説明

プレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法

【課題】 スプレー塗装の際の乾燥性が考慮され、塗膜の強度や耐久性が良好なプレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法を提供する。
【解決手段】 PCD(a)、脂環族ジイソシアネート(b)、COOH基含有ジオール(c)を反応させて得られるNCO基末端プレポリマー(A)を中和剤(d)にて中和後、水に乳化させてから、水(e)、低分子ジアミン(f)、及び特定組成の低分子モノアミン(g)にて鎖延長反応及び停止反応させるプレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法において、
鎖延長反応及び停止反応の際の水(e)によるNCO基の消費量が15〜25モル%、低分子ジアミン(f)による消費量が5〜15モル%、及び低分子モノアミン(g)による消費量が60〜80モル%、であることを特徴とする、前記製造方法。より解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリウレタンディスパージョンのい製造方法に関する。更に詳しくは、プレヒートされた基材向けのスプレー塗装に適した水性塗料となる、水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤を多く含有する塗料は、人体への悪影響、爆発火災等の安全衛生上の問題、また、大気汚染等の公害問題を有する。そこで、これらの問題点を改善するため、近年水性システム開発が活発に行われている。一方、ウレタン系塗料は、様々な基材に対して良好な密着性を示す。そこで、水性ウレタン系の塗料の要望が高まっている。
【0003】
特許文献1には、平均ヒドロキシル価・ウレタン基及び尿素基の総含有率・親水基含有量が特定された二成分系の水性ポリウレタン被覆組成物が示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平04−233983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された水性ポリウレタン被覆組成物では、あらかじめプレヒートされた基材にスプレー塗装するための水性塗料として用いた際、乾燥速度がマッチしていないため塗膜の外観不良といった問題が生じることが分かった。
【0006】
本発明は、塗膜強度や耐久性はもちろん、スプレー塗装の際の乾燥性を考慮して検討されたものであり、このような問題が解決された水性ポリウレタンディスパージョンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
(1)ポリカーボネートジオール(a)、脂環族ジイソシアネート(b)、カルボキシル基含有ジオール(c)を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(A)を中和剤(d)にて中和後、水に乳化させてから、水(e)、低分子ジアミン(f)、及びモノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ビス(ヒドロキシアルキル)アミンから選択されるアミノアルコール(g1)及びアルキルモノアミン、ジアルキルモノアミンから選択されるアミン(g2)からなる低分子モノアミン(g)にて鎖延長反応及び停止反応させるプレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法において、
鎖延長反応及び停止反応の際の全イソシアネート基と全活性水素基が当量であって、かつ、反応時の水(e)によるイソシアネート基の消費量が15〜25モル%、低分子ジアミン(f)による消費量が5〜15モル%、及び低分子モノアミン(g)による消費量が60〜80モル%、であることを特徴とする、プレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法。
【0008】
また本発明は、
(2)モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ビス(ヒドロキシアルキル)アミンから選択されるアミノアルコール(g1)及びアルキルモノアミン、ジアルキルモノアミンから選択されるアミン(g2)のモル比が、(g1)/(g2)=10/1〜1/10であることを特徴とする、前記(1)のプレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法である。
【0009】
更に本発明は
(3)脂環族ジイソシアネート(b)が水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする、前記(1)又は(2)のプレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、塗膜強度や耐久性はもちろん、あらかじめプレヒートされた基材に対するスプレー塗装の際の乾燥性がマッチした水性塗料が得られることになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いられるポリカーボネートジオール(a)(以後、PCDと略称する)は、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以後、1,6−HDと略称する)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の脂肪族又は脂環族ジオールの1種類以上と、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネートとのいずれかの脱アルコール反応、脱グリコール反応や脱フェノール反応等から得られるものである。
