説明

プレート式熱交換容器

【課題】設備コストの低減と装置全体の大型化の抑制を達成しつつ、高い熱交換効率を得ることができるプレート式熱交換容器を提供する。
【解決手段】冷媒ガスが導入され熱交換プレート10が内設される容器1内で、前記冷媒ガスの顕熱と凝縮潜熱を利用して流体の加熱を行うプレート式熱交換容器において、前記容器1は第1の仕切板11と第2の仕切板の区分けにより冷媒ガス導入口2から冷媒ガス導出口4に向う冷媒ガスの片流れ方向流が形成され、前記第1の仕切板11と第2の仕切板12の取り付け位置を前記冷媒ガス導入口2側に偏在させて顕熱加熱域21と潜熱加熱域22とに分離されて備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒ガスが導入され熱交換プレートが内設される熱交換区域内で、前記冷媒ガスの顕熱と凝縮潜熱を利用して流体の加熱を行うプレート式熱交換容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プレート式熱交換容器は、流路及び強度を考慮して表面に凹凸が形成された熱交換プレート(伝熱板)を容器内に複数重ね合わせて交互にそれぞれの流体が流れる構造の熱交換器であり、熱交換プレートを通じて2つの流体間で熱の授受を行わせる。
ここで、従来のプレート式熱交換器に関し、図3を用いて以下説明する。図3は従来のプレート式熱交換容器に係り、(a)はプレート式熱交換容器の構成を説明する縦断側面図、(b)は熱交換素子の拡大断面図である。
【0003】
従来のプレート式熱交換容器は、図3(a)に示すように、容器51と、該容器51内に設けられる多数の熱交換素子52と、該熱交換素子52の間に挟在する仕切板53とを備える。また、容器51は密閉されており、前記容器51の上部に設けられ水を流入させる水導入口54と、該容器51の下部に設けられ水を流出させる水導出口55と、他方の流体である冷媒を導入する冷媒導入口63と、冷媒を導出する冷媒導出口64とを備える。
【0004】
熱交換素子52は、図3(b)に示すように、2枚1組のプレート52a、52bの周囲を溶接して内部に中空室52cを形成するとともに、上下に貫通孔56,57を有している。
また、熱交換素子52の間に挟在する仕切板53は、容器51内を区画するものであり、仕切板53の設置数は容器51内に流通する流体の流量に応じて増減される。
【0005】
図3(a)に示すようにして各熱交換素子52の中空室52c内には、冷媒導入口63から冷媒が導入され、各熱交換素子52の中空室52c内に分岐流入し、冷媒導出口64から流出される。また、水は水導入口54から容器51内に流入し、各熱交換素子52の間を通って仕切板53の連通孔65から隣室に入り、水導出口55から出ていく(特許文献1参照)。
【0006】
また、その他のプレート式熱交換容器として、特許文献2(特開昭53−43082号公報)や特許文献3(特開昭53−39974号公報)などが開示されており、以下に示す。
特許文献2は、上端面に蒸気供給口を有し、下端面に蒸気排出口を有するケーシングと、上部に冷却液排出口を有しケーシングに固着された固定フレームと、下部に冷却液供給口を有し締結手段によりケーシングに固定され得る移動フレームと、移動フレームを貫通し一端を固定フレームに固着され他端をサポートにて支持されたガイドバーと、ガイドバーと係合し得る切欠を長辺部に有し適宜開口する蒸気通路間隙と密閉された冷却液通路間隙とを交互に形成するプレート群とよりなり、このプレート群を、前記ガイドバーにてケーシング内に懸吊させると共に移動フレームにて強圧させるようになしている。
【0007】
