説明

プロジェクター

【課題】放電灯の電極の変形を抑制しつつ、映像を明るく見えるように投射できるプロジェクターを提供すること。
【解決手段】制御部40は、電流Iの絶対値を、第1期間では相対的に小さくさせ、第2期間では相対的に大きくさせ、第2期間では、交流電流を放電灯90に供給させる第1制御と、第1極性が継続する時間の最大値が、第1制御における第1極性が継続する時間の最大値よりも長い電流を放電灯90に供給させる第2制御と、第2極性が継続する時間の最大値が、第1制御における第2極性が継続する時間の最大値よりも長い電流を放電灯90に供給させる第3制御と、のいずれかを行い、劣化状態の進行に伴って、第2制御において第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において第2極性が継続する時間の最大値の少なくともいずれか一方を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの放電灯を用いたプロジェクターが実用化されている。このようなプロジェクターとして、例えば、特許文献1には、映像信号に同期して、色分離手段などに応じて光源の強度を変化させる手段を有するプロジェクターが開示されている。しかし、単純に光源の強度を変化させると、放電灯の電極の消耗が著しくなる問題が特許文献2に記載されている。
【0003】
また近年、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの放電灯を用い、立体映像を出力するプロジェクターが実用化されている。
【0004】
立体映像を出力する方式の1つに、右目用映像と左目用映像とを切り替えて交互に出力する方式(例えば、「XPAND beyond cinema(X6D Limited社の商標)」方式などのアクティブシャッターメガネ方式)がある。この方式では、映像信号に同期したアクティブシャッターメガネなどを用いて、右目用映像を右目に、左目用映像を左目に見せることによって、左右の目の視差を用いて映像を立体的に見せている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−102030号公報
【特許文献2】特開2009−237302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
右目用映像と左目用映像とを交互に出力する方式で立体映像を投射する場合は、従来の平面映像(2次元映像)を投射する場合に比べて、右目と左目とに入る光量が半分以下となる。また、右目用映像が左目に入ったり左目用映像が右目に入ったりするクロストークが生じると、映像が立体的に感じられなくなるため、アクティブシャッターが両方とも閉じている期間が必要となる。したがって、右目用映像と左目用映像とを交互に出力する方式で立体映像を投射する場合には、従来の平面映像を投射する場合よりも映像が暗く見えるという問題点がある。映像を明るく見せるためには、単純に駆動電力を上げることも考えられるが、プロジェクターの消費電力を上げたり、駆動電力を上げることに伴う周辺部品の劣化を促進したりするなどの問題点がある。
【0007】
また、映像を明るく見せるために、アクティブシャッターが両方とも閉じている期間に放電灯の輝度を下げ、アクティブシャッターのいずれかが開いている期間に放電灯の輝度を上げる制御を行うと、放電灯の輝度を下げている期間に放電灯の電極の温度が下がり、電極先端の溶融性が不十分となるため、電極が変形する可能性がある。電極が変形すると、フリッカーの発生などを引き起こす可能性がある。フリッカーが発生すると、プロジェクターの使用中に投射される映像の明るさが変動することになる。
【0008】
特に、放電灯の劣化状態の進行に伴って放電灯の駆動電流が小さくなった場合には、放電灯の明るさが低下するとともに、電極先端の溶融性が不十分となり電極が変形しやすい。したがって、電極の変形を抑制しつつ、立体映像を明るく見えるように投射するためには格別の配慮が必要となる。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、放電灯の電極の変形を抑制しつつ、映像を明るく見えるように投射できるプロジェクターを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプロジェクターは、所与の切替タイミングで、第1映像と第2映像とを切り替えて交互に出力するプロジェクターであって、第1電極及び第2電極を含む放電灯と、前記放電灯を駆動する電流を前記放電灯に供給する放電灯駆動部と、前記放電灯の劣化状態を検出する状態検出部と、前記放電灯駆動部を制御する制御部と、を含み、時間的に隣り合う前記切替タイミングに挟まれる期間は、第1期間で始まり、第2期間で終わり、前記制御部は、前記電流の絶対値が、前記第1期間では相対的に小さくなり、前記第2期間では相対的に大きくなるように前記放電灯駆動部を制御し、かつ、前記第2期間では、交流電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第1制御と、前記第1電極が陽極となる第1極性が継続する時間の最大値が、前記第1制御における前記第1極性が継続する時間の最大値よりも長い電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第2制御と、前記第2電極が陽極となる第2極性が継続する時間の最大値が、前記第1制御における前記第2極性が継続する時間の最大値よりも長い電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第3制御と、のいずれかを行い、前記劣化状態の進行に伴って、前記第2制御において前記第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において前記第2極性が継続する時間の最大値の少なくともいずれか一方を小さくする。
【0011】
状態検出部は、劣化状態の程度を表す値として、例えば、放電灯の駆動電圧、放電灯の駆動電圧の時間変化、放電灯の光量、放電灯の光量の時間変化、放電灯の累積点灯時間等を検出してもよい。
【0012】
劣化状態が進行すると電極の溶融性が低下し、電極が変形する可能性がある。本発明によれば、放電灯の劣化状態の進行に伴って、第2制御において第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において第2極性が継続する時間の最大値の少なくともいずれか一方を小さくすることによって、放電灯の一方の電極が陰極となる状態が継続する時間を短くすることができる。よって、電極の温度が低い状態で金属イオンなどの正電荷の粒子が電極に衝突することを抑制できる。したがって、電極の変形を抑制できる。
【0013】
また、本発明によれば、制御部は、放電灯に供給される電流の絶対値が、第1期間では相対的に小さくなり、第2期間では相対的に大きくなるように放電灯駆動部を制御するため、映像を明るく見えるように投射できるプロジェクターを実現できる。
【0014】
本発明に係るプロジェクターは、所与の切替タイミングで、第1映像と第2映像とを切り替えて交互に出力するプロジェクターであって、第1電極及び第2電極を含む放電灯と、前記放電灯を駆動する電流を前記放電灯に供給する放電灯駆動部と、前記放電灯の劣化状態を検出する状態検出部と、前記放電灯駆動部を制御する制御部と、を含み、時間的に隣り合う前記切替タイミングに挟まれる期間は、第1期間で始まり、第2期間で終わり、前記制御部は、前記電流の絶対値が、前記第1期間では相対的に小さくなり、前記第2期間では相対的に大きくなるように前記放電灯駆動部を制御し、かつ、前記第2期間では、交流電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第1制御と、前記第1電極が陽極となる第1極性が継続する時間の最大値が、前記第1制御における前記第1極性が継続する時間の最大値よりも長い期間を含む電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第2制御と、前記第2電極が陽極となる第2極性が継続する時間の最大値が、前記第1制御における前記第2極性が継続する時間よりも長い期間の最大値を含む電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第3制御と、のいずれかを行い、前記劣化状態の進行に伴って、前記第1制御、前記第2制御及び前記第3制御を行う時間の合計値に対する前記第2制御及び前記第3制御を行う時間の合計値の比を小さくする。
【0015】
劣化状態が進行すると電極の溶融性が低下し、電極が変形する可能性がある。本発明によれば、放電灯の劣化状態の進行に伴って、第1制御、第2制御及び第3制御を行う時間の合計値に対する第2制御及び第3制御を行う時間の合計値の比を小さくすることによって、放電灯の点灯時間に対する放電灯の一方の電極が陰極となる状態が長く継続する時間の比率を小さくすることができる。よって、電極の温度が低い状態で金属イオンなどの正電荷の粒子が電極に衝突することを抑制できる。したがって、電極の変形を抑制できる。
【0016】
また、本発明によれば、制御部は、放電灯に供給される電流の絶対値が、第1期間では相対的に小さくなり、第2期間では相対的に大きくなるように放電灯駆動部を制御するため、映像を明るく見えるように投射できるプロジェクターを実現できる。
【0017】
上述のプロジェクターにおいて、前記制御部は、前記劣化状態の進行に伴って、前記第1制御における周波数を高くしてもよい。
