説明

プロキシモバイルIPv6におけるハンドオーバ方法

【課題】PMIPv6ドメインにマルチホーム接続された移動端末のインターフェースの一つがアクセス回線から切断されると、そのフローを他のインターフェースに移管する。
【解決手段】MNが各インターフェースに共通の識別子IF-IDを生成する手順と、MNの各インターフェースがIF-IDおよび端末識別子MN-IDを接続先の各MAGへ通知する手順と、各MAGがIF-ID、MN-IDおよび自身の気付けアドレスの記述されたPBUをLMAへ通知する手順と、LMAが各インターフェースにホームネットワークプレフィックスHNPをそれぞれ割り当てる手順と、LMAが、各HNPを対応するMAGへ通知する手順と、各MAGがHNPのルータ通知をMNに対して行う手順と、MNが、各HNPおよびインターフェース識別子IF-IDの組み合わせからIPv6アドレスをインターフェースごとに生成して各インターフェースへ割り当てる手順とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロキシモバイルIPv6 (PMIPv6)におけるマルチホーム接続のハンドオーバ方法に係り、特に、PMIPv6ドメインにマルチホーム接続される複数の移動端末のインターフェースの一つがアクセス回線から切断されると、そのインターフェースを通っていた通信を他のインターフェースに移管して通信を継続するハンドオーバ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホストベース(クライアントベース)でモビリティ管理が行われる従来のMIPv6(IPv6用に改良されたMobile IP)では、移動端末(MN)にモバイルIP制御機能の実装が要求されるため、WLAN(Wireless LAN)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)あるいは携帯電話網等の移動を管理することができなかった。このような技術課題に対して、ネットワークベースでモビリティ管理を行うようにすることで、移動端末MNやそのインターフェースに特別な機能を要求しない新たな移動管理方式として、非特許文献1のPMIPv6 (Proxy Mobile IPv6)が提案されている。
【0003】
図7は、従来のPMIPv6ネットワークにおいて、2つの異なる無線インターフェースIF1,IF2を備えたマルチホーム対応のMNが、PMIPv6ドメインにマルチホーム接続される構成を模式的に表現したブロック図である。
【0004】
PMIPv6ドメイン内には、MNのアクセスリンクへの出入りを追跡し、モビリティに関連するシグナリングをインターフェースごとに管理するMAG (Mobile Access Gateway)、およびMNのHA(Home Agent)として機能するLMA (Local Mobility Anchor)が配置され、LMAとMAG1およびMAG2との間には、それぞれPMIPv6トンネルが確立される。
【0005】
このような構成において、MAG1はMNの第1インターフェースIF1がアクセスリンクに接続されたことを検知すると、当該MNに固有の端末識別子(MN-ID)および第1インターフェースIF1に固有のインターフェース識別子(IF1-ID)の記述されたプロキシバインディング更新要求(PBU:Proxy Binding Update)メッセージをLMAへ送信する。同様に、MAG2もMNの第2インターフェースIF2がアクセスリンクに接続されたことを検知すると、当該MNに固有の識別子(MN-ID)および第2インターフェースIF2に固有の識別子(IF2-ID)の記述されたPBUメッセージをLMAへ送信する。
【0006】
前記LMAは、MNの識別子(MN-ID)および各インターフェースの識別子(IF1-ID,IF2-ID)を含む各種のパラメータと、各インターフェースへ到達可能となるMAGとの関係をBCE(Binding Cache Entry)で管理する。
【0007】