さらに、特許文献3は、二種のプレートを交互に複数枚重合して冷却液通路と蒸気通路を交互に形成したプレート式凝縮器であって、長方形の対応する一対の溝部を斜めに切除した形状を有し、残る一対の溝部に冷却液の入口と出口を各々設けた二種のプレートの内、一方はガスケットにて伝熱有効部と冷却出入口とを互いに連通するように囲み込んで冷却液通路を構成し、他方は伝熱有効部と冷却液出入口とを断絶し且つ蒸気の導入開口並びに導出開口を形成する如くガスケットを嵌装して蒸気通路を構成してなり、蒸気導入方向を蒸気通路内の蒸気流下方向と略平行になしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−41796号公報
【特許文献2】特開昭53−43082号公報
【特許文献3】特開昭53−39974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に凝縮器としてのプレート式熱交換容器は、熱交換プレートを通じて冷媒ガスと被加熱流体の2つの流体間で熱の授受を行っており、熱交換することにより冷媒ガスは凝縮し、被加熱流体は温水となる。このとき従来のプレート式熱交換容器では、過熱冷媒ガスの熱交換効率は低く、冷媒ガスの凝縮温度と被加熱流体の温水温度との間に温度差が3℃以上あり、凝縮温度が高く、冷凍機COPが小さく、圧縮機電力が大きいという問題があった。
このことから過熱冷媒ガスの熱交換効率を高めるために、専用設計された顕熱部を別置きにすることが提案されたが、結果として顕熱部と潜熱部とする2つの熱交換器を有することになり、熱交換容器が大型化し、熱交換面積の増加や設備費の増加、機器全体の大型化を招く。
【0010】
そのため、プレート式熱交換容器の熱交換効率を高めるために、特許文献1は容器に流通せしめられる他方の流体の流量に応じて、該流体の容器内入口から出口に向う流速が常に一定となるように容器内流路を少なくとも1つの連通孔を持つ適宜枚数の仕切板で区画しているが、熱交換素子の間に挟在される仕切板は張り出しが長く部品製造のコストがかかる。
また、特許文献2と特許文献3は、被加熱流体の通路がプレートの上下に設けられ、冷媒ガス供給口がプレートを介在させて熱交換容器の上方に、冷媒ガス排出口が熱交換容器の下方に配設されているために熱交換容器の上方側と下方側とでは大きな温度差が生じる。このため、プレートの伝熱面を介して熱交換容器の上方側と下方側で熱交換してしまい、熱損失の量が大きくなってしまう。さらに、装置全体をコンパクトにし且つ熱交換効率を向上させるために、1つの熱交換容器内に顕熱部と潜熱部を有することが考えられるが、特許文献1〜3の何れにもその記載は見当たらない。
【0011】
そこで、本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、設備コストの低減と装置全体の大型化の抑制を達成しつつ、高い熱交換効率を得ることができるプレート式熱交換容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するため、冷媒ガスが導入され熱交換プレートが内設される熱交換区域内で、前記冷媒ガスの顕熱と凝縮潜熱を利用して流体の加熱を行うプレート式熱交換容器において、前記熱交換区域は仕切板の区分けにより前記冷媒ガスが導入される冷媒ガス導入口側から該冷媒ガスが導出される冷媒ガス導出口側に向う冷媒片流れ方向流が形成され、前記仕切板取り付け位置を前記冷媒ガス導入口側に偏在させて前記熱交換区域が顕熱加熱域と潜熱加熱域とに分離されることを特徴とする。
【0013】
かかる発明によれば、前記熱交換区域は仕切板の区分けにより過熱された冷媒ガスが導入される冷媒ガス導入口側から該冷媒ガスが導出される冷媒ガス導出口側に向う冷媒片流れ方向流が形成され、前記仕切板取り付け位置を前記冷媒ガス導入口側に偏在させて前記熱交換区域が顕熱加熱域と潜熱加熱域とに分離されるために、一つの熱交換容器内に顕熱加熱域と潜熱加熱域とを形成することができる。よって、顕熱加熱域のプレート枚数を最適化することにより、過熱冷媒ガスの流速を高め、その熱交換効率が高められる。また、熱交換器全体の小型化を達成することができる。すなわち、設備費を低減することができ、熱交換容器の性能向上が可能となる。
