説明

プロジェクタ型ヘッドランプ

【課題】旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能なプロジェクタ型ヘッドランプの低コスト化を図る。
【解決手段】ヘッドランプ1は、ロービーム用配光パターンに加え、第二反射面22の反射光によって水平線よりも上の領域を照らす付加配光パターンを形成することができるので、自動二輪車が直立走行している場合、付加配光パターンで自動二輪車の前方上側の看板や標識等を照らすことができる。また、自動二輪車がコーナリング走行している場合、付加配光パターンが水平線より下に移動し、旋回方向(進行方向)の路面を照射することができる。つまり、追加のランプユニットやシャッター駆動装置が不要であり、その分のコストアップを抑えることができるので、従来技術に比べてヘッドランプ1を低コストで構成することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ型ヘッドランプに係り、特に旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射するように構成された自動二輪車用のプロジェクタ型ヘッドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車用前照灯の分野においては、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射するように構成されたプロジェクタ型ヘッドランプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4に示すように、特許文献1に記載のプロジェクタ型ヘッドランプ200は、ロービーム用ランプ210、その左右両側それぞれに配置されたコーナリングランプ220を備えている。
【0004】
ロービーム用ランプ210は、ロービーム用配光パターンP1(図5(a)参照)を形成するように構成されたヘッドランプユニットであり、図4に示すように、一般的なプロジェクタ型ヘッドランプと同様、投影レンズ211、光源212、反射面213、シェード214等を備えている。
【0005】
このロービーム用ランプ210によれば、光源212から放射され反射面213で反射された光の一部がシェード214で遮光され、その像が投影レンズ211により投影されることで、ロービーム用配光パターンP1を形成する(図5(a)参照)。
【0006】
コーナリングランプ220は、図5(a)に示す付加配光パターンP2と、図5(b)に示す付加配光パターンP3とを切り替え可能に構成されたヘッドランプユニットであり、図6(a)、図6(b)に示すように、一般的なプロジェクタ型ヘッドランプと同様、投影レンズ221、光源222、反射面223を備えているが、シェード224は一般的なプロジェクタ型ヘッドランプのものと異なっている。
【0007】
すなわち、コーナリングランプ220のシェード224は、一般的なプロジェクタ型ヘッドランプに用いられる固定シェード224aの他に、方向指示器の操作スイッチのオンオフにより図6(b)に示す遮光位置又は図6(a)に示す退避位置にその配置が切り替えられる可動シェード224bを含んでいる。
【0008】
このコーナリングランプ220によれば、方向指示器の操作スイッチがオフのときには、光源222から放射され反射面223で反射された光の一部が図6(b)の遮光位置に位置した可動シェード224bで遮光され、その像が投影レンズ221により投影され図5(a)に示すような付加配光パターンP2を形成する。一方、方向指示器の操作スイッチがオンされると、可動シェード224bは図6(a)の退避位置に移動するため、光源222から放射され反射面223で反射された光の一部が固定シェード224aで遮光され、その像が投影レンズ221により投影され図5(b)に示すような配光パターンP3を形成する。これにより、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面が照射されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−1306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記構成の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ200においては、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面が照射されるものの、ロービーム用ランプ210の他に二つのコーナリングランプ220を追加する構成であるため、その分コストが増大する、という問題がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能なプロジェクタ型ヘッドランプを、低コストで構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、プロジェクタ型ヘッドランプであって、
