説明

プレミックス薬剤による薬用モジュール

少なくとも2つの薬剤(1、2)を共送達する注射システム用の薬用モジュール(4)が開示される。ここで、主送達デバイス(7)は第1の薬物作用物質を含有し、第1の薬物作用物質及び少なくとも第2の薬物作用物質を含む第2のプレミックス薬剤(2)の単回投与量を含む薬用モジュール(4)を受け取り、そこで第1の薬物作用物質(1)及び第2のプレミックス薬剤(2)の両者は単回の中空針(3、16、21、31)を通して送達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイス及び少なくとも2つの薬物作用物質を単一の分配インターフェースだけを有する装置を用いて別々のリザーバから送達する方法に関する。ユーザーによって開始される単一の送達手順が、第2の薬物作用物質のユーザー設定不可能な投与量及び第1の薬物作用物質の変更可能な設定投与量を患者に送達させる。本発明は、少なくとも2つの薬物作用物質、そのうちの1つは取り付ける薬物送達デバイスに含まれるものと同じ薬物作用物質、の混合物を有する薬用モジュールを対象にする。本発明は、治療状況のコントロール及び明確化を通して特定の対象患者群の治療反応を最適化できる場合、特に有益である。
【背景技術】
【0002】
ある病状は、1つ又はそれ以上の異なる薬剤を用いた処置を必要とする。いくつかの薬物化合物は、最適な治療上の投与量を送達するため、互いに固有の関係で送達される必要がある。ここで、併用療法が望ましいかもしれないが、単回製剤化は、これに限定されないが、安定性、治療成績の不確実性及び毒性などの理由で不可能である。
【0003】
例えば、症例によっては、糖尿病を、長時間作用型のインスリン及びプログルカゴン遺伝子の転写産物から誘導されるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)で処置することは、有益である可能性がある。GLP−1は人体で発見され、腸のL−細胞によって消化管ホルモンとして分泌される。GLP−1は、それを(及びその類似体を)糖尿病の有望な治療法として重点的な研究課題にさせる幾つかの生理学的特性を有する。
【0004】
複数の活性な薬剤又は「作用物質」を同時に送達させる場合、多くの潜在的な問題がある。複数の活性な作用物質は、製剤の長期の有効期限の保存の間に相互作用する可能性がある。少なくとも2つの活性作用物質を含む製剤は、好ましくは、本開示の文脈においては混合薬剤又は混合製剤として理解される。それ故、活性成分を別々に保存するのは有利であり、例えば、注射、無針注入、ポンプ、又は吸入などによる送達の時点でのみそれらを混合する。しかし、2つの作用物質を混ぜ合わせる方法は、ユーザーが確実に、繰り返し、そして安全に実施することが簡単で且つ便利である必要がある。
【0005】
さらなる問題は、併用療法を構成する各活性作用物質の量及び/又は割合が、個々のユーザーに対して又は療法の異なるステージで変化させる必要がある可能性があることである。例えば、1つ又はそれ以上の活性作用物質は、患者を徐々に「維持」用量に誘導するための調節期間を必要とする可能性がある。さらなる例は、1つの活性が無調整の固定用量を必要とするが、もう一方は患者の症状又は体調に応じて変更される場合になるだろう。この問題は、複数の活性作用物質の混合製剤は、医療専門家又はユーザーによって変えることができない固定された比率の活性成分を有するので、好適でない可能性があることを意味する。
【0006】
さらなる問題は、複数の薬物化合物療法が必要な場合に生じる。その理由は、多くのユーザーが2つ以上の薬物送達システムを使用しなければならないことに対処できない、又は要求される用量配合に必要な正確な計算ができないことによる。これは、器用さ又は計算力に問題を持つユーザーでは特にそうである。
【0007】
従って、実施がユーザーにとって簡単であり、一回の注射又は送達工程で二つ又はそれ以上の薬剤を送達するための装置及び方法を提供することに対する強いニーズがある。本出願は、単一の送達手順の間に単に混合される及び/又は患者に送達される複数の活性薬物作用物質用の個別の貯蔵容器を提供することによって前述の問題を克服する、方法、デバイス及び薬物送達システムの具体的な実施態様を開示する。1つの薬剤の投与量を設定することにより、自動的に第2の薬剤の投与量を固定又は確定される(即ち、ユーザー設定不可能である)。
【0008】
本開示によると、用語の薬用モジュールは、好ましくは、針サブ・アセンブリ内の(二次)薬物化合物の格納容器又はリザーバを特徴付けるために使われる。薬用モジュールそのものは、少なくとも1つの両頭針を含んでもよい。さらに、薬用モジュールは、針受け及び/又はバイパスを含んでもよい。バイパスは、一次リザーバ(例えば、カートリッジ)から2次針又は出力針に2次リザーバ/薬剤との伝達無しに薬剤を運ぶことができる、チャンネル、管、導管、溝、スロット又は他のあらゆる類似の通路などの様な形状であってもよい。
【0009】
さらに、1つの薬剤又は両薬剤の量を変化させるための機会が与えられてもよい。例えば、1つの流体量は、インジェクション・デバイスの特性を変える (例えば、 ユーザー可変の投与量をダイヤルするか、又は装置の「固定された」投与量を変更する) ことによって変えることができる。第2の流体量は、それぞれが異なるボリューム及び/又は濃度の二次薬物を含む様々な薬物含有パッケージを製造することによって、変えることができる。ユーザー又は医療専門家は、次に特定の治療計画に対する最も適切な2次パッケージ又は異なるパッケージのシリーズ若しくはシリーズの組み合わせを選択するだろう。
【0010】
2次薬剤を別のパッケージ又はリザーバから押し出す又は流し出すために主薬剤が用いられる状況では、リザーバ内の2次薬剤のボリュームは、送達デバイスから送達される主薬剤の実際の投与量の絶対量を相殺するだろう。明らかに、薬剤の所定のボリューム又は設定された投与量は、薬剤を製造するために用いられた処方プロトコルによって、様々な濃度の1つ又はそれ以上の薬物作用物質を含むことができる。そのようなものとして、ユーザーは主薬剤の具体的な投与量Aを設定するけれども、実際には主薬剤の内の僅かC量(リザーバのボリュームA引くボリュームB)しか、ユーザー/患者に送達されない。この問題を克服するためには、全ての使用計画において、完全な投与量Aを送達するため及び同様にユーザーに送達された主薬剤の明確な量又は濃度を示す(例えば、もしユーザーが主薬剤だけを得るつもりなら、デバイスは正確なダイヤルされた投与量及び受領した投与量を表示できなければならない)ために、送達デバイスの複雑な技術的再設計が必要となる。具体的な実施態様では、本発明は、2次リザーバ内の2次薬剤を所定のボリュームの主薬剤と前もって混合することによってこの問題を解決する。1つの実施態様では、主薬剤の所定のボリュームは、2次リザーバのボリュームと同じであればよい。さらなる実施態様では、2次リザーバは、主リザーバが含む第1の薬剤と同じ濃度を含んでもよい
