説明

プレバイオティック効果の分析

(a)試験繊維又は試験物質による糞便細菌集団の増殖及び/又は変更に対する効果を評価するか、若しくは定量する段階と、及び(b)前記試験繊維又は試験物質の発酵によって生じる少なくとも1種類の生成物を定量する段階及び/又は前記試験繊維若しくは試験物質の同化率を定量する段階と、を含む前記繊維のプレバイオティック能力を評価するか、若しくは定量する方法又はプレバイオティック物質を同定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレバイオティックを含む栄養組成物又は医薬品組成物を、それらを必要とする個体にもたらす方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患の治療又は予防のための食事療法の介在は、医療サービス提供者の負荷軽減のために強く求められている。このような食事療法の介在の現在の最も有望な標的の1つは、胃腸管である。大腸は、甚だしく多くの生物が存在する消化管領域である。その常在ミクロフローラは、通過時間、排便習慣、吸収及び粘膜機能の制御に関与し、並びに通常の代謝状態において、宿主の健康及び疾患に関係したその他多くの生理学的プロセスに関与するものと思われる。ある種の食品成分を使用することによって、このミクロフローラの構成を変更することは、新たな食品による治療を開発するために魅力ある基盤となる。これによって、プロバイオティック及びプレバイオティックの概念の展開がもたらされた。いずれもビフィズス菌及び乳酸菌などのミクロフローラに有益な成分の増強に基づいている。前者の概念は、生きた微生物の補給物を使用するが、後者はこれらの有益な細菌群の増殖及び/又は活性を選択的に刺激する非消化性食品成分として定義される。
【0003】
プロバイオティックの摂取に起因する健康強調表示は、長い間報告されてきた。しかし、この取り組みの主な問題の1つは、複雑な消化管の生態系にプロバイオティックが残存することである。摂取後、菌種には胃酸、胆汁酸及び様々な酵素などの要素がたちはだかり、並びに大腸に定住する能力、代謝的に活性のある固有の異種微生物叢と競争する能力に直面する。プレバイオティックの使用には、生存能力に代わる問題が横たわるが、プレバイオティックは胃腸管に関係した疾患及び障害の治療又は予防のための栄養的な取り組みを将来的に向上させるための有力な要素として使用されるものと考えられる。
【0004】
プレバイオティックとは、健康に有益な効果を有する非消化性食品成分、例えば、非消化性炭水化物である。食品成分をプレバイオティックとして分類するためには、以下の基準を満たさなければならない。i)胃腸管で加水分解も吸収もされないこと、ii)結腸に片利共生している潜在的に有益な1種又は限られた数の細菌、例えば、乳酸菌及びビフィズス菌によって選択的に発酵され、それらの細菌の増殖が刺激され、かつ/又は代謝的に活性化されるようになること、iii)腐敗菌を減少させながら、例えば、糖分解性種の数を増加させることによって、結腸のミクロフローラをより健康的な構成に改変することができること。結腸細菌によってプレバイオティックが発酵されることによって、短鎖脂肪酸(SCFA)、例えば、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸及び吉草酸、水素並びに二酸化炭素ガスの産生を引き起こすことができる。
【0005】
近年、消費者の側に、食品に対する要求が高まっており、特にプレバイオティック能力を有する機能的食品の開発に興味が持たれている。インビボにおけるヒトの研究によって、特にオリゴ糖、例えば、フルクトオリゴ糖(FOS)を食品に添加すると有益な糞便ビフィズス菌の増加を引き起こすことができることが示された。それにもかかわらず、プレバイオティックとして作用する様々な繊維の有効性を測定し、プレバイオティック能力を比較するための共通の方法はない。
【発明の開示】
【0006】
プレバイオティックを含有する改良栄養組成物を開発することが必要である。そのためには、様々な繊維のプレバイオティック能力の定量及び/又は比較を可能にする方法は特に有用であろう。
【0007】
本発明の一態様では、特に糞便細菌への効果によって、食物繊維、例えば、オリゴ糖などの炭水化物のプレバイオティック能力を評価するために、本発明の方法として本明細書で定義したような比較、標準法を提供する。
【0008】
本発明の具体的な実施形態では、本発明の方法は、糞便細菌、特に有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌の増殖、及び/又は糞便細菌集団の変更、特により健康的な構成への変更に対する試験繊維の効果の評価又は定量を可能にする。
【0009】
本発明の他の実施形態では、本発明の方法は、食物炭水化物、例えば、オリゴ糖の発酵の評価方法、場合によってプレバイオティック効果の比較方法である。
【0010】
本発明の方法は、i)細菌の量、例えば、数、例えば、Log10数、若しくは細菌の増速速度、例えば、最大増殖速度、及び/又はii)基質の同化率、例えば、炭水化物、例えば、オリゴ糖の同化率、及び/又はiii)発酵最終生成物の産生、例えば、乳酸、酢酸、プロピオン酸及び酪酸などの短鎖脂肪酸の産生を測定することによって、細菌変化、例えば、糞便細菌変化の測定値を比較することができる。
【0011】
本発明の一実施形態では、本発明の方法はサブトラクティブ培養法である。
【0012】
本明細書では、「サブトラクティブ培養法」とは、少なくとも以下の段階、1)一定のインキュベーション期間中、例えば、基質又は試験繊維が完全に発酵されるまで、試験繊維の存在下、及び非存在下で並行して糞便細菌培養物をインキュベートする段階、2)試験繊維の存在下、及び非存在下での培養物中の糞便細菌の量、例えば、数、log10数、特に、試験繊維の存在下、及び非存在下での有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌の量、例えば、数、log10数、同一条件下で有益ではない糞便細菌の量、例えば、数、log10数を測定する段階、及び3)試験繊維の存在下、及び非存在下での培養物中の糞便細菌の量、例えば、数、log10数、特に有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌に対して有益ではない糞便細菌の量、例えば、数、log10数を比較する段階を含むことが可能な方法のことである。
【0013】
本発明によるサブトラクティブ培養法の段階3)には、以下の下位段階、3.1)試験繊維の存在下における培養物中の有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌の量、例えば、数から試験繊維の非存在下における培養物中の有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌の量を差し引く段階、3.2)試験繊維の存在下における培養物中の有益ではない糞便細菌の量、例えば、数から試験繊維の非存在下での培養物中の有益ではない糞便細菌の量、例えば、数を差し引く段階、及び3.3)試験繊維のプレバイオティック能力の反映し得る値を得るために段階3.1)で測定した値から段階3.2)で測定した値を差し引く段階を含めることができる。
【0014】
本発明の他の実施形態では、糞便細菌の量の計算は、例えば、増殖速度、例えば、細菌集団の最大増殖速度を計算することで構成され得る。
【0015】
本発明の他の態様では、胃腸管の疾患、例えば、慢性消化管障害、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、結腸癌及び関連障害を制御するのに、例えば、治療、予防又は軽減するのに有効なプレバイオティック含有組成物を設計する方法を提供する。
【0016】
本発明のさらに他の態様では、内在性ビフィズス菌、乳酸菌及び/又は真正細菌の増殖の刺激、及び/又はバクテロイド、クロストリジウム、大腸菌群及び/又は硫酸還元細菌の増殖の阻害に有効なプレバイオティック含有組成物の設計方法を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の態様では、
