)具体的な工程を説明する。
【0082】
このプレハブマンホールPの水平方向への移動(横引き)においては、例えば、図8に示すように、既に設置されているプレハブマンホールPの端面に、新たなプレハブマンホールPの端面を接合させるときに、その移動方向において、プレハブマンホールPを吊り上げているワイヤーWが切梁Hに当たってしまうことがある。
【0083】
以下に示す各工程は、この切梁Hを避けながら、プレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)手順である。
【0084】
先ず、図9(a)・(b)に示すように、プレハブマンホールPを水平方向に移動させて、プレハブマンホールPを吊り上げている移動方向側に位置している2本のワイヤーWが切梁Hに近接したとき、プレハブマンホールPを地面に降ろす。
【0085】
次に、図9(c)に示すように、プレハブマンホールPの移動方向側に位置している2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPのアンカー2から取り外す。
【0086】
次に、図9(c)(d)に示すように、切梁Hを跨ぐように、移動方向側に位置している2本のワイヤーWを前方に移動させ、2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPのアンカー2に、再度掛け止めする。
【0087】
次に、図9(d)・(e)・(f)に示すように、プレハブマンホールPを吊り上げて、前方に移動させ、プレハブマンホールPの他方側に位置している2本のワイヤーWが切梁Hに近接した状態で、プレハブマンホールPを地面に降ろす。
【0088】
次に、図9(g)に示すように、切梁Hに近接した他方側に位置している2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPのアンカー2から取り外す。
【0089】
次に、図9(g)(h)に示すように、切梁Hを跨ぐように、他方側に位置している2本のワイヤーWを前方に移動させ、2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPのアンカー2に、再度掛け止めする。
【0090】
最後に、図9(h)(i)に示すように、プレハブマンホールPを吊り上げて、前方に移動させ、所定の場所に設置するのである。
【0091】
この様な工程を実施することにより、ワイヤーWが切梁Hを避けながらプレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)ことが可能となり、既に設置されているプレハブマンホールPの端面に、他のプレハブマンホールPを容易に接合させることができる。
【0092】
また、このプレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)とき、地面に降ろしている状態のプレハブマンホールPにおいて、4本のワイヤーWのうちの2本のワイヤーWが、必ずプレハブマンホールPのアンカー2に接続されていることから、プレハブマンホールPが転倒してしまう事態の発生を確実に防止している。
【0093】
この様に、切梁Hを避けながらプレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)場合にも、プレハブマンホールPの側壁部に取り付けているアンカー2を利用してプレハブマンホールPを吊り上げるのであるが、プレハブマンホールPを設置する場所において、その幅スペースが非常に狭くなっており、作業員がプレハブマンホールPの側壁部の近傍でワイヤーWの掛止体3をアンカー2から取り外し、アンカー2に掛け止めする作業を実施し難い場合には、プレハブマンホールPを構成する天壁にも、アンカー2を取り付けておくと良い。
【0094】
具体的には、図10に示すように、プレハブマンホールPを構成する矩形状の天壁において、天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカー2を取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカー2を取り付けておくのである。
【0095】
尚、アンカー2は、天壁を形成する他方の対角部のそれぞれにアンカー2を取り付けも良い。
【0096】
そして、図11に示すように、水平部材12の両端部に2本ずつ取り付けている計4本のワイヤーWの内、2本のワイヤーWのみを利用して、プレハブマンホールPを吊り上げるのである。
【0097】
尚、図11乃至図14においては、説明を明確にするために、2本のワイヤーWのみを記載している。
【0098】
そして、図11に示すように、プレハブマンホールPの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカー2に、2本のワイヤーWの掛止体3を掛け止めしている状態と、図12に示すように、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれに位置しているアンカー2に、2本のワイヤーWの掛止体3を掛け止めしている状態を適宜維持して、切梁Hを避けながら、プレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)のである。
【0099】
具体的には、まず、図13(a)に示すように、2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカー2に掛け止めしてプレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)。
【0100】
そして、図13(b)に示すように、2本のワイヤーWが切梁Hに近接した状態で、プレハブマンホールPを地面に降ろす。
【0101】
次に、プレハブマンホールPの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカー2に掛け止めしている掛止体3を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す。
【0102】
次に、図13(c)に示すように、一方の掛止体3を、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカー2に掛け止めし、他方の掛止体3を、切梁Hを跨ぐように前方に移動させ、天壁を形成する対角部の他方側に位置しているアンカー2に掛け止めする。
【0103】
そして、水平部材11が切梁Hと交差するように斜めに配置した状態で、プレハブマンホールPを吊り上げて、図14(a)に示すように、前方に若干移動させ、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカー2に掛け止めしている一方のワイヤーWが切梁Hに近接した状態で、プレハブマンホールPを地面に降ろす。
【0104】
次に、天壁を形成する対角部に位置しているそれぞれのアンカー2に掛け止めしている掛止体3を取り外し、図14(b)に示すように、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカー2に掛け止めしていた一方の掛止体3を、切梁Hを跨ぐように前方に移動させ、両掛止体3を、プレハブマンホールPの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカー2に再度掛け止めする。
【0105】
この状態において、図14(c)に示すように、プレハブマンホールPを吊り上げて前方に移動させ、切梁Hを避けながら、プレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)のである。
【0106】
尚、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良・変形等は、本発明に全て包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、コンクリート基礎等の据付場所に複数のプレハブマンホールを設置して管路マンホールを布設・構築するために使用されることの他に、種々の建造物を布設・構築する際の吊り上げ治具と吊り上げ工法として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