光源と、
前記光源の前方に配置され、前記光源との間に後ろ側焦点を有した投影レンズと、
前記光源からの光を前方に反射して、前記後ろ側焦点に集光する第一反射面と、
前記後ろ側焦点又はその近傍に上縁を有するともに、前記上縁よりも下方の下端側が前記投影レンズに向かって傾斜した姿勢で前記投影レンズと前記光源の間に配置され、前記第一反射面によって反射された光の一部を遮光するシャッターと、
前記第一反射面からの反射光のうち、少なくとも前記シャッターの傾斜に沿った向きの反射光を、直立時の車両前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて反射させるための第二反射面と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプロジェクタ型ヘッドランプにおいて、
前記投影レンズは、前記第二反射面による反射光を前方に投影することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のプロジェクタ型ヘッドランプにおいて、
当該プロジェクタ型ヘッドランプは、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線よりも下の領域に、前記シャッターの上縁により規定されるカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成するとともに、
前記第二反射面による反射光によって、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線の上の領域に、前記ロービーム用配光パターンよりも照度が低い付加配光パターンを形成することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のプロジェクタ型ヘッドランプにおいて、
前記第二反射面による反射光によって、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線の上の領域に形成された前記付加配光パターン中に、前記ロービーム用配光パターンよりも照度が低く、前記付加配光パターンよりも照度が高い明部配光パターンを、前記仮想鉛直スクリーン上の鉛直線を挟んで左右一対形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プロジェクタ型ヘッドランプは、光源が発した光を、直立時の車両前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて反射させるための第二反射面を有しているので、その第二反射面の反射光に応じて、車両前方の水平線よりも上の領域を照らすことができる。また、旋回時(コーナリング時)には、第二反射面の反射光を水平線よりも下に移動させて、旋回方向(進行方向)の路面を照らすことができるので、コーナリング用のランプユニットを追加することや、シャッター(シェード)の配置を切り替える駆動装置を設ける必要がない。
つまり、追加のランプユニットやシャッター(シェード)駆動装置が不要であり、その分のコストアップを抑えることができるので、従来技術に比べてプロジェクタ型ヘッドランプを低コストで構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るプロジェクタ型ヘッドランプを示す鉛直断面図である。
【図2】本発明に係るプロジェクタ型ヘッドランプの配光特性に関する説明図であり、直立した自動二輪車による配光パターン(a)と、左コーナーコーナリング時に車両を左側に傾けた自動二輪車による配光パターン(b)を示している。
【図3】本発明に係るプロジェクタ型ヘッドランプの配光特性に関する説明図であり、直立した自動二輪車による配光パターン(a)と、左コーナーコーナリング時に車両を左側に傾けた自動二輪車による配光パターン(b)を示している。
【図4】従来の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプの構成を説明するための上面図である。
【図5】従来の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプの配光特性に関する説明図であり、車体直立姿勢時の配光パターン(a)と、バンク時の配光パターン(b)を示している。
【図6】従来のコーナリングランプを示す縦断面図(a)と、そのコーナリングランプのシェードを示す斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0019】
