説明

プロテアーゼ阻害剤を使用して炎症性疾患を治療する組成物及び方法

プロテアーゼ阻害剤を含む組成物、そして使用方法及び製造方法を説明する。この組成物は、担体又は希釈剤中に有効量のプロテアーゼ阻害剤を含有し、炎症性及び過剰増殖性粘膜皮膚障害を治療するため使用される。好ましくは、この担体又は希釈剤はゲル化剤であり、前記組成物は、水性液体又は粘性ゲル製剤中にアルファ1-抗トリプシンを含む局所用ゲル製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアーゼ阻害剤組成物、及びこの組成物を治療用途に使用することに関する。具体的には本発明は、過剰増殖性、炎症性の粘膜皮膚障害を治療又は予防するためのプロテアーゼ阻害剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過剰増殖性及び炎症性の皮膚又は粘膜皮膚の障害には、米国内で毎年数百万人が罹患している。このような疾患の範囲は軽度のものから致命的なものまでにわたり、例えば皮膚癌、アトピー性皮膚炎、乾癬、及び肺粘膜の炎症による喘息を含む。加えて、慢性炎症、及び環境障害、例えば紫外線に対して反復暴露されることに起因する不十分な皮膚修復によって、外因性皮膚老化が引き起こされるおそれがある。
【0003】
アトピー性皮膚炎は、世界中の至るところで極めて一般的である。この慢性的に再発する炎症性皮膚障害には、幼児の約10%及び米国の全人口の3%が罹患している。この疾患はいかなる年齢でも発生し得るが、しかしたいていは幼児から若年成人に発生する(Hanifin他、Arch. Dermatol, 135(12):1551(1999)参照)。先ず顔面に、次いで手足に症状が現れる。乾いた赤い斑点が全身に現れることがある。年長児の場合、皮膚のひだ、特にひじの折り目及び膝の後ろ側に最も頻繁に症状が現れる。成人の場合、顔面及び手が罹患する確率がより高い。
【0004】
湿疹は一般的な炎症性疾患の別の例である。湿疹は赤く、痒みを伴う非伝染性の炎症であって、急性又は慢性であり、赤い皮膚斑点、吹き出物、痂皮、又は疥癬が単独又は組み合わせで発生する。皮膚は乾燥しているか、又は水様液を排出することがあり、その結果、かゆみ感又は熱灼感が生じる。罹患皮膚は感染性になる場合がある。湿疹様皮膚炎の種々の原因は外的原因(刺激、アレルギー反応、或る特定の微生物又は化学物質に対する暴露、など)、先天的原因(遺伝的素因)、及び環境的原因(ストレス、熱、など)として分類される。湿疹は何年もの間出現せず、後で異なる部位に再び現れるだけのことがある。湿疹は、最も一般的にはアトピー性皮膚炎を含むいくつかの形態のいずれかで出現することがある。
【0005】
アトピー性皮膚炎と似てはいるが、しかし皮膚ではなく粘膜組織に作用する状態が喘息である。喘息は気道の炎症によって特徴付けされる慢性肺疾患である。この状態は、約15万人の米国人が罹患していると推定され、重症の場合があり、治療されなければ死を招くおそれがある。多数の因子が喘息を悪化させる。これらの因子は例えば、温度又は湿度の急変、アレルギー、上部呼吸器感染、運動又はストレスを含む。典型的な治療薬は、経口投与されるか、又はエアロゾル(吸入薬)として送達される気管支拡張薬、及び、最も困難な事例ではコルチコステロイドを含む。粘膜皮膚炎症性障害の別の例は、アレルギー性鼻炎(花粉症)である。アレルギー性鼻炎は、刺激物又はアレルゲンに応答した鼻炎によって引き起こされる。この状態は季節性であるか又は一年を通して発生し得る(通年性)。現在、アレルギー性鼻炎は、抗ヒスタミン薬を経口又は局所(すなわち鼻腔スプレーを使用)投与することにより治療される。
【0006】
粘膜皮膚炎症性障害の他の例は、角化障害及び丘疹鱗屑性障害に関与する障害を含む。このような障害の例は、葉状魚鱗癬、座瘡、酒さ性座瘡、乾癬、及び扁平苔癬を含む。丘疹鱗屑性障害は、その名が示唆する通り、うろこ状の丘疹及びプラークを特徴とする。より一般的な丘疹鱗屑性障害のいくつかは、乾癬及び扁平苔癬を含む。これらは両方とも、皮膚又は粘膜組織(例えば口腔扁平苔癬の場合)の局所的な炎症によって明らかになる。
【0007】
乾癬は永続的な皮膚疾患である。皮膚は炎症性になり、銀色の鱗屑を伴う赤い肥厚部を最も多くの場合には頭皮、ひじ、膝及び下背に形成する。重症の乾癬は、身体の広い面積に及ぶことがある。乾癬は伝染性ではなく、何らかの遺伝的根拠を有している。それというのも、乾癬は、家族に乾癬患者がいる人々に発生する確率が高いからである。米国内では成人の約2%が乾癬を有している(4〜5百万人)。毎年ほぼ150,000件の新しい事例が発生している。乾癬の原因は知られていないが、最近の発見は、皮膚内の炎症をトリガーする、血流中の主要白血球の機能異常を指摘している。乾癬は従って、少なくとも部分的には、皮膚の何らかの成分に対する異常な免疫反応に起因すると考えられる。このような異常な免疫反応は、白血球を含む炎症性細胞を組織内に局所侵入させ、細胞付着分子を発現させ、そして炎症性白血球及び成長因子をアップレギュレートさせる。結果として、乾癬の2つの特性は、局所的な炎症及び表皮過剰増殖である。過剰増殖と不完全な末端分化との組み合わせは、肥厚化された角質層又はプラークを形成させる。
