説明

プロテアーゼ活性決定のための、装置および方法。

本発明は、プロテアーゼ活性を決定するための、組成物及び装置に関する。本発明の組成物は、少なくとも一つの、開裂配列を融合したレポータータンパク質、および開裂配列を固体支持体に結合するためのリンカーを含む。また、プロテアーゼ活性の決定およびプロテアーゼの特徴付けのための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序文
本願は、2004年12月3日に出願された米国仮特許出願第60/632,931号、および2005年9月12日に出願された米国特許出願第11/224,585号に基づく優先権の利益を主張し、それらの内容は、参照により、全体として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞、組織、器官、生物およびそれらの抽出物は、既知およびまだ特徴付けられていない種々のプロテアーゼを含む。それらのプロテアーゼの多くは、天然資源または組み換え生物からの、所望のタンパク質の発現、抽出および精製を妨げる。薬学的研究または医学的応用のためのタンパク質の特注製品は、抽出物中のプロテアーゼの存在によって害され得る。タンパク質精製中のタンパク質分解の排除は困難であり、プロテアーゼの存在についての認識の欠如、および精製しているタンパク質のプロテアーゼ特異的開裂の性質によってさらに複雑となる。
【0003】
プロテアーゼ活性検出のための分析方法は、技術的に知られている。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいた方法は、米国特許出願第10/477,044号および第10/343,977号に開示されている。これらの分析方法は、プロテアーゼ開裂リンカーを介して結合した二つの蛍光タンパク質を使用し、ここで、リンカーの開裂はFRET値の減少をもたらす。さらに米国特許第6,680,178号は、プロテアーゼのような酵素の一次構造や広範な特異性を同定するための、アミノ酸配列に共有結合した7−アミノ−4−カルバモイルメチル−クマリンのような蛍光性部位を開示する。技術的な必要性は急を要し、プロテアーゼの種類を同定するために使用するだけではなく、プロテアーゼ活性を定量するために使用できる、費用効率が高い決定方法が試みられている。本発明は、この長年にわたる切実な要求を満たすものである。
【0004】
発明の要約
本発明は、プロテアーゼの決定のための組成物である。組成物は、少なくとも一つの、プロテアーゼ開裂配列と融合したレポータータンパク質、およびプロテアーゼ開裂配列を固体支持体に結合するためのリンカーから構成される。一態様は、少なくとも一つの本発明の組成物および固体支持体から構成される試験装置を包含する。他の態様は、組成物と固体支持体のアレイを包含する。さらなる態様では、本発明の装置は、プロテアーゼ活性の決定をするための方法に使用される。その方法は、活性決定のために、プロテアーゼを前記装置と接触させること、およびレポータータンパク質を使用することを含む。さらにその上の態様では、本発明の装置は、プロテアーゼの特徴付けのための方法に使用される。その方法は、プロフィールを作成するためにプロテアーゼを前記装置と接触させること、およびプロテアーゼを特徴付ける選択された特徴に対するプロフィールを評価することを含む。ベクターおよび宿主細胞だけでなく、本発明の組成物をコードする単離された核酸もまた提供される。
【発明の開示】
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、プロテアーゼの特徴付けだけではなく、プロテアーゼ活性の検出および定量のための、費用効率の高い組成物および分析方法に関する。本発明の組成物は、少なくとも一つの、プロテアーゼ開裂配列と融合したレポータータンパク質、およびプロテアーゼ開裂配列を固体支持体に結合するリンカーから構成される。特に本発明の態様は、三つの構成要素の全て(例えば、レポータータンパク質、プロテアーゼ開裂配列およびリンカー)がタンパク質性であり、キメラまたはハイブリッドタンパク質を生成するために、組み換え単シストロン性mRNAから翻訳される。本発明の組成物を使用する分析方法は、タンパク質組成物をプロテアーゼに接触させること、および固体支持体から放出または結合して留まっているレポータータンパク質の、存在および/または量を決定することによって実施される。
【0006】
そのような分析方法では、レポータータンパク質によって生み出されるシグナルの強度は、プロテアーゼの活性に比例する。例えば、特定のプロテアーゼ開裂配列を特異的に認識するプロテアーゼは、本発明の組成物をすぐに開裂し、そして高レベルのレポータータンパク質を放出する。これに対して、低い特異性を有する、または特定のプロテアーゼ開裂配列を認識しないプロテアーゼは、それぞれ、固体支持体から低レベルのレポータータンパク質を放出するか、またはレポータータンパク質を放出しない。したがって、本分析方法は、プロテアーゼの存在、活性のレベルおよび基質特異性の検出のために有用である。さらに、複数の異なるプロテアーゼ開裂配列を分析に使用するとき、未知のプロテアーゼの同一性を確定することができる。その上本分析方法は、特定のプロテアーゼまたはプロテアーゼ群に対する、高度の特異性を有するプロテアーゼ阻害剤の同定に使用することができる。
【0007】
本発明に関する使用において、レポータータンパク質は、その存在またはその活性の両方によってすみやかに検出可能なタンパク質であり、結果として検出可能なシグナルの生成をもたらす。それらの活性に基づいて検出されるレポータータンパク質は、これらに限定されないが、β−ガラクトシダーゼ(Nolan, et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2603-2607)、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT; Gorman, et al. (1982) Mol. Cell Biol. 2:1044; Prost, et al. (1986) Gene 45:107-111)、β−ラクタマーゼ、β−グルクロニダーゼ、およびアルカリホスファターゼ(Berger, et al. (1988) Gene 66:1-10; Cullen, et al. (1992) Methods Enzymol. 216:362-368)のようなレポーター酵素が挙げられる。レポーター酵素の存在および存在量を、基質上におけるその酵素作用の結果もたらされる、検出可能な反応生成物の形成によって決定できる。本発明の方法は、反応生成物の量の決定手段を提供し、ここで、生成した反応生成物の量または基質の残留量は、レポーター酵素活性の量に関係している。β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼおよびβ−ラクタマーゼのようないくつかの酵素にたいして、既知の蛍光発生基質を、酵素がそのような基質を検出可能な蛍光性生成物に変換することを可能とすることに利用できる。
