説明

プロジェクター

【課題】光学部品の位置ずれを防止できるプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクター1は、光学部品7を保持する保持部材8と、光学部品7が収納される光学部品用筐体と、光学部品用筐体の外面に固定され、保持部材8を光学部品用筐体に固定するためのベース部材9とを備える。光学部品用筐体の外面には、保持部材8を摺動可能に支持する支持面が形成されている。保持部材8は、光学部品7を保持する保持部材本体81と、光学部品用筐体外部に突出し、支持面に支持される摺動部82とを備える。ベース部材9は、光学部品用筐体の外面に固定される固定部91と、摺動部82を挟んで支持面に対向する対向部93とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光学部品と、複数の光学部品が収納されて当該複数の光学部品を所定位置に配置する光学部品用筐体とを備えたプロジェクターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなプロジェクターにおいて、例えば、コントラストの高い投影画像を得るためには、光学部品である入射側偏光板を所望の姿勢に位置付ける必要がある。
このため、特許文献1に記載のプロジェクターでは、入射側偏光板の姿勢を調整するための姿勢調整機構が設けられている。
【0003】
そして、プロジェクターの製造時には、以下のように、入射側偏光板の姿勢を調整する。
先ず、作業者は、入射側偏光板を姿勢調整機構に保持させ、光学部品用筐体の下部筐体内に入射側偏光板を含む姿勢調整機構を収納する。また、作業者は、下部筐体の上方側の開口部分を上部筐体にて閉塞する。
この状態で、作業者は、光学部品用筐体の上面に姿勢調整機構の位置調整専用の光軸調整治具を載置し、当該光軸調整治具を上部筐体に形成された孔を介して姿勢調整機構と係合させる。
この後、作業者は、光源を点灯させ、各光学部品及び投射レンズを介してスクリーン上に表示された投影画像を観察しながら、光軸調整治具を操作して姿勢調整機構を調整し、入射側偏光板の姿勢を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−004562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光学部品用筐体では、入射側偏光板の姿勢調整を実施する際には、姿勢調整機構の位置調整専用の光軸調整治具が必要である。
したがって、プロジェクターを使用中に入射側偏光板の姿勢がずれた場合等には、専用の光軸調整治具を使用しなければならず、容易に入射側偏光板の姿勢調整を実施することが困難である、という問題がある。
【0006】
本発明の目的は、光学部品の姿勢調整を容易に実施できるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロジェクターは、光学部品を保持する保持部材と、前記光学部品が収納される光学部品用筐体と、前記光学部品用筐体の外面に固定され、前記保持部材を前記光学部品用筐体に固定するためのベース部材とを備え、前記光学部品用筐体の外面には、前記保持部材を摺動可能に支持する支持面が形成され、前記保持部材は、前記光学部品を保持する保持部材本体と、前記光学部品用筐体外部に突出し、前記支持面に支持される摺動部とを備え、前記ベース部材は、前記光学部品用筐体の外面に固定される固定部と、前記摺動部を挟んで前記支持面に対向する対向部とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、光学部品としては、種々のものを採用でき、例えば、偏光板、位相差板、または、光学補償素子等を採用できる。
本発明では、光学部品を保持する保持部材は、光学部品用筐体の外面に形成された支持面上を摺動可能とする摺動部を備える。
このことにより、作業者は、従来のように専用の光軸調整治具を用いなくても、光学部品用筐体の外部から保持部材(摺動部)を操作し、摺動部を支持面上で摺動させることで、保持部材(光学部品)の姿勢調整を容易に実施できる。
また、プロジェクターは、光学部品用筐体の外面に固定される固定部、及び摺動部を挟んで支持面に対向する対向部を有するベース部材を備える。