(a)サブトラクティブ培養法による繊維のプレバイオティック能力の評価、例えば、定量、及び/又はプレバイオティックの同定、並びに
(b)該繊維、例えば、段階(a)で評価及び/又は同定したプレバイオティック及び栄養学的に、若しくは薬剤として許容できる担体を含む栄養組成物若しくは医薬品組成物の調製を含む、プレバイオティックを含有する栄養組成物若しくは医薬品組成物の設計方法を提供する。
【0018】
本発明のさらに他の態様では、本発明の方法によって設計しやすい栄養組成物又は医薬品組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書では、「繊維のプレバイオティック能力」とは、繊維がプレバイオティックとして作用する能力、例えば、有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌、例えば、乳酸菌及びビフィズス菌によって発酵される能力、及び/又は、例えば、有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌の増殖及び/又は代謝の刺激、及び/又は有益ではない、若しくは病原性のある糞便細菌の増殖及び/又は代謝の阻害において、糞便細菌集団をより健康的な構成に変更することができる能力のことである。
【0020】
本発明では、治療を必要とする、ヒトを含めた哺乳類の、慢性胃腸管障害に関連した疾患、状態及び症状などのGI障害、例えば、IBD、特に胃潰瘍、クローン疾患、結腸癌又はIBS又はその症状を治療及び/又は予防するための方法であって、少なくとも1種のプレバイオティックを含む栄養組成物若しくは医薬品組成物を設計し、前記哺乳類に前記組成物の有効量を送達することを含み、例えば、
(a)繊維のプレバイオティック能力の評価、例えば、定量、及び/又はプレバイオティックの同定、
(b)該プレバイオティック、例えば、段階(a)で評価及び/又は同定された繊維及び栄養学的に、若しくは薬剤として許容できる担体を含む栄養組成物若しくは医薬品組成物の調製、並びに、
(c)段階(a)で得られた栄養組成物若しくは医薬品組成物のそれらを必要とする哺乳類への提供から成る方法を提供する。
【0021】
本明細書では、「有効量」という用語は、所望する治療効果、例えば、下痢、便秘若しくはIBDに関連する疾患、状態及び症状、特に、胃潰瘍、クローン病、結腸癌若しくは前述のようなIBSに関連する状態及び症状の治療及び/又は予防を実現するために有効な量のことである。
【0022】
本発明では、段階(a)は試験繊維、若しくは試験繊維の混合物の糞便細菌に対する効果、例えば、糞便細菌増殖及び/又は糞便細菌集団の変化、例えば、糞便細菌の増加及び/又は代謝に対する効果を定量化する段階を含むことができる。したがって、段階(a)は、試験繊維、若しくは試験繊維の混合物が有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌、例えば、乳酸菌及び/又はビフィズス菌の増殖及び/又は代謝活性化を刺激する効果、及び/又は有益ではない、及び/又は有害な糞便細菌、例えば、糖分解性菌及び/又は腐敗菌の増加及び/又は代謝を阻害する効果をモニターして、かつ/又は定量化する段階を含むことができる。好ましくは、このようなモニター及び/又は定量分析は、糞便細菌、例えば、有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌及び有益ではない糞便細菌の増速速度、例えば、最大増殖速度の計算を含むことができる。
【0023】
本発明によれば、このようなモニター及び/又は定量分析は、例えば、単一の炭素源として試験繊維又は試験繊維の混合物を含有し、例えば、糞便試料の形態で糞便細菌を接種した嫌気性バッチ培養において実施することができる。該糞便試料は、健常人及び/又は少なくとも6ヶ月間いかなる抗生物質治療も受けていないヒトから入手することができる。スクロースは、選択性がなく、すなわち、全ての細菌によって発酵され得るので、対照基質として使用することができる。陰性対照として、いかなる基質も含まない培養培地、例えば、いかなる繊維もいかなる糖も含まない培養培地を使用することができる。
【0024】
本発明の一態様では、段階(a)は比較及び標準的方法、例えば、計算方法を含むことができる。
【0025】
本発明の一態様では、段階(a)は試験繊維、若しくは試験繊維の混合物の糞便細菌に対する効果を、他の繊維、例えば、FOSなどの公知のプレバイオティックの同一条件での同一糞便細菌に対する効果と比較する段階を含むことができる。
【0026】
本発明の一態様では、段階(a)は繊維の「プレバイオティック係数」(PI)を決定する方法を含むことができる。PIの基本的概念は、例えば、有益ではない糞便細菌対有益な糞便細菌量など糞便細菌集団によって、細菌に対する繊維の効果を定量化する単一の数を得ることである。
【0027】
該プレバイオティック係数は、例えば、バッチ培養及び/又は発酵容器などを用いる嫌気発酵培養により、i)ビフィズス菌、乳酸菌及び/又は真正細菌などの有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌の量を測定して、例えばlog10集団の増加を集計、次いでその数値にii)クロストリジウム、バクテロイド、大腸菌群及び/又は硫酸還元菌などの有益ではない糞便細菌の量を測定して、log10集団で得られた数値の該減少を添加するあるいは増加を差し引くことによって計算することができる。
【0028】
本発明では、糞便細菌の量、例えば、log10集団は、接種時の細菌数で採取時の細菌数を除することによって決定することができる。
【0029】
以下の式を使用して、プレバイオティック係数を表すことができる。
【0030】
PI=ΔB+ΔL+ΔE−ΔBa−ΔCl−ΔCo−ΔSRB
式中、PI=プレバイオティック係数、Δ=細菌の量(例えば、log10細菌集団、接種時の細菌数で除した採取時の細菌数)、B=ビフィズス菌(例えば、ビフィドバクテリウム種)、L=乳酸菌(例えば、ラクトバチルス種)、E=真正細菌(例えば、ユーバクテリウム レクタレ)、Ba=バクテロイド(例えば、バクテロイデス種)、Cl=クロストリジウム(例えば、ヒストリチカム種、クロストリジウム ココイデス(cocoides)、クロストリジウム ヒストリチカム、クロストリジウム ディフィシレ)、Co=大腸菌群(例えば、E.コリ)及びSRB=硫酸還元菌(例えば、デスルホビブリオ属)。
【0031】
本発明の一実施形態では、細菌量は、繊維存在下での細菌量、例えば、log10細菌集団マイナス繊維非存在下での細菌量、例えば、log10細菌集団に相当し得る。
【0032】
本発明の他の実施形態では、該プレバイオティクス係数は、以下の式、
PI=B/総数+L/総数+E/総数−Ba/総数−Cl/総数−Co/総数−SRB/総数で表すことができ、
式中、「B」、「L」、「E」、「Ba」、「Cl」、「Co」及び「SRB」は前記と同じ意味であり、「総数」は、接種時の糞便細菌の総数を表す。
【0033】
例えば、該プレバイオティクス係数は、参照によりその内容を本明細書に組み込んだR.Palframan他(Letters in Applied Microbiology 2003、37、p.281〜284)(特に、282ページ第1段落第2文節から282ページ第2段落第1文節まで)又は参照によりその内容を本明細書に組み込んだE.Olano−Martin他(Journal of Applied Microbiology 2002、93、p.505〜511)(特に、508ページ最終文節から509ページ第2文節まで)に記載されたように計算することができる。
【0034】
本発明の他の実施形態では、繊維のプレバイオティク係数は、例えば、嫌気性バッチ培養を用いて、有益ではない糞便細菌の増殖速度(例えば、最大増殖速度)に対する糞便細菌、例えば、優勢で有益な糞便細菌の増殖速度、(例えば、最大増殖速度)によって表すことができる。
【0035】
細菌集団の増殖速度は、以下の式、
lnN=lnN+μt
で表すことができ、式中、Nは例えば、時間t後の細菌数であり、
は最初の細菌数であり、
μは、例えば、1時間当たりの比増殖速度である。
【0036】
