説明

プログラム作成器を備えた埋め込み可能神経刺激器及び電子指紋を測定することによってリードを識別する方法

神経刺激器(14)のための方法及びプログラム作成器(16)並びに神経刺激キット(12、14)が提供される。キットは、神経刺激器(14)と、神経刺激器に結合されるよう構成された複数の細長いリード本体(12)と、を備え、各細長いリード本体が、複数の近位接点と、該近位接点にそれぞれ電気的に結合された複数の遠位電極(26)とを有し、電極(26)と、異なるリード本体(12)により担持される近位接点との間のインライン接続が互いに異なる。選択したリード本体(12)の電極(26)と組織との間に電気エネルギが伝達され、伝達された電気エネルギに応答して選択リード本体の近位接点にて電子指紋が測定され、測定電子指紋に基づいて選択されたリード本体(12)が識別される。これらのステップは、プログラム作成器(16)により実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織刺激システムに関し、より具体的には、神経刺激リードを識別する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能神経刺激システムは、様々な疾病及び障害において治療効果を有することが証明されている。ペースメーカー及び埋め込み可能心細動除去器(ICD)は、いくつかの心臓疾患(例えば、不整脈)の治療において非常に有効であることが証明されている。脊髄電気刺激(SCS)システムは、慢性疼痛症候群の治療のための治療方式として長い間受け入れられてきており、組織刺激の用途は、狭心症及び失禁のような更に別の用途に広がり始めている。脳深部刺激(DBS)もまた、不応性慢性疼痛症候群の治療に10年を大幅に超えて適用されてきており、また、最近では、DBSは、運動障害及び癲癇のような更に別の分野に適用されている。更に、最近の研究では、末梢神経刺激(PNS)システムが、慢性疼痛症候群及び失禁の治療において有効性が立証され、いくつかの更に別の用途が現在研究されている。また、NeuroControl(オハイオ州クリーブランド)によるFreehandシステムのような「機能的電気刺激(FES)」システムが、脊髄損傷患者において麻痺した四肢に対しある程度の機能を回復させるのに適用されている。
【0003】
これらの埋め込み可能神経刺激システムの各々は、典型的には、望ましい刺激部位に埋め込まれる1つ又はそれよりも多くの刺激リードと、刺激部位から離れて埋め込まれるが、刺激リードに直接結合されるか、又は刺激リードの長さがIPGに到達するには不十分な長さである場合には1つ又はそれよりも多くのリード延長部を通じて刺激リードに間接的に結合される、埋め込み可能パルス発生器(IPG)のような埋め込み可能神経刺激器とを含む。このようにして、電気パルスを神経刺激器から刺激リードに送出して組織を刺激し、患者に望ましい有効な治療を提供することができる。
【0004】
SCS処置の関連において、1つ又はそれよりも多くの刺激リードは、リードによって担持された電極が望ましいパターン及び間隔で配置されて電極アレイを生成するように、蛍光透視により患者の背中を通して硬膜外腔内に導入される。刺激リードを埋め込むのに使用される特定の処置は、最終的には使用される刺激リードのタイプによって決定されることになる。現在のところ、商業的に入手可能な刺激リードには経皮的リードと外科的リードの2つのタイプがある。
【0005】
経皮的リードは、リング電極を有する円柱体を含み、この経皮的リードは、皮膚を通して望ましい脊柱の間を通り、硬膜層の上の硬膜外腔内に入るTouhy状の針を通じて患部脊髄組織と接触状態で導入することができる。片側性疼痛に対しては、経皮的リードは、脊髄の対応する横側に配置される。両側性疼痛に対しては、経皮的リードは、脊髄の正中線下に配置されるか、又は2つの経皮的リードが正中線のそれぞれの側下に配置される。
【0006】
外科的リードは、独立した縦列を成して複数の電極が配列されるパドルを有し、硬膜層へのアクセスとリードの位置決めの両方を可能にするため、外科的処置、具体的には、椎弓の脊骨組織の除去を伴う椎弓切除を使用して患部脊髄組織と接触状態で導入される。
【0007】
脊髄のターゲット区域における刺激リードの適正配置の後、リードは、刺激リードの移動を防止するために出口部位の所定位置に固定される。刺激リードの出口ポイントから離れた神経刺激器の設置を容易にするために、リード延長部が使用されることがある。リード延長部が使用されるかどうかに関わらず、脊柱から出る刺激リードの近位端は、患者の胴体に沿って皮下に形成されるトンネルを通過し、神経刺激器が埋め込まれる皮下ポケット(典型的には患者の腹部又は臀部区域に作られる)に入る。皮下トンネルは、トンネリングストローを装着することができるトンネリングツールを用いて形成することができる。トンネリングツールを取り外して、刺激リードをトンネリングストローに挿通させ、次いで、刺激リードをトンネル内で所定位置に維持しながらトンネリングストローをトンネルから取り外すことができる。
【0008】
次に、刺激リードは、IPGの1つ又はそれよりも多くのコネクタポート内に刺激リードの近位端を挿入することにより神経刺激器に直接接続され、又はリード延長部に接続されて該リード延長部がIPGのコネクタポート内に挿入される。IPGは、次に、電極を通じてターゲット組織、特に背柱及び脊髄内の後根繊維に送出される電気パルスを発生させるように作動させることができる。
【0009】
刺激は、患者によって感知される疼痛信号を置換する代替の感覚として特徴付けることができる錯感覚として知られる感覚をもたらす。手術中(すなわち、外科的処置中)、神経刺激器は、刺激の効果を試験し、最適な疼痛緩和を求めて刺激パラメータを調節するように作動させることができる。患者は、疼痛区域にわたる錯感覚の存在に関して口頭フィードバックを与えることができ、このフィードバックに基づいて、必要に応じてリード位置を調節し再固定することができる。刺激パラメータの選択を容易にするために、Boston Scientific Neuromodulation Corporationから入手可能なBionic Navigator(登録商標)のようなコンピュータプログラミングシステムを用いることができる。次に、システムを完全に埋め込むために、いずれの切開部も閉鎖される。手術後(すなわち、外科的処置が完了した後)、臨床医は、コンピュータ処理によるプログラミングシステムを用いて治療を最適化し直すように刺激パラメータを調節することができる。
【0010】
多くの場合、複数のリード本体が患者の脊髄領域から延びることがある。例えば、複数の経皮的リードが脊髄に隣接して患者内に埋め込まれる場合があり、或いはパドルリードの場合には、複数のリード尾部がパドルから延びることができ、各リード尾部はパドル上の特定電極に結合されている。IPGのプログラミングは、患者の脊髄に対する電極の物理的な設置に応じて決まることになるので、リード本体の近位端は、これらがトンネリングストローを通過する前にラベル付けされており、その結果、外科医は、電極のどのセットが埋め込まれたIPG(近い将来には最大で4つまでのポートを含むことができる)上のどのコネクタポートに接続されるか、或いは、複数のIPGが埋め込まれることになる場合には、電極のどのセットがどのIPGに接続されるかについて追跡できるようになる。
【0011】
リード本体を識別するために外科医により使用される技法の1つは、例えば、第1のリード本体の周りに1つの縫合部、第2のリード本体の周りに2つの縫合部、第3のリード本体の周りに3つの縫合部、その他など、トンネリングストローを通してリード本体を導入する前にリード本体の近位端の周りに縫合部を結束することである。リード本体の近位端がトンネリングストローから出ると、外科医は、それぞれのリード本体に結束された縫合部の番号により各リード本体(及びひいては対応する電極)を識別することができ、これによりリード本体をIPG上の適正なポートに接続できるようになる。
本技術を成功裏に利用してリード本体を識別することができるが、手術時間がかなり長くなり、これは望ましいことではない。場合によっては、異なる色又はマーキングのような識別機能をリード本体の近位端に組み込み、リード本体がトンネリングストローから出た時に識別されるようにすることができる。しかしながら、視覚的な識別子を使用した場合でも、リード本体の近位端が間違ったコネクタポートに挿入される可能性がある。リード本体が間違ったコネクタポートに挿入された場合、手術中のリード配置の試験が損なわれる場合がある。接続上の問題を識別して是正するための追加の手術時間が無駄に費やされる可能性がある。間違いが識別されないままである場合、患者は、リード本体が間違って接続された状態で手術室を離れる可能性がある。術後の適合中に、適正なコネクタポートにないリード本体を識別及び補正するために追加の時間が費やされる可能性がある。このことにより、最終的には最適以下の治療となる可能性がある。