【0018】
これによって、放電灯の劣化状態が進行した場合に放電起点を安定させることができる。
【0019】
上述のプロジェクターにおいて、前記制御部は、前記第1制御として、第1周波数の交流電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第1交流制御を行う場合と、前記第1周波数とは異なる第2周波数の交流電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第2交流制御を行う場合と、を含んでいてもよい。
【0020】
第1制御において異なる周波数の電流を放電灯に供給することによって、放電起点となる電極上の突起の変形を抑制し、放電起点を安定させることができる。
【0021】
上述のプロジェクターにおいて、前記制御部は、前記劣化状態の進行に伴って、前記第1制御を行う時間の合計値に対する前記第1制御において周波数が最高値となる時間の合計値の比を大きくしてもよい。
【0022】
これによって、相対的に高い周波数の電流が放電灯に供給される比率が高まるので、放電灯の劣化状態が進行した場合にも放電起点が定まりやすくなる。
【0023】
上述のプロジェクターにおいて、前記制御部は、前記劣化状態の進行に伴って、前記第1制御を行う時間の合計値に対する前記第1制御において周波数が最低値となる時間の合計値の比を小さくしてもよい。
【0024】
これによって、相対的に高い周波数の電流が放電灯に供給される比率が高まるので、放電灯の劣化状態が進行した場合にも放電起点が定まりやすくなる。
【0025】
上述のプロジェクターにおいて、前記第2期間の長さは、前記第1期間の長さよりも長くてもよい。
【0026】
第2期間の長さが長くなるほど、第2期間において電極の温度が低い状態が継続することによる放電灯への影響が大きい。したがって、第2期間の長さが第1期間の長さよりも長い場合には、電極の変形を抑制する効果がより大きい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るプロジェクター500を示す斜視図。
【図2】本実施形態に係るプロジェクター500の光学系を説明するための図。
【図3】光源装置200の構成を示す説明図。
【図4】本実施形態に係るプロジェクター500の回路構成を示す回路図。
【図5】放電灯点灯装置1の回路構成を示す回路図。
【図6】図6(A)ないし図6(D)は、放電灯90に供給する電流Iの極性と電極の温度との関係を示す説明図。
【図7】第1期間、第2期間及び切替タイミングについて説明するための図。
【図8A】第2期間において第1制御を行う場合の電流Iの波形例を示すタイミングチャート。
【図8B】第2期間において第2制御を行う場合の電流Iの波形例を示すタイミングチャート。
【図8C】第2期間において第3制御を行う場合の電流Iの波形例を示すタイミングチャート。
【図9】本実施形態に係るプロジェクター500の制御例を示すフローチャート。
【図10】第1具体例における駆動条件を示すテーブル。
【図11】第2具体例における駆動条件を示すテーブル。
【図12】第3具体例における駆動条件を示すテーブル。
【図13】第4具体例における駆動条件を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0029】
1.本実施形態に係るプロジェクター
図1は、本実施形態に係るプロジェクター500を示す斜視図である。図1に示される例では、プロジェクター500は、スクリーン700に映像710を投射している。
【0030】
1−1.本実施形態に係るプロジェクターの光学系
図2は、本実施形態に係るプロジェクター500の光学系を説明するための図である。プロジェクター500は、光源装置200と、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、3つの液晶ライトバルブ330R,330G,330Bと、クロスダイクロイックプリズム340と、投写光学系350とを有している。
【0031】
光源装置200は、放電灯点灯装置1と、光源ユニット210と、を有している。光源ユニット210は、主反射鏡112と副反射鏡50(詳細は後述される)と放電灯90とを有している。放電灯点灯装置1は、放電灯90に電力を供給して、放電灯90を点灯させる。主反射鏡112は、放電灯90から放出された光を、照射方向Dに向けて反射する。照射方向Dは、光軸AXと平行である。光源ユニット210からの光は、平行化レンズ305を通過して照明光学系310に入射する。この平行化レンズ305は、光源ユニット210からの光を、平行化する。
【0032】
照明光学系310は、光源装置200からの光の照度を液晶ライトバルブ330R,330G,330Bにおいて均一化する。また、照明光学系310は、光源装置200からの光の偏光方向を一方向に揃える。この理由は、光源装置200からの光を液晶ライトバルブ330R,330G,330Bで有効に利用するためである。照度分布と偏光方向とが調整された光は、色分離光学系320に入射する。色分離光学系320は、入射光を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色光に分離する。3つの色光は、各色に対応付けられた液晶ライトバルブ330R,330G,330Bによって、それぞれ変調される。液晶ライトバルブ330R,330G,330Bは、液晶パネル560R,560G,560Bと、液晶パネル560R,560G,560Bのそれぞれの光入射側及び出射側に配置される偏光板を備える。変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム340によって合成される。合成光は、投写光学系350に入射する。投写光学系350は、入射光を、スクリーン700に投写する。これによって、スクリーン700上には映像710が表示される。
【0033】
なお、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、クロスダイクロイックプリズム340と、投写光学系350とのそれぞれの構成としては、周知の種々の構成を採用可能である。
【0034】
図3は、光源装置200の構成を示す説明図である。光源装置200は、光源ユニット210と放電灯点灯装置1とを有している。図中には、光源ユニット210の断面図が示されている。光源ユニット210は、主反射鏡112と副反射鏡50と放電灯90とを有している。
【0035】
放電灯90の形状は、第1端部90e1から第2端部90e2まで、照射方向Dに沿って延びる棒形状である。放電灯90の材料は、例えば、石英ガラス等の透光性材料である。放電灯90の中央部は球状に膨らんでおり、その内には、放電空間93が形成されている。放電空間93内には、希ガス、金属ハロゲン化合物等を含む放電媒体であるガスが封入されている。
【0036】
また、放電空間93内には、第1電極91及び第2電極92が、放電灯90から突き出している。第1電極91は、放電空間93の第1端部90e1側に配置され、第2電極92は、放電空間93の第2端部90e2側に配置されている。第1電極91及び第2電極92の形状は、光軸AXに沿って延びる棒形状である。放電空間93内では、第1電極91の電極先端部(「放電端」とも呼ぶ)と第2電極92の電極先端部とが、所定距離だけ離れて互いに向かい合っている。なお、第1電極91及び第2電極92の材料は、例えば、タングステン等の金属である。
【0037】
放電灯90の第1端部90e1には、第1端子951が設けられている。第1端子951と第1電極91とは、放電灯90の内部を通る導電性部材941によって電気的に接続されている。同様に、放電灯90の第2端部90e2には、第2端子952が設けられている。第2端子952と第2電極92とは、放電灯90の内部を通る導電性部材942によって電気的に接続されている。第1端子951及び第2端子952の材料は、例えば、タングステン等の金属である。また、導電性部材941,942としては、例えば、モリブデン箔が利用される。
【0038】
第1端子951及び第2端子952は、放電灯点灯装置1に接続されている。放電灯点灯装置1は、第1端子951及び第2端子952に、交流電流を供給する。その結果、第1電極91と第2電極92との間でアーク放電が起きる。アーク放電によって発生した光(放電光)は、破線の矢印で示すように、放電位置から全方向に向かって放射される。
【0039】
放電灯90の第1端部90e1には、固定部材961によって、主反射鏡112が固定されている。主反射鏡112の反射面(放電灯90側の面)の形状は、回転楕円形状である。主反射鏡112は、放電光を照射方向Dに向かって反射する。なお、主反射鏡112の反射面の形状としては、回転楕円形状に限らず、放電光を照射方向Dに向かって反射するような種々の形状を採用可能である。例えば、回転放物線形状を採用してもよい。この場合は、主反射鏡112は、放電光を、光軸AXにほぼ平行な光に変換することができる。したがって、平行化レンズ305を省略することができる。
【0040】
放電灯90の第2端部90e2側には、固定部材962によって、副反射鏡50が固定されている。副反射鏡50の反射面(放電灯90側の面)の形状は、放電空間93の第2端部90e2側を囲む球面形状である。副反射鏡50は、放電光を、主反射鏡112に向かって反射する。これによって、放電空間93から放射される光の利用効率を高めることができる。
【0041】