本発明の一実施形態では、糞便細菌集団の分析、例えば、PIの測定は、細菌の指数増殖期中に計算された増殖速度によって、すなわち、最大増殖速度、すなわち、μmaxによって実施することができる。以下の式、
PI=μmaxB+μmaxL+μmaxE−μmaxBa−μmaxCI−μmaxCo−μmaxSRB
を使用することができ、式中、PI=プレバイオティック係数、μmax=試験繊維(例えば、試験繊維の混合物)の存在下での糞便細菌の最大増殖速度であり、B、L、E、Ba、CI、Co及びSRBは前述の通りである。
【0037】
該プレバイオティック係数は、i)有益な、若しくは潜在的に有益な糞便細菌、例えば、ビフィズス菌、乳酸菌及び/又は真正細菌の増殖速度、例えば、最大増殖速度を合計すること、ii)有益ではない糞便細菌、例えば、バクテロイド、クロストリジウム菌、大腸菌群及び/又は硫酸還元菌の増殖速度、例えば、最大増殖速度を合計すること、及びiii)段階i)で得られた増殖速度から段階ii)で得られた増殖速度を差し引くことによって計算することができる。
【0038】
本発明では、プレバイオティック係数は細菌群全てを同列に組み入れないようにするために重みをつけることができる。
【0039】
プレバイオティック係数は、他の細菌群又は種を考慮に入れることができる。
【0040】
本発明では、プレバイオティック係数は正又は負の値であって良い。PI値(正又は負)の符号は、望ましくない細菌群、例えば、クロストリジウム、大腸菌群、バクテリオイド及び/又は硫酸還元菌に対する所望する細菌群、例えば、ビフィズス菌、乳酸菌及び/又は真正細菌の比によって決定することができる。
【0041】
プレバイオティック係数の範囲は、基質、例えば、オリゴ糖の選択性によって決定することができる。
【0042】
本発明の一実施形態では、前述のようにプレバイオティック係数が0を上回り、0.1、0.2、0.3、0.5を上回るか、若しくは1を上回る繊維は、優れた、若しくは適切なプレバイオティックと見なすことができる。
【0043】
本発明では、段階(a)は、糞便細菌、例えば、有益な、及び潜在的に有益な糞便細菌によって発酵される試験繊維、又は試験繊維の混合物を定量化する段階を含むことができる。発酵させる試験繊維の能力は、例えば、i)発酵最終生成物、例えば、乳酸、プロピオン酸、酢酸、及び/又は酪酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)の産生、及び/又はii)基質同化速度、例えば、繊維分解速度、及び/又はiii)発酵時間、すなわち、繊維が、例えば、有益な、及び潜在的に有益な糞便細菌に発酵される、例えば、完全に発酵されるのに必要な時間によってモニターし、定量化することができる。
【0044】
本明細書では、「基質」という用語は、例えば、培養培地、例えば、バッチ培養又は発酵容器に含めたとき、糞便細菌によって同化され得る任意の分子、例えば、炭水化物、例えば、繊維のことである。
【0045】
本発明の一態様では、本発明による段階(a)は「プレバイオティック効果指標(MPE)」を決定するための方法を含むことができる。MPEの基本的概念は、PIによって測定したように、繊維のプレバイオティック能力、例えば、糞便細菌に対する効果、例えば、糞便細菌の増殖及び/又は糞便細菌集団の変化に対する効果を定量化し、かつ/又は糞便細菌によって発酵されるその能力、例えば、短鎖脂肪酸(SCFA)などの発酵最終生成物の産生を誘導する能力を表す単一の数を得ることである。繊維のプレバイオティック能力、例えば、MPEは、短鎖脂肪酸(SCFA)などの発酵最終生成物の産生をモニターすることによって評価、例えば、定量化することができる。繊維のプレバイオティック能力、例えば、MPEはまた、基質同化速度、例えば、繊維分解速度を分析、例えば、定量化することによって評価、例えば、定量化することができる。繊維のプレバイオティック能力、例えば、MPEはさらに、試験繊維の発酵時間、及び/又は糞便細菌集団増殖と基質濃度、例えば、繊維の濃度との間の関係を分析することによって、評価、例えば、定量化することができる。
【0046】
本発明の他の態様では、
(a)プレバイオティック効果(MPE)の測定値を決定し、場合によって他の繊維、例えば、プレバイオティック、例えば、FOS又はGOSと該試験繊維とを比較すること、
(b)段階(a)で同定された繊維、例えば、プレバイオティック及び栄養学的若しくは薬剤として許容できる担体を含む栄養組成物若しくは医薬品組成物の調製、並びに、
(c)段階(b)で得られた栄養組成物若しくは医薬品組成物を前記哺乳類に提供することを含む、プレバイオティック能力を備えた少なくとも一種の繊維、例えば、少なくとも一種のプレバイオティックを含む栄養組成物若しくは医薬品組成物を設計し、前記栄養組成物を、それらを必要とするヒトを含めた哺乳類に輸送する方法を提供する。
【0047】
本発明では、MPEは、前述のようなプレバイオティック係数を含み、例えば、プレバイオティック係数によって定義されることができる。
【0048】
本発明の他の態様では、MPEは、例えば、糞便細菌集団が対数増殖期の最後であるとき、試験繊維の発酵パターン、例えば、短鎖脂肪酸(SCFA)などの発酵最終生成物の測定値を含み、例えば、それによって定義されることができる。MPEはさらに、SCFAなどの発酵最終生成物の産生と繊維などの基質の濃度との間の関係を含み、例えば、それによって定義されることができる。
【0049】
本発明では、発酵最終生成物の測定値は、例えば、対数増殖期の最終時に、糞便細菌によって産生された酢酸、プロピオン酸、酪酸及び乳酸の質量、例えば産生を計算することを含み、例えば、それによって構成されることができる。以下の式、
SCFA=A+B+P+L
を使用することができ、式中、TSCFA=SCFAの産生、A=産生した酢酸の量、B=産生した酪酸の量、P=産生したプロピオン酸の量及びL=産生した乳酸の量である。
【0050】
本発明では、発酵最終生成物の測定値は、例えば、前述のように、例えば、糞便細菌集団の対数増殖期の最終時に、全SCFA産生、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び乳酸の産生に対する乳酸産生の比を計算することを含むことができ、例えば、それによって構成されることができる。この比は、以下のように計算することができ、
比=dL/dTSCFA
式中、dは初期質量と試料採取時の質量の間の差であり、dL=t時の乳酸量マイナスゼロ時の乳酸量であり、dTSCFA=t時のSCFA、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び乳酸の量マイナスゼロ時のSCFAの量である。
【0051】
本発明のさらに他の態様では、MPEは、例えば、基質同化率の測定によって、基質、例えば、繊維の同化を測定することを含むことができ、例えば、それによって定義されることができる。
【0052】
本発明の一態様では、基質同化の測定は、経時的に基質濃度を測定することによって実施することができる。以下の式を使用することができ、
=S−A
式中、S=時間経過後の基質濃度であり、tは、例えば、時間で表され、S=初期基質濃度であり、A=例えば、細菌集団の指数増殖期中の、例えば、時間当たりの基質同化率である。
【0053】
本発明のさらに他の態様では、MPEは、発酵時間、例えば、繊維の発酵に必要な時間、例えば、完全な発酵に必要な時間の測定を含むことができ、例えば、それによって定義されることができる。MPEは、糞便細菌集団の増殖と基質濃度、例えば繊維濃度との間の関係を含むことができ、例えば、それによって定義することができる。
【0054】
本発明の一実施形態では、該基質同化を決定する式、糞便細菌集団の分析値、例えば、PI及び発酵最終生成物の測定値、例えば、前述したような比は、1つの数字、例えば、MPE値をもたらす1つに式に一緒にすることができる。
【0055】
本発明の他の実施形態では、MPEは以下の式、
【0056】
【数2】

で表すことができ、式中、x=例えば、PIによって測定されたように、試験繊維によって誘導された細菌集団の変化であり、
y=発酵最終生成物の産生量、例えば、SCFAの産生量、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び乳酸の産生量の定量、又は最終生成物産生、例えば、SCFA産生と基質濃度、例えば、繊維濃度との間の関係であり、