異なるタイプの刺激リードが使用された場合には、別の関連する問題が生じる。手術中又は術後の処置の間、臨床医は、コンピュータ処理によるプログラミングシステムが最適に動作するように、1つ又は複数の刺激リードのモデルを選択することが必要とされる。リードモデルの数が増えると、間違ったリードモデルを選択する可能性が益々高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願第61/030,506号明細書
【特許文献2】米国特許第6,895,280号明細書
【特許文献3】国特許出願公開第2007/0150036号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0168007号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0168004号明細書
【特許文献6】米国特許第6,516,227号明細書
【特許文献7】米国特許第6,993,384号明細書
【特許文献8】米国特許第7,317,948号明細書
【特許文献9】米国特許第6,895,280号明細書
【特許文献10】米国特許第6,993,384号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、神経刺激リードのリード本体を識別するための迅速で、効果的な、低コストの方法に対する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、複数の異なるリード本体の選択したものを識別する方法が提供される。複数のリード本体は、例えば、外科的パドルリードの少なくとも2つのリード本体、及び/又は外科的パドルリードのリード本体と、経皮的リードのリード本体とを備えることができる。リード本体の各々は、複数の近位接点と、該近位接点にそれぞれ電気的に結合された複数の遠位電極とを含む。選択したリード本体は、患者の組織と接触状態にある。
【0015】
本方法は、選択したリード本体の電極と組織との間で電気エネルギを伝達するステップを含む。本方法は更に、伝達された電気エネルギに応答して選択リード本体の近位接点にて電子指紋を測定するステップを含む。非限定的な実施例として、測定電子指紋は、選択リード本体の近位接点にてそれぞれ測定された複数の電界電位を含むことができる。本方法は更に、測定電子指紋に基づいて選択リード本体を識別するステップを更に含む。1つの方法において、電極と、異なるリード本体により担持される近位接点との間のインライン接続は互いに異なる。このため、測定される電子指紋は互いに異なることになる。
【0016】
非限定的な実施例として、本方法は更に、測定された電子指紋を異なるリード本体に対応する複数の基準電子指紋と比較するステップと、測定された電子指紋と基準電子指紋との一致を判定するステップと、選択したリード本体を基準電子指紋の一致する電子指紋に対応するリード本体として識別するステップと、を含むことができる。測定された電子指紋のデータポイントは、基準電子指紋の各々のデータポイントとコンピュータにより比較することができる。例えば、基準電子指紋の各々のコンピュータによる比較ステップは、相関係数(例えば、ピアソン相関係数)を生成するステップを含むことができ、測定電子指紋と1つの基準電子指紋との間の一致は、生成した相関係数の値に基づいて判定される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、神経刺激器のためのプログラム作成器が提供される。プログラム作成器は、ユーザコマンドを受け取るように構成されたユーザインタフェースと、リード本体に接続される神経刺激器により測定される電子指紋を受け取るよう構成された入力回路とを備える。プログラム作成器は更に、測定された電子指紋に基づいて複数の異なるリード本体からリード本体を自動的に識別して、ユーザコマンドに応答して識別されたリード本体の刺激パラメータを生成するよう構成されたプロセッサを備える。複数のリード本体は、例えば、外科的パドルリードの少なくとも2つのリード本体及び/又は外科的パドルリードのリード本体と、経皮的リードのリード本体とを含むことができる。非限定的な実施例として、測定電子指紋は、測定リード本体の近位接点にてそれぞれ測定された複数の電界電位を含むことができる。プログラム作成器は更に、刺激パラメータを神経刺激器に伝送する出力回路(例えば、遠隔測定回路)を更に備える。
【0018】
1つの実施形態において、プログラム作成器は更に、異なるリード本体に対応する複数の基準電子指紋を記憶するメモリを更に備える。この場合、プロセッサは、測定電子指紋を複数の基準電子指紋の各々と比較し、測定電子指紋と基準電子指紋の1つとの間の一致を判定して、選択したリード本体を基準電子指紋のうちの一致する電子指紋に対応するリード本体として識別するよう構成されている。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、埋め込み可能神経刺激キットが提供される。キットは、神経刺激器(例えば、埋め込み可能パルス発生器)と、神経刺激器に結合されるよう構成された複数の細長いリード本体とを備える。リード本体の各々が、複数の近位接点と、該近位接点にそれぞれ電気的に結合された複数の遠位電極とを有する。電極と、前記異なるリード本体により担持される近位接点との間のインライン接続が互いに異なる。非限定的な実施例として、キットは更に、複数のリード本体を有する脊髄電気刺激リードと、複数のリード本体を有する外科的パドルリード及び/又は複数のリード本体の1つを有する外科的パドルリードと、複数のリード本体の別の2つを有する経皮的リードと備えることができる。
【0020】
本発明の他の及び更に別の態様及び特徴は、本発明の限定ではなく例示を意図した以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかであろう。
【0021】
図面は、本発明の好ましい実施形態の設計及び有用性を例示しており、これらの図面では、類似の要素は共通の参照符号で表記している。上記に記載され及びその他の本発明の利点及び目的が如何に達成されるかをより明快に理解するために、添付図面に例示する本発明の特定の実施形態を参照しながら上記に簡単に説明した本発明のより具体的な説明を行う。これらの図面は本発明の典型的な実施形態しか示しておらず、従って、これらの図面を本発明の範囲を限定するものとみなすべきではないことを理解した上で、本発明を添付図面を用いながら更に具体的かつ詳細に説明し解説する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によって構成された脊髄電気刺激(SCS)システムの一実施形態の平面図である。
【図2】図1のSCSシステムに使用される埋め込み可能パルス発生器(IPG)と外科的パドル刺激リードの1つの実施形態の平面図である。
【図3】図1のSCSシステムに使用される埋め込み可能パルス発生器(IPG)と経皮刺激リードの別の実施形態の平面図である。
【図4】図1のSCSシステムの患者に対して使用する際の平面図である。
【図5】図1のIPGの内部構成要素のブロック図である。
【図6】図1のSCSシステムで使用することができる遠隔制御器の平面図である。
【図7】図6の遠隔制御器の内部構成要素のブロック図である。
【図8】図1のSCSシステムで使用することができる臨床医のプログラム作成器の構成要素のブロック図である。
【図9】図3の経皮的リードのリード本体により生成される例示的な電子指紋のグラフである。
【図10】図2の外科的パドルリードの第1のリード本体により生成される例示的な電子指紋のグラフである。
【図11】図2の外科的パドルリードの第2のリード本体により生成される例示的な電子指紋のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に続く説明は、脊髄電気刺激(SCS)システムに関する。しかしながら、本発明は、SCSにおける用途に十分に適するが、その最も広義の態様ではこれに限定されなくてもよい点は理解されたい。より正確には、本発明は、組織を刺激するのに使用されるあらゆるタイプの埋め込み可能電気回路と併用することができる。例えば、本発明は、ペースメーカー、細動除去器、蝸牛刺激器、網膜刺激器、連係した体肢運動をもたらすように構成された刺激器、皮質刺激器、脳深部刺激器、末梢神経刺激器、又は微小刺激器の一部として、又は尿失禁、睡眠時無呼吸、肩関節亜脱臼、頭痛などを治療するように構成された他のあらゆる神経刺激器で使用することができる。
【0024】
最初に図1を参照すると、例示的なSCSシステム10は、一般的に、少なくとも1つの埋め込み可能刺激リード12(例えば、外科的パドルリード12(1)及び/又は経皮的リード12(2))、埋め込み可能パルス発生器(IPG)14、外部遠隔制御器RC16、臨床医のプログラム作成器(CP)18、外部試験刺激器(ETS)20、及び外部充電器22を含む。
【0025】
