説明

プロジェクタ

【課題】投射光学系にカラーホイールを含むプロジェクタにおいて、より青色光を有効利用してこれにより励起される他の色の光の輝度を高め、画像の輝度やカラーバランスをより向上させる。
【解決手段】起振装置20によって、レンズ4を揺動させることで、青色光源からの青色光Bの光軸と、カラーホイール5との相対位置を変化させる。この、青色光源からの青色光Bの光軸と、カラーホイール5との相対位置の変化により、青色光源からの青色光Bが、蛍光体層502の特定の範囲に照射されることを防ぐことができる。よって、カラーホイール5が青色光源1からの光を受けることに起因する発熱が、蛍光体層502の特定の範囲に集中して発生することが回避され、蛍光体層502の局部的な温度上昇が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画像を投写光学系により拡大投影し、大画面の表示画像を得るプロジェクタに関するものであり、特に、時分割型の分光装置のフィルタ素子としてカラーホイールを用いたプロジェクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホームシアター、プレゼンテーション等で使用される、表示画像を投写光学系により拡大投影し、大画面の表示画像を得るプロジェクタ(投射型画像表示装置)が商品化されている。このようなプロジェクタには、光源から出射された光を照明光として、デジタルマイクロミラーデバイス、液晶表示素子等の空間光変調器を使用する電気光学装置を介してスクリーンに画像を表示するものがある。上記プロジェクタには、光源として、高圧水銀ランプやキセノンランプを用いたものもあるが、それらは水銀の含有や、発熱量の問題から好ましくない。そのため近年では、発光ダイオード(LED)やレーザを使用したプロジェクタが考案されている。
【0003】
例えば、LEDとレーザを使用するものとして、米国で開催された家電製品のトレードショーであるInternational CES(Consumer Electronics Show)(2010年)で展示発表されたカシオ計算機株式会社のプロジェクタがある。ここでは、赤色光源としてLED、青色光源として青色レーザ、緑色光源として青色レーザの位相と波長を変換したものを利用している(以下、この種のプロジェクタを「ハイブリッド型」という。)。
このようなプロジェクタでは、時分割型のフィルタ素子として、高速で回転するカラーホイールが一般的に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記ハイブリッド型プロジェクタの色合成の方式について、その模式図を図8に示す。図8において、プロジェクタ100は、投射光学系の構成要素として、青色光源1、赤色光源2、カラーホイール5、ダイクロイックミラー3,8、レンズ4,9、ミラー6,7、空間光変調器としてのデジタルマイクロミラーデバイス10、投影光学系11、スクリーン12を備えている。青色光源1から出射される青色光(B)は、青色光を透過するダイクロイックミラー3、レンズ4を通過し、カラーホイール5に照射される。カラーホイール5は本体が金属製円盤であって、その円周方向の一部に緑色光(G)を発する蛍光体(以下、「緑蛍光体」という)の層が形成されている。青色光は、緑蛍光体が設けられていない部分(カラーホイール本体の円周方向の切り欠き部分)を通過し、ダイクロイックミラー8を透過し、レンズ9により集光されてデジタルマイクロミラーデバイス10に達する。
【0005】
カラーホイール5から反射された一部の青色光は、青色光源1側に戻る。そして、青色光が上記緑蛍光体に照射されると緑色光が発光され、この緑色光は、レンズ4を通って緑色光を反射するダイクロイックミラー3により反射され、さらにミラー6,7と、ダイクロイックミラー8で反射され、レンズ9により集光されてデジタルマイクロミラーデバイス10に達する。
【0006】
また、赤色光源2からの赤色光(R)は、ダイクロイックミラー3を通過し、ミラー6,7に反射されてダイクロイックミラー8に反射され、レンズ9により集光されてデジタルマイクロミラーデバイス10に達する。