z=繊維分解などの基質同化率、例えば、繊維などの基質の濃度と細菌集団増殖との間の関係である。Zは、前述の式で定義することができる。
【0057】
変数yはまた、前述のように、全SCFA産生、例えば、酢酸、酪酸、プロピオン酸及び乳酸に対する乳酸産生の比であることができる。
【0058】
本発明の方法では、正又は負の符号、例えば、同一条件で、繊維ブレンドの同一繊維について計算されたPIの符号を計算したMPE値のものとすることが可能で、すなわち、例えば、FOSについて計算されたMPEの場合のように、正の符号はPIが正である繊維のMPEのものとし、相対して、スクロースについて計算されたMPEの場合のように、負の符号はPIが負である繊維のMPEのものとする。
【0059】
本明細書では、「糞便細菌」とは、有益な、及び潜在的に有益な細菌、例えば、ビフィズス菌、乳酸桿菌、真正細菌及び有益ではない、例えば、有害な、腐敗菌又は病原菌、例えば、バクテロイド、クロストリジウム、大腸菌群、硫酸還元細菌(SRB)を含めた結腸、消化管及び長い腸の片利共生的な常在菌、例えば、糞便に優勢に存在する細菌群のことである。糞便細菌は、単一の細菌種であってよく、又は様々な種の混合物であってもよい。糞便細菌は、天然の材料、例えば、ヒトの、例えば、健常人及び/又は少なくとも6ヶ月間抗生物質を摂取していないヒトの糞便試料から得ることができる。糞便細菌は、精製されていても、されていなくてもよい。
【0060】
本発明の目的では、「繊維」という用語は、繊維、例えば、食物繊維、例えば、可溶性若しくは不溶性の繊維、例えば、加水分解繊維のことである。特に本発明による繊維は、短鎖脂肪酸(SCFA)、例えば、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸及び吉草酸又は水素及び二酸化炭素ガスを産生するために、結腸で発酵を受けることができる。
【0061】
本発明の繊維の例は、フルクトオリゴ糖(オリゴフルクトースとも呼ばれる)(FOS)、グルコオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖(GOS)、グアガム、加水分解グアガム、イソマルトオリゴ糖(IMO)、大豆オリゴ糖(SOS)及びそれらの混合物である。
【0062】
FOSはフルクタンのインシュリン亜種の構成要素である。FOSは、タマネギ、ニンニク、ワケギ、コムギ、ライムギ、バナナ、アスパラガス、トマト、アーティチョーク、ダリア及びチコリ根を含めた多種の植物において天然に生じる。FOSは、酵素的に、化学技術によって、又は天然物質の抽出によって産生することができる。短鎖FOSは、スクロース分子1個に1個から3個のフルクトース分子が結合したものから成り、その重合度(DP)は、6以下で、フルクトース転移酵素を使用してスクロースから合成することができる。スクロースをこれらのフルクトース転移酵素で処理すると、2、3若しくは4個のフルクトース単位を含有するFOS、例えば、1−ケストース、ニストース及びフルクトシル−ニストースの混合物が生じる。インビボにおけるヒトの研究によって、FOSを食事に添加すると、糞便中のビフィズス菌の増加が引き起こされ、非常に効果的なプレバイオティックであることが示された。
【0063】
本明細書では、「FOS」という用語は、FOS及び短鎖FOSを包含する。FOSは、2個から20個の糖単位、例えば、2個から15個の糖単位、さらに、例えば、2個から7個の糖単位又は2個から6個の糖単位を含んでよい。例えば、FOSは、FOSの全重量をベースにして、二糖から五糖を約95%重量含有してよい。
【0064】
オリゴフルクトースは、例えば、ORAFTI(Tienen、Belgium)からActilite、RAFTILOSE&commatとして、例えば、重合度の範囲が2から約7であり、一般的に、(DP)が3.5から4.5である鎖から成るオリゴフルクトースを約95重量%含有し、グルコース、フルコース及びスクロースを合わせて約5重量%含有するRAFTILOSE@P95などの様々な等級で市販されている。
【0065】
本発明では、GOSは、主に糖成分がガラクトースから成り、ベータガラクトシダーゼのラクトースに対する作用によって形成される二糖、三糖、四糖、五糖及び六糖を含むことができる。GOSは、2個から15個の糖単位、例えば、2個から10個の糖単位、さらに例えば、2個から7個の糖単位又は2個から6個の糖単位を含んでよい。例えば、GOSは、GOSの全重量をベースにして、二糖を約0重量%から約45重量%、さらに、例えば、二糖を約10重量%から約40重量%、二糖を約20重量%から約35重量%、又は二糖を約33重量%含有することができる。例えば、GOSは、GOSの全重量をベースにして、三糖を約0重量%から約50重量%、さらに、例えば、三糖を約10重量%から約45重量%、三糖を約20重量%から約40重量%、又は三糖を約39重量%含有することができる。例えば、GOSは、GOSの全重量をベースにして、四糖を約0重量%から約50重量%、さらに、例えば、四糖を約5重量%から約45重量%、四糖を約10重量%から約40重量%、又は四糖を約18重量%含有することができる。例えば、GOSは、GOSの全重量をベースにして、五糖を約0重量%から約30重量%、さらに、例えば、五糖を約1重量%から約25重量%、五糖を約2重量%から約10重量%、又は五糖を約7重量%含有することができる。
【0066】
GOSは、例えば、Vivinal GOS若しくはElix’orGOSの商標名で市販されている。
【0067】
本明細書では、「GOS」という用語は、前記で定義したようなGOS及びtGOSとも称されるトランスガラクトオリゴ糖を包含する。
【0068】
加水分解繊維は、数多くの公知の繊維から得ることができる。好ましい加水分解繊維には、加水分解グアガム、例えば、部分加水分解グアガムが含まれる。本明細書では、加水分解繊維という用語は、従来の方法で、例えば、化学的に、若しくは酵素的に、分子量の減少した繊維に加水分解した繊維を意味し、該加水分解生成物は、所望する1日量で投与するときに適合した管型であることができる。
【0069】
加水分解グアガムの例は、例えば、参照により、本明細書に組み込んだ米国特許第5260279号に記載のBenefiber(登録商標)である。加水分解前では、グアガムの分子量は、約200000であり、加水分解後は20000〜30000である。加水分解グアガムの分子量範囲は変動してよく、好ましくは24kDaと30kDaとの間であってよい。
【0070】
IMO及びSOSは、例えば、それぞれ昭和産業、日本及びカルピス、日本から市販されている。
【0071】
本発明の方法では、嫌気性培養による発酵、例えば、バッチ培養による発酵は、例えば、PI、発酵時間、例えば、細菌増殖に関連した基質同化率、例えば、繊維分解、発酵最終生成物、例えばSCFAの産生、発酵最終生成物と基質濃度との間の関係、全SCFA、若しくは酢酸、酪酸、プロピオン酸及び乳酸に対する乳酸の比、又は前述したMPEを計算して、例えば、細菌増殖若しくは細菌集団の変化を評価し、測定するために使用することができる。
【0072】
バッチ培養による発酵はまた、最小及び最大基質濃度、例えば、繊維、プレバイオティック能力、例えば、試験基質の組み合わせ、例えばFOS:GOS、例えば、FOS:GOS(50:50)、FOS:Benefiber(登録商標)、例えば、FOS:Benefibier(登録商標)(90:10)、及びGOS:Benefiber(登録商標)、例えば、GOS:Benefiber(登録商標)(90:10)などの試験繊維の組み合わせのPI又はMPEを測定するために、本発明の方法に使用することができる。スクロースは、選択性が無く、したがって全ての細菌によって発酵されるので、対照基質として使用することができる。陰性対照として、いかなる基質も含まない培養培地を使用することができる。
【0073】
好ましくは、該バッチ培養による発酵は、バッチ培養の全重量をベースにして、約0.5重量%から約3重量%、例えば、約1重量%から約2重量%、例えば、約1重量%の試験繊維、又は試験繊維のブレンド、例えば、1重量%のFOSの存在下で実施する。