IPG14は、アレイで配置された複数の電極26(電極26(1)〜(3))を担持する刺激リード12に1つ又はそれよりも多くのリード延長部24を通じて物理的に接続される。図示の実施形態において、SCSシステム10に組み込むことができる刺激リードの1つは、電極26(1)/(2)を担持する外科的パドルリード12(1)であり、SCSシステム10に組み込むことができる刺激リードの別の1つは、電極26(3)を担持する経皮的リード12(2)である。1つだけの外科的パドルリード12(1)と1つだけの経皮的リード12(2)が図示されているが、複数の外科的パドルリード12(1)及び/又は経皮的リード12(2)をSCSシステム10と用いることができる。また、以下で更に詳細に説明するように、IPG14は、刺激パラメータのセットに従って電気刺激エネルギをパルス電気波形(すなわち、電気パルスの時系列)の形態で電極アレイ26に送出するパルス発生回路を含む。
【0026】
IPG及び刺激リード12は、例えば、中空針、スタイレット、トンネリングツール、及びトンネリングストローと共に埋め込み可能神経刺激キットとして提供することができる。埋め込み可能キットを解説する更なる詳細内容は、「一時的神経刺激リード識別デバイス(Temporary Neurostimulation Lead Identification Device)」という名称の米国特許出願第61/030,506号(代理人ドケットNo.07−00472−01)明細書に開示されている。
【0027】
また、経皮的リード延長部28又は外部ケーブル30を通じて刺激リード12にETS20を物理的に接続することができる。IPG14と類似のパルス発生回路を有するETS20はまた、電気刺激エネルギをパルス電気波形の形態で刺激パラメータセットに従って電極アレイ26に送出する。ETS20とIPG14との主な相違点は、ETS20が、供給される刺激の応答性を試験するために、刺激リード12が埋め込まれた後でかつIPG14の埋め込みの前に試行ベースで使用される埋め込み不能デバイスである点である。例示的なETSの更なる詳細内容は、米国特許第6,895,280号明細書で説明されている。
【0028】
RC16は、双方向RF通信リンク32を通じてETS20を遠隔測定制御するのに使用することができる。IPG14及び刺激リード12が埋め込まれると、RC16を使用して、双方向RF通信リンク34を通じてIPG14を遠隔測定制御することができる。そのような制御は、埋め込みの後にIPG14を起動又は停止させ、異なる刺激プログラムを用いてプログラムすることを可能にする。IPG14のプログラムが終了し、この電源を充電又は他の方法での補充が完了すると、IPG14は、RC16がなくてもプログラムされた通りに機能することができる。
【0029】
CP18は、手術室及び経過観察のセッションにおいてIPG14及びETS20をプログラムするための詳細な刺激パラメータを臨床医に供給する。CP18は、IR通信リンク36を通じてRC16を通してIPG14又はETS20と間接的に通信することによってこの機能を実行することができる。代替的に、CP18は、RF通信リンク(図示せず)を通じてIPG14又はETS20と直接通信することができる。
【0030】
外部充電器22は、誘導リンク38を通じてIPG14を経皮的に充電するのに使用される可搬式デバイスである。簡潔化の目的で、外部充電器22の詳細内容に対しては、本明細書では説明しない。外部充電器の例示的な実施形態の詳細内容は、米国特許第6,895,280号明細書で開示されている。IPG14のプログラムが完了し、その電源を外部充電器22によって充電又は他の方法での補充が完了すると、IPG14は、RC16又はCP18がなくても、プログラムされた通りに機能することができる。
【0031】
上記で簡潔に解説するように、刺激リードのうちの1つは外科的パドルリード12(1)とすることができる。このため、図2を参照すると、外科的パドルリード12(1)は、パドル型の膜40と、パドル型の膜40から延びる2つの細長いリード本体42(第1のリード本体42(1)及び第2のリード本体42(2))とを備える。リード本体42の各々は、近位端44と遠位端46とを有する。各リード本体42は、例えば、脊髄電気刺激用途において、0.03インチ〜0.07インチの範囲内の直径と30cm〜90cmの範囲内の長さとを有することができる。各リード本体42は、ポリマー(例えば、ポリウレタン又はシリコーン)のような好適な電気絶縁材料から構成することができ、一体構造体として押し出し成形することができる。パドル型の膜40は、シリコーンのような電気絶縁材料から構成される。
【0032】
外科的パドルリード12(1)は更に、リード本体42の近位端44に装着された近位接点48(近位接点48(1)及び近位接点48(2))と、2次元配列でパドル型の膜40の片側に装着される複数の電極26とを備える。図示の実施形態では、近位接点48(1)は、第1のリード本体42(1)の近位端44に装着され、近位接点48(2)は、リード本体42(2)の近位端44に装着され、更に、電極26は、膜40上に第1の電極の列26(1)及び第2の電極の列26(2)として配列される。図示のように、電極26は、各列において電極E1〜E8としてラベル付けされており、近位接点48は、各リード本体42において近位接点PC1〜PC8としてラベル付けされている。刺激リード12(1)は、16個の電極26(すなわち、各リード本体36上に8個の対応する近位接点)を有して図示されているが、電極の数は、外科的パドルリード12(1)を使用することが意図された用途に好適なあらゆる数(例えば、2個、4個、8個、その他)とすることができる。
【0033】
電極26の各々は、例えば、プラチナ、チタン、スレンテス鋼、又はこれらの合金などの導電性の非腐食性材料から構成されたディスクの形態をとる。近位接点48の各々は、例えば、プラチナ、チタン、スレンテス鋼、又はこれらの合金などの導電性の生体適合性のある非腐食性材料から構成された円筒型リング要素の形態をとる。
【0034】
外科的パドルリード12(1)はまた、各リード本体42内で個々の内腔(図示せず)を通って延び、かつ溶接などの好適な手段を用いてそれぞれの近位接点48と電極26との間に接続されて、これにより第1のリード本体42(1)上の近位接点48(1)を第1の電極の列26(1)に電気的に結合し、また、第2のリード本体42(2)上の近位接点48(2)を第2の電極の列26(2)に電気的に結合する複数の導電体(図示せず)を含む。
【0035】
パドルリードの構成及び製造方法に関する更なる詳細内容は、米国特許出願公開第2007/0150036号明細書で開示されている。
【0036】
有意には、以下で更に詳細に説明するように、第1のリード本体42(1)上に配置される近位接点48(1)と第1の電極の列26(1)との間のインライン接続と、第2のリード本体42(2)上の近位接点48(2)と第2の電極の列26(2)との間のインライン接続とは互いに異なる。すなわち、近位接点と電極との間の物理的な順序付けは同じであるのに対して、第1のリード本体42(1)の近位接点48(1)が第1の電極の列26(1)に電気的に接続される順序は、第2のリード本体42(2)の近位接点48(2)が第2の電極の列26(2)に電気的に接続される順序とは異なっている。以下で更に詳細に解説されるように、リード本体42のインライン接続が異なることにより、これらリード本体が互いに電気的に区別され、これにより識別することが可能になる。
【0037】
上記で簡潔に解説したように、刺激リードのもうひとつのものは、経皮的リード12(3)とすることができる。このため、図3を参照すると、経皮的リード12(3)は、近位端44と遠位端46とを有する細長いリード本体42(3)を備える。リード本体42(3)は、例えば、脊髄電気刺激用途において、0.03インチ〜0.07インチの範囲内の直径と30cm〜90cmの範囲内の長さとを有することができる。リード本体42(3)は、ポリマー(例えば、ポリウレタン又はシリコーン)のような好適な電気絶縁材料から構成することができ、一体構造体として押し出し成形することができる。
【0038】
経皮的リード12(2)は更に、リード本体48(3)の近位端44に装着された複数の近位接点48(3)と、リード本体48(3)の遠位端46に装着された複数のインライン電極26(3)とを備える。図示のように、電極26(3)は、電極E1〜E8としてラベル付けされ、近位接点48(3)は、近位接点PC1〜PC8としてラベル付けされている。経皮的リード12(2)は8個の電極26(3)(すなわち、8個の対応する近位接点48(3))を有して図示されているが、電極の数は、経皮的リード12(2)を使用することが意図された用途に好適なあらゆる数(例えば、2個、4個、16個、その他)とすることができる。電極26の各々は、例えば、プラチナ、チタン、スレンテス鋼、又はこれらの合金などの導電性の生体適合性のある非腐食性材料から構成された円筒型リング要素の形態をとり、リード本体の周りに円周方向に配置される。
【0039】
経皮的リード12(2)はまた、リード本体42(3)内で延びており、かつ溶接などの好適な手段を用いてそれぞれの近位接点48(3)と電極26(3)との間に接続されて、これにより近位接点48(3)を遠位方向に配置された電極26(3)と電気的に結合する複数の導電体(図示せず)を含む。経皮的リード12(2)は更に、リード埋め込みを容易にするために、挿入スタイレット(以下で詳細に説明される)を受け入れるのに用いることができる中央内腔(図示せず)を含む。
【0040】