P…プレハブマンホール
Q…運搬車輌
S…梯子
T…移動用鋼棒
K…フック
F…フック
W…ワイヤー
1…吊り上げ治具
2…アンカー
2a…棒体
2b…頭部
3…掛止体
3a…カプラー
3c…接続片
3e…爪部
3f…孔
3g…開口部
4…窪み部
5…開口部
6…長孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンクリート基礎等の据付場所において、複数のプレハブマンホールを接合させて管路マンホールを構築するための、プレハブマンホール用の吊り上げ治具と、プレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプレハブマンホールPは、例えば、図15・図16に示すように、所定の大きさと厚みを有する角筒状のコンクリート躯体により形成されている。そして、プレハブマンホールPを立てた状態にした際に位置付けられる上面側を天壁とし、その天壁に4個のフックFが打設されている。
【0003】
この様なプレハブマンホールPを吊り上げて移動させる場合には、例えば、図16に示すように、天壁のフックFにワイヤーWを掛けて、このワイヤーWをクレーン重機のフックKにより吊っている。
【0004】
その為、プレハブマンホールPをクレーン重機により吊り上げて運搬車輌QにプレハブマンホールPを載せるとき、また、運搬車輌Qに載せているプレハブマンホールPを運搬車輌Qから降ろして特定の場所に設置するときには、作業員がプレハブマンホールPの天壁に昇って種々の作業を実施しなければならない。
【0005】
具体的には、運搬車輌Qに載せているプレハブマンホールPを運搬車輌Qから降ろして特定の場所に設置する作業の場合、まず、図15に示すように、プレハブマンホールPに梯子Sを立て掛けて、作業員が梯子Sを介してプレハブマンホールPの天壁側に移動する。
【0006】
そして、図16に示すように、作業員がプレハブマンホールPの天壁上で、天壁の四隅に打設されている合計4個のフックFに、ワイヤーWの端部を手作業で接続する。
【0007】
次に、作業員は、天壁上でクレーン重機のフックKにワイヤーWを引っ掛ける作業を行って、クレーン重機により運搬車輌Qの荷台に乗せているプレハブマンホールPを吊り上げ、特定の場所に設置するのである。
【0008】
一方、特許文献1に開示されているように、前後端にそれぞれ上部落とし込み用の凸部及び凹部を形成している、角筒状のボックスカルバートが存在する。このボックスカルバートにおいても、天壁に2個のフックFが打設されていることから(特許文献1の図1参照)、作業員が天壁に昇って種々の作業を実施しなければならない点は、図15・図16に示すプレハブマンホールPの場合と全く同様である。
【0009】
この他、プレハブマンホールPにおいては、所定の据付場所に吊り上げて移送した後に、コンクリート基礎の所定位置にプレハブマンホールPを設置し、これに隣接するように次のプレハブマンホールPを基礎上に設置した後、水平方向に移動させて、既に設置されているプレハブマンホールPの端面に接合させる必要がある。
【0010】
この様な、プレハブマンホールPの水平方向の移動(横引き)に際し、プレハブマンホールPの上方である地面付近に切梁Hが存在する場合には、プレハブマンホールPを吊り上げているワイヤーWがこの切梁Hに当たってしまうため、切梁Hを回避する措置が必要となる。
【0011】
しかし、従来においては、プレハブマンホールPの据付場所における水平方向の移動(横引き)に際し、切梁Hを回避するための工夫がなされていないことから、ワイヤーWによりプレハブマンホールPを吊り上げている状態のまま、プレハブマンホールPを水平方向に移動(横引き)させ、既に設置されているプレハブマンホールPの端面に接合させることは困難である。
【0012】
その為、苦肉の策として、プレハブマンホールPを降ろし、プレハブマンホールPを吊り上げている4本のワイヤーWの端部の全てを、プレハブマンホールPの天壁に打設されている4個のフックFからそれぞれ取り外して、プレハブマンホールP自体を水平方向に移動(横引き)させていた。
【0013】
その具体的な措置は、例えば、図17に示すように、プレハブマンホールPを移動用鋼棒Tに乗せた状態で、プレハブマンホールPを吊り上げている4本のワイヤーWをそれぞれ取り外す。そして、複数の作業員がバール等の工具を用いてプレハブマンホールPを一方側から強く押し込んで、プレハブマンホールPを移動用鋼棒Tと共に水平方向に移動(横引き)させるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第2665164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来においては、図15・図16に示すように、作業員が梯子Sを使ってプレハブマンホールPの天壁に上り、天壁の四隅に打設されているフックFにワイヤーWの端部を接続する作業や、クレーン重機のフックKにワイヤーWを引っ掛ける作業を実施しなければならないが、プレハブマンホールPの天壁部分とその周囲には、作業員の安全ベルトを掛けることのできる部材が全く存在していない。
【0016】
その為、作業員が梯子Sを昇るとき、また、プレハブマンホールPの天壁においてフックFにワイヤーWの端部を接続するとき、さらには、クレーン重機のフックKにワイヤーWを引っ掛けるときのいずれにおいても、作業員の安全が確保されていない、所謂無胴綱状態になってしまう。
【0017】
その結果、梯子Sや、比較的に高所となるプレハブマンホールPの天壁から、作業員が落下してしまう危険性が常に伴っていた。
【0018】
この様な作業員の無胴綱状態を要因として作業員が落下してしまう危険性が伴うことは、特許文献1に開示されているボックスカルバートにおいても全く同様である。
【0019】
尚、作業員の無胴綱状態を解消して、作業員の安全を確保するために、例えば、プレハブマンホールPを載せている運搬車輌Qに、作業員の安全ベルトを掛けるための親綱を張設する治具を設置する措置も存在するが、設置費用が高額となることから、殆ど採用されていないのが実状である。
【0020】
この他、プレハブマンホールPの水平方向の移動(横引き)に際し、プレハブマンホールPの上方である地面付近に切梁Hが存在する場合に、切梁Hを回避するために、図17に示すように、プレハブマンホールPを移動用鋼棒Tに乗せた状態で、プレハブマンホールPを吊り上げているワイヤーWを全て取り外して、複数の作業員がバール等の工具を用いてプレハブマンホールPを一方側から強く押し込むと、プレハブマンホールPが転倒してしまう危険性がある。
【0021】
即ち、図17に示すように、プレハブマンホールPを移動用鋼棒Tに乗せたとき、プレハブマンホールPは、移動用鋼棒Tの移動する方向に、自身の内部空間を向けている。そのため、移動用鋼棒Tに接している自身の底壁において、底壁の長手方向に直交する方向に作業員による押し込み力が作用したときに、その押し込み力が強いと、プレハブマンホールPの天壁が作業員側に向けて転倒してしまうのである。
【0022】
また、特許文献1には、前後端にそれぞれ上部落とし込み用の凸部及び凹部を形成してなるボックスカルバートの頂板に設けられた一対のフックの合力の作用点は、ボックスカルバートの重心位置よりも凸部側に距離eだけ偏心しており、クレーン等で吊り上げた場合、ボックスカルバートは水平状態とならず凹部側に傾いた状態となり、この状態で既設のボックスカルバートに他のボックスカルバートを接合する旨の記載は存在する。
【0023】
しかし、特許文献1には、プレハブマンホールPの水平方向の移動(横引き)に際し、プレハブマンホールPの上方である地面付近に切梁Hが存在する場合に、この切梁Hを回避する措置については、何ら記載されていない。