このことにより、保持部材(光学部品)の姿勢調整後、対向部及び摺動部間に接着剤を塗布することで、ベース部材(光学部品用筐体)に対して保持部材(光学部品)を所望の姿勢で固定できる。
【0009】
ところで、光学部品用筐体に対して保持部材を固定する手段として、ネジを採用した場合には、ネジを回転させた際に当該ネジと保持部材との摩擦力により当該ネジの回転に保持部材が連動し易いものとなる。すなわち、姿勢調整により保持部材(光学部品)を所望の姿勢に設定したにも拘らず、光学部品用筐体に対する保持部材の固定時において、ネジの回転に保持部材が連動することで、光学部品が所望の姿勢からずれ易いものとなる。
本発明では、上述したようにベース部材(光学部品用筐体)に対して保持部材を固定する手段として、接着剤を採用できるため、ベース部材に対する保持部材の固定時において、光学部品が所望の姿勢からずれることがない。
また、接着剤にて光学部品用筐体に直接、保持部材を固定するのではなく、光学部品用筐体に固定されたベース部材に対して、接着剤にて保持部材を固定している。
このことにより、光学部品用筐体に接着剤が不要に付着することがなく、さらには、光学部品用筐体内部に配設される光学部品に接着剤が付着してしまう恐れもない。
【0010】
本発明のプロジェクターでは、前記対向部は、前記摺動部に当接し、前記摺動部を前記支持面に向けて付勢することが好ましい。
本発明では、対向部が摺動部を支持面に向けて付勢するように構成されているので、光学部品の姿勢調整時において、摺動部を支持面上で安定に摺動させることができる。このため、光学部品の姿勢調整を良好に実施できる。
また、姿勢調整により光学部品を所望の姿勢に設定した後、対向部の付勢力によって、保持部材を当該所望の姿勢で仮固定できる。このため、光学部品の姿勢調整後、接着剤を塗布する作業に移行する間に、光学部品が所望の姿勢からずれることがなく、光学部品を所望の姿勢で良好に固定できる。
【0011】
本発明のプロジェクターでは、前記対向部には、接着剤を塗布するための接着用切欠部が形成されていることが好ましい。
本発明では、対向部に上述した接着用切欠部が形成されているので、光学部品の姿勢調整後、接着用切欠部に接着剤を塗布すれば、対向部及び摺動部間の広い領域に亘って接着剤を充填することができる。このため、ベース部材に対する保持部材の固定状態を安定に維持でき、すなわち、光学部品を所望の姿勢で安定に維持できる。
【0012】
本発明のプロジェクターでは、前記ベース部材は、前記固定部の端縁に一体形成され前記固定部に対して略直交するように突出する突出部を備え、前記突出部における前記保持部材本体に対向する面は、前記保持部材本体に当接する第1面と、前記突出部を側方から見て、前記第1面に対して前記保持部材本体から離間する側に位置付けられる第2面とを備え、前記第2面は、前記突出部の外縁に連設されていることが好ましい。
【0013】
本発明では、ベース部材において、固定部の端縁に一体形成され当該固定部に対して略直交するように突出する突出部には、上述した第1面が設けられている。
このことにより、支持面上の他、第1面上で保持部材を摺動させることができる。このため、保持部材を安定に移動させることが可能となり、光学部品の姿勢調整を良好に実施することが可能となる。
また、突出部には、第1面に対して保持部材本体から離間する側に位置付けられ、かつ、突出部の外縁に連設される第2面が設けられている。
このことにより、光学部品の姿勢調整後、対向部及び摺動部間の他、第2面及び保持部材本体間にも接着剤を塗布すれば、ベース部材に対する保持部材の固定状態をさらに良好に維持できる。
【0014】
本発明のプロジェクターでは、前記突出部は、前記固定部に接続し、前記突出部及び前記固定部間には、前記摺動部を挿通可能とする挿通孔が形成され、前記対向部は、前記挿通孔の縁部分に設けられていることが好ましい。
本発明では、突出部及び固定部間に上述した挿通孔が形成され、対向部が挿通孔の縁部分に設けられているので、光学部品、保持部材、及びベース部材を組み合わせたユニット自体をコンパクトに纏めることができ、当該ユニット自体の小型化が図れる。
【0015】
本発明のプロジェクターでは、前記保持部材本体を前記第1面に向けて付勢する付勢部材を備えることが好ましい。