【0014】
また、前記熱交換区域にて熱交換される前記流体を容器内に導く入口側管路と、熱交換された前記流体を該容器外へ導く出口側管路と、該入口側管路と該出口側管路との間を連絡する中間管路とを備えるとともに、該中間管路の末端側に近接する前記冷媒ガス導入口と、該冷媒ガス導入口の対角に設けられ前記入口側管路の始端側に近接する前記冷媒ガス導出口とを備える容器であって、
前記入口側管路と前記出口側管路は前記容器内下方側に分断されて備えられ、前記中間管路は前記容器内に併設される熱交換プレートの伝熱面を介して該入口側管路と該出口側管路のそれぞれと接続されて備えられ、前記冷媒ガス導入口から導入される冷媒ガスを容器下方向に導く第1の仕切板を該冷媒ガス導入口に隣接する前記中間管路の末端側に形成し、前記冷媒ガス導出口に向う冷媒ガス流れを容器上方向に導く第2の仕切板を前記出口側管路の前記入口側管路側末端に形成することを特徴とする。
【0015】
このようにして、入口側管路と出口側管路と中間管路を熱交換容器内に配置し、さらに冷媒ガス流れを導く第1、第2の仕切板を設けることにより、熱交換容器内に顕熱を利用して流体(被加熱流体)を加熱する顕熱加熱域と、凝縮潜熱を利用して流体を加熱する潜熱加熱域が形成される。これにより、熱交換効率が高められるとともに熱交換器全体の大型化の抑制を達成することができる。
【0016】
また、前記流体が前記顕熱加熱域と前記潜熱加熱域のそれぞれで前記冷媒片流れ方向流と対向する対向流を形成することを特徴とする。
このように、前記顕熱加熱域と前記潜熱加熱域のそれぞれで過熱冷媒ガスの片流れ方向流と前記流体の片流れ方向流とを対向にすることにより、常に冷媒ガスと流体の温度差を確保することができ、熱交換効率を向上させることができる。さらに、熱交換器全体の小型化を達成する。
【0017】
さらにまた、前記顕熱加熱域を流れる前記冷媒ガスの冷媒片流れ方向流が下方向から上方向に変わる変向部に該顕熱加熱域で生じる冷媒凝縮液を分離して前記熱交換区域外に流出させる連通管を備え、該連通管は液トラップを有することを特徴とする。
このように、前記顕熱加熱域を流れる前記冷媒ガスの冷媒片流れ方向流が下方向から上方向に変わる変向部に前記連通管を備えることにより、運転条件の変動によって顕熱加熱域で冷媒ガスが凝縮して冷媒液となっても連通管を通じて受液器に流すことができる。また、前記連通管は液トラップを有しているので、連通管を通じて受液器に冷媒ガスが流れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設備コストの低減と装置全体の大型化の抑制を達成しつつ、高い熱交換効率を得ることができるプレート式熱交換容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のプレート式熱交換容器の基本構成を説明する概略図である。
【図2】本発明の実施形態におけるプレート式熱交換容器の全体図である。
【図3】従来のプレート式熱交換容器を説明する図であり、(a)は縦断側面図、(b)は熱交換素子の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
まず、図1を用いて本発明のプレート式熱交換容器の基本構成を説明する。図1に示すプレート式熱交換容器は、容器1と、該容器1内に複数重ね合わせて配設される熱交換プレート10と、前記容器1内に過熱された冷媒ガスを導入させる冷媒ガス導入口2と、該冷媒ガス導入口2の対角に形成され、冷媒ガスを導出させる冷媒ガス導出口4と、被加熱流体(以下、流体と称す)を容器1内に導く入口側管路3と、熱交換された該流体を容器1外へ導く出口側管路7と、前記入口側管路3と出口側管路7との間を連結する中間管路5とで構成される。