デジタルマイクロミラーデバイス10に入射する青色光(B)、緑色光(G)、赤色光(R)の3原色は、入射光の切り替えを同期させて、それぞれの色の画像として時系列的に処理され、投影光学系11を介して、スクリーン12に画像が投写される。なお、カラーホイール5の回転制御や、カラーホイール5を通過後の光の制御については、周知の技術であることから、説明を省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−341105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のハイブリッド型プロジェクタのように、投射光学系にカラーホイールを含むプロジェクタは、投射される画像の輝度を最適化する上で、カラーホイール5における緑蛍光体の輝度向上が必要不可欠となる。このため、図9(a)に示されるように、緑色光の励起光源である青色光源1の供給電力を増大させて、その光量を増大させることで、緑蛍光体の発光強度を増加させることが可能である。一方、青色光源1の光量を増大させると、青色光源1からの光を受けることに起因する蛍光体層の発熱も増大することとなるが、図9(b)に示されるように、緑蛍光体の効率(発光効率)は、その種類に係らず温度の上昇と共に低下する傾向にあることから、青色光源1の光量を増大が、直接的に緑蛍光体の輝度向上につながらない。なお、上記の課題は、カラーホイール5に、青色光源1を励起光源として赤色光を発光する赤蛍光体を設けた場合も、同様である。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、投射光学系にカラーホイールを含むプロジェクタにおいて、より青色光を有効利用してこれにより励起される他の色の光の輝度を高め、画像の輝度をより向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0011】
(1)光源と、レンズと、カラーホイールとを投射光学系に含むプロジェクタであって、 前記光源には、青色光を発光する光源を含み、前記カラーホイールには、前記青色光を発光する光源が入射して緑色光ないし赤色光を射出する蛍光体層を含み、前記光源、レンズ及びカラーホイールのいずれかに、前記蛍光体層が前記青色光を発光する光源からの光を受けることに起因する発熱が、前記カラーホイールの特定の範囲に集中して発生することを回避するための、熱分散手段を具備するプロジェクタ(請求項1)。
本項に記載のプロジェクタは、熱分散手段によって、カラーホイールが前記青色光を発光する光源からの光を受けることに起因する発熱が、蛍光体層の特定の範囲に集中して発生することが回避され、蛍光体層の局部的な温度上昇が抑えられる。そして、蛍光体層の温度上昇に起因する効率低下を防ぎ、青色光を有効利用して、緑色光ないし赤色光の輝度を高めるものである。
【0012】
(2)上記(1)項において、前記熱分散手段は、光源、レンズ及びカラーホイールのいずれかを揺動させる起振装置であるプロジェクタ(請求項2)。
本項に記載のプロジェクタは、起振装置によって、光源、レンズ及びカラーホイールのいずれかを揺動させることで、青色光を発光する光源からの光の光軸と、カラーホイールとの相対位置を変化させる。この、青色光を発光する光源からの光の光軸と、カラーホイールとの相対位置の変化により、青色光を発光する光源からの光が、蛍光体層の特定の範囲に照射されることを防ぎ、カラーホイールが前記青色光を発光する光源からの光を受けることに起因する発熱が、蛍光体層の特定の範囲に集中して発生することが回避され、蛍光体層の局部的な温度上昇が抑えられる。
【0013】
(3)上記(2)項において、前記起振装置には、前記カラーホイールに対する前記光源又はレンズの光軸を揺動させるリニアアクチュエータが含まれるプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、リニアアクチュエータによって、カラーホイールに対する光源又はレンズの光軸を揺動させることで、青色光を発光する光源からの光の光軸と、カラーホイールとの相対位置を変化させるものである。リニアアクチュエータは、往復運動をするアクチュエータであれば、圧電素子や、電磁誘導を利用した超音波振動子等を、適宜採用可能である。
【0014】
(4)上記(2)項において、前記起振装置には、前記カラーホイールに対する光源又はレンズの光軸を揺動させるモータの偏心回転駆動機構が含まれるプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、モータの偏心回転駆動機構によって、前記カラーホイールに対する光源又はレンズの光軸を揺動させることで、青色光を発光する光源からの光の光軸と、カラーホイールとの相対位置を変化させるものである。ここで用いられるモータは回転運動をするものであり、又、その回転運動を偏心カム等によって往復直線運動に変換する機構を具備していれば良い。
【0015】