また、以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」はそれぞれ、プロジェクタ型ヘッドランプ1(以下ヘッドランプ1と称す)が装備された車両の「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」である。従って、車両の後ろから前に向かって(いわゆる運転手の視点で見て)、「左」、「右」を定める。
【0020】
本実施形態のヘッドランプ1は、ロービーム用配光パターンを形成するように構成されたランプユニット(ロービーム用ヘッドランプ)であり、車体前部に配置されている。例えば、車体前部左側にヘッドランプ1が配置され、車体前部右側にハイビーム用配光パターンを形成するように構成されたランプユニット(ハイビーム用ヘッドランプ)が配置されるようになっている。
【0021】
図1は、ヘッドランプ1の断面図であり、前後方向に延びた光軸Ax(中心軸)を通り、水平面に対して直交する鉛直面に沿った鉛直断面図である。
【0022】
ヘッドランプ1は、図1に示すように、光源10と、光源10を保持するリフレクター20と、光源10の前方に配置された投影レンズ30と、投影レンズ30と光源10の間に配置されたシャッター40等を備えている。
【0023】
光源10は、光を発するパーツであり、この光源10は、リフレクター20の後方に設けられた装着孔25に差し込まれて取り付けられている。
光源10としては、例えば、ハロゲン電球(ハロゲンバルブ)、HID、白熱電球、半導体発光素子などを用いることができる。
【0024】
リフレクター20は、前方に向けて拡開した略ラッパ形状を呈する部材であり、その前端側に投影レンズ30が取り付けられる開口24が形成され、後端側に光源10が装着される装着孔25が形成されている。
リフレクター20の内面には、アルミ蒸着などのメッキ加工によって形成された反射面が設けられている。
【0025】
このリフレクター20の内面には楕円面状で凹面型の第一反射面21と、凸面型の第二反射面22が設けられている。
第一反射面21は、リフレクター20の内面のうち光軸Axよりも上側の領域と、光軸Axよりも下側であって装着孔25寄りの領域とを占めている。
第二反射面22は、リフレクター20の内面のうち光軸Axよりも下側であって、前方の開口24寄りの領域を占めている。この第二反射面22の領域は、シャッター40よりも光軸Ax方向の前側であって、後述する投影レンズ30の後ろ側焦点F3よりも前方に位置している。
【0026】
第一反射面21は、例えば、前後方向に延びた光軸Axを回転軸とした回転楕円面若しくはその回転楕円面を上下(又は左右)につぶした扁平楕円面又はこれらを基調とした自由曲面である。また、第一反射面21は、これら回転楕円面、扁平楕円面及び自由曲面のうち2種以上を組み合わせた複合楕円面であってもよい。
この第一反射面21が楕円面に形成されているので、その楕円面の後部頂点よりも前方に第一焦点F1が設定され、その第一焦点F1よりも前方に第二焦点F2が設定される。なお、第一焦点F1と第二焦点F2を通る軸が光軸Axである。
第二反射面22は、光軸Axよりも下側の第一反射面21の範囲から前方に連続して設けられ、前方に延在して前下がりに湾曲した凸面であり、例えば、円弧を基調とした自由曲面である。
【0027】
そして、リフレクター20の装着孔25に装着された光源10は、リフレクター20の内側にまで突き出た状態で固定されており、光源10の発光点(例えば、バルブのフィラメント)が、第一反射面21の第一焦点F1又はその近傍に配置されるようになっている。
【0028】
投影レンズ30はレンズホルダー35に保持されている。投影レンズ30は、レンズホルダー35を介してリフレクター20の開口24に取り付けられて、光源10の前方に配置されている。
この投影レンズ30は凸レンズであり、後ろ側焦点F3を有するとともに、後ろ側焦点F3を通って前後に延びる光軸を有する。投影レンズ30の光軸は、灯具としての光軸Axに略一致する。投影レンズ30の後ろ側焦点F3は、第一反射面21の第二焦点F2又はその近傍に位置している。
【0029】
シャッター40は、投影レンズ30と光源10の間に配置されている。このシャッター40は、例えば、左右方向に延びた帯板状の部材であって略水平な上縁41を有しており、そのシャッター40の左右両端部がリフレクター20の一部に固定されている。
シャッター40の上縁41は光軸Ax上における後ろ側焦点F3又はその近傍に位置している。
また、シャッター40は、その上縁41よりも下方の下端42側が投影レンズ30に向かって傾斜した姿勢(前下がり・後ろ上がりの姿勢)で配置されている。このシャッター40の下端42と第二反射面22は離間しており、その間に反射光が通過可能な隙間が形成されている。
【0030】
次に、光源10から発せられた光の進行について説明する。
【0031】
