プロテアソーム阻害剤及びその使用法
【課題】現在利用可能な局所的若しくは全身治療が有する欠点を克服する、有効な皮膚疾患の治療方法の提供。より具体的には、加齢及び/又は光老化によって生じる乾癬、ざ瘡、脂漏性皮膚炎及び皮膚傷害の有効な治療方法であって、現在利用可能な局所的若しくは全身治療と同様の欠点を有さない方法の提供。
【解決手段】マテ茶から単離されるケイ皮酸エステル化合物。この化合物は、局所的又は全身的にプロテアソーム活性と関連した障害の治療に使用できる。単離されたケイ皮酸エステル化合物は様々な皮膚疾患に対して局所的に使用できる。当該ケイ皮酸エステル化合物はまた、異常なプロテアソーム機能に関連する障害(例えば皮膚疾患(乾癬、ざ瘡など))、特定の前ガン症状(例えば骨髄異形成症状)、並びに癌(例えば白血病、リンパ腫、肉腫、上皮癌又はHIV)に対して全身的に使用できる。
【解決手段】マテ茶から単離されるケイ皮酸エステル化合物。この化合物は、局所的又は全身的にプロテアソーム活性と関連した障害の治療に使用できる。単離されたケイ皮酸エステル化合物は様々な皮膚疾患に対して局所的に使用できる。当該ケイ皮酸エステル化合物はまた、異常なプロテアソーム機能に関連する障害(例えば皮膚疾患(乾癬、ざ瘡など))、特定の前ガン症状(例えば骨髄異形成症状)、並びに癌(例えば白血病、リンパ腫、肉腫、上皮癌又はHIV)に対して全身的に使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロテアソームの調節による皮膚疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾癬は病因が未知の皮膚疾患である。痛み、痒み、手先の敏捷性の減少及び美容上の問題(例えば手、脚又は顔の顕著な病変)を特徴とする。他の皮膚症状(例えば加齢及び/又は光加齢によって生じるざ瘡、脂漏性皮膚炎及び皮膚傷害)も同様の症状を示し、それらに罹患する患者にしばしば苦痛を与える。
【0003】
今日、乾癬の治療法は、抑制的な治療法しか存在しない(非特許文献1)。既存の治療は、単に実質的に患者の仕事、気分又は個人的若しくは社会的生活を妨げない程度に乾癬の症状及び範囲を減少させるに留まっている。
【0004】
疾患の重症度に応じて局所的及び全身の乾癬の治療手段を選択できる。乾癬の局所的治療には、緩和剤、表皮剥離剤、コールタール、アントラリン、中程度〜強力な薬効の副腎皮質ステロイド及びカルポトリエン(calpotriene)が使用される。全身治療は、局所的治療が効果を発揮しなかった患者で、肉体的、社会的又は経済的に不能となっている乾癬患者に対して適用される。通常、全身治療では紫外線B照射による光線治療が適用される。あるいは、光化学療法を適用してもよく、それは紫外線A光線治療(PUVA)、メトトレキサート、エトレチナート、全身性副腎皮質ステロイド及びシクロスポリンと、光増感剤のメトキサレンとの組合せを使用する。しかしながら、これらの局所治療及び全身治療は、有効性が左右され易く、また望ましくない副作用のおそれもある。同様の治療方法が加齢及び/又は光老化によって生じるざ瘡、脂漏性皮膚炎及び皮膚傷害に対しても試みられたが、同様のごく限られた効果に留まっていた。
【非特許文献1】Greavesら(1995),Drug Therapy,332:581−588
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上より、現在利用可能な局所的若しくは全身治療が有する欠点を克服する、有効な皮膚疾患の治療に対するニーズが存在する。より具体的には、加齢及び/又は光老化によって生じる乾癬、ざ瘡、脂漏性皮膚炎及び皮膚傷害の有効な治療方法であって、現在利用可能な局所的若しくは全身治療と同様の欠点を有さない方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は1つには、マテ茶から単離されるケイ皮酸エステル化合物がプロテアソーム調節活性、特にプロテアソーム阻害活性を示すという発見に基づく。これらの化合物は、局所的又は全身的にプロテアソーム活性と関連した障害の治療に使用できる。例えば、単離されたケイ皮酸エステル化合物は様々な皮膚疾患(例えば乾癬)に対して局所的に使用できる。当該ケイ皮酸エステル化合物はまた、異常なプロテアソーム機能に関連する障害(例えば皮膚疾患(乾癬、ざ瘡など))、特定の前ガン症状(例えば骨髄異形成症状)、並びに癌(例えば白血病、リンパ腫、肉腫、上皮癌又はHIV)に対して全身的に使用できる。
【0007】
すなわち、本発明の一態様は、プロテアソーム活性の阻害に有効な量のケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物に関する。ケイ皮酸エステル化合物とは、芳香族基に炭素数3のカルボン酸基が結合した構造を有する。一実施態様では、ケイ皮酸エステル化合物は、構造Iとして以下に示す一般構造を有する。
【化1】
(構造I)
式中、Wはメチル基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX5は水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rはケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。
【0008】
他の実施形態では、ケイ皮酸エステル化合物は構造IIとして以下に示す一般構造を有する。
【化2】
(構造II)
式中、Wはメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX4は水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rはケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。
【0009】
ケイ皮酸エステル化合物の一例は、カフェオイルエステル中のエステルの数が約1〜6、又は3〜5の範囲のカフェオイルエステルである。エステルの数はケイ皮酸エステル化合物の活性に影響を及ぼし、例えばプロテアソーム活性の抑制効果を増加する若しくは高める。カフェオイルエステルの例としては、限定されないが、5−カフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸及びそれらの類似体又は誘導体が挙げられる。
【0010】
別の態様では、本発明は、局所投与用の薬学的に許容できる担体との組合せでカフェオイルエステルを含有する組成物に関する。カフェオイルエステルは、皮膚疾患(例えば乾癬、ざ瘡、ニキビ及び湿疹)の治療に有効な量で存在する。組成物において使用するカフェオイルエステルは、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び類似体その又は誘導体であってもよく、約0.01%〜10%の濃度で存在してもよい。
【0011】
本発明の別の態様では、上記のケイ皮酸エステル化合物に関連する化合物が、プロテアソーム調節活性を示す場合がありうる。特に本発明は、プロテアソーム活性の調節に使用できるフェノール系酸化防止剤に関する。より具体的には、フェノール系酸化防止剤のファミリーがCiba Specialty Chemicals社製のIRGANOX(登録商標)の使用が本発明に含まれる。
【0012】
更に他の態様では、本発明はプロテアソーム活性を阻害するのに効果的な量のケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物を投与することによる、プロテアソーム活性と関連する障害の治療方法、すなわちプロテアソーム活性の抑制により障害を治療する方法に関する。ケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物は、皮膚疾患(例えば乾癬、ざ瘡、ニキビ及び湿疹)の治療に局所的に適用することができる。あるいは、ケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物は、異常なプロテアソーム活性に関連する障害(例えば皮膚疾患(乾癬、ざ瘡など)、自己免疫不全(例えば狼瘡、関節炎及び多発性硬化症)、前ガン症状(例えば骨髄異形成症状)、癌(例えば膀胱ガン、白血病、リンパ腫、肉腫、上皮癌)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及び移植拒否の治療のために全身的に投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の具体的実施形態を以下に記載し、本発明に係る組成物の構造、機能、製造方法、並びに本発明の方法及び組成物の使用に関する全体的な説明を行う。本発明に具体的に記載されている方法及び組成物は非限定的な例示的実施態様であり、当業者であれば本発明の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的実施形態と関連して例示若しくは記載されている特徴を、他の実施態様における特徴と組み合わせてもよい。かかる修正変更は本発明の範囲内に含まれると解される。
【0014】
1つの態様では、本発明は、プロテアソーム活性の調節にケイ皮酸エステル化合物を使用することに関する。ケイ皮酸とは、5員環又は6員環の芳香族基(例えばフェニル基、フリル基、チエニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピロリル基、ピラゾリル基及びキノリニル基)と結合する炭素原子数3のカルボン酸である。
【0015】
植物エキスは、化学的予防剤、血管新生阻害剤及び抗腫瘍剤の主要な供給源である。これらは、少量の強力な薬剤と、ヒト用食品の大部分を形成する化合物とを含んでなる。これらの化合物が悪性の進行を防止する機構は完全に理解されていない。構造−機能相関にとり不可欠な構造的特徴は、十分なインビトロアッセイなしで決定するのは困難であるため、当該機構に関する理解のなさにより、同種の化合物の単離及び合理的な設計が困難となる。
【0016】
従来、Ras形質転換した内皮細胞を用いて、抗腫瘍若しくは血管新生阻害、又はその両方の活性を有する天然の候補化合物を単離するスクリーニングが行われていた(Arbiserら、(1998)Mol.Med.4,376−383、Arbiserら,(1999)J.Am.Acad.Dermatol.40,925−929)。このアッセイを用いて、部分的に精製された抽出物を植物マテ茶(Ilex paraguayensis)から得ていた。これらの抽出物を化学的に分析した結果、ケイ皮酸エステル化合物、特にキナ酸のカフェオイルエステルを含有することを見出した。
【0017】
マテ茶から単離したケイ皮酸エステル化合物は、構造Iで表される。
【化3】
(構造I)
式中、Wはメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX5は水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rはケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。
【0018】
一実施態様では、炭素数3の鎖又は芳香環上の水素原子は、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエステル基、アミノ基、アミド基からなる群から選択される基で置換してもよい。
【0019】
マテ茶から単離される他のケイ皮酸エステル化合物は、下記の構造IIで表される。
【化4】
(構造II)
式中、Wはメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX4は水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rはケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。
【0020】
ケイ皮酸エステル化合物の1つの例は、ヒドロキシ酸基を含んでなるカフェオイルエステルである。図1は、5−カフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸及びその類似体又は誘導体を含むがこれに限定されないカフェオイルエステルの若干の例を示す。ケイ皮酸エステル化合物の他の構造類似体及び誘導体を図2に示す。これらの類似体及び誘導体は、ルーチン的な化学合成法を使用して、これらの構造中の官能基を修飾して調製できる。これらの修飾はケイ皮酸エステル化合物の活性を増加又は強化するために使用でき、例えば化合物の抑制効果を増加させる。
【0021】