【0074】
本明細書では、「バッチ発酵培養」とは、糞便スラリーを接種し、試験繊維、若しくは試験繊維のブレンド、若しくはスクロースを含有する嫌気性培養のことである。本発明の方法では、バッチ発酵培養の栄養培地は、任意の糞便細菌を添加する前に、例えば、一晩、酸素を含まない窒素を供給することができ、該培地に、例えば、流速15ml/分で、例えば、Oを含まないNを継続的に散気して、継続的に酸素を含まない窒素環境で維持することができる。
【0075】
本発明の方法では、糞便試料は、ヒト、例えば、健常人、例えば、いかなる胃腸疾患の病歴もないヒト、及び/又は少なくとも6ヶ月いかなる抗生物質も摂取していないヒトから採取することができる。該糞便試料は、嫌気性緩衝液で、例えば、リン酸0.1Mを含有し、pH7.4の嫌気性リン酸緩衝液で、例えば、約1/10に希釈することができる。該糞便試料は、ホモゲナイズすることができる。
【0076】
糞便細菌培養のインキュベーションは、約100mlと500mlとの間、例えば、約100mlと400mlとの間、例えば、約150mlと300mlとの間、例えば、約150mlを含む量で実施することができる。好ましくは、該インキュベーション量は、約150ml、又は約250ml、又は約300ml、例えば、270mlであってよい。
【0077】
培養温度は、約35℃と42℃との間に含まれることができ、好ましくは、約37℃であることができる。
【0078】
培養pHは、6.5と7との間、好ましくは、約6.8に含まれることができる。
【0079】
糞便細菌培養のインキュベーションは、基質、例えば、繊維が発酵するまで、例えば、完全に発酵するまで、実施することができる。インキュベーション期間は、約24時間であってよい。
【0080】
本発明では、結腸内の試験物質、例えば、繊維、例えば、繊維の組み合わせの存在を評価するために、それぞれの基質、例えば、繊維の細菌増殖及び/又はSCFA産生への効果を評価するために、腸管モデル実験、例えば、3段階サーモスタット実験をまた使用することができる。腸管モデルは、突然死被害者の消化管内容物に対して検証されたところ、大腸の様々な領域における細菌組成及び作用に非常によく類似している。腸管モデルでは、発酵期間は少なくとも1日間及び約15日まで、例えば、1日と11日との間、例えば、10日と11日の間継続することができる。
【0081】
本発明の方法では、細菌集団の増殖及び変化は、蛍光インサイツハイブリッド形成法(FISH)、蛍光色素で標識した16SrRNAオリゴヌクレオチドプローブを使用した培養に依存しない分子技術によって測定することができる(表1)。FISH法によって、環境試料において生体位で細菌細胞全体の視覚化及び局在化が可能である。このような方法は当業者には容易にわかることを理解されたい。
【0082】
本発明の方法では、SCFAの産生は、当業者に容易に知られている技術、例えば、HPLCによって測定することができる。
【0083】
本発明の方法では、全炭水化物含量の測定値、例えば、基質濃度の測定値は、フェノール−硫酸測定法によって測定することができる。該測定法は、例えば、0から0.15mg/mlの範囲のD−グルコース標準物で較正することができる。このような方法は当業者には容易にわかることを理解されたい。
【0084】
本発明の一態様では、適切なプレバイオティック、例えば、前述したようにプレバイオティック係数が0を上回り、例えば、正で、例えば、0.5を上回り、例えば、1を上回る繊維を含有する栄養組成物又は医薬品組成物を提供する方法を提供する。
【0085】
本発明では、栄養組成物とは、栄養調製乳、一般的な健康促進製品、食品補助食品、機能性食品、飲用製品又は食品添加物のことである。このような栄養組成物は、栄養的に完全であることが可能で、すなわち、ビタミン、無機質、窒素などの微量成分、炭水化物及び脂肪酸源を含むことが可能で、したがって、それらはビタミン、無機質、炭水化物、脂肪酸、蛋白質などの1日に必要な量の本質的に全て供給する単一の栄養源として使用することができる。該栄養組成物はまた、低カロリー調製物、例えば、低カロリー食品代替物の形態であってよい。
【0086】
本発明の方法によって設計できる組成物は、経口又は経管栄養法に適し得る。
【0087】
該栄養組成物の適切な製品組成には、溶液、すぐに消費できる組成物、例えば、すぐに飲むことができる組成物、インスタント飲料、清涼飲料、ジュース、スポーツ飲料、乳飲料、ミルクセーキ、ヨーグルト飲料又はスープなどの液体食料品が含まれる。このような組成物はまた、本発明の方法に従って、水又はミルク若しくはフルーツジュースなどのその他の液体で希釈するために、濃縮物、粉末、顆粒、例えば、発泡顆粒の形態で設計することができる。
【0088】
医薬品組成物は、ソフトジェル、サシェ、粉末、シロップ、液体懸濁物、乳剤、液剤、硬質カプセル又は軟質カプセル、ゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤から成る密封カプセルの形態で提供することができる。
【0089】
本発明の方法によって設計される組成物に含有される繊維、例えば、プレバイオティックの量は、投与の目的、個々の対象の年齢、性別及び体重並びに対象の症状の重症度を含めた様々な関連要因を考慮して決定することができる。
【0090】
本発明の方法によって設計される組成物はまた、生体活性化合物若しくは健康に有益であることが知られている抽出物、特にプレバイオティック、グルタミン/グルタミン酸又はそれらの前駆体などの胃腸管に有益な影響を及ぼす化合物若しくは好ましくは天然由来のマンナン、ガラクツロン酸オリゴマーを含めた胃腸管の上皮壁への細菌付着を阻害する化合物を含むことができる。
【実施例】
【0091】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示することができる。
【0092】
特に記載がなければ、化学物質及び試薬は全て、Sigma−Aldrich Co.Ltd.(Poole−UK)又はBDH Chemicals Ltd.(Pool、UK)から入手する。必要であれば、培養pHはHCl 1M又はNaOH 1Mで調節する。滅菌は、121℃で15分間加圧滅菌することによって実施する。
【0093】
フルクトオリゴ糖(FOS)は、Actilight 950P(登録商標)、Eridania Beighin Meiji、Neuilli sur Seine、フランス(オリゴ糖含有率95%)である。
【0094】
トランスガラクトオリゴ糖(GOS)は、Elix’or(登録商標)Borculo Domo、オランダ(tGOS58%、グルコース19%、乳糖19%、ガラクトース0.8%、水分3%を含有)である。
【0095】
部分加水分解グアガム(PHGG)は、Novartis Nutrition CorporationのBenefibre(登録商標)又はTaiyo Kaguku Co.、四日市、日本のSunfiber(HM1)である。
【0096】
イソマルトオリゴ糖(IMO)は、昭和産業、日本から入手する。
【0097】
大豆オリゴ糖(SOS)は、カルピス、日本から入手する。
【0098】
(1)糞便試料の調製及び収集
糞便試料は、健常人ボランティアから採取する。ボランティアは、試験前に少なくとも6ヶ月間抗生物質を処方されておらず、胃腸疾患の病歴が無いことが必要である。該試料は、その場で収集し、収集後すぐに使用する。嫌気性リン酸緩衝液(0.1M、pH7.4)で1/10に希釈したものを調製し、該試料をストマッカーで2分間ホモジナイズする。
【0099】
(2)実施例1:バッチ発酵