【0011】
これらの利点および他の利点は、下記の本発明のより詳細な説明から明らかになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明によって解決されるべき一般的課題は、薬剤の投与が容易になる薬用モジュール、薬物送達システム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示された薬用モジュールは、単一の薬物送達システム内で複数の薬物化合物の複雑な組み合わせを可能にする。特に、ユーザーは、1つの単回投与量設定メカニズム及び単回投与インターフェースを介して、マルチ薬物化合物デバイスを設定し分配することができる。この単回投与量設定器は、デバイスのメカニズムを、個々の薬物化合物の所定の組み合わせが、薬剤の1つの単回投与量が設定され単回投与インターフェースを通して分配される場合に送達される様にコントロールすればよい。用語の薬物分配インターフェースは、本開示の文脈では、好ましくは、複数の薬剤が薬物送達システムを出て患者に送達されることを可能にするあらゆるタイプの出口である。好ましい実施態様では、単回の薬物分配インターフェースは、中空針カニューレを含む。
【0014】
個々の薬物化合物間の治療的関係を明確にすることによって、本送達デバイスは、患者/ユーザーが、デバイスを使用する度に適切な投与量の組み合わせを算出し設定しなければならない場合に、複数の入力に伴う特有のリスク無しに、マルチ薬物化合物デバイスから最適な治療の複合投与量を受領することを確実にするのに役立つ可能性がある。個々の薬剤の組み合わせは、好ましくは、少なくとも2つの異なる薬物作用物質を含み、そのなかで各薬剤は少なくとも1つの薬物作用物質を含む。薬剤は、流体であってもよく、本明細書では、流れることができ、力が作用した場合安定した比率で形が変わりその形態を変える傾向がある液体又は気体又は粉末として定義される。或いは、薬剤の1つは、担持された(carried)、可溶化された或いは別の流体薬剤と共に分配される固体であってもよい。
【0015】
1つの具体的な態様によると、本発明は、1つの入力及び関連する所定の治療プロファイルは、彼らがデバイスを使用する度に定められた投与量を計算する必要性を除くことができ、そして1つの入力が、組み合わせる化合物の設定及び分配を著しく容易にするので、特に器用さ又は計算力に問題を持つユーザーの利益になり得る。
【0016】
好ましい実施態様では、複数投与量のユーザー選択可能なデバイス内に含まれるインスリンの様な主要な又はマスター薬物化合物は、使い捨ての、ユーザー交換可能な、2次薬剤の単回投与量及び単回投与インターフェースを含むモジュールを用いて使用することができる。主デバイスに連結されると、主化合物の分配によって2次化合物が作動/送達される。本発明は、具体的な可能性のある2つの薬物併用として、インスリン、インスリン類似体又はインスリン誘導体、及びGLP−1又はGLP−1類似体について言及するが、鎮痛薬、ホルモン、β−アゴニスト又はコルチコステロイド、又は上述の薬物のあらゆる組み合わせは、本発明で使用できる。
【0017】
本発明のために、「インスリン」という用語は、ヒトインスリン又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体を含むインスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体又はそれらの混合物を意味する。インスリン類似体の例は、制限なしに、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B29位のLysは、Proで代替されてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。インスリン誘導体の例は、制限なしに、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン;及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0018】
本明細書で使われる用語の「GLP−1」は、GLP−1、GLP−1類似体、又はそれらの混合物を意味し、制限すること無く、エキセナチド(エキセンジン−4(1−39):配列がH−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2のペプチド)、エキセンジン−3、リラグルチド、又はAVE0010(H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−NH2)を含む。
【0019】
β−アゴニストの例は、制限無しに、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、メタンスルホン酸ビトルテロール、サルメテロール、フォルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、インダカテロールである。
【0020】
ホルモンは、例えば、脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストであり、例えばゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、絨毛性ゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トレプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどである。
【0021】
具体的な実施態様において、本発明は、以下の問題を解決する。ユーザーは、送達デバイス上の主薬剤の投与量を30ユニットに設定する。或る設計実施態様では、主化合物は、例えば5つのユニットのボリュームを有するリザーバから2次薬剤を洗い流す又は押し出すために使用される。患者は、2次薬剤の5つのユニット全部を受領するけれども、5つのユニットの腫薬剤が2次リザーバに留まるため、設定した30個のユニットの主薬剤の内の25個のユニットしか受領しないことになる。従って、ユーザーが正確な投与量を設定したにも拘らず、患者は、主薬剤の全投与量を受領しておらず、そしてデバイスは、正確な投与量が送達されたという不正確な表示をすることになる。
【0022】
取り付け可能な薬用モジュールに入ったプレミックス2次薬剤を用いることにより、ユーザーは主薬剤の投与量をダイヤル又は設定することができ、そしてその混合物は既知の量の主薬剤を含んでいるので、この設定投与量が実際に送達されたことを知ることができる。ここで、2次薬剤は2次リザーバのボリュームと等しいボリュームの主薬剤に溶解させることができる。
【0023】