本発明の他の一実施態様では、本発明のケイ皮酸エステル化合物に構造的に関連するフェノール系酸化防止剤を、プロテアソーム活性の調節に使用できる。本発明のケイ皮酸エステル化合物に関連であるフェノール系酸化防止剤化合物の一例は、Ciba Specialty Chemicals社製のフェノール系酸化防止剤のIRGANOX(登録商標)ファミリーである。本発明に使用できるIRGANOX(登録商標)化合物の幾つかの構造を図7A−7Fに示す。例えば、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1010、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)245 DW、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1035、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)565、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1076、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1425、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1098、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1520、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1135、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1726、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1330、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)5057、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)245及びCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)HP 2225が挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 215、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 612、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 225及びCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1171などのフェノール系酸化防止剤の組合せであってもよい。
【0022】
プロテアソーム活性調節物質としての特定のチオ協働的(thiosynergistic)酸化防止剤(例えばCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)PS800及びCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)PS802)の使用は、本発明に包含される。
【0023】
本発明の化合物は、プロテアソーム活性を阻害することが見出されている。プロテアソームは、すべての真核生物細胞に共通に含まれる、大環状又は円筒状のマルチコンポーネント複合体である(Tanakaら(1995)New Biol.4:173−187)。プロテアソームは、それらのタンパク質分解活性により幾つかの重要な細胞機能に関与しており、例えばDNA修復、細胞周期進行、シグナル形質導入、転写、腫瘍形成、分化した組織の成長及び萎縮、代謝経路における基質の移動、異常タンパク質の選択的な除去、並びに抗原のプロセシング及び抗原提示(Finleyら(1991)Annu Rev Cell Biol.7:25−69)に関与する。プロテアソームは、様々な機能に自身を適応させるために広範囲に修飾を受ける。それは例えば個々のサブユニットの追加、置換及び再構築によって行われる。20Sプロテアソームの存在により触媒的分解力がプロテアソームに付与され、またその特徴はかなり解明されている。20Sプロテアソームの核は、7つの異なるα及びβサブユニットの各々2つのコピーが、4つ積み重なった(α7β7β7α7)環状構造を採っている。
【0024】
通常の老化現象により、身体が徐々に変異若しくはミスフォールディングタンパク質を適切に分解する能力を喪失することを示す証拠が蓄積しつつある。酸化ストレスが、細胞内タンパク質の酸化及びニトロ化を通じたこのタンパク質分解プロセスに関与すると考えられ、それによりタンパク質が架橋結合及び凝集しやすくなる。かかる凝集タンパク質はプロテアソームによる分解に対してより抵抗性を示すようになり、プロテアソームの機能の阻害にもつながりうる。プロテアソームの活性減少は、プロテアソーム自体の酸化によってより直接的に生じることもある(Kellerら(2000)Mech.Ageing Dev.113:61−70)。ミスフォールディングタンパク質の凝集は、異常な免疫活性化及びアポトーシスによる細胞死をもたらしうるプロテアソームの多くの変化を誘発しうる。
【0025】
プロテアソームの機能不全は、鍵となる炎症性調節物質(例えばJak3キナーゼ及びIκB)の調節による炎症プロセスにおいて重要な役割を果たしうる(Kwonら、(1998)Diabetes,47:583−91、Rivett,(2000)J.Pept.Sci.,6:478−88、Yuら、(1997)J.Biol.Chem.,272:14017−20)。
【0026】
以下の実施例に示すように、カフェオイルエステル3,5−ジカフェオイルキナ酸が、精製された20Sプロテアソーム及びJurkat T細胞抽出物中の26Sのプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害することを見出した。更に、3,5−ジカフェオイルキナ酸によるJurkat T細胞の完全な処理によって、細胞周期のG2/Mフェーズにおける進行停止が生じた。対照的に、5−カフェオイルキナ酸(ネオクロロゲン酸)として同定されたフラクションには、非常に微弱なプロテアソーム阻害活性しか存在せず、またJurkat T細胞のG2/M停止を誘導できなかった。この発見は、プロテアソーム活性がケイ皮酸エステル部分の数に依存しうることを示唆するものである。ケイ皮酸テトラエステル(ペンタエリトリトールテトラキス、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロケイ皮酸、PTTC)(多数のエステルを有する)をコントロールとして用い、プロテアソームに対して活性を有することを見出した。同様の実験により本発明のカフェオイルエステルを試験し、プロテアソームに抑制作用を及ぼすことを見出した。更に、そのデータは、2つのエステル基を有するカフェオイルエステルが1つのエステル基を有するカフェオイルエステルより高い阻害活性を有することを示す。すなわち、エステルの個数によりケイ皮酸エステル化合物の活性が変化し、例えばプロテアソーム活性の抑制効果が増加又は改善される。一実施態様では、カフェオイルエステルは、約1〜6、又は3〜5個にエステル基の数を増加させることにより修飾することができる。
【0027】
本発明の化合物は、多くの皮膚病学的な障害の治療に使用でき、例えば悪性疾患血管肉腫、血管内皮腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫及びカポージ肉腫、及び非悪性疾患又は症状、乾癬、リンパ管新生、幼年期の血管腫、ストウジ−ウェーバー症候群、尋常性疣贅、神経線維腫症、結節状硬化症、化膿性肉芽腫、劣性ジストロフィ表皮水泡症、静脈潰瘍、ざ瘡、ニキビ、湿疹、接触感染性の軟属腫、脂漏性角化症及び光線性角化症などの治療に使用できる。本発明の化合物で治療できる他の障害としては、限定されないが、自己免疫不全(例えば狼瘡、関節炎、多発性硬化症)、前ガン症状(例えば骨髄異形成症状)、癌(例えば膀胱癌、白血病、リンパ腫、肉腫、上皮癌、HIV及び移植拒否)などが挙げられる。
【0028】
本発明の化合物を含有する医剤組成物は、具体的な用途に基づいて調製できる。局所的、部分的又は全身的に投与することができる。これらの組成物には、防腐剤、酸化防止剤、抗生物質、免疫抑制薬、並びに通常の組織を処理した場合に有害な効果を及ぼさない他の生物学的若しくは薬学的に有効な薬剤を含有してもよい。
【0029】
局所若しくは全身投与用の組成物は通常、不活性な希釈剤を含んでなる。非経口、皮内、皮下、局所投与用の溶液又は懸濁液は、以下の成分が含まれてもよい。すなわち無菌の希釈剤(例えば注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒)、抗菌剤(例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸又はナトリウム重亜硫酸塩)、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸)、緩衝液(例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩)及び浸透圧調整剤(例えば塩化ナトリウム又はブドウ糖)が挙げられる。非経口製剤はガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は多回投与用バイアル中に収容してもよい。
【0030】
一実施態様では、全身投与用担体を使用してもよい。それにより当該阻害剤は非経口的又は経腸的に全身投与してもよい。当該組成物は、注入ポンプ(例えばインシュリン又は、化学療法剤を特異的な器官又は腫瘍に輸送するために使用するタイプ)、注射、又は制御放出性若しくは徐放性製剤を使用したデポジションにより投与してもよい。好ましい全身投与の実施態様では、胃を移動する間に薬剤を保護する必要がある場合、消化管内用の担体中に薬剤を含有させて経口投与する。
【0031】
本発明の化合物は、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの担体中に含有させ、注射によって全身投与してもよく、又はサリドマイドのような阻害剤の場合、錠剤又はカプセル形態で経口的に全身投与してもよい。錠剤又はカプセルには、以下の成分のいずれか又はそれと同様の性質を有する化合物を含有させてもよく、例えば結合剤(例えば微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン)、添加剤(例えば澱粉又はラクトース)、崩壊剤(例えばアルギン酸、プリモゲル又は穀物澱粉)、潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム又はステロテス(Sterotes))、又は滑剤(glidant)(例えばコロイド状二酸化ケイ素)などが挙げられる。投与単位の形態がカプセルである場合、上記のタイプの材料に加えて液体担体(例えば脂肪油)を含有させてもよい。更に投与単位の形態中に、投与単位の物理的形態を改変する他の各種材料(例えばシュガーコーティング、シェラック又は他の腸溶性剤等)を含有させてもよい。
【0032】
他の実施形態では、部分投与若しくは局所投与用の担体を使用してもよい。食塩水若しくはPBSなどの担体、軟膏若しくはゲル、経皮パッチ若しくは包帯、又は制御放出若しくは徐放性製剤中に阻害剤を含有させ、部分的若しくは局所的に投与してもよい。部分的投与は、傷害部位への注射、又は傷害部位への局所的噴霧によって実施できる。例えば阻害剤を包帯に吸収させ、傷害部位に直接適用してもよく、又はその部位における縫合箇所又はステープルを施した箇所から放出してもよい。制御放出又は徐放性製剤への化合物の添加は公知技術である。
【0033】
局所投与の場合、本発明の化合物を担体と混合して、投与部位に、所望の活性を生じさせるのに十分な有効投与量を投与できる。例えば、局所用の組成物を皮膚に塗布し、乾癬などの疾患を治療できる。当該担体は軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、エアゾール、坐薬、パッド又はゲル化したスティックの形態であってもよい。軟膏又はゲルとして使用する場合の局所組成物は、有効量の血管形成阻害剤を、緩衝生理食塩水、鉱油、植物油(例えば穀物又は落花生油)、ワセリン、Miglyol 182、アルコール溶液、又はリポソーム若しくはリポソーム様生成物などの眼科的に許容できる添加剤中に含有する。
【0034】
制御放出の一態様では、当該組成物は、選択された部位で制御期間にわたり血管形成阻害剤を放出する生分解性ポリマー性のインプラントと組み合わせて投与される。生分解性ポリマー物質の好ましい例としては、ポリアンヒドライド、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレン酢酸ビニル、並びにそれらの共重合体及び混合物が挙げられる。好ましい非生分解性ポリマー物質の例としては、エチレン酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。これらはマイクロ球体、マイクロカプセル、錠剤、ディスク、シート及び繊維として標準技術を使用して調製することができる。
【0035】
投与計画は、最適な効能(例えば治療的若しくは予防的効能)が得られるように適宜調節してもよい。例えば、単一のボーラス投与を行ってもよく、時間ごとに幾つかに分割した投与を行ってもよく、又は治療状況の緊急性に合わせて投与量を適宜増減させてもよい。特に投与の簡便化及び均一性の観点から、投与単位の形態は非経口投与用の製剤が有利である。本明細書で使用される投与単位の形態とは、治療対象の哺乳類患者への一体的投与量として適する物理的に別々の単位であって、各単位が必要な医薬用担体との組合せで所望の治療的効果を得るために必要な量の活性化合物を含有するものを指す。本発明の単位投与形態の詳細は、(a)活性化合物の固有の特徴、及び得られる特定の治療的若しくは予防的効果、(b)個人の感受性を治療する場合の、かかる活性化合物の合成に係る従来技術に存在する固有の限界、により直接的若しくは間接的に左右される。
【0036】