【0022】
前記熱交換プレート10は表面に凹凸形状と、両端に開口部とが形成されている。内部空間を形成するように2枚1組として熱交換プレート10を重ね合わせ、周辺部を密閉させて熱交換体を形成する。前記熱交換体の両端にそれぞれ備えられる開口部が互いに連通するように熱交換プレート10を重ね合わせ、容器1内に熱交換区域を構成している。
【0023】
前記入口側管路3と前記出口側管路7は、前記容器1内の下方側に分断されて備えられている。前記中間管路5は、熱交換プレート10の伝熱面を介して前記入口側管路3と前記出口側管路7のそれぞれと接続され、前記容器1内の上方側に備えられている。
前記入口側管路3と前記出口側管路7と前記中間管路5は、前記熱交換プレート10に備えられる開口部が該熱交換プレート10の重ね合わせにより連なることによって形成される。
【0024】
また、本発明のプレート式熱交換容器は、前記冷媒ガス導入口2にする前記中間管路5の末端側に形成される第1の仕切板11と、前記出口側管路7の前記入口側管路3側の末端に形成される第2の仕切板12とを備える。
前記第1の仕切板11は、前記冷媒ガス導入口2から導入される冷媒ガスを容器下方向に導く。また、前記第2の仕切板12は、前記冷媒ガス導出口4に向う冷媒ガス流れを容器上方側に導くものである。
【0025】
これらの構成をもとに、本発明の実施形態におけるプレート式熱交換容器について説明する。図2は、実施形態におけるプレート式熱交換容器の全体図である。
図2に示すプレート式熱交換容器は、図1と同様に、容器1と、該容器1内に複数重ね合わせて配設される熱交換プレート10と、前記容器1内に冷媒ガスを導入させる冷媒ガス導入口2と、該冷媒ガス導入口2の対角に形成され、冷媒ガスを導出させる冷媒ガス導出口4と、前記流体を容器1内に導く入口側管路3と、熱交換された該流体を容器1外へ導く出口側管路7と、前記入口側管路3と出口側管路7との間を連結する中間管路5と、前記冷媒ガス導入口2から導入される冷媒ガスを容器下方向に導く第1の仕切板11と、前記冷媒ガス導出口4に向う冷媒ガス流れを容器上方側に導く第2の仕切板12とで構成される。なお、熱交換プレート10は容器1の内部空間全体に並列されているが、図2ではその記載を一部省略する。
【0026】
このようにして構成されるプレート式熱交換容器では、第2の仕切板12を境にして、冷媒ガスの顕熱を利用して流体を加熱する顕熱加熱域21と、冷媒ガスの凝縮潜熱を利用して流体を加熱する潜熱加熱域22が形成される。
ここでは冷媒ガスをアンモニア、流体を水とし、冷媒ガスと流体の流れを以下に説明する。
【0027】
図2において、冷媒ガスは、顕熱加熱域21から潜熱加熱域22へと流れる。すなわち、前記冷媒ガスは前記冷媒ガス導入口2から容器1内に導入され、前記第1の仕切板11によって容器下方向に導かれる。その後、冷媒ガスは、熱交換プレート10で構成される熱交換体の外表面を通り、容器下側を通って、前記第2の仕切板12によって流れ方向を変向されて容器上方向に導かれる。なお、上述したように冷媒ガスの流れ方向が第2の仕切板12によって変向されるポイントを変向部20とする。
【0028】
さらに、前記変向部20で容器上方向に導かれる冷媒ガスは熱交換体の外表面を通り、容器上側に向う。容器上側を流れる冷媒ガスは、前記冷媒ガス導出口4に向って潜熱加熱域22で並列する前記熱交換体の外表面を通り、容器下側を通って、該冷媒ガス導出口4から導出される。
【0029】