経皮的刺激リードの構成及び製造方法を説明する更なる詳細内容は、米国特許出願公開第2007/0168007号明細書及び米国特許出願公開第2007/0168004号明細書に開示されている。
【0041】
有意には、以下で更に詳細に説明するように、近位接点48(3)と経皮的リード12(2)の電極26(3)との間のインライン接続と、近位接点48(1)/(2)と外科的パドルリード12(1)の電極26(1)/(2)との間のインライン接続とは互いに異なる。すなわち、近位接点と電極との間の物理的な順序付けは同じであるのに対して、リード本体42(3)の近位接点48(3)が電極26(3)に電気的に接続される順序は、外科的パドルリード12(1)の第1のリード本体42(1)の近位接点48(1)が第1の電極の列26(1)に電気的に接続される順序とは異なり、更に、外科的パドルリード12(1)の第2のリード本体42(2)の近位接点48(2)が第2の電極の列26(2)に電気的に接続される順序とは異なっている。以下で更に詳細に解説されるように、リード本体42のインライン接続が異なることにより、これらリード本体が互いに電気的に区別され、これにより識別することが可能になる。
【0042】
図2又は3のいずれかを参照すると、IPG14は、電子構成要素及び他の構成要素(以下でより詳細に説明する)を収容するための外側ケース50を含む。外側ケース50は、チタンのような導電性の生体適合性材料から構成され、内部電子機器が体組織及び体液から保護される密封区画を形成する。一部の場合には、外側ケース50は電極として機能する。IPG14は、更に、電極26を外側ケース50内に含まれる電子機器に電気的に結合する方式で刺激リード12のリード本体42の近位端44が嵌合できるコネクタ52を含む。この目的のために、コネクタ52は、外科的パドルリード12(1)のリード本体42(1)/(2)の近位端44、又は経皮的リード12(2)のリード本体42(3)の近位端44(2つの経皮的リード12(2)が使用される場合には、各リード本体42(3)の近位端44)を受け取るためのポート54のペア(仮想線でのみ図示する)を含む。リード延長部24が使用される場合には、ポート54は、代替的に、このようなリード延長部24の近位端を受け取ることができる。
【0043】
以下でより詳細に説明するように、IPG14は、パラメータセットに従って電気刺激エネルギを電極26に供給するパルス発生回路を含む。このようなパラメータは、アノード(正)、カソード(負)として作動され、かつオフ(ゼロ)にされる電極を定める電極組合せと、パルス振幅(IPG14が電極に定電流又は定電圧のいずれを供給するかに応じてミリアンペア又はボルト単位で測定される)、パルス持続時間(マイクロ秒単位で測定される)、及びパルス繰返し数(パルス毎秒単位で測定される)を定める電気パルスパラメータとを含むことができる。
【0044】
SCSシステム10の作動中に供給されるパルスパターンに関して、電気エネルギを伝達又は受け取るように選択される電極を本明細書では「作動の」と呼び、これに対して、電気エネルギを伝達又は受け取るように選択されない電極を本明細書では「非作動の」と呼ぶ。電気エネルギ送出は、2つ(又はそれよりも多く)の電極の間で発生することになり、これらの電極のうちの1つは、電流が、IPGケース50内に含まれるエネルギソースから組織への経路と、組織からケース内に含まれるエネルギソースへのシンク経路とを有するようにIPGケース50とすることができる。電気エネルギは、単極又は多重極(例えば、二重極、三重極、その他)方式で組織に伝達することができる。
【0045】
単極送出は、リード電極26のうちで選択された1つ又はそれよりも多くがIPG14のケース40と共に作動され、その結果、電気エネルギが選択された電極26とケース40との間で伝達される場合に発生する。単極送出はまた、リード電極26のうちの1つ又はそれよりも多くが、1つ又はそれよりも多くのリード電極26から離れて設けられた大きいリード電極群と共に作動されて単極効果をもたらすような場合、すなわち、電気エネルギが、1つ又はそれよりも多くのリード電極26から比較的等方的に伝達される場合に発生することができる。二重極送出は、リード電極26のうちの2つがアノードとカソードとして作動され、その結果、電気エネルギが選択された電極26の間で伝達される場合に発生する。三重極送出は、リード電極26のうちの3つが、2つをアノードとし、残りの1つをカソードとして、又は2つをカソードとし、残りの1つをアノードとして作動される場合に発生する。
【0046】
図4を参照すると、刺激リード12(12(1)又は12(2)のいずれか)は、患者58の脊柱56内に埋め込まれる。刺激リード12の好ましい配置は、刺激される脊髄区域に隣接し、すなわちその上に収まる。刺激リード12が脊柱56から出る位置の近くの空間の欠如に起因して、一般的に、IPG14は、腹部内又は臀部上方のいずれかにおける外科手術によって作成されたポケット内に埋め込まれる。IPG14はまた、当然ながら患者の身体の他の位置に埋め込まれてもよい。リード延長部24を用いて、刺激リード12の出口ポイントから離れてIPG14を設置するのを容易にすることができる。埋め込み後、IPG14は、患者の制御下で治療的刺激を提供するのに使用することができる。
【0047】
次に図5に移り、ここでIPG14の主な内部構成要素を以下に説明する。IPG14は、データバス64上の制御ロジック62の制御下で、指定されたパルス振幅の電極26においてコンデンサー61を介して電気刺激パルスを個々に発生させることができるアナログ出力回路60を含む。電気刺激の持続時間は、タイマーロジック66により制御される。アナログ出力回路60は、指定された既知のアンペア数の刺激パルスを電極26に又は電極26から供給するため独立して制御される電流源か、又は指定された既知の電圧の刺激パルスを電極26において供給するため独立して制御される電圧源のいずれかを含むことができる。規定の振幅及び幅の刺激パルスを発生させる同じ機能を実行するのに好適な出力回路の別の実施形態を含む、このアナログ出力回路60の作動は、米国特許第6,516,227号明細書及び第6,993,384号明細書においてより完全に説明されている。
【0048】
IPG14は更に、IPG14にわたる様々なノード又は他のポイント72のステータス、例えば、電源電圧、温度、及びバッテリ電圧、及び同様のものをモニタするためのモニタ回路70を含む。とりわけ、電極26は、脊柱の硬膜外腔内に緊密に収まり、組織は導電性を有するので、電極26間で電気測定値を取得することができる。有意には、モニタ回路70は、以下でより詳細に説明するように、CP18がIPG14に接続される特定のリード本体42を自動的に識別できるように、そのような電気測定値を取得するように構成される。図示の実施形態では、接続されたリード本体を識別する目的でモニタ回路70によって得られる電気測定値は、電界電位である。モニタ回路70はまた、それぞれの電極26と組織との間の結合効率を求めるため、及び/又は電極26とIPG14のアナログ出力回路60との間の接続に関する障害検出を容易にするために、各電極26におけるインピーダンスを測定することができる。
【0049】
電気データは、様々な手段のうちのいずれか1つを用いて測定することができる。例えば、電気データ測定は、米国特許第7,317,948号明細書において説明されているように、電気刺激パルスが組織に印加されている間の時間の一部分の間、又は刺激の直後にサンプリングベースで行うことができる。代替的に、電気データ測定は、米国特許第6,516,227号明細書及び第6,993,384号明細書で説明されているように電気刺激パルスとは独立して行うことができる。
【0050】
IPG14は更に、データバス76上の制御ロジック62を制御して、モニタ回路70からデータバス78を通じてステータスデータを取得するマイクロコントローラ74の形態の処理回路を含む。更に、IPG14はタイマーロジック66を制御する。IPG14は更に、マイクロコントローラ74に結合されたメモリ80と、発振器及びクロック回路82とを含む。従って、マイクロコントローラ74は、メモリ80並びに発振器及びクロック回路82と組合せて、メモリ80内に格納された適切なプログラムに従ってプログラム機能を実行するマイクロプロセッサシステムを構成する。代替的に、一部の用途では、マイクロプロセッサシステムによって提供される機能は、適切な状態機械によって実行することができる。
【0051】
すなわち、マイクロコントローラ74は、必要な制御信号及びステータス信号を発生させ、これによってマイクロコントローラ74は、選択された作動プログラム及びパラメータに従ってIPG14の作動を制御することが可能になる。IPG14の作動を制御する際に、マイクロコントローラ74は、アナログ出力回路60を制御ロジック62及びタイマーロジック66と組合せて用いて、電極26に電気パルスを個々に発生させることができ、これによって各電極26を単極ケース電極を含む他の電極26とペア又は群にし、電流刺激パルスが供給される際の極性、振幅、率、及びパルス幅を制御することが可能になる。
【0052】