本発明の薬剤の典型的な治療的若しくは予防的有効量としては、限定されないが、担体中の組成物に対して約0.01〜10%又は1〜5%の範囲である。投与量は、軽減しようとする症状のタイプ及び重症度に応じて変化させてもよい点に留意する必要がある。更には、各々の患者ごとに、個々の必要性、並びに組成物を投与する若しくは組成物の投与を監督する専門医の判断に従って、時間経過と共に、投与計画を具体的に調整すべきであり、また本発明に示されるその投与量の範囲は典型的なものであり、特許請求された組成物の技術的範囲又は実施を限定するものではないことに留意すべきである。
【0037】
以下の実施例は本発明の原理及び実施を例示する。本発明の技術的思想の範囲内における多数の更なる実施態様は当業者にとって自明である。
【実施例】
【0038】
<実施例1>マテ茶からのプロテアソーム阻害剤の単離及び分析
本実施例では、マテ茶からプロテアソーム抑制活性を有する化合物を単離するのに必要な方法及び材料を示し、単離された化合物の効果を測定するための方法及びアッセイの説明を行う。
【0039】
(i)マテ茶エキスの調製:
粉末化マテ茶(Chimarrao Laranjeiras Puraerva Cascavel、ブラジル)(100g)を500mlの水で30分間沸騰させて抽出した。ペンタエリトリトールテトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロケイ皮酸)(PTTC)は、Aldrich Chemical Co(セントルイス、MO)から得られた。冷却後、粗水抽出物を最初に0.45μフィルタで濾過し、更に濾過して3000MWを超える材料を除去した。濾過した水抽出物を凍結乾燥して乾燥粉を調製し、蒸留水に溶解し、HPLC分析し、5本のフラクションを回収した。HPLCフラクションを凍結乾燥した。各フラクションを10mg/mlの溶液として再調整し、SVR細胞の増殖を阻害する能力を試験した。
【0040】
(ii)細胞増殖アッセイ
SVR細胞(1×104個)を24ウエルプレートで24時間培養された。更に培地を10mg/mlの濃度の精製抽出物を含有するDMEM培地に交換した。細胞を72時間薬剤に曝露し、Lamontagneらの方法に従って、コールターカウンター(Coulter、Hialeah、FL)で計測した(LaMontagneら,(2000)Am.J.Pathol.157,1937−1945)。濾過したマテ茶の水抽出物は、SVR内皮に対する強い抑制効果を示した。マテ茶の有効成分を解析するため、抽出液をHPLCで分析し、フラクションのSVR細胞増殖阻害能を評価した。最も強い抑制効果を示したフラクションは、フラクションT−2、T−5及びT−6であった。T−2、T−5及びT−6の構造を、陽子NMR及び質量分析により解析した(図1)。フラクションT−2が5−カフェオイルキナ酸(ネオクロロゲン酸)であり、フラクションT−5が3,5−ジカフェオイルキナ酸であり、フラクションT−6が3,4−ジカフェオイルキナ酸であることが明らかとなった。化合物のNMRスペクトルを以下に示す。
【0041】
(iii)一般の分光器及び分光計の方法
NMRスペクトルは、Bruker DRX 400分光計を用いて、400MHzで1H、13Cで100MHzで操作し、濃度勾配を設け、内部参照として残留する溶媒のピークを使用し、CD3ODで記録した。HRESIMSデータは、Bruker BioAPEX 30es(NCNPR、ミシシッピ大学)により得た。
【0042】
5−カフェオイルキナ酸14(5−CQ、T−2、ネオクロロゲン酸):
1H NMR(CD3OD,400MHz):d7.58(1H,d,J=15.9Hz,H−7’),7.05(1H,d,J=1.2Hz,H−2’),6.94(1H,dd,J=8.2,1.5Hz,H−6’),6.78(1H,d,J=8.2Hz,H−5’),6.31(1H,d,J=15.9Hz,H−8’),5.37(1H,brd,J=4.8Hz,H−5),4.18(1H,m,H−3),3.66(1H,dd,J=8.6,3.2Hz,H−4),2.17(3H,m,H−6ax,H−6eq,H−2eq),1.97(1H,dd,J=13.2,10.4Hz,H−2ax)。
13C NMR(CD3OD,100MHz):d178.4(C,C−7),169.2(C,C−9’),149.5(C,C−4’),147.0(CH,C−7’),146.8(C,C−3’),128.1(C,C−1’),123.0(CH,C−6’),116.6(CH,C−5’),115.9(CH,C−2’),115.2(CH,C−8’),75.5(C,C−1),75.0(CH,C−4),73.2(CH,C−5),68.3(CH,C−3),41.7(CH2,C−2),36.8(CH2,C−6)。
HRESIMS m/z377.0807[M+Na]+(計算値:C16H18O9Na,377.0843)。
【0043】
3,5−ジカフェオイルキナ酸14(3,5−DCQ、T−5):
1H NMR(CD3OD,400MHz):d7.62(1H,d,J=16.0Hz,H−7’又はH−7’’),,7.58(1H,d,J=16.0Hz,H−7’又はH−7’’),7.07(2H,brs,H−2’,−2’’),6.97(2H,m,H−6’,H−6’’),6.79(1H,d,J=8.0Hz,H−5’,H−5’’),6.35(1H,d,J=16.0Hz,H−8’又はH−8’’),6.27(1H,d,J=16.0Hz,H−8’又はH−8’’),5.44(1H,m,H−3),5.40(1H,brd,J=5.9Hz,H−5),3.99(1H,dd,J=7.4,3.1Hz,H−4),2.34−2.15(4H,m,H−2,H−6)。
13C NMR(CD3OD,100MHz):d177.5(C,C−7),168.5(C,C−9’又はC−9’’),168.3(C,C−9’又はC−9’’),149.7(2C,C−4’,C−4’’),147.4(CH,C−7’又はC−7’’),147.2(CH,C−7’又はC7’’),146.9(2C,C−3’,C−3’’),128.0(2C,C−1’,C−1’’),123.2(CH,C−6’又はC−6’’),123.1(CH,C−6’又はC−6’’),116.6(2CH,C−5’,C−5’’),115.7(1C each,d,C−2’’),115.5(1C each,d,C−2’),115.4(1C each,d,C−8’’),115.2(1C each,d,C−8’),74.8(C,C−1),72.6(CH,C−5),72.2(CH,C−3),70.7(CH,C−4),37.7(CH2,C−2),36.1(CH2,C−6)。
HRESIMS m/z539.1160[M+Na]+(計算値:C25H24O12Na,539.1116)。
【0044】
3,4−ジカフェオイルキナ酸14(3,4−DCQ、T−6):
1H NMR(CD3OD,400MHz):d7.60(1H,d,J=15.9Hz,H−7’又はH−7’’),7.52(1H,d,J=15.9Hz,H−7’又はH−7’’),7.03(1H,brs,H−2’又はH−2’’),7.01(1H,brs,H−2’又はH−2’’),6.91(2H,m,H−6’,H−6’’),6.75(1H,d,J=8.0Hz,H−5’,−5’’),6.29(1H,d,J=15.9Hz,H−8’又はH−8’’),6.20(1H,d,J=15.9Hz,H−8’又はH−8’’),5.64(1H,m,H−3),5.14(1H,dd,J=9.0,2.6Hz,H−4),4.39(1H,m,H−5),2.32−2.11(4H,m,H−2,H−6)。
13C NMR(CD3OD,100MHz):d176.8(C,C−7),168.7(C,C−9’又はC−9’’),168.4(C,C−9’又はC−9’’),149.7(2C,C−4’,C−4’’),147.7(2CH,C−7’,7’’),146.8(2C,C−3’,C−3’’),127.7(2C,C−1’,C−1’’),123.3(2CH,C−6’,C−6’’),116.6(2CH,C−5’,C−5’’),115.3(2CH,C−2’,C−2’’),114.8(2CH,C−8’,C−8’’),76.3(C,C−1),75.8(CH,C−4),69.4(CH,C−5),69.1(CH,C−3),39.4(CH2,C−2),38.4(CH2,C−6)。
【0045】
HPLCフラクションはそれぞれ、5−カフェオイルキナ酸(5−CQ、ネオクロロゲン酸)、3,5−ジカフェオイルキナ酸(3,5−DCQ)及び3,4−ジカフェオイルキナ酸(3,4−DCQ)であることが明らかとなった。HPLCによって単離した化合物の1H及び13C NMR分光器データより、3つのキナ酸誘導体であることが確認された。各代謝物質のカフェオイルエステル基の相対数は、各化合物の13C NMRスペクトルから得られる特徴的なエステルカルボニルカーボン共鳴の数から明らかとなった。5−CQ(ネオクロロゲン酸)の13C NMRスペクトルには、フリーのカルボン酸(C−7の場合178.4ppm)に関する1つの炭素共鳴、及び、1つのエステルカルボニル基(C−9’の場合169.2ppm)に関するカーボンシグナルが含まれていた。2つのジカフェオイルキナ酸誘導体が二置換であることは、2の独立したエステルカルボニル共鳴の存在、3,5−DCQ(C−9’の場合168.5、C−9’’の場合168.3ppm)、及び3,4−DCQ(C−9’の場合168.7、C−9’’の場合168.4)の13C NMRスペクトルから明らかとなった。カフェオイルエステル部分の置換パターンを、カフェオイル置換されたキナ酸誘導体の各々の1H NMRスペクトルの酸素ベアリングα−メチン陽子シグナルの特徴的なダウンフィールド化学シフト(1ppm以上)に基づいて確認した。全てが周知の化合物であったため、各代謝物質の詳細な構造解明の必要がなかった。更に、5−CQ(C16H18O9)及び3,5−DCQ(C25H24O12)それぞれの分子組成を、各化合物のナトリウムアダクトの高感度ESIMS分析により確認した。
【0046】
<実施例2>HPLC精製したマテ茶フラクションによる、精製20Sプロテアソーム活性の抑制
この実施例は、単離されたマテ茶のフラクション、及び精製20Sプロテアソームを使用した、インヴィトロでの抑制効果を分析する方法を記載する。精製20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を、Namら,(2001)J.Biol.Chem.276,13322−13330)の方法に従い測定した。簡潔には、精製した原核20Sプロテアソーム(0.5μg)を、所定濃度のマテ茶フラクションの有無において、20μMの蛍光ペプチド基質Suc−Leu−Leu−Val−Tyr−AMCと共に、アッセイ緩衝液(50mMのトリスHCl、pH7.5)100μL中、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、加水分解された7−アミド−4−メチル−クマリン(AMC)基の生成を、380nmの励起フィルタ及び460nm(バイオラド)の発光フィルタを有するマルチウエルプレートVersaFluorTM Fluorometerを使用して測定した。
【0047】
キナ酸エステルは、それらがポリヒドロキシル化した脂肪族環(図3)とエステル化するヒドロキシル化芳香族のカルボン酸を含むという点で、プロテアソーム阻害剤(−)−エピガロカテキン没食子酸エステル[(−)−EGCG]に類似する。この類似性、及びエピガロカテキン没食子酸エステルがプロテアソームの阻害剤であるという過去の知見(Renら,(2000)Oncogene 19,1419−1427、Namら,(2001)J.Biol.Chem.276,13322−13330))に基づき、フラクションT−2、T−5及びT−6のプロテアソーム機能阻害能を評価した。キナ酸エステルのプロテアソーム活性阻害能を解析するため、精製20Sプロテアソームを用いて蛍光基質活性アッセイを実施した。エピガロカテキン没食子酸(EGCG、Sigma Chemical社、St Louis、MO)を、プロテアソーム抑制の陽性コントロールとして使用した。プロテアソームを完全に抑制するために、100μMのEGCGを使用した。3,5−ジカフェオイルキナ酸(3,5−DCQ)の化合物を、3つの異なる濃度(20、100及び200μg/ml:それぞれ37、183及び366μMに対応)でプロテアソーム活性に関して試験した(図4)。3,5−DCQのIC50値は約64μMであった。対照的に、ネオクロロゲン酸では、精製20SプロテアソームのIC50値が〜564μMと非常に弱かった(図4)。T6(3,4−DCQ)フラクションの効果は3,5−DCQとネオクロロゲン酸の中間であり、100μMで、フラクションT−5、T−6及びT−2はそれぞれ、プロテアソームのキモトリプシン様活性を60、40及び21%阻害した。これらのデータは、試験した全ての構造的に関連する物質の中で3,5−DCQが最も大きなプロテアソーム阻害活性を有することを示唆する(図5)。
【0048】
更なる実験を行い、イノシトール−1,4,5−三リン酸塩3キナーゼ活性を阻害する有用な化合物としてカフェオイルエステルの役割を解析した。Mayrら,(2005)J.Biol.Chem.280:13229−13240(本発明に援用する)に説明されるようにアッセイを実施した。アッセイにおいて、PTTCは図6に示すようにIP−3キナーゼ活性の阻害活性を示した。本発明のケイ皮酸エステルは、同様の方法でIP−3キナーゼ活性を阻害すると考えられる。キナーゼ活性の抑制はHIVにおいて重要である。すなわち本発明の化合物は、それ単独で用いてもよく、あるいはHIV治療用の既存の治療方法との組み合わせで用いてもよい。
【0049】
<実施例3>HPLC精製されたマテ茶フラクションによる、Jurkat T細胞抽出物のプロテアソーム活性の抑制