一方、流体は、潜熱加熱域22から顕熱加熱域21へと流れる。すなわち、前記流体は容器1の側面に形成され入口側管路3に連設される流体入口6から流入され、入口側管路3によって容器1内に導かれる。前記入口側管路3を通る流体は、潜熱加熱域22で並列する熱交換体の内部空間を通り、中間管路5を介して顕熱加熱域21へと移動する。そして、顕熱加熱域21へ流れ込んだ後、前記熱交換体の内部空間を通り、出口側管路7を通って該出口側管路に連設される流体出口8から流出される。
【0030】
このようにして、前記冷媒ガスと流体はそれぞれ片流れ方向流を形成する。上述したように、冷媒ガス片流れ方向流(図2の実線矢印)は前記熱交換プレートにより形成される熱交換体の外側表面を通り、流体片流れ方向流(図2の破線矢印)は該熱交換体の内部空間を流れる。よって、熱交換体を介して冷媒ガスと流体が熱交換される。
また、冷媒ガス片流れ方向流と流体片流れ方向流は、前記顕熱加熱域21と潜熱加熱域22のそれぞれで対向するように流れる対向流を形成する。冷媒ガスと流体を対向流とすることにより、熱交換効率を向上させることができる。
【0031】
さらに、前記第1の仕切板11、第2の仕切板12を備えることにより、顕熱加熱域21を流れる冷媒ガスの流速が速くなるので、伝熱係数を上げることができる。
よって、本発明の実施形態のプレート式熱交換容器は一つの熱交換容器内に顕熱加熱域と潜熱加熱域を有して効率良く熱交換を行うことが可能であり、結果的に熱交換面積を小さくして設備コストを低減することができる。
【0032】
また、図2に示すプレート式熱交換容器は、前記顕熱加熱域21を流れる冷媒ガス片流れ方向流が下方向から上方向に変わる前記変向部20に、該顕熱加熱域21で生じる冷媒ガス凝縮液を分離して容器1の外に流出させる連通管14を備えている。これにより、導入される冷媒ガス温度など運転条件が変動することによって顕熱加熱域21で冷媒ガスが凝縮して冷媒の凝縮液となったとしても連通管14を通じて容器外に流出させることができる。流出させた凝縮液は、連通管14に形成される液トラップ16を介して受液器15へ流れ込む。連通管14に液トラップ16を形成することにより、受液器15に冷媒ガスが流れ込むことを防止することができる。
【0033】
次に、第1の仕切板、第2の仕切板について説明する。図2に示すように、第1の仕切板11は冷媒ガス導入口2に隣接し、形成されている。また第1の仕切板11は、熱交換プレート10を2枚1組として構成される複数の熱交換体の間に備えられる。
【0034】
このようにして、第1の仕切板11を形成することにより、冷媒ガス導入口2より導入される冷媒ガスを容器下方向に導くことができる。なお、第1の仕切板11は、冷媒ガス導出口4側(図2でいうと図面左側)への冷媒ガス流れを容器下方向に変えるものであれば形状は問わない。
【0035】
また、第2の仕切板12は、出口側管路7の末端(前記入口側管路3寄り)に形成される。また、第2の仕切板12は複数の熱交換体の間に備えられる。第2の仕切板12の取り付け位置は、冷媒の顕熱熱交換部と潜熱熱交換部の境界に定められるのが好ましい。
【0036】
このようにして構成されるプレート式熱交換容器は、熱交換効率を向上させることができる。例えば、図2において、冷媒ガス導入口2から導入されるアンモニアは、120〜122℃(点D)で容器1内に供給されると、熱交換体の内部を流れる水と顕熱加熱域21で熱交換され、約120℃から50℃まで下がり、潜熱加熱域22に向う(点E)。その後、アンモニアは潜熱加熱域22で熱交換体の内部を流れる水と熱交換しながら、冷媒ガス導出口4へ向う。潜熱加熱域22では、前記アンモニアは50℃(点E)から41〜41.5℃(点F、約1.5MPa)となって凝縮され、前記冷媒ガス導出口より導出される。
【0037】