(5)上記(1)から(4)項において前記熱分散手段は、前記蛍光体層を、前記カラーホイールの円周方向に間欠配置して構成されるプロジェクタ(請求項3)。
本項に記載のプロジェクタは、カラーホイールの円周方向に間欠配置される蛍光体層に、青色光を発光する光源からの光が照射されることで、カラーホイール全体のなかで、蛍光体層が設けられていない部分の温度上昇が回避され、蛍光体層の熱がカラーホイールの比較的低温部分へと分散されるものである。
【0016】
(6)上記(5)項において、前記蛍光体層の間欠配置は、前記蛍光体層自体が、前記カラーホイールの円周方向に間隔を空けて配置されてなるプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、蛍光体層自体が、カラーホイールの円周方向に間隔を空けて配置されることで、蛍光体層の間欠配置が構成されるものである。
【0017】
(7)上記(5)項において、前記蛍光体層の間欠配置は、前記蛍光体層を、前記カラーホイールの円周方向に帯状に連続配置し、かつ、該帯状部分に間隔を空けて開口を形成することにより構成されてなるプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、前記カラーホイールの円周方向に帯状に連続配置された蛍光体層の、該帯状部分に間隔を空けて開口を形成することで、蛍光体層の間欠配置が構成されるものである。
【0018】
(8)上記(1)から(7)項において、前記熱分散手段は、前記カラーホイール内部に、磁性体フィラーによる熱伝導ネットワーク構造が構成されてなるプロジェクタ(請求項4)。
本項に記載のプロジェクタは、カラーホイール内部に構成された、磁性体フィラーによる熱伝導ネットワーク構造によって、蛍光体層の熱が、カラーホイールの比較的低温部分へと分散されるものである。
【0019】
(9)上記(8)項において、前記熱伝導ネットワーク構造は、前記カラーホイールの円周方向、厚み方向及び半径方向の少なくとも一方向に形成されているプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、カラーホイール内での熱伝導ネットワーク構造の敷設方向に応じて、カラーホイールの円周方向、厚み方向又は半径方向に、蛍光体層の熱が分散されるものである。
【0020】
(10)上記(8)(9)項において、前記熱伝導ネットワーク構造は、磁性体フィラーが混入された樹脂材料が磁場中硬化されることにより形成されているプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、磁性体フィラーが混入された樹脂材料が磁場中硬化されることにより、磁場の方向に応じたネットワークが形成されたカラーホイールを具備することで、カラーホイール内でのネットワークの敷設方向に応じて、カラーホイールの円周方向、厚み方向又は半径方向に、蛍光体層の熱が分散されるものである。
【0021】
(11)上記(8)から(10)項において、前記磁性体フィラーに扁平フィラーが用いられるプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、扁平フィラーが長手方向に連なって熱伝導ネットワーク構造が構成されることで、カラーホイール内部の熱伝導性が向上するものである。
【0022】
(12)上記(8)から(11)項において、前記カラーホイールの基材に、高反射ないし高熱伝導材料が用いられるプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、前記カラーホイールの基材に、高反射ないし高熱伝導材料が用いられることで、熱伝導ネットワーク構造と協調して、蛍光体層の熱のカラーホイール外部への発散が効率的に行われるものである。
【0023】
(13)上記(8)から(11)項において、前記カラーホイールの少なくとも一面に放熱性シートが取付けられるプロジェクタ。