この実施例では、Jurkat癌細胞系からの細胞抽出物を使用した、単離されたマテ茶のフラクションのインビボでの抑制効果を分析する方法を記載する。Jurkat T細胞の全体細胞抽出物(20μg)を、所定濃度のマテ茶フラクションの有無において、20μMの蛍光ペプチド基質Suc−Leu−Leu−Val−Tyr−AMCと共に、アッセイ緩衝液100mL中、37℃で60分間インキュベートした。加水分解AMCsを上記の通りに定量した。
【0050】
Jurkat細胞抽出物の26Sプロテアソーム活性を阻害する3,5−DCQ及びネオクロロゲン酸の能力を試験した。結果は20μg/ml(37μM)の3,5−DCQでプロテアソーム活性が〜50%阻害され、100μg/ml(183μM)でプロテアソーム活性が〜85%阻害され、100μM EGCGとほぼ同程度の効力であったたことを示す。このアッセイでは、ネオクロロゲン酸(5−CQ)はプロテアソーム活性を阻害する能力を有した(20μg/ml又は56μMの場合〜30%、及び100μg/ml又は282μMの場合〜75%)が、その効力は3,5−DCQのそれより弱かった。このデータは更に、3,5−DCQが26Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害できることを証明する。
【0051】
フラクションの細胞周期に対する抑制効果を解析するために、Jurkat細胞を各フラクションに曝露し、フローサイトメトリにより分析した。公知技術(Namら、2001)に従い、DNA含有に基づく細胞周期の解析を行った。細胞周期分布は、ヨウ化プロピジウム染色で試験した、G1、S、G2及びM期のDNAを含有する細胞のパーセンテージとして示した。
【0052】
3,5−DCQ及びネオクロロゲン酸のプロテアソーム抑制効果の程度は、2又は20μg/mlの各化合物の濃度でJurkat T細胞を24時間処理した結果、インビボにおける成長阻害活性と関係することが確認された。処理後、細胞を回収し、フローサイトメトリで解析した。2μg/mlの3,5−DCQによりJurkat細胞の細胞周期のG2/M期においてごくわずかな停止を生じさせ、一方20μg/mlで約10%までG2/Mの集団を増加させた。対照的に、同じ濃度のネオクロロゲン酸は効果を有しなかった。このデータは、3,5−DCQが無傷の腫瘍細胞のプロテアソームを阻害し、G2/M停止をもたらすことを示唆するものである。
【0053】
このマテ茶誘導体の検討により、アルコールを変化させ、並びに多くのエステル基を生成させることにより、プロテアソーム阻害剤が合成できることを示唆する。プロテアソーム阻害剤としてのポリケイ皮酸エステルの開発は、局所投与用及び全身投与用のプロテアソーム阻害剤の開発につながり、それらは局在グルココルチコイドの副作用を生じさせることなく炎症性障害及び癌形成障害の際に使用できる。
【0054】
当業者であれば、上記の実施例に基づいて本発明の更なる特徴及び効果を認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲により示される場合を除いて、本発明は具体的に示され記載された態様に限定されるものではない。本発明に記載した全ての刊行物及び参考文献は、それらの全開示内容が本発明に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】マテ茶から単離されるプロテアソーム阻害剤の化学構造を示す。
【図2】図1のプロテアソーム阻害剤の誘導体の化学構造を示す。
【図3A】プロテアソーム機能に対する、ネオクロロゲン酸と比較した3,5−ジカフェオイルキナ酸のインヴィトロでの効果を示す。
【図3B】プロテアソーム機能に対する、3,5−ジカフェオイルキナ酸及びネオクロロゲン酸のインビボでの効果を示す。
【図3C】Jurkat細胞の細胞周期進行における、プロテアソーム機能に対する、ネオクロロゲン酸(Neo)と比較した3,5−ジカフェオイルキナ酸(3,5−DCQ)のインヴィトロでの効果を示す。
【図4】SVR細胞の増殖に対するPTTCの効果を示す。
【図5】PTTCがキモトリプシン様プロテアソーム阻害剤を阻害することを示す。
【図6】GgIP3K−A/PTTCがキモトリプシン様プロテアソーム阻害剤を阻害することを示す。
【図7A】本発明のフェノール系酸化防止プロテアソーム阻害剤の典型の化学構造を表す。
【図7B】同上。
【図7C】同上。
【図7D】同上。
【図7E】同上。
【図7F】同上。
【技術分野】
【0001】
本発明はプロテアソームの調節による皮膚疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾癬は病因が未知の皮膚疾患である。痛み、痒み、手先の敏捷性の減少及び美容上の問題(例えば手、脚又は顔の顕著な病変)を特徴とする。他の皮膚症状(例えば加齢及び/又は光加齢によって生じるざ瘡、脂漏性皮膚炎及び皮膚傷害)も同様の症状を示し、それらに罹患する患者にしばしば苦痛を与える。
【0003】
今日、乾癬の治療法は、抑制的な治療法しか存在しない(非特許文献1)。既存の治療は、単に実質的に患者の仕事、気分又は個人的若しくは社会的生活を妨げない程度に乾癬の症状及び範囲を減少させるに留まっている。
【0004】
疾患の重症度に応じて局所的及び全身の乾癬の治療手段を選択できる。乾癬の局所的治療には、緩和剤、表皮剥離剤、コールタール、アントラリン、中程度〜強力な薬効の副腎皮質ステロイド及びカルポトリエン(calpotriene)が使用される。全身治療は、局所的治療が効果を発揮しなかった患者で、肉体的、社会的又は経済的に不能となっている乾癬患者に対して適用される。通常、全身治療では紫外線B照射による光線治療が適用される。あるいは、光化学療法を適用してもよく、それは紫外線A光線治療(PUVA)、メトトレキサート、エトレチナート、全身性副腎皮質ステロイド及びシクロスポリンと、光増感剤のメトキサレンとの組合せを使用する。しかしながら、これらの局所治療及び全身治療は、有効性が左右され易く、また望ましくない副作用のおそれもある。同様の治療方法が加齢及び/又は光老化によって生じるざ瘡、脂漏性皮膚炎及び皮膚傷害に対しても試みられたが、同様のごく限られた効果に留まっていた。
【非特許文献1】Greavesら(1995),Drug Therapy,332:581−588
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上より、現在利用可能な局所的若しくは全身治療が有する欠点を克服する、有効な皮膚疾患の治療に対するニーズが存在する。より具体的には、加齢及び/又は光老化によって生じる乾癬、ざ瘡、脂漏性皮膚炎及び皮膚傷害の有効な治療方法であって、現在利用可能な局所的若しくは全身治療と同様の欠点を有さない方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は1つには、マテ茶から単離されるケイ皮酸エステル化合物がプロテアソーム調節活性、特にプロテアソーム阻害活性を示すという発見に基づく。これらの化合物は、局所的又は全身的にプロテアソーム活性と関連した障害の治療に使用できる。例えば、単離されたケイ皮酸エステル化合物は様々な皮膚疾患(例えば乾癬)に対して局所的に使用できる。当該ケイ皮酸エステル化合物はまた、異常なプロテアソーム機能に関連する障害(例えば皮膚疾患(乾癬、ざ瘡など))、特定の前ガン症状(例えば骨髄異形成症状)、並びに癌(例えば白血病、リンパ腫、肉腫、上皮癌又はHIV)に対して全身的に使用できる。
【0007】
すなわち、本発明の一態様は、プロテアソーム活性の阻害に有効な量のケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物に関する。ケイ皮酸エステル化合物とは、芳香族基に炭素数3のカルボン酸基が結合した構造を有する。一実施態様では、ケイ皮酸エステル化合物は、構造Iとして以下に示す一般構造を有する。
【化1】
(構造I)
式中、Wはメチル基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX5は水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rはケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。
【0008】
他の実施形態では、ケイ皮酸エステル化合物は構造IIとして以下に示す一般構造を有する。
【化2】
(構造II)
式中、Wはメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX4は水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rはケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。
【0009】
ケイ皮酸エステル化合物の一例は、カフェオイルエステル中のエステルの数が約1〜6、又は3〜5の範囲のカフェオイルエステルである。エステルの数はケイ皮酸エステル化合物の活性に影響を及ぼし、例えばプロテアソーム活性の抑制効果を増加する若しくは高める。カフェオイルエステルの例としては、限定されないが、5−カフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸及びそれらの類似体又は誘導体が挙げられる。
【0010】
別の態様では、本発明は、局所投与用の薬学的に許容できる担体との組合せでカフェオイルエステルを含有する組成物に関する。カフェオイルエステルは、皮膚疾患(例えば乾癬、ざ瘡、ニキビ及び湿疹)の治療に有効な量で存在する。組成物において使用するカフェオイルエステルは、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び類似体その又は誘導体であってもよく、約0.01%〜10%の濃度で存在してもよい。
【0011】
本発明の別の態様では、上記のケイ皮酸エステル化合物に関連する化合物が、プロテアソーム調節活性を示す場合がありうる。特に本発明は、プロテアソーム活性の調節に使用できるフェノール系酸化防止剤に関する。より具体的には、フェノール系酸化防止剤のファミリーがCiba Specialty Chemicals社製のIRGANOX(登録商標)の使用が本発明に含まれる。
【0012】
更に他の態様では、本発明はプロテアソーム活性を阻害するのに効果的な量のケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物を投与することによる、プロテアソーム活性と関連する障害の治療方法、すなわちプロテアソーム活性の抑制により障害を治療する方法に関する。ケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物は、皮膚疾患(例えば乾癬、ざ瘡、ニキビ及び湿疹)の治療に局所的に適用することができる。あるいは、ケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物は、異常なプロテアソーム活性に関連する障害(例えば皮膚疾患(乾癬、ざ瘡など)、自己免疫不全(例えば狼瘡、関節炎及び多発性硬化症)、前ガン症状(例えば骨髄異形成症状)、癌(例えば膀胱ガン、白血病、リンパ腫、肉腫、上皮癌)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及び移植拒否の治療のために全身的に投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の具体的実施形態を以下に記載し、本発明に係る組成物の構造、機能、製造方法、並びに本発明の方法及び組成物の使用に関する全体的な説明を行う。本発明に具体的に記載されている方法及び組成物は非限定的な例示的実施態様であり、当業者であれば本発明の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的実施形態と関連して例示若しくは記載されている特徴を、他の実施態様における特徴と組み合わせてもよい。かかる修正変更は本発明の範囲内に含まれると解される。
【0014】
1つの態様では、本発明は、プロテアソーム活性の調節にケイ皮酸エステル化合物を使用することに関する。ケイ皮酸とは、5員環又は6員環の芳香族基(例えばフェニル基、フリル基、チエニル基、ナフチル基、ピリジル基、ピロリル基、ピラゾリル基及びキノリニル基)と結合する炭素原子数3のカルボン酸である。
【0015】
植物エキスは、化学的予防剤、血管新生阻害剤及び抗腫瘍剤の主要な供給源である。これらは、少量の強力な薬剤と、ヒト用食品の大部分を形成する化合物とを含んでなる。これらの化合物が悪性の進行を防止する機構は完全に理解されていない。構造−機能相関にとり不可欠な構造的特徴は、十分なインビトロアッセイなしで決定するのは困難であるため、当該機構に関する理解のなさにより、同種の化合物の単離及び合理的な設計が困難となる。
【0016】
従来、Ras形質転換した内皮細胞を用いて、抗腫瘍若しくは血管新生阻害、又はその両方の活性を有する天然の候補化合物を単離するスクリーニングが行われていた(Arbiserら、(1998)Mol.Med.4,376−383、Arbiserら,(1999)J.Am.Acad.Dermatol.40,925−929)。このアッセイを用いて、部分的に精製された抽出物を植物マテ茶(Ilex paraguayensis)から得ていた。これらの抽出物を化学的に分析した結果、ケイ皮酸エステル化合物、特にキナ酸のカフェオイルエステルを含有することを見出した。