例えば、20μgの薬物Xを、0.1μg/1μLの濃度の薬物Yからなる薬物リザーバの溶液(溶媒)50μLに溶解(即ち、50μL中5μgの薬物Yに)するなら、次に薬物Yの主リザーバを収容する送達デバイス及び30μgの薬物Yの設定投与量(300μL)を作動することにより、300μLがそのまま50μLのプレミックス物を移動/置換するが、患者はそれでも設定投与量の30μgの薬物Y及び20μgの薬物Xを受領する。換言すれば、2次リザーバは投与量送達後も依然5μgの薬物Yを留置するが、この損失は、薬物Xを溶解するために使用した2次リザーバに最初に含まれた薬物Yの5μg(50μL)によって埋め合わせになる。
【0024】
別の問題は、主容器内での薬物希釈を回避する必要性に関する。いくつかの薬物の安全性及び有効性は、患者に投与される時の溶液中の薬物の濃度の影響を受けやすい。例えば、上記の例のように、主容器内の薬物Yは、0.1μg/mLの濃度で最適な安全性及び有効性プロフィールを有すればよい。もしこの濃度が薬物リザーバを通して送達されれば、リザーバ内の薬物Xの溶液によって希釈され、その安全性及び有効性が影響を受けるかも知れない。代りに、もし薬物リザーバが薬物X及び薬物Yのプレミックス物を(0.1μg/mLの濃度で)含むなら、薬物Yの希釈は起こらない。
【0025】
1つの実施態様では、本発明は薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュールに関する。薬用モジュールは、近位端及び遠位端を有するハウジングを含んでもよく、ここでその近位端は薬物送達デバイスに連結するように構成されている。具体的には、近位端は、薬物送達デバイスに連結するように構成されたコネクタを有してもよい。薬用モジュールは、プレミックス薬剤の少なくとも1回投与量が入ったリザーバを含む。リザーバは、薬剤の単回投与量だけを含んでもよい。プレミックス薬剤中の少なくとも1つの薬物作用物質は、薬物送達デバイスの主リザーバに含まれた薬物作用物質と同一又は相当物である。換言すれば、薬用モジュールは、少なくとも2つの異なる薬物作用物質を含むプレミックス薬剤を含んでいる。
【0026】
リザーバは、ハウジング内に設置されればよい。具体的には、ハウジングは、リザーバを規定する凹部を含んでもよい。さらなる実施態様では、リザーバは針の部分によって規定されてもよい。針は、ハウジングの内部に固定されてもよい。
【0027】
別の実施態様では、本発明は、薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュールであって、近位端及び遠位端を有し、その近位端が第1の薬剤の主リザーバを格納する薬物送達デバイス(7)に取り付けられるように構成されたコネクタを有するハウジングを含む薬用モジュールに関する。薬物送達デバイスは、多投与量デバイスであってもよく、その中の主リザーバは複数投与量の第1の薬剤を含む。モジュールは、ハウジング内に固定された両頭針を有し、その針は2つの末端の間に2次リザーバを規定する拡大されたセクションを有する。2次リザーバは、第1の薬剤及び少なくとも1つの異なる薬剤のプレミックス物を含む第2の薬剤の単回投与量を含む。主針は、薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられたとき主リザーバと流体連通するように構成される。
【0028】
別の実施態様では、薬用モジュールは、近位端及び遠位端を有するハウジングを有し、その近位端は、第1の薬剤の複数投与量を含む主リザーバを有する薬物送達デバイスに取り付けられるように構成されたコネクタを有する。主針はハウジングの近位端のシール内に固定され、2次針はハウジングの遠位端のシール内に固定される。凹部は、2次針と流体連通している2次リザーバ及びシールを規定するハウジング内に位置する。凹部は、主リザーバの薬物作用物質の少なくとも1つと同じ薬物作用物質を含む第2の薬剤の単回投与量を含む。主針は、薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられたとき主リザーバと流体連通するように構成される。
【0029】
さらに別の実施態様では、薬用モジュールは、モジュール・ハウジングの内側の保持キャップ内に固定された主針及びハウジングの遠位端内に固定された2次針を有する。ハウジング内の保持キャップの真下に位置する凹部は、主針及び2次針と流体連通している2次リザーバを規定する。リザーバの内部は、主リザーバの薬物作用物質の内の少なくとも1つと同じ薬物作用物質を含む第2の薬剤の単回投与量を含む少なくとも1つのスパイラルマニホールドである。より好ましい実施態様では、2次リザーバは、複数のスパイラルマニホールドを積み重ねた配置で包含する。
【0030】
さらに別の実施態様は、主針がハウジングの近位端内に位置する保持キャップに固定された薬用モジュールを対象にする。2次針は、ハウジングの遠位端内に固定される。主針及び2次針と流体係合するように構成された上端及び下端シールを有する2次リザーバは、主リザーバ内の薬物作用物質の少なくとも1つと同じである薬物作用物質を含む第2の薬剤の単回投与量を含む。保持キャップは、2次リザーバを係合させる保持機能を有する。より好ましい実施態様では、薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられたとき、主針及び2次針はそれぞれ上端及び下端シールを穿孔する。好ましくは、2次リザーバは、個別の容器又はカプセルに無菌的にシールされる。保持キャップは、好ましくは、薬用モジュールが薬物送達デバイスに取り付けられたとき、軸方向に末端に向かって移動するように構成される。
【0031】
或る、薬物送達システムのプライミングが望ましい場合では、薬用モジュールは、薬剤が主リザーバから2次リザーバの周囲を流れ2次針から出ることを可能にするバイパスを有する。バイパスは、主リザーバから2次針に2次リザーバ/薬剤との伝達無しに薬剤を運ぶことができる、チャンネル、管、導管、溝、スロット又は他のあらゆる類似の通路の様な形状であってもよい。このようなバイパスの利点は、2次薬剤の如何なる量も放出させることなく、反復使用デバイスのプライミング並びに主針及び2次針両者のプライミングもできることである。この場合、プライミングの後、1次薬剤及び2次薬剤の両者の注射ができるように2次リザーバのシールが穿孔される。或いは、バイパス・チャンネルは、主薬剤だけを注射するために使ってもよい。バイパスの1つの好ましい構造は、薬剤を主リザーバからカプセル又は第2の薬剤を含む包含されたリザーバの周囲を流すことができるモジュール・ハウジング内のチャンネル又は溝である。
【0032】
さらに、別々のリザーバから少なくとも2つの薬剤を投与する方法が開示される。その方法は、少なくとも薬物作用物質を含む薬剤の主リザーバに機能的に連結した投与量ボタンを含むデバイス・ハウジングを含む薬物送達デバイスを供する(provide)工程、及び薬物送達デバイスに取り付けられるように構成された薬用モジュールを供する工程を含む。薬用モジュールは、薬物作用物質及び少なくとも第2の薬物作用物質を含むプレミックス薬剤の少なくとも1回投与量を含むリザーバを含む。リザーバは、薬剤の単回投与量だけを含めばよい。1例として、リザーバは、薬用モジュールのハウジング内に設置されればよい。モジュールは、そこに少なくとも1つの針を搭載している。投与量ボタンの単回の作動は、主リザーバからの薬剤及び少なくともプレミックス薬剤の1回投与量を、針を通して放出させる。
