説明

プロテアーゼ耐性LOX−1酸化LDL結合ドメイン

【課題】プロテアーゼ存在下でも安定な、酸化低比重リポタンパク質(low−density lipoprotein、以下、「LDL」という)結合物質、酸化LDLの除去剤若しくは除去装置、酸化LDLの除去若しくは測定する方法、又は、酸化LDLに起因する疾患の治療薬若しくは予防薬を提供する。
【解決手段】酸化LDLの除去に、LOX−1の酸化LDL結合ドメインを利用し、LOX−1酸化LDL結合ドメインのトロンビン分解部位のアミノ酸を置換することにより、プロテアーゼ耐性能、及び、酸化LDL結合能の両方を備えるLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を得た。
【効果】本LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、安定な酸化LDL等のLOX−1結合物質との結合剤となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアーゼ存在下でも安定な、酸化低比重リポタンパク質(low−density lipoprotein、以下、「LDL」という)結合物質、酸化LDLの除去剤若しくは除去装置、酸化LDLの除去若しくは測定する方法、又は、酸化LDLに起因する疾患の治療薬若しくは予防薬に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化LDLは、スカベンジャー受容体のリガンドとして取り込まれ泡沫細胞を形成し、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞を活性化することから血管内皮障害性疾患の原因と考えられている。よって、血中の酸化LDLを除去することにより、酸化LDLに起因する疾患の治療又は予防に利用することができることから、酸化LDLを標的とした治療法の開発が望まれている。例えば、酸化LDLを除去する方法として、LDL中に含まれるapolipoprotein B中の陽性荷電アミノ酸との静電的結合を利用してデキストラン硫酸をリガンドとする吸着材が実用化されている。また、同様の作用を利用するジアルキルアミノアルキルデキストランを利用する方法が開示されている(特許文献1)。しかし、これらの静電的作用を利用する場合には、酸化LDLに対する選択性が低いという問題があった。酸化LDLに対する抗体として、酸化ホスファチジルコリンに対する抗体を利用する方法が知られている。しかし、LDLは、アポリポタンパク質、リン脂質、コレステロール等の複合体であることから、LDLが酸化を受けると様々な成分が過酸化され、タンパク質の架橋や開裂等が連続的に起こる。このため、実際には酸化LDLは単一の物質ではなく多様な物質であり、前記抗体による酸化LDLの除去が、酸化LDL中の酸化ホスファチジルコリンの含有量に依存してしまうという問題があった。
【0003】
レクチン様酸化LDLレセプター−1(Lectin−like oxidized LDL receptor−1、以下、「LOX−1」という)は、血管内皮細胞の酸化LDLレセプターとして同定されたタンパク質である(非特許文献1参照)。酸化LDLによるアテローム性動脈硬化の形成に、LOX−1が介在することが報告されている(非特許文献2参照)。LOX−1は、酸化LDLに特異的に結合することから、LOX−1を用いて酸化LDLを測定した例が報告されている(非特許文献3参照)。しかし、LOX−1を利用して酸化LDLを除去する試みはこれまでのところ行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−102341号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sawamuraら、Nature 386:73−77(1997)
【非特許文献2】Mehta JLら、Circ.Res 100:1634−42(2007)
【非特許文献3】Satoら、Atherosclerosis 200:303−309(2008)
【発明の概要】
【0006】
本願発明等は、酸化LDLの除去に、LOX−1の酸化LDL結合ドメインを利用することを考え、鋭意検討した結果、LOX−1の酸化LDL結合ドメインが血中に存在するプロテアーゼにより分解されることを見出し、安定性に問題が生じ得ることを見出した。そこで、本願発明者らは、LOX−1の酸化LDL結合ドメインが分解を受けるプロテアーゼについて検討したところ、特にトロンビンによる分解を受けやすいことを見出した。更に、本願発明者らは、LOX−1の酸化LDL結合ドメインがトロンビンにより分解を受ける部位について検討したところ、LOX−1全長配列における、208番目と209番目、209番目と210番目、229番目と230番目、231番目と232番目、248番目と249番目、及び、271番目と272番目のアミノ酸の間がトロンビンにより分解を受けやすいことを見出した。そこで、本発明者らは、LOX−1酸化LDL結合ドメインの前記トロンビン分解部位のアミノ酸を置換することにより、プロテアーゼ耐性能、及び、酸化LDL結合能の両方を備えるLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を得て本願発明を完成させた。
【0007】
即ち、本願発明は、LOX−1酸化LDL結合ドメインのうち、トロンビンにより分解され得る、208番目と209番目のアミノ酸(分解部位1)、209番目と210番目のアミノ酸(分解部位2)、229番目と230番目のアミノ酸(分解部位3)、231番目と232番目(分解部位4)、248番目と249番目(分解部位5)、及び、271番目と272番目のアミノ酸(分解部位6)におけるアミノ酸(以下、総称して「トロンビン分解部位アミノ酸」という)を置換することにより、トロンビン耐性のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を提供するものである。本明細書において、アミノ酸の位置を示す番号は、特に定義されない限り、配列番号2に示すヒトLOX−1全長配列におけるアミノ酸の位置により表現されている。本願発明は、具体的には、次の(1)〜(37)に関する。
(1) 以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドであって、かつ、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が置換されているポリペプチド:
(a)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列と90%の相同性を有するアミノ酸配列を備えるポリペプチド;
(b)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列をコードするDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を備えるポリペプチド;あるいは、
(c)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列のうち、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたポリペプチド。
(2) 配列番号2における208番目に該当するアルギニンが、ロイシン、リシン又はメチオニンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(3) 配列番号2における209番目に該当するアルギニンが、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(4) 配列番号2における210番目に該当するアスパラギンが、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(5) 配列番号2における229番目に該当するアルギニンが、リシンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(6) 配列番号2における230番目に該当するバリンが、スレオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(7) 配列番号2における231番目に該当するアルギニンが、グルタミン又はリシンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(8) 配列番号2における232番目に該当するグルタミンが、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(9) 配列番号2における248番目に該当するアルギニンが、アスパラギン酸、グリシン又はリシンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(10) 配列番号2における249番目に該当するグリシンが、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(11) 配列番号2における271番目に該当するアルギニンが、ロイシン、リシン又はグルタミンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(12) 配列番号2における272番目に該当するアラニンが、スレオニン、セリン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(13) (2)〜(12)から選択される2以上の任意の組み合わせからなる、(1)に記載のポリペプチド。
(14) 配列番号2における208番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における209番目に該当するアルギニンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている(1)に記載のポリペプチド。
(15) 配列番号2における209番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における210番目に該当するアスパラギンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている(1)に記載のポリペプチド。
(16) 配列番号2における229番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における230番目に該当するバリンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている(1)に記載のポリペプチド。
(17) 配列番号2における231番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における232番目に該当するグリシンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている(1)に記載のポリペプチド。
(18) 配列番号2における248番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における249番目に該当するグリシンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている(1)に記載のポリペプチド。
(19) 配列番号2における271番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における272番目に該当するグリシンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている(1)に記載のポリペプチド。