【0008】
種々の生物発光、化学発光および自家発光のタンパク質はまた、本願に記述の発光レポータータンパク質のように、本分析方法において有用である。発光するために補因子を必要とする典型的な発光レポータータンパク質は、これらに限定されないが、ホタルのフォチナス・ピラリスからの発光酵素(De Wet, et al. (1987) Mol. Cell. Biol. 7:725-737)、蛍光補酵素としてフラビンを必要とする、ビブリオ・フィシェリ菌株Y−1からの黄色蛍光タンパク質(Baldwin, et al. (1990) Biochemistry 29:5509-15)、渦鞭毛藻シンビオディニウムSPからのタンパク質に結合しているペリジニン−クロロフィル(Morris, et al. (1994) Plant Mol. Biol. 24:673:77)、およびシネココッカスのような海洋シアノバクテリアからのフィコビリタンパク質、例えばフィコエリトリンおよびフィコシアニン(Wilbanks, et al. (1993) J. Biol. Chem. 268:1226-35)が挙げられる。
【0009】
利便性および効率性のために、本発明の特定の態様は、自家発光レポータータンパク質である発光タンパク質の使用を包含する。本願における使用では、自家発光レポータータンパク質は、適当な電磁放射線により励起されたときに蛍光発光することができ、および発光するために補因子または基質を必要としないタンパク質である。これは、天然または人工の両方のアミノ酸配列を有する蛍光発光性タンパク質を含む。本願発明に使用するための適切な自家発光レポータータンパク質は、クラゲの種であるオワンクラゲ(Aequoria victoria)に由来する、ポリペプチドの緑色蛍光タンパク質(GFP)群などを含む。
【0010】
GFP突然変異体を作り出すために、種々の有用なオワンクラゲ関連のGFPが、自然発生のGFPのアミノ酸配列を改変することによって設計されてきた(Prasher, et al. (1992) Gene 111:229-233; Heim, et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12501-04; U.S. Patent No. 5,625,048; PCT/US95/14692)。有用なGFP突然変異体のいくつかの基本分類は、約511nmに発光ピークを有するが近紫外線395nmの励起ピークを欠く赤色移動GFP、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアノ蛍光タンパク質(CFP)、サファイア、および黄色蛍光タンパク質(YFP)を含む。例えば、Pollok and Heim (1999) Trends Cell Biol. 9:57-60などを参照。他の適切なGFP変異体は、Val68LeuおよびGln69Lys変異を有する、pH非感受性YFPタンパク質である(Miyawaki, et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:2135-2140)。一方、野生型GFPは、pH6.0以上の使用に適しており、このYFPタンパク質を酸性分析条件下で役立てることができる。ウミシイタケRenilla reniformisおよび Phialidium gregariumからの発光性タンパク質がまた考えられる。(1982) Photochem. Photobiol. 35:803-808; Levine, et al. (1982) Comp. Biochem. Physiol. 72B:77-85などを参照。これらの自家発光レポータータンパク質のためのコーディング配列は、技術的に既知であり、本願に開示されたタンパク質組成物の組み換え技術的な生産に使用できる。
【0011】
特に本発明の態様では、レポータータンパク質は、共有結合的にも非共有結合的にも、固体支持体と結合または相互作用しない。他の態様では、レポータータンパク質は、単量体およびプロテアーゼ抵抗性である。プロテアーゼ抵抗性を、目的の単離したレポータータンパク質を、一つまたはそれ以上のプロテアーゼに触れさせること、およびプロテアーゼの存在および非存在においてレポータータンパク質が同等の量の活性を生成するかどうかを決定することによって決定できる。他の方法として、プロテアーゼ抵抗性を、SDS−PAGE分析によって評価できる。
【0012】
完全な組み換えGFPは、238個のアミノ酸長である。しかしながら、8個のC末端アミノ酸残基は、X線結晶学によっては見ることができないタンパク質の可動部分に相当するため、GFPの結晶構造解析では、N末端の230個のアミノ酸残基のみが示される。
このC末端部位のアミノ酸置換がないと、C末端尾部は、種々のプロテアーゼによるタンパク質分解的開裂の影響を受けやすい。本願に例示されたように、野生型オワンクラゲGFPの、C末端の6−10個のアミノ酸残基を除き、これらのアミノ酸を、GFP自家蛍光に影響がないプロテアーゼ開裂配列に置換した。典型的なC末端アミノ酸残基を欠くGFPは、配列番号:1として本願に提示されている。したがって、本発明の一態様は、C末端の6、8、または10個のアミノ酸残基を欠くGFPタンパク質である。他の態様では、自家蛍光レポータータンパク質は、配列番号:1のアミノ酸配列を持ち、またはタンパク質配列の全長にわたって、少なくとも85%、90%、95%、97%または99%のアミノ酸配列の同一性を、配列番号:1のアミノ酸配列と共有する。
【0013】
本発明との関連における使用において、プロテアーゼ開裂配列は、特定のプロテアーゼまたはプロテアーゼ群によって認識または開裂される、オリゴペプチド(例えば、10から30個のアミノ酸残基)基質である。本発明に従って、少なくとも一つのプロテアーゼ開裂配列は、レポータータンパク質と融合または発現可能に結合されている。
本願における使用において、融合または発現可能に結合とは、連続的なタンパク質配列を作り出すために、レポータータンパク質およびプロテアーゼ開裂配列が、ペプチド結合によって結合さるという意味を意図する。本発明のプロテアーゼ分析において、プロテアーゼ開裂配列の有効濃度を増加するために、特定の態様は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上の、レポータータンパク質にタンデムに融合されたプロテアーゼ開裂配列の使用を包含する。
【0014】
いくつかの態様では、プロテアーゼ開裂配列は、レポータータンパク質のC末端に融合される。他の態様では、プロテアーゼ開裂配列は、レポータータンパク質のN末端に融合される。レポータータンパク質がGFPであり、およびプロテアーゼ開裂配列がN末端に融合されているとき、GFPは、C末端の6から10個のアミノ酸残基を、含むことまたは欠くことができる。レポータータンパク質がGFPであり、プロテアーゼ開裂配列がC末端に融合されているとき、GFPは、固体支持体からのGFPの放出が、プロテアーゼ開裂配列の開裂およびGFP配列の非開裂を経るために、C末端の6から10個のアミノ酸残基を欠くことが望ましい。