【0033】
さらに、1つの薬剤の固定投与量及び別のリザーバからの主薬剤すなわち第1の薬剤の(ユーザー設定可能な)可変投与量を分配する方法が開示され、それは単回投与量設定器を有する薬物送達デバイスの主リザーバに含まれる第1の薬剤の投与量の最初の設定工程に関与する。ユーザー設定可能な投与量とは、ユーザー(ユーザー又はヘルスケア提供者)が目的の投与量を設定するためにデバイスを物理的に操作できることを意味する。同様に、ユーザー設定可能な投与量は、無線通信(ブルートゥース、WiFi、衛星など)を使って遠隔に設定することができる、又は投与量は、治療上の処置アルゴリズムを実行した後、血中グルコースモニターのような別の集積型デバイスによって設定できる。次に、投与量ボタンが作動され、そしてそれが主リザーバから第1の薬剤の設定投与量を先端方向に移動させ、同時に薬用モジュールに含まれる2次リザーバから、前述したような、実質的にユーザー設定でないすべての投与量(例えば、単回投与量)のプレミックス薬剤を、単回投与インターフェース、好ましくは、中空注射針を通して押し出す。薬剤の送達の方法は、同時若しくは逐次的、又は両者の組み合わせでもよい。送達手順が完了すると、実質的にすべてのプレミックス薬剤は、第1の薬剤の設定された投与量と同様に、単回投与インターフェースを通して放出される。「実質的にすべて」は、少なくとも約80%の2次薬剤が薬物送達デバイスから放出される、好ましくは少なくとも約90%が放出されることを意味する。1つの配置では、好ましくは、少なくとも約80%が送達される。
【0034】
さらなる実施態様では、本発明は、少なくとも1つの薬物作用物質を含む薬剤の主リザーバを含み、単回投与インターフェースを通して作動可能な複数の薬剤を送達するための薬物送達システムを対象にする。投与量ボタンは、薬剤の主リザーバに対して機能的に連結される。単回投与インターフェースは、主リザーバ及び少なくとも1つの薬物作用物質を含む薬剤の2次リザーバと流体連通するように構成される。投与量ボタンの単回の作動は、主リザーバからの薬剤及び2次リザーバからの少なくとも1回投与量のプレミックス薬剤を、薬剤投与インターフェースを通して放出させる。薬物送達システムは、主リザーバに機能的に連結された単回投与量設定器を含むハウジングを含んでもよい。
【0035】
薬物送達システムの主リザーバは、2次リザーバと流体連通していればよい。ここで、投与量ボタンの作動は、薬剤を主リザーバから2次リザーバに流れ込ませ、それによって、2次リザーバからプレミックス薬剤を押し出す。
【0036】
さらに別の実施態様において、本発明は、2次プレミックス薬剤の格納容器が関連した主又はマスター送達デバイスへのアッタチメント用に設計された針アッセンブリ(薬用モジュール)内にある、薬物送達システムを対象にする。マスターデバイスの作動は、マスター送達デバイス内のリザーバに含まれる2次プレミックス薬剤及び主化合物の分配を作動させる。個別のユニットとして又は混合したユニットとしての化合物の組み合わせは、一体型の針を通して身体に送達される。これにより、ユーザーの見方では、現在入手可能な標準の針を使用するインジェクション・デバイスに非常に良く適合する様に出来た併用薬物注射システムが提供されるだろう。可能性のある1つの送達手順は、以下の工程を含む:
1.薬入り針の近位端が、主化合物と流体連通するように、薬入り針モジュールを、主インジェクション・デバイスの遠位端(例えば、主薬物化合物の3mLカートリッジを収容するカートリッジ・ホールダのネジ山付ハブ)に連結する。
2.主インジェクション・デバイスを、主化合物の目的の投与量を分配する用意が整うように、ダイヤル/設定する。
3. 薬入り針の遠位端を必要な注射部位に挿入する。いくつかの設計では、薬入り針の挿入は、2次化合物の送達を作動させることができる。
4. 投与量ボタンを作動させて第1化合物を投薬する。これはまた、自動的に第2化合物の分配を引き起こしてもよい。
5. 薬入り針モジュールを取り外し、廃棄する。
【0037】
本発明の薬用モジュールは、適合する適切なインターフェースを持つあらゆる薬物送達デバイス用として設計することができる。しかし、不適切な薬用モジュールを不適合インジェクション・デバイスに挿入することを防止するために、専用の又はコード化した機能を採用することによってその使用を1つの独占的な主薬物送達デバイスに限定するように、モジュールを設計することが好ましいかもしれない。場合によっては、薬用モジュールが1つの薬物送達デバイス(または、デバイスのファミリー)専用であり、その一方でそのデバイスに標準薬物分配インターフェースの連結もできることを確保することは、治療上及び安全性の観点から有益であり得る。これは、そのモジュールが連結される場合ユーザーが併用療法を送達することが可能になるだろうが、それ以外に、投与量分割又は主化合物を追加するような、だがそれらに限定されない状況において、2次化合物の二重投与の潜在的リスクを防ぐような方法で、主化合物を単独に標準の薬物分配インターフェースを通して送達することも可能にし得る。本発明の際立った利点は、プレミックス薬剤は、正確な投与量情報をユーザーに示すために、配合した又は非配合の投与量が分配されているかどうかを知るための主デバイスの複雑な投与量分配計算システムの必要性を無くすることである。
【0038】
本開示のプレミックス薬剤のさらなる特有の利点は、必要な場合、特に特定の医薬品について調節期間が必要な場合、それで投薬計画を調整することが可能になることであり得る。薬用モジュールは、供給された薬用モジュールを特定の順序で使用するように指示してユーザーが調節を容易にできるように、明らかに差別化した外観、例えば、限定されない、外観の美観デザイン又はグラフィックス、付番などを付けた多数の調節レベルで供給されてもよい。或いは、処方医師が患者に多数の「レベル1」調節薬用モジュールを与え、次にこれらが終了したとき、医師は次の濃度を処方する。この調節プログラムの重要な利点は、主デバイスが最初から最後まで一定の状態のままであることである。
【0039】
薬物送達デバイスは、好ましくは、少なくとも1つの薬物作用物質を含む薬剤のリザーバ、投与量設定器、投与量ボタン、及び送達メカニズムを含む。投与量ボタンは、主リザーバに機能的に連結される。投与量設定器は、主リザーバに機能的に連結される。送達メカニズムは、どのような種類でもよく、例えば、駆動メカニズムは回転可能なピストン・ロッド、好ましくは、2つの相異なるネジを持つ回転可能なピストン・ロッドを使用すればよい。
【0040】
