説明

プレートフィン型熱交換器及びその制御方法

【課題】第1流体及び第2流体それぞれの流量調整ができないような場合において、プレートフィン型熱交換器の能力調整を可能にする。
【解決手段】プレートフィン型熱交換器1は、第1流体の流路2内に、当該第1流体の流れを横切るように配設された熱交換器本体(コア101)を備える。熱交換器本体は、第1流体が通過する第1流路と、第2流体が流れる第2流路とが交互に積層されたプレートフィン型であり、熱交換器本体は、複数のブロック11〜15に分割されていると共に、複数のブロックは、第1流体の流れ方向に直交する方向に並んでいる。各ブロックについて個別に、第2流体の流入部(入側ヘッダータンク102)及び流出部(出側ヘッダータンク103)が設けられていると共に、各ブロックの流入部側には、当該ブロックへの第2流体の供給及び供給停止を切り替える開閉弁43が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、プレートフィン型熱交換器及びその制御方法に関し、特に、動作条件に応じて熱交換能力の調整可能な熱交換器に係る。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、エンジン冷却部と排熱回収部との間で冷却水が循環する循環回路を備えたコジェネレーションシステムにおいて、排熱回収部からエンジン冷却部への冷却水のリターン経路をバイパスするように排熱用熱交換器を配置したシステムが記載されている。このシステムは、排熱回収部側の運転条件(排熱利用量)に応じて、当該排熱用熱交換器への冷却水の供給量を調整することにより、エンジン冷却部に戻される冷却水の温度を所望の温度以下に抑制する。また、熱交換器(蒸発器)への給水量を変更する別の技術として、特許文献2には、ガスタービンの排ガス通路内に配設した蒸発器を含む排熱回収ボイラとして、排熱量に応じて蒸発器への給水量を調整することにより、給水した水の全量を蒸発させる技術が記載されている。
【0003】
これに対し、特許文献3には、高温流体の流れ方向に対して直列に配置された複数の蒸発熱交換器を備え、熱負荷の変動に応じて、各熱交換器の内圧が三重点の圧力以上を維持するように、各熱交換器への水の供給及び供給停止を切り替えるようにしたシステムが記載されている。また、複数の熱交換器を備えかつ、要求される運転負荷に応じて使用する熱交換器の数を調整する空調システムも知られている(例えば特許文献4、5参照)。
【0004】
このように、熱交換器の動作条件に応じて、熱交換器への流体の供給量を調整したり、使用する熱交換器の数を変更したりする技術が従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−247834号公報
【特許文献2】特開2003−314298号公報
【特許文献3】特開2009−14335号公報
【特許文献4】特開2006−153436号公報
【特許文献5】特開平10−197194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、熱交換器の用途によっては、熱交換器に供給される高温流体の流量及び温度が変化すると共に、熱交換器に供給される低温流体(例えば液体)の量もまた、変化する場合がある。さらに、熱交換器に供給される高温流体の流量及び温度の変化と、熱交換器に供給される低温流体の流量の変化とが比例せず、例えば高温流体の流量が増大したり高温流体の温度が高まったりする一方で、低温流体の流量が減少することもある。
【0007】
このように、熱交換器には、様々な動作条件が課される一方で、熱交換器の出側の低温流体の温度は所定の範囲内にすることが要求されることもある。例えば沸点に至らない限度で、沸点近傍の所定の範囲内にするという場合である。
【0008】
従って、熱交換器の様々な動作条件に対応して熱交換能力の調整が必要になる。しかしながら、熱交換器に供給される高温流体の流量及び低温流体の流量を調整することができない場合は、特許文献1、2に記載されているように、熱交換器への低温流体の供給量を増大するような能力調整は採用できない。
【0009】