【0008】
過剰増殖性皮膚障害は、皮膚細胞の増殖及び分化を制御する調節メカニズムの損失の結果生じる。基底細胞癌及び扁平上皮癌は、皮膚癌の最も一般的な形態である。約1,300,000件の皮膚癌の事例が1年当たり米国内で見いだされる。基底細胞癌及び扁平上皮癌(カポジ肉腫)の双方は、皮膚の最外層である表皮に作用し、そして表皮のそれぞれ基底細胞層及びより上側の細胞層で始まる。これらの皮膚癌の成長は遅く、通常は良性であるが、治療しない場合には、成長して他の組織を侵襲する。
【0009】
炎症性及び過剰増殖性障害の結果として生じる変化に加えて、皮膚の外見及び特徴はまた、身体の加齢に伴って変化する。年代的に老化した(本質的に老化した)粘膜皮膚表面は、表皮のわずかな萎縮、及び真皮/表皮接合の弱化を示す。皮膚の乾燥は共通の現象である。真皮は細胞数及び弾性線維の減少、ひいては皮膚の弾性の低減を示す。挫傷しやすさによって証明されるように、毛細管も脆い。コラーゲン代謝が低速になり、グリコサミノグリカンの濃度が徐々に低くなり、ひいては皮膚のたるみが生じる。
【0010】
老化皮膚においては、炎症応答を引き起こす能力が低下し、負傷後の治癒時間が長くなる。環境障害、例えばすなわち刺激性物質及び日光(紫外線)に対して暴露された部位で、局所的な皮膚炎症の発生に起因して、老化が加速される。日光に対する暴露から生じる皮膚老化プロセスは、「光老化」と呼ばれる。「光老化」は、皮膚老化の目に見える変化の約80%を占める。光老化は、伸ばすことによって消すことのできない深いしわ、色素沈着の過剰及び不足の部位(光線性黒子及び白斑)を伴う色素変化、並びに種々の良性、前癌性及び悪性腫瘍を誘発する。真皮は、細胞質の増大及び線維芽細胞の拡大によって慢性炎症の証拠を示す。
【0011】
これらの状態のうちのいくつかに対して或る特定の治療薬が開発されてはいるものの、これらの治療薬はしばしば効果がないか、又は人によっては耐えられないものであるか、又は1種又は2種以上の副作用を伴い、これらの使用を制限してしまう。これらの状態のうちのいくつかの場合、効果的な治療薬は目下存在しない。目下利用可能な治療薬によって示された副作用は、投薬中止時に生じる疾患活動のリバウンド(すなわちグルココルチコイド、シクロスポリンA様薬)、及び癌発生率の増大(すなわちPUVA)、及び毒性(すなわち代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート)を含む。加えて、極めて不便 (コールタール治療)又は侵襲的(すなわち外科手術)な処置がある。皮膚光損傷に対する現在の治療薬は、レチノイド及びアルファ-ヒドロキシ酸を含む。これらは光感受性、制限された効力、及び不都合な副作用を示す。活性成分を含有する安全な賦形剤は稀であり、薬用化粧品業界で大きな需要がある。
【0012】
目下、炎症性粘膜皮膚疾患又は障害を治療するための効果的で安全な組成物に対する医療上の必要性はほとんど満たされていない。全身性の副作用を回避するために、経口送達薬よりも、局所用製剤が好まれるのが典型的である。にもかかわらず、炎症性粘膜皮膚疾患又は障害の治療に臨床的に使用するのに適した局所用製剤の開発は、かなりの難関である。具体的には、皮膚又は粘膜への十分な浸透に関連する問題が今もなお関心の対象となっている。
【0013】
さらに、ゲル又はゲル化剤を含有する局所的製剤の場合、ゲルのpH、可溶性、稠度、及び無菌性の問題が生じる。ゲル製剤中のpHを均一にすることが、局所用製品の安全性にとって必要ではあるが、しかしこれを得るのは難しい。さらに、濾過滅菌技術及び加熱滅菌技術を用いると必ず活性成分の活性を破壊してしまうならば、ゲル製剤の無菌性を達成することは難しい。加えて、好適な局所用ゲルは、負傷部位との接触を失うことなしに、治療されるべき領域全体にわたってゲルを広げることを可能にする所定の可溶性及び稠度を有していなければならない。
【0014】
前記の点から見て、数多くの炎症性及び過剰増殖性粘膜皮膚障害を効果的に治療するための新しいプロテアーゼ阻害剤組成物が当業者に強く必要とされていることは、容易に明らかである。本発明はこれらの、及びその他の必要性に対処する。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
プロテアーゼ阻害剤組成物、及びこの組成物の製造方法及び使用方法が本明細書中に記載されている。この組成物は、医薬として許容可能な担体又は希釈剤中に有効量のプロテアーゼ阻害剤を含有する医薬組成物である。この組成物は、種々の過剰増殖性及び炎症性粘膜皮膚障害を予防して治療するのに有用である。
【0016】
好ましくは、本明細書中に記載された組成物中のプロテアーゼ阻害剤は、セリン・プロテアーゼ阻害剤である。最も好ましくは、プロテアーゼ阻害剤はアルファ1-抗トリプシンである。好ましい担体は、任意には生理的緩衝剤と組み合わされたゲル化剤である。この組成物中のプロテアーゼ阻害剤の好ましい濃度は、約0.001%〜約30% w/w、より好ましくは約0.1%〜約3% w/w、又は最も好ましくは約1%〜約1.5% w/wである。