【0024】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、作業員の手が届く高さの位置にアンカーを取り付けることにより、プレハブマンホールの天壁における作業員の各種作業を排除して、作業員がプレハブマンホールから落下してしまう危険性を無くすことを第1の目的とする。
【0025】
また、本発明は、プレハブマンホールの水平方向の移動(横引き)に際し、据付場所の地面付近に切梁が存在する場合であっても、水平部材と水平部材の両端部にそれぞれ2本ずつ取り付けたワイヤーによりプレハブマンホールを吊り上げ、必要に応じてプレハブマンホールを地面に降ろし、ワイヤーのプレハブマンホールへの取り付けと取り外しを適宜行うことにより、プレハブマンホールの転倒を防止しながら切梁を回避することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具においては、角筒状に形成されているプレハブマンホールを、プレハブマンホールに取り付けているアンカーを介して吊り上げるための、プレハブマンホール用の吊り上げ治具であり、
クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材と、水平部材の両端部にそれぞれ2本ずつ取り付けたワイヤーにより構成され、
個々のワイヤーの先端部に、プレハブマンホールのアンカーに掛け止めする掛止体を備えていることで、上述した課題を解決した。
【0027】
また、水平部材は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成され、その短辺が立設するように板片を配置し、板片の長手方向における両側面に、補強用リブが設けられていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0028】
さらに、プレハブマンホールに取り付けているアンカーは、所定の長さの棒体の先端部に、薄板円形状の頭部を取り付けて形成し、棒体の基端部が、プレハブマンホールに設けている窪み部に固定されており、
このアンカーに掛け止めするワイヤーの掛止体は、ワイヤーの先端部に取り付けた、端部に略円形の孔を有する接続片と、接続片の孔に回転可能に取り付けた中空円環状のカプラーにより構成され、
カプラーの周面に、アンカーの頭部を挿入する開口部を設け、この開口部に、幅狭な長孔を連設していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0029】
また、カプラーの開口部に隣接するように、爪部を設けていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0030】
この他、本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法においては、プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールに対し、請求項1ないし4に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用してプレハブマンホールを吊り上げることで、同じく上述した課題を解決した。
【0031】
また、本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法においては、プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、その切梁を避けるために、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、プレハブマンホールの他方側の2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
切梁に近接した他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように他方側の2本のワイヤーを前方に移動させ、他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施する、請求項1ないし4に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用してプレハブマンホールを吊り上げることで、同じく上述した課題を解決した。
【0032】
さらに、本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法においては、プレハブマンホールを構成する矩形状の天壁において、天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカーを取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカーを取り付けている場合において、水平部材の両端部に取り付けている2本のワイヤーを利用し、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしてプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、その切梁を避けるために、
2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしている掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
一方の掛止体を、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めし、他方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、天壁を形成する対角部の他方側に位置しているアンカーに掛け止めする工程、
水平部材が切梁と交差するように斜めに配置した状態で、プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしている一方のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
天壁を形成する対角部に位置しているそれぞれのアンカーに掛け止めしている掛止体を取り外す工程、
天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしていた一方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、両掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施する、請求項1または2に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用してプレハブマンホールを吊り上げることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るプレハブマンホール用の吊り上げ治具によれば、プレハブマンホールの天壁における作業員の各種作業を排除して、作業員がプレハブマンホールから落下してしまう危険性を無くすことができる。
【0034】
具体的には、吊り上げるプレハブマンホール自体について、左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーを水平に取り付けていることから、ワイヤーの端部をアンカーに接続するときに、作業員がプレハブマンホールの天壁に昇る必要性が無い。
【0035】
そのため、プレハブマンホールの天壁から作業員が落下してしまう事態が、そもそも生じないのである。
【0036】
同様に、梯子も使用しないことから、作業員が梯子から落下してしまう事態も生じない。
【0037】
また、吊り上げ治具は、クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材と、水平部材の両端部にそれぞれ取り付けた2本のワイヤーにより構成されていることから、水平部材とワイヤーにより、プレハブマンホールを安定した状態で吊り上げることができる。
【0038】
さらに、ワイヤーの先端部には、プレハブマンホールのアンカーに掛け止めする掛止体を備えていることから、アンカーへの掛止体の取り付けと、アンカーからの掛止体の取り外しが容易である。