本発明に用いられるPCDの好ましい数平均分子量は、500〜5,000であり、更に好ましくは1,000〜3,000である。数平均分子量が低すぎる場合は、塗膜が硬くなりすぎて、柔軟性や追従性に欠けるものとなりやすい。一方数平均分子量が高すぎる場合は、塗膜の強度や耐久性が不十分となりやすい。
【0012】
本発明に用いられる脂環族ジイソシアネート(b)は、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(以後、H12MDIと略称する)、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
塗膜の強度や耐久性を考慮すると、本発明ではH12MDIが好ましい。
【0013】
なお、必要に応じて脂環族ジイソシアネート(b)以外の有機ジイソシアネートやその誘導体等を用いることができる。例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。これらの有機ジイソシアネートは単独でも用いることができるし、混合物にして用いても良い。更には脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートの、アダクト変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体等の変性体も使用できる。
【0014】
本発明に用いられるカルボキシル基含有ジオール(c)としては、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以後、DMPAと略称する)、2,2−ジメチロールブタン酸(以後、DMBA)、ポリアミンと酸無水物との反応物、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸を開始剤としたラクトン付加物等が挙げられる。本発明では、DMPA、DMBAが好ましい。
【0015】
本発明に用いられる中和剤(d)としては、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類等が挙げられる。また、これらの中和剤は、それぞれ単独又は2種以上の混合物でも使用することができる。
乾燥後の塗膜の耐候性や耐水性を考慮すると、熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる水は、イソシアネート基末端プレポリマー(A)と反応する鎖延長剤としての水(e)だけでなく、水性樹脂の分散媒として機能するものである。
【0017】
本発明に用いられる低分子ジアミン(f)は、分子量500以下で、1分子中に−NH2 又は−NH−を2個有する化合物であって、具体的にはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシルジアミン、水素添加キシリレンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。本発明においては、塗膜の乾燥性や物性を考慮すると、脂肪族ジアミンが好ましい。
【0018】
本発明に用いられる低分子モノアミン(g)は、分子量500以下のモノアミン化合物であり、かつ、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ビス(ヒドロキシアルキル)アミンから選択されるアミノアルコール(g1)及びアルキルモノアミン、ジアルキルモノアミンから選択されるアミン(g2)からなるものである。モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ビス(ヒドロキシアルキル)アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。アルキルモノアミン、ジアルキルモノアミン(g2)としては、
エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミンや、ジエチルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。(g1)と(g2)の比率は、モル比で、(g1)/(g2)=10/1〜1/10が好ましい。(g1)成分が多い場合は、水酸基が多く導入されることになるため、乾燥性が悪くなりやすい。(g2)成分が多い場合は、イソシアネート硬化剤を配合した際の反応点が少なくなるため、塗膜物性が発揮されにくい。
【0019】
本発明において、鎖延長反応及び停止反応の際の全イソシアネート基と全活性水素基のモル比は当量であって、かつ、その反応の際の水(e)によるイソシアネート基の消費量が15〜25モル%、低分子ジアミン(f)による消費量が5〜15モル%、及び低分子モノアミン(g)による消費量が60〜80モル%、であることを特徴とする。低分子ジアミン(f)が少なすぎる場合は、塗膜強度が不十分であり、多すぎる場合は、スプレー塗装の際のレベリング性が悪くなる。低分子モノアミンが少なすぎる場合は、スプレー塗装の際のレベリング性が悪くなり、多すぎる場合は塗膜強度が不十分となりやすい。反応する水(g)が多すぎる場合は、塗膜の柔軟性が悪くなり、少なすぎる場合は、塗膜強度が不十分となりやすい。
【0020】
本発明の水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法は、いわゆるプレポリマー法であり、具体的には、ポリカーボネートジオール(a)、カルボキシル基含有ジオール(c)を混合し、この混合ポリオールに脂環族ジイソシアネート(b)を、水酸基よりイソシアネート基が過剰になる条件で反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー(A)を得る。その後、中和剤(d)にて中和させてから、水中に分散させ、水(e)、低分子ジアミン(f)、及び低分子モノアミン(g)にて鎖延長反応及び停止反応させる。このようにして、目的とする水性ポリウレタンディスパージョンが得られることになる。
【0021】