【0017】
組成物中のアルファ1-抗トリプシンは、アルファ1-抗トリプシンの天然型タンパク質、分離型タンパク質、合成型タンパク質、組換え型タンパク質、修飾タンパク質、生体活性断片、実質的に相同のタンパク質、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、タンパク質の変異体、誘導体、類似体、融合タンパク質、又はアゴニストである。
【0018】
本明細書中に記載された医薬組成物中の生理的緩衝剤は、緩衝剤、例えばトリス、ヒスチジン、トリエタノールアミン及び塩を含む。塩は好ましくは、NaCl、KCl、又はリン酸塩である。生理的緩衝剤は好ましくは、0〜250mM リン酸塩、0〜250mM NaCl、又は0〜250 mM KClを含有する。より好ましくは、生理的緩衝剤は、5〜100mMリン酸塩、5〜100mM NaCl、又は5〜100 mM KClを含有する。医薬組成物中に使用される生理的緩衝剤のpH範囲は好ましくはpH約6〜約9、より好ましくはpH約6.5〜約8、最も好ましくはpH約7〜約7.5である。
【0019】
本明細書中に記載された医薬組成物中のゲル化剤は、医薬として好適な任意のゲル化剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせを含む。ゲル化剤の濃度範囲は、好ましくは約0.1%〜約50% w/w、より好ましくは約0.5%〜約5% w/w、又は最も好ましくは約0.25%〜約2% w/wである。
【0020】
組成物は任意には、保存剤、還元剤(すなわちジチオトレイトール、N-アセチルシステイン、システイン、グルタチオン)、抗酸化剤(すなわちアスコルビン酸、メチオニン)、キレート剤(すなわちEDTA又はクエン酸塩)、充填剤/安定剤(すなわち、特にトレハロース、スクロース、グリシン、マンニトール、デキストラン、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、アルブミン、二糖、例えばスクロース、環状オリゴ糖、例えばシクロデキストリン、L-アスコルビン酸又はその誘導体、トコフェロール、又はこれらの組み合わせ)、界面活性剤(すなわちtween, nonidet, triton又はspan)、賦形剤、又はこれらの組み合わせを含有する。
【0021】
組成物の完全性を維持するために保存剤が使用され、これらの保存剤は、例えば約0.001%〜約0.5% w/wの好適な濃度で、クオタニウム、メチルパラベン、フェノール、パラ-ヒドロキシベンゾエート化合物、プロピレングリコール、プロピルパラベン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0022】
種々の炎症性又は過剰増殖性粘膜皮膚疾患、障害又は症候群を治療又は予防する方法において、これらの疾患、障害又は症候群は、皮膚障害、肺障害、耳障害、眼疾患、胃腸管障害、又は尿路障害を含む。
【0023】
組成物の製造方法によれば、プロテアーゼ阻害剤は、医薬として許容可能な担体又は希釈剤、好ましくはゲル化剤と組み合わされる。組成物は、ゲル内部の好適なpH条件、最適なプロテアーゼ阻害剤可溶性、ゲル稠度、安定性、及び無菌性を、結果として得られる組成物において保証する手順に従って調製される。
【0024】
本発明の別の観点において、過剰増殖性及び炎症性粘膜皮膚障害を治療及び/又は予防するための医薬パック又はキットが提供される。医薬パック又はキットは、本明細書中に記載された医薬組成物の成分のうちの1種又は2種以上が充填された1つ又は2つ以上の容器と、これを使用するための指示書とを含む。任意には、このような容器とともに、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式で注意書きを記載することができる。この注意書きは、ヒトへの投与のための製造、使用又は販売が政府機関によって承認されていることを反映する。
【0025】
発明の詳細な説明
プロテアーゼ阻害剤を含有する組成物、過剰増殖性又は炎症性粘膜皮膚障害を予防又は治療する方法、及びこの組成物の製造方法がここに提供される。組成物は、医薬として許容可能な担体又は希釈剤中にプロテアーゼ阻害剤を含有する。好ましいプロテアーゼ阻害剤はセリン・プロテアーゼである。好ましい担体又は希釈剤はゲル化剤である。有効量のプロテアーゼ阻害剤を含有するゲル製剤は、治療用組成物として使用する際に、予期せぬほどに優れた活性及び安定性を示すことが判った。本明細書中に記載されたゲル製剤は、所望のpH範囲内で均一なpHを維持し、そして改善されたプロテアーゼ阻害剤可溶性、ゲル稠度、及び無菌性を示した。
【0026】
プロテアーゼ阻害剤