【0039】
また、水平部材は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成されており、板片の両端部において、ワイヤーを真っ直ぐに降ろした状態で、ワイヤーの端部を左右の側壁部に固定したアンカーに接続することから、プレハブマンホールを安定した状態で吊り上げることができる。
【0040】
加えて、略長方形の板片は、その短辺が立設するように板片を配置し、板片の長手方向における両側面に、補強用リブが設けられていることから、水平部材自体の堅牢性を維持することができる。
【0041】
その為、重量のあるプレハブマンホールを、この水平部材を介して確実に吊り上げることができ、水平部材の破損によりプレハブマンホールが落下してしまう事態の発生を確実に阻止することができる。
【0042】
加えて、プレハブマンホールに取り付けているアンカーは、所定の長さの棒体の先端部に、薄板円形状の頭部を取り付けて形成し、棒体の基端部が、プレハブマンホールの側壁部に設けている窪み部に固定されており、
このアンカーに掛け止めするワイヤーの掛止体は、ワイヤーの先端部に取り付けた、端部に略円形の孔を有する接続片と、接続片の孔に回転可能に取り付けた中空円環状のカプラーにより構成され、
カプラーの周面に、アンカーの頭部を挿入する開口部を設け、この開口部に幅狭な長孔を連設していることから、アンカーの頭部にカプラーの開口部を宛がってアンカーの頭部をカプラー内に導入し、カプラーの長孔が上方に移動するようにカプラーを回転させて、カプラーの長孔にアンカーの頭部を係合させることで、プレハブマンホールのアンカーに、ワイヤーの掛止体を簡単に取り付けることができる。
【0043】
また、ワイヤーによりプレハブマンホールを吊り上げているとき、アンカーの頭部は、常にカプラーの幅狭な長孔に係合しているので、アンカーの頭部からカプラーが外れることが無い。
【0044】
さらに、プレハブマンホールのアンカーから、ワイヤーの掛止体を取り外すときは、プレハブマンホールを降ろしている状態において、カプラーの長孔が下方に移動するようにカプラーを回転させる。そして、アンカーの頭部に係合しているカプラーの長孔を移動させて、カプラーの開口部をアンカーの頭部の位置に配置する。このカプラーの開口部を介して、アンカーの頭部からカプラーを簡単に取り外すことができる。
【0045】
また、カプラーの開口部に隣接するように爪部を設けていることから、この爪片を介して、カプラーの回転操作が、極めて容易である。
【0046】
この他、本発明に係るプレハブマンホールの吊り上げ方法においては、プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールに対し、プレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用してプレハブマンホールを吊り上げることから、プレハブマンホールの天壁における作業員の各種作業を排除して、作業員がプレハブマンホールから落下してしまう危険性を無くすことができる。
【0047】
また、プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、プレハブマンホールの他方側の2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
切梁に近接した他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように他方側の2本のワイヤーを前方に移動させ、他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程を実施することにより、その切梁を避けることができる。
【0048】
その結果、ワイヤーが切梁を避けながら、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)ことが可能となり、既に設置されているプレハブマンホールの端面に、他のプレハブマンホールを容易に接合させることができる。
【0049】
また、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)とき、地面に降ろしている状態のプレハブマンホールにおいて、4本のワイヤーのうちの2本が、必ずプレハブマンホールのアンカーに接続されていることから、地面に降ろしている状態のプレハブマンホールが転倒してしまう事態の発生を確実に防止している。
【0050】
さらに、水平部材は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成されており、水平部材の端部において、ワイヤーを真っ直ぐに降ろした状態で、ワイヤーの端部をプレハブマンホールの側壁部に固定したアンカーに接続している。
【0051】
その為、移動方向側に位置している2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程と、切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに、再度掛け止めする工程を、容易に実施することができる。
【0052】
また、他方側に位置している2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程と、切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに、再度掛け止めする工程も容易に実施でき、切梁を避けることができるのである。
【0053】
この様に、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合にも、プレハブマンホールの側壁部に取り付けているアンカーを利用してプレハブマンホールを吊り上げるのであるが、プレハブマンホールを設置する場所において、その幅スペースが非常に狭くなっており、作業員がプレハブマンホールの側壁部の近傍でワイヤーの掛止体をアンカーから取り外し、アンカーに掛け止めする作業を実施し難い場合には、プレハブマンホールを構成する天壁にも、アンカーを取り付けておくと良い。
【0054】
具体的には、プレハブマンホールを構成する矩形状の天壁において、天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカーを取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカーを取り付けておくのである。
【0055】
そして、水平部材の両端部に取り付けている2本のワイヤーを利用し、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしてプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、
2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしている掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
一方の掛止体を、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めし、他方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、天壁を形成する対角部の他方側に位置しているアンカーに掛け止めする工程、
水平部材が切梁と交差するように斜めに配置した状態で、プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしている一方のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
天壁を形成する対角部に位置しているそれぞれのアンカーに掛け止めしている掛止体を取り外す工程、