【0015】
本分析方法に従ってプロテアーゼ活性の検出に使用できる、典型的なプロテアーゼ開裂配列は、これらに限定されないが、表1に記載されたプロテアーゼ開裂配列が挙げられる。
【0016】
【表1】

【0017】
他の適切なプロテアーゼ開裂配列は、技術的に既知であり、プロテアーゼおよびそれらの同種の開裂配列の包括的なリストが、ワールドワイドウェブにあるMEROPSデーターベースから利用可能である(see Rawlings, et al. (2002) Nucl. Acids Res. 30:343-346)。
【0018】
プロテアーゼ開裂配列を、天然、人工または選択的に、例えば二つまたはそれ以上のアミノ酸残基の組み合わせが構成する任意のペプチドライブラリーから得られると考えられ、特定のオリゴペプチドの完全な配列はあらかじめ設定されていない。人工または任意のオリゴペプチドを、特定のプロテアーゼによって開裂することができる配列の範囲を線引きするために、分析において使用することができる。
【0019】
プロテアーゼ開裂配列を、プロテアーゼ開裂配列を固体支持体に結合するためのリンカーに、結合または発現可能に結合する。本発明との関連における使用において、リンカーは、いくつかの態様において、固体支持体に共有結合的に結合する化学的に反応性の部位である。他の態様では、リンカーは、固体支持体への強い非共有結合を提供する(例えば、抗体抗原相互作用)。結合が共有結合か非共有結合かに関係なく、使用されるリンカーは、固体支持体からの極微量の浸出(例えば、ゆっくりとした放出)が必要である。適切なリンカーは、望ましくはプロテアーゼ抵抗性であり、これらに限定されないが、アフィニティー標識(例えば、マルトース結合領域、ビオチン、FLAG(登録商標)など)、糖質(例えば、翻訳後にタンパク質組成物に組み入れるかまたは結合させた)、抗体のFCフラグメント、または化学的に活性なアミノ酸が挙げられる。特定の態様では、リンカーは、一つまたはそれ以上のシステイン、cys−gly−cysまたはポリヒスチジンのような、化学的に活性なアミノ酸である。望ましくは、タンパク質性のリンカーは、ペプチド結合によって、プロテアーゼ開裂配列に、発現可能なように結合されている(例えば、組み換え発現によって)。他の方法として、タンパク質性および非タンパク質性のリンカーを、従来のFmocまたはTbocの化学反応を使用することにより、プロテアーゼ開裂配列に化学的に結合できる。
【0020】
プロテアーゼ開裂配列のレポータータンパク質への結合に依存して、リンカーを、C−またはN−末端において、プロテアーゼ開裂配列に結合または発現可能なように結合できる。例えば、順位は以下に挙げることができる:NH−レポータータンパク質 −> プロテアーゼ開裂配列 −> リンカー−COOH、またはNH−リンカー −> プロテアーゼ開裂配列 −> レポータータンパク質−COOH。前述の順位の典型的な組成物は、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20として、本願に開示されている。これらの典型的な組成物の各々は、非特異的または特異的なプロテアーゼ開裂配列、およびリンカーの次にGFPを含む。配列番号:17は、プロテアーゼ開裂配列SVPSGCG (配列番号:21)の一つのコピーおよび5ヒスチジン残基リンカーを有し、配列番号:18は、タバコモザイクウイルスプロテアーゼ開裂配列ENLYFQG (配列番号:3)の三つのタンデムのコピーおよびC−末端システイン残基を有し、配列番号:19は、Xa因子プロテアーゼ開裂配列IEGR (配列番号:16)の二つのタンデムのコピーおよびC−末端システイン残基を有し、および配列番号:20は、トロンビンプロテアーゼ開裂配列LVPRGS(配列番号:10)の三つのタンデムのコピーおよびC−末端システイン残基を有している。
【0021】
レポータータンパク質、プロテアーゼ開裂配列およびリンカーは、お互いに速やかに隣接することができ、または短い、例えば1−10個のアミノ酸残基の、プロテアーゼ抵抗性のスペーサーを介して結合ができると考えられる。スペーサーは、例えばアラニン、バリン、イソロイシンまたはポリグリシン部位のようなアミノ酸である。他のスペーサーが、技術的に既知である。例えば、メチオニル豚成長ホルモン[[Met]−pGH(1−46)−IGF−II]融合タンパク質の、酵素H64Aスブチリシンによる部位特異的開裂を改良するために、開裂配列に対して、連続の柔軟で構造化されていない、スペーサーペプチドN−末端を取り込むことができる(Polyak (1997) Protein Eng. 10:615-619)。
【0022】
リンカーの固体支持体への共有結合は、使用するリンカーに依存する。例えば、リンカーがスルフヒドリル基を含んでいるとき(例えば、システインアミノ酸残基)、マレイミドコートした固体支持体を、本分析方法の組成物の固定化に使用できる。同様に、ヒドラジン表面が、過ヨウ素酸塩で活性化された糖質または糖化タンパク質(例えば、抗体のFcフラグメント)を、固体支持体に共有結合的に連結するために使用される。さらに、ポリヒスチジン残基の金属親和性支持体への結合は、技術的によく確立している。生体分子の固体支持体への共有結合的な結合のための他の適切な化学反応は、技術的によく知られており、本願で使用することができる。強い非共有の結合は、例えば、固体支持体に固定された同種の抗体またはFabフラグメントに結合する抗原のような、親和性標識を使用することにより、達成することができる。
【0023】
固体支持体には種々の形態があり、これらに限定されないが、メンブランフィルター(例えば、セルロースディスク)、ビーズ(ラテックス、ガラス、常磁性粒子、前活性化アフィニティなどが挙げられる)、スライド・ガラスおよびシリコン・ウエハー(例えば、マイクロチップを用いたマイクロアレイ解析で使用される)、マルチウェルプレートなどが挙げられる。固体支持体の選択は、分析されるプロテアーゼ、器具類の互換性およびロボットシステムに依存する。正確な分析のために、ピペット操作、洗浄およびシグナル検出を容易に自動化するという理由で、マイクロアレイのスライドもしくはウエハーまたはポリスチレンマルチウェルプレート(例えば、96−、384−および1536−ウェル)が特に好ましい。他の利点としては、複数のサンプルを同時分析する能力、および多数の異なる検出システム(例えば、比色、蛍光および化学発光)に関する互換性が挙げられる。さらに、伝達可能な固相デバイス、例えば、96ウェルプレートのウェルに対応する、96の突出部、突起物、またはピンを有するふたが、商業的に利用可能である(例えば、POLYSORP(登録商標)またはMAXISORP(登録商標)表面で使用できるNUNC−IMMUNO(登録商標)TSP)。前記96ウェルプレートのふたのピンを、本発明の組成物により被覆することができ、複数のプロテアーゼ反応を同時に実施することができる。