IPG14は、更に、RC16から適切な変調搬送波信号でプログラミングデータ(例えば、作動プログラム及び/又は刺激パラメータ)を受信するための交流(AC)受信コイル84と、AC受信コイル84を通じて受信する搬送波信号を復調してプログラミングデータを復元するための充電及び順方向遠隔測定回路86とを含み、この場合、これらのプログラミングデータは、メモリ80内、又はIPG14にわたって分散された他のメモリ要素(図示せず)内に格納される。
【0053】
IPG14は更に、モニタ回路70によって検知された情報データ(電界電位及びインピーダンスデータを含む)をRC16に送信するための帰還遠隔測定回路88及び交流(AC)送信コイル90を含む。IPG14の帰還遠隔測定機能は、そのステータスを検査することも可能にする。例えば、刺激パラメータに加えられたあらゆる変更は帰還遠隔測定を通じて確認され、これによってそのような変更が、IPG14内で正しく受け取られ実施されたことが保証される。更に、RC16による照会時に、IPG14内に格納された全てのプログラミング可能な設定をRC16にアップロードすることができる。
【0054】
IPG14は更に、IPG14に作動電力を供給するための再充電可能電源92及び電力回路94を含む。再充電可能電源92は、例えば、リチウムイオンバッテリ又はリチウムイオンポリマーバッテリを含むことができる。再充電可能電源92は、未調整電圧を電力回路94に供給する。電力回路94は、次に、IPG14内に設けられた様々な回路により必要に応じて一部が調整され、一部が調整されない様々な電圧96を発生させる。再充電可能電源92は、AC受信コイル84によって受信される整流AC電力(又は他の手段、例えば、「インバータ回路」としても知られる効率的なAC−DCコンバータ回路によってAC電力から変換されたDC電力)を用いて再充電される。電源92を再充電するために、AC磁場を発生させる外部充電器(図示せず)は、埋め込まれたIPG14の上の患者の皮膚に当てて、又は他の方法で隣接して配置される。外部充電器によって放出されるAC磁場は、AC受信コイル84内にAC電流を誘起する。充電及び順方向遠隔測定回路86は、AC電流を整流して、電源92を充電するのに使用されるDC電流を生成する。AC受信コイル84は、通信(例えば、プログラミングデータ及び制御データ)を無線で受信すること、及び外部デバイスからエネルギを充填することの両方に使用されるように説明したが、AC受信コイル84は、専用充電コイルとして配置することができ、一方、コイル90のような別のコイルは、双方向遠隔測定に使用することができる点は理解されたい。
【0055】
図5の図は単に機能的なものであり、限定を意図していない点に留意されたい。当業者は、本明細書で提示される説明を理解した上で、提供かつ説明する機能を実行する多くの種類のIPG回路又は均等回路を容易に構築することができるであろう。SCSシステム10は、神経刺激器のためのIPGではなく、刺激リード12に接続した埋め込み可能受信機−刺激器(図示せず)を代替的に利用することができる点に留意されたい。この場合、埋め込まれた受信機、並びに受信機−刺激器に命令する制御回路に電力を供給するための電源、例えばバッテリは、受信機−刺激器に電磁リンクを通じて誘導結合された外部コントローラ内に収容されることになる。データ/電力信号は、埋め込まれた受信機−刺激器の上に配置されたケーブル接続の送信コイルから経皮的に結合される。埋め込まれた受信機−刺激器は信号を受信して、制御信号に従って刺激を発生させる。
【0056】
次に、図6を参照して、RC16の1つの例示的実施形態を以下に説明する。先に解説したように、RC16は、IPG14、CP18、又はETS20と通信を行うことができる。RC16は、内部構成要素(プリント回路基板(PCB)を含む)を収容するケーシング100と、ケーシング100の外面によって担持された照明表示画面102及びボタンパッド104とを含む。図示の実施形態では、表示画面102は、照明フラットパネル表示画面であり、ボタンパッド104は、フレックス回路の上に位置決めされた金属ドームを有するメンブレンスイッチと、PCBに直接接続したキーパッドとを含む。任意的な実施形態では、表示画面102は、タッチスクリーン機能を有する。ボタンパッド104は、IPG14をオン及びオフすることを可能にし、IPG14内の刺激パラメータの調節又は設定を可能にし、画面の間の選択を可能にする複数のボタン106、108、110、及び112を含む。
【0057】
図示の実施形態では、ボタン106は、IPG14をオン及びオフにするように作動させることができるオン/オフボタンとして機能する。ボタン108は、RC106が画面表示及び/又はパラメータの間で切り換え可能にする選択ボタンとして機能する。ボタン110及び112は、パルス振幅、パルス幅、及びパルス繰返し数を含むIPG14によって発生するパルスの刺激パラメータのうちのいずれかを増大又は減少させるように作動させることができる上/下ボタンとして機能する。
【0058】
図7を参照し、ここで例示的なRC16の内部構成要素を以下で説明する。一般的に、RC16は、プロセッサ114(例えば、マイクロコントローラ)と、プロセッサ114による実行のための作動プログラムを格納するメモリ116と、リンク34(又はリンク32)(図1に示す)を通じて制御データ(刺激パラメータと、ステータス情報を提供する要求とを含む)をIPG14(又はETS20)に送信し、ステータス情報(測定電気データを含む)をIPG14(又はETS20)から受信するため、並びにリンク36(図1に示す)を通じてCP18から制御データを受信し、ステータスデータをCP18に送信するための遠隔測定回路18とを含む。更に、RC16は、ボタンパッド104から刺激制御信号を受け取り、表示画面102(図6に示す)にステータス情報を伝達するための入力/出力回路120を含む。RC16の機能及び内部構成要素の更なる詳細内容は、米国特許第6,895,280号明細書において開示されている。
【0059】
上記に簡単に解説したように、CP18は、複数の電極組合せのプログラミングを大幅に簡素化し、医師又は臨床医がIPG14、並びにRC16内にプログラミングされる望ましい刺激パラメータを即座に決定することを可能にする。この場合、埋め込み後のIPG14のプログラミング可能なメモリ内の刺激パラメータの修正は、臨床医によって、IPG14と直接通信を行うことができ又はRC16を通じてIPG14と間接的に通信を行うことができるCP18を用いて実施される。すなわち、CP18は、医師又は臨床医が脊髄の近くの電極アレイ26の作動パラメータを修正するのに使用することができる。
【0060】
図4に示しているように、CP18の全体の外観は、ラップトップパーソナルコンピュータ(PC)のものであり、実際には、指向プログラミングデバイスを含むように適切に構成され、本明細書で説明する機能を実施するようにプログラムされたPCを用いて実施することができる。この場合、プログラミング技術は、CP18内に含まれるソフトウェア命令を実行することによって実施することができる。代替的に、このようなプログラミング技術は、ファームウェア又はハードウェアを用いて実施することができる。いずれの場合にも、CP18は、IPG14(又はETS20)によって発生する電気刺激の特性を能動的に制御することができ、患者のフィードバックに基づいて最適な刺激パラメータを判断し、その後にこの最適な刺激パラメータを用いてIPG14(又はETS20)をプログラムすることを可能にする。
【0061】
臨床医がこれらの機能を実行することを可能にするために、CP18は、マウス121、キーボード122、及びケース126内に収容されたプログラミング表示画面124を含む。マウス121に加えて又は代替的に、ジョイスティック、又はキーボード122に付随するキーの一部として含まれる方向キーのような他の指向プログラミングデバイスを使用することができる点に留意されたい。図8に示しているように、一般的に、CP18は、プロセッサ128(例えば、中央演算装置(CPU))と、臨床医がIPG14(又はETS20)及びRC16をプログラムすることを可能にするためにプロセッサ128が実行できる刺激プログラミングパッケージ132を格納するメモリ130とを含む。更に、CP18は、リンク36(図1に示す)を通じて刺激パラメータをRC16にダウンロードし、RC16のメモリ116内に既に格納されている刺激パラメータをアップロードするための遠隔測定回路134を含む。遠隔測定回路134はまた、RC16を通じて間接的に制御データ(刺激パラメータと、ステータス情報を提供する要求とを含む)をIPG14(又はETS20)に送信し、ステータス情報(測定電気データを含む)をIPG14(又はETS20)から受信するように構成される。
【0062】
更に図2及び3を参照すると、CP18は、リード本体42により作製された電子指紋に基づいてIPG14に結合される刺激リード12のリード本体42を自動的に識別するよう構成される。詳細には、CP18は、(すなわち、RC16を通じてステータス情報の要求をIPG14に転送することにより)IPG14がリード本体42の近位接点48にて電子指紋を測定する働きをするように構成される。リード本体42が識別されると、CP18は、刺激リード12の適正な電極26にアナログ出力回路60(図5に示す)の出力を再マッピングするよう構成される。リード本体42が識別され、アナログ出力回路60の出力が電極26にマッピングされると、CP18は、識別されたリード本体42に基づいてIPG14が使用するための刺激パラメータを生成することができる。従って、ユーザは、間違ったコネクタポートが使用されていることを考慮することなく、IPG14のコネクタ52のあらゆるポート54にリード本体42を挿入することができる。