また、高温流体の温度が極めて高温であると共に、その流量も比較的高いときには、熱交換器への高温流体の供給量を減らすように、例えば流量調整弁やバイパス経路を設けるような構成を採用することは、その設備が大掛かりになって、コストが大幅に増大してしまうから現実的ではない。
【0010】
さらに、例えば特許文献3等に記載されているように、複数の熱交換器を排ガスの流れ方向に並べて配置した上で、使用する熱交換器の数を変更する構成は、供給した水を確実に蒸発させるような能力調整はできるとしても、供給した低温流体の温度を所定温度以下に抑制するような能力調整はできない。
【0011】
尚、熱交換器に供給される第1流体及び第2流体双方の流量調整ができないような場合において、熱交換能力を調整したいという要求は、例えば燃料電池発電システムや温水ボイラ等において生じる可能性がある。燃料電池発電システムでは、燃料電池セルからの排熱を使用して水を加熱する熱交換器を備える場合があるが、このような燃料電池発電システムに利用される熱交換器では、その燃料電池発電システムの運転モードに応じて、熱交換器に供給される排ガスの流量及び温度が変化すると共に、熱交換器に供給される水の量もまた、変化することになるのである。
【0012】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1流体及び第2流体それぞれの流量調整ができないような場合において、プレートフィン型熱交換器の能力調整を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここに開示するプレートフィン型熱交換器は、第1流体の流路内に、当該第1流体の流れを横切るように配設された熱交換器本体を備える。
【0014】
そして、前記熱交換器本体は、前記第1流体が通過する第1流路と、前記第1流体と熱交換をする第2流体が流れる第2流路とが交互に積層されたプレートフィン型であり、前記熱交換器本体は、複数のブロックに分割されていると共に、当該複数のブロックは、前記第1流体の流れ方向に直交する方向に並んでおり、前記各ブロックについて個別に前記第2流体の供給及び排出が可能となるように、前記熱交換器本体に対して流入部及び流出部が設けられていると共に、前記流入部側には、前記複数のブロック毎に、前記第2流体の供給及び供給停止を切り替える開閉弁が設けられている。
【0015】
ここで、熱交換器本体を複数のブロックに分割することは、例えば熱交換器本体を、それぞれ独立した複数の熱交換器ユニットの集合によって構成することで実現してもよい。また、一つのコアに対し複数のヘッダータンクを取り付けることによって、熱交換器本体を実質的に、複数のブロックに分割するようにしてもよい。
【0016】
また、後述するように、この構成においては、熱交換器本体の複数のブロックについて、第2流体の供給及び供給停止の切替が個別に可能となればよいため、少なくとも第2流路を分割することによって、熱交換器本体を複数のブロックに分割すればよい。
【0017】
前記の構成によると、第1流体の流路内に配設された熱交換器本体は、複数のブロックに分割されており、各ブロックについて個別に第2流体の供給及び排出が可能に構成されている。そうして、その複数のブロック毎に、第2流体の供給及び供給停止を切り替える開閉弁が設けられている。この構成により、この熱交換器本体に対しては、各開閉弁の開閉を切り替えることによって複数のブロックの一つ一つについて、第2流体を供給している状態と、第2流体の供給を停止している状態とを、切り替えることが可能になる。
【0018】
一方、複数のブロックは、第1流体の流れ方向に直交する方向に並んでいるため、第2流体を供給しているブロックでは第1流体と第2流体との間で熱交換が行われる一方、第2流体の供給を停止しているブロックでは第1流体と第2流体との間の熱交換は行われず、第1流体は素通りするだけとなる。このことは、熱交換器本体に供給して熱交換に寄与させる第1流体の流量を調整していることと等価である。
【0019】
従って、第1流体及び第2流体の流量の調整ができないような場合であっても、その第1流体の流量及び温度や第2流体の流量に応じて各開閉弁の開閉を切り替え、熱交換器本体において第2流体を供給するブロックを選択することにより、伝熱面積の調整と第1流体の実質的な流量の調整とが可能になる。その結果、このプレートフィン型熱交換器の熱交換能力の調整が可能になり、例えば第2流体の出口温度を所望の温度範囲に調整することが可能になる。このことは特に、第1流体が高温流体であって、その温度が比較的高いために、第1流体の流量調整が困難な場合や、第1流体の流量が比較的高いため、第1流体の流量調整が困難な場合において、低温流体としての第2流体の上限温度を、所定温度に制限する上で有利になる。