滅菌済み撹拌バッチ培養発酵容器(容量300ml)に基礎栄養培地(ペプトン水 2g/l、酵母抽出物 2g/l、NaCl 0.1g/l、KHSO 0.04g/l、KHPO 0.04g/l、MgSO.7HO 0.01g/l、CaCl.6HO 0.01、NaHCO 2g/l、Tween80 2ml、Hemin 0.02g/l、ビタミンK 10μl、システインHCl 0.5g/l、胆汁塩(グリココール酸ナトリウム及びタウロコール酸ナトリウム)0.5g/l、pH7.0)135mlを充填し、酸素を含まない窒素で一晩散気する。糞便スラリーを添加する前に、試験する基質0.25%、0.5%又は1%(w/v)を種々の容器に添加し、培養温度は循環型水槽によって37℃に設定し、培地のpHはElectrolab pH制御装置を使用して6.8に維持する。該容器に新鮮な糞便スラリー(1/10w/v)15mlを接種し、流速15ml/分でOを含まないNを連続的に散気する。インサイツハイブリッド形成法(FISH)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるSCFAの分析及びアッセイによる全炭水化物測定のために各容器の試料(3ml)を採取する。バッチ培養は24時間実施し、試料は12時間まで2時間毎に採取し、その後は15時間目と24時間目に採取する。
【0100】
2.1.細菌の計数:蛍光インサイツハイブリッド形成法(FISH)
細菌集団の違いは、16SrRNAの診断領域を標的とするために設計されたオリゴヌクレオチドプローブでFISHを使用して評価する。これらは、商用に合成されており、蛍光色素Cy3(Eurogentec UK Ltd)で標識されている。使用した分子プローブを表1に示す。
【0101】
【表1】


全細菌数については、核酸染色4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を使用する。発酵容器から採取した試料を4%(w/v)パラホルムアルデヒドで希釈し、4℃で一晩固定する。次に、該細胞を1500xgで5分間遠心し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、0.1M、pH7.0)で2回洗浄し、PBS/99%エタノール(1:1w/v)の混合物に再懸濁し、−20℃で少なくとも1時間保存する。Lab158プローブについては、細胞透過性を増大させる薬剤を含有する酵素混合物に試料をさらに再懸濁し、37℃で1時間インキュベートする。次に、細胞をPBSで洗浄し、100%メタノールで再懸濁し、−20℃で少なくとも1時間保存する。次に、細胞懸濁液を該ハイブリッド形成混合物に添加し、適切な温度で各プローブとハイブリッド形成させるために一晩放置する。ハイブリッド形成された混合物は0.2μmイソポア膜フィルター(Millipore Corporation、Herts、UK)を使用して真空濾過する。該フィルターを取り除き、SlowFade(Molecular Probes、Eugan、OR、USA)と共にスライドガラスに載せ、蛍光顕微鏡で調べる(Nikon Eclipse、E400)。DAPI染色細胞をUV光で調べ、ハイブリッド形成細胞はDM510フィルターを使用して確認する。糞便試料は、それぞれの基質1%(w/v)とインキュベートする。24時間後に試料を採取する。それぞれのスライドについて、視野の少なくとも15カ所の異なる領域を計数する。微生物数は、log10細胞/mlで表す。
【0102】
2.1.1.PI
PIは以下の式、PI=ΔB+ΔL+ΔE−ΔBa−ΔCl−ΔCo−ΔSRBで計算し、式中、Δ=試験繊維存在下での細菌量マイナス試験繊維非存在下での細菌量、B=ビフィドバクテリウム属、L=乳酸菌、E=ユーバクテリウム レクタレ、Ba=バクテロイド属、Cl=クロストリジウム ココイデス及びクロストリジウム ヒストリチカム、Co=エシェリヒア コリ及びSRB=デスルホビブリオ属である。
【0103】
【表2】

tGOSは、バクテリオイド属及びユーバクテリウム レクタレ/クロストリジウム ココイデス群を抑えてビフィドバクテリウム属で最高の増殖速度を示し、E.コリで最低の増加を示している。FOSはまた、ビフィズス菌で高い増殖速度をもたらすが、クロストリジウム ヒストリチカム群及びE.コリでも高い増殖速度が認められる。PHGG(Benefiber(登録商標))は、バクテリオイド属及びE.コリで高い増殖速度をもたらし、スクロースと比較したとき、ビフィズス菌に正の効果をもたらす。
【0104】
2.1.2.PI
PIは以下の式、
PI=μmaxB+μmaxL+μmaxE−μmaxBa−μmaxCl−μmaxCo−μmaxSRBで計算し、式中、μmax=細菌の最大増殖速度、B=ビフィドバクテリウム属、L=乳酸菌、E=ユーバクテリウム レクタレ、Ba=バクテロイド属、Cl=クロストリディウム ココイデス及びクロストリジウム ヒストリチカム、Co=エシェリヒア コリ及びSRB=デスルホビブリオ属。
【0105】
1%(w/v)の以下の基質を使用する。:スクロース、グアガム、FOS、tGOS、Benefibre(登録商標)、Sunfiber、FOSとBenefiber(登録商標)(90/10)の組み合わせ、tGOSとBenefiber(登録商標)(90/10)の組み合わせ及びFOSとtGOS(50/50)の組み合わせ。
【0106】
【表3】

様々な基質について別のPI値が得られる。スクロース、グアガム、Sunfiber及びBenefiber(登録商標)は全て負の値であるが、残りの基質及び組み合わせの評価は正である。正又は負のPI値は、あまり所望しない細菌群に対する所望する細菌群(この場合では、ビフィズス菌、乳酸菌及び真正細菌)の割合によって決定する。PI値の範囲は、各基質の選択性によって決定される。例えば、グアガム及びBenefiber(登録商標)はいずれも、負の値を有するが、グアガムは評価した細菌群のほとんどで増殖を支持し、一方、Benefiber(登録商標)は、主にバクテロイドの増殖及びビフィドバクテリウムのある程度の増殖を支持する。グアガムは、選択性が低く、したがって、Benefiber(登録商標)よりもPI値がずっと低い。同様に、tGOS及びSOSはいずれも正のPI値を有する。tGOSは、ビフィズス菌増殖にほとんど限定的に選択的であり、PIが非常に高い。SOSは、ビフィズス菌及び乳酸菌の両方の増殖を支持するが、E.コリ及びクロストリジウムもまた支持し、したがって、PI値はtGOSよりもずっと低い。
【0107】
2.2 SCFA産生の分析
発酵におけるコハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸及び吉草酸の産生は、HPLCによって定量する。試料を1500xgで15分間遠心して、得られた上清を注入に使用する。組込オーブン部分(50℃)及びデータ系を装備した1050モデルUVHPLC(Hewlett Packard)を示差屈折計(Knauer)と組み合わせて使用する。試料注入は、自動試料採取器を使用して実施し、量は20μlである。カラムは、予め充填されたAminex HPX−87−H強カチオン交換樹脂カラム(150x7.8mmI.D.)で、イオン除去ミクロガード詰め替え用カートリッジ(Bio−Rad Labs、USA)を装着している。使用した溶出液は、硫酸0.005Mである。糞便試料は、バッチ培養系において、37℃で、基質1%(w/v)を含有する基礎栄養培地135mlと共にインキュベートする。試料は、10時間までは2時間毎に採取し、その後は15時間目と24時間目に採取する。データは示さない。
【0108】
次に、対数増殖期終了時に(FOS、FOS/PHGG−Benefiber(登録商標)、グアガム及びPHGG−Sunfiberの場合10時間、スクロース、tGOS、tGOG/FOS、tGOS/PHGG−Benefiber(登録商標)、IMO及びSOSの場合8時間、PHGG−Benefiber(登録商標)の場合15時間)全SCFA産生に対する乳酸の比を計算する。
【0109】
結果:スクロース、PHGG−Benefiber(登録商標)、グアガム、PHGG−Sunfiber及びIMO発酵では、乳酸産生は低く、これらの基質について計算された比は非常に低い。FOS、tGOSは、それら自体でも、SOSとの組み合わせでも高い比が生じ、これらの基質は乳酸産生細菌の増殖を支持することを示している。
【0110】
2.3.全炭水化物アッセイによる全糖の測定
フェノール−硫酸アッセイを、グルコース同等物で表した全炭水化物含量の測定のために使用する。該アッセイは、0から0.15mgml−1の範囲のD−グルコース標準物で較正する。450nmの吸光度の測定は、分光計を使用して行い、標準線に対してプロットする。こうして、全炭水化物含を計算する。
【0111】