(20)配列番号2における208番目に該当するアルギニンが、ロイシン、リシン又はメチオニンに置換され、配列番号2における209番目に該当するアルギニンが、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換され、配列番号2における229番目に該当するアルギニンが、リシンに置換され、配列番号2における231番目に該当するアルギニンが、グルタミン又はリシンに置換され、配列番号2における248番目に該当するアルギニンが、アスパラギン酸、グリシン又はリシンに置換され、かつ、配列番号2における271番目に該当するアルギニンが、ロイシン、リシン又はグルタミンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(21) 配列番号2における208番目、229番目、231番目、248番目、及び/又は、271番目に該当するアミノ酸が、以下の(i)〜(v)からなる群から選択される1以上の置換により置換されている、(1)〜(20)のいずれか1項に記載のポリペプチド:
(i)配列番号2における208番目に該当するアミノ酸のロイシン又はメチオニンへの置換;
(ii)配列番号2における229番目に該当するアミノ酸のリシンへの置換;
(iii)配列番号2における231番目に該当するアミノ酸のグルタミンへの置換;
(iv)配列番号2における248番目に該当するアミノ酸のアスパラギン酸又はグリシンへの置換;
(v)配列番号2における271番目に該当するアミノ酸のロイシンへの置換。
(22) 配列番号2における209番目、210番目、230番目、232番目、249番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が、リシン、スレオニン、システイン、ヒスチジン、アスパラギン酸、又は、グルタミン酸に置換されている、(1)〜(22)のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(23) 配列番号2における209番目、230番目、232番目、249番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が、以下の(i)〜(v)からなる群から選択される1以上の置換により置換されている、(1)〜(22)のいずれか1項に記載のポリペプチド:
(i)配列番号2における209番目に該当するアミノ酸のリシンへの置換;
(ii)配列番号2における230番目に該当するアミノ酸のスレオニンへの置換;
(iii)配列番号2における232番目に該当するアミノ酸のシステイン、ヒスチジン、アスパラギン酸又はグルタミン酸への置換;
(iv)配列番号2における249番目に該当するアミノ酸のシステイン、ヒスチジン、アスパラギン酸又はグルタミン酸への置換;
(v)配列番号2における272番目に該当するアミノ酸のスレオニンへの置換。
(24) 配列番号2における208番目及び/又は209番目に該当するアミノ酸、229番目及び/又は230番目に該当するアミノ酸、231番目及び/又は232番目に該当するアミノ酸、248番目及び/又は249番目に該当するアミノ酸、並びに、271番目及び/又は272番目に該当するアミノ酸が置換されている、(1)〜(23)のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(25) 野生型LOX−1と比較して、トロンビンによる分解量が少ないことを特徴とする、(1)〜(24)のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(26) LOX−1結合物質への結合活性を有する、(1)〜(25)のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(27) LOX−1結合物質が酸化LDLである、(26)に記載のポリペプチド。
(28) (1)〜(27)のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
(29) (28)記載の核酸を含有するベクター。
(30) (1)〜(27)のいずれか1項に記載のポリペプチドを含有する、LOX−1結合物質除去剤。
(31) 酸化LDL除去剤である、(30)に記載の除去剤。
(32) (1)〜(27)のいずれか1項に記載のポリペプチドを含有する、LOX−1結合物質除去装置。
(33) LOX−1結合物質が酸化LDLである、(32)に記載の除去装置。
(34) 検体中のLOX−1結合物質の除去方法であって、
血液又は血液成分と(1)〜(27)のいずれか1項に記載のポリペプチドとを接触させるステップを備える方法。
(35) LOX−1結合物質が酸化LDLである、(34)に記載の除去方法。
(36) (1)〜(27)のいずれか1項に記載のポリペプチドを含有する、LOX−1結合物質測定用キット。
(37) 検体中のLOX−1結合物質の測定方法であって、
検体を調整する工程;及び、
検体と(1)〜(27)のいずれか1項に記載のポリペプチドとを接触させるステップを備える方法。
【0008】
本明細書において、「LOX−1」又は「野生型LOX−1」とは、ヒトレクチン様酸化LDLレセプター−1のことである。LOX−1は、そのスプライシングアイソフォームが報告されている(国際公開公報WO2006/137101)、従って、本明細書においてLOX−1は、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は、そのスプライシングアイソフォームを意味する。LOX−1のレクチン様ドメインのうち、C末端に位置する7アミノ酸(ウシLOX−1の261番目から267番目、ヒトLOX−1では265番目から270番目に相当)がリガンド結合に重要であることが報告されている(Chen,M.ら、Biochem J. 355:289−296(2001))。本明細書において、「LOX−1酸化LDL結合ドメイン」又は「LOX−1の酸化LDL結合ドメイン」とは、LOX−1タンパク質又はそのスプライシングアイソフォームのうち、酸化LDLと結合する領域を備えるペプチドのことであり、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも143番目から273番目のアミノ酸配列に含まれるアミノ酸配列を有するポリペプチドのことである。LOX−1酸化LDL結合ドメインは、LOX−1細胞外ドメイン、LOX−1 CTLD、LOX−1 CTLD14を含む。ここで、「LOX−1細胞外ドメイン」とは、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、61番目から273番目のアミノ酸配列(配列番号3)からなるポリペプチドのことである。また、「LOX−1 CTLD」とは、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、143番目から273番目のアミノ酸配列(配列番号5)からなるポリペプチドのことである。「LOX−1 CTLD14」とは、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、129番目から273番目のアミノ酸配列(配列番号4)からなるポリペプチドのことである。なお、これらのタンパク質又はポリペプチドと90%の相同性を有するアミノ酸配列を備えるタンパク質又はポリペプチド、これらのタンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列をコードするDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を備えるタンパク質又はポリペプチド、あるいは、これらのタンパク質又はポリペプチドの1〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたタンパク質又はポリペプチドであって、酸化LDL結合能を有するポリペプチド又はタンパク質も、LOX−1又はLOX−1酸化LDL結合ドメインに含まれる。
【0009】
本明細書において、「LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体」又は「LOX−1の酸化LDL結合ドメイン変異体」とは、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が野生型とは異なるアミノ酸に置換されているLOX−1酸化LDL結合ドメインである。より具体的には、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドであって、かつ、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が他のアミノ酸に置換されている、LOX−1結合物質と結合するポリペプチドのことである:
(a)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列と90%の相同性を有するアミノ酸配列を備えるポリペプチド;
(b)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列をコードするDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を備えるポリペプチド;あるいは、
(c)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列のうち、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたポリペプチド。
【0010】
一の態様において、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているLOX−1細胞外ドメイン(以下、「LOX−1細胞外ドメイン変異体」という)である。より具体的には、LOX−1細胞外ドメイン変異体は、以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドであって、かつ、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が他のアミノ酸に置換されている、LOX−1結合物質と結合する約213アミノ酸からなるポリペプチドである:
(a)配列番号2の61番目から273番目からなるアミノ酸配列と90%の相同性を有するアミノ酸配列を備えるポリペプチド;
(b)配列番号2の61番目から273番目からなるアミノ酸配列をコードするDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を備えるポリペプチド;あるいは、
(c)配列番号2の61番目から273番目からなるアミノ酸配列のうち、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたポリペプチド。
【0011】
別の態様において、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているLOX−1 CTLD14(以下、「LOX−1 CTLD14変異体」という)である。より具体的には、LOX−1 CTLD14変異体は、以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドであって、かつ、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が他のアミノ酸に置換されている、LOX−1結合物質と結合する約145アミノ酸からなるポリペプチドである:
(a)配列番号2の129番目から273番目からなるアミノ酸配列と90%の相同性を有するアミノ酸配列を備えるポリペプチド;
(b)配列番号2の129番目から273番目からなるアミノ酸配列をコードするDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を備えるポリペプチド;あるいは、