【0020】
例えば前記第2流体を液体とし、複数の前記開閉弁をそれぞれ、前記複数のブロックについて選択的に前記液体を供給することにより当該液体が前記熱交換器本体内で沸騰しないように、その開閉を切り替えるようにしてもよい。こうすることで、沸騰直前の第2流体を得ることができる。
【0021】
前述したように、前記のプレートフィン型熱交換器における一部のブロックのみに第2流体の供給を行っているときは、第2流体が供給されているブロックの下流側は第1流体の温度が相対的に低下し、第2流体が供給されていないブロックの下流側は第1流体の温度が相対的に高まる。つまり、第1流体の流路におけるプレートフィン型熱交換器の下流側には、その流路横断面において温度分布が生じ得る。
【0022】
そこで、前記第1流体の流路内における前記熱交換器本体の下流側に配置されかつ、当該熱交換器本体の前記第1流路を通過した前記第1流体の流れを整流させる整流手段をさらに備えるようにしてもよい。ここで言う「整流」は、第1流体の流路横断面における温度分布が低減、又は、なくなるように、第1流体を混合させる機能を言う。
【0023】
こうすることで、第1流体の流路において、前記のプレートフィン型熱交換器よりも下流側に、別の熱交換器を配置したとしても、この熱交換器が前記のプレートフィン型熱交換器によって生じる温度分布の影響を受けることがなくなる。
【0024】
また、これとは異なり、前記第1流体の流路内には、前記熱交換器本体を含む複数の熱交換器が、前記第1流体の流れ方向に並んで配設されており、前記熱交換器本体は、前記第1流体の流れ方向の最下流位置に配置されているとしてもよい。こうすることによって、他の熱交換器が、前記のプレートフィン型熱交換器によって生じる温度分布の影響を受けることがなくなる。
【0025】
ここに開示する別の技術は、前述したプレートフィン型熱交換器の制御方法に係る。つまり、その制御方法は、前記第1流体としての高温流体の流量及び温度の少なくとも一方と、前記第2流体としての液体の流量とに従って各開閉弁の開閉を切り替えることにより、前記液体の温度が所定の温度範囲内になるように、前記熱交換器本体における複数のブロックについて選択的に液体を供給するステップと、前記液体の供給を停止したブロックについて、その供給停止後に当該ブロック内に残った液体を排出するステップと、を備える。
【0026】
この構成によると、第1流体としての高温流体の流量及び温度の少なくとも一方と、第2流体としての液体の流量とに従って、各開閉弁の開閉を切り替える。このことにより、前述したように、液体を供給しているブロックでは高温流体と液体との間で熱交換が行われて、液体の温度が所定の温度にまで高められる。
【0027】
一方、液体の供給を停止しているブロックでも高温流体が通過するため、このブロック内に液体が残っているときには、残留している液体の温度が高まって沸騰してしまう。これはプレートフィン型熱交換器の損傷を招く虞がある。そこで、液体の供給を停止しているブロックについては、その開閉弁を閉じた後に、当該ブロック内に残っている液体を排出する。このことにより、液体の供給を停止しているブロック内に残った液体が沸騰してしまうことが未然に回避される。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、前記のプレートフィン型熱交換器及びその制御方法によると、第1流体の流量及び温度や第2流体の流量に応じて各開閉弁の開閉を切り替え、熱交換器本体において第2流体を供給するブロックを選択することにより、伝熱面積の調整と第1流体の実質的な流量の調整とが可能になるため、第1流体及び第2流体の流量の調整ができないような場合であっても、プレートフィン型熱交換器の熱交換能力の調整が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】プレートフィン型熱交換器の概略平面図である。