本発明の好ましい実施態様では、主薬物送達デバイスは1回以上使用される、それ故、反復使用である。そのようなデバイスは、主薬物化合物の交換可能なリザーバを有しても、有さなくてもよいが、本発明は等しく両者のシナリオに適用することができる。標準の薬物送達デバイスを用いて一回限りの特別な薬物療法として、既に患者に処方することができた様々な疾患のための一式の異なる薬用モジュールを得ることも可能である。万一ユーザーが以前使用した薬用モジュールの再使用を試みるなら、本発明はこの状況をユーザーに警告できる機能を含めることができるだろう。ユーザーに警告するそのような手段としては、以下のいくつか(又はすべて)が挙げられる:
1.一度モジュールを使いそして除去したメイン薬物送達デバイスに、薬用モジュールの再装着の物理的防止。
2.使用された薬物分配インターフェースの患者への挿入の物理的防止(例えば、単回使用針受け形式の配置)。
3.一度使用された薬物分配インターフェースを経由したその後の液体流の物理的/水力学的な防止。
4.主薬物送達デバイスの投与量設定器及び/又は投与量ボタンの物理的な施錠。
5.可視的な警告(例えば、一度挿入及び/又は液体流が起こったモジュールの表示ウィンドウに色の変化及び/又は警告の文/表示文字(indicia))。
6.触覚性フィードバック(使用後、モジュールハブの外側表面の触覚性機能の有無)。
【0041】
この実施態様のさらなる特徴は、両薬剤が単回の注射針を経由し、そして単回の注射工程で送達されることであり得る。これは、2つの別の注射を投与することに比べると、ユーザー工程の減少の観点で、ユーザーに対して便利な利点を提供する。この便益はまた、特に、注射が不快であると思うユーザー、又は計算力又は器用さに問題があるユーザーに、処方された治療遵守の改善をもたらすことができる。
【0042】
本発明はまた、別々のパッケージに保存される2つの薬剤を送達する方法を対象とする。好ましくは、薬剤は両者とも液体であっても、あるいは、1つ又はそれ以上の薬剤は、懸濁液又はスラリーであってもよい。最も好ましくは、第1のパッケージ又はリザーバはインスリンを含有し、第2のパッケージはインスリン及びプログルカゴン遺伝子の転写産物由来のグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)を含むプレミックス物を含む。
【0043】
本発明の様々な態様の、これら並びに他の利点は、添付の図面を適切に参照し、以下の詳細な説明を読むことによって当業者には明白になる。
【0044】
本発明の範囲は、クレームの内容によって定義される。本発明は、特定の実施態様に限定されないが、違う実施態様の要素のいかなる組合せも含む。さらに、本発明は、クレームのあらゆる組み合わせ及びクレームによって開示される特徴のあらゆる組み合わせを含む。
【0045】
例示的な実施態様は、本明細書では図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】薬物送達デバイスに取り付けられた、拡大された針部を有する本発明の薬用モジュールの実施態様を示す。
【図2】薬物送達デバイスに取り付けられた、2次リザーバに連結された2本の針を有する本発明の薬用モジュールの実施態様を示す。
【図3】薬物送達デバイスに取り付けられた、2次リザーバの一部として1つ又はそれ以上のスパイラルマニホールドを有する本発明の薬用モジュールの実施態様を示す。
【図4】薬物送達デバイスに取り付けられた、2次リザーバの一部を構成するスパイラルマニホールドの実施態様の透視図を示す。
【図5】2つの穿孔可能な膜を有する2次薬剤の内蔵型リザーバを有する、本発明の薬用モジュールの実施態様を示す。
【図6】送達デバイスに連結された、2つの穿孔可能な膜を有する2次薬剤の内蔵型リザーバを有する、本発明の薬用モジュールの実施態様を示す。
【図7】2つの穿孔可能な膜及びバイパス・チャンネルを有する2次薬剤の内蔵型リザーバを有する、本発明の薬用モジュールの実施態様を示す。
【図8】本発明で使用できる1つの可能性のある薬物送達デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
開示された薬物送達デバイスの具体的な実施態様は、固定した所定の投与量の第2の薬剤(2次薬物化合物)及び可変投与量の第1の薬剤(主薬物化合物)を単回の出力又は薬物分配インターフェースを通して投与することを可能にする。ユーザーによる主薬剤の投与量の設定は、自動的に第2の薬剤の固定した投与量、好ましくは単回投与量を決定してもよい。好ましい実施態様では、薬物分配インターフェースは、針カニューレ(中空針)である。図1〜3は、本発明の3つの異なる実施態様を説明し、それぞれは薬物送達デバイス7に取り付けられた薬用モジュール4を有する。各モジュールは、好ましくは内蔵型で、デバイス7の遠位末端の取り付け手段に適合する取り付け手段8を有するシールされた無菌の使い捨てモジュールとして提供される。表示されていないが、薬用モジュールは、メーカーによって、無菌の薬用モジュールを利用するためにユーザーがシールを剥ぐ又はそれ自体を破いて開ける保護用の無菌容器に入れて供給されてもよい。場合によっては、ハブの両端に2つ又はそれ以上のシールを添付することが望ましいかもしれない。
【0048】
薬物送達デバイス7の1つの例を、図8に示す。いかなる公知の取付け手段でも、恒久的取付け手段及び着脱可能な取付け手段を含めて使用することができる。モジュール4をデバイス7に取付けるために、ネジ、バネ錠、スナップ、ルアーロック、バイオネット、止め輪、有鍵のスロット及びそのような連結の組み合わせを用いることができる。図1〜3は、取付け手段8をネジとして示す。図1〜3に示される実施態様は、2次薬剤が単回投与量としてカニューレ3内に完全に含まれ、それ故、2次薬剤と薬用モジュール4の構築に使用される材料間の材料不適合性のリスクを最小にするという利点を有する。
【0049】
図1に示すように、この実施態様固有の特徴は出力針3の構築方法であり、その一部は、固定(単一)のユーザー設定不可能な投与量の2次薬剤のボリュームを収容するために拡大した断面5を有する。好ましくは、針3の拡大した断面5を形成するために、ハイドロフォーミング又はスウェージング法が用いられるだろう。針の両先端は、拡大されないことが好ましく、それは、より大きな口径の針の挿入に関連する肉体的及び精神的/情緒的な傷害の両者を最小にするため、並びに第1の薬剤容器のセプタムの密閉完全性を損なう(比較的大きなゲージの針によるこの種の材料への複数の穿孔は、「芯を抜く(coring)」危険性を増加させる)危険性を最小にするために役立つので有益である。
【0050】