(c)配列番号2の129番目から273番目からなるアミノ酸配列のうち、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたポリペプチド。
【0012】
また、別の態様において、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているLOX−1 CTLD(以下、「LOX−1 CTLD変異体」という)である。より具体的には、LOX−1 CTLD変異体は、以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドであって、かつ、配列番号2における208番目、209番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が他のアミノ酸に置換されている、LOX−1結合物質と結合する約131アミノ酸からなるポリペプチドである:
(a)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列と90%の相同性を有するアミノ酸配列を備えるポリペプチド;
(b)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列をコードするDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を備えるポリペプチド;あるいは、
(c)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列のうち、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたポリペプチド。
【0013】
LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体における6か所のトロンビン分解部位を構成する11個のアミノ酸のうち置換されるアミノ酸の数は、1〜11個であってよく、好ましくは、2〜8個である。LOX−1酸化LDL結合ドメインにおける、トロンビン分解部位は、分解部位1(配列番号2における208番目と209番目のアミノ酸)、分解部位2(配列番号2における209番目と210番目のアミノ酸)、分解部位3(配列番号2における229番目と230番目のアミノ酸)、分解部位4(配列番号2における231番目と232番目のアミノ酸)、分解部位5(配列番号2における248番目と249番目のアミノ酸)、及び、分解部位6(配列番号2における271番目と272番目のアミノ酸)である。本願発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、前記分解部位1〜6のうち、少なくとも1か所の分解部位においてアミノ酸が置換されているポリペプチドであり、好ましくは全ての分解部位においてアミノ酸が置換されているポリペプチドである。1か所の分解部位におけるアミノ酸置換は、当該分解部位を構成する2個のアミノ酸の両方が置換されていてもよいし、片方のみが置換されていてもよい。
【0014】
トロンビンは、一般的に、アルギニンのカルボキシ末端側(以下、「C末側」という)を切断することが知られている。よって、一の態様において、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体におけるトロンビン分解部位アミノ酸の置換は、配列番号2における208番目、209番目、229番目、231番目、248番目、及び/又は、271番目に該当するアルギニン(R)を他のアミノ酸に置換することにより行われる。アルギニンを置換するアミノ酸は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体のLOX−1結合物質への結合を維持し、かつ、トロンビンによる分解を受けないアミノ酸であれば特に限定されない。例えば、LOX−1の結晶構造は報告されており(国際公開公報WO2005/054460)、リガンド結合との結合に重要な部位(ウシでは261番目−267番目、ヒトでは265番目−270番目)も知られていることから、リガンド結合機能を維持する立体構造をとるアミノ酸置換をコンピュータによる立体構造予測の手法を用いて選択することができる。配列番号2における208番目、209番目、229番目、231番目、248番目、及び/又は、271番目に該当するアルギニンと置換するアミノ酸は、好ましくは、リシン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アスパラギン酸、又は、グリシンである。より好ましくは、配列番号2における208番目に該当するアルギニンは、ロイシン又はメチオニンと置換される。また、配列番号2における229番目に該当するアルギニンは、リシンと置換される。配列番号2における231番目に該当するアルギニンは、グルタミンと置換される。配列番号2における248番目に該当するアルギニンは、アスパラギン酸又はグリシンと置換される。配列番号2における271番目に該当するアルギニンはロイシンと置換される。
【0015】
また、トロンビンは、一般的に、アルギニンとそのC末側に位置する非酸性アミノ酸との間を切断すると考えられている。よって、一の態様において、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体におけるトロンビン分解部位アミノ酸の置換は、アルギニンのC末側に位置する非酸性アミノ酸を、酸性アミノ酸(グルタミン酸又はアスパラギン酸)に置換することにより行われる。また、本願発明者らは、アルギニンのC末側のアミノ酸をシステイン、又は、ヒスチジンに置換した場合にもトロンビン分解に耐性を示すことを見出した。よって、一の態様において、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体におけるトロンビン分解部位アミノ酸の置換は、配列番号2における209番目、210番目、230番目、232番目、249番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸を、リシン、スレオニン、システイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換することにより行われる。
【0016】
配列番号2における209番目に該当するアルギニンは、好ましくは、リシン、システイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換され、より好ましくは、システイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換される。208番目のアルギニンが置換されていない場合、209番目のアルギニンはシステイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換されていることが好ましい。また、208番目のアルギニンが他のアミノ酸と置換されている場合、209番目のアルギニンは他のアミノ酸と置換されていても置換されていなくてもよい。
【0017】
配列番号2における210番目に該当するアルギニンは、好ましくは、システイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換される。209番目のアルギニンが置換されていない場合、210番目のアルギニンはシステイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換されていることが好ましい。また、209番目のアルギニンが他のアミノ酸と置換されている場合、210番目のアルギニンは他のアミノ酸と置換されていても置換されていなくてもよい。
【0018】
配列番号2における230番目に該当するバリンは、好ましくは、スレオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換され、より好ましくは、スレオニン、システイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換され、更に好ましくは、システイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換される。229番目のアルギニンが置換されていない場合、230番目のアルギニンはシステイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換されていることが好ましい。また、229番目のアルギニンが他のアミノ酸と置換されている場合、230番目のアルギニンは他のアミノ酸と置換されていても置換されていなくてもよい。
【0019】
配列番号2における232番目に該当するグリシンは、好ましくは、システイン、ヒスチジン、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換され、より好ましくは、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換される。231番目のアルギニンが置換されていない場合、232番目のアルギニンはシステイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換されていることが好ましい。また、231番目のアルギニンが他のアミノ酸と置換されている場合、232番目のアルギニンは他のアミノ酸と置換されていても置換されていなくてもよい。
【0020】
配列番号2における249番目に該当するグリシンは、好ましくは、システイン、ヒスチジン、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換され、より好ましくは、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換される。248番目のアルギニンが置換されていない場合、249番目のアルギニンはシステイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換されていることが好ましい。また、248番目のアルギニンが他のアミノ酸と置換されている場合、249番目のアルギニンは他のアミノ酸と置換されていても置換されていなくてもよい。
【0021】
配列番号2における272番目に該当するアラニンは、好ましくは、スレオニン、セリン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換され、より好ましくは、スレオニン、システイン、ヒスチジン、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換され、更に好ましくは、システイン、ヒスチジン、アスパラギン酸又はグルタミン酸に置換される。271番目のアルギニンが置換されていない場合、272番目のアルギニンはシステイン、ヒスチジン、グルタミン酸又はアスパラギン酸に置換されていることが好ましい。また、271番目のアルギニンが他のアミノ酸と置換されている場合、272番目のアルギニンは他のアミノ酸と置換されていても置換されていなくてもよい。
【0022】
LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体としては、例えば、配列番号2において、208番目がアルギニン(野生体)、ロイシン、メチオニン、又は、リジン;209番目がアルギニン(野生体)又はリジン;210番目がアスパラギン(野生体)、アスパラギン酸、又は、グルタミン酸;229番目はアルギニン(野生体)又はリジン;230番目がバリン(野生体)、スレオニン、イソロイシン、ロイシン、又は、フェニルアラニン;231番目がアルギニン(野生体)、グルタミン、又は、リジン;232番目がグリシン(野生体)、アスパラギン酸、又は、グルタミン酸;248番目がアルギニン(野生体)、アスパラギン酸、グリシン、又は、リジン;249番目がグリシン(野生体)、アスパラギン酸、又は、グルタミン酸;271番目がアルギニン(野生体)、ロイシン、リジン、又は、グルタミン;272番目がアラニン(野生体)、スレオニン、セリン、イソロイシンであるLOX−1酸化LDL結合ドメイン、但し、全てが野生型のアミノ酸であるLOX−1酸化LDL結合ドメインを除く、を挙げることができる。