なお、固定部材961,962の材料としては、放電灯90の発熱に耐える任意の耐熱材料(例えば、無機接着剤)を採用可能である。また、主反射鏡112及び副反射鏡50と放電灯90との配置を固定する方法としては、主反射鏡112及び副反射鏡50を放電灯90に固定する方法に限らず、任意の方法を採用可能である。例えば、放電灯90と主反射鏡112とを、独立に、プロジェクター500の筐体(図示せず)に固定してもよい。副反射鏡50についても同様である。
【0042】
1−2.本実施形態に係るプロジェクターの回路構成
図4は、本実施形態に係るプロジェクター500の回路構成を示す回路図である。プロジェクター500は、先に説明した光学系の他に、映像信号変換部510、直流電源80、映像処理装置570、CPU(Central Processing Unit)580を含んでいてもよい。また、プロジェクター500とアクティブシャッターメガネ410とを含むプロジェクターシステム400として構成することも可能である。
【0043】
映像信号変換部510は、外部から入力された映像信号502(輝度−色差信号やアナログRGB信号など)を所定のワード長のデジタルRGB信号に変換して映像信号512R,512G,512Bを生成し、映像処理装置570に供給する。
【0044】
映像処理装置570は、3つの映像信号512R,512G,512Bに対してそれぞれ映像処理を行い、液晶パネル560R,560G,560Bをそれぞれ駆動するための駆動信号572R,572G,572Bを液晶パネル560R,560G,560Bに供給する。液晶パネル560R,560G,560Bに入力される駆動信号572R,572G,572Bに基づいて、図2を用いて説明した光学系によって、スクリーン700に映像710が投射される。
【0045】
直流電源80は、外部の交流電源600から供給される交流電圧を一定の直流電圧に変換し、トランス(図示しないが、直流電源80に含まれる)の2次側にある映像信号変換部510、映像処理装置570及びトランスの1次側にある放電灯点灯装置1に直流電圧を供給する。
【0046】
放電灯点灯装置1は、起動時に放電灯90の電極間に高電圧を発生して絶縁破壊させて放電路を形成し、以後、放電灯90が放電を維持するための電流I(放電灯90の駆動電流)を供給する。
【0047】
液晶パネル560R,560G,560Bは、それぞれ駆動信号572R,572G,572Bに基づいて、先に説明した光学系を介して各液晶パネルに入射される色光の輝度を変調する。
【0048】
CPU580は、プロジェクター500の点灯開始から消灯に至るまでの動作を制御する。例えば、点灯命令や消灯命令を、通信信号582を介して放電灯点灯装置1に出力してもよい。また、CPU580は、放電灯点灯装置1から放電灯90の点灯状態を表す点灯情報を、通信信号584を介して受け取ってもよい。
【0049】
さらに、CPU580は、映像信号変換部510から出力される同期信号514に基づいて、映像信号502に同期してアクティブシャッターメガネ410を制御するための制御信号586を、有線又は無線の通信手段を介してアクティブシャッターメガネ410に出力してもよい。
【0050】
アクティブシャッターメガネ410は、右シャッター412と左シャッター414を含んでいてもよい。右シャッター412及び左シャッター414は、制御信号586に基づいて開閉制御される。ユーザーがアクティブシャッターメガネ410を装着した場合に、右シャッター412が閉じられることによって、右目側の視野を遮ることができる。また、ユーザーがアクティブシャッターメガネ410を装着した場合に、左シャッター414が閉じられることによって、左目側の視野を遮ることができる。右シャッター412及び左シャッター414は、例えば、液晶シャッターで構成されていてもよい。
【0051】
1−3.放電灯点灯装置の構成
図5は、放電灯点灯装置1の回路構成を示す回路図である。
【0052】
放電灯点灯装置1は、電力制御回路20を含む。電力制御回路20は、放電灯90に供給する駆動電力を生成する。本実施形態においては、電力制御回路20は、直流電源80を入力とし、当該入力電圧を降圧して直流電流Idを出力するダウンチョッパー回路で構成されている。
【0053】
電力制御回路20は、スイッチ素子21、ダイオード22、コイル23及びコンデンサー24を含んで構成されることができる。スイッチ素子21は、例えばトランジスターで構成することができる。本実施形態においては、スイッチ素子21の一端は直流電源80の正電圧側に接続され、他端はダイオード22のカソード端子及びコイル23の一端に接続されている。また、コイル23の他端にはコンデンサー24の一端が接続され、コンデンサー24の他端はダイオード22のアノード端子及び直流電源80の負電圧側に接続されている。スイッチ素子21の制御端子には制御部40(後述)から電力制御信号が入力されてスイッチ素子21のON/OFFが制御される。電力制御信号には、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御信号が用いられてもよい。
【0054】
ここで、スイッチ素子21がONすると、コイル23に電流が流れ、コイル23にエネルギーが蓄えられる。その後、スイッチ素子21がOFFすると、コイル23に蓄えられたエネルギーがコンデンサー24とダイオード22とを通る経路で放出される。その結果、スイッチ素子21がONする時間の割合に応じた直流電流Idが発生する。
【0055】
放電灯点灯装置1は、極性反転回路30を含む。極性反転回路30は、電力制御回路20から出力される直流電流Idを入力し、所与のタイミングで極性反転することによって、制御された時間だけ継続する直流であったり、任意の周波数をもつ交流であったりする電流Iを生成出力する。本実施形態においては、極性反転回路30はインバーターブリッジ回路(フルブリッジ回路)で構成されている。
【0056】
極性反転回路30は、例えば、トランジスターなどで構成される第1スイッチ素子31、第2スイッチ素子32、第3スイッチ素子33及び第4スイッチ素子34を含み、直列接続された第1スイッチ素子31及び第2スイッチ素子32と、直列接続された第3スイッチ素子33及び第4スイッチ素子34を、互いに並列接続して構成される。第1スイッチ素子31、第2スイッチ素子32、第3スイッチ素子33及び第4スイッチ素子34の制御端子には、それぞれ制御部40から極性反転制御信号が入力され、極性反転制御信号に基づいて第1スイッチ素子31、第2スイッチ素子32、第3スイッチ素子33及び第4スイッチ素子34のON/OFFが制御される。
【0057】
極性反転回路30は、第1スイッチ素子31及び第4スイッチ素子34と、第2スイッチ素子32及び第3スイッチ素子33とを交互にON/OFFを繰り返すことによって、電力制御回路20から出力される直流電流Idの極性を交互に反転し、第1スイッチ素子31と第2スイッチ素子32との共通接続点及び第3スイッチ素子33と第4スイッチ素子34との共通接続点から、制御された時間だけ継続する直流であったり、制御された周波数をもつ交流であったりする電流Iを生成し出力する。
【0058】
すなわち、第1スイッチ素子31及び第4スイッチ素子34がONの時には第2スイッチ素子32及び第3スイッチ素子33をOFFにし、第1スイッチ素子31及び第4スイッチ素子34がOFFの時には第2スイッチ素子32及び第3スイッチ素子33をONにするように制御する。したがって、第1スイッチ素子31及び第4スイッチ素子34がONの時には、コンデンサー24の一端から第1スイッチ素子31、放電灯90、第4スイッチ素子34の順に流れる電流Iが発生する。また、第2スイッチ素子32及び第3スイッチ素子33がONの時には、コンデンサー24の一端から第3スイッチ素子33、放電灯90、第2スイッチ素子32の順に流れる電流Iが発生する。
【0059】
本実施形態において、電力制御回路20と極性反転回路30とを合わせて放電灯駆動部230に対応する。すなわち、放電灯駆動部230は、放電灯90を駆動する電流Iを放電灯90に供給する。これによって、放電灯90に駆動電力を供給する。
【0060】
放電灯点灯装置1は、制御部40を含む。制御部40は、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御することによって、放電灯90へ供給される駆動電力、電流Iが同一極性で継続する保持時間、電流Iの電流値、周波数等を制御する。制御部40は、制御部40は、電力制御回路20に対して、出力される直流電流Idの電流値を制御することによって、放電灯90へ供給される電流Iを制御する電流制御を行う。また、極性反転回路30に対して電流Iの極性反転タイミングによって、電流Iが同一極性で継続する保持時間、電流Iの周波数等を制御する極性反転制御を行う。
【0061】
制御部40の構成は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、制御部40は、システムコントローラー41、電力制御部42及び極性反転制御部43含んで構成されている。なお、制御部40は、その一部又は全てを半導体集積回路で構成されていてもよい。
【0062】
システムコントローラー41は、電力制御部42及び極性反転制御部43を制御することによって、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御する。システムコントローラー41は、電圧検出部61(後述)によって検出された放電灯90の駆動電圧Vla及び電流検出部62(後述)によって検出された放電灯90に供給される電流Iに基づいて、電力制御部42及び極性反転制御部43を制御してもよい。
【0063】