プレポリマー合成時のイソシアネート基/水酸基のモル比は、1.1〜5.0であり、好ましくは1.2〜4.0である。1.1未満の場合は、プレポリマーの分子量が大きくなりすぎて、その後の反応工程に進みにくくなる。5.0を越える場合は、密着性に乏しくなる。プレポリマー合成時の反応温度は50〜80℃が好ましい。
【0022】
プレポリマー化反応の際、反応触媒として公知のいわゆるウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミン等の有機アミンやその塩等が挙げられる。
【0023】
プレポリマー化後、中和剤(d)で中和させてから、水中に分散させ、水(e)、低分子ジアミン(f)、及び低分子モノアミン(g)にて鎖延長反応及び停止反応させる。鎖延長反応及び停止反応時の反応温度は、30〜50℃が好ましい。中和剤(d)の仕込量は、樹脂中に存在するカルボン酸に対して0.8〜1.2当量が好ましく、特に0.9〜1.1当量が好ましい。
【0024】
このようにして得られる水性ポリウレタンディスパージョンにおける樹脂の数平均分子量は、5,000以上が好ましく、特に10,000以上がが好ましい。樹脂の数平均分子量が5,000未満の場合は、耐久性に乏しくなる。なお、本発明において、数平均分子量は、ポリエチレングリコール検量線によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定されるものである。
【0025】
水性ポリウレタンディスパージョンにおいて、樹脂成分の平均粒径は100nm以下であり、好ましくは80nm以下である。平均粒径が上限を越える場合は、経時で沈殿を生じる場合がある。なお平均粒径とは、動的光散乱法にて測定した値をキュムラント法にて解析した値である。
【0026】
本発明の水性ポリウレタンディスパージョンの25℃における粘度は、固形分30質量%時において、100mPa・s以下であり、好ましくは50mPa・s以下である。粘度が上限を越える場合は、その後の塗布工程等が困難となりやすい。
【0027】
本発明の水性ポリウレタンディスパージョンには、必要に応じて水性システムで慣用される添加剤及び助剤を使用できる。例えば、消泡剤、顔料、染料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒等を添加することができる。
【0028】
また、本発明の水性ポリウレタンディスパージョンを使用する際には、他樹脂系のエマルジョンやディスパージョンをブレンドして使用できる。例えば、アクリルエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ラテックス等が挙げられる。
【0029】
本発明の水性ポリウレタンディスパージョンに更に水性ポリイソシアネート硬化剤を配合することにより、常温で硬化して実用に耐えうる被膜を形成し、また臭気の発生も抑えられることになる。具体的な硬化剤としては、日本ポリウレタン工業製のアクアネート(登録商標)100、110、120、200、210等が挙げられる。樹脂(主剤)と硬化剤の配合量は、イソシアネート基/全水酸基(樹脂及び中和剤中の水酸基の総量)=5/1〜1/5(モル比)となる量である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中において、「%」は「質量%」を示す。
【0031】
〔ポリウレタンエマルジョンの製造〕
実施例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、及び冷却器を装着した容量:1,000mlの反応器に、PCDを153.2g、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)を16.4g、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DMFDG)を50g、N−メチルピロリドン(NMP)を50g仕込み、90℃で10分間、加熱溶解させた。60℃に冷却後、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)を115.6g、ネオスタンU−600(ビスマス系触媒、日東化成製)を0.02g仕込み、80℃で2時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマー溶液を得た。このプレポリマー溶液のイソシアネート含量は3.6%であった。
このカルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマー溶液にトリエチルアミン(TEA)12.4g仕込んで中和させ、次いで水を588.2g仕込んで転層させて水分散させ、前記NCO含量の8%当量に相当するエチレンジアミン(EDA)、64%当量に相当するモノエタノールアミン(MEA)、8%当量に相当するジエチルアミン(DEA)を仕込んで鎖延長反応及び停止反応を行った。なお、前記NCO含量の20%当量は水と反応することになる。鎖延長反応は30℃にて12時間行った。反応の最中は炭酸ガスの発生が確認された。FT−IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで充填して、水性ポリウレタンエマルジョンPU−1を得た。PU−1の固形分は30%、平均粒径は35nm、25℃の粘度は40mPa・sであった。
【0032】
実施例2〜4、比較例1〜6
実施例1と同様な各原料仕込量及び反応条件にてカルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマー溶液を得た。
このプレポリマー溶液を中和、水分散後、表1に示す相当量の各種アミンを仕込み、実施例1と同様な反応温度・時間で鎖延長反応及び停止反応を行った(比較例1、6は鎖延長反応のみ)。結果を表1に示す。なお、PU−10は分散状態が非常に悪いため、以後の評価は行わなかった。
【0033】