本項に記載のプロジェクタは、前記カラーホイールの少なくとも一面に取付けられた放熱性シートによって、熱伝導ネットワーク構造と協調して、蛍光体層の熱のカラーホイール外部への発散が効率的に行われるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明はこのように構成したので、投射光学系にカラーホイールを含むプロジェクタにおいて、より青色光を有効利用してこれにより励起される他の色の光の輝度を高め、画像の輝度をより向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタの、カラーホイールの特定の範囲に集中して熱が発生することを回避するための、熱分散手段を示す模式図であり、(a)はレンズ揺動手段を採用した事例を示し、(b)はレンズを振動させた様子を、(c)はレンズにより集光された青色光が振動する様子を、(d)はレンズを揺動させない場合の、カラーホイールに照射される光の軌跡を、(e)はレンズを揺動させた場合の、カラーホイールに照射される光の軌跡を、各々示すものである。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタの、カラーホイールの特定の範囲に集中して熱が発生することを回避するための熱分散手段として、蛍光体層をカラーホイールの円周方向に間欠配置したものを示す模式図であり、(a)は、蛍光体層自体が、前記カラーホイールの円周方向に間隔を空けて配置されている事例を、(b)は、蛍光体層を、カラーホイールの円周方向に帯状に連続配置し、かつ、該帯状部分に間隔を空けて開口を形成した事例を示し、(c)は参考例として、蛍光体層を、カラーホイールの円周方向に帯状に連続配置した事例を示すものである。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタの、カラーホイールの特定の範囲に集中して熱が発生することを回避するための熱分散手段として、カラーホイール内部に磁性体フィラーによる熱伝導ネットワーク構造を構成した事例に係る説明図であり、(a)は、前記カラーホイールの円周方向に熱伝導ネットワーク構造を構成した場合の平面図及び側面図、(b)は、(a)の熱伝導ネットワーク構造を構成する手法の説明図、(c)は、カラーホイールの円周方向、厚み方向及び半径方向の全てに熱伝導ネットワーク構造を構成した場合の平面図及び側面図、(d)は磁性体フィラーの模式図である。
【図4】加熱開始からの時間経過に応じた距離別温度を、鉄、アルミ、銀、樹脂、蛍光体の夫々について示したものであり、(a)は0.005秒後、(b)は0.01秒後、(c)は0.05秒後を示している。
【図5】アルミ、銀、樹脂、蛍光体の熱拡散係数α及び熱伝導率kの値を示す図表である。
【図6】カラーホイールの蛍光体層を、その円周方向に間欠配置した、熱分散手段を示す模式図である。
【図7】図6の例における、蛍光体層の距離別温度を(a)に、基材の距離別温度を(b)に示したものである。
【図8】従来のハイブリッド型のプロジェクタの模式図である。
【図9】(a)は、青色光源に供給する電流と放射束との関係を示すグラフであり、(b)は、緑蛍光体の温度と発光強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。なお、本発明の実施の形態は、図8に例示されるような、ハイブリッド型のプロジェクタに適用可能なものであり、プロジェクタの全体構成についての詳しい説明は、図8を参照することとして省略する。
【0027】
まず、本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタは、図1(a)に示されるように、ダイクロイックミラー3(図8参照)とカラーホイール5との間に配置されたレンズ4を揺動させる、起振装置20を備えている。起振装置20は、リニアアクチュエータ、例えばマイクロカメラレンズユニットの焦点合わせ機構に採用されている圧電素子や、光ディスクのレーザーピックアップの駆動モータ、電気シェーバに採用されている電磁誘導を利用した超音波振動子等、往復運動をするアクチュエータを採用することができる。又、モータの偏心回転駆動機構によって、レンズ4の光軸を揺動させる機構を採用することも可能である。なお、起振装置20とレンズ4との連結機構は、レンズ4が青色光Bの光軸に対して直角を維持して正確に往復運動するものであれば良い。
【0028】
そして、図1(b)に示されるようにレンズ4がカラーホイール5に対して揺動することで、レンズ4により集光された青色光Bは、図1(c)に示されるように振動する。
ここで、レンズ4を揺動させない場合には、レンズ4により集光された青色光Bは、回転するカラーホイール5上で、図1(d)に示されるように、カラーホイール5の環状一定幅の緑蛍光体層502の、同一円周Ct上を移動する軌跡を描く。これに対し、レンズ4の揺動幅を調節して揺動させることで、レンズ4により集光された青色光Bの軌跡は、図1(e)に示されるように、カラーホイール5の環状一定幅の緑蛍光体層502の、全幅にわたって移動することとなる。従って、蛍光体層502が青色光源1からの青色光Bを受けることに起因する発熱が、カラーホイール5の特定の範囲(同一円周Ct上)に集中して発生することが回避される。