天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしていた一方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、両掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施することにより、その切梁を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】水平部材を介して、プレハブマンホールを吊り上げている状態を示す斜視図である。
【図2】水平部材を介して、プレハブマンホールを吊り上げている状態を示す正面図である。
【図3】掛止体としてのカプラーを、プレハブマンホールの側壁部に設けている窪み部内に固定されているアンカーに掛け止めする状態を示す分解斜視図である。
【図4】掛止体としてのカプラーを、プレハブマンホールの側壁部に設けている窪み部内に固定されているアンカーに掛け止めした状態を示す斜視図である。
【図5】アンカーへの掛止体の取り付け状態を示すもので、(a)は、アンカーの頭部に、掛止体としてのカプラーの開口部を宛がって、アンカーの頭部をカプラー内に導入する状態を示す分解斜視図、(b)はアンカーの頭部をカプラー内に導入した状態を示す斜視図、(c)はカプラーを回転させて、カプラーの長孔にアンカーの頭部を係合させている状態を示す斜視図である。
【図6】アンカーへの掛止体の取り付け状態を示すもので、(a)は、アンカーの頭部に、掛止体としてのカプラーの開口部を宛がって、アンカーの頭部をカプラー内に導入する状態を示す分解断面図、(b)はアンカーの頭部をカプラー内に導入した状態を示す断面図、(c)はカプラーを回転させて、カプラーの長孔にアンカーの頭部を係合させている状態を示す断面図である。
【図7】プレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用して、プレハブマンホールを運搬車輌の荷台に載せた状態を示す斜視図である。
【図8】既に設置されているプレハブマンホールの端面に、新たなプレハブマンホールの端面を接合させるときに、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう状況を説明した、概略の側面図である。
【図9】プレハブマンホールの側壁部に取り付けたアンカーを利用して、切梁を避けながら、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)手順を説明した概略の側面図である。
【図10】プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカーを取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカーを取り付けている状態を示す斜視図である。
【図11】プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに、2本のワイヤーの掛止体を掛け止めしている状態を示す斜視図である。
【図12】プレハブマンホールの天壁を形成する一方の対角部のそれぞれに位置しているアンカーに、2本のワイヤーの掛止体を掛け止めしている状態を示す斜視図である。
【図13】プレハブマンホールの天壁に取り付けたアンカーを利用して、切梁を避けながら、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)手順(前半)を説明した斜視図である。
【図14】プレハブマンホールの天壁に取り付けたアンカーを利用して、切梁を避けながら、プレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)手順(後半)を説明した斜視図である。
【図15】作業員が、梯子を介してプレハブマンホールに昇っている状態を示す斜視図である。
【図16】作業員が、プレハブマンホールの天壁上で、種々の作業を実施している状態を示す斜視図である。
【図17】プレハブマンホールを移動用鋼棒に乗せた状態で、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーを全て取り外して、プレハブマンホールを一方側から強く押し込んだとき、プレハブマンホールが転倒してしまう状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0058】
本発明に係るプレハブマンホールP用の吊り上げ治具1は、図1・図2に示すように、プレハブマンホールPを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールPの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカー2を水平に取り付けている構成のプレハブマンホールPを吊り上げるものである。
【0059】
この様な構成のプレハブマンホールPを吊り上げる、プレハブマンホール用の吊り上げ治具1は、図1・図2に示すように、クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材11と、水平部材11の両端部にそれぞれ取り付けた2本のワイヤーWにより構成され、それぞれのワイヤーWの先端部に、プレハブマンホールPのアンカー2に掛け止めする掛止体3を備えている。
【0060】
プレハブマンホールPは、左右の側壁部において、図3に示すように、それぞれ水平となる2箇所に、略半円球状に抉られた窪み部4が設けられている。この窪み部4の奥部中央には、図2・図3に示すように、アンカー2が固定されている。このアンカー2は、図5(a)に示すように、棒体2aの両端に薄板円形状の頭部2bを備えている。そして、図6(a)に示すように、アンカー2の一方の頭部2bが側壁内に埋め込まれ、他方の頭部2bは、窪み部4内に突出している。
【0061】
このプレハブマンホールPの窪み部4とアンカー2は、プレハブマンホールPの側壁において、プレハブマンホールPの重心位置よりも上側で、作業員の手の届く高さ(例えば、底面から1m〜1.5m程度の高さ)に配置されている。
【0062】
また、プレハブマンホールPを吊り上げる水平部材11は、図1・図2に示すように、プレハブマンホールPを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成され、その短辺が立設するように板片を配置し、板片の長手方向における両側面に、補強用リブ12が設けられている。
【0063】
さらに、図1・図2に示すように、水平部材11の両端部のそれぞれにおいて、上方に1個の取付孔13aが設けられている。また、下方に2個の取付孔13bが設けられている。
【0064】
この上方の取付孔13aには、クレーン重機のフックKに掛けられている2本のワイヤーWの端部が接続されている。また、下方の2個の取付孔13bにおいて、内側の取付孔13bには、プレハブマンホールPを吊り上げている2本のワイヤーWが接続されている。この2本のワイヤーWは、取付孔13bに掛け止めしている、閉鎖した逆U字状の取付治具Vを介して、取付孔13bに接続されている。
【0065】
また、2本のワイヤーWの他端部には、所定の取付治具Vを介して、掛止体3を接続している。
【0066】
掛止体3は、図4・図5に示すように、プレハブマンホールPを構成する側壁部に設けている窪み部4内に固定されているアンカー2に、掛け止めするものである。
【0067】
この掛止体3は、図1・図3(a)(b)に示すように、ワイヤーWの取付治具Vにおけるリング部材に接続する接続片3cと、接続片3cに回転可能に取り付けたカプラー3aにより構成されている。
【0068】
接続片3cは、図3(a)(b)に示すように、略長方形状の板材に形成され、基端側部分の全体に矩形状の開口部3gが設けられている。この開口部3gに、取付治具Vに係合しているリング部材が取り付けられている。また、接続片3cの先端部分には、略円形の孔3fが設けられている。この孔3fに、カプラー3aが回転可能に取り付けられている。
【0069】
カプラー3aは、図5(a)・図6(a)に示すように、全体が中空円環状に形成されている。この中空円環状のカプラー3aの周面には、アンカー2の頭部2bを導入するための開口部5を設け、この開口部5に、幅狭な長孔6を連設している。
【0070】