【0017】
マテ茶から単離したケイ皮酸エステル化合物は、構造Iで表される。
【化3】
(構造I)
式中、Wはメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX5は水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rはケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。
【0018】
一実施態様では、炭素数3の鎖又は芳香環上の水素原子は、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエステル基、アミノ基、アミド基からなる群から選択される基で置換してもよい。
【0019】
マテ茶から単離される他のケイ皮酸エステル化合物は、下記の構造IIで表される。
【化4】
(構造II)
式中、Wはメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX4は水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rはケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。
【0020】
ケイ皮酸エステル化合物の1つの例は、ヒドロキシ酸基を含んでなるカフェオイルエステルである。図1は、5−カフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸及びその類似体又は誘導体を含むがこれに限定されないカフェオイルエステルの若干の例を示す。ケイ皮酸エステル化合物の他の構造類似体及び誘導体を図2に示す。これらの類似体及び誘導体は、ルーチン的な化学合成法を使用して、これらの構造中の官能基を修飾して調製できる。これらの修飾はケイ皮酸エステル化合物の活性を増加又は強化するために使用でき、例えば化合物の抑制効果を増加させる。
【0021】
本発明の他の一実施態様では、本発明のケイ皮酸エステル化合物に構造的に関連するフェノール系酸化防止剤を、プロテアソーム活性の調節に使用できる。本発明のケイ皮酸エステル化合物に関連であるフェノール系酸化防止剤化合物の一例は、Ciba Specialty Chemicals社製のフェノール系酸化防止剤のIRGANOX(登録商標)ファミリーである。本発明に使用できるIRGANOX(登録商標)化合物の幾つかの構造を図7A−7Fに示す。例えば、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1010、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)245 DW、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1035、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)565、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1076、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1425、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1098、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1520、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1135、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1726、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1330、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)5057、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)245及びCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)HP 2225が挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 215、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 612、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 225及びCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1171などのフェノール系酸化防止剤の組合せであってもよい。
【0022】
プロテアソーム活性調節物質としての特定のチオ協働的(thiosynergistic)酸化防止剤(例えばCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)PS800及びCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)PS802)の使用は、本発明に包含される。
【0023】
本発明の化合物は、プロテアソーム活性を阻害することが見出されている。プロテアソームは、すべての真核生物細胞に共通に含まれる、大環状又は円筒状のマルチコンポーネント複合体である(Tanakaら(1995)New Biol.4:173−187)。プロテアソームは、それらのタンパク質分解活性により幾つかの重要な細胞機能に関与しており、例えばDNA修復、細胞周期進行、シグナル形質導入、転写、腫瘍形成、分化した組織の成長及び萎縮、代謝経路における基質の移動、異常タンパク質の選択的な除去、並びに抗原のプロセシング及び抗原提示(Finleyら(1991)Annu Rev Cell Biol.7:25−69)に関与する。プロテアソームは、様々な機能に自身を適応させるために広範囲に修飾を受ける。それは例えば個々のサブユニットの追加、置換及び再構築によって行われる。20Sプロテアソームの存在により触媒的分解力がプロテアソームに付与され、またその特徴はかなり解明されている。20Sプロテアソームの核は、7つの異なるα及びβサブユニットの各々2つのコピーが、4つ積み重なった(α7β7β7α7)環状構造を採っている。
【0024】
通常の老化現象により、身体が徐々に変異若しくはミスフォールディングタンパク質を適切に分解する能力を喪失することを示す証拠が蓄積しつつある。酸化ストレスが、細胞内タンパク質の酸化及びニトロ化を通じたこのタンパク質分解プロセスに関与すると考えられ、それによりタンパク質が架橋結合及び凝集しやすくなる。かかる凝集タンパク質はプロテアソームによる分解に対してより抵抗性を示すようになり、プロテアソームの機能の阻害にもつながりうる。プロテアソームの活性減少は、プロテアソーム自体の酸化によってより直接的に生じることもある(Kellerら(2000)Mech.Ageing Dev.113:61−70)。ミスフォールディングタンパク質の凝集は、異常な免疫活性化及びアポトーシスによる細胞死をもたらしうるプロテアソームの多くの変化を誘発しうる。
【0025】
プロテアソームの機能不全は、鍵となる炎症性調節物質(例えばJak3キナーゼ及びIκB)の調節による炎症プロセスにおいて重要な役割を果たしうる(Kwonら、(1998)Diabetes,47:583−91、Rivett,(2000)J.Pept.Sci.,6:478−88、Yuら、(1997)J.Biol.Chem.,272:14017−20)。
【0026】
以下の実施例に示すように、カフェオイルエステル3,5−ジカフェオイルキナ酸が、精製された20Sプロテアソーム及びJurkat T細胞抽出物中の26Sのプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害することを見出した。更に、3,5−ジカフェオイルキナ酸によるJurkat T細胞の完全な処理によって、細胞周期のG2/Mフェーズにおける進行停止が生じた。対照的に、5−カフェオイルキナ酸(ネオクロロゲン酸)として同定されたフラクションには、非常に微弱なプロテアソーム阻害活性しか存在せず、またJurkat T細胞のG2/M停止を誘導できなかった。この発見は、プロテアソーム活性がケイ皮酸エステル部分の数に依存しうることを示唆するものである。ケイ皮酸テトラエステル(ペンタエリトリトールテトラキス、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロケイ皮酸、PTTC)(多数のエステルを有する)をコントロールとして用い、プロテアソームに対して活性を有することを見出した。同様の実験により本発明のカフェオイルエステルを試験し、プロテアソームに抑制作用を及ぼすことを見出した。更に、そのデータは、2つのエステル基を有するカフェオイルエステルが1つのエステル基を有するカフェオイルエステルより高い阻害活性を有することを示す。すなわち、エステルの個数によりケイ皮酸エステル化合物の活性が変化し、例えばプロテアソーム活性の抑制効果が増加又は改善される。一実施態様では、カフェオイルエステルは、約1〜6、又は3〜5個にエステル基の数を増加させることにより修飾することができる。
【0027】
本発明の化合物は、多くの皮膚病学的な障害の治療に使用でき、例えば悪性疾患血管肉腫、血管内皮腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫及びカポージ肉腫、及び非悪性疾患又は症状、乾癬、リンパ管新生、幼年期の血管腫、ストウジ−ウェーバー症候群、尋常性疣贅、神経線維腫症、結節状硬化症、化膿性肉芽腫、劣性ジストロフィ表皮水泡症、静脈潰瘍、ざ瘡、ニキビ、湿疹、接触感染性の軟属腫、脂漏性角化症及び光線性角化症などの治療に使用できる。本発明の化合物で治療できる他の障害としては、限定されないが、自己免疫不全(例えば狼瘡、関節炎、多発性硬化症)、前ガン症状(例えば骨髄異形成症状)、癌(例えば膀胱癌、白血病、リンパ腫、肉腫、上皮癌、HIV及び移植拒否)などが挙げられる。
【0028】
本発明の化合物を含有する医剤組成物は、具体的な用途に基づいて調製できる。局所的、部分的又は全身的に投与することができる。これらの組成物には、防腐剤、酸化防止剤、抗生物質、免疫抑制薬、並びに通常の組織を処理した場合に有害な効果を及ぼさない他の生物学的若しくは薬学的に有効な薬剤を含有してもよい。
【0029】
局所若しくは全身投与用の組成物は通常、不活性な希釈剤を含んでなる。非経口、皮内、皮下、局所投与用の溶液又は懸濁液は、以下の成分が含まれてもよい。すなわち無菌の希釈剤(例えば注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒)、抗菌剤(例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸又はナトリウム重亜硫酸塩)、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸)、緩衝液(例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩)及び浸透圧調整剤(例えば塩化ナトリウム又はブドウ糖)が挙げられる。非経口製剤はガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は多回投与用バイアル中に収容してもよい。
【0030】
一実施態様では、全身投与用担体を使用してもよい。それにより当該阻害剤は非経口的又は経腸的に全身投与してもよい。当該組成物は、注入ポンプ(例えばインシュリン又は、化学療法剤を特異的な器官又は腫瘍に輸送するために使用するタイプ)、注射、又は制御放出性若しくは徐放性製剤を使用したデポジションにより投与してもよい。好ましい全身投与の実施態様では、胃を移動する間に薬剤を保護する必要がある場合、消化管内用の担体中に薬剤を含有させて経口投与する。
【0031】
本発明の化合物は、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの担体中に含有させ、注射によって全身投与してもよく、又はサリドマイドのような阻害剤の場合、錠剤又はカプセル形態で経口的に全身投与してもよい。錠剤又はカプセルには、以下の成分のいずれか又はそれと同様の性質を有する化合物を含有させてもよく、例えば結合剤(例えば微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン)、添加剤(例えば澱粉又はラクトース)、崩壊剤(例えばアルギン酸、プリモゲル又は穀物澱粉)、潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム又はステロテス(Sterotes))、又は滑剤(glidant)(例えばコロイド状二酸化ケイ素)などが挙げられる。投与単位の形態がカプセルである場合、上記のタイプの材料に加えて液体担体(例えば脂肪油)を含有させてもよい。更に投与単位の形態中に、投与単位の物理的形態を改変する他の各種材料(例えばシュガーコーティング、シェラック又は他の腸溶性剤等)を含有させてもよい。
【0032】