【0063】
図示の実施形態において、電子指紋は、リード12の遠位端と関連する電極列における各電極26の他の電極26からの距離に相関付けることができる。
【0064】
このため、電子指紋は、識別されるリード本体42と関連する各近位接点48を電流が最初に通過することにより生成され測定される。電流は、例えばそれぞれの近位接点48とIPGケース50との間に単極構成で流れ、又はそれぞれの近位接点48とリード本体42により担持される1つ又はそれよりも多くの他の近位接点48との間に多重極構成で流れることができる。各それぞれの近位接点48を電流が流れることに応答して、他の近位接点48の各々において電界電位が測定され、各近位接点48の電界電位プロフィールを作成する。
【0065】
この場合、各測定された電界電位は、電流が流れる近位接点48に対応する電極26と、電界電位が測定された近位接点48に対応する電極26との間の距離に相関付けられる。このことにより、各近位接点に対して電界電位プロフィールを作成することができ、その合成プロフィールを用いて近位接点48と対応する電極26とが担持されるリード本体42の電子指紋を生成することができる。電界電位測定技術に関する更なる詳細内容は、米国特許第6,993,384号において開示されている。
【0066】
電子指紋の固有性は、近位接点48と、それぞれのリード本体42に関連する電極26との間のインライン接続が異なることによりもたらされる。すなわち、近位接点48の同じ構成においては、インライン接続が変化すると、近位接点48に対応する電極26間の距離が変化し、これにより各近位接点48に対する電界電位プロフィール並びにリード本体42に対する結果として生じる電子指紋が変化することになる。留意すべきことに、インライン接続が変化しなければ、外科的パドルリード12(1)のそれぞれのリード本体42(1)/(2)と関連する2つの電極の列26(1)/(2)、並びに同じ体軸方向の電極間隔を有することができる経皮的リード12(2)のリード本体42(3)に関連する電極26(3)は、極めて類似した電子指紋を作成することになる。この場合、外科的パドルリード12(1)のリード本体42(1)/(2)によって作成される電子指紋と、経皮的リード12(2)のリード本体42(3)によって作成される電子指紋とは、接続が同じであった場合には互いに区別できないことになる。
【0067】
例えば、経皮的リード12(2)に関して、近位接点PC1〜PC8は、従来的方式で電極E1〜E8に連続して接続することができる。すなわち、近位接点PC1は電極E1に接続され、近位接点PC2は電極E2に接続され、近位接点PC3は電極E3に接続され、近位接点PC4は電極E4に接続され、近位接点PC5は電極E5に接続され、近位接点PC6は電極E6に接続され、近位接点PC7は電極E7に接続され、近位接点PC8は電極E8に接続される。
【0068】
図9に示すように、経皮的リード12(2)の結果として生じる電子指紋は、それぞれの近位接点PC1〜PC8に対する合成電界電位プロフィールを含む。この場合には、近位接点PC1〜PC8の各々に対する電界電位プロフィールは、単極方式で各それぞれの近位接点に電流を印加し、他の近位接点にて電界電位を測定することにより作成される。すなわち、近位接点PC1に電流を印加する間、近位接点PC2〜PC8において電界電位が測定され、近位接点PC2に電流を印加する間、近位接点PC1及びPC3〜PC8において電界電位が測定され、近位接点PC3に電流を印加する間、近位接点PC1〜PC2及びPC4〜PC8において電界電位が測定される、などである。
【0069】
近位接点PC2〜PC8にそれぞれ接続される電極の間隔により、近位接点PC1の電界電位プロフィールが決定付けられる。詳細には、近位接点PC1の電界電位プロフィールは、対応する電極E1が対応する電極E2に空間的に近接しているので、近位接点PC2において最大値を有する。対応する電極E1と対応する電極E3〜E8との間の間隔は当該順序で漸次的に増大するので、電界電位プロフィールは、この最大値から近位接点PC3〜PC8の順に低下する。
【0070】
近位接点PC1及びPC3〜PC8にそれぞれ接続される電極の間隔により、近位接点PC2の電界電位プロフィールが決定付けられる。詳細には、近位接点PC2の電界電位プロフィールは、対応する電極E2が対応する電極E1及びE3に空間的に近接しているので、近位接点PC1及びPC3において最大値を有する。対応する電極E2と対応する電極E4〜E8との間の間隔は当該順序で漸次的に増大するので、電界電位プロフィールは、この最大値から近位接点PC4〜PC8の順に低下する。
【0071】
近位接点PC1〜PC2及びPC4〜PC8にそれぞれ接続される電極の間隔により、近位接点PC3の電界電位プロフィールが決定付けられる。詳細には、近位接点PC3の電界電位プロフィールは、対応する電極E3が対応する電極E2及びE4に空間的に近接しているので、近位接点PC2及びPC4において最大値を有する。対応する電極E3と対応する電極E5〜E8との間の間隔は当該順序で漸次的に増大するので、電界電位プロフィールは、近位接点PC1からこの最大値まで増大し、次いで、この最大値から近位接点PC5〜PC8の順に低下する。
【0072】
近位接点PC1〜PC3及びPC5〜PC8にそれぞれ接続される電極の間隔により、近位接点PC4の電界電位プロフィールが決定付けられる。詳細には、近位接点PC4の電界電位プロフィールは、対応する電極E4が対応する電極E3及びE5に空間的に近接しているので、近位接点PC3及びPC5において最大値を有する。対応する電極E4と対応する電極E1〜E2との間の間隔は当該順序で漸次的に減少するので、電界電位プロフィールは、この最大値まで近位接点PC1〜PC2の順に増大し、次いで、対応する電極E4と対応する電極E6〜E8との間の間隔は当該順序で漸次的に増大するので、電界電位プロフィールは、この最大値から近位接点PC6〜PC8の順に低下する。
【0073】
近位接点PC1〜PC4及びPC6〜PC8にそれぞれ接続される電極の間隔により、近位接点PC5の電界電位プロフィールが決定付けられる。詳細には、近位接点PC5の電界電位プロフィールは、対応する電極E5が対応する電極E4及びE6に空間的に近接しているので、近位接点PC4及びPC6において最大値を有する。対応する電極E5と対応する電極E1〜E3との間の間隔は当該順序で漸次的に減少するので、電界電位プロフィールは、この最大値まで近位接点PC1〜PC3の順に増大し、次いで、対応する電極E5と対応する電極E7〜E8との間の間隔は当該順序で漸次的に増大するので、電界電位プロフィールは、この最大値から近位接点PC7〜PC8の順に低下する。
【0074】
近位接点PC1〜PC5及びPC7〜PC8にそれぞれ接続される電極の間隔により、近位接点PC6の電界電位プロフィールが決定付けられる。詳細には、近位接点PC6の電界電位プロフィールは、対応する電極E6が対応する電極E5及びE7に空間的に近接しているので、近位接点PC5及びPC7において最大値を有する。対応する電極E6と対応する電極E1〜E4との間の間隔は当該順序で漸次的に減少するので、電界電位プロフィールは、この最大値まで近位接点PC1〜PC4の順に増大し、次いで、この最大値から近位接点PC8まで低下する。
【0075】
近位接点PC1〜PC6及びPC8にそれぞれ接続される電極の間隔により、近位接点PC7の電界電位プロフィールが決定付けられる。詳細には、近位接点PC7の電界電位プロフィールは、対応する電極E7が対応する電極E6及びE8に空間的に近接しているので、近位接点PC6及びPC8において最大値を有する。対応する電極E7と対応する電極E1〜E5との間の間隔は当該順序で漸次的に減少するので、電界電位プロフィールは、この最大値まで近位接点PC1〜PC5の順に増大する。
【0076】
近位接点PC1〜PC7にそれぞれ接続される電極の間隔により、近位接点PC8の電界電位プロフィールが決定付けられる。詳細には、近位接点PC8の電界電位プロフィールは、対応する電極E8が対応する電極E7に空間的に近接しているので、近位接点PC7において最大値を有する。対応する電極E8と対応する電極E1〜E6との間の間隔は当該順序で漸次的に減少するので、電界電位プロフィールは、この最大値まで近位接点PC1〜PC6の順に増大する。
【0077】
外科的パドルリード12(1)の第1のリード本体42(1)に関して、近位接点PC1〜PC8は、非従来的な方式で電極E1〜E8に接続することができる。すなわち、近位接点PC1は電極E2に接続され、近位接点PC2は電極E5に接続され、近位接点PC3は電極E8に接続され、近位接点PC4は電極E1に接続され、近位接点PC5は電極E4に接続され、近位接点PC6は電極E7に接続され、近位接点PC7は電極E3に接続され、近位接点PC8は電極E6に接続される。
【0078】