中空円環状のカプラー3aは、プレハブマンホールPの側壁部に設けている窪み部4の内周面に沿って回転できる程度の大きさを備えている。また、カプラー3aの周面には、開口部5に隣接して、爪部3eが突設されている。
【0071】
カプラー3aの開口部5は、アンカー2の頭部2bにカプラー3aの開口部5を宛がって、アンカー2の頭部2bをカプラー3a内に導入するものである。また、カプラー3aの幅狭な長孔6は、この長孔6内にアンカー2の頭部2bを係合させて、アンカー2の頭部2bからのカプラー3aの離脱を阻止している。
【0072】
そして、図3・図4に示すように、プレハブマンホールPを構成する側壁部に設けている窪み部4内に固定されているアンカー2に、カプラー3aを取り付けるときは、まず、図5(a)(b)・図6(a)(b)に示すように、アンカー2の頭部2bにカプラー3aの開口部5を宛がって、アンカー2の頭部2bをカプラー3a内に導入する。
【0073】
次に、爪部3eを摘んでカプラー3aの長孔6が上方に移動するようにカプラー3aを回転させて、図5(c)・図6(c)に示すように、カプラー3の長孔6にアンカー2の頭部2bを係合させる。そして、ワイヤーWによりプレハブマンホールPを吊り上げると、アンカー2の頭部2bは、常にカプラー3aの幅狭な長孔6に係合した状態が維持されるので、アンカー2の頭部2bからカプラー3aが外れることが無い。
【0074】
これに対し、プレハブマンホールPのアンカー2から、カプラー3a取り外すときは、まず、プレハブマンホールPを地面に等に降ろす。そして、図5(c)・図6(c)に示す状態のカプラー3aの爪部3eを摘んで、カプラー3aの長孔6が下方に移動するようにカプラー3aを回転させる。そして、アンカー2の頭部2bに係合しているカプラー3aの長孔6を移動させて、図3(a)に示すように、カプラー3aの開口部5をアンカー2の頭部2bの位置に配置する。このカプラー3aの開口部5を介して、アンカー2の頭部2bからカプラー3aを離脱させるのである。
【0075】
本発明に係るプレハブマンホールP用の吊り上げ治具1を使用して、プレハブマンホールPを吊り上げるときは、図1・図2に示すように、クレーン重機のフックKに掛けられている2本のワイヤーWを水平部材11の両端部に接続し、この水平部材11の両端部のそれぞれにおいて、2本のワイヤーWを真っ直ぐに下方に降ろし、2本のワイヤーWに接続している掛止体3としてのカプラー3aを、プレハブマンホールPの左右の側壁部に設けている窪み部4内のアンカー2の頭部2bに取り付ける。
【0076】
この状態でクレーン重機を作動させて、フックKの下側に存在するプレハブマンホールPを、水平部材11を介して吊り上げる。そして、例えば、図7に示すように、プレハブマンホールPを運搬車輌Qの荷台に載せる。
【0077】
次に、水平部材11を若干降ろした状態とし、掛止体3としてのカプラー3aを、プレハブマンホールPの左右の側壁部に設けている窪み部4内のアンカー2の頭部2bから取り外す。
【0078】
そして、運搬車輌Qの荷台にプレハブマンホールPを固定する措置を施して、運搬車輌QによりプレハブマンホールPを運搬する。
【0079】
次に、運搬車輌Qの荷台からプレハブマンホールPを移動させるときは、例えば、図7に示すように、運搬車輌Qの荷台に作業員が乗り込んで、水平部材11の両端部のそれぞれにおいて、2本のワイヤーWを真っ直ぐに下方に降ろし、2本のワイヤーWに接続している掛止体3としてのカプラー3aを、プレハブマンホールPの左右の側壁部に設けている窪み部4内のアンカー2の頭部2bに再度取り付ける。
【0080】
この状態でクレーン重機を作動させて、フックKの下側に存在するプレハブマンホールPを、水平部材11を介して吊り上げるのである。
【0081】
以下に、プレハブマンホールP用の吊り上げ治具1を使用した、プレハブマンホールP用の吊り上げ方法において、切梁Hを避けながら、プレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)具体的な工程を説明する。
【0082】
このプレハブマンホールPの水平方向への移動(横引き)においては、例えば、図8に示すように、既に設置されているプレハブマンホールPの端面に、新たなプレハブマンホールPの端面を接合させるときに、その移動方向において、プレハブマンホールPを吊り上げているワイヤーWが切梁Hに当たってしまうことがある。
【0083】
以下に示す各工程は、この切梁Hを避けながら、プレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)手順である。
【0084】
先ず、図9(a)・(b)に示すように、プレハブマンホールPを水平方向に移動させて、プレハブマンホールPを吊り上げている移動方向側に位置している2本のワイヤーWが切梁Hに近接したとき、プレハブマンホールPを地面に降ろす。
【0085】
次に、図9(c)に示すように、プレハブマンホールPの移動方向側に位置している2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPのアンカー2から取り外す。
【0086】
次に、図9(c)(d)に示すように、切梁Hを跨ぐように、移動方向側に位置している2本のワイヤーWを前方に移動させ、2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPのアンカー2に、再度掛け止めする。
【0087】
次に、図9(d)・(e)・(f)に示すように、プレハブマンホールPを吊り上げて、前方に移動させ、プレハブマンホールPの他方側に位置している2本のワイヤーWが切梁Hに近接した状態で、プレハブマンホールPを地面に降ろす。
【0088】
次に、図9(g)に示すように、切梁Hに近接した他方側に位置している2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPのアンカー2から取り外す。
【0089】
次に、図9(g)(h)に示すように、切梁Hを跨ぐように、他方側に位置している2本のワイヤーWを前方に移動させ、2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPのアンカー2に、再度掛け止めする。
【0090】
最後に、図9(h)(i)に示すように、プレハブマンホールPを吊り上げて、前方に移動させ、所定の場所に設置するのである。
【0091】
この様な工程を実施することにより、ワイヤーWが切梁Hを避けながらプレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)ことが可能となり、既に設置されているプレハブマンホールPの端面に、他のプレハブマンホールPを容易に接合させることができる。
【0092】
また、このプレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)とき、地面に降ろしている状態のプレハブマンホールPにおいて、4本のワイヤーWのうちの2本のワイヤーWが、必ずプレハブマンホールPのアンカー2に接続されていることから、プレハブマンホールPが転倒してしまう事態の発生を確実に防止している。
【0093】
この様に、切梁Hを避けながらプレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)場合にも、プレハブマンホールPの側壁部に取り付けているアンカー2を利用してプレハブマンホールPを吊り上げるのであるが、プレハブマンホールPを設置する場所において、その幅スペースが非常に狭くなっており、作業員がプレハブマンホールPの側壁部の近傍でワイヤーWの掛止体3をアンカー2から取り外し、アンカー2に掛け止めする作業を実施し難い場合には、プレハブマンホールPを構成する天壁にも、アンカー2を取り付けておくと良い。
【0094】
具体的には、図10に示すように、プレハブマンホールPを構成する矩形状の天壁において、天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカー2を取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカー2を取り付けておくのである。