一方、冷媒ガスであるアンモニアに対し、32〜34℃(点A)の水を流体入口6から容器1内に流入させると、潜熱加熱域22で熱交換体を介してアンモニアと熱交換しながら顕熱加熱域21へと向う。潜熱加熱域22では、水は32〜34℃(点A)から39.6〜40℃(点B)と変化する。その後、水は顕熱加熱域21で熱交換体の外表面を流れるアンモニアと熱交換しながら、流体出口8へ向って流れる。顕熱加熱域21では、アンモニアの顕熱により水が39.6〜40℃(点B)から40〜41.3℃(点C)へと温められる。
【0038】
本実施形態におけるプレート式熱交換容器によれば、熱交換後のアンモニアの凝縮温度が41〜41.5℃、熱交換後の温水温度が40〜41.3℃であり、その温度差は1℃以下である。以上のことから、本実施形態におけるプレート式熱交換容器は、従来のプレート式熱交換容器に比べて凝縮温度が低くなることがわかる。これにより冷凍機COPが大きく、圧縮機電力が小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、設備コストの低減と装置全体の大型化の抑制を達成しつつ、高い熱交換効率を得ることができるので、アンモニアと水を熱交換させることにより温水を得るプレート式熱交換容器への適用に際して有益である。
【符号の説明】
【0040】
1 容器
2 冷媒ガス導入口
3 入口側管路
4 冷媒ガス導出口
5 中間管路
7 出口側管路
10 熱交換プレート
11 第1の仕切板
12 第2の仕切板
14 連通管
21 顕熱加熱域
22 潜熱加熱域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスが導入され熱交換プレートが内設される熱交換区域内で、前記冷媒ガスの顕熱と凝縮潜熱を利用して流体の加熱を行うプレート式熱交換容器において、
前記熱交換区域は仕切板の区分けにより前記冷媒ガスが導入される冷媒ガス導入口側から該冷媒ガスが導出される冷媒ガス導出口側に向う冷媒片流れ方向流が形成され、
前記仕切板取り付け位置を前記冷媒ガス導入口側に偏在させて前記熱交換区域が顕熱加熱域と潜熱加熱域とに分離されることを特徴とするプレート式熱交換容器。
【請求項2】
前記熱交換区域にて熱交換される前記流体を容器内に導く入口側管路と、熱交換された前記流体を該容器外へ導く出口側管路と、該入口側管路と該出口側管路との間を連絡する中間管路とを備えるとともに、
該中間管路の末端側に近接する前記冷媒ガス導入口と、該冷媒ガス導入口の対角に設けられ前記入口側管路の始端側に近接する前記冷媒ガス導出口とを備える容器であって、
前記入口側管路と前記出口側管路は前記容器内下方側に分断されて備えられ、前記中間管路は前記容器内に併設される熱交換プレートの伝熱面を介して該入口側管路と該出口側管路のそれぞれと接続されて備えられ、
前記冷媒ガス導入口から導入される冷媒ガスを容器下方向に導く第1の仕切板を該冷媒ガス導入口に隣接する前記中間管路の末端側に形成し、前記冷媒ガス導出口に向う冷媒ガス流れを容器上方向に導く第2の仕切板を前記出口側管路の前記入口側管路側末端に形成することを特徴とする請求項1記載のプレート式熱交換容器。
【請求項3】
前記流体が前記顕熱加熱域と前記潜熱加熱域のそれぞれで前記冷媒片流れ方向流と対向する対向流を形成することを特徴とする請求項1記載のプレート式熱交換容器。
【請求項4】
前記顕熱加熱域を流れる前記冷媒ガスの冷媒片流れ方向流が下方向から上方向に変わる変向部に該顕熱加熱域で生じる冷媒凝縮液を分離して前記熱交換区域外に流出させる連通管を備え、該連通管は液トラップを有することを特徴とする請求項1記載のプレート式熱交換容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−7467(P2011−7467A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154202(P2009−154202)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】