【0029】
以上の如く、本発明の第1の実施の形態において、起振手段20は、蛍光体層502が青色光Bを受けることに起因する発熱が、カラーホイール4の特定の範囲に集中して発生することを回避するための熱分散手段として機能するものである。
なお、本発明の第1の実施の形態は、カラーホイール5の緑蛍光体層502に対する青色光Bの相対位置を変位させることにより、緑蛍光体層502の熱分散を図るものであることから、起振装置20は、レンズ4のみならず、青色光源1又はカラーホイール5を揺動させるものであっても良い。
【0030】
参考までに、カラーホイール5の蛍光体層502上記蛍光体材料としては、以下のようなものが挙げられる。例えば、緑色発光用蛍光体としては、Zn2SiO4:Mn,BaAl1219:Mn,BaMgAl1423:Mn,SrAl1219:Mn,ZnAl1219:Mn,CaAl1219:Mn,YBO3:Tb,LuBO3:Tb,GdBO3:Tb,ScBO3:Tb,Sr4Si38Cl4:Eu,等が挙げられる。又、赤色発光用蛍光体として、Y23:Eu,Y2SiO5:Eu,Y3Al512:Eu,Zn3(P042:Mn,YBO3:Eu,(Y,Gd)BO3:Eu,GdBO3:Eu,ScBO3:Eu,LuBO3:Eu,等が挙げられる。
【0031】
上記構成をなす、本発明の第1の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。まず、本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタは、熱分散手段20によって、カラーホイール5が青色光Bを発光する光源1からの光を受けることに起因する発熱が、蛍光体層502の特定の範囲に集中して発生することが回避され、蛍光体層502の局部的な温度上昇が抑えられる。そして、緑蛍光体502の効率低下を防ぎ、青色光Bを有効利用して緑色光Gの輝度を高めるものである。
なお、蛍光体層502に赤色光を発光する赤蛍光体を設けた場合には、同様に、青色光Bを有効利用して赤色光Rの輝度を高めることができる。
【0032】
又、本発明の第1の実施の形態に係るプロジェクタによれば、起振装置20によって、青色光源1、レンズ4及びカラーホイール5のいずれかを揺動させることで、青色光源1からの青色光Bの光軸と、カラーホイール5との相対位置を変化させる。この、青色光源1からの青色光Bの光軸と、カラーホイール5との相対位置の変化により、青色光源1からの青色光Bが、蛍光体層502の特定の範囲に照射されることを防ぐことができる。
【0033】
又、起振装置20としてリニアアクチュエータを用いることにより、カラーホイール5に対する青色光源1又はレンズ4の光軸を揺動させることで、青色光源1からの青色光Bの光軸と、カラーホイール5との相対位置を変化させるものである。又、モータの偏心回転駆動機構を、起振装置20に採用することも可能である。
【0034】
続いて、図2を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係るプロジェクタの特徴部分を説明する。本例において、熱分散手段は、カラーホイール5の蛍光体層を、カラーホイール5の円周方向に間欠配置することにより構成されるものである。
より具体的には、図2(a)に示されるように、蛍光体層504自体が、カラーホイールの円周方向に間隔を空けて配置されてなるものである(その余の部分503は、反射板として機能するものである。)。なお、蛍光体層504は円形に限られず、四角形等の多角形であっても、バーコード状であっても良く、要するに蛍光体層504が円周方向に間隔を空けて配置されていれば良い。又、図2(b)に示されるように、環状一定幅の緑蛍光体層502が形成され、かつ、帯状部分に間隔を空けて開口506を形成することにより、カラーホイール5の蛍光体層を、カラーホイール5の円周方向に間欠配置することとしても良い。
参考までに、図1に示されたカラーホイール5の場合には、図2(c)のごとく、環状一定幅の緑蛍光体層502が形成されている。
【0035】
さて、上記構成をなす、本発明の第2の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、カラーホイール5の円周方向に間欠配置される蛍光体層502、504に、青色光源1からの青色光Bが照射されることで、カラーホイール5全体のなかで、蛍光体層が設けられていない部分503の温度上昇が回避され、蛍光体層502、504の熱が比較的低温部分へと分散されるものである。