【0023】
本願明細書におけるアミノ酸置換は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体のLOX−1結合物質への結合を維持し、かつ、トロンビンによる分解を受けない置換であれば特に限定されない。例えば、LOX−1の結晶構造は報告されており(国際公開公報WO2005/054460)、リガンド結合との結合に重要な部位(ウシでは261番目−267番目、ヒトでは265番目−270番目)も知られていることから、リガンド結合機能を維持する立体構造をとるアミノ酸置換をコンピュータによる立体構造予測の手法を用いて選択することができる。
【0024】
本明細書において、「LOX−1結合物質」とは、LOX−1のリガンドのことである。LOX−1結合物質は、例えば、酸化LDL、細菌、老化赤血球、アポトーシスを受けた細胞、又は、血小板であってよく、好ましくは、酸化LDLである。
【0025】
LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、LOX−1結合活性を維持する限り、トロンビン分解部位以外のアミノ酸が改変(即ち、置換、欠失、付加、挿入又は修飾)されていてもよい。具体的には、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、LOX−1酸化LDL結合ドメインと90%相同性を有するようにトロンビン分解部位以外のアミノ酸が改変されていてもよい。又は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、LOX−1酸化LDL結合ドメインをコードするDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされたアミノ酸配列を有するようにトロンビン分解部位以外のアミノ酸が改変されていてもよい。あるいは、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、トロンビン分解部位以外のアミノ酸が1〜数個改変されていてもよい。トロンビン分解部位以外のアミノ酸が置換される場合、好ましくは保存的置換により置換される。「保存的置換」とは、大きさ、疎水・親水性、酸性・塩基性等の性質に影響せず又は変更させないアミノ酸による置換であって、元のタンパク質又はペプチドの活性を維持する置換を意味する(Journal of Molecular Evolution 19:171−175(1983))。
【0026】
本明細書において、「相同性」とは、二つのアミノ酸配列を比較した場合に、同一であるアミノ酸のパーセントのことを意味する。二つのアミノ酸配列において、同一であるアミノ酸のパーセントは、当該二つのアミノ酸を、ギャップを考慮した上で適切なアラインメントを行い、((同一であるアミノ酸の数)/(全長アミノ酸数)×100)により求めることができる。相同性の計算は、BLAST、FASTA等の既存のプログラムを利用して計算することもできる。
【0027】
本明細書において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、当業者が一般的に使用するハイブリダイゼーションの条件下でハイブリダイズすることを意味する。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか否かは、サザンブロットの様な核酸のハイブリダイゼーションを確認できる手法を用いて確認することができる。例えば、ハイブリダイゼーションの条件は、0.7〜1.0M NaCl存在下、65℃で行われ、65℃で、0.1〜2倍濃度のSSC(saline sodium citrate)溶液により洗浄後ハイブリダイズを確認することができる(Molecular Cloning 2nd ed.等)。
【0028】
また、上述の通り、LOX−1の立体構造及び酸化LDL結合に重要なアミノ酸が報告されていることから、改変すべきアミノ酸及びその改変方法は、コンピュータによる立体構造シミュレーションを利用して元のタンパク質又はペプチドの立体構造を維持するアミノ酸として選択してもよい。特に、ウシLOX−1の262番目のリシンと263番目のリシン(ヒトLOX−1では266番目のリシンと267番目のリシンに相当)の置換が酸化LDLへの結合活性に影響があることから、好ましくは、ヒトLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、266番目のリシンと267番目のリシンが改変されていないポリペプチドである。また、ウシLOX−1の261番目〜267番目のアミノ酸(ヒトLOX−1では265番目〜270番目に相当)が酸化LDLへの結合に重要であることが報告されていることから、好ましくは、ヒトLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、265番目〜270番目のアミノ酸が改変されていないポリペプチドである。更に、ウシLOX−1の261番目〜270番目のアミノ酸の欠失が、LOX−1の酸化LDLへの結合活性を消失させることが報告されていることから、好ましくは、ヒトLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、265番目〜273番目のアミノ酸が欠失されていないポリペプチドである。
【0029】
天然のLOX−1タンパク質は二量体を形成することが報告されている。従って、本明細書における、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、二量体を形成していてもよい。また、LOX−1のスプライシングアイソフォームが報告されている(国際公開公報WO2006/137101)。従って、本明細書におけるLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、当該スプライシングアイソフォームにおける酸化LDL結合ドメインが改変されたものであってもよい。
【0030】
別の態様において、本発明は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有する、LOX−1結合物質除去剤に関する。本除去剤を使用することにより、LOX−1結合物質を除去することができる。本除去剤は、その除去能を高めるため、例えば、抗酸化ホスファチジルコリン抗体、抗アポB抗体、酸化ホスファチジルコリン、ジアルキルアミノアルキルデキストラン、酸化LDL受容体(米国特許5,510,466)等の酸化LDLとの結合性を備える物質を備えていてもよい。また、本除去剤は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体が適宜固相に結合された状態であってもよい。具体的な態様において、本除去剤は、例えば、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体が結合した中空糸である。本発明の除去剤は、LOX−1結合物質(好ましくは、酸化LDL)を吸着除去可能なものであれば、その形状・構造、使用方法等が特に限定されるものではなく、例えば、懸濁液等の液状であってもよいし、カラム、貼布、錠剤等の固体であってもよい。
【0031】
また、別の態様において、本発明は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有する、LOX−1結合物質除去装置に関する。本装置は、LOX−1結合物質を除去する限りその用途が限定されるものではないが、好ましくは血液中の酸化LDLを除去する目的で使用される。本発明の、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有する、LOX−1結合物質除去装置は、好ましくは、アフェレーシス治療で使用される酸化LDL吸着装置である。例えば、本発明のLOX−1結合物質除去装置は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有する吸着器であってもよいし、血液ポンプ、抗凝固剤注入ポンプ、動脈圧モニタ、血漿分離器、濾過圧モニタ、血漿ポンプ、吸着機入口圧モニタ、吸着器、微粒子除去フィルタ、静脈圧モニタ、気泡検出器を備える吸着装置であってもよい。該酸化LDL吸着装置は、酸化LDLに起因する疾患の治療に用いることができる。
【0032】
また、別の態様において、本発明は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有する、LOX−1とLOX−1結合物質除去との結合阻害剤に関する。本阻害剤は、LOX−1とLOX−1結合物質との結合を阻害する限りその用途が限定されるものではないが、好ましくは血液中の酸化LDLとマクロファージや血管内皮細胞等の細胞表面上のLOX−1との結合を阻害する目的で使用される。本発明の、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有する、LOX−1とLOX−1結合物質除去との結合阻害剤は、好ましくは、酸化LDLに起因する疾患の治療剤である。
【0033】
本明細書において、「酸化LDLに起因する疾患」とは、酸化LDLにより発症又は増悪する疾患のことであり、例えば、血管内皮障害性疾患、高コレステロール血症、高脂血症、虚血性疾患、動脈硬化症、慢性閉塞性動脈硬化症、脳卒中、心不全、心筋梗塞、狭心症、冠動脈狭窄、及び、バージャー病を挙げることができる。
【発明の効果】
【0034】
本願発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、プロテアーゼによる分解に耐性を示す。従って、本願発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、安定な酸化LDL等のLOX−1結合物質との結合剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】トロンビン処理したLOX−1 CTLD野生体及びその変異体のSDS−PAGEの結果を示す図である。図中、左から順に、LOX−1 CTLD野生体、LOX−1 CTLD変異体(LK−KT−QG−LT)、LOX−1 CTLD変異体(MK−KT−QG−LT)、LOX−1 CTLD変異体(D−LT)、LOX−1 CTLD変異体(E−LT)を示す。また、図中、レーン1は分子量マーカーを、レーン2はトロンビン未処理の各種LOX−1 CTLDを、レーン3はトロンビン処理後の各種LOX−1 CTLDを表す。
【図2】トロンビン量を0Uから2Uまで変化させて、LOX−1 CTLD野生体、LOX−1 CTLD変異体(LK−KT−QG−LT)、LOX−1 CTLD変異体(E−LT)量を測定した結果を示す図である。図中、WTはLOX−1 CTLD野生体を、LK−KT−QG−LTはLOX−1 CTLD変異体(LK−KT−QG−LT)を、E−LTはLOX−1 CTLD変異体(E−LT)を示す。
【図3】CTLD及びトロンビン耐性が向上した変異体の酸化LDL結合能を測定した結果を示す。図中、WTはLOX−1 CTLD野生体を、LK−KT−QG−LTはLOX−1 CTLD変異体(LK−KT−QG−LT)を、MK−KT−QG−LTはLOX−1 CTLD変異体(MK−KT−QG−LT)を、D−LTはLOX−1 CTLD変異体(D−LT)を、E−LTはLOX−1 CTLD変異体(E−LT)を、QG−LTはLOX−1 CTLD変異体(QG−LT)、QD−LTは変異体LOX−1 CTLD(QD−LT)を示す。