さらに、複数のプロテアーゼ開裂配列を含む複合的なふたを、単独の96ウェルプレートに保持された試料中に浸すことができる。
【0024】
したがって、本発明の態様の一つは、少なくとも一つの結合した本発明の組成物(例えば、レポータータンパク質、プロテアーゼ開裂配列およびリンカー)を有する固体支持体から構成されるプロテアーゼ活性試験装置を包含する。当業者によって認識できるように、種々のプロテアーゼ開裂配列およびレポータータンパク質の組み合わせは、組成物のアレイを生成することによって予測することができる。したがって、本発明の特定の態様は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、10、12、16、24、32、48、96、384、1536またはそれ以上の並べられた(arrayed)異なる組成物を有する固体支持体から構成される試験装置をさらに包含する。さらに、各組成物の複数の濃度を使用できる。
【0025】
実例として、96ウェルプレートまたはそのふたの12の縦の列を、8つの横の列で反復して異なる組成物(例えば、同じレポータータンパク質およびリンカーごとに、12の異なるプロテアーゼ開裂配列)を用いて被覆でき、ここで8つの横の列の各ウェルは、異なる濃度の組成物を有する(例えば、横列1は一倍希釈、横列2は二倍希釈、横列3は五倍希釈など)。他の方法として、各縦列および横列を、異なるプロテアーゼ開裂配列を含む組成物を用いて被覆することができる(例えば、96の異なる組成物)。装置は、各プロテアーゼ群(例えば、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼおよび金属プロテアーゼ)に対するプロテアーゼ開裂配列の特異性、群の個々の要素に対するプロテアーゼ開裂配列(例えば、カスパーゼ1から14に対する基質特異性)を持つことができ、または使用者のニーズに基づく特注設計ができると考えられる。
【0026】
本発明の組成物は、組み換えDNA技術または化学的合成によって生産することができ、またはその組み合わせにより生産することができる。組み換えDNA技術によって生産されたタンパク質組成物は、通常タンパク質をコードする核酸から発現される。前記核酸を、制限酵素に基づくクローニングのような従来型の方法論によって単離することができる。例えば、異なるタンパク質またはペプチド配列をコードするDNAフラグメントを、従来型の技術、例えば、連結反応のための平滑末端または粘着末端(stagger−ended)の使用、適切な末端を得るための制限酵素の消化、必要に応じて突出末端を埋めること、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結反応に従って、インフレームで結合することができる。他の方法として、単離核酸分子を、自動化DNA合成またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を含む従来型の技術によって合成できる。遺伝子フラグメントのPCR増幅を、キメラ遺伝子配列を生み出すために、続いて熱処理および再増幅が行われる、二つの連続的な遺伝子フラグメント間の相補的な突出部を生じさせるアンカープライマーの使用により実施できる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel, et al. John Wiley & Sons, 1992参照)。
【0027】
プロテアーゼ開裂配列およびタンパク質性リンカーが短いペプチドのとき、これらのペプチドをコードする核酸を、レポータータンパク質を増幅するために使用する5’または3’アンカープライマーに組み込むことができる(例えば、アドオンPCR)。本願における使用において、単離された核酸は、単離された核酸分子、または分子に関連して共通に見つかる他の核酸を実質的に有さない核酸分子の意味を意図する。典型的な本発明のタンパク質組成物をコードする単離された核酸、例えば配列番号:17−20は、各々配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24および配列番号:25として本願に説明される。
【0028】
種々のレポータータンパク質の突然変異体を生み出すために、例えば0.1mMMnClおよび不安定な核酸濃度を用いた、原型のポリヌクレオチドのPCRのエラー率を増加することによる、部位特異的変異導入法またはランダム変異導入法を使用することができる。米国特許出願第08/337,915号、米国特許第5,625,048号またはPCT/US95/14692号を参照。
【0029】
所望のタンパク質の組み換え生産物は、組み換え発現ベクターから直接発現した所望のタンパク質、または精製もしくは宿主細胞からの所望のタンパク質の分泌促進を容易にするために、タグまたはシグナル配列のような非相同タンパク質配列を用いて発現した所望のタンパク質を典型的に含む。特定の宿主細胞において(例えば、哺乳類の宿主細胞)、発現および/または所望のタンパク質の分泌を、非相同のシグナル配列の使用を介して増加することができる。
【0030】
組み換え発現ベクターは、発現に適した形態で所望のタンパク質をコードする核酸を通常含み、すなわち組み換え発現ベクターは、発現される核酸に動作可能なように結合した、一またはそれ以上の調節塩基配列を含む。発現ベクターおよび組み換え発現ベクターは、本願では交互に使用され、そして組み換え発現ベクターとの関係で、発現可能な結合は、目的の核酸が核酸の発現をもたらす方法で、調整塩基配列に結合する意味を意図する(例えば、生体外の転写/翻訳系または宿主細胞内)。調節塩基配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御因子を含むことを意図する(例えば、ポリアデニル化シグナル)。前記調節塩基配列は、例えば、Goeddel (1990) Methods Enzymol. 185:3-7に記載されている。前記調節塩基配列は、多種類の宿主細胞中の核酸の直接の構造的な発現、および特定の宿主細胞に限る核酸の直接の発現(例えば、組織特異的調節塩基配列)を含む。
形質転換させるための宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような要素に依存する発現ベクターの設計は、当業者によって認識される。
【0031】
組み換え発現ベクターを、原核または真核細胞中の、所望のタンパク質の発現のために設計できる。例えば、本発明のタンパク質組成物を、大腸菌(E.coli)のような細菌性細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロ・ウイル発現ベクターを使用して)、酵母細胞、または哺乳類細胞中で発現することができる。適切な宿主細胞は、Goeddel (1990) supraにおいてさらに議論されている。他の方法として、組み換え発現ベクターを、例えばT7プロモーター調節塩基配列およびT7ポリメラーゼを使用して、生体外で転写および翻訳できる。
【0032】