本実施形態においては、システムコントローラー41は記憶部44を含んで構成されている。なお、記憶部44は、システムコントローラー41とは独立に設けてもよい。
【0064】
システムコントローラー41は、記憶部44に格納された情報に基づき、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御してもよい。記憶部44には、例えば電流Iが同一極性で継続する保持時間、電流Iの電流値、周波数、波形、変調パターン等の駆動条件に関する情報が格納されていてもよい。
【0065】
電力制御部42は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、電力制御回路20へ電力制御信号を出力することによって、電力制御回路20を制御する。
【0066】
極性反転制御部43は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、極性反転回路30へ極性反転制御信号を出力することによって、極性反転回路30を制御する。
【0067】
なお、制御部40は、専用回路によって実現して上述した制御や後述する処理の各種制御を行うようにすることもできるが、例えばCPUが記憶部44等に記憶された制御プログラムを実行することによってコンピューターとして機能し、これらの処理の各種制御を行うようにすることもできる。
【0068】
また、図5に示される例では、制御部40は、放電灯点灯装置1の一部として構成されているが、制御部40の機能の一部又は全部をCPU580が担うように構成されていてもよい。
【0069】
放電灯点灯装置1は、電圧検出部61を含む。電圧検出部61は、放電灯90の駆動電圧Vlaを検出し、駆動電圧情報を制御部40に出力する。電圧検出部61は、本発明における状態検出部に対応する。すなわち、状態検出部(電圧検出部61)は、放電灯90の劣化状態の程度を表す値として、駆動電圧Vlaを検出する。
【0070】
放電灯90の第1電極91及び第2電極92の劣化状態が進行すると、第1電極91と第2電極92との距離(電極間距離)が大きくなる。電極間距離が大きくなると駆動電圧Vlaは上昇する。すなわち、放電灯90の劣化状態の進行に伴って駆動電圧Vlaは上昇する。
【0071】
状態検出部は、劣化状態の程度を表す値として、放電灯90の駆動電圧Vlaに代えて又は放電灯90の駆動電圧Vlaに加えて、例えば、放電灯90の駆動電圧Vlaの時間変化、放電灯90の光量、放電灯90の光量の時間変化、放電灯90の累積点灯時間等を検出してもよい。
【0072】
放電灯点灯装置1は、電流検出部62を含んで構成されていてもよい。電流検出部62は、放電灯90に供給される電流Iを検出し、駆動電流情報を制御部40に出力する。本実施形態において、電流検出部62は、放電灯90に直列に接続された抵抗63に発生する電圧を検出することによって、放電灯90に供給される電流Iを検出する。
【0073】
なお、電圧検出部61及び電流検出部62は、それぞれ専用回路によって実現して上述した検出を行うようにすることもできるが、例えばCPUが図示しない記憶部等に記憶された制御プログラムを実行することによってコンピューターとして機能し、上述した検出を行うようにすることもできる。
【0074】
また、制御部40と電圧検出部61及び電流検出部62とは、独立に構成されていてもよいし、1つのCPUによって一体として構成されていてもよい。
【0075】
放電灯点灯装置1は、イグナイター回路70を含んでもよい。イグナイター回路70は、放電灯90の点灯開始時にのみ動作し、放電灯90の点灯開始時に放電灯90の電極間(第1電極91と第2電極92との間)を絶縁破壊して放電路を形成するために必要な高電圧(放電灯90の通常点灯時よりも高い電圧)を放電灯90の電極間(第1電極91と第2電極92との間)に供給する。本実施形態においては、イグナイター回路70は、放電灯90と並列に接続されている。
【0076】
1−4.駆動電流の極性と電極の温度との関係
図6(A)ないし図6(D)は、放電灯90に供給する電流Iの極性と電極の温度との関係を示す説明図である。図6(A)及び図6(B)は、第1電極91及び第2電極92の動作状態を示している。図中には、第1電極91及び第2電極92の先端部分が示されている。第1電極91及び第2電極92の先端にはそれぞれ突起911,921が設けられている。第1電極91と第2電極92の間で生じる放電は、主として突起911と突起921との間で生じる。図6(A)及び図6(B)に示される例では、突起が無い場合と比べて、第1電極91及び第2電極92における放電位置(アーク位置)の移動を抑えることができる。ただし、このような突起を省略してもよい。
【0077】
図6(A)は、第1電極91が陽極として動作し、第2電極92が陰極として動作する第1極性状態P1を示している。第1極性状態P1では、放電によって、第2電極92(陰極)から第1電極91(陽極)へ電子が移動する。陰極(第2電極92)からは、電子が放出される。陰極(第2電極92)から放出された電子は、陽極(第1電極91)の先端に衝突する。この衝突によって熱が生じ、そして、陽極(第1電極91)の先端(突起911)の温度が上昇する。
【0078】
図6(B)は、第1電極91が陰極として動作し、第2電極92が陽極として動作する第2極性状態P2を示している。第2極性状態P2では、第1極性状態P1とは逆に、第1電極91から第2電極92へ電子が移動する。その結果、第2電極92の先端(突起921)の温度が上昇する。
【0079】
このように、陽極の温度は、陰極と比べて高くなりやすい。ここで、一方の電極の温度が他方の電極と比べて高い状態(他方の電極の温度が一方の電極と比べて低い状態)が続くことは、種々の不具合を引き起こし得る。例えば、高温電極の先端が過剰に溶けた場合には、意図しない電極変形が生じ得る。その結果、アーク長が適正値からずれる場合がある。また例えば、低温電極の先端の溶融が不十分な場合には、先端に生じた微少な凹凸が溶けずに残り得る。その結果、いわゆるアークジャンプが生じる(アーク位置が安定せずに移動する)場合がある。
【0080】
このような不具合を抑制する技術として、電流Iとして、各電極の極性を繰り返し交替させる交流電流を放電灯90に供給する交流駆動を利用可能である。図6(C)は、放電灯90に供給される電流Iの一例を示すタイミングチャートである。横軸は時間Tを示し、縦軸は電流Iの電流値を示している。電流Iは、放電灯90を流れる電流を示す。正値は、第1極性状態P1を示し、負値は、第2極性状態P2を示す。図6(C)に示される例では、電流Iとして矩形波交流電流が利用されている。そして、図6(C)に示される例では、第1極性状態P1と第2極性状態P2とが交互に繰り返されている。ここで、第1極性区間Tpは、第1極性状態P1が続く時間を示し、第2極性区間Tnは、第2極性状態P2が続く時間を示す。また、図6(C)に示される例では、第1極性区間Tpの平均電流値はIm1であり、第2極性区間Tnの平均電流値は−Im2である。なお、放電灯90の駆動に適した電流Iの周波数は、放電灯90の特性に合わせて、実験的に決定可能である(例えば、30Hz〜1kHzの範囲の値が採用される)。他の値Im1、−Im2、Tp、Tnも、同様に実験的に決定可能である。
【0081】
図6(D)は、第1電極91の温度変化を示すタイミングチャートである。横軸は時間Tを示し、縦軸は温度Hを示している。第1極性状態P1では、第1電極91の温度Hが上昇し、第2極性状態P2では、第1電極91の温度Hが降下する。また、第1極性状態P1と第2極性状態P2状態が繰り返されるので、温度Hは、最小値Hminと最大値Hmaxとの間で周期的に変化する。なお、図示は省略するが、第2電極92の温度は、第1電極91の温度Hとは逆位相で変化する。すなわち、第1極性状態P1では、第2電極92の温度が降下し、第2極性状態P2では、第2電極92の温度が上昇する。
【0082】
第1極性状態P1では、第1電極91(突起911)の先端が溶融するので、第1電極91(突起911)の先端が滑らかになる。これによって、第1電極91での放電位置の移動を抑制できる。また、第2電極92(突起921)の先端の温度が降下するので、第2電極92(突起921)の過剰な溶融が抑制される。これによって、意図しない電極変形を抑制できる。第2極性状態P2では、第1電極91と第2電極92の立場が逆である。したがって、第1極性状態P1と第2極性状態P2を繰り返すことによって、第1電極91及び第2電極92のそれぞれにおける不具合を抑制できる。
【0083】
ここで、電流Iの波形が対称である場合、すなわち、電流Iの波形が「|Im1|=|−Im2|、Tp=Tn」という条件を満たす場合には、第1電極91と第2電極92との間で、供給される電力の条件が同じである。したがって、第1電極91及び第2電極92の熱的条件(温度の上がりやすさや下がりやすさ)が同一であれば、第1電極91と第2電極92との間の温度差が小さくなるものと推定される。
【0084】
また、電極が広い範囲にわたり加熱されすぎる(アークスポット(アーク放電に伴う電極表面上のホットスポット)が大きくなる)と過剰な溶融によって電極の形状が崩れる。逆に、電極が冷えすぎると電極の先端が十分に溶融できず、先端を滑らかに戻せない、すなわち電極の先端が変形しやすくなる。
【0085】
1−5.本実施形態における駆動電流の制御例
次に、本実施形態に係るプロジェクター500における電流Iの制御の具体例について説明する。
【0086】
1−5−1.第1期間、第2期間及び切替タイミング