【図4】LOX−1 CTLD変異体作成のために用いたプライマーを示す。
【図5】LOX−1 CTLD変異体作成のために用いたプライマーを示す。
【図6】LOX−1 CTLD変異体作成のために用いたプライマーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体をコードするDNAは、配列番号1に記載のLOX−1をコードする遺伝子配列を基に、所望のアミノ酸配列(例えば、143番目から273番目のアミノ酸配列)を与えるDNAをクローニングし、当該DNAを鋳型として所望のトロンビン結合部位のアミノ酸置換を与えるDNAを設計後、部位特異的変異処理(site−directed mutagenesis)(Hutschisonら、J.Biol.Chem. 253:(18)、6551−6560(1978))、又は、PCRを介した変異処理(PCR−mediated mutagenesis)(Shimadaら、Methods Mol Biol. 57:157−65(1996))を用いて作製することができる。例えば、変異導入用のキットとして、ジーンテイラー部位特異的変異導入システム(GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System)(Invitrogen社)、QuikChange Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)、及び、Phusion Site−Directed Mutagenesis Kit(FINNZYMES社)が市販されている。よって、アミノ酸の置換は、これらのキットを用いてキット添付のプロトコルに従うことにより行うことができる。
【0037】
作製されたDNAは、適宜選択された発現ベクターに組み込んだ後、宿主にトランスフェクトされる。発現ベクターは宿主及び選択マーカー等に応じて適宜選択することができ、例えば、宿主として大腸菌を使用する場合、pET22bを使用することができ、宿主として動物細胞を使用する場合、pBApo−CMVを使用することができる。宿主へのトランスフェクションは、市販のトランスフェクション試薬を用いて当業者周知の方法により行うことができる。その後、必要に応じて、IPTG等の発現促進試薬及び/又は抗生物質等の選択試薬の存在下で宿主を培養することにより、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を発現させることができる。
【0038】
発現したポリペプチドは、必要に応じてリフォールディングさせることができる。ポリペプチドのリフォールディングは、必要に応じて界面活性剤を含む、変性剤を含有する変性緩衝液にポリペプチドを添加して可溶化した後、透析又は希釈により変性剤を除去することにより行うことができる。可溶化に使用する変性剤としては、例えば、グアニジン塩酸塩又は尿素を使用することができる。変性緩衝液としては、例えば、6M塩酸グアニジン、50mMジチオトレイトール、50mMトリス緩衝液(pH8.2)を使用することができる。変性緩衝液に加えるポリペプチドの量は、ポリペプチドの安定性に応じて選択することができ、例えば、2〜7Mである。可溶化を行う温度は、例えば、37〜50℃とすることができる。ポリペプチドがジスルフィド結合を有する場合、変性剤の他、還元剤を添加することができる。還元剤としては、例えば、β−メルカプトエタノール又はジチオトレイトールを使用することができる。ジスルフィド結合を有するポリペプチドを可溶化させる時間は、存在するジスルフィド結合の数に応じて延ばすことができ、例えば、4本のジスルフィド結合を有する場合には、37℃で3時間又は室温で12時間インキュベートすることができる。可溶化したポリペプチドのリフォールディングは、可溶化ポリペプチド溶液を10〜100倍に希釈させることにより行うことができる。リフォールディングの温度は、ポリペプチドの性質に応じて適宜選択することができ、例えば、4〜37℃から選択することができる。また、可溶化において還元剤を使用した場合には、リフォールディングにおいて酸化剤(例えば、酸化型グルタチオン又はシスチン)を加えることができる。可溶化において界面活性剤を使用した場合には、リフォールディングにおいてシクロデキストリン又はシクロアミロースを加えることができる。また、リフォールディングにおいて低分子化合物を添加することもできる(Gouchら、J.Biotechnol.、115:279−90(2005))。また、市販のキット、例えば、TAPS−sulfonate(Wako社)、Refold SK(Novexin社)、Refolding CA Kit、Chaperonin GroE、iFOLDTM Protein Refolding System(TAKARA BIO社)を用いてリフォールディングを行うこともできる。また、LOX−1のリフォールディングに関する情報がリフォールディング条件のデータベース(http://refold.med.monash.edu.au/)上に登録されており、当該情報を参照してリフォールディングの条件を検討することができる。
【0039】
一の態様において、本願発明は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有するLOX−1結合物質除去剤に関する。本願発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有するLOX−1結合物質除去剤を医療用吸着剤として使用する場合、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を単独で使用することもできるし、担体に固定化して使用することもできる。また、本発明の吸着剤において、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、表面に無機化合物又は有機化合物を結合させて使用することもできる。LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体への所望の化合物の結合は、ペプチドへの結合方法として当業者周知の方法を用いることができる。
【0040】
LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を基材又は担体に固定化して使用する場合、このような、基材又は担体としては、医療用に用いられる基材又は担体であれば特に限定はない。基材又は担体の形状としては、例えば、シート状;ビーズ状;中空糸、糸束等の繊維状;織物状;スポンジ状;又はネット状等を挙げることができる。また、基材又は担体の素材としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、再生セルロース等のセルロース;コラーゲン、キチン、キトサン等の生体由来材料;活性炭及びセラミック等の無機材料;、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスチレン等のポリビニル;ナイロン(ナイロン6、ナイロン64、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン11、又は、ナイロン12)等のポリアミド;ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリル;ポリスルホン;ポリイミド;ポリエーテルスルホン;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリビニルアルコール;ポリテトラフルオロエチレン等のポリハロオレフィン;ポリ尿素;ポリチオ尿素;ポリオキシメチレン;エチレンビニルアルコール共重合、ABS樹脂、エチレンビニルアセテート等の共重合体;及び、ポリエステル系ポリマーアロイ等を挙げることができる。
【0041】
LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を基材又は担体に固定化して使用する場合、固定化の方法はLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を基材に固定化できる方法であれば特に限定は無く、例えば、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を基材の表面に被覆してもよく、又は、微小空隙内にLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を保持させてもよい。
【0042】
LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を基材表面に被覆する場合、基材表面とスペーサーを介して結合させることにより、又は、基材表面に直接結合することにより製造することができる。更に、本発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を基材又は担体に固定化する方法として、担体に共有結合による固定化を利用することができる。例えば、固定化担体表面上にアミノ基等の官能基を導入し、グルタルアルデヒド等で当該官能基を活性化して、タンパク質表面のアミノ基等と結合させる方法を用いることができる。タンパク質をその配向性を調節しながら固相への結合する方法が知られていることから、好ましくは、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体のLOX−1結合物質結合部位が血液と接触する表面上に位置するように固定化する。
【0043】
微小空隙内にLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を保持させる場合、予め作製した微小空隙内にLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を添加してもよいし、空隙を作成しながらLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を保持させてもよい。微小空隙を形成する担体物質としては、好ましくは、直径1nm〜100nmの繊維状又は概球状の物質であり、より好ましくは、直径数nm〜10nmの繊維状又は慨球形の物質である。担体により形成された空隙の大きさは、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を保持できる大きさであれば特に限定されないが、好ましくは、2nm〜1000nmであり、より好ましくは、10nm〜100nmである。
【0044】
一の態様において、本願発明は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有するLOX−1結合物質除去装置に関する。本願発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を含有するLOX−1結合物質除去装置を医療用吸着装置として使用する場合、直接血液吸着法(DHP)用の装置又は血漿吸着法用の装置であってよいが、好ましくは血漿吸着法用の装置である。本吸着装置は、上述の吸着材を吸着器に充填することにより製造することができる。更に、本吸着装置は、血液ポンプ、抗凝固剤注入ポンプ、動脈圧モニタ、血漿分離器、濾過圧モニタ、血漿ポンプ、吸着機入口圧モニタ、吸着器、微粒子除去フィルタ、静脈圧モニタ、気泡検出器を適切な回路として組み立てることにより製造することができる。
【0045】