図8は、マルチホーム接続におけるLMAのBCEの一例を示した図であり、"Home prefix"は各インターフェースIF1,IF2を一意に識別するアドレス、"CoA"は各MAG1,MAG2の気付けアドレス、"MN-ID"は各MNに端末固有の識別子、"IF-ID"は各インターフェースIF1,IF2に固有のインターフェース識別子、"Tunnel-ID"はLMA/MAG間に確立される各PMIPv6トンネルに固有の識別子、"Access Type"は各無線接続のタイプを表している。図示の例では、第1インターフェースIF1がWLAN、第2インターフェースIF2がWiMAX(登録商標)であり、MNはPMIPv6ドメインに2つの異なる経路で同時に接続される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】RFC5213,"Proxy Mobile IPv6",http:// tools.ietf.org/ html/ rfc5213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PMIPv6では、MNが2つの異なる無線インターフェースを備えているときに、これら2つのインターフェース間でハンドオフにより接続をシームレスに切り換えることができる。MNは、その対向ノード(CN: Corresponding Node)との通信において同時に複数の無線アクセスにより接続することはできず、一方の無線アクセスによる接続を開始する際は他方の無線アクセスによる接続は切断される。これは、接続を切り替える前の接続で用いていたMNのアドレスを切替後も継続利用する必要があるからである。
【0010】
なお、MNでは通常、到着したデータパケットの宛先アドレスが、その入力するインターフェースのアドレスと異なると、当該データパケットは不正なパケットとみなされて廃棄される。したがって、2つの異なるインターフェースを切り替えて通信を継続するためには、同じアドレスをインターフェース間で切り替えて用いなければならい。
【0011】
マルチホーム接続では、MNの各無線インターフェースIF1,IF2に異なるアドレスを設定することによって、MNとCNとの通信を2つのインターフェースIF1/IF2間で使い分けることができる。ここで、インターフェースIF1,IF2を使い分けるとは、CNからMNへの通信の転送経路に、IF1側の接続およびIF2側の接続のいずれかを選択できるように区別することである。
【0012】
IP(IPv4およびIPv6)通信では、ルータがパケットの宛先アドレスに基づいて転送経路を設定するため、MNがCNと複数の経路で通信するためには、MNの各インターフェースIF1,IF2と、これらの転送先に対応するMAG1,MAG2とを対応付けてLMAにBCEとして登録する必要がある。
【0013】
マルチホーム接続されるMNの各無線インターフェースに異なるアドレスを設定するために、LMAはインターフェースごとに固有のホームネットワークPrefixを割り当てる。各無線インターフェースのIPv6アドレスは、多くの場合、各インターフェースのMACアドレスから算出されるEUI-64(IEEEの定める64ビットの識別子)フォーマットのインターフェースIDと前記ホームネットワークPrefixとを連結することで生成される。
【0014】
一方の無線インターフェースの接続が切れても、その接続上の通信(以下、フローとする)を継続するためには、切断されたIPv6アドレスを他方のインターフェースに設定する必要がある。そのためには、LMAが一方のインターフェースの切断を認識し、そのインターフェースに割り当てられていたホームネットワークPrefixを他方の無線インターフェースへ割り当て、MNは切断されたインターフェースのEUI-64フォーマットのインターフェースIDを用いてIPv6アドレス生成を行う。しかしながら、この手順を行うとき、既存技術の組み合わせでは、以下の2つの課題がある。
【0015】
(1)MNの各無線インターフェースには異なるMACアドレスが割り当てられているので、MNは、2つのインターフェース間でのハンドオフであっても、各インターフェースに適正なIPv6アドレスを割り当てることができない。
【0016】
(2)LMAによるMNの各インターフェースへのホームネットワークPrefixの割当は、MAG契機のPBU(Proxy Binding Update)要求に応答して行われる。このため、一方の無線インターフェースの切断後、他方の無線インターフェースに追加用のホームネットワークPrefixを通知するには、当該他方の無線インターフェースとの接続が維持されているMAGからのPBUを待たなければならない。しかしながら、インターフェースが切断してからMAGによるPBU要求までには時間がかかるため、MNとCNとの通信復旧に時間がかかり、場合によってはMNあるいはCNが通信を終了してしまう。