図7は、第1期間、第2期間及び切替タイミングについて説明するための図である。図7には、上から順に駆動信号572R,572G,572Bの内容、右シャッター412の開閉状態、左シャッター414の開閉状態、第1期間と第2期間、切替タイミングの時間的関係が示されている。図7の横軸は時間である。以下では、第1映像及び第2映像をそれぞれ左目用映像及び右目用映像として表示映像を観察者に立体視させる例について説明する。
【0087】
図7に示される例では、駆動信号572R,572G,572Bは、時刻t1から時刻t3までの間は第1映像としての右目用映像、時刻t3から時刻t5までの間は第2映像としての左目用映像、時刻t5から時刻t7までの間は第1映像としての右目用映像、時刻t7から時刻t9までの間は第2映像としての左目用映像に対応する駆動信号となっている。したがって、図7に示される例では、プロジェクター500は、時刻t1、時刻t3、時刻t5、時刻t7、時刻t9を切替タイミングとして、第1映像としての右目用映像と第2映像としての左目用映像とを切り替えて交互に出力する。
【0088】
時間的に隣り合う切替タイミングに挟まれる期間は、第1期間で始まり、第2期間で終わる。図7に示される例では、例えば、切替タイミングとなる時刻t1と時刻t3とに挟まれる期間は、時刻t1から時刻t2までの間の第1期間で始まり、時刻t2から時刻t3までの間の第2期間で終わる。切替タイミングとなる時刻t3と時刻t5とに挟まれる期間、切替タイミングとなる時刻t5と時刻t7とに挟まれる期間、切替タイミングとなる時刻t7と時刻t9とに挟まれる期間についても同様である。なお、図7に示される例では、第1期間の長さよりも第2期間の長さが長い場合を例示している。例えば、第1期間の長さ:第2期間の長さ=1:3としてもよい。なお、第1期間の長さと第2期間の長さは、必要に応じてそれぞれ適宜設定できる。また、第1期間と第2期間の他に、第3期間が存在していてもよい。第3期間においては、後述される第1期間及び第2期間における電流Iの制御とは異なる制御を行ってもよい。
【0089】
右シャッター412は、第1映像としての右目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間の少なくとも一部の期間で開いた状態となる。図7に示される例では、右シャッター412は、時刻t1から時刻t2までの間では閉じた状態であり、時刻t2から時刻t3までの間は開いた状態である。また、図7に示される例では、第2映像としての左目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間において、右シャッター412は、時刻t3から閉じ始め、時刻t3と時刻t4との間で閉じ終わり、時刻t4から時刻t5までの間は閉じた状態である。時刻t5から時刻t9までの間における右シャッター412の開閉状態の変化は、時刻t1から時刻t5までの間の開閉状態の変化と同様である。
【0090】
左シャッター414は、第2映像としての左目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間の少なくとも一部の期間で開いた状態となる。図7に示される例では、左シャッター414は、時刻t3から時刻t4までの間では閉じた状態であり、時刻t4から時刻t5までの間は開いた状態である。また、図7に示される例では、第1映像としての右目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間において、左シャッター414は、時刻t1から閉じ始め、時刻t1と時刻t2との間で閉じ終わり、時刻t2から時刻t3までの間は閉じた状態である。時刻t5から時刻t9までの間における左シャッター414の開閉状態の変化は、時刻t1から時刻t5までの間の開閉状態の変化と同様である。
【0091】
図7に示される例では、第1映像としての右目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間においては、右シャッター412が閉じている期間が第1期間、右シャッター412が開いている期間が第2期間に対応している。また、図7に示される例では、第2映像としての左目用映像に対応する駆動信号572R,572G,572Bが液晶パネル560R,560G,560Bに入力されている期間においては、左シャッター414が閉じている期間が第1期間、左シャッター414が開いている期間が第2期間に対応している。また、図7に示される例では、第1期間においては、右シャッター412及び左シャッター414のいずれのシャッターも閉じている期間が存在している。
【0092】
1−5−2.第1制御、第2制御及び第3制御
本実施形態に係るプロジェクター500の制御部40は、電流Iの絶対値が、第1期間では相対的に小さくなり、第2期間では第1期間に比べて相対的に大きくなるように放電灯駆動部230を制御する。
【0093】
また、本実施形態に係るプロジェクター500の制御部40は、第2期間では、電流Iとして交流電流を放電灯90に供給させるように放電灯駆動部230を制御する第1制御と、第1電極91が陽極となる第1極性が継続する時間の最大値が、第1制御における第1極性が継続する時間の最大値よりも長い電流Iを放電灯90に供給させるように放電灯駆動部230を制御する第2制御と、第2電極92が陽極となる第2極性が継続する時間の最大値が、第1制御における第2極性が継続する時間の最大値よりも長い電流Iを放電灯90に供給させるように放電灯駆動部230を制御する第3制御と、のいずれかを行う。
【0094】
図8Aは、第2期間において第1制御を行う場合の電流Iの波形例を示すタイミングチャート、図8Bは、第2期間において第2制御を行う場合の電流Iの波形例を示すタイミングチャート、図8Cは、第2期間において第3制御を行う場合の電流Iの波形例を示すタイミングチャートである。図8A〜図8Cの横軸は時間、縦軸は電流Iの電流値を表す。また、第1電極91が陽極となる第1極性である場合の電流Iを正、第2電極92が陽極となる第2極性である場合の電流Iを負と表す。
【0095】
図8A〜図8Cに示される例では、電流Iの絶対値は、第1期間では相対的に小さくなり、第2期間では第1期間に比べて相対的に大きくなっている。これによって、第1期間及び第2期間を通じた平均電力を大きくすることなく、観察者に映像が見える期間となる第2期間における電流Iを大きくできる。したがって、映像を明るく見えるように投射できるプロジェクター500を実現できる。
【0096】
図8A〜図8Cに示される例では、第1期間における電流Iは、矩形波交流電流である。第1期間における電流Iの周波数は、放電灯90の仕様に応じて実験的に決定することができる。図8A〜図8Cに示される例では、第1期間において電流Iは、第2極性で始まり第1極性で終わる1周期の交流電流となっている。
【0097】
第1期間においては、電流Iの電流値の絶対値が第2期間に比べて小さいので、第2期間に比べて放電灯90の電極温度が低くなりやすい。したがって、制御部40が、第1期間において電流Iとして交流電流を放電灯90に供給させるように放電灯駆動部230を制御することで、一方の電極が陰極(より低温となりやすい電極)となる継続時間を短くし、電極の変形を抑制できる。
【0098】
図8Aに示される例では、第1制御が行われている第2期間における電流Iは、矩形波交流電流である。第1制御における電流Iの周波数は、放電灯90の仕様に応じて実験的に決定することができる。図8Aに示される例では、第1制御が行われている第2期間において電流Iは、第2極性で始まり第1極性で終わる2周期の交流電流となっている。第1制御において、第1極性が継続する時間の最大値は、交流電流の0.5周期であり、図8Aに示される第2極性が継続する時間の最大値は、交流電流の0.5周期である。
【0099】
図8Bに示される例では、第2制御が行われている第2期間における電流Iは、矩形波交流電流と、矩形波交流電流の後の直流電流と、から構成されている。第2制御における直流電流の継続時間及び交流電流の周波数は、放電灯90の仕様に応じて実験的に決定することができる。例えば、放電灯90の劣化状態が進行した場合には、電流Iの最高周波数を400Hz以上600Hz以下とすることができる。図8Bに示される例では、第2制御が行われている第2期間において電流Iは、第2極性で始まり第1極性で終わる1周期の交流電流と、第1極性の直流電流と、から構成されている。図8Bに示される第2制御において、第1極性が継続する時間の最大値は、交流電流の0.5周期と直流電流が継続する時間の合計である。すなわち、図8Bに示される第2制御においては、第1極性が継続する時間の最大値が、第1制御における第1極性が継続する時間の最大値よりも長い電流Iが放電灯90に供給される。
【0100】
図8Cに示される例では、第3制御が行われている第2期間における電流Iは、直流電流と、直流電流の後の矩形波交流電流と、から構成されている。第3制御における直流電流の継続時間及び交流電流の周波数は、放電灯90の仕様に応じて実験的に決定することができる。例えば、放電灯90の劣化状態が進行した場合には、電流Iの最高周波数を400Hz以上600Hz以下とすることができる。図8Cに示される例では、第3制御が行われている第2期間において電流Iは、第2極性の直流電流と、第2極性で始まり第1極性で終わる1周期の交流電流と、から構成されている。図8Cに示される第3制御において、第2極性が継続する時間の最大値は、直流電流が継続する時間と交流電流の0.5周期の合計である。すなわち、図8Cに示される第2制御においては、第2極性が継続する時間の最大値が、第1制御における第2極性が継続する時間の最大値よりも長い電流Iが放電灯90に供給される。