一の態様において、本発明は、LOX−1結合物質(好ましくは、酸化LDL)の除去方法に関する。本発明の除去方法を医療用として用いる場合、本発明の除去方法は、血液から血漿を分離するステップ、及び、分離された血漿をLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体と接触させるステップを備える。本発明の方法は、好ましくは、血液に抗凝固剤を添加するステップ、血液から血漿を分離するステップ、分離された血漿をLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体と接触させるステップ、必要に応じて吸着された生体に必要な成分を血漿に添加するステップ、及び、血漿と分離された成分と血漿とを混合するステップを備える。抗凝固剤としては、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウム等のヘパリン;ダルテパリンナトリウム、パルパリンナトリウム、レビパリンナトリウム等の低分子ヘパリン;又は、メシル酸ナファモスタットを使用することができる。
【0046】
別の態様において、本発明は、LOX−1結合物質(好ましくは、酸化LDL)を測定することを備える、LOX−1結合物質(好ましくは、酸化LDL)の検査方法又はLOX−1結合物質(好ましくは、酸化LDL)に起因する疾患の診断方法に関する。即ち、本発明は、LOX−1結合物質(好ましくは、酸化LDL)の検査方法であって、検体を調整するステップ;検体とLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体とを接触させるステップ;及び、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体へのLOX−1結合物質の結合を測定するステップを備える方法に関する。また、本発明は、LOX−1結合物質(好ましくは、酸化LDL)に起因する疾患の診断方法であって、検体を調整するステップ;検体とLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体とを接触させるステップ;LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体へのLOX−1結合物質の結合を測定するステップ;及び、結合したLOX−1結合物質の量が健常人と比較して多い場合に、LOX−1結合物質(好ましくは、酸化LDL)に起因する疾患である可能性が高いと判定するステップを備える方法に関する。診断は、例えば、その数値等の閾値の設定の仕方により、酸化LDLに起因する疾患への罹患の有無の診断であってもよいし、将来酸化LDLに起因する疾患に罹患する可能性を予測するものであってもよい。比較対象となる健常人における酸化LDLのレベルは、例えば、当業者周知の情報により、又は、酸化LDLに起因する疾患に罹患したことのない被験者の試料における酸化LDLのレベルを測定することにより、又は、他の酸化LDLに起因する疾患の指標による評価と組み合わせることにより知ることができる。本発明の酸化LDLのレベルを利用して、患者が酸化LDLに起因する疾患に罹患する可能性を判定することができる。判定は、統計的分析により行うことができる。統計学的有意性は、2以上の集団を比較し、信頼区間及び/又はp値を決定することにより決定される(Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiely&Sons,NewYord,1983)。本発明の信頼区間は、例えば、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.9%又は99.99%であってもよい。また、本発明のp値は、例えば、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0002又は0.0001であってもよい。
【0047】
別の態様において、本発明は、LOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を投与することを備える、酸化LDLに起因する疾患の治療方法に関する。本願発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体を医薬として用いる場合、投与部位としては、経口投与、口腔内投与、気道内投与、皮下投与、筋肉内投与、血管内(静脈内)投与等を挙げることができる。また、製剤としては、例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、シロップ剤、顆粒剤、貼布剤、点滴、軟膏等を挙げることができる。本発明の抗体は、単独で投与しても良いし、薬理学的に許容される単体(「医薬品添加物事典」薬事日報社、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」APhA Publications社参照)と共に投与されてもよい。また、本発明の治療薬を注射剤として使用する場合、保存容器としては、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ、ペン型注射器用カートリッジ、及び、点滴用バッグ等を挙げることができる。
【0048】
本発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体の投与方法は、所望の治療効果又は予防効果が得られる方法であれば特に限定はなく、好ましくは、血中に投与する。具体的には、血管内(例えば、静脈内、冠動脈内)に投与することができる。また、本発明の化合物は、一時的に投与してもよいし、持続的又は断続的に投与してもよい。例えば、本発明の化合物の投与は、1分間〜2週間の持続投与することもできる。本発明の化合物の投与方法として、好ましくは、1週間に1〜4回投与であり、より好ましくは、1週間に1回投与である。また、本発明の化合物は、2〜3週間に1回投与とすることもできる。
【0049】
本発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体の投与量は、所望の治療効果又は予防効果が得られる投与量であれば特に限定は無く、症状、性別、年齢等により適宜決定することができる。本発明の治療薬又は予防薬の投与量は、例えば、虚血性疾患の治療効果又は予防効果を指標として決定することができる。本発明の治療薬又は予防薬の投与量として、好ましくは、1ng/kg〜10mg/kgであり、より好ましくは、10ng/kg〜1mg/kgであり、更に好ましくは、5〜500μg/kgであり、より更に好ましくは、10〜100μg/kgであり、最も好ましくは、10〜30μg/kgである。
【0050】
なお、本願全体を通して引用される全文献は参照によりそのまま本願に組み込まれる。また、本明細書において、「約」の語は、±10%以内の数値を意味する。数値が整数値を取る必要がある場合、小数点以下の数値は四捨五入される。以下、本発明をより詳細に説明するため実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
実施例1.LOX−1 CTLDのクローニング
ヒト肺total RNA(Clontech社)より、SuperScript III One−Step RT−PCR System with Platinum(登録商標) TaqDNA Polymerase(Invitrogen社)を用いてRT−PCRを行い、LOX−1CTLDをクローニングした。具体的には、Sawamuraら、Nature 386(6620)、73−77(1997)に示される配列(GenBankアクセッション番号NM_002543)(配列番号1)に基づいて、CTLDに適合する2種類の特異的プライマー
センスプライマー:5’−CTGCCAGGATCCCATATGCTTGTCCGCAAGACTGGA−3’(配列番号6)
アンチセンスプライマー:5’−CAGCTCGAGTCACTGTGCTCTTAGGTTTGCC−3’(配列番号7)
を用いて増幅した。増幅転写物の塩基配列をDNA配列分析機3130Genetic Analyzer(Applied Biosystem社)を用いて確認した。さらに、CTLDの配列をもつPCRフラグメントの5’側にStreptagIIを、3’側にHisタグをPCRにより付加し、発現ベクターpET22b(Novagen社)のNdeI切断部位、EcoRI切断部位にクローニングして、塩基配列を3130Genetic Analyzer(Applied Biosystem社)により確認した(非図示)。
【0052】
実施例2.LOX−1 CTLDのプロテアーゼ切断部位の検討
(1)LOX−1 CTLDのプロテアーゼによる切断検討
実施例1において調製したLOX−1 CTLDをコードする遺伝子を含むプラスミドpET22bを大腸菌BL21(DE3)(Novagen社)に形質転換した。得られた形質転換宿主細胞を、アンピシリン(和光)を最終濃度が100μg/mLとなるように添加したLB培地に播種し、37℃で培養した。IPTGを最終濃度が1mMとなるように添加してLOX−1 CTLDの発現を誘導し、37℃で2時間培養した後、菌体を集菌し、TBSにて洗浄した。ほとんどのCTLDが封入体を形成していたため、不溶性ポリペプチド画分をBugBuster(Novagen社)を用いて精製した。
BugBusterで精製した封入体を用いて、refolding CA kit(TAKARA社)によりリフォールディングを行い、カートリッジHisTrap FF crude(GE社)に吸着させた後、イミダゾールによる濃度勾配で溶出し、CTLDを部分精製した。部分精製したタンパクは、さらに、Strep−Tactin superflow(QIAGEN)に吸着させて、desthiobiotinによる濃度勾配で精製した。
精製して得られたLOX−1 CTLDを、大過剰のトロンビン、エンテロキナーゼ、又は、第Xa因子で処理してプロテアーゼ切断を受けるか調べた。25μLの20mM Tris(pH8.4)、150mM NaCl、2.5mM CaClに溶解した25μgのLOX−1 CTLDに、2Uのトロンビン(Novagen社)(1Uは、1gの対象タンパク質を分解する濃度)、10Uのエンテロキナーゼ(Novagen社)、又は、10Uの第Xa因子(Novagen社)を加え、25℃で18時間反応させた。反応後、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を添加して反応を停止させ、直後に反応産物を定法に従ってSDS−PAGE用のサンプルとして調製した。SDS−PAGEで泳動後、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色を行った。その結果、トロンビンにより処理したサンプルではCTLDの断片化が確認されたが、エンテロキナーゼ、又は、第Xa因子で処理したサンプルではCTLDの断片化は確認されなかった(非図示)。このことから、LOX−1 CTLDは、トロンビンにより切断されることが確認された。
【0053】
(2)LOX−1 CTLDのトロンビンによる切断部位検討
次に、SDS−PAGEにより確認されたLOX−1 CTLD断片について、常法に従いペプチドマッピングを行ったところ、LOX−1 CTLDは、R208とR209の間、R209とN210の間、R229とV230の間、R231とG232の間、R248とG249の間、及び、R271とA272の間で切断することが明らかとなった。これらの切断部位のうち、特に、R229、R231及びR248は、LOX−1のリガンド認識に必須なアミノ酸残基として報告されている(Ohkiら、Structure 13(6):905−917(2005))。
【0054】
実施例3.LOX−1 CTLDへの変異導入
CTLDのトロンビン切断部位のアミノ酸置換を行い、トロンビン耐性変異体の作成を行った。QuikChangeII Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)を用いて、当該キットに添付のプロトコルに従って、表30に記載の変異を導入した。
【0055】
【表1】

【0056】