【0017】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、PMIPv6ドメインにマルチホーム接続された移動端末の複数のインターフェースの一つがアクセス回線から切断されると、そのフローを他のインターフェースに素早く移管して通信を継続できるハンドオーバ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数の無線インターフェースを備えたマルチホーム対応の移動端末が、各インターフェースに接続されたMAG経由でプロキシモバイルIPv6ドメインのLMAに接続され、MAGとの接続が断たれたインターフェースに収容されていたフローを、維持されている他のインターフェースに収容して通信を継続するハンドオーバ方法において、以下のような手順を設けた点に特徴がある。
【0019】
手順1:MNごとに、各インターフェースに共通のインターフェース識別子IF-IDを生成する。
【0020】
手順2:MNの各インターフェースが、前記IF-IDおよび端末識別子MN-IDを接続先の各MAGへそれぞれ通知する。
【0021】
手順3:各MAGが、前記IF-IDおよびMN-IDならびに自身の気付けアドレスの記述されたPBUをLMAへ通知し、かつ自身のBinding Listに登録する手順とする。
【0022】
手順4:LMAが前記PBUに応答して、各インターフェースにホームネットワークプレフィックスHNPをそれぞれ割り当て、各HNPとIF-IDとの紐付けをBCEに登録する。
【0023】
手順5:LMAが、HNPの記述されたPBAを、対応するMAGへ通知する。
【0024】
手順6:MAGが、前記PBAに応答してBinding Listを更新する。
【0025】
手順7:LMAと各MAGとの間にIPv6トンネルを構築する。
【0026】
手順8:各MAGが、前記通知されたHNPのルータ通知をMNに対して行う。
【0027】
手順9:MNが、前記通知されたHNPおよび前記インターフェース識別子IF-IDの組み合わせからIPv6アドレスをインターフェースごとに生成して各インターフェースへ割り当てる。
【0028】
手順10:一のインターフェースIFaとの接続断を検知したMAGaが、当該インターフェースIFaに割り当てられていた一のホームネットワークプレフィックスHNPaの記述されたPBUをLMAへ通知する。
【0029】
手順11:LMAが前記PBUに応答して、HNPaおよびMN-IDを、他のインターフェースIFbとの接続が維持されている他のMAGbへ通知してフローの移管を要求する。
【0030】
手順12:他のMAGbが前記移管要求に応答して、HNPaをBinding Listに追加する。
【0031】
手順13:他のMAGbが前記移管要求に応答して、通知されたHNPaのルータ通知を前記他のインターフェースIFbに対して行う。
【0032】
手順14:MNが、前記通知されたHNPaおよびインターフェース識別子IF-IDを組み合わせて生成されるIPv6アドレスを前記他のインターフェースIFbへ割り当てる。
【0033】
手順15:LMAが、前記HNPa宛のパケットを、前記BCEに基づいて他のMAGbへ中継する。
【0034】
手順16:他のMAGbが、前記HNPa宛のパケットを、前記Binding Listに基づいて前記他のインターフェースIFbへ中継する。
【発明の効果】
【0035】
上記の各構成をそなえたことにより、本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0036】
(a)特に前記手順1,9を含むことにより、MNは自身の各インターフェースに対して、そのMACアドレスとは無関係にIPv6アドレスを割り当てられるので、一のインターフェースで利用されていたIPv6アドレスを、他の一のインターフェースに切り替えて継続利用できるようになる。これにより前記課題(1)が解決され、一のMAGaとの接続が断たれたインターフェースIFaに割り当てられていたIPv6アドレスを、他の一のMAGbとの接続が維持されているインターフェースIFbに割り当て直すことで、切断されたインターフェースIFaのフローを、維持されているインターフェースIFbのフローに集約できるようになる。
【0037】
(b)特に前記手順10,11,12,13を含むことにより、MAGaがインターフェースIFaとの接続断を検知すると、これが直ちにLMAへ通知される。そして、インターフェースIFaに割り当てられていたホームネットワークプレフィックスHNPが、接続の維持されている他のインターフェースIFbへ直ちに通知されるので、接続断された通信のIPv6アドレスを、接続の維持されている他のインターフェースIFbへ直ちに設定することができる。これにより前記課題(2)が解決され、マルチホーム接続においても素早いハンドオフが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明が適用されるPMIPv6ネットワークにおけるマルチホーム接続の手順を示したシーケンスフローである。