本明細書中に記載された組成物は、炎症状態を治療する上で効果的なプロテアーゼ阻害剤を含有する。プロテアーゼ阻害剤はほぼ10%のヒト血漿タンパク質を含む。多数の天然発生型プロテアーゼ阻害剤は、これらの反応を局所的且つ一時的に制限することによって内生的プロテアーゼを制御するのに役立つ。特にタンパク質分解攻撃及び感染を被りやすい組織、すなわち呼吸管の組織はプロテアーゼ阻害剤が豊富である。内生的タンパク質分解酵素は、侵襲性有機体、抗原-抗体複合体、及びもはや必要でないか又は有用でない特定の組織タンパク質を分解するのに役立つ。正常に機能している体内では、タンパク質分解酵素が制限された量で生成され、そして、プロテアーゼ阻害剤の合成を介して部分的に調節される。
【0027】
プロテアーゼ/プロテアーゼ阻害剤のバランスが乱れると、プロテアーゼ媒介性の組織破壊が生じるおそれがある。このような組織破壊は、気腫、関節炎、糸球体腎炎、歯周病、筋ジストロフィ、腫瘍浸潤及び種々のその他の病的状態を含む。或る特定の状況では、すなわちいくつかの病理プロセス、例えば敗血症又は急性白血病の場合、遊離タンパク質分解酵素の量が、分泌細胞から酵素が放出されることにより増大する。加えて、有機体の調節阻害剤キャパシティが減少することにより、プロテアーゼ/プロテアーゼ阻害剤のバランスが変化することもある。減少したこのような調節阻害剤キャパシティの一例は、アルファ1-抗トリプシンの欠乏であり、この欠乏は肺気腫の発生と高く相関される。
【0028】
本明細書中に記載された組成物中のプロテアーゼ阻害剤は、抗炎症活性を示し、そして好ましくは、組成物中の分離された、そして実質的に精製された化合物として提供される。本明細書中に記載された組成物において有用なプロテアーゼ阻害剤は一般に、例えば特にアスパチル・プロテアーゼ阻害剤、システイン・プロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、セリン・プロテアーゼ阻害剤、アルファ1-抗トリプシン、アルファ1-抗キモトリプシン、分泌白血球プロテアーゼ阻害剤、C-反応性タンパク質、血清アミロイドAタンパク質、アルファ2-マクログロブリン、エグリン、エラスニン3、エラスチナル、アプロチニン、ロイペプシン、アンチパイン、ペプスタチン、ホスホラミドン、アルブミン又は大豆に由来するトリプシン阻害剤、ギャバキサート・メシレート、又はこれらの組み合わせを含む。プロテアーゼ阻害剤は好ましくはセリン・プロテアーゼ阻害剤である。より好ましくは、プロテアーゼ阻害剤はアルファ1-抗トリプシン又は組換え型1-抗トリプシン(rAAT)である。
【0029】
組成物中のプロテアーゼ阻害剤は、多くの種から誘導することができ、タンパク質の天然形、合成形又は組換え形を含む。組成物中のプロテアーゼ阻害剤はさらに、ペプロテアーゼ阻害剤のペプチド断片、生体活性断片、実質的に相同のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質、又はポリペプチドのアゴニストを含む。プロテアーゼ阻害剤はまた、プロテアーゼを阻害することができる小合成分子を含む。
【0030】
組成物中のプロテアーゼ阻害剤は、分離されるか、合成されるか、又は組換え技術によって生成される。天然型プロテアーゼ阻害剤は、例えば精液、血液、尿、血漿(すなわち自己又は相同ヒト血漿)、乳を含む体液、或いは培養された真核細胞(昆虫又は哺乳動物細胞)又は原核細胞(酵母、細菌)から、当業者に知られた技術によって分離される。或いは、組換えDNA法によってプロテアーゼ阻害剤を生成することもできる。このような方法は、当業者によく知られている。組換えDNA技術を用いることによるプロテアーゼ阻害剤生成法の一例は、(1)当該プロテアーゼ阻害剤ポリペプチドを同定して精製し、(2)精製ポリペプチドのN末端アミノ酸配列を決定し、(3)N末端アミノ酸配列に対応するDNAオリゴヌクレオチド・プローブを合成的に生成し、(4)ヒト又はその他の哺乳動物のDNAからDNA遺伝子バンクを生成し、(5)遺伝子バンクをDNAオリゴヌクレオチド・プローブでプロービングし、(6)オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成するクローンを選択し、(7)クローンから阻害剤遺伝子を分離し、(8)遺伝子を好適なベクター、例えば発現ベクター内に挿入し、(9)遺伝子含有ベクターを、阻害剤遺伝子を発現させることができる微生物又はその他の発現系内に挿入し、そして(10)組換えにより生成されたプロテアーゼ阻害剤を分離する工程を伴う。上記技術は実験マニュアル、例えば「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」最新版、Sambrook他、Cold Spring Harbor Press (1989)により十分に記載されている。プロテアーゼ阻害剤はまた、組換え真核細胞又は原核細胞発現系において生成され、そしてカラム・クロマトグラフィで精製される。有用な発現系の一例としては、E. coli、昆虫又は酵母発現系が挙げられる。
【0031】