光源10が点灯し、その光源10から発せられた光は、第一反射面21によって前方に反射され、その反射光が第一反射面21によって後ろ側焦点F3又はその近傍に集光される。
そして、第一反射面21によって反射されて集光された光の一部がシャッター40の上縁41の上を前へ通過し、その光が投影レンズ30によって前方に投影される。
また、第一反射面21によって反射された光の一部がシャッター40によって遮光される。特に、後ろ側焦点F3よりも下側を通過しようとする反射光であって、光軸Axとの角度が比較的小さい反射光が、シャッター40により遮光される。
また、シャッター40が前下がりの姿勢で傾斜していることで、そのシャッター40に遮光されない光の一部がシャッター40の下端42の下を前へ通過する。具体的に、第一反射面21からの反射光のうち、後ろ側焦点F3よりも下側を通過しようとする反射光であって、光軸Axとの角度が比較的大きい反射光のうち、少なくともシャッター40の傾斜に沿った向きの反射光がシャッター40の下端42の下を前へ通過し、第二反射面22によって前方へ反射されて、その光が投影レンズ30によって前方に投影される。
なお、本実施形態では、シャッター40の下端42の下を前へ通過した光が第二反射面22によって前方へ反射されて、投影レンズ30によって前方に投影される反射光の軌跡を制御して所望の配光パターンを形成可能とするように、第二反射面22の自由曲面が設計されている。
【0032】
次に、ヘッドランプ1の配光特性について説明する。
【0033】
図2は、ヘッドランプ1から前方に所定距離離れて車両に正対する仮想鉛直スクリーンに形成される配光パターンを示したものである。
図2では、自動二輪車が直立した場合に、ヘッドランプ1の光軸Axを通る水平面と仮想鉛直スクリーンの交線がH軸として示され、光軸Axを通る鉛直面と仮想鉛直スクリーンの交線がV軸として示されている。H軸とV軸の交点がヘッドランプ1の光軸Axと仮想鉛直スクリーンの交点である。なお、光軸Axは、H軸及びV軸に対して直交する。
【0034】
直立した自動二輪車における光源10から発せられた光が第一反射面21によって反射され、光軸Ax寄りに集光された反射光の一部が後ろ側焦点F3の近傍でシャッター40によって遮光されて、その光像が投影レンズ30により車両前方に投影される。これにより、図2(a)に示すように、車両前端に正対した仮想鉛直スクリーン上に、シャッター40の上縁41により規定されるカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンP1が形成される。なお、このロービーム用配光パターンP1のカットオフラインCLは、H軸に重なっている。
【0035】
また、第一反射面21からの反射光のうち、少なくともシャッター40の傾斜に沿った向きの反射光が第二反射面22によって反射された光が投影レンズ30により車両前方に投影される。これにより、図2(a)に示すように、車両前端に正対した仮想鉛直スクリーン上の鉛直線(V軸)に対し左右かつ水平線(H軸)よりも上の領域に、付加配光パターンP2が形成される。
この付加配光パターンP2は、ロービーム用配光パターンP1よりも広い照射領域を有している。ただし、付加配光パターンP2はロービーム用配光パターンP1に比べて照度が低く設計されているので、対向車の運転手(ライダー)が付加配光パターンP2によって眩惑されることはない。これは、車両前方の水平線よりも上の領域を照らす付加配光パターンP2が、法規で定められた配光規格を満たすバンク配光となるように、第二反射面22の自由曲面が設計されていることによる。
【0036】
ここで、図2(b)に示すように、左コーナーコーナリング時に車両を左側に傾けると(例えば、バンク角36°)、これに伴ってヘッドランプ1も傾く。これにより、それまで水平線(H軸)よりも上の領域を照射していた付加配光パターンP2が、水平線(H軸)よりも下に移動し、ライダーの左前方の路面を照射する。この水平線(H軸)よりも下に移動した付加配光パターンP2が照射する路面領域は左コーナーコーナリング時のライダーの視線方向に位置するため、左コーナーコーナリング時の視認性を大きく向上させることが可能となり、快適なコーナリングを実現することが可能となる。
【0037】
同様に、右コーナーコーナリング時に車両を右側に傾けると(例えば、バンク角36°)、これに伴ってヘッドランプ1も傾く。これにより、それまで水平線(H軸)よりも上の領域を照射していた付加配光パターンP2が、水平線(H軸)よりも下に移動し、ライダーの右前方の路面を照射する。この水平線(H軸)よりも下に移動した付加配光パターンP2が照射する路面領域は右コーナーコーナリング時のライダーの視線方向に位置するため、右コーナーコーナリング時の視認性を大きく向上させることが可能となり、快適なコーナリングを実現することが可能となる。
【0038】