【図2】LMAにより管理されるBCEのマルチホーム接続手順における登録内容を示した図である。
【図3】本発明が適用されるPMIPv6ネットワークにおけるハンドオフの手順を示したシーケンスフローである。
【図4】LMAにより管理されるBCEのハンドオフ手順における登録内容を示した図である。
【図5】本発明が適用されるPMIPv6ネットワークにおけるマルチホーム再接続の手順を示したシーケンスフローである。
【図6】LMAにより管理されるBCEのマルチホーム再接続手順における登録内容を示した図である。
【図7】従来のPMIPv6ネットワークにおけるマルチホーム接続の一例を示したブロック図である。
【図8】従来のマルチホーム接続においてLMAにより管理されるBCEの登録内容を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明が適用されるPMIPv6ネットワークにおいて、2つの異なる無線インターフェースIF1 (WLAN),IF2 (WiMAX)を備えたマルチホーム対応の移動端末MNが、PMIPv6ドメインに各無線インターフェースIF1,IF2でマルチホーム接続されるまでの手順を示したシーケンスフローである。
【0040】
時刻t1において、MNの第1インターフェースIF1がPMIPbv6ドメインに接続を要求し、これがアクセスリンクのMAG1により検知されて無線接続が確立されると、MNでは、64ビットのランダムインターフェース識別子(IF-ID)が乱数により生成される。このIF-IDは、第1および第2インターフェースIF1,IF2に割り当てられるIPv6アドレスとして、IETFのRFC 3041で標準化されている識別子(ランダムに生成されるIPv6の代替のインターフェース識別子)を採用するために予め生成され、MNに固有の端末識別子(MN-ID)と共にMAG1へ通知される。本実施形態では、前記MN-IDとしてネットワークアクセス識別子(NAI)が用いられる。
【0041】
時刻t2では、第1インターフェースIF1からMAG1へルータ要請Rtr Sol(Router Solicitation)が送信される。時刻t3では、前記Rtr Solを受信したMAG1からLMAへ、前記MNから通知されたMN-IDおよびIF-ID、ならびにMAG1の気付けアドレスMAG1.PCoA(Proxy-CoA)などの記述されたPBU(Proxy Binding Update)メッセージが送信される。これと同時に、MAG1では前記MNおよびその第1インターフェースIF1がBinding Listに登録される。
【0042】
LMAでは、前記PBUに応答して、前記第1インターフェースIF1に割り当てるホームアドレス(HA)として64ビットの第1のホームネットワークPrefix(HNP1)が設定されると共に、MAG1との間に確立されるIPv6第1トンネルの識別子(T1-ID)が設定されてBCE(Binding Cache Entry)が更新される。
【0043】
図2(a)は、当該時点でのBCEの登録内容を示しており、前記PBUにより通知されたMN-ID、IF-ID、MAG1.PCoAおよび無線アクセスタイプ(WLAN)など、前記HNP1およびT1-IDと紐付けるエントリが追加されている。なお、マルチホームフィールドには、当該エントリがマルチホーム接続を未だ構成していない旨の"OFF"が登録されている。
【0044】
時刻t4では、LMAからMAG1へ、前記HNP1の記述されたPBA(Proxy Binding Acknowledgement)メッセージが返信される。MAG1では、受信したPBAに基づいてBinding Listの対応エントリに前記HNP1が追加登録され、かつトンネル設定が行われる。時刻t5では、MAG1とLMAとの間に双方向のIPv6第1トンネル(T1-ID)が確立される。
【0045】
時刻t6では、MAG1から前記MNの第1インターフェースIF1へ、前記HNP1の記述されたルータ通知(Rtr Adv:Router Advertisement)が返信される。時刻t7では、MNにおいて、前記LMAから割り当てられた64ビットのHNP1と前記64ビットのIF-IDとが結合されて128ビットのIPv6第1アドレス(HNP1+IF-ID)が生成され、これが第1インターフェースIF1に割り当てられる。
【0046】