他の実施形態では、部分投与若しくは局所投与用の担体を使用してもよい。食塩水若しくはPBSなどの担体、軟膏若しくはゲル、経皮パッチ若しくは包帯、又は制御放出若しくは徐放性製剤中に阻害剤を含有させ、部分的若しくは局所的に投与してもよい。部分的投与は、傷害部位への注射、又は傷害部位への局所的噴霧によって実施できる。例えば阻害剤を包帯に吸収させ、傷害部位に直接適用してもよく、又はその部位における縫合箇所又はステープルを施した箇所から放出してもよい。制御放出又は徐放性製剤への化合物の添加は公知技術である。
【0033】
局所投与の場合、本発明の化合物を担体と混合して、投与部位に、所望の活性を生じさせるのに十分な有効投与量を投与できる。例えば、局所用の組成物を皮膚に塗布し、乾癬などの疾患を治療できる。当該担体は軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、エアゾール、坐薬、パッド又はゲル化したスティックの形態であってもよい。軟膏又はゲルとして使用する場合の局所組成物は、有効量の血管形成阻害剤を、緩衝生理食塩水、鉱油、植物油(例えば穀物又は落花生油)、ワセリン、Miglyol 182、アルコール溶液、又はリポソーム若しくはリポソーム様生成物などの眼科的に許容できる添加剤中に含有する。
【0034】
制御放出の一態様では、当該組成物は、選択された部位で制御期間にわたり血管形成阻害剤を放出する生分解性ポリマー性のインプラントと組み合わせて投与される。生分解性ポリマー物質の好ましい例としては、ポリアンヒドライド、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレン酢酸ビニル、並びにそれらの共重合体及び混合物が挙げられる。好ましい非生分解性ポリマー物質の例としては、エチレン酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。これらはマイクロ球体、マイクロカプセル、錠剤、ディスク、シート及び繊維として標準技術を使用して調製することができる。
【0035】
投与計画は、最適な効能(例えば治療的若しくは予防的効能)が得られるように適宜調節してもよい。例えば、単一のボーラス投与を行ってもよく、時間ごとに幾つかに分割した投与を行ってもよく、又は治療状況の緊急性に合わせて投与量を適宜増減させてもよい。特に投与の簡便化及び均一性の観点から、投与単位の形態は非経口投与用の製剤が有利である。本明細書で使用される投与単位の形態とは、治療対象の哺乳類患者への一体的投与量として適する物理的に別々の単位であって、各単位が必要な医薬用担体との組合せで所望の治療的効果を得るために必要な量の活性化合物を含有するものを指す。本発明の単位投与形態の詳細は、(a)活性化合物の固有の特徴、及び得られる特定の治療的若しくは予防的効果、(b)個人の感受性を治療する場合の、かかる活性化合物の合成に係る従来技術に存在する固有の限界、により直接的若しくは間接的に左右される。
【0036】
本発明の薬剤の典型的な治療的若しくは予防的有効量としては、限定されないが、担体中の組成物に対して約0.01〜10%又は1〜5%の範囲である。投与量は、軽減しようとする症状のタイプ及び重症度に応じて変化させてもよい点に留意する必要がある。更には、各々の患者ごとに、個々の必要性、並びに組成物を投与する若しくは組成物の投与を監督する専門医の判断に従って、時間経過と共に、投与計画を具体的に調整すべきであり、また本発明に示されるその投与量の範囲は典型的なものであり、特許請求された組成物の技術的範囲又は実施を限定するものではないことに留意すべきである。
【0037】
以下の実施例は本発明の原理及び実施を例示する。本発明の技術的思想の範囲内における多数の更なる実施態様は当業者にとって自明である。
【実施例】
【0038】
<実施例1>マテ茶からのプロテアソーム阻害剤の単離及び分析
本実施例では、マテ茶からプロテアソーム抑制活性を有する化合物を単離するのに必要な方法及び材料を示し、単離された化合物の効果を測定するための方法及びアッセイの説明を行う。
【0039】
(i)マテ茶エキスの調製:
粉末化マテ茶(Chimarrao Laranjeiras Puraerva Cascavel、ブラジル)(100g)を500mlの水で30分間沸騰させて抽出した。ペンタエリトリトールテトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロケイ皮酸)(PTTC)は、Aldrich Chemical Co(セントルイス、MO)から得られた。冷却後、粗水抽出物を最初に0.45μフィルタで濾過し、更に濾過して3000MWを超える材料を除去した。濾過した水抽出物を凍結乾燥して乾燥粉を調製し、蒸留水に溶解し、HPLC分析し、5本のフラクションを回収した。HPLCフラクションを凍結乾燥した。各フラクションを10mg/mlの溶液として再調整し、SVR細胞の増殖を阻害する能力を試験した。
【0040】
(ii)細胞増殖アッセイ
SVR細胞(1×104個)を24ウエルプレートで24時間培養された。更に培地を10mg/mlの濃度の精製抽出物を含有するDMEM培地に交換した。細胞を72時間薬剤に曝露し、Lamontagneらの方法に従って、コールターカウンター(Coulter、Hialeah、FL)で計測した(LaMontagneら,(2000)Am.J.Pathol.157,1937−1945)。濾過したマテ茶の水抽出物は、SVR内皮に対する強い抑制効果を示した。マテ茶の有効成分を解析するため、抽出液をHPLCで分析し、フラクションのSVR細胞増殖阻害能を評価した。最も強い抑制効果を示したフラクションは、フラクションT−2、T−5及びT−6であった。T−2、T−5及びT−6の構造を、陽子NMR及び質量分析により解析した(図1)。フラクションT−2が5−カフェオイルキナ酸(ネオクロロゲン酸)であり、フラクションT−5が3,5−ジカフェオイルキナ酸であり、フラクションT−6が3,4−ジカフェオイルキナ酸であることが明らかとなった。化合物のNMRスペクトルを以下に示す。
【0041】
(iii)一般の分光器及び分光計の方法
NMRスペクトルは、Bruker DRX 400分光計を用いて、400MHzで1H、13Cで100MHzで操作し、濃度勾配を設け、内部参照として残留する溶媒のピークを使用し、CD3ODで記録した。HRESIMSデータは、Bruker BioAPEX 30es(NCNPR、ミシシッピ大学)により得た。
【0042】
5−カフェオイルキナ酸14(5−CQ、T−2、ネオクロロゲン酸):
1H NMR(CD3OD,400MHz):d7.58(1H,d,J=15.9Hz,H−7’),7.05(1H,d,J=1.2Hz,H−2’),6.94(1H,dd,J=8.2,1.5Hz,H−6’),6.78(1H,d,J=8.2Hz,H−5’),6.31(1H,d,J=15.9Hz,H−8’),5.37(1H,brd,J=4.8Hz,H−5),4.18(1H,m,H−3),3.66(1H,dd,J=8.6,3.2Hz,H−4),2.17(3H,m,H−6ax,H−6eq,H−2eq),1.97(1H,dd,J=13.2,10.4Hz,H−2ax)。
13C NMR(CD3OD,100MHz):d178.4(C,C−7),169.2(C,C−9’),149.5(C,C−4’),147.0(CH,C−7’),146.8(C,C−3’),128.1(C,C−1’),123.0(CH,C−6’),116.6(CH,C−5’),115.9(CH,C−2’),115.2(CH,C−8’),75.5(C,C−1),75.0(CH,C−4),73.2(CH,C−5),68.3(CH,C−3),41.7(CH2,C−2),36.8(CH2,C−6)。
HRESIMS m/z377.0807[M+Na]+(計算値:C16H18O9Na,377.0843)。
【0043】
3,5−ジカフェオイルキナ酸14(3,5−DCQ、T−5):
1H NMR(CD3OD,400MHz):d7.62(1H,d,J=16.0Hz,H−7’又はH−7’’),,7.58(1H,d,J=16.0Hz,H−7’又はH−7’’),7.07(2H,brs,H−2’,−2’’),6.97(2H,m,H−6’,H−6’’),6.79(1H,d,J=8.0Hz,H−5’,H−5’’),6.35(1H,d,J=16.0Hz,H−8’又はH−8’’),6.27(1H,d,J=16.0Hz,H−8’又はH−8’’),5.44(1H,m,H−3),5.40(1H,brd,J=5.9Hz,H−5),3.99(1H,dd,J=7.4,3.1Hz,H−4),2.34−2.15(4H,m,H−2,H−6)。
13C NMR(CD3OD,100MHz):d177.5(C,C−7),168.5(C,C−9’又はC−9’’),168.3(C,C−9’又はC−9’’),149.7(2C,C−4’,C−4’’),147.4(CH,C−7’又はC−7’’),147.2(CH,C−7’又はC7’’),146.9(2C,C−3’,C−3’’),128.0(2C,C−1’,C−1’’),123.2(CH,C−6’又はC−6’’),123.1(CH,C−6’又はC−6’’),116.6(2CH,C−5’,C−5’’),115.7(1C each,d,C−2’’),115.5(1C each,d,C−2’),115.4(1C each,d,C−8’’),115.2(1C each,d,C−8’),74.8(C,C−1),72.6(CH,C−5),72.2(CH,C−3),70.7(CH,C−4),37.7(CH2,C−2),36.1(CH2,C−6)。
HRESIMS m/z539.1160[M+Na]+(計算値:C25H24O12Na,539.1116)。
【0044】
3,4−ジカフェオイルキナ酸14(3,4−DCQ、T−6):
1H NMR(CD3OD,400MHz):d7.60(1H,d,J=15.9Hz,H−7’又はH−7’’),7.52(1H,d,J=15.9Hz,H−7’又はH−7’’),7.03(1H,brs,H−2’又はH−2’’),7.01(1H,brs,H−2’又はH−2’’),6.91(2H,m,H−6’,H−6’’),6.75(1H,d,J=8.0Hz,H−5’,−5’’),6.29(1H,d,J=15.9Hz,H−8’又はH−8’’),6.20(1H,d,J=15.9Hz,H−8’又はH−8’’),5.64(1H,m,H−3),5.14(1H,dd,J=9.0,2.6Hz,H−4),4.39(1H,m,H−5),2.32−2.11(4H,m,H−2,H−6)。
13C NMR(CD3OD,100MHz):d176.8(C,C−7),168.7(C,C−9’又はC−9’’),168.4(C,C−9’又はC−9’’),149.7(2C,C−4’,C−4’’),147.7(2CH,C−7’,7’’),146.8(2C,C−3’,C−3’’),127.7(2C,C−1’,C−1’’),123.3(2CH,C−6’,C−6’’),116.6(2CH,C−5’,C−5’’),115.3(2CH,C−2’,C−2’’),114.8(2CH,C−8’,C−8’’),76.3(C,C−1),75.8(CH,C−4),69.4(CH,C−5),69.1(CH,C−3),39.4(CH2,C−2),38.4(CH2,C−6)。
【0045】
HPLCフラクションはそれぞれ、5−カフェオイルキナ酸(5−CQ、ネオクロロゲン酸)、3,5−ジカフェオイルキナ酸(3,5−DCQ)及び3,4−ジカフェオイルキナ酸(3,4−DCQ)であることが明らかとなった。HPLCによって単離した化合物の1H及び13C NMR分光器データより、3つのキナ酸誘導体であることが確認された。各代謝物質のカフェオイルエステル基の相対数は、各化合物の13C NMRスペクトルから得られる特徴的なエステルカルボニルカーボン共鳴の数から明らかとなった。5−CQ(ネオクロロゲン酸)の13C NMRスペクトルには、フリーのカルボン酸(C−7の場合178.4ppm)に関する1つの炭素共鳴、及び、1つのエステルカルボニル基(C−9’の場合169.2ppm)に関するカーボンシグナルが含まれていた。2つのジカフェオイルキナ酸誘導体が二置換であることは、2の独立したエステルカルボニル共鳴の存在、3,5−DCQ(C−9’の場合168.5、C−9’’の場合168.3ppm)、及び3,4−DCQ(C−9’の場合168.7、C−9’’の場合168.4)の13C NMRスペクトルから明らかとなった。カフェオイルエステル部分の置換パターンを、カフェオイル置換されたキナ酸誘導体の各々の1H NMRスペクトルの酸素ベアリングα−メチン陽子シグナルの特徴的なダウンフィールド化学シフト(1ppm以上)に基づいて確認した。全てが周知の化合物であったため、各代謝物質の詳細な構造解明の必要がなかった。更に、5−CQ(C16H18O9)及び3,5−DCQ(C25H24O12)それぞれの分子組成を、各化合物のナトリウムアダクトの高感度ESIMS分析により確認した。
【0046】
<実施例2>HPLC精製したマテ茶フラクションによる、精製20Sプロテアソーム活性の抑制
この実施例は、単離されたマテ茶のフラクション、及び精製20Sプロテアソームを使用した、インヴィトロでの抑制効果を分析する方法を記載する。精製20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を、Namら,(2001)J.Biol.Chem.276,13322−13330)の方法に従い測定した。簡潔には、精製した原核20Sプロテアソーム(0.5μg)を、所定濃度のマテ茶フラクションの有無において、20μMの蛍光ペプチド基質Suc−Leu−Leu−Val−Tyr−AMCと共に、アッセイ緩衝液(50mMのトリスHCl、pH7.5)100μL中、37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、加水分解された7−アミド−4−メチル−クマリン(AMC)基の生成を、380nmの励起フィルタ及び460nm(バイオラド)の発光フィルタを有するマルチウエルプレートVersaFluorTM Fluorometerを使用して測定した。