原核細胞中のタンパク質の発現は、ほとんどの場合、融合または非融合の両方のタンパク質の発現を誘導する、構造性または誘導性のプロモーターを含むベクターを用いて、大腸菌中で実施されている。適切な誘導性大腸菌発現ベクターの例としては、pTrc (Amann, et al. (1988) Gene 69:301-315)およびpETld(Studier, et al. (1990) Methods Enzymol. 185:60-89)が挙げられる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存する。pET11dベクターからの標的遺伝子発現は、共発現したウイルスRNAポリメラーゼ(T7gn1)によって仲介される、T7gn10−lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV5プロモーターの転写制御下において、T7gn1遺伝子を含む常在プロファージからの、宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)によって提供される。
【0033】
本発明の範囲内に、酵母発現ベクターがまた含まれる。Saccharomyces cerevisiaeのような酵母中の発現のためのベクターの例として、pYepSec1(Baldari, et al. (1987) EMBO J. 6:229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultz, et al. (1987) Gene 54:113-123)、pYES2(INVITROGEN(登録商標) Corp., San Diego, CA)、およびpicZ(INVITROGEN(登録商標) Corp., San Diego, CA)が挙げられる。
【0034】
他の方法として、本発明のタンパク質組成物を、バキュロ・ウイルス発現ベクターを使用して、昆虫細胞中で発現することができる。昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)中で培養するタンパク質の発現のために使用できるバキュロ・ウイルスベクターとして、pAcシリーズ(Smith, et al. (1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165) およびpVLシリーズ(Lucklow and Summers (1989) Virology 170:31-39) のベクターが挙げられる。
【0035】
さらに、本タンパク質組成物をコードする核酸を、哺乳類発現ベクターを使用して、哺乳類細胞中で発現することができる。哺乳類発現ベクターの例として、pCDM8(Seed (1987) Nature 329:840) および pMT2PC (Kaufman, et al. (1987) EMBO J. 6:187-195)を含む、既知の組み換えウイルスベクターのいずれか一つが挙げられる。哺乳類細胞に使用するとき、ベクター発現の制御機能は、しばしばウイルス調節エレメントによって提供される。例えば、共通に使用されるプロモーターは、ポリオーマ・ウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロ・ウイルスおよびシミアン・ウイルス40に由来する。他の原核および真核細胞の両方にとっての適切な発現系については、Sambrook, et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd ed. の16および17章、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NYを参照。
【0036】
組み換え哺乳類発現ベクターはまた、特定の細胞種選択的に、核酸の直接発現に使用できる(例えば、核酸発現に使用される組織特異的調整エレメント)。組織特異的調整エレメントは技術的に既知である。適切な組織特異的プロモーターの例として、これらに限定されないが、アルブミンプロモーター(肝臓特異的; Pinkert, et al. (1987) Genes Dev. 1:268-277)、膵臓特異的プロモーター(Edlund, et al. (1985) Science 230:912-916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば乳汁プロモーター; U.S. Patent No. 4,873,316 and EP 264,166)が挙げられる。
【0037】
宿主細胞ゲノムの特定部位に、相同的に組み換えられた目的の核酸を有する、組み換え発現ベクターもまた考えられる。宿主細胞および組み換え宿主細胞の用語は、本願において交互に使用される。前記用語は、特定の主題の細胞だけでなく、前記細胞の子孫または潜在的子孫に関すると理解できる。突然変異または環境的影響の両方が原因で、後の世代に起こり得る特定の変化のため、前記子孫は実際には親細胞と同一ではないが、本願で使用される用語の範囲内にそれでも含まれる。
【0038】
本発明の範囲内に包含される宿主細胞は、原核または真核細胞である。特定の態様においてプロテアーゼは、無傷のタンパク質組成物の精製を促進するために、内因性プロテアーゼを、生成しないかまたは低いレベルで生成する。例えば、本発明のタンパク質組成物を、プロテアーゼ欠損大腸菌のような細菌性細胞中で発現することができる。
【0039】
哺乳類宿主細胞はまた、非ヒトトランスジェニック動物を生み出すために使用できる。
例えば宿主細胞は、組み換え発現ベクター導入されている卵母細胞または胚幹細胞と受精することができる。それから前記宿主細胞を、非ヒトトランスジェニック動物を作り出すために、確立した方法に従って使用できる。非ヒト動物の典型的な例としては、これらに限定されないが、マウス、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシまたは他の家畜が挙げられる。
前記トランスジェニック動物は、例えば、本発明のタンパク質組成物の大規模生産にとって有用である(遺伝子培養)。
【0040】
発現ベクターDNAを、従来の転換または導入技術によって、原核または真核細胞に導入することができる。本願における使用において、転換または導入の用語は、外部の核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための、当該技術において認められている種々の技術に関することを意図しており、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン介在導入法、リポフェクションまたはエレクトロポレーション電気穿孔法が挙げられる。宿主細胞の転換または導入のための適切な方法を、Sambrook, et al. (1989) supraおよび他の研究所のマニュアルに見つけることができる。
【0041】