【0095】
尚、アンカー2は、天壁を形成する他方の対角部のそれぞれにアンカー2を取り付けも良い。
【0096】
そして、図11に示すように、水平部材12の両端部に2本ずつ取り付けている計4本のワイヤーWの内、2本のワイヤーWのみを利用して、プレハブマンホールPを吊り上げるのである。
【0097】
尚、図11乃至図14においては、説明を明確にするために、2本のワイヤーWのみを記載している。
【0098】
そして、図11に示すように、プレハブマンホールPの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカー2に、2本のワイヤーWの掛止体3を掛け止めしている状態と、図12に示すように、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれに位置しているアンカー2に、2本のワイヤーWの掛止体3を掛け止めしている状態を適宜維持して、切梁Hを避けながら、プレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)のである。
【0099】
具体的には、まず、図13(a)に示すように、2本のワイヤーWの掛止体3を、プレハブマンホールPの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカー2に掛け止めしてプレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)。
【0100】
そして、図13(b)に示すように、2本のワイヤーWが切梁Hに近接した状態で、プレハブマンホールPを地面に降ろす。
【0101】
次に、プレハブマンホールPの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカー2に掛け止めしている掛止体3を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す。
【0102】
次に、図13(c)に示すように、一方の掛止体3を、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカー2に掛け止めし、他方の掛止体3を、切梁Hを跨ぐように前方に移動させ、天壁を形成する対角部の他方側に位置しているアンカー2に掛け止めする。
【0103】
そして、水平部材11が切梁Hと交差するように斜めに配置した状態で、プレハブマンホールPを吊り上げて、図14(a)に示すように、前方に若干移動させ、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカー2に掛け止めしている一方のワイヤーWが切梁Hに近接した状態で、プレハブマンホールPを地面に降ろす。
【0104】
次に、天壁を形成する対角部に位置しているそれぞれのアンカー2に掛け止めしている掛止体3を取り外し、図14(b)に示すように、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカー2に掛け止めしていた一方の掛止体3を、切梁Hを跨ぐように前方に移動させ、両掛止体3を、プレハブマンホールPの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカー2に再度掛け止めする。
【0105】
この状態において、図14(c)に示すように、プレハブマンホールPを吊り上げて前方に移動させ、切梁Hを避けながら、プレハブマンホールPを水平方向に移動させる(横引き)のである。
【0106】
尚、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良・変形等は、本発明に全て包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、コンクリート基礎等の据付場所に複数のプレハブマンホールを設置して管路マンホールを布設・構築するために使用されることの他に、種々の建造物を布設・構築する際の吊り上げ治具と吊り上げ工法として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
P…プレハブマンホール
Q…運搬車輌
S…梯子
T…移動用鋼棒
K…フック
F…フック
W…ワイヤー
1…吊り上げ治具
2…アンカー
2a…棒体
2b…頭部
3…掛止体
3a…カプラー
3c…接続片
3e…爪部
3f…孔
3g…開口部
4…窪み部
5…開口部
6…長孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角筒状に形成されているプレハブマンホールを、プレハブマンホールに取り付けているアンカーを介して吊り上げるための、プレハブマンホール用の吊り上げ治具であり、
クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材と、水平部材の両端部にそれぞれ2本ずつ取り付けたワイヤーにより構成され、
個々のワイヤーの先端部に、プレハブマンホールのアンカーに掛け止めする掛止体を備えている、プレハブマンホール用の吊り上げ治具。
【請求項2】
水平部材は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成され、その短辺が立設するように板片を配置し、板片の長手方向における両側面に、補強用リブが設けられている請求項1に記載のプレハブマンホール用の吊り上げ治具。
【請求項3】
プレハブマンホールに取り付けているアンカーは、所定の長さの棒体の先端部に、薄板円形状の頭部を取り付けて形成し、棒体の基端部が、プレハブマンホールに設けている窪み部に固定されており、
このアンカーに掛け止めするワイヤーの掛止体は、ワイヤーの先端部に取り付けた、端部に略円形の孔を有する接続片と、接続片の孔に回転可能に取り付けた中空円環状のカプラーにより構成され、
カプラーの周面に、アンカーの頭部を挿入する開口部を設け、この開口部に、幅狭な長孔を連設している請求項1または2に記載のプレハブマンホール用の吊り上げ治具。
【請求項4】
カプラーの開口部に隣接するように、爪部を設けている請求項3に記載のプレハブマンホール用の吊り上げ治具。
【請求項5】
プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールに対し、請求項1ないし4に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法。
【請求項6】
プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、その切梁を避けるために、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、プレハブマンホールの他方側の2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
切梁に近接した他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように他方側の2本のワイヤーを前方に移動させ、他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに、再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施する、請求項1ないし4に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用したプレハブマンホールの吊り上げ方法。
【請求項7】
プレハブマンホールを構成する矩形状の天壁において、天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカーを取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカーを取り付けている場合において、水平部材の両端部に取り付けている2本のワイヤーを利用し、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしてプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、その切梁を避けるために、