さらに、時刻t8において、マルチホームMNの第2インターフェースIF2がMAG2に接続されると、上記と同様の手順が繰り返され、時刻t9では、第2インターフェースIF2からMAG2へRtr Solが送信される。時刻t10では、MAG2からLMAへPBUが送信される。これと同時に、MAG2では前記MNおよびその第2インターフェースIF1がBinding Listに登録される。LMAでは、この更新要求に応答して、前記第2インターフェースIF2に割り当てる第2のホームネットワークPrefix(HNP2)が選択されると共に、MAG2との間に確立されるIPv6第2トンネルのID(T2-ID)が設定されてBCE (Binding Cache Entry)が更新される。
【0047】
図2(b)は、当該時点でのBCEの登録内容を示している。ここでは、IF-IDの一致する2つのエントリに紐付けられている各ホームネットワークPrefix (HNP1およびHNP2)が相異なるので、当該2つのエントリがマルチホーム接続を構成していると認識され、マルチホームフィールドが"ON"に更新されている。
【0048】
時刻t11では、LMAからMAG2へ、前記HNP2の記述されたPBAが返信される。MAG2では、受信したPBAに基づいてBinding Listの対応エントリに前記HNP2が追加登録され、かつトンネル設定が行われる。時刻t12では、MAG2とLMAとの間に双方向のIPv6第2トンネル(T2-ID)が確立される。
【0049】
時刻t13では、MAG2から前記第2インターフェースIF2へ、前記HNP2の記述されたRtr Advが返信される。時刻t14では、MNにおいて、前記LMAから割り当てられたHNP2と前記IF-IDとが結合されて128ビットのIPv6第2アドレス(HNP2+IF-ID)が生成され、これが第2インターフェースIF2に割り当てられる。
【0050】
次いで、図3のシーケンスフローを参照して、相手端末(CN)からマルチホームMNへのパケット転送中に一方の接続が断たれた際、そのフローを接続が維持されている他のインターフェースに収容して通信を継続するハンドオフ手順について説明する。
【0051】
時刻t21において、CNからHNP1宛に送信されたパケットはLMAで受信され、前記BCEに登録されている情報に基づいて、IPv6第1トンネル(T1-ID)経由でMAG1へ転送される。MAG1は、自身のBinding Listで前記HNP1と紐付けられているMNおよびその第1インターフェースIF1を特定し、前記受信パケットをMNの第1インターフェースIF1へ転送する。
【0052】
時刻t22において、MNの第1インターフェースIF1とアクセスリンクとの接続が断たれ、これが時刻t23においてMAG1により検知されると、時刻t24では、MAG1からLMAへ登録解除要求DeREG PBU (De-Registration Proxy Binding Update)メッセージが送信される。LMAは、前記DeREG PBUの受信に応答して、時刻t25から前記HNP1宛パケットのバッファリングを開始する。
【0053】
時刻t26では、MN-IDとして「NAI」、ホームネットワークPrefixとして「HNP1」の記述された移動セッション移管要求(MSM:(Mobility Session Migration)メッセージがLMAからMAG2へ送信される。時刻t27では、MAG2からLMAへMSM Ackメッセージが返信される。時刻t28では、前記MSMを受信したMAG2において、前記第1インターフェースIF1に割り当てられていたHNP1とMNの第2インターフェースIF2とを紐付けるエントリがBinding Listに追加される。
【0054】
時刻t29では、LMAからMAG1へ、前記DeREG PBUメッセージに対する応答してPBA(Proxy Binding Ack)メッセージが返信される。時刻t30では、前記PBAを受信したMAG1において、前記第1インターフェースIF1に関するエントリがBinding Listから削除される。時刻t31では、LMAにおいてBCEが更新される。
【0055】
図4は、時刻t31で更新されたBCEの記録内容を示した図であり、第1ホームネットワークPrefix(HNP1)と第1MAGの気付けアドレス(MAG1.PCoA)とを紐付けるエントリが削除される一方、第1ホームネットワークPrefix(HNP1)と第2MAGの気付けアドレス(MAG2.PCoA)とを紐付けるエントリが新たに追加され、マルチホームモードが"ON"から"OFF"に変更されている。
【0056】