【図2】プレートフィン型熱交換器の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、プレートフィン型熱交換器の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、単なる例示である。図1、2は、プレートフィン型熱交換器1の構成を示しており、図1は平面図、図2は正面図である。このプレートフィン型熱交換器1は、例えば所定システムの排熱を利用して水を、所定の温度帯(後述するように、沸騰寸前の温度帯)に加熱するための熱交換器である。この熱交換器が適用可能なシステムとしては、燃料電池発電システムや、温水ボイラシステム等を例示することができる。但し、排熱利用のシステムに限定されない。
【0031】
プレートフィン型熱交換器1は、高温流体として高温ガス(例えば排ガス)が流れる高温ガス流路2内に、高温ガスの流れを横切るように配置されている。高温ガス流路2は、図例では上下方向に延びて配設されていると共に、高温ガスが下から上向きに流れるように構成されている。但し、高温ガス流路2の配置や高温ガスの流れ方向は、これに限定されない。高温ガス流路2内には、前記のプレートフィン型熱交換器1とは別の熱交換器が2つ配置されており、これら別の熱交換器31、32は、高温ガスの流れ方向の上流側(図2における下側)に配置されている。言い換えると、前記のプレートフィン型熱交換器1は、高温ガス流路2内における最下流位置に配置されている。
【0032】
プレートフィン型熱交換器1の基本的な構成は、その詳細な構成は後述するが、高温ガスが通過する第1流路と、高温ガスによって加熱される低温流体としての水が流れる第2流路とを、チューブプレートによって区画しながら、図1における上下方向に積層することでコア(つまり、熱交換器本体)101を構成するものである。第1流路及び第2流路内にはそれぞれ、所定形状のコルゲートフィンが配設されて、伝熱面積の拡大が図られている。コア101は、積層された多数のチューブプレート及びコルゲートフィンを、ろう付け等によって互いに接合することによって成形すればよいが、このようなプレートフィン型熱交換器1では、その内部において水が沸騰すると損傷してしまう虞がある。
【0033】
ここで、このシステムでは、高温ガス流路2内に配設されたプレートフィン型熱交換器1に流入する高温ガスの温度及び流量が変化すると共に、プレートフィン型熱交換器1に供給される水の流量も変化するように構成されている。この高温ガスの温度及び流量と、水の流量とは、必ずしも比例せず、例えば高温ガスの温度及び流量が高いのに対して、水の流量が低かったり、逆に、高温ガスの温度及び流量が低いのに対して、水の流量が高かったりする。
【0034】
一方で、前述の通り、プレートフィン型熱交換器1においては、その内部で水が沸騰してしまうことを回避しつつ、出側の水の温度を、沸騰寸前の所望の温度範囲内にすることが要求されている。
【0035】
そこで、このプレートフィン型熱交換器1は、高温ガスの温度及び流量、並びに、水の流量を調整することができないという動作条件下において、その熱交換能力が調整可能となるように、図1に示すように、高温ガスの流れ方向(図1の紙面に直交する方向)に対し直交する方向に並んで配置された、複数のブロックに分割されていることを特徴とする。以下、この特徴的な構成について詳細に説明する。
【0036】
すなわち、プレートフィン型熱交換器1のコア101は、図1に示すように、高温ガス流路2の横断面形状に対応するように、図の上下方向に細長い形状を有していると共に、図2に示すように、高温ガスの流れ方向(高さ方向)には比較的薄い形状を有しており、全体として扁平である。コア101において、高温ガスが通過する第1流路は、コア101の上面側及び下面側のそれぞれに開口しており、高温ガスは、コア101の下面側から第1流路に流入し、コア101の上面側から流出する(図2の実線の矢印参照)。
【0037】