図10に示すように、外科的パドルリード12(1)の第1のリード本体42(1)の結果として生じる電子指紋は、それぞれの近位接点PC1〜PC8に対する合成電界電位プロフィールを含む。経皮的リード12(2)に関して上述したのと同様に、近位接点PC1〜PC8の各々の電界電位プロフィールは、単極方式で各それぞれの近位接点に電流を印加し、他の近位接点にて電界電位を測定することにより作成される。加えて、各近位接点に対する電界電位プロフィールは、残りの近位接点にそれぞれ接続された電極の間隔により決定付けられる。
【0079】
上記のことから、近位接点PC1に接続された電極E2は、近位接点PC4及びPC7にそれぞれ接続された電極E1及びE3に空間的に近接しているので、近位接点PC1に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC4及びPC7において最大値を有する。近位接点PC2に接続された電極E5は、近位接点PC5及びPC8にそれぞれ接続された電極E4及びE6に空間的に近接しているので、近位接点PC2に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC5及びPC8において最大値を有する。近位接点PC3に接続された電極E8は、近位接点PC6に接続された電極E7に空間的に近接しているので、近位接点PC3に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC6において最大値を有する。近位接点PC4に接続された電極E1は、近位接点PC1に接続された電極E2に空間的に近接しているので、近位接点PC4に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC1において最大値を有する。
【0080】
図11に示すように、外科的パドルリード12(1)の第2のリード本体42(2)の結果として生じる電子指紋は、それぞれの近位接点PC1〜PC8に対する合成電界電位プロフィールを含む。経皮的リード12(2)に関して上述したのと同様に、近位接点PC1〜PC8の各々の電界電位プロフィールは、単極方式で各それぞれの近位接点に電流を印加し、他の近位接点にて電界電位を測定することにより作成される。加えて、各近位接点に対する電界電位プロフィールは、残りの近位接点にそれぞれ接続された電極の間隔により決定付けられる。
【0081】
上記のことから、近位接点PC1に接続された電極E7は、近位接点PC2及びPC3にそれぞれ接続された電極E6及びE8に空間的に近接しているので、近位接点PC1に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC2及びPC3において最大値を有する。近位接点PC2に接続された電極E6は、近位接点PC1及びPC6にそれぞれ接続された電極E7及びE5に空間的に近接しているので、近位接点PC2に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC1及びPC6において最大値を有する。近位接点PC3に接続された電極E8は、近位接点PC1に接続された電極E7に空間的に近接しているので、近位接点PC3に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC1において最大値を有する。近位接点PC4に接続された電極E2は、近位接点PC7及びPC8に接続された電極E3及びE1に空間的に近接しているので、近位接点PC4に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC7及びPC8において最大値を有する。
【0082】
近位接点PC5に接続された電極E4は、近位接点PC6及びPC7にそれぞれ接続された電極E5及びE3に空間的に近接しているので、近位接点PC5に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC6及びPC7において最大値を有する。近位接点PC6に接続された電極E5は、近位接点PC2及びPC5にそれぞれ接続された電極E6及びE5に空間的に近接しているので、近位接点PC6に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC2及びPC5において最大値を有する。近位接点PC7に接続された電極E3は、近位接点PC4及びPC5にそれぞれ接続された電極E2及びE4に空間的に近接しているので、近位接点PC7に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC4及びPC5において最大値を有する。近位接点PC8に接続された電極E1は、近位接点PC4に接続された電極E2に空間的に近接しているので、近位接点PC8に対する電界電位プロフィールは、近位接点PC4において最大値を有する。
【0083】
この場合も同様に、図11で分かるように、近位接点PC1〜PC8は、外科的パドルリード12(1)の第2のリード本体42(2)に対して電極E1〜E8に連続的に接続されていないので、近位接点PC1〜PC8の各々に対する電界電位プロフィールは、最大値から不規則に変化する。
【0084】
CP18は、IPG14(又はETS20)により測定される電子指紋に基づいてIPG14(又はETS20)に接続される特定のリード本体42を自動的に識別する。このため、メモリ130は、異なるリード本体42に対応する複数の基準電子指紋を記憶している。基準電子指紋は、電極の点源から計算される期待電子指紋から生成することができる。或いは、基準電子指紋は、リードの近位接点から取得される実際の測定値から生成することもできる。いずれの場合においても、プロセッサ128は、IPG14によって測定される電子指紋をメモリ130内に記憶された基準電子指紋の各々と比較し、測定された電子指紋と基準電子指紋のうちの1つとの一致を判定し、IPG14に接続されたリード本体42を基準電子指紋のうちの一致する指紋に対応するリード本体として識別するように構成される。
【0085】
図示の実施形態において、プロセッサ128は、測定電子指紋におけるデータポイントを基準電子指紋の各々におけるデータポイントとコンピュータにより比較し、比較関数に基づいて測定電子指紋と基準電子指紋との間の一致を判定するよう構成されている。
【0086】
例えば、使用することができる1つの比較関数は、次式のように表すことができるピアソン相関係数関数のような相関係数関数である。

ここで、rは係数であり、MEASは、IPG14により測定された電子指紋のデータセットを表し、REFは、測定電子指紋のデータが比較される基準電子指紋のデータセットを表し、Mは、データセット(測定又は基準のいずれか)の平均を表し、iは、データセット(測定又は基準のいずれか)の単一の要素を表す。
【0087】
有利には、相関係数は、マグニチュードスケーリングに影響されず、−1(完全逆相関)から1(完全相関)までの範囲にわたる。従って、相関係数は、測定電子指紋と基準電子指紋との間の一致に対しては1に近づき、測定電子指紋と基準電子指紋との間の不一致に対しては閾値(例えば、0.9)よりも小さくなる。
【0088】
図9及び10に示す電子指紋に関してピアソン相関係数関数を実行することにより生成される期待相関係数は−0.35であり、図9及び11に示す電子指紋に関してピアソン相関係数関数を実行することにより生成される期待相関係数は0.25であり、図10及び11に示す電子指紋に関してピアソン相関係数関数を実行することにより生成される期待相関係数は0.14である。従って、プロセッサ128のこの自動識別機能は、識別されるリード本体に対する接続されるリード本体42の不一致に対して堅牢なものである。
【0089】
使用することができる別の比較関数は、最小二乗ベースの関数であり、詳細には、次式のように表すことができる差二乗和関数である。

ここで、SSDは差二乗和であり、MEAS、REF、及びiは、上記で定義済みである。SSD関数は、測定電子指紋のデータセットと基準電子指紋のデータセットの間の差を測定する。この関数を用いると、最小の差二乗和をもたらす基準電子指紋は、その対応するリード本体が識別されたリード本体として選択されたものである。
【0090】
相互相関関数、ウェーブレット関数、及び関連のマッチング尺度を含む他の比較関数を代替的に使用してもよい。
【0091】
電子指紋のデータセットは、最初に計算機能を実行する前に電極のサブセットから導くことができる点に留意されたい。例えば、自動識別機能は、開放接点及び高インピーダンスに対して堅牢でなくてはならない。この場合、少数(恐らくは1つ又は2つ)の高インピーダンスを示す近位接点48は無視することができる。この堅牢性の向上は、リード本体の近位端にコード化することができる固有の電子指紋の数の低減を犠牲にして成り立つことになる。
【0092】