時刻t32では、MAG2からMNへ、第1ホームネットワークPrefix(HNP1)および第2ホームネットワークPrefix(HNP2)が記述され、multiple prefix optionを備えたルータ通知 (Router Advertisement)メッセージが送信される。時刻t33では、MNにおいて前記通知された64ビットのHNP1と前記64ビットのランダムインターフェースID(IF-ID)とが結合されてIPv6アドレス(HNP1+IF-ID)が生成され、これがアクティブ状態の第2インターフェースIF2に2つ目のIPv6アドレスとして割り当てられる。
【0057】
時刻t34では、LMAから第2インターフェースIF2へICMPv6 Echo要求メッセージが送信される。このメッセージの送信元アドレス(Src)には、LMAA (LMAのアドレス)が登録され、宛先アドレス(Dst)には、前記HNP1とIF-IDとを結合して生成されたIPv6アドレスが登録されている。
【0058】
時刻t35では、MNの第2インターフェースIF2からLMAへ、ICMPv6 Echo応答メッセージが返信される。このメッセージの送信元アドレス(Src)には、前記HNP1とIF-IDとを結合して生成されたIPv6アドレスが登録され、宛先アドレス(Dst)には、前記LMAAが登録されている。
【0059】
時刻t36では、LMAからHNP1宛に、前記時刻t25からバッファリングされ続けているパケットが送信される。このパケットは、BCEに従ってPMIPv6第2トンネル(T2-ID)およびMAG2を経由してMNの第2インターフェースIF2へ転送される。時刻t37では、CNからHNP1宛に送信されたパケットが、LMAからPMIPv6第2トンネル(T2-ID)およびMAG2を経由してMNの第2インターフェースIF2へ転送される。
【0060】
図5は、前記切断されていたMNの第1インターフェースIF1とMAG1のアクセス回線との間の接続が回復してマルチホーム接続に戻る手順を示したシーケンスフローである。
【0061】
時刻t51において、CNから2つのホームネットワークPrefix(HNP1宛およびHNP2宛)に送信されたパケットは、いずれも前記LMAおよびPMIPv6第2トンネル(T2-ID)を経由してMAG2へ転送され、MAG2のBinding Listに基づくルーティングによりMNの第2インターフェースIF2へ転送される。
【0062】
その後、時刻t52において、MNの第1インターフェースIF1がPMIPbv6ドメインに再接続され、これがMAG1により検知されて両者間に接続が再確立されると、前記ランダムインターフェースID(IF-ID)およびMNに固有の識別子(MN-ID)がMAG1へ通知される。
【0063】
時刻t53では、第1インターフェースIF1からMAG1へルータ要請Rtr Solが送信される。時刻t54では、前記Rtr Solを受信したMAG1からLMAへ、前記MN-ID、IF-IDおよびMAG1.PCoAの記述されたPBUが送信される。LMAでは、時刻t55において、前記PBUに応答して、前記第1インターフェースIF1に割り当てる第3のホームネットワークPrefix(HNP3)が設定されると共に、MAG1との間に確立されるIPv6第1トンネルの識別子(T1-ID)が設定される。時刻t56では、前記BCE (Binding Cache Entry)が更新される。
【0064】
図6は、当該時点でのBCEの登録内容を示しており、前記PBUにより通知されたMN-ID、IF-ID、MAG1.PCoAおよび無線アクセスタイプ(WLAN)など、前記HNP3とT1-IDとを紐付けるエントリが追加されている。また、IF-IDの一致する3つのエントリに紐付けられているCoAが相異なるので、当該3つのエントリがマルチホーム接続を構成していると認識され、マルチホームフィールドが"ON"に更新されている。
【0065】
時刻t57では、LMAからMAG1へ、前記HNP3の記述されたPBAが返信される。時刻t58では、MAG1において経路情報およびトンネルが設定される。この結果、時刻t59ではMAG1とLMAとの間に双方向のIPv6第1トンネルが確立される。また、前記Binding ListにHNP3が追加登録される。
【0066】
時刻t60では、MAG1から前記第1インターフェースIF1へ、前記HNP3の記述されたルータ通知Rtr Adv(HNP3)が返信される。MNでは、通知されたHNP3と前記ランダムインターフェースID(IF-ID)とを結合することでIPv6第3アドレスが生成され、これが第1インターフェース(WLAN)に割り当てられる。したがって、これ以降、MNは第1インターフェースIF1および第2インターフェースIF2によるマルチホーム接続を再開できるようになる。
【符号の説明】
【0067】