再循環によって引き起こされる分配行動の終わりに、針モジュール又はサブ・アセンブリ4に残る可能性がある第2の薬剤の残留量を最小限にするために、拡大された部分5は、流体フローを特徴付けるモデルに設計されるべきである。好ましくは、薬用モジュール4の設計は、少なくとも約80%の第2の薬剤が遠位末端の針3を通して放出されることを確保すべきであり、最も好ましくは、少なくとも約90%が放出されるべきである。理想的には、第1の薬剤1の針3の近位末端6への移動が、2つの薬剤の実質的な混合無しに、第2の薬剤2を移動させることである。好ましくは、これは、直径の増加を最小限にし、針3の小断面から拡大した断面5への移行の注意深い設計によって達成される。1つの選択肢は、組み立て/充填工程で、気体(例えば、空気又は窒素のような不活性ガス)による「栓」が針の上の部分6(拡大部分5の上部)に存在するようにセットアップし、これが第1の薬剤と2次薬剤が互いに離れて保たれることを確保するように働き、それによって、空気の栓によって造られた仮想ピストンの作用によって逐次的な送達の確保を助けることである。この栓は、さらに、主薬剤と2次薬剤が注射に先立って(即ち、薬用モジュールが、注射行動がとられる前に、長時間連結された位置に放置されたとしても)混合する機会が無いことの保証を支援してもよい。
【0051】
薬用モジュール4の反復使用薬物送達デバイス7への取り付けは、モジュールにある係合針6に、反復使用デバイス7のカートリッジ11のセプタム10の穿孔を起こさせる。一旦、係合針がカートリッジのセプタムを通過すると、第1の薬剤と出力針3の間の流体連結ができる。反復使用デバイス7の投与量は、次に通常のやり方で投与量設定器12(図8を参照)を用いて(例えば、適切なユニット数をダイヤルすることによって)設定される。次に、薬剤の分配は、デバイス7上の投与量ボタン13の作動を介して、薬剤を皮下注射することによって達成される。本発明の投与量ボタンは、投与量設定器によって設定された第1の薬剤の投与量を、デバイスの遠位端14の末端側に移動させる如何なる作動メカニズムであってもよい。好ましい実施態様では、投与量ボタンは、第1の薬剤の主リザーバ内のピストンに係合する支軸に機能的に連結される。さらなる実施態様では、支軸は回転可能なピストン・ロッド、例えば、2つの相異なるネジを含むピストン・ロッドである。
【0052】
本発明の別の実施態様は図2に示され、そこでは、主針15がデバイス・カートリッジ11のセプタム10を穿孔し、2次針16は薬剤を皮下注射するために使用される。2本の針の間に位置するのは、2次薬剤2が入った2次リザーバを含む凹部17である。主針15は保持キャップ18に付けられ、そしてそれは凹部17の頂点まで挿入されたとき流体シールとなる。
【0053】
本発明の別の実施態様において、2次薬剤を保存し且つ分配する間に2つの薬剤間に生じる混合のリスクを最小化するために、1つ又はそれ以上のスパイラルマニホールド20が2次リザーバの一部として使用される。混合のリスクを最小化する場合、2つの薬剤が互いに出会う所の、流れ方向と直交する断面積を最小化することが望ましい。流路の断面積を最小限にするのは望ましいが、これによる標準の針配置に対する影響は、2次薬剤の固定ボリューム用の流路の長さが増大することだろう。これは、薬用モジュールの軸方向の長さを、過剰なそして法外な長さにする可能性がある。1つ又はそれ以上のスパイラルマニホールドを使用することにより、許容可能な軸方向の最少収納スペース内に、最小断面積の流体通路及び2次薬剤を保管する十分な長さが提供される。
【0054】
図3に戻って、2つのスパイラルマニホールド20a及び20b(図4を参照)は、薬用モジュール4の軸方向の収納スペースをさらに減少させるために、再使用型薬物送達デバイス7のカートリッジ11と出力針21の間で使用される。主針22が保持キャップ23に接着し、第1のスパイラルマニホールド20aの中心26に第1の薬剤1を導入する。第1の薬剤1がスパイラルマニホールド20aに分配されると、2次薬剤2は、螺旋溝24の通路に沿って放射状に外側に、所定の半径方向位置25に達するまで流れ、それによって、流路は第1のスパイラルマニホールドを通って横断する。スパイラルマニホールドを通過したら、流路は、流体が第2のスパイラルマニホールド20b上を放射状に内側に流れるように配向された第2の螺旋に続く。流体は、第2のスパイラルマニホールド20bの中心に到達したとき、出力針21との流体連通がなされ、そして薬剤は出口の針を通して患者に分配される。
【0055】
本実施態様では、スパイラルマニホールドは、螺旋溝(示されてない)の外側の縁に沿ってシーリング機能を有すること及び/又はゴム、TPEなどの柔軟な材料で作られること、及び薬用モジュールの本体27内への保持キャップ23の組み立てにはシーリング迷路を創るためにこれらの機能が利用され、それによって螺旋流路が形成されること、が予想される。
【0056】
本発明のさらなる実施態様は、図5、6及び7に示される。これらの実施態様では、薬用モジュール4は、2次薬剤2の固定単回投与量を含む別個の2次リザーバ30を含む。上記の実施態様と同様、これらの薬用モジュールは、2次薬剤の固定した所定の投与量及び第1の薬剤の可変投与量を、単一の出力針31を通して投与する。以下でより詳細に説明されるように、図7は、これらの実施態様の代わりのデザインを示し、それは、好ましくは第1の薬剤1を用いたプライミングに使用されるバイパス機能を提供する。
【0057】
図5〜7に示される実施態様において、リザーバ30は、穿孔可能な膜32a及び32bでシールされて2次薬剤用の密封されたリザーバを提供する端部を有する。主針33は、押し下げられた位置で主針33が上部の膜32aに穴をあけるようにリザーバ30に対して軸方向に移動させることができる。出力針31は、リザーバを針31に対して軸方向に動かしたとき、リザーバ30の下面の上に突出し、下側の膜32bを穿孔する。
【0058】
使用時、図8に示されたもののように、薬用モジュールを反復使用薬物送達デバイスに取り付けると、主針33はデバイス7に含まれるカートリッジ11のセプタム10を穿孔する。この取り付けは、保持キャップ34を遠心的に動かして所定の軸方向に移動させ、その結果、保持キャップ34がカートリッジに対して負荷を負い、保持機能35a及び35bが克服され、主針によるリザーバ30の上部の膜32aの穿孔をひき起こす。一旦、リザーバの上部が保持キャップに対して負荷を負うと、リザーバを薬用モジュール内に維持する保持機能が克服され、リザーバは下方へ軸方向に動かす。リザーバ30の軸方向の移動によって、出力針31の近位末端がリザーバ30の下部の膜32bを穿孔する。
【0059】
上述の本発明の実施態様のいずれかにおいて、第2の薬剤は、2次リザーバ若しくはカプセル内に含まれる又は薬物分配インターフェースの内表面を被覆する、粉末の固体状態であっても、如何なる流体状態であってもよい。
【0060】
本発明の特定の態様によると、第2の薬剤は、少なくとも2つの薬物作用物質を含むプレミックス薬剤を含み、好ましくは、第2の薬剤は、2つの薬物作用物質のプレミックス薬剤を含む。好ましい実施態様では、プレミックス薬剤の第2の薬剤は、薬物送達デバイスの主リザーバに含まれる薬物作用物質と同一又はそれに相当する少なくとも1つの薬物作用物質を含む。より高い濃度の固形の薬剤は、より低い濃度を有する液体よりも小さな容積を占めるという利点を有する。これは、その代わり、薬用モジュールの目減り量を減らす。さらなる利点は、固形の2次薬剤は、液状の薬剤よりも2次リザーバ内へのシールが潜在的により簡単であることである。デバイスは、第1の薬剤によって分配する間に溶解される第2の薬剤を用いる好ましい実施態様と同じ方法で使用されるだろう。