とりわけ、測定電子指紋が他の場合に一致する基準電子指紋と比較される場合でも、コネクタアライメントのどのようなシフトも電子指紋不一致をもたらすことになるので、自動識別機能を適切に作動させるためには、それぞれのリード本体42の近位接点48とIPG14のコネクタ52との間で適切に固定接続されることが重要である。詳細には、種々のミスアライメント状態(近位接点がIPGのコネクタとミスアライメントになった状態)に対応する電子指紋が生成される可能性がある。この場合、ミスアライメント状態を示す高インピーダンス測定値が電子指紋の一部として保持されることになる。次いで、測定電子指紋をこれらの基準ミスアライメント電子指紋と比較することができ、その結果、CP18は、ミスアライメント状態を自動的に識別して補正することができるようになる。
【0093】
また、ある期間にわたって電子指紋測定を繰返し行うことにより、最終的には間違ったリード本体識別を取得する可能性が高くなる。これを避けるために、プロセッサ128は、最初に実施した時にリード本体識別子をメモリ130内に記憶するようにし、刺激リードが置き換えられて自動識別機能が再度実施される時のみリード本体識別子を更新するよう構成されている。自動識別機能は、プログラムセッションが開始される時は常に実施することができるが、新しいリード本体識別は、保存したリード本体識別と異なることが判明した場合には、ユーザ確認を適用してメモリ130に上書きする必要がある。この確認はまた、リード本体がIPG14に初めて接続された時に、デフォルトの連続インライン接続とは異なることが判明した場合にも必要とされる可能性がある。
本発明の特定的な実施形態を図示して説明したが、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定することを意図しておらず、当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変形及び修正を加えることができることが明らかであろう。従って、本発明は、特許請求によって定められる本発明の精神及び範囲に含めることができる代替形態、修正形態、及び均等形態を網羅するように意図している。
【符号の説明】
【0094】
12 埋め込み可能刺激リード
14 埋め込み可能パルス発生器(IPG)
16 遠隔制御器(RC)
18 プログラム作成器(CP)
20 外部試験刺激器(ETS)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なるリード本体のうちの選択したものを識別する方法であって、前記リード本体の各々が複数の近位接点と、該近位接点にそれぞれ電気的に結合された複数の遠位電極とを含み、前記選択したリード本体が患者の組織と接触した状態にあり、
前記方法は、
前記選択したリード本体の電極と前記組織との間に電気エネルギを伝達するステップと、
前記伝達された電気エネルギに応答して前記選択リード本体の近位接点にて電子指紋を測定するステップと、
前記測定された電子指紋に基づいて前記選択リード本体を識別するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記複数のリード本体は、外科的パドルリードの少なくとも2つのリード本体を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のリード本体は、外科的パドルリードのリード本体と、経皮的リードのリード本体とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電極と、異なるリード本体により担持される近位接点との間のインライン接続は互いに異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記測定された電子指紋は、前記選択したリード本体の近位接点にてそれぞれ測定された複数の電界電位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記測定された電子指紋を前記異なるリード本体に対応する複数の基準電子指紋の各々と比較するステップと、
前記測定された電子指紋と前記基準電子指紋の1つとの一致を判定するステップと、
前記選択したリード本体を、前記基準電子指紋の一致する電子指紋に対応するリード本体として識別するステップと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記測定された電子指紋のデータポイントは、前記基準電子指紋の各々のデータポイントとコンピュータにより比較される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基準電子指紋の各々のコンピュータによる比較ステップは、相関係数の生成ステップを含み、前記測定電子指紋と前記1つの基準電子指紋との間の一致は、前記生成した相関係数の値に基づいて判定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記相関係数は、ピアソン相関係数である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記識別リード本体に基づいて複数の刺激パラメータで神経刺激器をプログラミングするステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記選択したリード本体を患者内に埋め込むステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
神経刺激器のためのプログラム作成器であって、
ユーザコマンドを受け取るように構成されたユーザインタフェースと、
リード本体に接続される神経刺激器により測定される電子指紋を受け取るよう構成された入力回路と、
前記測定された電子指紋に基づいて複数の異なるリード本体から前記リード本体を自動的に識別して、前記ユーザコマンドに応答して前記識別されたリード本体の刺激パラメータを生成するよう構成されたプロセッサと、
前記刺激パラメータを前記神経刺激器に伝送する出力回路と、
を備える、プログラム作成器。
【請求項13】
前記複数のリード本体は、外科的パドルリードの少なくとも2つのリード本体を含む、請求項12に記載のプログラム作成器。
【請求項14】
前記複数のリード本体は、外科的パドルリードのリード本体と、経皮的リードのリード本体と、を含む、請求項12に記載のプログラム作成器。
【請求項15】
前記測定電子指紋が複数の電界電位を含む、請求項12に記載のプログラム作成器。
【請求項16】
前記異なるリード本体に対応する複数の基準電子指紋を記憶するメモリを更に備え、前記プロセッサは、前記測定電子指紋を複数の基準電子指紋の各々と比較し、前記測定電子指紋と前記基準電子指紋の1つとの間の一致を判定して、前記選択したリード本体を前記基準電子指紋のうちの一致する電子指紋に対応するリード本体として識別するよう構成されている、請求項12に記載のプログラム作成器。
【請求項17】
前記プロセッサは、前記測定電子指紋のデータポイントを前記基準電子指紋の各々におけるデータポイントとコンピュータにより比較されるように構成されている、請求項16に記載のプログラム作成器。
【請求項18】
前記基準電子指紋の各々のコンピュータによる比較ステップは、相関係数の生成ステップを含み、前記プロセッサは、前記生成した相関係数の値に基づいて前記測定電子指紋と前記1つの基準電子指紋との間の一致を判定するよう構成されている、請求項17に記載のプログラム作成器。
【請求項19】
前記相関係数は、ピアソン相関係数である、請求項18に記載のプログラム作成器。
【請求項20】
前記出力回路は、遠隔測定回路を含む、請求項12に記載のプログラム作成器。
【請求項21】
埋め込み可能神経刺激キットであって、
神経刺激器と、
前記神経刺激器に結合されるよう構成された複数の細長いリード本体と、
を備え、前記細長いリード本体は各々、複数の近位接点と、該近位接点にそれぞれ電気的に結合された複数の遠位電極とを有し、前記電極と、前記異なるリード本体により担持される近位接点との間のインライン接続が互いに異なる、神経刺激キット。
【請求項22】
前記神経刺激器は、埋め込み可能パルス発生器である、請求項21に記載の神経刺激キット。
【請求項23】
前記複数のリード本体を有する少なくとも1つの脊髄電気刺激リードを更に備える、請求項21に記載の神経刺激キット。
【請求項24】
前記複数のリード本体を有する外科的パドルリードを更に備える、請求項21に記載の神経刺激キット。
【請求項25】
前記複数のリード本体のうちの1つを有する外科的パドルと、前記複数のリード本体のうちの別の1つを有する経皮的リードとを更に備える、請求項21に記載の神経刺激キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2013−509984(P2013−509984A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538873(P2012−538873)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/055868
【国際公開番号】WO2011/057213
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(507213592)ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション (34)
【Fターム(参考)】