一方、水が流れる第2流路は、図示は省略するが、図1における左右の側面に開口している。第2流路に水を供給する流入部として、複数の(図例では5個の)互いに独立した入側ヘッダータンク102が、コア101の右側面に並んで取り付けられていると共に、入側ヘッダータンク102と対応するように、第2流路から水を排出する流出部として、複数の(図例では5個の)互いに独立した出側ヘッダータンク103が、コア101の左側面に並んで取り付けられている。これによって、図1に白抜きの矢印で示すように、各入側ヘッダータンク102からコア101内に流入した水は、それに対応する出側ヘッダータンク103から流出するようになるから、このプレートフィン型熱交換器1は、第1〜第5の5個のブロック11〜15に分割されていることと等価な構成を有している。ここで、第1〜第5の5つのブロック11〜15は互いに異なる大きさである。つまり、各ブロック11〜15の熱交換能力は、第1ブロック11、第4ブロック14、第3ブロック13、第2ブロック12及び第5ブロック15の順で、次第に大きくなるように設定されており、熱交換能力が相対的に小さい第1ブロック11や第4ブロック14が隣り合わないようにかつ、熱交換能力が相対的に大きい第2ブロック12や第5ブロック15が隣り合わないように配置されている。
【0038】
そうして、各入側ヘッダータンク102に設けられたノズル104には、水の供給経路41から分岐した各分岐供給管42が接続されていると共に、各分岐供給管42上には、後述するコントローラ5によって開閉制御される開閉弁43が介設されている。また、各分岐供給管42には、図2に一つのみ図示するが、ブロック11〜15内の水を排出するためのドレン管44が接続されており、各ドレン管44にも、コントローラ5によって開閉制御される開閉弁(ドレン弁)45が介設されている。ここで、入側ヘッダータンク102のノズル104は、図2に一つのみ図示するが、下向きに傾斜しており、これによって、詳しくは後述するが、ブロック11〜15内の水を排出し易くしている。尚、図示はしないが、コア101が、水の入側(図2における右側)に向かって下向きに傾斜するように、プレートフィン型熱交換器1を傾けて配設してもよい。
【0039】
さらに、各入側ヘッダータンク102には、図2に一つのみ図示するが、ブロック11〜15内の圧力が所定の圧力よりも高くならないようにするためのリリーフ弁46が取り付けられている。このリリーフ弁46は、ブロック内の圧力を大気圧以下に維持する。
【0040】
これに対し、複数の出側ヘッダータンク103のノズル105にはそれぞれ、個別の排出管47が接続されており、複数の排出管47はその下流側において集合している。各排出管47上にはまた、熱交換器1側への水の逆流を防止するための逆止弁48が介設されている。
【0041】
次に、以上のように構成されたプレートフィン型熱交換器1の制御について説明する。前述の通り高温ガスの温度及び流量、並びに、水の流量が変化することに応じて、プレートフィン型熱交換器1において使用するブロック11〜15を予め設定しており、コントローラ5は、その予め設定された条件に従って、各開閉弁43の開閉制御を行う。その結果、開閉弁43が開けられることによって水が供給されるブロックでは、白抜きの矢印で示すように、水が、入側ヘッダータンク102からコア101を通って出側ヘッダータンク103に至るようになる。これに対し、開閉弁43が閉められたブロックでは、水が流れない。
【0042】
一方で、高温ガスは高温ガス流路2内を常時流れているから、水が供給されているブロックも、水が供給されていないブロックも、高温ガスは通過することになる。このため、水が供給されているブロックでは、高温ガスと水との間で熱交換が行われて水が加熱され、所定の温度で水が排出される。一方、水が供給されていないブロックでは、熱交換は行われずに、高温ガスのみが素通りすることになる。このことは、熱交換に寄与する高温ガスの流量を調整していることと等価である。
【0043】
従って、分割した各ブロック11〜15への水の供給及び供給停止を切り替えることによって、伝熱面積の調整と高温ガスの実質的な流量調整とが可能になり、プレートフィン型熱交換器1に供給する水の流量を調整できないときでも、水の出側温度を所望の温度範囲内となるように調整することが可能になる。
【0044】
ここで、プレートフィン型熱交換器1の制御としては、第1〜第5ブロック11〜15は互いに異なる大きさであるため、(1)いずれか一つのブロックを使用(5通り)、(2)いずれか二つのブロックを使用(10通り)、(3)いずれか三つのブロックを使用(10通り)、(4)いずれか四つのブロックを使用(5通り)、(5)第1〜第5ブロック11〜15の全てを使用(1通り)の、31通りのパターンが存在している。つまり、このプレートフィン型熱交換器1は、その熱交換能力を、31段階に調整可能である。