【0047】
キナ酸エステルは、それらがポリヒドロキシル化した脂肪族環(図3)とエステル化するヒドロキシル化芳香族のカルボン酸を含むという点で、プロテアソーム阻害剤(−)−エピガロカテキン没食子酸エステル[(−)−EGCG]に類似する。この類似性、及びエピガロカテキン没食子酸エステルがプロテアソームの阻害剤であるという過去の知見(Renら,(2000)Oncogene 19,1419−1427、Namら,(2001)J.Biol.Chem.276,13322−13330))に基づき、フラクションT−2、T−5及びT−6のプロテアソーム機能阻害能を評価した。キナ酸エステルのプロテアソーム活性阻害能を解析するため、精製20Sプロテアソームを用いて蛍光基質活性アッセイを実施した。エピガロカテキン没食子酸(EGCG、Sigma Chemical社、St Louis、MO)を、プロテアソーム抑制の陽性コントロールとして使用した。プロテアソームを完全に抑制するために、100μMのEGCGを使用した。3,5−ジカフェオイルキナ酸(3,5−DCQ)の化合物を、3つの異なる濃度(20、100及び200μg/ml:それぞれ37、183及び366μMに対応)でプロテアソーム活性に関して試験した(図4)。3,5−DCQのIC50値は約64μMであった。対照的に、ネオクロロゲン酸では、精製20SプロテアソームのIC50値が〜564μMと非常に弱かった(図4)。T6(3,4−DCQ)フラクションの効果は3,5−DCQとネオクロロゲン酸の中間であり、100μMで、フラクションT−5、T−6及びT−2はそれぞれ、プロテアソームのキモトリプシン様活性を60、40及び21%阻害した。これらのデータは、試験した全ての構造的に関連する物質の中で3,5−DCQが最も大きなプロテアソーム阻害活性を有することを示唆する(図5)。
【0048】
更なる実験を行い、イノシトール−1,4,5−三リン酸塩3キナーゼ活性を阻害する有用な化合物としてカフェオイルエステルの役割を解析した。Mayrら,(2005)J.Biol.Chem.280:13229−13240(本発明に援用する)に説明されるようにアッセイを実施した。アッセイにおいて、PTTCは図6に示すようにIP−3キナーゼ活性の阻害活性を示した。本発明のケイ皮酸エステルは、同様の方法でIP−3キナーゼ活性を阻害すると考えられる。キナーゼ活性の抑制はHIVにおいて重要である。すなわち本発明の化合物は、それ単独で用いてもよく、あるいはHIV治療用の既存の治療方法との組み合わせで用いてもよい。
【0049】
<実施例3>HPLC精製されたマテ茶フラクションによる、Jurkat T細胞抽出物のプロテアソーム活性の抑制
この実施例では、Jurkat癌細胞系からの細胞抽出物を使用した、単離されたマテ茶のフラクションのインビボでの抑制効果を分析する方法を記載する。Jurkat T細胞の全体細胞抽出物(20μg)を、所定濃度のマテ茶フラクションの有無において、20μMの蛍光ペプチド基質Suc−Leu−Leu−Val−Tyr−AMCと共に、アッセイ緩衝液100mL中、37℃で60分間インキュベートした。加水分解AMCsを上記の通りに定量した。
【0050】
Jurkat細胞抽出物の26Sプロテアソーム活性を阻害する3,5−DCQ及びネオクロロゲン酸の能力を試験した。結果は20μg/ml(37μM)の3,5−DCQでプロテアソーム活性が〜50%阻害され、100μg/ml(183μM)でプロテアソーム活性が〜85%阻害され、100μM EGCGとほぼ同程度の効力であったたことを示す。このアッセイでは、ネオクロロゲン酸(5−CQ)はプロテアソーム活性を阻害する能力を有した(20μg/ml又は56μMの場合〜30%、及び100μg/ml又は282μMの場合〜75%)が、その効力は3,5−DCQのそれより弱かった。このデータは更に、3,5−DCQが26Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害できることを証明する。
【0051】
フラクションの細胞周期に対する抑制効果を解析するために、Jurkat細胞を各フラクションに曝露し、フローサイトメトリにより分析した。公知技術(Namら、2001)に従い、DNA含有に基づく細胞周期の解析を行った。細胞周期分布は、ヨウ化プロピジウム染色で試験した、G1、S、G2及びM期のDNAを含有する細胞のパーセンテージとして示した。
【0052】
3,5−DCQ及びネオクロロゲン酸のプロテアソーム抑制効果の程度は、2又は20μg/mlの各化合物の濃度でJurkat T細胞を24時間処理した結果、インビボにおける成長阻害活性と関係することが確認された。処理後、細胞を回収し、フローサイトメトリで解析した。2μg/mlの3,5−DCQによりJurkat細胞の細胞周期のG2/M期においてごくわずかな停止を生じさせ、一方20μg/mlで約10%までG2/Mの集団を増加させた。対照的に、同じ濃度のネオクロロゲン酸は効果を有しなかった。このデータは、3,5−DCQが無傷の腫瘍細胞のプロテアソームを阻害し、G2/M停止をもたらすことを示唆するものである。
【0053】
このマテ茶誘導体の検討により、アルコールを変化させ、並びに多くのエステル基を生成させることにより、プロテアソーム阻害剤が合成できることを示唆する。プロテアソーム阻害剤としてのポリケイ皮酸エステルの開発は、局所投与用及び全身投与用のプロテアソーム阻害剤の開発につながり、それらは局在グルココルチコイドの副作用を生じさせることなく炎症性障害及び癌形成障害の際に使用できる。
【0054】
当業者であれば、上記の実施例に基づいて本発明の更なる特徴及び効果を認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲により示される場合を除いて、本発明は具体的に示され記載された態様に限定されるものではない。本発明に記載した全ての刊行物及び参考文献は、それらの全開示内容が本発明に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】マテ茶から単離されるプロテアソーム阻害剤の化学構造を示す。
【図2】図1のプロテアソーム阻害剤の誘導体の化学構造を示す。
【図3A】プロテアソーム機能に対する、ネオクロロゲン酸と比較した3,5−ジカフェオイルキナ酸のインヴィトロでの効果を示す。
【図3B】プロテアソーム機能に対する、3,5−ジカフェオイルキナ酸及びネオクロロゲン酸のインビボでの効果を示す。
【図3C】Jurkat細胞の細胞周期進行における、プロテアソーム機能に対する、ネオクロロゲン酸(Neo)と比較した3,5−ジカフェオイルキナ酸(3,5−DCQ)のインヴィトロでの効果を示す。
【図4】SVR細胞の増殖に対するPTTCの効果を示す。
【図5】PTTCがキモトリプシン様プロテアソーム阻害剤を阻害することを示す。
【図6】GgIP3K−A/PTTCがキモトリプシン様プロテアソーム阻害剤を阻害することを示す。
【図7A】本発明のフェノール系酸化防止プロテアソーム阻害剤の典型の化学構造を表す。
【図7B】同上。
【図7C】同上。
【図7D】同上。
【図7E】同上。
【図7F】同上。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアソーム活性の阻害にとり有効量のケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物。
【請求項2】
前記ケイ皮酸エステル化合物がプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ケイ皮酸エステル化合物が
【化1】
(構造I)
で表される、請求項1記載の組成物。
(式中、Wがメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX5が水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rがケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。)
【請求項4】
前記ケイ皮酸エステル化合物が
【化2】
(構造II)
で表される、請求項1記載の組成物。
(式中、Wがメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX4が水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rがケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。)
【請求項5】
前記ケイ皮酸エステル化合物がカフェオイルエステルである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記カフェオイルエステル中のエステルの数が約1〜6である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記カフェオイルエステルが5−カフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、及びそれらの類似体又は誘導体からからなる群から選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
局所輸送に適する担体を更に含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
全身輸送に適する担体を更に含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
薬学的に許容できる局所投与用の担体との組合せでカフェオイルエステルを含有する組成物であって、前記カフェオイルエステルが、乾癬、ざ瘡、ニキビ及び湿疹からなる群から選択される皮膚疾患の治療に効果的な投与量で存在する組成物。
【請求項11】
前記カフェオイルエステルが3,5−ジカフェオイルキナ酸、及びその類似体若しくは誘導体である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
約0.01%〜10%の濃度でカフェオイルエステルを含有する、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
プロテアソーム活性と関連する障害の治療方法であって、有効量のケイ皮酸エステル化合物を含む組成物を投与することを含んでなり、前記ケイ皮酸エステル化合物がプロテアソームと相互作用してプロテアソーム活性を阻害し、前記プロテアソーム活性の阻害により障害が治療される方法。
【請求項14】
前記ケイ皮酸エステル化合物がプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ケイ皮酸エステル化合物が
【化3】
(構造I)
で表される、請求項13記載の組成物。
(式中、Wがメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX5が水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rがケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。)
【請求項16】
前記ケイ皮酸エステル化合物が
【化4】
(構造II)
で表される、請求項13記載の方法。
(式中、Wがメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX4が水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rがケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。)
【請求項17】
前記ケイ皮酸エステル化合物がカフェオイルエステルである、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記カフェオイルエステル中のエステルの数が約1〜6である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記カフェオイルエステルが、5−カフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3、4、ジカフェオイルキナ酸、並びにその類似体若しくは誘導体からなる群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記プロテアソーム活性と関連する障害が、乾癬、リンパ管起源、幼年期の血管腫、ストウジ−ウェーバー症候群、尋常性疣贅、神経線維腫症、結節状硬化症、化膿性肉芽腫、劣性ジストロフィ表皮水泡症、静脈潰瘍、ざ瘡、ニキビ、湿疹、接触感染性の軟属腫、脂漏性角化症、光線性角化症、血管肉腫、血管内皮腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫及びカポージ肉腫からなる群から選択される皮膚の障害である、請求項13記載の方法。
【請求項21】
前記障害が乾癬である、請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記障害がざ瘡である、請求項13記載の方法。
【請求項23】