以上のように、本実施形態のヘッドランプ1は、第一反射面21からの反射光のうち、少なくともシャッター40の傾斜に沿った向きの反射光を、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて反射させるための第二反射面22を有しているので、第二反射面22の反射光に応じて、車両前方の水平線よりも上の領域を付加配光パターンP2で照らすことができる。
【0039】
そして、自動二輪車が直立していれば、ヘッドランプ1の付加配光パターンP2で自動二輪車の前方上側の看板や標識等を照らすことができる。
特に、自動二輪車がコーナリングして左右に傾いていれば、ヘッドランプ1の付加配光パターンP2によって進行方向の路面を照射することができる。
【0040】
このように、本実施形態のヘッドランプ1は、ロービーム用配光パターンP1に加え、第二反射面22の反射光によって水平線(H軸)よりも上の領域を比較的広く照らす付加配光パターンP2を形成することができるので、自動二輪車が直立走行している場合、ヘッドランプ1の付加配光パターンP2で自動二輪車の前方上側の看板や標識等を照らすことができ、上方の標識等が視認しやすくなる。
また、自動二輪車がコーナリング走行している場合、ヘッドランプ1の付加配光パターンP2で進行方向の路面を照射することができるので、進行方向の視認性が向上し、安全な走行を実現することができる。
【0041】
特に、本実施形態のヘッドランプ1は、水平線(H軸)よりも下の領域を照らすロービーム用配光パターンP1と、水平線(H軸)よりも上の領域を照らす付加配光パターンP2を形成することができ、旋回時(コーナリング時)に付加配光パターンP2を水平線(H軸)よりも下に移動させて、旋回方向(進行方向)の路面を照らすバンク配光とすることができるので、コーナリング用のランプユニットを追加することや、シャッター(シェード)の配置を切り替える駆動装置を設ける必要がない。
つまり、追加のランプユニットやシャッター(シェード)駆動装置が不要であり、その分のコストアップを抑えることができるので、従来技術に比べてヘッドランプ1を低コストで構成することが可能になる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、第二反射面22の自由曲面の設計を変更して、第二反射面22に幾つかの反射特異点を設けることによって、第二反射面22による付加配光パターンP2の配光特性を調整するようにしてもよい。例えば、図3に示すように、直立時の車両前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の水平線(H軸)の上の領域に形成された付加配光パターンP2中に、ロービーム用配光パターンP1よりも照度が低く、付加配光パターンP2よりも照度が高い明部配光パターンP2、P2を、仮想鉛直スクリーン上の鉛直線(V軸)を挟んで左右一対形成するようにしてもよい。
具体的に、設計変更した第二反射面22によって反射された光が投影レンズ30により車両前方に投影されることで、図3(a)に示すように、車両前端に正対した仮想鉛直スクリーン上の鉛直線(V軸)に対し左右かつ水平線(H軸)よりも上の領域に、付加配光パターンP2が形成されるとともに、付加配光パターンP2には、その付加配光パターンのなかでもその周囲よりも比較的明るい部分となる左右一対の明部配光パターンP2、P2が形成される。
なお、明部配光パターンP2、P2は付加配光パターンP2と同様にロービーム用配光パターンP1よりも照度が低く設計されているので、対向車の運転手(ライダー)が付加配光パターンP2(明部配光パターンP2、P2)によって眩惑されることはない。
【0043】
そして、図3(b)に示すように、左コーナーコーナリング時に車両を左側に傾けると(例えば、バンク角36°)、これに伴ってヘッドランプ1も傾く。これにより、それまで水平線(H軸)よりも上の領域を照射していた付加配光パターンP2が、水平線(H軸)よりも下に移動し、ライダーの左前方の路面を照射する。特に、水平線(H軸)よりも下に移動した付加配光パターンP2における明部配光パターンP2がライダーの左前方の路面を照射することで、左コーナーコーナリング時の視認性をより一層向上させることができる。
【0044】
同様に、右コーナーコーナリング時に車両を右側に傾けると(例えば、バンク角36°)、これに伴ってヘッドランプ1も傾く。これにより、それまで水平線(H軸)よりも上の領域を照射していた付加配光パターンP2が、水平線(H軸)よりも下に移動し、ライダーの右前方の路面を照射する。特に、水平線(H軸)よりも下に移動した付加配光パターンP2における明部配光パターンP2がライダーの右前方の路面を照射することで、右コーナーコーナリング時の視認性をより一層向上させることができる。
【0045】