ここで、図2(a)に示されるように、蛍光体層504自体が、カラーホイール5の円周方向に間隔を空けて配置されることで、蛍光体層の間欠配置が構成されるものであっても、図2(b)に示されるように、カラーホイール5の円周方向に帯状に連続配置された蛍光体層502の、帯状部分に間隔を空けて開口506を形成することで、蛍光体層502の間欠配置が構成されるものであっても、上記作用効果が得られるものである。
【0036】
以上の如く、本発明の第2の実施の形態は、カラーホイール5の緑蛍光体層502、504に対する青色光Bの照射を間欠的に行う、換言すれば、青色光Bを擬似間欠発振することにより、緑蛍光体層502の熱分散を図るものである。その他、本発明の第1の実施の形態と同様の作用効果については、詳しい説明を省略する。
【0037】
続いて、図3を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係るプロジェクタの特徴部分を説明する。本例において、熱分散手段は、図3(a)に示されるように、カラーホイール5内部に、磁性体フィラー24による熱伝導ネットワーク22構造が構成されてなるものである。
具体的には、磁性体フィラー24は、図3(d)に示されるように、磁性体粒24aを、銀フィラー等の高反射・高熱伝導性材料24bでコートしたものである。磁性体粒24aは、鉄(80W/m・K)、ニッケル(90.7W/m・K)等が用いられる。又、その粒径も球形のみならず、扁平形のものが用いられる。これらの磁性材料は、一般的に光を吸収しやすい性質を有するが、高反射・高熱伝導性材料24bでコートすることで、光の吸収を抑制し、光学的な欠点を排除することができる。
【0038】
又、磁性体フィラー24による熱伝導ネットワーク22構造は、磁性体フィラーが混入されたシリコーン樹脂等の樹脂材料が、図3(b)に示されるように、銅線26を流れる電流により励起され、磁性体フィラー24が磁界28の向きに整列した状態で、磁場中硬化されることにより構成されるものである。又、この磁界の向きを適宜変えて、必要に応じ層毎に多重成形を行うことにより、図3(c)に示されるように、カラーホイール5の円周方向、厚み方向又は半径方向による熱伝導ネットワーク22構造を構成することも可能である。
更に、カラーホイール5の基材5aに、ガラス以外にも、Al、Ag等の高反射・高熱伝導材料が用いられることで、基材5aと熱伝導ネットワーク22構造とが伝熱経路としてつながり、放熱性が高まることとなる。更には、図3(c)に示されるように、基材5aにグラファイシート等の放熱性シート30を取付けることとしても良い。
【0039】
上記構成をなす、本発明の第3の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、カラーホイール5内部に構成された、磁性体フィラー24による熱伝導ネットワーク構造22によって、蛍光体層502(図2参照)の熱が、青色光Bが照射されていないカラーホイール5の比較的低温部分へと、分散されることとなる。
しかも、カラーホイール5内での熱伝導ネットワーク構造22の敷設方向に応じて、カラーホイール5の円周方向、厚み方向又は半径方向に、蛍光体層502の熱が効率的に分散されるものである。
又、磁性体フィラー24に扁平フィラーが用いられる場合には、扁平フィラー24が長手方向に連なって熱伝導ネットワーク構造22が構成されることで、熱伝導性が向上するものとなる。
【0040】
更に、カラーホイール5の基材5aに高反射・高熱伝導材料が用いられ、あるいは、カラーホイール5の少なくとも一面に取付けられた放熱性シート30によって、熱伝導ネットワーク構造22と協調して、蛍光体層502の熱のカラーホイール5外部への発散が、効率的に行われるものである。
以上の如く、本発明の第3の実施の形態は、カラーホイール5自体に熱分散構造を構築することにより、緑蛍光体層502の熱分散を図るものである。その他、本発明の第1、第2の実施の形態と同様の作用効果については、詳しい説明を省略する。
なお、本発明の第1の実施の形態から第3の実施の形態を適宜組み合わせて採用することにより、夫々の実施の形態の作用効果が相乗的に発揮されるものであることは、理解されるであろう。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の第2、第3の実施の形態の効果について、具体的数値を挙げてその効果を説明する。