2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしている掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
一方の掛止体を、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めし、他方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、天壁を形成する対角部の他方側に位置しているアンカーに掛け止めする工程、
水平部材が切梁と交差するように斜めに配置した状態で、プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしている一方のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
天壁を形成する対角部に位置しているそれぞれのアンカーに掛け止めしている掛止体を取り外す工程、
天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしていた一方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、両掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施する、請求項1または2に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用したプレハブマンホールの吊り上げ方法。
【請求項1】
角筒状に形成されているプレハブマンホールを、プレハブマンホールに取り付けているアンカーを介して吊り上げるための、プレハブマンホール用の吊り上げ治具であり、
クレーン重機を利用して吊り上げる水平部材と、水平部材の両端部にそれぞれ2本ずつ取り付けたワイヤーにより構成され、
個々のワイヤーの先端部に、プレハブマンホールのアンカーに掛け止めする掛止体を備えている、プレハブマンホール用の吊り上げ治具。
【請求項2】
水平部材は、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部の幅員よりも長い略長方形の板片により形成され、その短辺が立設するように板片を配置し、板片の長手方向における両側面に、補強用リブが設けられている請求項1に記載のプレハブマンホール用の吊り上げ治具。
【請求項3】
プレハブマンホールに取り付けているアンカーは、所定の長さの棒体の先端部に、薄板円形状の頭部を取り付けて形成し、棒体の基端部が、プレハブマンホールに設けている窪み部に固定されており、
このアンカーに掛け止めするワイヤーの掛止体は、ワイヤーの先端部に取り付けた、端部に略円形の孔を有する接続片と、接続片の孔に回転可能に取り付けた中空円環状のカプラーにより構成され、
カプラーの周面に、アンカーの頭部を挿入する開口部を設け、この開口部に、幅狭な長孔を連設している請求項1または2に記載のプレハブマンホール用の吊り上げ治具。
【請求項4】
カプラーの開口部に隣接するように、爪部を設けている請求項3に記載のプレハブマンホール用の吊り上げ治具。
【請求項5】
プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールに対し、請求項1ないし4に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用した、プレハブマンホールの吊り上げ方法。
【請求項6】
プレハブマンホールのアンカーは、プレハブマンホールを構成する左右の側壁部のそれぞれにおいて、プレハブマンホールの重心位置よりも上側で、作業員の手が届く高さの位置に、所定の間隔を開けて2個のアンカーが水平に取り付けられているプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、その切梁を避けるために、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの移動方向側に位置する2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように2本のワイヤーを前方に移動させ、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、プレハブマンホールの他方側の2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
切梁に近接した他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
切梁を跨ぐように他方側の2本のワイヤーを前方に移動させ、他方側の2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールのアンカーに、再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施する、請求項1ないし4に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用したプレハブマンホールの吊り上げ方法。
【請求項7】
プレハブマンホールを構成する矩形状の天壁において、天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれにアンカーを取り付けると共に、天壁を形成する一方の対角部のそれぞれにアンカーを取り付けている場合において、水平部材の両端部に取り付けている2本のワイヤーを利用し、2本のワイヤーの掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしてプレハブマンホールを水平方向に移動させる(横引き)場合、その移動方向において、プレハブマンホールを吊り上げているワイヤーが切梁に当たってしまう場合、その切梁を避けるために、
2本のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに掛け止めしている掛止体を、プレハブマンホールのアンカーから取り外す工程、
一方の掛止体を、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めし、他方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、天壁を形成する対角部の他方側に位置しているアンカーに掛け止めする工程、
水平部材が切梁と交差するように斜めに配置した状態で、プレハブマンホールを吊り上げて、前方に若干移動させ、天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしている一方のワイヤーが切梁に近接した状態で、プレハブマンホールを地面に降ろす工程、
天壁を形成する対角部に位置しているそれぞれのアンカーに掛け止めしている掛止体を取り外す工程、
天壁を形成する対角部の一方側に位置しているアンカーに掛け止めしていた一方の掛止体を、切梁を跨ぐように前方に移動させ、両掛止体を、プレハブマンホールの天壁を形成する一対の短辺の中央部近傍のそれぞれに位置しているアンカーに再度掛け止めする工程、
プレハブマンホールを吊り上げて、前方に移動させる工程、を実施する、請求項1または2に記載されたプレハブマンホール用の吊り上げ治具を使用したプレハブマンホールの吊り上げ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−82645(P2012−82645A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231102(P2010−231102)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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