本発明では、プロジェクターが保持部材本体を第1面に向けて付勢する付勢部材を備えるので、光学部品の姿勢調整時において、保持部材本体を第1面上で安定に摺動させることができ、光学部品の姿勢調整を良好に実施できる。
また、姿勢調整により光学部品を所望の姿勢に設定した後、付勢部材の付勢力によって、保持部材を当該所望の姿勢で仮固定できる。このため、光学部品の姿勢調整後、接着剤を塗布する作業に移行する間に、光学部品が所望の姿勢からずれることがなく、光学部品を所望の姿勢で良好に固定できる。
【0016】
本発明のプロジェクターでは、前記保持部材本体は、光束を通過させるための通過用開口部を有する枠状に形成され、前記突出部は、前記光学部品に入射する光束の光軸に沿う方向から見て、前記摺動部及び前記通過用開口部間に位置付けられることが好ましい。
本発明では、突出部は、上述した位置に位置付けられている。言い換えれば、突出部は、保持部材本体よりも小さいサイズに設定され、すなわち、必要最低限のサイズに設定されている。このため、ベース部材の小型化及び軽量化が図れ、ひいては、光学部品、保持部材、及びベース部材を組み合わせたユニット自体の小型化及び軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す図。
【図2】本実施形態における光学ユニットを示す斜視図。
【図3】本実施形態における上部筐体の構成を示す斜視図。
【図4】本実施形態における偏光板ユニットの構成を示す図。
【図5】本実施形態における偏光板ユニットの構成を示す図。
【図6】本実施形態における入射側偏光板の姿勢調整方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
そして、このプロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体2内部に収納される光学ユニット3を備える。
【0019】
〔光学ユニットの構成〕
図2は、光学ユニット3を示す斜視図である。
光学ユニット3は、図2に示すように、光学部品用筐体4と、光学部品用筐体4に支持される投射光学装置としての投射レンズ5とを備える。
そして、光学部品用筐体4には、図1に示すように、光源ランプ311及びリフレクター312を有する光源装置31と、レンズアレイ321,322、偏光変換素子323、及び重畳レンズ324を有する照明光学装置32と、ダイクロイックミラー331,332、及び反射ミラー333を有する色分離光学装置33と、入射側レンズ341、リレーレンズ343、及び反射ミラー342,344を有するリレー光学装置34と、3つの偏光板ユニット6と、光変調装置としての3つの液晶パネル35と、3つの出射側偏光板36と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム37とが収納される。
【0020】
そして、光学ユニット3では、上述した構成により、光源装置31から出射され照明光学装置32を介した光束は、色分離光学装置33にて赤(R),緑(G),青(B)の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各液晶パネル35にてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム37にて合成され、投射レンズ5にてスクリーンに投射される。
なお、上述した各部材31〜37,5は、一般的なプロジェクターで用いられる構成であるため、以下では、光学部品用筐体4、及び偏光板ユニット6の構成のみを説明する。
【0021】
〔光学部品用筐体の構成〕
図3は、上部筐体42の構成を示す斜視図である。
なお、図3では、説明の便宜上、G色光側の偏光板ユニット6のみを上部筐体42に取り付けた状態を示している。
光学部品用筐体4は、図2に示すように、下部筐体41と、上部筐体42とを備える。
下部筐体41は、各部材31〜37が収納される部分であり、容器状に形成されている。
上部筐体42は、下部筐体41における容器状の開口部分に取り付けられる蓋状に形成されている。
【0022】
この上部筐体42において、上方側から見て(図1の紙面に直交する方向から見て)、プリズム37が配設される位置には、図3に示すように、プリズム37における3つの光入射面371(図1)に沿う3つの縁部分421Aを有する切欠部421が形成されている。
【0023】