プロテアーゼ阻害剤、又はその生体活性断片を生成するさらに別の方法は、ペプチド合成によって実施される。例えばプロテアーゼ阻害剤の生体活性断片が見いだされると、この断片は例えば、自動ペプチド配列決定法によって配列決定することができる。或いは、プロテアーゼ阻害剤をコードする遺伝子配列又はDNA配列が、例えば上記方法によって分離されると、DNA配列を決定することができる。DNA配列は、アミノ酸配列に関する情報を提供する。こうして、生体活性断片が特定の方法、例えばトリプシン消化によって生成される場合、或いは、断片がN末端配列決定される場合、残りのアミノ酸配列は、対応するDNA配列から決定することができる。
【0032】
ペプチドのアミノ酸配列、例えばN末端20個のアミノ酸が既知である場合、断片は、「Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach」(E. Atherton及びR.C. Sheppard, IRL Press, Oxford England)によって例示されているような、当業者によく知られた技術によって合成することができる。同様に、複数の断片を合成し、これらの断片を続いて互いに結合することにより、より大型の断片を形成することができる。これらの合成ペプチド断片を特異的位置でアミノ酸置換することにより形成し、これによりin vitro及びin vivoでのアゴニスト活性及びアンタゴニスト活性に関して試験を行うこともできる。
【0033】
本明細書中に使用される「プロテアーゼ阻害剤の生体活性断片」という用語は、本明細書中に記載されたプロテアーゼ阻害剤のうちの1種又は2種以上の活性と類似してはいるが、しかし必ずしも同一ではない活性を示す断片を意味する。生体活性断片は、所望の活性の増大又は改善及び/又は不所望の活性の減少を示すことができる。
【0034】
修飾プロテアーゼ阻害剤
組成物中で有用なプロテアーゼ阻害剤は、種々の修飾形、具体的には、宿主細胞中にポリヌクレオチドを発現させることによって合成されたポリペプチド中に存在する修飾形を包含するポリペプチドを含む。
【0035】
言うまでもなく、ポリペプチドはしばしば、20天然発生型アミノ酸と一般に呼ばれる20種のアミノ酸以外のアミノ酸を含有し、そして、末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸を、天然プロセス、例えばプロセッシング及び他の翻訳後修飾によって、又は化学修飾技術によって、所与のポリペプチドにおいて修飾することができる。ここで採用されるポリペプチド中に存在し得る修飾の一例としては、特にアセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジリノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、アンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペジル化、タンパク質分解プロセッシング、ホスホリル化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介性付加、例えばアルギニル化及びユビキチン化、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
言うまでもなく、ポリペプチドは常に全体的に線状というわけではない。例えばポリペプチドはユビキチン化の結果として分岐されてよく、また分岐の有無にかかわらず、一般に翻訳後の事象として環状であってよい。これらの事象は天然プロセッシング事象を含む。環状、分岐状、及び分岐環状ポリペプチドは、非翻訳天然プロセスによって、そして合成法によっても合成することができる。
【0037】
ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノ末端又はカルボキシル末端を含む、ポリペプチドにおける任意の位置で、修飾が発生する。共有結合修飾によるポリペプチド中のアミノ基又はカルボキシル基の封鎖は、天然型又は合成型のポリペプチド中に発生し、このような修飾形もまた本発明のポリペプチド中に存在する。一般に修飾の性質及び範囲は、宿主細胞の翻訳後修飾キャパシティ、及びポリペプチドアミノ酸配列中に存在する修飾シグナルによって決定される。言うまでもなく、同じタイプの修飾が同じ度合い又は種々の度合いで、ポリペプチド内のいくつかの部位に存在することができる。また、ポリペプチドは2つ以上のタイプの修飾を含有することもできる。
【0038】
プロテアーゼ阻害剤の変異形は、アミノ酸配列が基準ポリペプチドとは異なるポリペプチドを含む。一般に、基準配列と変異形配列とは全体的に極めて類似しており、多くの領域で同一であるように、差異は限定される。変異形プロテアーゼ阻害剤と基準プロテアーゼ阻害剤とは、1つ又は2つ以上の置換、付加、欠失、融合及び切除によってアミノ酸配列が異なっていてよい。これらの置換、付加、欠失、融合及び切除は任意の組み合わせで存在していてよい。
【0039】