糞便試料は、バッチ培養系において、37℃で、基質0%(w/v)、0.25%(w/v)、0.5%(w/v)及び1%(w/v)並びに基礎栄養培地135mlと共にインキュベートする。試料は、10時間までは2時間毎に採取し、その後は15時間目と24時間目に採取する。図1は、1%(w/v)スクロース、グアガム、FOS及びtGOSについてのこのような測定の例を示す。
【0112】
同化率は、以下の式:St=So−Art
で計算し、式中、St=時間で表した時間t後の基質濃度(スクロース、Benefiber(登録商標)及びFOSについては2時間と8時間との間、tGOSについては4時間と8時間との間で2時間毎に測定する)であり、So=培養物の全重量をベースにして1重量%であり、Ar=細菌の指数増殖期の時間当たりの基質同化率である。
【0113】
【表4】

各発酵容器に存在する全炭水化物の濃度を測定することによって、様々な基質の間の発酵時間の変動が示される。tGOS次いでtGOS/FOSは発酵が速く、一方単独及びFOS又はtGOSのいずれかと組み合わせたPHGG−Benefiber(登録商標)次いでPHGG−Sunfiberは発酵が遅い。A値はスクロース及びFOSで同様で、すなわちA=1.40で、これら2種類の基質の発酵時間は同様であることを示している。
【0114】
2.4.MPE値
得られた3種類の値(PI、A及び比)は、以下の式
【0115】
【数3】

を使用して、MPE値を計算するために使用し、式中、x=PI(2.1.2節に基づいて計算)、y=全SCFAに対する乳酸の比(2.2節に基づいて計算)及びz=A(2.3節に基づいて計算)である。乳酸産生が最大の時点、すなわち、スクロース及びGOSでは約8時間、FOSでは約10時間で、乳酸の比を計算する。MPEの正又は負の値は、PI値によって決定する。
【0116】
結果(前記の表4)
同様の、及び/又は異なる基質の比較を実施することができる。例えば、スクロース及びグアガムの場合、PI値は同様で、スクロースではA値が高いためMPEは低い。同じく、IMO及びSOSは、PI及びAr値が同様で、SOSはIMOよりも乳酸産生細菌の増殖をより支持し、その比が高いので、SOSのMPEは高い。ここで得られたMPE値は、tGOS/FOSの組み合わせ、次いでtGOS及びFOSが試験基質の最良のインビトロプレバイオティック効果を生じることを示している。
【0117】
(3)実施例2:インビトロの腸管モデル
3段階連続発酵槽(Macfarlane他、1998)で、試験する基質1%(w/v)を含まない、及び含む増殖培地に健常人ボランティアから得た糞便ホモジネート10%(w/v)を接種して結腸の状態を再現する。該モデルは、3種類の容器、V1、V2及びV3から成り、それぞれの操作量は270ml、300ml及び300mlである。温度は37℃に設定し、pHと共に自動的に制御する。3種類の容器の培養pHは、それぞれ、5.5、6.2及び6.8に維持する。各容器は磁石によって撹拌し、Oを含まないNを連続的に散気することによって(15ml/分)嫌気性条件下に維持する。該増殖培地は、以下の成分を含有する。澱粉8g/l、ムチン4g/l、カゼイン3g/l、ペプトン水5g/l、トリプトン水5g/l、胆汁N3 0.4g/l、酵母4.5g/l、FeSO 0.005g/l、NaCl 4.5g/l、KCl 4.5g/l、KHPO 0.5g/l、MgSO.7HO 1.25g/l、CaCl.6HO 0.15g/l、NaHCO 1.5g/l、Tween80 1ml、ヘミン0.05g/l、システイン.HCl 0.8g/l。該培地をペリスタポンプでV1に送り、一連の管によってV1から連続してV2及びV3に供給する。該系は、滞留時間約36時間で操作する。該腸管モデルは、平衡化するために培地ポンプのスイッチを入れる前に一晩放置し、試験する基質を含有する培地を導入する前に10.5日間操作し、次にさらに10.5日間状態を保つ。各過程の開始時及び終了時に試料を採取する。取り出す試料の量は、5mlで、この量をSCFA分析、FISH及び全炭水化物測定に使用する。
【0118】
3.1.蛍光インサイツハイブリッド形成法(FISH)
糞便試料は、それぞれの基質1%(w/v)とインキュベートする。21日後に試料を採取する。それぞれのスライドについて、視野の少なくとも15カ所の異なる領域を計数する。微生物数は、log10細胞/mlで表す。
【0119】
PIは以下の式
PI=ΔB+ΔL+ΔE−ΔBa−ΔCI−ΔCo−ΔSRB
で計算し、式中、Δ=試験繊維存在下での細菌量マイナス試験繊維比存在下での細菌量、B=ビフィズス菌、L=乳酸菌、E=ユーバクテリウム、Ba=バクテロイド、Cl=クロストリジウム、Co=E.コリ及びSRB=デスルホビブリオ。
【0120】
全PIは、各容器のPIを合計することによって計算する。これらの値の基準線は、腸管モデル培地である。
【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

結果:バッチ培養及び腸管モデルの両方から、tGOSは最良の効果を有するようである。tGOS及びFOSは、バッチでも、腸管モデルでも同様のPIである。
【0123】
3.2.SCFAの分析
同様の方法をバッチ発酵にも使用する。基質として1%(w/v)の部分加水分解グアガム(PHGG)(Benefiber(登録商標))、FOS(Actilight)及びtGOS(Elix’or)を含有する腸管モデルのHPLCによって測定したSCFAプロフィールをそれぞれ、図2、3及び4に示す。該腸管モデルを最初に腸管モデル培地と共に10.5日間操作し、その後培地に基質を添加して、腸管モデルをさらに10.5日間操作する。該モデルの3種類の容器は、pH5.5、pH6.2及びpH6.8の
【0124】
【化1】

である。
【0125】
結果:一般的に、乳酸産生はいずれの容器でも低く、調べた全基質の中でも低い。唯一増加が認められたのは、最初の容器にFOSを添加したときである(図3a)。同様に、酢酸産生は、FOSを含有する腸管モデルの第1の容器においてのみ増加しており(図3a)、PHGGを含有する第1の容器では減少しており(図2a)、その他では変化がない。培地にFOS及びtGOSを添加すると、いずれの容器においてもプロピオン酸の産生に影響は見られず、一方PHGGを添加すると3種類の容器全てにおいてプロピオン酸の産生の増加が引き起こされる。酪酸の産生は、3種類の容器全てにおいてtGOS及びPHGGを添加すると増加している。FOSを添加してもどの容器においても酪酸産生に影響はない。一般的に、SCFAプロフィールによって、tGOS及びPHGGの両方は特に、3種類の容器全てにおいて影響を及ぼすが、FOSは第1の容器に最も顕著な影響を及ぼし、第2及び第3の容器ではほんのわずかな影響しか及ぼさないことが示される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】pH制御されたバッチ式撹拌培養における残存基質濃度を総炭水化物アッセイによって測定して示した図である。
【0127】
【化2】


【図2】基質として1%(w/v)部分加水分解グアガム(PHGG)を含有するインビトロ胃腸管モデルモデルにおけるSCFA産生をHPLCで測定して示した図である。
【図3】基質として1%(w/v)FOSを含有するインビトロ胃腸管モデルモデルにおけるSCFA産生をHPLCで測定して示した図である。
【図4】基質として1%(w/v)tGOSを含有するインビトロ胃腸管モデルモデルにおけるSCFA産生をHPLCで測定して示した図である。 図2、3、4において、3種類のモデルの容器は、pH5.5、pH6.5及びpH6.8に対応する。
【0128】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)試験繊維若しくは試験物質による糞便細菌集団の増殖及び/又は変更に対する効果を評価若しくは定量する段階、及び
(b)前記試験繊維若しくは試験物質の発酵によって生じる少なくとも1種類の生成物を定量する段階及び/又は前記試験繊維若しくは試験物質の同化率を定量する段階を含む、前記繊維のプレバイオティック能力を評価若しくは定量する方法又はプレバイオティック物質を同定する方法。
【請求項2】
(a)試験繊維又は試験物質による糞便細菌集団の増殖及び/又は変更に対する刺激を評価若しくは定量する段階、