また、上部筐体42において、上面(光学部品用筐体4の外面)には、図3に示すように、3つのユニット取付部43が設けられている。なお、上述したように、図3では、G色光側の偏光板ユニット6のみが上部筐体42に取り付けられているため、3つのユニット取付部43のうち、R,B色光側の2つのユニット取付部43が主に図示されている。
3つのユニット取付部43は、3つの縁部分421Aに近接した位置にそれぞれ設けられ、3つの偏光板ユニット6が取り付けられる部分である。
なお、3つのユニット取付部43は、同様の構成であるため、以下では、1つのユニット取付部43のみを説明する。
【0024】
ユニット取付部43は、図3に示すように、一対の位置決め突起431と、第1固定用孔432と、支持部433とを備える。
一対の位置決め突起431は、上方側に突出する円柱形状を有し、偏光板ユニット6の後述するベース部材9を位置決めする部分である。
そして、一対の位置決め突起431は、上方側から見て、縁部分421Aの延出方向に沿って並設されている。
第1固定用孔432は、一対の位置決め突起431間に設けられ、ネジSc(図2、図3)により、ベース部材9を固定するためのネジ孔である。
【0025】
支持部433は、図3に示すように、一対の位置決め突起431及び第1固定用孔432に対して縁部分421A側に設けられ、偏光板ユニット6の後述する保持部材8を摺動可能に支持する部分である。
そして、支持部433の上面433Aは、上方に向けて凸となる曲面形状を有する。
より具体的に、上面433Aは、支持する偏光板ユニット6に入射する光束の光軸Ax(図6参照)に沿う方向から見て、光軸Axを中心とする円弧形状を有する。
なお、上述した上面433Aは、本発明に係る支持面に相当する。以下では、上面433Aを支持面433Aと記載する。
【0026】
また、支持部433の中央部分には、図3に示すように、支持面433Aから下方に向けて窪む凹部433Bが形成されている。
この凹部433Bは、縁部分421Aに連通するように形成されている。
また、縁部分421Aにおいて、凹部433Bを挟む両側には、図3に示すように、光出射側に突出する当接部421Bがそれぞれ形成されている。
これら当接部421Bの各先端は、平坦状に形成され、光軸Axに対して直交する同一平面上に位置するように設定されている。
【0027】
〔偏光板ユニットの構成〕
図4及び図5は、偏光板ユニット6の構成を示す図である。具体的に、図4は偏光板ユニット6が組み立てられた状態を光出射側から見た斜視図であり、図5は光出射側から見た偏光板ユニット6の分解斜視図である。
3つの偏光板ユニット6は、図1に示すように、各液晶パネル35の光入射側にそれぞれ配設される。
なお、3つの偏光板ユニット6は、同様の構成であるため、以下では、1つの偏光板ユニット6のみを説明する。
偏光板ユニット6は、図4または図5に示すように、光学部品としての入射側偏光板7と、保持部材8と、ベース部材9と、付勢部材としてのクリップ10とを備える。
入射側偏光板7は、矩形板体状に形成され、入射した光束のうち、偏光変換素子323で揃えられた偏光方向と略同一の偏光方向を有する光束のみを透過させる。
【0028】
〔保持部材の構成〕
保持部材8は、入射側偏光板7を保持し、支持面433A上を摺動することで、入射側偏光板7の姿勢を調整する。
この保持部材8は、図4または図5に示すように、保持部材本体81と、摺動部82とを備える。
保持部材本体81は、図5に示すように、光束を通過させるための矩形状の通過用開口部811を有する矩形枠状の板体で構成されている。
ここで、通過用開口部811の縁部分、及び保持部材本体81の外縁部分には、図4または図5に示すように、光出射側に突出し、入射側偏光板7の外縁を支持する複数の支持用突起812が形成されている。
そして、入射側偏光板7は、通過用開口部811を閉塞し、外縁が複数の支持用突起812に支持された状態で保持部材本体81に取り付けられる。
【0029】
保持部材本体81において、通過用開口部811の上方側には、図4または図5に示すように、光軸Axを中心とする円弧状に延びる2つのトラック孔813が形成されている。
なお、2つのトラック孔813は、光軸Axに沿う方向から見て、光軸Axを通る鉛直軸Vを中心として対称となる位置にそれぞれ形成されている(図6参照)。