【表1】

【0034】
表1において
PCD :1,6−HDとDECから得られるポリカーボネートジオール
数平均分子量=1,000
1,6−HD:1,6−ヘキサンジオール
DEC :ジエチルカーボネート
12MDI:水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート
DMPA :2,2−ジメチロールプロピオン酸
DMDPG:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
NMP :N−メチルピロリドン
ネオスタンU−600:ビスマス系触媒、日東化成製
TEA :トリエチルアミン
MDEA :N,N−ジメチルエタノールアミン
EDA :エチレンジアミン
IPDA :イソホロンジアミン
MEA :モノエタノールアミン
DEA :ジエチルアミン
分散状態
分散体を250メッシュで濾過して濾過状況及びメッシュ上の濾物の状態で評価した。
○:メッシュ上に濾物がなく、順調に濾過できる
△:目詰まりを起こし、濾過に時間がかかる
×:メッシュ上に濾物が残り、全量の濾過ができない
【0035】
〔塗膜評価〕
あらかじめ60℃にプレヒートしたボンデ鋼板に、PU−1〜9をスプレー塗装し、その後室温雰囲気下で24時間静置して塗装サンプルを作成して塗膜を評価した。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
塗膜評価試験方法
塗膜状態
主剤と硬化剤を質量比で100/20で混合し、あらかじめ60℃に加温したガラス基盤にスプレー塗装して、塗膜の状態(成膜性及び外観)及び乾燥性(指触評価)を評価した。
主剤 :PU−1〜9
硬化剤:アクアネート130
※アクアネートは日本ポリウレタン工業株式会社の登録商標
評価
成膜性 ○ ひび割れやハジキがない
× ひび割れやハジキが発生
外観 ○ 泡が抜けて、透明な塗膜となっている
× 泡が抜けきらずに塗膜に残存し、塗膜が白濁している
乾燥性 ○ スプレー塗装後、1時間以下にタックがなくなる
△ スプレー塗装後、1時間超〜3時間以下でタックがなくなる
× スプレー塗装後、タックがなくなるまで3時間を超える
塗膜物性
板ガラスにPU−1〜9をキャストし、25℃で5日乾燥させてフィルムを作成して引張試験を行った。
引張速度 :200mm/分
試験片形状:JIS K6301(1995)に規定する4号ダンベル
測定装置 :テンシロン UTA−500
※テンシロンは株式会社オリエンテックの登録商標
評価 ○:100%モジュラスが25MPa以上
×:100%モジュラスが25MPa未満
温水試験
引張試験と同形状のサンプルを80℃の温水に1時間浸漬し、その後のフィルム外観で評価
評価 ○:変化なし
×:白化が認められる
塗膜透過率
スライドガラスに成膜性のよいPU−1〜5、9をそれぞれスプレー塗装し、ウレタン層が積層されたスライドガラスを測定装置にセットして透過光強度を測定した。リファレンスとしては、スライドガラスのみとした。塗膜の光透過率の算出は以下の式による。
透過光強度測定装置:U−3300スペクトロフォトメータ(日立製作所製)
【0038】
【数1】

【0039】
表2に示されるように、本発明の水性ポリウレタンエマルジョンは、プレヒート基盤へのスプレー塗装性に優れているものであった。一方、比較例は2官能成分の多いPU−5、9は塗膜外観が悪く、1官能成分の多いPU−6〜8は成膜性が悪かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートジオール(a)、脂環族ジイソシアネート(b)、カルボキシル基含有ジオール(c)を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(A)を中和剤(d)にて中和後、水に乳化させてから、水(e)、低分子ジアミン(f)、及びモノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ビス(ヒドロキシアルキル)アミンから選択されるアミノアルコール(g1)及びアルキルモノアミン、ジアルキルモノアミンから選択されるアミン(g2)からなる低分子モノアミン(g)にて鎖延長反応及び停止反応させるプレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法において、
鎖延長反応及び停止反応の際の全イソシアネート基と全活性水素基が当量であって、かつ、反応時の水(e)によるイソシアネート基の消費量が15〜25モル%、低分子ジアミン(f)による消費量が5〜15モル%、及び低分子モノアミン(g)による消費量が60〜80モル%、であることを特徴とする、プレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法。
【請求項2】
モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ビス(ヒドロキシアルキル)アミンから選択されるアミノアルコール(g1)及びアルキルモノアミン、ジアルキルモノアミンから選択されるアミン(g2)のモル比が、(g1)/(g2)=10/1〜1/10であることを特徴とする、請求項1記載のプレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法。
【請求項3】
脂環族ジイソシアネート(b)が水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプレヒート基盤向けスプレー塗装用水性ポリウレタンディスパージョンの製造方法。


【公開番号】特開2010−143946(P2010−143946A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319108(P2008−319108)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】