このように、付加配光パターンP2中に比較的明るい明部配光パターンP2、P2を形成するようにすれば、自動二輪車がコーナリング走行している場合、ヘッドランプ1の付加配光パターンP2における明部配光パターンP2、P2で進行方向(旋回方向)の路面を照射することができるので、進行方向の視認性が向上し、安全な走行を実現することができる。
【0046】
なお、以上の実施の形態においては、第二反射面22は、凸面状の自由曲面であるとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第二反射面22は、凹面状の自由曲面であってもよい。
【0047】
また、以上の実施の形態においては、第二反射面22によって、付加配光パターンP2のみを形成することと、明部配光パターンP2、P2を含んだ付加配光パターンP2を形成することを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第二反射面22が水平線(H軸)よりも上の左右領域を比較的明るく照らすように、明部配光パターンP2、P2のみを形成するように第二反射面22の自由曲面を設計してもよい。
【0048】
また、以上の実施の形態においては、ヘッドランプ1を自動二輪車用のヘッドランプに適用し、付加配光パターンP2(明部配光パターンP2、P2)をバンク配光として利用することを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヘッドランプ1を自動四輪車用のヘッドランプに適用し、付加配光パターンP2(明部配光パターンP2、P2)を前方上側の看板や標識等を照らすオーバーヘッドサイン照明として利用するようにしてもよい。
【0049】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 ヘッドランプ(プロジェクタ型ヘッドランプ)
10 光源
20 リフレクター
21 第一反射面
22 第二反射面
30 投影レンズ
40 シャッター
41 上縁
42 下端
F1 第一焦点
F2 第二焦点
F3 後ろ側焦点
P1 ロービーム用配光パターン
P2 付加配光パターン
P2 明部配光パターン
P2 明部配光パターン
Ax 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の前方に配置され、前記光源との間に後ろ側焦点を有した投影レンズと、
前記光源からの光を前方に反射して、前記後ろ側焦点に集光する第一反射面と、
前記後ろ側焦点又はその近傍に上縁を有するともに、前記上縁よりも下方の下端側が前記投影レンズに向かって傾斜した姿勢で前記投影レンズと前記光源の間に配置され、前記第一反射面によって反射された光の一部を遮光するシャッターと、
前記第一反射面からの反射光のうち、少なくとも前記シャッターの傾斜に沿った向きの反射光を、直立時の車両前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて反射させるための第二反射面と、
を備えたことを特徴とするプロジェクタ型ヘッドランプ。
【請求項2】
前記投影レンズは、前記第二反射面による反射光を前方に投影することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ型ヘッドランプ。
【請求項3】
当該プロジェクタ型ヘッドランプは、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線よりも下の領域に、前記シャッターの上縁により規定されるカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成するとともに、
前記第二反射面による反射光によって、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線の上の領域に、前記ロービーム用配光パターンよりも照度が低い付加配光パターンを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のプロジェクタ型ヘッドランプ。
【請求項4】
前記第二反射面による反射光によって、前記仮想鉛直スクリーン上の水平線の上の領域に形成された前記付加配光パターン中に、前記ロービーム用配光パターンよりも照度が低く、前記付加配光パターンよりも照度が高い明部配光パターンを、前記仮想鉛直スクリーン上の鉛直線を挟んで左右一対形成することを特徴とする請求項3に記載のプロジェクタ型ヘッドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52703(P2013−52703A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190326(P2011−190326)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】