本明細書中に記載されたプロテアーゼ阻害剤は、ポリペプチドの切除形、及び/又はN-末端延長形又はC-末端延長形、アミノ酸置換、付加及び/又は欠失を有する類似体、対立遺伝子変異体、及びポリペプチドの誘導体を、これらの配列が天然型プロテアーゼ阻害剤ポリペプチドと実質的に相同である限り、含むことができる。
【0040】
具体的には、当業者には明らかなように、本明細書中に記載された組成物中のプロテアーゼ阻害剤は、アミノ酸配列又はその他の特性のわずかな変異を有するポリペプチドを含む。このような変異は、例えば遺伝的多型に基づく上述のような対立遺伝子変異形として自然に生じることができ、或いは、人間の介入によって(すなわちクローニングされたDNA配列の突然変異誘発によって)、例えば誘発された点、欠失、挿入及び置換突然変異形によって生成することができる。アミノ酸配列のわずかな変化、例えば保守的アミノ酸置換、小さな内部欠失又は挿入、及び分子末端における付加又は欠失が一般には好ましい。例えば、Dayhoff他、Atlas of Protein Sequence and Structure, Nat'l Biomed. Res. Found., Washington, D.C.(1978)のモデルに基づいて、置換形を設計することができる。これらの修飾は結果として、アミノ酸配列を変化させるか、サイレント突然変異形を提供するか、又は制限部位を修飾するか、或いは他の特異的突然変異形を提供することができる。
【0041】
当業者には明らかなように、そして上述のように、組成物のプロテアーゼ阻害剤を、異種ポリペプチド配列と融合することができる。例えば、プロテアーゼ阻害剤(その断片又は変異形を含む)を1種又は2種以上の付加的なプロテアーゼ阻害剤、又はその他の非炎症性ポリペプチドと融合することができる。プロテアーゼ阻害剤は、遺伝子工学により作り出された可溶性融合タンパク質を包含することもできる。これらのタンパク質は、プロテアーゼ阻害剤ポリペプチド、例えばアルファ1-抗トリプシンと、他のタンパク質の種々の部分、例えば膜結合タンパク質とから成っている。
【0042】
医薬組成物
本明細書中に記載された医薬組成物は、炎症性粘膜皮膚又は呼吸器疾患を治療又は予防するのに有効な量のプロテアーゼ阻害剤と、医薬として許容可能な担体又は希釈剤とを含有する。上述のように、好ましいプロテアーゼ阻害剤はセリン・プロテアーゼ、例えばアルファ1-抗トリプシンである。好ましい担体はゲル化剤である。「医薬として許容可能な」という用語は本明細書では、動物、より具体的にはヒトにおいて使用されるものとして、その物質が連邦政府又は州政府の規制当局によって承認されているか、或いは、米国薬局方又は他の公認薬局方においてリストに挙げられていることを意味するものと解釈される。プロテアーゼ阻害剤は、任意には1種又は2種以上の他の医薬活性物質と組み合わされる。
【0043】
プロテアーゼ阻害剤は、天然物質(遊離塩基)又は塩の形態で調製することができる。医薬として許容可能な塩は、アニオン、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されたアニオンで形成された塩、並びに、カチオン、例えば特にナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、又はプロカインから誘導されたカチオンで形成された塩を含む。
【0044】
組成物中のプロテアーゼ阻害剤の医薬として有効な量は、例えば約0.001%〜約30% w/w、好ましくは約0.01%〜約10% w/w、より好ましくは約0.05%〜約5% w/w、約0.1%〜約3% w/w、又は約0.5%〜約2.5% w/w、そして最も好ましくは約1%〜約1.5% w/wである。
【0045】
本明細書中に使用される「担体」という用語は、治療薬が投与される際の希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを意味する。このような医薬担体は、例えば特に、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、油{すなわち、石油、動物、植物に由来する油(落花生油、ヒマワリ油、オリーブ油、アーモンド油、くるみ油、大豆油、パイン油、ゴマ油)を含む。医薬組成物が局所投与又は注射投与される場合には、水が好ましい担体である。生理食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も、特に注射溶液及び局所投与のための液状担体として採用される。好ましい実施態様の場合、医薬組成物は、粘膜に局所投与又は投与するために構成されたゲル製剤であり、医薬として有効量のプロテアーゼ阻害剤、ゲル化剤、及び任意には生理的緩衝剤を含む。組成物はまた任意には水を含有する。
【0046】