作成した変異体の一覧を表1に示す。一番左のカラムのうち、CTLD(Wild)は野生型のLOX−1 CTLDを示し、その他は変異体の名前を示す。一番上のCTLD(Wild)の行は野生型におけるアミノ酸の位置及びアミノ酸の種類を示し、その下に各変異体について変異を導入した場所と置換したアミノ酸をそれぞれ示す。トロンビン耐性は変異を導入した場所の耐性の程度を示す。結合活性は、酸化LDLとの結合程度を示す。(それぞれ後に記載する方法による)
【0057】
各変異体作成のために用いたプライマーは、以下のとおりである(図4〜6)。尚、以下のプライマーの説明において、例えば、「G232A」は、232番目における野生型のG(グリシン)をA(アラニン)に変換したことを意味するものとする。
(a)232位のグリシンの置換
G232C:5’−tatttagagtccgatgcgctgtctcccagac−3’(配列番号8)
G232D:5’−tatttagagtccgagatgctgtctcccagac−3’(配列番号9)
G232E:5’−tatttagagtccgagaggctgtctcccagac−3’(配列番号10)
G232F:5’−tatttagagtccgattcgctgtctcccagac−3’(配列番号11)
G232H:5’−tatttagagtccgacacgctgtctcccagac−3’(配列番号12)
G232I:5’−tatttagagtccgaatcgctgtctcccagac−3’(配列番号13)
G232K:5’−tatttagagtccgaaaggctgtctcccagac−3’(配列番号14)
G232L:5’−tatttagagtccgactcgctgtctcccagac−3’(配列番号15)
G232M:5’−tatttagagtccgaatggctgtctcccagac−3’(配列番号16)
G232N:5’−tatttagagtccgaaacgctgtctcccagac−3’(配列番号17)
G232P:5’−tatttagagtccgacccgctgtctcccagac−3’(配列番号18)
G232Q:5’−tatttagagtccgacaggctgtctcccagac−3’(配列番号19)
G232R:5’−tatttagagtccgacgcgctgtctcccagac−3’(配列番号20)
G232S:5’−tatttagagtccgaagcgctgtctcccagac−3’(配列番号21)
G232T:5’−tatttagagtccgaaccgctgtctcccagac−3’(配列番号22)
G232V:5’−tatttagagtccgagtcgctgtctcccagac−3’(配列番号23)
G232W:5’−tatttagagtccgatgggctgtctcccagac−3’(配列番号24)
G232Y:5’−tatttagagtccgatacgctgtctcccagac−3’(配列番号25)
【0058】
(b)249位のグリシンの置換
G249C:5’−catatatacaacgatgcgctgtttatgcgg−3’(配列番号26)
G249D:5’−catatatacaacgagacgctgtttatgcgg−3’(配列番号27)
G249E:5’−catatatacaacgagaagctgtttatgcgg−3’(配列番号28)
G249F:5’−catatatacaacgattcgctgtttatgcgg−3’(配列番号29)
G249H:5’−catatatacaacgacacgctgtttatgcgg−3’(配列番号30)
G249I:5’−catatatacaacgaatagctgtttatgcgg−3’(配列番号31)
G249K:5’−catatatacaacgaaaagctgtttatgcgg−3’(配列番号32)
G249L:5’−catatatacaacgactagctgtttatgcgg−3’(配列番号33)
G249M:5’−catatatacaacgaatggctgtttatgcgg−3’(配列番号34)
G249N:5’−catatatacaacgaaacgctgtttatgcgg−3’(配列番号35)
G249P:5’−catatatacaacgaccagctgtttatgcgg−3’(配列番号36)
G249Q:5’−catatatacaacgacaagctgtttatgcgg−3’(配列番号37)
G249R:5’−catatatacaacgacgcgctgtttatgcgg−3’(配列番号38)
G249S:5’−catatatacaacgatcagctgtttatgcgg−3’(配列番号39)
G249T:5’−catatatacaacgaacagctgtttatgcgg−3’(配列番号40)
G249V:5’−catatatacaacgagtagctgtttatgcgg−3’(配列番号41)
G249W:5’−catatatacaacgatgggctgtttatgcgg−3’(配列番号42)
G249Y:5’−catatatacaacgatacgctgtttatgcgg−3’(配列番号43)
【0059】
(c)231位のアルギニンの置換
R231Q:5’−cttatttagagtccaaggcgctgtctccc−3’ (配列番号44)
【0060】
(d)248位のアルギニンの置換
R248D:5’−gtgcatatatacaagatggagctgtttatgcg−3’(配列番号45)
R248G:5’−gtgcatatatacaaggtggagctgtttatgcg−3’(配列番号46)
【0061】
(e)271位のアルギニン、及び、272位のアラニンの置換
R271L A272T:5’−agaaggcaaacctattaacacagcatcatcatc−3’(配列番号47)
【0062】
(f)208位のアルギニン、及び、209位のアルギニンの置換
R208L R209K:5’−ggatggggctgtctctgaagaaccccagctaccc−3’(配列番号48)
R208M R209K:5’−ggatggggctgtctatgaagaaccccagctaccc−3’(配列番号49)
【0063】
(g)229位のアルギニン、及び、230位のバリンの置換(231位のアルギニンもグルタミン酸に置換)
R229K V230T:5’−gccccacttatttaaaacccaaggcgctgtctc−3’(配列番号50)
【0064】
得られた増幅転写物を上記実施例1に記載の方法に準じてプラスミドベクターpET22b(Novagen社)に導入した。得られたプラスミドを実施例2(1)に記載の方法に準じて大腸菌BL21(DE3)(Novagen社)に形質転換してCTLDを発現させた。その後、実施例2(1)に記載の方法に準じて培養産物を精製して各種LOX−1 CTLD変異体を得た。
【0065】
実施例4.LOX−1 CTLD変異体のトロンビン耐性測定
精製して得られたLOX−1 CTLD変異体25μgを、25μLの20mM Tris(pH8.4)、150mM NaCl、2.5mM CaClに溶解し、2Uのトロンビン(Novagen社)を加え、25℃で18時間反応させた。反応後、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を添加して反応を停止させ、直後に反応産物を定法に従ってSDS−PAGE用のサンプルとして調製した。SDS−PAGEで泳動後、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色を行った。
【0066】
結果を図1に示す。図中、左から順に、LOX−1 CTLD野生体、LOX−1 CTLD変異体(LK−KT−QG−LT)、LOX−1 CTLD変異体(MK−KT−QG−LT)、LOX−1 CTLD変異体(D−LT)、LOX−1 CTLD変異体(E−LT)を示す。また、図中、レーン1は分子量マーカーを、レーン2はトロンビン未処理の各種LOX−1 CTLDを、レーン3はトロンビン処理後の各種LOX−1 CTLDを表す。図に示されるとおり、LOX−1 CTLD変異体は、2Uのトロンビンで18時間処理しても分解されなかった。よって、トロンビンにより分解を受けない(トロンビン耐性が向上した)LOX−1 CTLD変異体が作成されたことが確認された。
【0067】
また、同様にトロンビン量を0Uから2Uまで変化させて、LOX−1 CTLD野生体、LOX−1 CTLD変異体(LK−KT−QG−LT)、LOX−1 CTLD変異体(E−LT)のトロンビンによる分解の様子を測定した結果を図2に示す。図は、各LOX−1 CTLDを表すバンドを示しており、図中、WTはLOX−1 CTLD野生体を、LK−KT−QG−LTはLOX−1 CTLD変異体(LK−KT−QG−LT)を、E−LTはLOX−1 CTLD変異体(E−LT)を示す。この結果から、LOX−1 CTLD野生体が比較的少量のトロンビンで分解されるのに対し、LOX−1 CTLD変異体(LK−KT−QG−LT)及びLOX−1 CTLD変異体(E−LT)は、0.5Uのトロンビン処理ではほとんど分解されず、2Uのトロンビン処理でも分解されずに残存することが示された。
【0068】
本実験の結果から、トロンビン耐性が向上したLOX−1 CTLD変異体を表1に示す。表1において、一番左のカラムのうち、CTLD(Wild)はLOX−1 CTLD野生体を示し、その他は変異体の名前を示す。一番上のCTLD(Wild)の行は野生型におけるアミノ酸の位置及びアミノ酸の種類を示し、その下に各変異体について変異を導入した場所と置換したアミノ酸をそれぞれ示す。表において、丸印はトロンビン耐性が野生型よりも向上したことを示し、三角印はトロンビン耐性が野生型よりもわずかに向上したことを示し、バツ印はトロンビン耐性が野生型と同程度であったことを示す。
【0069】
実施例5.LOX−1 CTLD変異体の酸化LDL結合能測定
トロンビン耐性の向上が示されたLOX−1 CTLD変異体が酸化LDL結合能を維持しているか否かを確認するために、各種LOX−1 CTLD変異体と酸化LDLとの結合能を測定した。
(1)酸化LDLの調製
酸化LDLを、以下のように調製した。調製に際して、可能なものはすべて滅菌し、可能な限り無菌的に操作した。LDL(CHEMICON社)は、酸化する前に予め透析して、EDTAを完全に取り除いた。その後、EDTA非含有LDLを、濃度が1mg/mLとなるようにEDTA非含有PBS(以下、PBS(−)という)に溶解し、作製した溶液に、最終濃度が5μMになるようにCuSOを添加した。次いで、この溶液を、37℃で20時間インキュベートし、その後、1mM EDTA(最終濃度)を添加して、酸化を停止した。反応停止後の溶液を、PBS(−)(1mM KHPO、10mM NaHPO、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH7.4)に対して透析した。得られた酸化LDL含有溶液を濾過滅菌し、その濾液に0.02% NaN(最終濃度)を添加し、使用時まで4℃で保存した。酸化の程度は、TBARS Assay Kit(Cayman Chemical Company)を用いて、過酸化脂質量(約10nmol of MDA/mg proteinを目標)を測定することにより行った。
(2)酸化LDLへの結合活性測定
96穴プレート(Nunc社)に、LDLおよび(1)において調製した酸化LDLを、最終濃度が0.1μg/mL、0.5μg/ml、1μg/mLとなるようにTBSで希釈した後、100μL/ウェルずつ分注し、4℃で一晩放置した。TBSでプレートを洗浄し、5%BSA/TBSにて1時間ブロッキングし、さらにTBSで洗浄した後、5μg/mLに希釈したCTLD又はCTLD変異体溶液100μLを添加し、2時間室温で放置した。TBSにて十分に洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(Roche社)の100,000×希釈溶液を100μL/ウェルで添加し、さらに室温で1時間放置した。TBSにて十分に洗浄後、HRPの発色基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)(PIERCE社)を50μL/ウェルで添加し、発色を確認後に反応停止液として2M HSOを50μL/ウェルで加え、A450における吸光度を測定した。