【0101】
1−5−3.放電灯の劣化状態に応じた制御の第1具体例
放電灯90の劣化状態に応じた制御の第1具体例において、制御部40は、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第2制御において第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において第2極性が継続する時間の最大値の少なくともいずれか一方を小さくする。
【0102】
図9は、本実施形態に係るプロジェクター500の制御例を示すフローチャートである。図9に示されるフローチャートでは、放電灯90が安定に点灯した後から消灯までの制御について示している。
【0103】
まず、電圧検出部61が駆動電圧Vlaを検出する(ステップS100)。次に、制御部40が、ステップS100で検出した駆動電圧Vlaに対応する駆動条件を、記憶部44に記憶されたテーブルから選択する(ステップS102)。
【0104】
図10は、第1具体例における駆動条件を示すテーブルである。図10に示される例では、駆動電圧Vlaに応じて4種類の駆動条件が記憶部44に記憶されている。図10に示される例において、「第1極性又は第2極性の継続時間」は、第2制御に関しては「第1極性の継続時間」を意味し、第3制御に関しては「第2極性の継続時間」を意味する。また、第1具体例では、図8B及び図8Cを用いて既に説明したように、「第1極性の継続時間」及び「第2極性の継続時間」は、直流時間と交流周波数における0.5周期の長さの合計である。
【0105】
また、図10に示される例において、「回数」は、第1制御、第2制御及び第3制御を何回分の第2期間で連続して行うかを表す。また、第1具体例においては、第1制御、第2制御、第1制御、第3制御の順で1セットとして繰り返す。すなわち、図10に示される例では、第1制御を2000回、第2制御を50回、第1制御を2000回、第3制御を50回、の順で1セットとして繰り返す。通常は、放電灯90に電流Iが供給されることによる第1電極91と第2電極92とに与えられるエネルギーの累積値は同程度であることが好ましいので、電流Iが図8B及び図8Cに示される波形である場合には、第2制御の回数と第3制御の回数とは同程度となることが好ましい。
【0106】
図10に示される例では、駆動電圧Vlaが大きくなるほど(すなわち、放電灯90の劣化状態の進行に伴って)、第2制御において第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において第2極性が継続する時間の最大値のいずれもが小さくなっている。
【0107】
なお、第2制御において第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において第2極性が継続する時間の最大値のいずれか一方のみが小さくなるように駆動条件のテーブルを構成してもよい。
【0108】
図9のステップS102で駆動条件を選択した後に、制御部40は、駆動条件を変更する必要があるか否かを判定する(ステップS104)。制御部40が、駆動条件を変更する必要があるものと判定した場合(ステップS104でYESの場合)には、ステップS102で選択した駆動条件に変更して放電灯90を駆動する(ステップS106)。制御部40が、駆動条件を変更する必要がないものと判定した場合(ステップS104でNOの場合)には、従前の駆動条件で放電灯90を駆動し続ける。
【0109】
ステップS104でNOの場合及びステップS106の後に、制御部40は、放電灯90の消灯命令があるか否かを判定する(ステップS108)。制御部40が、消灯命令があるものと判定した場合(ステップS108でYESの場合)には、放電灯90の点灯を終了(消灯)する。制御部40が、消灯命令がないものと判定した場合(ステップS108でNOの場合)には、消灯命令があるまでステップS100〜ステップS108までの
制御を繰り返す。
【0110】
放電灯90の劣化状態が進行すると放電灯90の電極の溶融性が低下し、放電灯90の電極が変形する可能性がある。本実施形態の第1具体例によれば、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第2制御において第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において第2極性が継続する時間の最大値の少なくともいずれか一方を小さくすることによって、放電灯90の一方の電極が陰極となる状態が継続する時間を短くすることができる。よって放電灯90の、電極の温度が低い状態で放電空間93内の金属イオンなどの正電荷の粒子が電極に衝突することを抑制できる。したがって、放電灯90の電極の変形を抑制できる。
【0111】
第1具体例において、制御部40は、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御における周波数を高くしてもよい。図10に示される例では、駆動電圧Vlaが大きくなるほど(すなわち、放電灯90の劣化状態の進行に伴って)、第1制御における周波数が高くなっている。
【0112】
放電灯90の劣化状態が進行すると、放電起点の位置が不安定になる。したがって、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御における周波数を高くすることによってアークスポットを小さくすることで、放電起点を安定させることができる。
【0113】
第1具体例において、第2期間の長さは、第1期間の長さよりも長くてもよい。図7及び図8A〜図8Cを用いて既に説明したように、第1具体例では、第2期間の長さは、第1期間の長さよりも長い。
【0114】
第2期間の長さが長くなるほど、第2期間において電極の温度が低い状態が継続することによる放電灯90への影響が大きい。したがって、第2期間の長さが第1期間の長さよりも長い場合には、放電灯90の電極の変形を抑制する効果がより大きい。
【0115】
1−5−4.放電灯の劣化状態に応じた制御の第2具体例
放電灯90の劣化状態に応じた制御の第2具体例において、制御部40は、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御、第2制御及び第3制御を行う時間の合計値に対する第2制御及び第3制御を行う時間の合計値の比を小さくする。
【0116】
第1具体例と第2具体例とは、図9を用いて説明した放電灯90が安定に点灯した後から消灯までの制御のフローチャートについては共通し、ステップS102で用いる駆動条件のテーブルが異なる。したがって、以下では、主としてステップS102で用いる駆動条件のテーブルについて説明する。
【0117】
図11は、第2具体例における駆動条件を示すテーブルである。図11に示される例では、駆動電圧Vlaに応じて4種類の駆動条件が記憶部44に記憶されている。図11に示される例において、「回数」は、第1制御、第2制御及び第3制御を何回分の第2期間で連続して行うかを表す。また、第2具体例においては、第1制御、第2制御、第1制御、第3制御の順で1セットとして繰り返す。通常は、放電灯90に電流Iが供給されることによる第1電極91と第2電極92とに与えられるエネルギーの累積値は同程度であることが好ましいので、電流Iが図8B及び図8Cに示される波形である場合には、第2制御の回数と第3制御の回数とは同程度となることが好ましい。
【0118】
図11に示される例では、「第2制御及び第3制御の比」は、「第1制御、第2制御及び第3制御を行う時間の合計値に対する第2制御及び第3制御を行う時間の合計値の比」を意味する。
【0119】
図11に示される例では、駆動電圧Vlaが大きくなるほど(すなわち、放電灯90の劣化状態の進行に伴って)、第1制御、第2制御及び第3制御を行う時間の合計値に対する第2制御及び第3制御を行う時間の合計値の比が小さくなっている。
【0120】
放電灯90の劣化状態が進行すると放電灯90の電極の溶融性が低下し、放電灯90の電極が変形する可能性がある。本実施形態の第1具体例によれば、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御、第2制御及び第3制御を行う時間の合計値に対する第2制御及び第3制御を行う時間の合計値の比を小さくすることによって、放電灯90の点灯時間に対する放電灯90の一方の電極が陰極となる状態が長く継続する時間の比率を小さくすることができる。よって、放電灯90の電極の温度が低い状態で金属イオンなどの正電荷の粒子が電極に衝突することを抑制できる。したがって、放電灯90の電極の変形を抑制できる。
【0121】
第2具体例において、制御部40は、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御における周波数を高くしてもよい。
【0122】
放電灯90の劣化状態が進行すると、放電起点の位置が不安定になる。したがって、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御における周波数を高くすることによって、放電灯90の電極上のアークスポットを小さくすることで、放電起点を安定させることができる。
【0123】
第2具体例において、第2期間の長さは、第1期間の長さよりも長くてもよい。図7及び図8A〜図8Cを用いて既に説明したように、第1具体例では、第2期間の長さは、第1期間の長さよりも長い。
【0124】