(b)前記試験繊維若しくは試験物質の発酵によって生じる少なくとも1種類の生成物を定量する段階、
(c)前記試験繊維若しくは試験物質の同化率を定量する段階、
(d)以下の式、
【数1】

(式中、xは段階(a)で測定された値であり、yは段階(b)で測定された値であり、zは段階(c)で測定された値である。)
を使用して、プレバイオティック効果指標(MPE)を計算する段階、及び
(e)前記試験繊維若しくは試験物質のプレバイオティック能力をMPEの関数として評価若しくは定量する段階を含む、前記繊維のプレバイオティック能力を評価若しくは定量する方法又はプレバイオティック物質を同定する方法。
【請求項3】
(a)試験繊維若しくは試験物質の存在下で糞便細菌培養物をインキュベートすること、及び
(b)有益な糞便細菌集団の全量及び/又は最大増殖速度を測定すること、及び
(c)前記糞便細菌集団の増殖及び/又は変更に対する効果を段階(b)で測定された値の関数として評価若しくは定量することを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)試験繊維若しくは試験物質の存在下で糞便細菌培養物をインキュベートすること、
(b)有益な糞便細菌集団の全量若しくは全最大増殖速度及び有益ではない糞便細菌集団の全量若しくは全最大増殖速度を測定すること、
(c)プレバイオティック係数を得るために、前記有益な糞便細菌集団の量若しくは全最大増殖速度から前記有益ではない糞便細菌集団の全量若しくは全最大増殖速度を差し引くこと、及び
(d)前記糞便細菌集団の増殖及び/又は変更に対する効果を前記プレバイオティック係数の関数として評価若しくは定量することを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
プレバイオティック係数(PI)の同定及び定量が以下の式、
PI=μmaxB+μmaxL+μmaxE−μmaxBa−μmaxCl−μmaxCo−μmaxSRB
(式中、PI=プレバイオティック係数、μmax=試験繊維存在下での糞便細菌の最大増殖速度、B=ビフィズス菌、L=乳酸菌、E=真正細菌、Ba=バクテロイド、Cl=クロストリディウム、Co=大腸菌群、及びSRB=硫酸還元菌である。)
によって定義される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(a)試験繊維若しくは試験物質の存在下及び非存在下で並行して糞便細菌培養物をインキュベートすること、
(b)一定のインキュベーション期間後、例えば24時間後、前記試験繊維の存在下及び非存在下で培養した前記糞便細菌の量若しくは最大増殖速度を測定すること、
(c)前記試験繊維の存在下での前記糞便細菌の量若しくは最大増殖速度から前記試験繊維の非存在下での前記糞便細菌の量若しくは最大増殖速度を差し引くこと、及び、
(d)前記糞便細菌集団の増殖及び/又は変更に対する効果を段階(c)で測定された値の関数として評価若しくは定量することを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
(a)試験繊維の存在下及び非存在下で同一の糞便細菌培養物をインキュベートすること、
(b)前記試験繊維の存在下及び非存在下で有益な糞便細菌の量若しくは最大増殖速度を測定すること、
(c)前記試験繊維の存在下での前記有益な糞便細菌の量若しくは最大増殖速度から前記試験繊維非存在下での前記有益な糞便細菌の量若しくは最大増殖速度を差し引くこと、
(d)前記試験繊維存在下及び非存在下での有益ではない糞便細菌の量を測定すること、
(e)前記試験繊維の存在下での前記有益ではない糞便細菌の量若しくは最大増殖速度から前記試験繊維非存在下での前記有益ではない糞便細菌の量若しくは最大増殖速度を差し引くこと、
(f)段階(c)で測定された値から段階(e)で測定された値を差し引いてプレバイオティック係数を得ること、並びに
(g)前記糞便細菌集団プレバイオティックの増殖及び/又は変更に対する効果を前記プレバイオティック係数の関数として評価若しくは定量することを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
有益な糞便細菌がビフィズス菌、乳酸菌及び真正細菌の少なくとも1種である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
有益ではない糞便細菌がバクテロイド、クロストリジウム、大腸菌群及び硫酸還元細菌の少なくとも1種である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
試験繊維若しくは試験物質の発酵によって生じた、定量される生成物が、発酵最終生成物、例えば、少なくとも1種の短鎖脂肪酸(SCFA)であり、場合によって、前記発酵最終生成物の定量が全SCFA産生に対する乳酸産生の比によって計算される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
発酵最終生成物の定量がアセタート、ブチラート、プロピオナート及びラクタートの産生に対する乳酸産生の比によって計算される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
試験繊維若しくは試験物質の最大同化率が計算される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
糞便細菌集団が蛍光インサイツハイブリッド形成によって分析される、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
試験繊維若しくは試験物質のプレバイオティック能力を、同一条件で試験された公知のプレバイオティック、例えば、フルクトオリゴ糖の効果と比較する段階を含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
(a)繊維のプレバイオティック能力を請求項1から14のいずれか一項に記載の方法で評価し、場合によって定量すること、
(b)優れたプレバイオティック能力、例えば、公知のプレバイオティックのプレバイオティック活性に匹敵する能力を有する、少なくとも1種の繊維を選択すること、及び
(c)段階(b)で選択されたプレバイオティックと、栄養学的に若しくは薬剤として許容される担体とを含む栄養組成物若しくは医薬品組成物を調製することを含む、プレバイオティックを含有する栄養組成物又は医薬品組成物を設計する方法。
【請求項16】
(a)糞便細菌に対する繊維の効果を定量し、プレバイオティックを同定する手段、
(b)段階(a)で同定されたプレバイオティックと、栄養学的に若しくは薬剤として許容される担体とを含む栄養組成物若しくは医薬品組成物を調製する手段、及び
(c)段階(b)で得られた栄養組成物又は医薬品組成物を、これを必要とする個体に提供する手段を含む、プレバイオティックを含有する栄養組成物若しくは医薬品組成物を設計し、前記栄養組成物若しくは医薬品組成物を、これを必要とする個体に送達する系。
【請求項17】
手段(a)が請求項1から14のいずれか一項に記載の方法に基づいている、請求項16に記載の系。
【請求項18】
試験繊維がフルクトオリゴ糖、グルコオリゴ糖、ペクチコオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、グアガム、加水分解グアガム及び/又はこれらの混合物である、請求項15に記載の方法又は請求項16若しくは請求項17に記載の系。
【請求項19】
請求項15に記載の方法又は請求項16若しくは請求項17に記載の系によって設計されやすい栄養組成物若しくは医薬品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−507214(P2007−507214A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530071(P2006−530071)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010997
【国際公開番号】WO2005/035781
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】