また、保持部材本体81において、上縁部分には、図4または図5に示すように、上方側に突出する2つの接着剤受け部814が形成されている。
2つの接着剤受け部814は、光軸Axに沿う方向から見て、左右両側にそれぞれ設けられ、上方側に向うにしたがって光出射側に向うように傾斜している。
【0030】
摺動部82は、保持部材本体81の上縁部分に一体形成されるとともに、光学部品用筐体4に対して偏光板ユニット6を取り付けた状態で、切欠部421を介して光学部品用筐体4外部に突出し、支持面433Aに支持される部分である。
より具体的に、摺動部82は、図4または図5に示すように、保持部材本体81の上縁部分において、2つの接着剤受け部814の間に一体形成され、当該上縁部分から光入射側に突出する。
なお、摺動部82は、光軸Axに沿う方向から見て鉛直軸V上に位置付けられている(図6参照)。
また、摺動部82は、支持面433Aに倣う形状、すなわち、光軸Axに沿う方向から見て、光軸Axを中心とする円弧状に形成されている。
【0031】
また、摺動部82には、図4または図5に示すように、上方側に突出し、作業者により操作される操作つまみ821が設けられている。
さらに、摺動部82及び保持部材8には、摺動部82及び保持部材8の接続部分を跨ぎ、クリップ10を挿通可能とする付勢用開口部83が形成されている。
なお、付勢用開口部83は、光軸Axに沿う方向から見て鉛直軸V上に位置付けられている(図6参照)。
【0032】
〔ベース部材の構成〕
ベース部材9は、上部筐体42の上面(光学部品用筐体4の外面)に固定され、保持部材8を上部筐体42に固定するための部材である。
このベース部材9は、図4または図5に示すように、固定部91と、突出部92と、対向部93とを備える。
固定部91は、上部筐体42の上面に固定される部分であり、矩形状の板体で構成されている。
【0033】
この固定部91には、図4または図5に示すように、上部筐体42の上面に形成された一対の位置決め突起431に対応した一対の位置決め用孔911と、第1固定用孔432に対応した第2固定用孔912とが形成されている。
そして、一対の位置決め用孔911に一対の位置決め突起431がそれぞれ挿通されることで、上部筐体42に対してベース部材9が位置決めされる。
また、第2固定用孔912を介してネジScが挿通され、第1固定用孔432に螺合されることで、上部筐体42に対してベース部材9が固定される。
【0034】
突出部92は、固定部91に対して略直交するように、固定部91の光出射側(縁部分421Aに近接する側)の端縁に一体形成された矩形状の板体で構成されている。
そして、突出部92は、上部筐体42に対してベース部材9が取り付けられた状態で、切欠部421を介して光学部品用筐体4内部に突出するとともに、上部筐体42の当接部421Bの先端に当接する。
また、突出部92は、上部筐体42に対して偏光板ユニット6が取り付けられた状態で、光軸Axに沿う方向から見て、摺動部82及び通過用開口部811間に位置付けられる。言い換えれば、突出部92は、光軸Axに沿う方向から見て、切欠部421から通過用開口部811の上縁近傍まで延出するように形成されている(図6参照)。
この突出部92において、光出射側の端面(保持部材本体81に対向する面)は、図5に示すように、第1面921と、第2面922とを備える。
【0035】
第1面921は、上部筐体42に対してベース部材9が取り付けられた状態で、光軸Axに対して直交する平坦状に形成され、偏光板ユニット6を組み立てた状態で保持部材本体81が当接する面である。
第2面922は、突出部92を側方から見て、第1面921に対して光入射側(保持部材本体81から離間する側)に位置付けられている。
より具体的に、第2面922は、突出部92における上方側で、かつ、左右両側に2つ設けられ、突出部92の外縁、及び固定部91の上面に連設されている。
【0036】
また、第1面921には、図4または図5に示すように、保持部材本体81に形成された2つのトラック孔813に対応し、各トラック孔813にそれぞれ挿通する円柱状の2つの案内突起923が形成されている。
そして、上述した固定部91及び突出部92には、固定部91及び突出部92の接続部分を跨ぎ、摺動部82を挿通可能とする挿通孔913が形成されている。
【0037】
対向部93は、挿通孔913の縁部分に形成され、固定部91に対して弾性変形可能に構成されている。