【0061】
本発明のさらに別の実施態様は図7に示され、そこでは、第1の薬剤1による出力針31のプライミング容易にするために、バイパス・チャンネル36がリザーバ30に組み込まれる。本実施態様の薬用モジュール4をデバイス、図8に示されるようなもの、に取り付けると、主針33はリザーバ30のセプタム32aを穿孔する。しかし、主針が膜を完全に穿孔する前に、ユーザーには、バイパス・チャネル36を使ってプライミング作業を開始する選択肢がある。これは、保持キャップ34と上部の穿孔可能な膜32aの間の空洞37に第1の薬剤を分配することによって、達成される。空洞37はバイパス・チャンネル36と流体連通しているので、第1の薬剤はリザーバ30の周囲を流れて下部空洞38に入り、そして出力針31を通して出る。任意のプライミング作業が完了した後、薬用モジュールは、出力針及び主針をそれぞれリザーバの下部及び上部膜を穿孔させて、反復使用デバイス7に完全に取り付ける(ネジ式の場合は回転させる)ことができる。膜32a及び32bを穿孔することは、第1及び2次薬剤間の流体連通をオープンにし、それらを反復使用デバイス上の分配メカニズムの作動を介して分配を可能にする。これが起こるとき、バイパス・チャンネル36、並びに空洞37及び38は、リザーバ30の内容物から隔離される。
【0062】
上記実施態様の薬用モジュール間の連結又は取り付けは、特定の薬用モジュールが適合する薬物送達デバイスにのみ連結可能であることを確実にする、コネクタ、停止、キー溝、リブ、溝などのデザイン特性のようなさらなる機能(示されていない)を含んでもよい。そのような更なる機能は、不適切な薬用モジュールの不適合インジェクション・デバイスへの挿入を防止するだろう。
【0063】
薬用モジュールの形状は、流体リザーバを定義するため又は2次薬剤の個別の内蔵リザーバを含めるため、及び1つ又はそれ以上の針カニューレを連結するために好適な、円筒体又はあらゆる他の幾何学的形状であればよい。2次リザーバは、ガラス又は他の薬物接触適合材料から製造できる。一体型注射針は、皮下又は筋肉内注射に好適ないかなる針カニューレであってもよい。さらに、薬用モジュールは、偶発的針穿刺を防止し、針恐怖症のユーザーが経験する不安を減らすと思われる安全シールド装置を搭載することもできる。安全シールドの厳密な設計は、本発明にとって重要ではないが、好ましい設計は、主リザーバ及び/又は2次リザーバに機能的に連結されるものである。そのような設計では、安全シールドの作動は、薬物送達システムを開放し、時として、主リザーバから第1の薬剤を分配するために投与量ボタンを作動する前に、第2の薬剤の分配を引き起こす。
【0064】
好ましくは、薬用モジュールは、無菌性を保つためにシールされた独立型の別個のデバイスとしてメーカーによって提供される。モジュールの無菌シールは、好ましくは、ユーザーが薬用モジュールを薬物送達デバイスに提出する又は取り付けるとき、切る、裂く、又は剥がすことにより自動的に開けられるように設計されることが好ましい。シールのこの開口は、インジェクション・デバイスの端部の傾斜した表面のような機能又はモジュールの内側の機能によって支援されてもよい。
【0065】
本発明の薬用モジュールは、図8に示されるものに類似した、反復使用インジェクション・デバイス、好ましくはペン型反復使用インジェクション・デバイスに連結して機能するように設計されればよい。インジェクション・デバイスは、再使用可能又は使い捨てデバイスであればよい。使い捨てデバイスとは、最初から薬剤が充填されてメーカーから入手し、最初の薬剤を使い果たし後、新たに薬剤を再充填できないインジェクション・デバイスを意味する。デバイスは、固定投与量又は設定可能な投与量であればよいが、いずれの場合も、それは、多投与量デバイスである。
【0066】
典型的なインジェクション・デバイスは、最初の薬物治療のカートリッジ又は他の主リザーバを含む。このカートリッジは、典型的には筒状であり、通常ガラスで製造される。カートリッジは、1つの末端がゴム栓で、他の末端はゴムセプタムによってシールされる。注射ペンは、複数回注射を主リザーバから送達するように設計される。送達メカニズムは、一般的にはユーザーの手動操作を動力源とするが、注入メカニズムはまた、バネ、圧縮ガス又は電気エネルギーなどの他の手段を動力源にしてもよい。さらなる実施態様では、支軸は、2つの異なるネジを含む回転可能なピストン・ロッドである。
【0067】
薬用モジュールが単回投与量の薬剤を含むいくつかの実施態様では、リザーバ内の単回投与量を患者に投与するために、そのモジュールを薬物送達デバイスに取り付けなければならない。言い換えると、薬用モジュールは、独立したインジェクション・デバイスとして使用されるようには構成されなくてもよい。これは、モジュールが投与量送達メカニズムを有しないからであり、むしろ連結されるべき薬物送達デバイスに含まれる投与量送達メカニズムに依存する。
【0068】
本発明の例示的な実施態様について説明した。当業者は、しかし、請求項によって定義される本発明の真の範囲及び精神から逸脱しないで、変更及び修正をこれらの実施態様に行うことができることを理解するだろう。
【0069】
参照のリスト
1 第1の薬剤;
2 2次薬剤、プレミックス薬剤;
3 針、カニューレ、出力針;
4 薬用モジュール;
5 拡大した横断面、拡大した断面;
6 針の断面/係合針、近位端、上部;
7 薬物送達デバイス;
8 取り付け手段;
10 セプタム;
11 カートリッジ;
12 投与量設定器;
13 投与量ボタン;
14 デバイスの遠位端;
15 主針;
16 2次針;
17 凹部;
18 保持キャップ;
20、20a、20b スパイラルマニホールド;
21 出力針;
22 主針;
23 保持キャップ;
24 螺旋溝;
25 半径方向位置;
26 スパイラルマニホールドの中心;
27 本体/薬用モジュールのハウジング;
30 2次リザーバ、リザーバ;
31 出力針;
32a、32b 穿孔可能な膜/セプタム、膜;
33 主針;
34 保持キャップ;
35a、35b 保持機能;
36 バイパス・チャンネル
37 空洞
38 下部空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスに取り付け可能な薬用モジュールであって、
a.近位端及び遠位端を有し、その近位端が薬物送達デバイス(7)に取り付けられるように構成されたコネクタを有するハウジング(27);及び
b.少なくとも1つのプレミックス薬剤(2)の投与量を含み、プレミックス薬剤(2)内の少なくとも1つの薬物作用物質が、薬物送達デバイス(7)の主リザーバ(11)に含まれる薬物作用物質と同一又は均等物である、リザーバ(5、17、30);