前記プロテアソーム活性と関連する障害が自己免疫不全、前ガン症状、癌及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)からなる群から選択される全身性障害である、請求項13記載の方法。
【請求項24】
プロテアソーム活性と関連する障害の治療方法であって、有効量の酸化防止化合物を含有する組成物を投与することを含んでなり、前記酸化防止化合物がプロテアソームと相互作用してプロテアソーム活性を阻害し、前記プロテアソーム活性の阻害により障害が治療される方法。
【請求項25】
前記酸化防止化合物がフェノール系の酸化防止剤を含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化防止剤が、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1010、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)245 DW、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1035、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)565、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1076、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1425、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1098、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1520、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1135、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1726、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1330、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)5057、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)245、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)HP 2225、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 215、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 612、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 225及びCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1171からなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項1】
プロテアソーム活性の阻害にとり有効量のケイ皮酸エステル化合物を含有する組成物。
【請求項2】
前記ケイ皮酸エステル化合物がプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ケイ皮酸エステル化合物が
【化1】
(構造I)
で表される、請求項1記載の組成物。
(式中、Wがメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX5が水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rがケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。)
【請求項4】
前記ケイ皮酸エステル化合物が
【化2】
(構造II)
で表される、請求項1記載の組成物。
(式中、Wがメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX4が水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rがケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。)
【請求項5】
前記ケイ皮酸エステル化合物がカフェオイルエステルである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記カフェオイルエステル中のエステルの数が約1〜6である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記カフェオイルエステルが5−カフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、及びそれらの類似体又は誘導体からからなる群から選択される、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
局所輸送に適する担体を更に含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
全身輸送に適する担体を更に含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
薬学的に許容できる局所投与用の担体との組合せでカフェオイルエステルを含有する組成物であって、前記カフェオイルエステルが、乾癬、ざ瘡、ニキビ及び湿疹からなる群から選択される皮膚疾患の治療に効果的な投与量で存在する組成物。
【請求項11】
前記カフェオイルエステルが3,5−ジカフェオイルキナ酸、及びその類似体若しくは誘導体である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
約0.01%〜10%の濃度でカフェオイルエステルを含有する、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
プロテアソーム活性と関連する障害の治療方法であって、有効量のケイ皮酸エステル化合物を含む組成物を投与することを含んでなり、前記ケイ皮酸エステル化合物がプロテアソームと相互作用してプロテアソーム活性を阻害し、前記プロテアソーム活性の阻害により障害が治療される方法。
【請求項14】
前記ケイ皮酸エステル化合物がプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ケイ皮酸エステル化合物が
【化3】
(構造I)
で表される、請求項13記載の組成物。
(式中、Wがメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX5が水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rがケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。)
【請求項16】
前記ケイ皮酸エステル化合物が
【化4】
(構造II)
で表される、請求項13記載の方法。
(式中、Wがメチレン基、アルキル基、メチレン基、アミン基、アシル基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子からなる群から選択され、X1からX4が水素原子、ハロゲン、水酸基、エーテル基、アルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、チオエーテル基、アミノ基、アミド基及びOR基からなる群から独立に選択され、Rがケイ皮酸エステル、ジヒドロケイ皮酸エステル及び水酸基である。)
【請求項17】
前記ケイ皮酸エステル化合物がカフェオイルエステルである、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記カフェオイルエステル中のエステルの数が約1〜6である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記カフェオイルエステルが、5−カフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3、4、ジカフェオイルキナ酸、並びにその類似体若しくは誘導体からなる群から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記プロテアソーム活性と関連する障害が、乾癬、リンパ管起源、幼年期の血管腫、ストウジ−ウェーバー症候群、尋常性疣贅、神経線維腫症、結節状硬化症、化膿性肉芽腫、劣性ジストロフィ表皮水泡症、静脈潰瘍、ざ瘡、ニキビ、湿疹、接触感染性の軟属腫、脂漏性角化症、光線性角化症、血管肉腫、血管内皮腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫及びカポージ肉腫からなる群から選択される皮膚の障害である、請求項13記載の方法。
【請求項21】
前記障害が乾癬である、請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記障害がざ瘡である、請求項13記載の方法。
【請求項23】
前記プロテアソーム活性と関連する障害が自己免疫不全、前ガン症状、癌及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)からなる群から選択される全身性障害である、請求項13記載の方法。
【請求項24】
プロテアソーム活性と関連する障害の治療方法であって、有効量の酸化防止化合物を含有する組成物を投与することを含んでなり、前記酸化防止化合物がプロテアソームと相互作用してプロテアソーム活性を阻害し、前記プロテアソーム活性の阻害により障害が治療される方法。
【請求項25】
前記酸化防止化合物がフェノール系の酸化防止剤を含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化防止剤が、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1010、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)245 DW、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1035、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)565、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1076、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1425、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1098、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1520、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1135、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1726、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1330、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)5057、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)245、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)HP 2225、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 215、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 612、Ciba(登録商標)IRGANOX(登録商標)B 225及びCiba(登録商標)IRGANOX(登録商標)1171からなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【公表番号】特表2008−540682(P2008−540682A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512563(P2008−512563)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/019591
【国際公開番号】WO2006/127525
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507282026)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/019591
【国際公開番号】WO2006/127525
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507282026)
【Fターム(参考)】
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