BCE…Binding Cache Entry,HA…Home Agent,IF1-ID…インターフェース識別子,LMA…Local Mobility Anchor,MAG…Mobile Access Gateway,MN…移動端末,MN-ID…端末識別子,PBA…Proxy Binding Acknowledgement,PBU…Proxy Binding Update,PMIPv6…Proxy Mobile IPv6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線インターフェースを備えたマルチホーム対応の移動端末が、各インターフェースに接続されたMAG経由でプロキシモバイルIPv6ドメインのLMAに接続され、MAGとの接続が断たれたインターフェースに収容されていたフローを、維持されている他のインターフェースに収容して通信を継続するハンドオーバ方法において、
移動端末ごとに、各インターフェースIFに共通のインターフェース識別子IF-IDを生成する手順と、
前記各インターフェースIFが、前記IF-IDおよび端末識別子MN-IDを接続先の各MAGへ通知する手順と、
前記各MAGが、前記通知されたIF-IDおよびMN-IDならびに自身の気付けアドレスの記述されたPBU(Proxy Binding Update)をLMAへ通知し、かつ自身のBinding Listに登録する手順と、
前記LMAが前記PBUに応答して、各インターフェースIFにホームネットワークプレフィックスHNPをそれぞれ割り当て、各HNPとIF-IDとの紐付けをBCE(Binding Cache Entry)に登録する手順と、
前記LMAが、前記HNPの記述されたPBA(Proxy Binding Acknowledgement)を、対応する各MAGへそれぞれ通知する手順と、
前記各MAGが前記PBAに応答して、自身のBinding Listに前記HNPを追記する手順と、
前記LMAと各MAGとの間にIPv6トンネルを構築する手順と、
前記各MAGが、前記通知されたHNPのルータ通知を移動端末に対して行う手順と、
前記移動端末が、前記通知された各HNPおよびインターフェース識別子IF-IDを組み合わせてIPv6アドレスを生成し、各インターフェースへ割り当てる手順と、
一のインターフェースIFaとの接続断を検知したMAGaが、当該インターフェースIFaに割り当てられていた一のホームネットワークプレフィックスHNPaの記述されたPBUをLMAへ通知する手順と、
前記LMAが前記PBUに応答して、前記HNPaおよびMN-IDを、他のインターフェースIFbとの接続が維持されている他のMAGbへ通知してフローの移管を要求する手順と、
前記他のMAGbが前記移管要求に応答して、前記HNPaをBinding Listに追加する手順と、
前記他のMAGbが前記移管要求に応答して、前記通知されたHNPaのルータ通知を前記他のインターフェースIFbに対して行う手順と、
前記移動端末が、前記通知されたHNPaおよび前記インターフェース識別子IF-IDを組み合わせて生成されるIPv6アドレスを前記他のインターフェースIFbへ割り当てる手順と、
前記LMAが、前記HNPa宛のパケットを、前記BCEに基づいて前記他のMAGbへ中継する手順と、
前記他のMAGbが、前記HNPa宛のパケットを、前記Binding Listに基づいて前記他のインターフェースIFbへ中継する手順とを含むことを特徴とするプロキシモバイルIPv6におけるハンドオーバ方法。
【請求項2】
LMAが、前記切断された一のインターフェースIFa宛のパケットをバッファリングする手順と、
前記インターフェースIFaに割り当てられていたHNPaのルータ通知が他のインターフェースIFbに対して行われた後で、前記LMAが前記バッファリングされたパケットを、前記BCEに基づいて他のMAGbへ中継する手順とを含むことを特徴とする請求項1に記載のプロキシモバイルIPv6におけるハンドオーバ方法。
【請求項3】
各移動端末において、前記インターフェース識別子IF-IDがランダムに生成されることを特徴とする請求項1または2に記載のプロキシモバイルIPv6におけるハンドオーバ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−253495(P2012−253495A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123414(P2011−123414)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】