第2期間の長さが長くなるほど、第2期間において電極の温度が低い状態が継続することによる放電灯90への影響が大きい。したがって、第2期間の長さが第1期間の長さよりも長い場合には、放電灯90の電極の変形を抑制する効果がより大きい。
【0125】
1−5−5.放電灯の劣化状態に応じた制御の第3具体例
放電灯90の劣化状態に応じた制御の第3具体例において、制御部40は、第1制御として、電流Iとして第1周波数の交流電流を放電灯90に供給させるように放電灯駆動部230を制御する第1交流制御を行う場合と、電流Iとして第1周波数とは異なる第2周波数の交流電流を放電灯90に供給させるように放電灯駆動部230を制御する第2交流制御を行う場合と、を含んでもよい。
【0126】
第1具体例と第3具体例とは、図9を用いて説明した放電灯90が安定に点灯した後から消灯までの制御のフローチャートについては共通し、ステップS102で用いる駆動条件のテーブルが異なる。したがって、以下では、主としてステップS102で用いる駆動条件のテーブルについて説明する。
【0127】
図12は、第3具体例における駆動条件を示すテーブルである。図12に示される例では、駆動電圧Vlaに応じて4種類の駆動条件が記憶部44に記憶されている。図12に示される例において、「回数」は、第1制御、第2制御及び第3制御を何回分の第2期間で連続して行うかを表す。また、第1制御においては、電流Iとして第1周波数の交流電流を放電灯90に供給させる第1交流制御、電流Iとして第2周波数の交流電流を放電灯90に供給させる第2交流制御、電流Iとして第3周波数の交流電流を放電灯90に供給させる第3交流制御のそれぞれについて「回数」が示されている。第1周波数、第2周波数及び第3周波数は、互いに異なる周波数である。図12に示されるように、第1制御において用いる周波数が3つ以上ある場合には、任意に選択された2つの周波数が第1周波数と第2周波数に相当する。
【0128】
第3具体例においては、第1制御、第2制御、第1制御、第3制御の順で1セットとして繰り返す。また、第1制御においては、第1交流制御、第2交流制御、第3交流制御(「回数」が0の場合を除く)を順に行う。通常は、放電灯90に電流Iが供給されることによる第1電極91と第2電極92とに与えられるエネルギーの累積値は同程度であることが好ましいので、電流Iが図8B及び図8Cに示される波形である場合には、第2制御の回数と第3制御の回数とは同程度となることが好ましい。
【0129】
相対的に高い周波数の電流Iが放電灯90に供給された場合には、放電灯90の電極上のアークスポットが小さくなり、放電起点の位置が定まりやすくなる。相対的に低い周波数の電流Iが放電灯90に供給された場合には、放電灯90の電極上のアークスポットが大きくなり、放電灯90の第1電極91及び第2電極92に設けられた突起911及び突起921を太くすることができる。したがって、第1制御において異なる周波数の電流Iを放電灯90に供給することによって、放電起点となる電極上の突起の変形を抑制し、放電起点を安定させることができる。
【0130】
第3具体例において、制御部40は、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御を行う時間の合計値に対する第1制御において周波数が最高値となる時間の合計値の比を大きくしてもよい。図12に示される例において、「最高値の時間比」は、「第1制御を行う時間の合計値に対する第1制御において周波数が最高値となる時間の合計値の比」を意味する。図12に示される例では、駆動電圧Vlaが85V以上の場合について、第1制御を行う「回数」の合計値に対する第3交流制御の「回数」の比を表している。
【0131】
図12に示される例では、駆動電圧Vlaが大きくなるほど(すなわち、放電灯90の劣化状態の進行に伴って)、第1制御を行う時間の合計値に対する第1制御において周波数が最高値となる時間の合計値の比が大きくなっている。
【0132】
第1制御を行う時間の合計値に対する第1制御において周波数が最高値となる時間の合計値の比を大きくすることによって、相対的に高い周波数の電流Iが放電灯90に供給される比率が高まるので、放電灯90の劣化状態が進行した場合にも放電起点が定まりやすくなる。
【0133】
第3具体例において、制御部40は、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御を行う時間の合計値に対する第1制御において周波数が最低値となる時間の合計値の比を小さくしてもよい。図12に示される例において、「最低値の時間比」は、「第1制御を行う時間の合計値に対する第1制御において周波数が最低値となる時間の合計値の比」を意味する。図12に示される例では、第1制御を行う「回数」の合計値に対する第1交流制御の「回数」の比を表している。
【0134】
図12に示される例では、駆動電圧Vlaが大きくなるほど(すなわち、放電灯90の劣化状態の進行に伴って)、第1制御を行う時間の合計値に対する第1制御において周波数が最低値となる時間の合計値の比が小さくなっている。
【0135】
第1制御を行う時間の合計値に対する第1制御において周波数が最低値となる時間の合計値の比を小さくすることによって、相対的に高い周波数の電流Iが放電灯90に供給される比率が高まるので、放電灯90の劣化状態が進行した場合にも放電起点を安定させることができる。
【0136】
図12に示される例では、「第2制御及び第3制御の比」は、「第1制御、第2制御及び第3制御を行う時間の合計値に対する第2制御及び第3制御を行う時間の合計値の比」を意味する。
【0137】
図12に示される例では、駆動電圧Vlaが大きくなるほど(すなわち、放電灯90の劣化状態の進行に伴って)、第1制御、第2制御及び第3制御を行う時間の合計値に対する第2制御及び第3制御を行う時間の合計値の比が小さくなっている。
【0138】
放電灯90の劣化状態が進行すると放電灯90の電極の溶融性が低下し、放電灯90の電極が変形する可能性がある。本実施形態の第3具体例によれば、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第1制御、第2制御及び第3制御を行う時間の合計値に対する第2制御及び第3制御を行う時間の合計値の比を小さくすることによって、放電灯90の点灯時間に対する放電灯90の一方の電極が陰極となる状態が長く継続する時間の比率を小さくすることができる。よって、放電灯90の電極の温度が低い状態で金属イオンなどの正電荷の粒子が電極に衝突することを抑制できる。したがって、放電灯90の電極の変形を抑制できる。
【0139】
第3具体例において、第2期間の長さは、第1期間の長さよりも長くてもよい。図7及び図8A〜図8Cを用いて既に説明したように、第1具体例では、第2期間の長さは、第1期間の長さよりも長い。
【0140】
第2期間の長さが長くなるほど、第2期間において電極の温度が低い状態が継続することによる放電灯90への影響が大きい。したがって、第2期間の長さが第1期間の長さよりも長い場合には、放電灯90の電極の変形を抑制する効果がより大きい。
【0141】
1−5−6.放電灯の劣化状態に応じた制御の第4具体例
第1具体例と第4具体例とは、図9を用いて説明した放電灯90が安定に点灯した後から消灯までの制御のフローチャートについては共通し、ステップS102で用いる駆動条件のテーブルが異なる。したがって、以下では、主としてステップS102で用いる駆動条件のテーブルについて説明する。
【0142】
図13は、第4具体例における駆動条件を示すテーブルである。図13に示される例では、駆動電圧Vlaに応じて4種類の駆動条件が記憶部44に記憶されている。図13に示される例において、「第1極性又は第2極性の継続時間」は、第2制御に関しては「第1極性の継続時間」を意味し、第3制御に関しては「第2極性の継続時間」を意味する。また、第4具体例では、図8B及び図8Cを用いて既に説明したように、「第1極性の継続時間」及び「第2極性の継続時間」は、直流時間と交流周波数における0.5周期の長さの合計である。
【0143】
第3具体例と第4具体例とは、第1制御における駆動条件は共通し、第2制御及び第3制御における駆動条件が異なる。したがって、以下では、主として第2制御及び第3制御における駆動条件について説明する。
【0144】
図13に示される例では、駆動電圧Vlaが大きくなるほど(すなわち、放電灯90の劣化状態の進行に伴って)、第2制御において第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において第2極性が継続する時間の最大値が小さくなっている。
【0145】
放電灯90の劣化状態が進行すると放電灯90の電極の溶融性が低下し、放電灯90の電極が変形する可能性がある。本実施形態の第4具体例によれば、放電灯90の劣化状態の進行に伴って、第2制御において第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において第2極性が継続する時間の最大値を小さくすることによって、放電灯90の一方の電極が陰極となる状態が継続する時間を短くすることができる。よって放電灯90の、電極の温度が低い状態で放電空間93内の金属イオンなどの正電荷の粒子が電極に衝突することを抑制できる。したがって、放電灯90の電極の変形を抑制できる。
【0146】
加えて、第4具体例においても、第1制御に関する第3具体例の効果と同様の効果を奏する。
【0147】