【0070】
結果を図3に示す。本実験で用いた各種LOX−1 CTLD変異体の酸化LDL結合能は、LOX−1 CTLD野生体と比較して、遜色が無いことが示された。同様に、その他のLOX−1 CTLD変異体の酸化LDL結合能を測定した結果、LOX−1 CTLD野生体と同様の結合活性を有することが確認された(表1)。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本願発明のLOX−1酸化LDL結合ドメイン変異体は、トロンビンに分解されることなく酸化LDLへの結合能を維持することから、酸化LDL結合剤として利用することができる。具体的には、酸化LDLの除去及び測定に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(iii)のいずれかのポリペプチドであって、かつ、配列番号2における208番目、209番目、210番目、229番目、230番目、231番目、232番目、248番目、249番目、271番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が置換されているポリペプチド:
(i)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列と90%の相同性を有するアミノ酸配列を備えるポリペプチド;
(ii)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列をコードするDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA配列によりコードされたアミノ酸配列を備えるポリペプチド;あるいは、
(iii)配列番号2の143番目から273番目からなるアミノ酸配列のうち、1〜数個のアミノ酸が置換、欠失又は付加されたポリペプチド。
【請求項2】
以下の、(a)〜(k)からなる群から選択される任意の1以上のアミノ酸置換:
(a)配列番号2における208番目に該当するアルギニンの、ロイシン、リシン又はメチオニンへの置換;
(b) 配列番号2における209番目に該当するアルギニンの、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンへの置換;
(c) 配列番号2における210番目に該当するアスパラギンの、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンへの置換;
(d) 配列番号2における229番目に該当するアルギニンの、リシンへの置換;
(e) 配列番号2における230番目に該当するバリンの、スレオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンへの置換;
(f) 配列番号2における231番目に該当するアルギニンの、グルタミン又はリシンに置換されている、(1)に記載のポリペプチド。
(g) 配列番号2における232番目に該当するグルタミンの、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンへの置換;
(h) 配列番号2における248番目に該当するアルギニンの、アスパラギン酸、グリシン又はリシンへの置換;
(i) 配列番号2における249番目に該当するグリシンの、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンへの置換;
(j) 配列番号2における271番目に該当するアルギニンの、ロイシン、リシン又はグルタミンへの置換;及び、
(k) 配列番号2における272番目に該当するアラニンの、スレオニン、セリン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンへの置換
を備える、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
以下の、(a)〜(f)からなる群から選択される任意の1以上のアミノ酸置換:
(a) 配列番号2における208番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における209番目に該当するアルギニンが、リシン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている;
(b) 配列番号2における209番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における210番目に該当するアスパラギンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている;
(c) 配列番号2における229番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における230番目に該当するバリンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている;
(d) 配列番号2における231番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における232番目に該当するグリシンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている;
(e) 配列番号2における248番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における249番目に該当するグリシンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている;並びに、
(f) 配列番号2における271番目に該当するアルギニンが置換されておらず、かつ、配列番号2における272番目に該当するアラニンが、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はヒスチジンに置換されている、
を備える、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2における208番目に該当するアルギニンが、ロイシン、リシン又はメチオニンに置換され、配列番号2における209番目に該当するアルギニンが、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン又はヒスチジンに置換され、配列番号2における229番目に該当するアルギニンが、リシンに置換され、配列番号2における231番目に該当するアルギニンが、グルタミン又はリシンに置換され、配列番号2における248番目に該当するアルギニンが、アスパラギン酸、グリシン又はリシンに置換され、かつ、配列番号2における271番目に該当するアルギニンが、ロイシン、リシン又はグルタミンに置換されている、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
以下の、(a)〜(e)からなる群から選択される任意の1以上のアミノ酸置換:
(a)配列番号2における208番目に該当するアミノ酸のロイシン又はメチオニンへの置換;
(b)配列番号2における229番目に該当するアミノ酸のリシンへの置換;
(c)配列番号2における231番目に該当するアミノ酸のグルタミンへの置換;
(d)配列番号2における248番目に該当するアミノ酸のアスパラギン酸又はグリシンへの置換;並びに、
(e)配列番号2における271番目に該当するアミノ酸のロイシンへの置換
を備える、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
配列番号2における209番目、210番目、230番目、232番目、249番目、及び/又は、272番目に該当するアミノ酸が、リシン、スレオニン、システイン、ヒスチジン、アスパラギン酸、又は、グルタミン酸に置換されている、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
以下の、(a)〜(e)からなる群から選択される任意の1以上のアミノ酸置換:
(a)配列番号2における209番目に該当するアミノ酸のリシンへの置換;
(b)配列番号2における230番目に該当するアミノ酸のスレオニンへの置換;
(c)配列番号2における232番目に該当するアミノ酸のシステイン、ヒスチジン、アスパラギン酸又はグルタミン酸への置換;
(d)配列番号2における249番目に該当するアミノ酸のシステイン、ヒスチジン、アスパラギン酸又はグルタミン酸への置換;並びに、
(e)配列番号2における272番目に該当するアミノ酸のスレオニンへの置換
を備える、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
配列番号2における208番目及び/又は209番目に該当するアミノ酸、229番目及び/又は230番目に該当するアミノ酸、231番目及び/又は232番目に該当するアミノ酸、248番目及び/又は249番目に該当するアミノ酸、並びに、271番目及び/又は272番目に該当するアミノ酸が置換されている、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
野生型LOX−1と比較して、トロンビンによる分解量が少ないことを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
LOX−1結合物質への結合活性を有する、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
LOX−1結合物質が酸化LDLである、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項13】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のポリペプチドを含有する、LOX−1結合物質除去剤。
【請求項14】
酸化LDL除去剤である、請求項13に記載の除去剤。
【請求項15】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のポリペプチドを含有する、LOX−1結合物除去装置。
【請求項16】
LOX−1結合物が酸化LDLである、請求項15に記載の除去装置。
【請求項17】
検体中のLOX−1結合物質の除去方法であって、
血液又は血液成分と請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のポリペプチドとを接触させるステップを備える方法。
【請求項18】
LOX−1結合物質が酸化LDLである、請求項17に記載の除去方法。
【請求項19】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のポリペプチドを含有する、LOX−1結合物質測定用キット。
【請求項20】
検体中のLOX−1結合物質の測定方法であって、
検体を調整する工程;及び、
検体と請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のポリペプチドとを接触させるステップを備える方法。



【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−227057(P2010−227057A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80613(P2009−80613)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(508311396)株式会社ファルミット (5)
【Fターム(参考)】