さて、円形平板状のカラーホイール5のごく狭い範囲を考え、カラーホイールは擬似的に半無限固体とした場合の熱の流れの時間による関数は、以下の(I)式により与えられる。
T(x,τ)=T+(T―T)erf(x/(2√ατ)) ‥‥(I)
T(x,τ):τ時間後の距離xの温度
:暖めた温度(本例では250℃として計算)
:初期温度(本例では35℃として計算)
α:熱拡散係数(=熱伝導率/(比熱・密度))
τ:時間
x:加熱点からの距離
【0042】
又、カラーホイール5を回転駆動するモータの回転数を7200rpmとした場合、1回転に要する時間は、約0.01秒/回転であることに鑑み、加熱開始から0.005秒後、0.01秒後、0.05秒後の、鉄(磁性フィラー24を想定)、アルミ、銀、樹脂、蛍光体の夫々について、距離別温度を(I)式から求め、図4(a)、(b)、(c)に夫々示した。なお、アルミ、銀、樹脂、蛍光体の熱拡散係数α及び熱伝導率kの値は、図5の図表にまとめて示している。
図4(a)、(b)、(c)から明らかなように、時間経過と共に金属等熱伝導率の高い物質は温度上昇する範囲が広がり、熱を拡散する性質が高いことが把握される。
【0043】
又、磁性フィラー24を単純に樹脂に混合して熱伝導を高める(すなわち、熱伝導ネットワーク22を構成しない)場合を検討すると、この場合の熱伝導率は『Bruggeman』の式に従うものとなり、熱伝導率の高いフィラーの体積充填率の大小が、熱拡散性の大小と関係するものとなる。しかしながら、本発明の第3の実施の形態の如く、磁性フィラー24を用い熱伝導ネットワーク構造22を構成すれば、熱伝導ネットワーク構造22が熱拡散手段となって、『Bruggeman』の式に従うことなく、熱拡散性が高まることとなる。
【0044】
更に、本発明の第2の実施の形態に係る、カラーホイール5の蛍光体層をカラーホイール5の円周方向に間欠配置した熱分散手段の場合につても検討する。
図6に示されるように、カラーホイール5の基材5aをアルミニウムで構成し、蛍光体層502、504の厚みhを0.1mm程度にした場合、(I)式から求められた、蛍光体層502、504の距離別温度を図7(a)に、基材5aの距離別温度を図7(b)に示している。この例では、蛍光体層502、504の熱は基材5aに逃げ、基材5aの高い熱拡散性によって、間欠配置した蛍光体層502、504の熱が、効率よく拡散されることとなる。
【符号の説明】
【0045】
1:青色光源、2:赤色光源、 3,8:ダイクロイックミラー、 4,9:レンズ、5:カラーホイール、5a:基材、 6,7:ミラー、10:空間光変調器、11:投影光学系、12:スクリーン、20:起振装置、24:磁性体フィラー、24a:磁性体、24b:高反射・高熱伝導材料、30:放熱性シート、502:蛍光体層、504:蛍光体 506:開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、レンズと、カラーホイールとを投射光学系に含むプロジェクタであって、
前記光源には、青色光を発光する光源を含み、前記カラーホイールには、前記青色光を発光する光源が入射して緑色光ないし赤色光を射出する蛍光体層を含み、
前記光源、レンズ及びカラーホイールのいずれかに、前記蛍光体層が前記青色光を発光する光源からの光を受けることに起因する発熱が、前記カラーホイールの特定の範囲に集中して発生することを回避するための、熱分散手段を具備することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記熱分散手段は、光源、レンズ及びカラーホイールのいずれかを揺動させる起振装置であることを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記熱分散手段は、前記蛍光体層を、前記カラーホイールの円周方向に間欠配置することにより構成されることを特徴とする請求項1又は2記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記熱分散手段は、前記カラーホイール内部に、磁性体フィラーによる熱伝導ネットワーク構造が構成されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−180210(P2011−180210A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41875(P2010−41875)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】