【0045】
前述の通り、水の供給を停止したブロックについても高温ガスが通過することから、仮にそのブロック内に水が残っていると、高温ガスによって加熱されてブロック内で沸騰してしまう虞がある。そこで、水の供給を停止するブロックについては、開閉弁43を閉じた後に、ドレン弁45を開けることによって、当該ブロックの内部に残っている水を排出させることが好ましい。こうすることで、入側ヘッダータンク102に設けられた下向き傾斜のノズル104を介して、ブロック内に残っている水を排出させることが可能になり、内部での沸騰を未然に回避することが可能になる。
【0046】
また、各出側ヘッダータンク103には逆止弁48が介設されているため、水の供給を停止して内部を空にしたブロックに対して水が逆流してしまうことが防止される。このことは、逆流した水が高温のブロックに触れて沸騰してしまうことを未然に防止し、圧力変動に伴う騒音の抑制や、コア内部での沸騰に伴う損傷を回避することが可能になる。
【0047】
このようにして、プレートフィン型熱交換器1は、熱交換能力を調整することが可能であるが、複数のブロック11〜15を、高温ガス流路2において、排ガスの流れ方向に直交する方向に並べて配置しているため、水を供給しているブロックを通過した高温ガスは相対的に温度が低下する一方、水を供給していないブロックを通過した高温ガスは相対的に温度が高くなる。このため、高温ガス流路2内において、このプレートフィン型熱交換器よりも下流側では、高温ガスの温度がその流路横断面において一定ではなく温度分布を生じることになる。そこで、このプレートフィン型熱交換器1よりも下流側に、別の熱交換器を配置するのではなく、このプレートフィン型熱交換器1を、高温ガスの流れ方向の最下流位置に配置することが望ましい。尚、熱交換能力を段階的に調整する際に、前述の通り、熱交換能力が相対的に小さいブロックが隣り合わないようにかつ、熱交換能力が相対的に大きいブロックが隣り合わないように配置することは、使用するブロックが、高温ガス流路2内において、一方に片寄ることを抑制し得るという利点がある。
【0048】
尚、プレートフィン型熱交換器の構成は、前述したように一つのコア101に対し、複数の個別のヘッダータンク102、103を取り付ける構成には限定されない。例えば入側ヘッダータンク、コア及び出側ヘッダータンクからなる熱交換器ユニットを複数個、用意し、それら複数の熱交換器ユニットを、高温ガス流路2内において、高温ガスの流れ方向に対し直交する方向に並べて配置してもよい。
【0049】
また、入側ヘッダータンクを、複数の個別のヘッダータンクに構成しなくても、一つのヘッダータンクの内部に区画壁を設けることによって複数に分割してもよい。また、出側ヘッダータンクも同様である。
【0050】
さらに、プレートフィン型熱交換器の分割数に制限はない。また、各ブロックの熱交換能力も適宜設定すればよく、熱交換能力を互いに同じにしたブロックが含まれていてもよい。例えば複数のブロックを全て同じ熱交換能力にしてもよい。これらは、プレートフィン型熱交換器の能力変更幅(つまり、最大能力と最小能力との差)や、その調整量に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
加えて、高温ガス流路2内におけるプレートフィン型熱交換器1の下流側に、例えばバッフル板等の整流手段を配置することで、プレートフィン型熱交換器1の第1流路を通過した高温ガスの流れを整流してもよい。このことにより、プレートフィン型熱交換器1の下流側における温度分布の発生を抑制、又は、回避することが可能になる。従って、この構成では、前述したように、プレートフィン型熱交換器1を高温ガス流路2内における高温ガスの長さ方向の最下流位置に配置するという制約がなくなり、このプレートフィン型熱交換器1よりも下流側、正確には整流手段よりも下流側に、別の熱交換器を配置することが可能になる。
【0052】