そして、対向部93は、上部筐体42に対して偏光板ユニット6が取り付けられた状態で、摺動部82を挟んで支持面433Aに対向する。
より具体的に、対向部93は、摺動部82に当接して支持面433Aに向けて付勢する。
この対向部93において、先端部分には、図4または図5に示すように、接着剤を塗布するための接着用切欠部931が形成されている。
【0038】
〔入射側偏光板の姿勢調整方法〕
次に、入射側偏光板7の姿勢調整方法について説明する。
図6は、入射側偏光板7の姿勢調整方法を説明するための図である。具体的に、図6は、偏光板ユニット6を光軸Axに沿う方向から見た(光出射側から見た)図である。
先ず、作業者は、以下のように、偏光板ユニット6を組み立てる。
すなわち、作業者は、保持部材8に対して入射側偏光板7を取り付け、挿通孔913に摺動部82を挿通するとともに、各トラック孔813に各案内突起923が挿通されるように、ベース部材9に対して保持部材8をあてがう。
そして、作業者は、付勢用開口部83及び挿通孔913にクリップ10を挿通し、クリップ10に保持部材本体81及び突出部92を挟持させる。
すなわち、クリップ10は、保持部材本体81を第1面921に向けて付勢する。
そして、この状態では、クリップ10は、図6に示すように、光軸Axに沿う方向から見て鉛直軸V上に位置付けられている。
【0039】
次に、作業者は、一対の位置決め突起431、第1固定用孔432、一対の位置決め用孔911、第2固定用孔912、及びネジScを利用して、上述したように組み立てた偏光板ユニット6のベース部材9を上部筐体42に位置決め及び固定する。
このように上部筐体42に偏光板ユニット6を取り付けることで、支持面433A上に摺動部82が支持されるとともに、対向部93にて支持面433Aに向けて摺動部82が付勢される。
【0040】
上述したように3つの偏光板ユニット6を上部筐体42に取り付けた後、作業者は、以下のように、3つの偏光板ユニット6を構成する各入射側偏光板7の姿勢調整を実施する。
作業者は、光源装置31を点灯させ、各部材32〜37,7、及び投射レンズ5を介してスクリーンに投射された投影画像を確認しながら、当該投影画像のコントラストが最大となるように、入射側偏光板7の姿勢調整を実施する。
すなわち、作業者は、図6に示すように、上方側に突出した操作つまみ821を左右に移動させる。これにより、保持部材8(入射側偏光板7)は、各トラック孔813が各案内突起923に案内されながら、摺動部82が支持面433A上を摺動し、光軸Axを中心として回転する。
【0041】
そして、作業者は、上述したように入射側偏光板7を回転させ、投影画像のコントラストが最大となる位置に位置付けた後、以下に示すように、上部筐体42に対して保持部材8を固定する。
すなわち、作業者は、偏光板ユニット6の上方側から、接着用切欠部931に向けて接着剤を塗布するとともに、第2面922と保持部材本体81との間に接着剤を塗布する。
このように接着剤を塗布することで、対向部93に対して摺動部82が固定されるとともに、突出部92に対して保持部材本体81が固定される。
【0042】
上述した本実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、保持部材8は、切欠部421を介して光学部品用筐体4外部に突出し、支持面433A上を摺動可能とする摺動部82を備える。
このことにより、作業者は、従来のように専用の光軸調整治具を用いなくても、光学部品用筐体4の外部から保持部材8(操作つまみ821)を操作し、摺動部82を支持面433A上で摺動させることできる。すなわち、入射側偏光板7の姿勢調整を容易に実施できる。
【0043】
また、プロジェクター1は、固定部91及び対向部93を有するベース部材9を備える。
このことにより、入射側偏光板7の姿勢調整後、対向部93及び摺動部82間に接着剤を塗布することで、ベース部材9(光学部品用筐体4)に対して保持部材8を所望の姿勢で固定できる。
さらに、ベース部材9に対して保持部材8を固定する手段として、接着剤を採用できるため、ベース部材9に対する保持部材8の固定時において、入射側偏光板7が所望の姿勢からずれることがない。
また、接着剤にて光学部品用筐体4に直接、保持部材8を固定するのではなく、光学部品用筐体4に固定されたベース部材9に対して、接着剤にて保持部材8を固定している。