同定および転換または導入された宿主細胞の選択のために、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質に対する抵抗性)をコードする遺伝子が、通常目的の核酸とともに宿主細胞中に導入される。適切な選択可能なマーカーは、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートのような薬に対する抵抗性を与えるものを含む。選択可能なマーカーをコードする核酸を、目的のタンパク質をコードする同一のベクター上で宿主細胞に導入することができ、または別個のベクター上で導入することができる。
核酸を導入した安定した転換または導入細胞は、薬剤選択によって同定することができる(例えば、選択可能マーカー遺伝子を組み込んでいる細胞は生き残り、一方で他の細胞は死滅する)。
【0042】
分泌シグナルなしで直接発現するとき、生産毎に、所望のタンパク質は、分泌タンパク質かまたは宿主細胞からの溶解物として回収される。組み換え細胞タンパク質からのタンパク質組成物の生成は、微粒子細胞破片を除くための培養媒質または溶解物の遠心、および例えばイムノアフィニティーまたはイオン交換カラムによる分画、エタノール沈殿、キチンカラムクロマトグラフィー、逆相HPLC、シリカまたはDEAEのような陰イオン交換樹脂上のクロマトグラフィー、クロマト分画、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル濾過またはリガンド親和性クロマトグラフィー(例えば、Ni2+−アガロースクロマトグラフィー)によるタンパク質組成物の精製よって実施することができる。
【0043】
組み換え生産物に加えて、タンパク質組成物を、固相技術を使用した直接ペプチド合成によって生産できる(Merrifield (1963) J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154)。タンパク質合成は、手動技術または自動化によって達成することができる。自動化合成を、例えばアプライドバイオシステムズ431Aペプチドシンセサイザーを使用して達成できる(Perkin Elmer, Boston, MA)。タンパク質組成物の種々のフラグメントを、別々に化学合成でき、そして全長分子を生産するための化学的方法を使用して結合できる。
多数の架橋剤が技術的に既知であり、BMH、SPDPなどのような、ホモまたはヘテロ二官能性架橋剤が挙げられる。分子をタンパク質のアミノ−またはカルボキシ−末端に架橋するための化学的方法は、オフォードによって見直された((1992) In: Protein Engineering-A Practical Approach, Rees, et al., eds., Oxford University Press)。
【0044】
組み換え技術による生産であろうと化学的合成であろうと、本発明のタンパク質組成物は、本願に開示された分析方法において使用する前に、さらに修飾することができる。例えば、タンパク質組成物を、既知の方法を使用して、グリコシル化またはリン酸化することができる。
【0045】
本発明の組成物および試験装置は、特にプロテアーゼ活性の決定および既知または未知のプロテアーゼの特徴付けに適している。これらの分析方法は、放出されたレポータータンパク質または固体支持体に結合して留まっているレポータータンパク質を検出できるように、プロテアーゼ開裂配列の開裂が固体支持体からのレポータータンパク質を放出するというという事実をうまく利用する。
【0046】
本発明の一態様は、プロテアーゼを本発明の試験装置に接触さること、およびプロテアーゼの活性を決定するためにレポータータンパク質を使用することにより、プロテアーゼ活性を決定するための方法を包含する。プロテアーゼ活性を決定するためにレポータータンパク質を使用することは、プロテアーゼ活性とレポータータンパク質の放出の間に存在する比例関係の効果の意味を意図し、固体支持体から放出または固体支持体に結合して留まっているレポータータンパク質の存在または量は、プロテアーゼ活性の存在または量を示す。図示したように、それに結合したレポータータンパク質を有するピンまたは突起物は、プロテアーゼを含有しているかまたは含有が疑われる被験サンプルを含んだウェルに浸され、指定の時間後(例えば、10分から24時間)、ピンまたは突起物がウェルから除かれ、ウェル中の放出されたレポータータンパク質の存在および量が検出される。この説明に役立つ態様では、レポータータンパク質の放出量は、プロテアーゼ活性に正比例する。
【0047】
他の分析方法では、レポータータンパク質は、膜(例えばカラムまたはウェルの基部に位置する)またはガラス側に結合し、被験サンプルは、特定の時間のために、膜表面に適用され、被験サンプル中に放出されたレポータータンパク質は除去され(例えば真空または洗浄)、そしてメンブランまたはスライドガラスに結合して留まっているレポータータンパク質を検出する。この場合、プロテアーゼ活性の量は、固体支持体に結合して留まっているレポータータンパク質の量に反比例する。当業者より認識されるように、レポーター酵素および生物発光の検出のための方法および装置、化学蛍光および自家蛍光レポータータンパク質活性は既知であり、技術的にごく普通に使用される。例えば蛍光物質を有する分析方法は、例えばLackowicz, J. R., 1983, Principles of Fluorescence Spectroscopy, New York:Plenum Pressに開示されている。
【0048】
感度(すなわち1000:1から10,000:1のレンジにおけるシグナル対雑音比)および本分析方法の適応性のために、試験装置は、プロテアーゼを特徴付けるためのプロテアーゼ開裂配列のアレイを含むことができる。したがって、本発明の他の態様は、プロフィールを作成するためにプロテアーゼを本発明の組成物のアレイに接触させること、およびプロテアーゼを特徴付ける選択された特徴に対するプロフィールを評価することにより、プロテアーゼを特徴付けるための方法を包含する。例えば組成物のアレイは、96ウェルプレートまたはそのふたに並べられ、8つの異なる濃度において、12の異なるプロテアーゼ開裂配列とすることができる。特定のプロテアーゼ開裂配列に対する活性量だけでなく、一またはそれ以上の12の異なるプロテアーゼ開裂配列を開裂するための被験プロテアーゼの能力が、被験プロテアーゼに対するプロフィールまたは特徴のパターン傾向を作成するために使用される。プロフィールはまた、一またはそれ以上のプロテアーゼ阻害剤に対する感度を含むと考えられる。プロフィールが生じるとすぐに、それは、基質特異性、阻害剤特異性などのような選択された特徴に対して、手動またはコンピューターを介して評価される。特定の被験プロテアーゼの選択された特徴は、プロテアーゼまたはプロテアーゼ群の種類を示す。
【0049】