さらに、ここに開示するプレートフィン型熱交換器は、一例として、高温流体の流量が大きくかつその温度も高温である燃料電池発電システムにおいて利用する熱交換器として極めて有用である。しかしながら、プレートフィン型熱交換器は、特定のシステム用に限定されるものではなく、プレートフィン型熱交換器に流入する第1流体及び第2流体の流量調整ができないような場合において熱交換能力調整が要求される用途に広く利用することが可能である。例えば温水ボイラーシステムを例示することができる。従って、第1流体及び第2流体の相状態(つまり、液体であるか、気体であるか)や、相対的な温度関係については、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、ここに開示したプレートフィン型熱交換器は、第1流体及び第2流体それぞれの流量調整ができないような場合において、その熱交換能力を調整可能な点で、各種システム用のプレートフィン型熱交換器として有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 プレートフィン型熱交換器
101 コア(熱交換器本体)
102 入側ヘッダータンク(流入部)
103 出側ヘッダータンク(流出部)
11〜15 ブロック
2 高温ガス流路
43 開閉弁
45 ドレン弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体の流路内に、当該第1流体の流れを横切るように配設された熱交換器本体を備え、
前記熱交換器本体は、前記第1流体が通過する第1流路と、前記第1流体と熱交換をする第2流体が流れる第2流路とが交互に積層されたプレートフィン型であり、
前記熱交換器本体は、複数のブロックに分割されていると共に、当該複数のブロックは、前記第1流体の流れ方向に直交する方向に並んでおり、
前記各ブロックについて個別に前記第2流体の供給及び排出が可能となるように、前記熱交換器本体に対して流入部及び流出部が設けられていると共に、前記流入部側には、前記複数のブロック毎に、前記第2流体の供給及び供給停止を切り替える開閉弁が設けられているプレートフィン型熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載のプレートフィン型熱交換器において、
前記第2流体は液体であり、
複数の前記開閉弁はそれぞれ、前記複数のブロックについて選択的に前記液体を供給することにより当該液体が前記熱交換器本体内で沸騰しないように、その開閉が切り替えられるプレートフィン型熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレートフィン型熱交換器において、
前記第1流体の流路内における前記熱交換器本体の下流側に配置されかつ、当該熱交換器本体の前記第1流路を通過した前記第1流体の流れを整流させる整流手段をさらに備えているプレートフィン型熱交換器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプレートフィン型熱交換器において、
前記第1流体の流路内には、前記熱交換器本体を含む複数の熱交換器が、前記第1流体の流れ方向に並んで配設されており、
前記熱交換器本体は、前記第1流体の流れ方向の最下流位置に配置されているプレートフィン型熱交換器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレートフィン型熱交換器の制御方法であって、
前記第1流体としての高温流体の流量及び温度の少なくとも一方と、前記第2流体としての液体の流量とに従って各開閉弁の開閉を切り替えることにより、前記液体の温度が所定の温度範囲内になるように、前記熱交換器本体における複数のブロックについて選択的に液体を供給するステップと、
前記液体の供給を停止したブロックについて、その供給停止後に当該ブロック内に残った液体を排出するステップと、を備えるプレートフィン型熱交換器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64569(P2013−64569A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204236(P2011−204236)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】