このことにより、光学部品用筐体4に接着剤が不要に付着することがなく、さらには、光学部品用筐体4内部に配設される液晶パネル35等の部材に接着剤が付着してしまう恐れもない。
【0044】
また、対向部93が摺動部82を支持面433Aに向けて付勢するように構成されているので、入射側偏光板7の姿勢調整時において、摺動部82を支持面433A上で安定に摺動させることができる。このため、入射側偏光板7の姿勢調整を円滑に実施できる。
さらに、姿勢調整により入射側偏光板7を所望の姿勢に設定した後、対向部93の付勢力によって、保持部材8を当該所望の姿勢で仮固定できる。このため、入射側偏光板7の姿勢調整後、接着剤を塗布する作業に移行する間に、入射側偏光板7が所望の姿勢からずれることがなく、入射側偏光板7を所望の姿勢で良好に固定できる。
【0045】
また、対向部93に接着用切欠部931が形成されているので、入射側偏光板7の姿勢調整後、接着用切欠部931に接着剤を塗布すれば、対向部93及び摺動部82間の広い領域に亘って接着剤を充填することができる。
このため、ベース部材9に対する保持部材8の固定状態を安定に維持でき、すなわち、入射側偏光板7を所望の姿勢で安定に維持できる。
【0046】
さらに、ベース部材9において、切欠部421を介して光学部品用筐体4内部に突出する突出部92には、第1面921が設けられている。
このことにより、支持面433A上の他、第1面921上で保持部材8を摺動させることができる。このため、保持部材8を安定に移動させることが可能となり、入射側偏光板7の姿勢調整を良好に実施することが可能となる。
また、突出部92には、第1面921に対して光入射側に位置付けられ、かつ、突出部92の外縁、及び固定部91の上面に連設される第2面922が設けられている。
このことにより、入射側偏光板7の姿勢調整後、対向部93及び摺動部82間の他、第2面922及び保持部材本体81間にも接着剤を塗布すれば、ベース部材9に対する保持部材8の固定状態をさらに良好に維持できる。
また、保持部材8には第2面922に対応した位置に2つの接着剤受け部814が設けられているので、第2面922及び保持部材本体81間への接着剤の塗布作業を容易に実施できる。
【0047】
さらに、突出部92及び固定部91間に挿通孔913が形成され、対向部93が挿通孔913の縁部分に設けられているので、偏光板ユニット6自体をコンパクトに纏めることができ、偏光板ユニット6の小型化が図れる。
また、プロジェクター1がクリップ10を備えるので、入射側偏光板7を第1面921上で安定に摺動させることができ、入射側偏光板7の姿勢調整を良好に実施できる。
【0048】
さらに、対向部93の付勢力とともに、クリップ10の付勢力によって、保持部材8を当該所望の姿勢で仮固定できるので、入射側偏光板7の姿勢調整後、入射側偏光板7が所望の姿勢からずれることがなく、入射側偏光板7を所望の姿勢でさらに良好に固定できる。
また、突出部92は、切欠部421及び通過用開口部811間に位置付けられている。言い換えれば、突出部92は、保持部材本体81よりも小さいサイズに設定され、すなわち、必要最低限のサイズに設定されている。このため、ベース部材9の小型化及び軽量化が図れ、ひいては、偏光板ユニット6の小型化及び軽量化が図れる。
【0049】
さらに、対向部93及びクリップ10により、鉛直軸Vに沿う方向、及び光軸Axに沿う方向への保持部材8の移動を規制できるので、光軸Axを中心として入射側偏光板7を良好に回転させることができる。
また、光軸Axに沿う方向から見て、摺動部82(支持面433A)が鉛直軸V上に位置付けられているとともに、各案内突起923(各トラック孔813)が鉛直軸Vを中心として対称となる位置に位置付けられているので、光軸Axを中心とする入射側偏光板7の回転を安定化させることができる。
さらに、光軸Axに沿う方向から見て、クリップ10が鉛直軸V上に位置付けられているので、入射側偏光板7の姿勢調整時に、保持部材本体81を第1面921に向けて安定に付勢することができる。
【0050】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、本発明に係る光学部品として入射側偏光板7を採用していたが、これに限らず、出射側偏光板36、位相差板、または、光学補償素子等を採用しても構わない。