複数の既知のプロテアーゼのためのプロフィールのデーターベース(例えば、比例定数またはヒストグラム)を生成することができ、そしてコンピュータ支援のパターン認識アルゴリズムを介して、被験または未知のプロテアーゼのプロフィールを比較するために使用でき、それによって、被験または未知のプロテアーゼのの特徴付けおよび同定をすることができると考えられる。プロフィールのデーターベースは、被験プロテアーゼの特徴をすぐに処理するために、試験装置と連結して使用者に提供することができる(例えばディスク、CDまたはインターネットを介したアクセス可能)。他の方法として、純粋な既知のプロテアーゼ(例えば対照サンプル)の収集物を、被験プロテアーゼとともに同時に分析評価でき、そしてプロテアーゼの特徴付けるために、直接比較を実施することができる。
【0050】
本分析方法によって検出および特徴付けることができるプロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、および金属プロテアーゼのように一般的に分類される。セリンプロテアーゼは、キモトリプシン、トリプシン、またはエラスターゼまたはカリクレインのような哺乳類酵素を含むキモトリプシン群、およびスブチリシンのような細菌性酵素を含むスブチリシン群の、二つのはっきりと異なる群を包含する。二つの群において、一般的な三次元構造は異なっているが、それらは同じ活性部位の配置を有している。セリンプロテアーゼは異なる基質特異性を示し、それは基質残基と相互作用する種々の酵素サブサイトにおけるアミノ酸置換に関係する(see, Schechter & Berger (1967) Biochem. Biophys. Res. Com. 27:157-162)。いくつかの酵素は、基質との拡張した相互作用部位を有する一方、他のものは、P1基質残基に制限される特異性を有する。触媒三残基からの三つの残基、すなわちHis−57、Asp−102およびSer−195(キモトリプシノゲンの配置に基づく)は、触媒工程に必須である。
【0051】
システインプロテアーゼは、いくつかの寄生虫のプロテアーゼ(例えば、トリパノソーマ属、住血吸虫属)、およびアポトーシスに関連のカスパーゼだけでなく、パパイン、アクチニジンまたはブロメラインのような植物プロテアーゼ、いくつかの哺乳類のリソソームカテプシン、細胞質性カルパイン(カルシウム依存性活性化)も含む。パパインは、群の典型的な要素である。セリンプロテアーゼのような触媒の反応は、共有結合中間体の形態を経て進行し、およびシステインおよびヒスチジン残基を含む。必須のCys−25および His−159(パパインの配置に基づく)は、それぞれSer−195および His−57と同じ役割を果たす。
【0052】
ほとんどのアスパラギン酸プロテアーゼは、ペプシン群に属する。ペプシン群は、リソソームカテプシンDおよびレニンのようなプロセシング酵素、および特定の菌類のプロテアーゼ(例えばペニシロペプシン、クモノスカビペプシン、エンドシアペプシン)ばかりでなく、ペプシンおよびチモシンのような消化酵素も含む。第二群は、またの名をレトロペプシンというAIDSウイルス(HIV)からのプロテアーゼのようなウイルスプロテアーゼを含む。
【0053】
金属プロテアーゼは配列および構造が大幅に異なるが、大部分の酵素は触媒活性である亜鉛原子を含む。ある場合には、亜鉛は、活性を損なうことなくコバルトまたはニッケルのような他の金属によって置換される。細菌性のサーモリシンは、よく特徴付けられており、その結晶の構造は、亜鉛が二つのヒスチジンおよび一つのグルタミン酸によって結合されていることを示す。この群の酵素は、サーモリシン、ネプリライシン、アラニルアミノペプチダーゼおよびアスタシンを含む。
【0054】
本発明の分析方法は、プロテアーゼ活性を変える化合物の同定のための、薬剤スクリーニング分析に使用できる。例えば、既知の量のプロテアーゼを含むサンプルを、本発明の試験装置および被験化合物に接触させる。サンプル中のプロテアーゼ活性の量は、前記のように、例えばサンプル、試験装置および被験化合物間の接触の後、レポータータンパク質の放出を決定することによって決定される。その後、被験化合物中の存在下のプロテアーゼ一モル当たりの活性量を、被験化合物がない場合のプロテアーゼ1モル当たりの活性と比較する。差異は、被験化合物がプロテアーゼの活性を変化させたことを示す。
【0055】
本分析方法をまた、遺伝子組み換えが行われているプロテアーゼの活性、大規模タンパク質調整におけるプロテアーゼ汚染物質の存在および種類、およびプロテアーゼの速度定数を決定するために使用できる。さらに、未知のプロテアーゼの混合物を、特定のプロテアーゼ開裂配列に関する活性に基づいた、個々の要素の同定のために評価できる。そのようなものとして、特製の阻害剤のカクテルを、特定のプロテアーゼを標的にするために使用できる。さらに、プロテアーゼの純度または基質の濃度(例えば、製造中の品質管理)を速やかに確認できる。例えばコラゲナーゼは、それぞれわずかに異なる基質特異性を有する、複数のアイソフォームを持つ。種々のアイソフォームの均一化のための精製は困難である。本分析方法では、コラゲナーゼアイソフォーム調整の純度の監視のために、基質特異性の1%の違いを、検出および定量できると考えられる。さらに、配列グレードのプロテアーゼ製剤の品質を、プロテアーゼ阻害剤の有効性を決定できるように決定できる。
【0056】
本装置および方法の利点として、特製基質の大量生産の簡便性および低コスト、特にレポータータンパク質、プロテアーゼ開裂配列およびリンカーが、タンパク質性および一つの近接するタンパク質に転換された時の、粗抽出物から最終的な高純度製品までの高いレベル(〜50%)の回収、およびリンカーを固体支持体に結合する化学反応の一種の使用(例えば、C−またはN−末端システインに結合させるためのスルフヒドリル反応)が挙げられる。
【0057】
本発明を、以下の限定的でない例によって、より詳細に記載する。
例1:ポリヒスチジンリンカー
プロテアーゼ開裂配列を含むハイブリッドGFP構造を、PCR増幅によって生成した。特定の反応性のアミノ酸基がタンパク質の表面に露出しておらず、固体支持体へのリンカーの結合のための高度の化学的特異性に役立つ理由から、GFPが選ばれた(例えばGFPには、固体支持体と相互作用または結合する領域がない)。例えば、GFPの二つのシステイン残基はβ-バレルのなかに埋もれており、化学修飾剤は利用できないことが、検出不可のDTNBとの反応および予測容易な分子グラフィックスによって決定したときに見いだされた。
【0058】
GFPのPCR増幅のための3’プライマーは、GFPコーディング配列の3’部位へのハイブリダイゼーションのための配列を含むだけではなく、6つのヒスチジン残基が続くプロテアーゼ開裂配列SVPSGCG(配列番号:21)のためのコーディング配列をも含む。ハイブリッドタンパク質の結果は、配列番号:17として本願に示されている。ハイブリッドGFPの構造は、プロテアーゼ欠損大腸菌株に発現され、およびDTNBアガロースクロマトグラフィーを使用して精製される。GFPは、6つのヒスチジン残基を介したキレートニッケルイオンにより、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)ビーズに結合する。ハイブリッドGFP構造はビーズに強固に結合し、そして広範囲の洗浄の後、さらなる浸出は検出されない。洗浄したビーズは、15マイクロフュージチューブ中に均一に分配される。