上述の各実施形態では、プロジェクター500は、第1映像及び第2映像をそれぞれ左目用映像及び右目用映像として表示映像を観察者に立体視させる構成としていたが、これに限らない。例えば、プロジェクター500として、第1映像及び第2映像をコンテンツの異なる映像とし、2つの表示映像(第1映像及び第2映像)を異なる観察者にそれぞれ視認させる構成を採用しても構わない。
【0148】
このように構成した場合には、アクティブシャッターメガネ410としては、前述した右シャッター412と同様に作用するシャッターを左右に設けた眼鏡、及び前述した左シャッター414と同様に作用するシャッターを左右に設けた眼鏡の2種類を設ければよい。
【0149】
上述の各実施形態においては、3つの液晶パネルを用いたプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0150】
上述の各実施形態においては、透過型のプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射型のプロジェクターにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶パネル等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶パネルやマイクロミラー型光変調装置などのように光変調手段としての電気光学変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス;Texas Instruments社の商標)を用いることができる。反射型のプロジェクターにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を得ることができる。
【0151】
本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも可能である。
【0152】
上述の各実施形態においては、電流Iの極性反転1/2周期の期間中は、電流Iの絶対値は一定となっている。すなわち、電流Iの波形は、いわゆる矩形状の波形となっている。電流Iの波形はこれに限らず、電流Iの極性反転半周期の期間中において、電流Iの絶対値が、第1の電流値となる期間で始まり、第1の電流値よりも大きい第2の電流値となる期間で終わる波形や、電流Iの極性反転半周期の期間中において、電流Iの絶対値が単調増加する波形など、電流Iの極性反転1周期の期間中において、電流Iの絶対値が異なる値をとる波形であってもよい。
【0153】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0154】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0155】
1 放電灯点灯装置、20 電力制御回路、21 スイッチ素子、22 ダイオード、23 コイル、24 コンデンサー、30 極性反転回路、31 第1スイッチ素子、32 第2スイッチ素子、33 第3スイッチ素子、34 第4スイッチ素子、40 制御部、41 システムコントローラー、42 電力制御部、43 極性反転制御部、44 記憶部、50 副反射鏡、61 電圧検出部、62 電流検出部、63 抵抗、70 イグナイター回路、80 直流電源、90 放電灯、90e1 第1端部、90e2 第2端部、91 第1電極、92 第2電極、93 放電空間、112 主反射鏡、200 光源装置、210 光源ユニット、305 平行化レンズ、310 照明光学系、320 色分離光学系、330R,330G,330B 液晶ライトバルブ、340 クロスダイクロイックプリズム、350 投写光学系、400 プロジェクターシステム、410 アクティブシャッターメガネ、412 右シャッター、414 左シャッター、500 プロジェクター、502 映像信号、510 映像信号変換部、512R,512G,512B 映像信号、514 同期信号、560R,560G,560B 液晶パネル、570 映像処理装置、572R,572G,572B 駆動信号、580 CPU、582 通信信号、584 通信信号、586 制御信号、600 交流電源、700 スクリーン、710 映像、911 突起、921 突起、941,942 導電性部材、951 第1端子、952 第2端子、961,962 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の切替タイミングで、第1映像と第2映像とを切り替えて交互に出力するプロジェクターであって、
第1電極及び第2電極を含む放電灯と、
前記放電灯を駆動する電流を前記放電灯に供給する放電灯駆動部と、
前記放電灯の劣化状態を検出する状態検出部と、
前記放電灯駆動部を制御する制御部と、
を含み、
時間的に隣り合う前記切替タイミングに挟まれる期間は、第1期間で始まり、第2期間で終わり、
前記制御部は、
前記電流の絶対値が、前記第1期間では相対的に小さくなり、前記第2期間では相対的に大きくなるように前記放電灯駆動部を制御し、かつ、
前記第2期間では、
交流電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第1制御と、
前記第1電極が陽極となる第1極性が継続する時間の最大値が、前記第1制御における前記第1極性が継続する時間の最大値よりも長い電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第2制御と、
前記第2電極が陽極となる第2極性が継続する時間の最大値が、前記第1制御における前記第2極性が継続する時間の最大値よりも長い電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第3制御と、
のいずれかを行い、
前記劣化状態の進行に伴って、前記第2制御において前記第1極性が継続する時間の最大値、及び、第3制御において前記第2極性が継続する時間の最大値の少なくともいずれか一方を小さくする、プロジェクター。
【請求項2】
所与の切替タイミングで、第1映像と第2映像とを切り替えて交互に出力するプロジェクターであって、
第1電極及び第2電極を含む放電灯と、
前記放電灯を駆動する電流を前記放電灯に供給する放電灯駆動部と、
前記放電灯の劣化状態を検出する状態検出部と、
前記放電灯駆動部を制御する制御部と、
を含み、
時間的に隣り合う前記切替タイミングに挟まれる期間は、第1期間で始まり、第2期間で終わり、
前記制御部は、
前記電流の絶対値が、前記第1期間では相対的に小さくなり、前記第2期間では相対的に大きくなるように前記放電灯駆動部を制御し、かつ、
前記第2期間では、
交流電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第1制御と、
前記第1電極が陽極となる第1極性が継続する時間の最大値が、前記第1制御における前記第1極性が継続する時間の最大値よりも長い期間を含む電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第2制御と、
前記第2電極が陽極となる第2極性が継続する時間の最大値が、前記第1制御における前記第2極性が継続する時間よりも長い期間の最大値を含む電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第3制御と、
のいずれかを行い、
前記劣化状態の進行に伴って、前記第1制御、前記第2制御及び前記第3制御を行う時間の合計値に対する前記第2制御及び前記第3制御を行う時間の合計値の比を小さくする、プロジェクター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロジェクターにおいて、
前記制御部は、
前記劣化状態の進行に伴って、前記第1制御における周波数を高くする、プロジェクター。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプロジェクターにおいて、
前記制御部は、前記第1制御として、
第1周波数の交流電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第1交流制御を行う場合と、
前記第1周波数とは異なる第2周波数の交流電流を前記放電灯に供給させるように前記放電灯駆動部を制御する第2交流制御を行う場合と、
を含む、プロジェクター。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクターにおいて、
前記制御部は、
前記劣化状態の進行に伴って、前記第1制御を行う時間の合計値に対する前記第1制御において周波数が最高値となる時間の合計値の比を大きくする、プロジェクター。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のプロジェクターにおいて、
前記劣化状態の進行に伴って、前記第1制御を行う時間の合計値に対する前記第1制御において周波数が最低値となる時間の合計値の比を小さくする、プロジェクター。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のプロジェクターにおいて、
前記第2期間の長さは、前記第1期間の長さよりも長い、プロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−83711(P2013−83711A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221963(P2011−221963)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】