前記実施形態において、透過型の液晶パネル35の代わりに、反射型の液晶パネルや、マイクロミラーを用いたデバイス等、液晶以外の光変調素子を採用しても構わない。
前記実施形態において、入射側偏光板7の姿勢調整方法は、前記実施形態で説明した姿勢調整方法に限らない。
例えば、前記実施形態では、スクリーン上の投影画像を確認しながら入射側偏光板7の姿勢調整を実施していたが、これに限らず、プリズム37から出射される姿勢調整用の光束をCCDカメラ等で直接、検出しながら姿勢調整を実施する方法を採用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、プレゼンテーションやホームシアター等に用いられるプロジェクターに利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・プロジェクター、4・・・光学部品用筐体、7・・・入射側偏光板(光学部品)、8・・・保持部材、9・・・ベース部材、10・・・クリップ(付勢部材)、81・・・保持部材本体、82・・・摺動部、91・・・固定部、92・・・突出部、93・・・対向部、433A・・・上面(支持面)、811・・・通過用開口部、913・・・挿通孔、921・・・第1面、922・・・第2面、931・・・接着用切欠部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品を保持する保持部材と、
前記光学部品が収納される光学部品用筐体と、
前記光学部品用筐体の外面に固定され、前記保持部材を前記光学部品用筐体に固定するためのベース部材とを備え、
前記光学部品用筐体の外面には、
前記保持部材を摺動可能に支持する支持面が形成され、
前記保持部材は、
前記光学部品を保持する保持部材本体と、
前記光学部品用筐体外部に突出し、前記支持面に支持される摺動部とを備え、
前記ベース部材は、
前記光学部品用筐体の外面に固定される固定部と、
前記摺動部を挟んで前記支持面に対向する対向部とを備える
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記対向部は、
前記摺動部に当接し、前記摺動部を前記支持面に向けて付勢する
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクターにおいて、
前記対向部には、
接着剤を塗布するための接着用切欠部が形成されている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記ベース部材は、
前記固定部の端縁に一体形成され前記固定部に対して略直交するように突出する突出部を備え、
前記突出部における前記保持部材本体に対向する面は、
前記保持部材本体に当接する第1面と、
前記突出部を側方から見て、前記第1面に対して前記保持部材本体から離間する側に位置付けられる第2面とを備え、
前記第2面は、
前記突出部の外縁に連設されている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクターにおいて、
前記突出部は、
前記固定部に接続し、
前記突出部及び前記固定部間には、
前記摺動部を挿通可能とする挿通孔が形成され、
前記対向部は、
前記挿通孔の縁部分に設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のプロジェクターにおいて、
前記保持部材本体を前記第1面に向けて付勢する付勢部材を備える
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記保持部材本体は、
光束を通過させるための通過用開口部を有する枠状に形成され、
前記突出部は、
前記光学部品に入射する光束の光軸に沿う方向から見て、前記摺動部及び前記通過用開口部間に位置付けられる
ことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54092(P2013−54092A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190412(P2011−190412)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】