【0059】
陽性対照として、二つのチューブはEDTA(ビーズからニッケルイオンを引き離すキレート剤であり、したがってほとんど定量的にGFPを放出する)を用いた処理を受けた。3本のチューブは処理されなかった(例えば、陰性対照)。残りの10本のチューブは、少量の異なるプロテアーゼにさらされた。全てのチューブを、激しく振りながら一晩放置した。それぞれのチューブの内容物を、9インチ隔ててガラスビーズが詰まったパスツールピペットに注ぎ、そしてトラップビーズを、カラムの下に位置した回収チューブの中に、放出されたGFPを溶離するために、緩衝液を用いて洗浄した。放出されたGFPの量を、蛍光光度計で決定した。
【0060】
外観検査によって、EDTAは、陽性対照中の全GFPを実質的に放出したのに対し、3本の陰性対照からはGFPは浸出しなかった。プロテアーゼ存在下の分析実施の結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

※分析は、pH8.0で実施し、酸性下においてペプシンは活性である。
【0062】
酵素を添加した後の5分以内の明白な肯定的な結果では、最も効果的な酵素はエラスターゼであった。しかしながら、パパリン、パンクレアチンおよびプロテイナーゼKは、一晩のインキュベーションでは、同じかそれ以上のGFPを放出した。エラスターゼは、プロリンおよびグリシンが豊富なコラーゲンを分解し、そしてプロテアーゼ開裂配列は、そのアミノ酸組成においてコラーゲンに類似しているものを使用したため、エラスターゼによるこのプロテアーゼ開裂配列の開裂は予測された。希釈せずにとても感度のよい蛍光光度計で決定されるため、検出可能なGFPを有さないサンプルは重要である。これに対して、検出可能な量のGFPを有するサンプルは、10倍希釈が要求された。
【0063】
例2:EDTAの効果
ヒスチジン標識GFPを、EDTA存在下においてニッケルIMACビーズから放出できるため、例1に開示された実験を、プロテアーゼ塩中に存在しているEDATを隔離するため、および金属キレート化によるGFPの望まない放出を制限するために、Ca2+の存在下において繰り返した。ブロメラインを、98%の均質性で単離した(EDTA、NHおよびクエン酸塩のような金属キレート剤のない条件下で、サイズ排除HPLCによる決定)。全てのプロテアーゼを、pH8.0において、10mMCaClの10mMトリス緩衝液中に溶解した。ブロメラインおよびパパインプロテアーゼ製剤をまた、還元(活性)状態における、これらの二つのプロテアーゼの活性部位システインを維持するため、2−メルカプトエタノールで処理した。
【0064】
表3に示したデータを、37°Cにおいて500μLIMACビーズトラップしたGFPを用いた、種々のプロテアーゼの60分間のインキュベーションの後に得た。プロテアーゼ活性によって放出されたGFPを、9インチのガラスビーズが詰まったパスツールピペットを使用して、ビーズから分離した。ビーズを、50mM Tris、137mMNaCl、pH7.4緩衝液で洗浄して、3.8mLの溶離液を回収した。二回目の洗浄は、プロテアーゼによって放出されなかったGFPを放出するために、200mMTris、200mMEDTA、pH8.0を使用して行われた。
【0065】
【表3】

【0066】
パパイン、ブロメラインおよびEDTAの開裂によって放出されたGFPの溶離液は、蛍光光度計のために20倍に希釈された。すなわちそれぞれ、400、400および390の蛍光発光単位を生成する。しかしながら対照は、この分析により得られたデータが、正確に0.05%以下を示すため、希釈されなかった。表3に示されたデータを、約1%のドリフトで蛍光光度計から収集した。したがって、パパイン、ブロメラインおよび未処理の対照の蛍光発光を、最も感度のよい設定(すなわちノイズを生じるもの)を有するより安定した装置により検出した。
【0067】
希釈係数(400倍希釈)による装置シグナルの増幅では、パパインは282,000の平均GFPシグナル(4つの決定値に対して)を生じる一方、ブロメラインは282,000の平均GFPシグナル(4つの決定値に対して)を生じた。これに対して、希釈されていない未処理の対照は、6つの決定値に対して平均48であった(すなわち41、26、−12、180、−25および75)。この分析の実験対対照比またはシグナル対雑音比の結果は、5900:1であった。一般的に約10:1のシグナル対雑音比を持つELISA法と比較したとき、本分析方法は高感度であり、プロテアーゼ活性の小さな差異を決定するために使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロテアーゼ開裂配列を融合したレポータータンパク質および該プロテアーゼ開裂配列を固体支持体に結合するためのリンカーを含む、プロテアーゼ活性を決定するための組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物の少なくとも一つおよび固体支持体を含む、プロテアーゼ活性を決定するための試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物をコードする、単離された核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の単離された核酸構築物を含む、ベクター。
【請求項5】
請求項4に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項6】
プロテアーゼを請求項2に記載の試験装置と接触させること、および活性を決定するためにレポータータンパク質を使用することを含む、プロテアーゼ活性を決定するための方法。
【請求項7】
アレイを含む、請求項2に記載の試験装置。
【請求項8】
プロフィールを作成するためにプロテアーゼを請求項7に記載の試験装置と接触させること、およびプロテアーゼを特徴付ける選択された特徴に対するプロフィールを評価することを含む、プロテアーゼを特徴付けるための方法。

【公表番号】特表2008−521442(P2008−521442A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544525(P2007−544525)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/043572
【国際公開番号】WO2006/060630
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507182726)ラトガーズ, ザ ステート ユニバーシティー (1)
【氏名又は名称原語表記】RUTGERS, THE STATE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】