を含んでなる、上記薬用モジュール。
【請求項2】
リザーバがハウジング(27)内にある、請求項1に記載の薬用モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の薬用モジュールであって、ハウジング(27)内に固定された両頭針(3)を含んでなり、ここで、その針が、リザーバ(5、17、30)を画成するセクション(5)を有する、上記薬用モジュール。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の薬用モジュールであって、
c.ハウジング(27)の近位端におけるハブ内に固定された第1の針(22);
d.ハウジング(27)の遠位端内に固定された第2の針(21);
e.第2の針(21)と流体連通しているリザーバ(5、17、30)を画成するハウジング(27)内の凹部;
を含んでなる、上記薬用モジュール。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の薬用モジュールであって、
c.ハウジング(27)の近位端に位置する保持キャップ(34)に固定された第1の針(33);
d.ハウジング(27)の遠位端内に固定された第2の針(31);
を含んでなり、
リザーバが、第1の針(33)及び第2の針(31)と流体係合するように構成された上端シール(32a)及び下端シール(32b)を有する、上記薬用モジュール。
【請求項6】
リザーバ(5、17、30)がプレミックス薬剤(2)の単回投与量を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬用モジュール。
【請求項7】
薬物作用物質が同一又は同等の濃度である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬用モジュール。
【請求項8】
リザーバ(5、17、30)がシールされた無菌カプセルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の薬用モジュール。
【請求項9】
リザーバ(5、17、30)が液体のプレミックス薬剤(2)を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬用モジュール。
【請求項10】
リザーバ(5、17、30)中のプレミックス薬剤(2)が、インスリン及びGLP−1を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬用モジュール。
【請求項11】
単回投与インターフェース(3、16、21、31)を経由して作動可能な、2又はそれより多い薬剤を送達する薬物送達システムであって、
a.少なくとも第1の薬物作用物質を含む薬剤(1)の主リザーバ(11);
b.薬剤(1)の主リザーバ(11)に機能的に連結した投与量ボタン(13);
c.主リザーバ(11)と流体連通するように構成された単回投与インターフェース(3、16、21、31);及び
d.少なくとも1回投与量の第1の薬物作用物質及び少なくとも第2の薬物作用物質を含むプレミックス薬剤(2)の2次リザーバ(5、17、30)を含む、薬用モジュール(4);
を含んでなり、
ここで、投与量ボタン(13)の単回の作動が、主リザーバ(11)からの薬剤(1)及び2次リザーバ(5、17、30)からの少なくとも1つの投与量のプレミックス薬剤(2))を薬剤投与インターフェースを通して放出させる、上記薬物送達システム。
【請求項12】
2次リザーバ(5、17、30)が、プレミックス薬剤(2)の単回投与量を含む、請求項11に記載の薬物送達システム。
【請求項13】
薬剤(1)の主リザーバ(11)に機能的に連結された単回投与量設定器(13)を含むハウジング(27)を含んでなる、請求項11又は12に記載の薬物送達システム。
【請求項14】
薬用モジュール(4)に含まれる第1の薬物作用物質が、主リザーバ(11)の第1の薬物作用物質と同一又は同等の濃度のものである、請求項11〜13のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項15】
主リザーバ(11)及び2次リザーバ(5、17、30)の少なくとも1つが液状薬剤(1、2)を含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項16】
主リザーバ内の第1の薬物作用物質がインスリンである、請求項11〜15のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項17】
2次リザーバ(5、17、30)内のプレミックス薬剤(2)がインスリン及びGLP−1を含んでなる、請求項11〜16のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項18】
少なくとも2つの薬剤を別々のリザーバから投与する方法であって、
a. 少なくとも第1の薬物作用物質を含む薬剤(1)の主リザーバ(11)と機能的に連結された投与量ボタン(13)を含むデバイスハウジング(27)を含んでなる薬物送達デバイス(7)を備える工程;
b.第1の薬物作用物質及び少なくとも第2の薬物作用物質を含むプレミックス薬剤(2)の少なくとも1回投与量を含むリザーバハウジング(27)であって、ここでモジュール・ハウジング(27)は少なくとも1つの針(3、16、21、31)をその中に取り付けしている、該リザーバハウジング(27)を含んでなる薬物送達デバイス(7)に取り付けできるように構成された薬用モジュールを備える工程;
を、組み合わせて含んでなり、
ここで、投与量ボタン(13)の単回の作動が主リザーバ(11)からの薬剤(1)及びプレミックス薬剤(2)の少なくとも1回投与量を、針(3、16、21、31)を通して放出させる、上記方法。
【請求項19】
主リザーバ(11)が2次リザーバ(5、17、30)と流体連通している、請求項11〜17のいずれか1項に記載の薬物送達システム。
【請求項20】
投与量ボタン(13)の作動が主リザーバ(11)からの薬剤(1)を2次リザーバ(5、17、30)内に流入させ、それによって2次リザーバ(5、17、30)からプレミックス薬剤(2)を押し出す、請求項19に記載の薬物送達システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−528636(P2012−528636A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513582(P2012−513582)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057576
【国際公開番号】WO2010/139669
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】