好ましい医薬組成物は、アルファ1-抗トリプシン、生理的緩衝剤、及びゲル化剤を含有するプロテアーゼ阻害剤ゲル製剤である。ゲル化剤との組み合わせに最も適した生理的緩衝剤は、トリス、ヒスチジン、トリエタノールアミン及び塩を含む。塩は好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はリン酸塩である。好ましい製剤において、生理的緩衝剤は好ましくは、0〜250mM リン酸塩、0〜250mM NaCl、又は0〜250 mM KClを含有する。より好ましい製剤の場合、生理的緩衝剤は、5〜100mMリン酸塩、5〜100mM NaCl、又は5〜100 mM KClを含有する。医薬組成物中に使用される生理的緩衝剤のpH範囲は好ましくはpH約6.0〜約9.0、より好ましくはpH約6.5〜約8.0、最も好ましくは約pH7.0〜約7.5である。
【0047】
医薬組成物のゲル化剤は、医薬として好適な任意のゲル化剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、ポロキサマー、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせを含む。組成物中のゲル化剤の濃度範囲は、例えば約0.1%〜約50% w/w、好ましくは約0.1%〜約10% w/w、約0.5%〜約5% w/w、約1.5%〜約4% w/w、又は約0.25%〜約2% w/w、又は最も好ましくは約0.3%〜約1% w/wである。
【0048】
好ましいゲル化剤は、組成物の約0.25%〜約2% w/w、又は約0.3%〜約1% w/wの濃度を有するポリアクリル酸である。ポリアクリル酸ゲルのpHは、例えば約5.0〜約9.0、好ましくは約6.0〜約8.0、より好ましくは約6.5〜約7.4である。ポリアクリル酸ポリマーはカルボマーとしても知られている。好ましいポリアクリル酸ポリマーは、Carbopol(登録商標)ポリマーの商品名(Noveon, Inc., Cleveland, OH)で販売されている。Carbopol(登録商標)カルボマーの好ましい等級は、P-934又はP-980である。
【0049】
或いは、ゲル化剤は、組成物中約18%〜約35% w/wの濃度のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーである。好ましくは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーの濃度は、約18%〜約25% w/wである。ブロックコポリマー・ゲルのpHは、例えば約5.0〜約9.0、好ましくは約6.0〜約8.0、より好ましくは約6.5〜約7.4である。ポロキサマーとしても知られる好ましいポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーは、Pluronic(登録商標)の商品名(BASF, Mt. Olive, NJ)で販売されている。Pluronic(登録商標)ポロキサマーの好ましい等級はF-127(ポロキサマー407)である。
【0050】
さらに別の実施態様の場合、ゲル化剤は吸湿性高分子量ポリマーである。吸湿性高分子量ポリマーは、例えばセルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC);無水マレイン酸-メチルメタクリレート・コポリマー、またはこれらのエステル(例えばメチルエステル及びエチルエステル);ポリビニルピロリジン又はその誘導体(例えばN-メチルビニルピロリジン);ビニル-アセテート;ポリビニル-アルコール;又はこれらの組み合わせを含む。好ましい実施態様の場合、ゲルは約1%〜約5% w/wのセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含有している。HPCの分子量は約370,000〜1,150,000 Dである。好ましくは、セルロース誘導体は約1.5% w/wの濃度で組成物中に存在している。
【0051】
本明細書中に記載された本発明の範囲には、プロテアーゼ阻害剤と1種又は2種以上の付加的な医薬活性物質との組み合わせを含有する医薬組成物も含まれる。組成物中で有用な医薬活性物質の一例としては、コルチコステロイド、例えば、ヒドロキシトリアムシノロン、アルファメチルデキサメタゾン、デキサメタゾンアセテート、ベータメタゾン、ベクロメタゾンジプロピロネート、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、吉草酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、二酢酸ジフルオロゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロンアセトニド、ピバリン酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルコルトロン、酢酸フルプレドニジン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、11-デソキシコルチゾール、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンヘキサセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルラドレノレンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン及びそのエステルの残り、クロロプレドニゾン、クロコルテロン、ピバリン酸クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドネート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メプレドニゾン、パラメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンテブテート、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、モメタゾンフロエート、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
他の医薬活性物質は例えば、特に抗生物質、細胞毒性薬、抗ウィルス薬、抗炎症薬(すなわち、特にサリチル酸塩、コルヒチン、パラ-アミノフェノール、プロピオン酸、ピロキシカム、ケトロラク、ケトプロフェン、シクロオキシゲナーゼII型阻害剤及びインドメタシン)、駆虫薬、ホルモン、成長因子、ビタミン、抗新生物薬、免疫応答薬、免疫抑制薬(すなわち、特にFK506、タクロリムス、ピメクロリムス)、抗血栓剤、スルホン、サンスクリーン、局部麻酔剤(すなわちプロパラカイン)、筋弛緩薬、血液調節剤、抗血液凝固剤、止血剤、鎮静剤、鎮痛剤、アドレナリン作用薬、鎮痙薬、骨活性薬、プロスタグランジン、食欲減退薬、コリン作用薬、抗コリン作用薬、スルホンアミド、又はこれらの組み合わせを含む。
【0053】
1の実施態様の場合、医薬組成物は抗生物質を含有する。好ましい抗生物質は、マクロライド系抗生物質、ペニシリン、テトラサイクリン、セファロスポリン、キノロン、フルオロキノロン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0054】
臨床的には、マクロライド系抗生物質は、主にStreptococci, Staphylococci及びPneumococciの感染を治療するために使用される。一般にマクロライド系抗生物質の毒性は低い。マクロライド系抗生物質のエステルは治療上重要になっている。なぜならば、これらは迅速に血中濃度が高くなり、さらに、事実上無臭であり、そして安定性が高いからである。マクロライド系抗生物質は、大環状ラクトン環のサイズに応じて分類される。マクロライド系抗生物質は多官能性分子であり、これらの分子のほとんどは1種以上のアミン糖を有し、塩基性である。
【0055】
好適なマクロライド系抗生物質は12員ラクトン環を有する抗生物質、例えばメチマイシン及びネオメチマイシンを含む。また、14員ラクトン環を有するマクロライド系抗生物質も含まれ、このような抗生物質のうちの好ましい代表が、Streptomyces erythreusから生成されたエリスロマイシンである。これらの例は、エリスロマイシンA、エリスロマイシンB、エリスロマイシンC、エリスロマイシンD、エリスロマイシンE、エリスロマイシンエストレート、エリスロノリド及びクラリスロマイシンを含む。14員ラクトン環を有するマクロライド系抗生物質の他の例は、メガロマイシン及びその誘導体、ピクロマイシン、ナルボマイシン、オレアンドマイシン、トリアセチル-オレアンドマイシン、及び中性化合物ラウカマイシン、クジマイシンA、アルボサイクリン及びシネロマイシンBを含む。
【0056】
16員環を有するマクロライド系抗生物質は、カルボマイシン(マグナマイシン)及びその誘導体(すなわちニダマイシン)、スピラマイシン及びその誘導体、ロイコマイシン及びその誘導体(すなわちミデカマイシン、マリドマイシン、チロシン、シラマイシン、及びジュベニマイシン);及び中性の代表的なカルコマイシン及びニュートラマイシンを含む。大環状ラクトン環、すなわち26〜40以上の環員を有する環を備えたマクロライド系抗生物質の例は、ピマリシン、ルセンソマイシン、ナイスタチン、アンフォテリシンB、ハマイシン、カンジシジンA及びB、カンジジン、及びレボリンを含む。この群の効果は事実上、専ら菌類及び酵母に対して発揮される。
【0057】
また本発明の範囲には、プロテアーゼ阻害剤との組み合わせで、医薬活性物質として毒素又は細胞毒性剤を含有する組成物も含まれる。このような組成物及び方法は、毒素又は細胞毒性プロドラッグとともにプロテアーゼ阻害剤を投与することにより、特異的に細胞を破壊する(すなわち腫瘍細胞の破壊)ために用いられる。
【0058】
本明細書中に使用される「毒素」という用語は、特に、内生的な細胞毒性エフェクター系、放射性同位体、ホロ毒素、修飾毒素、毒素の触媒的サブユニット、又はこれらの組み合わせと結合してこれらを活性化する化合物を意味する。本明細書中に記載された方法に従って使用することができる毒素の一例としては、当業者に知られた放射性同位体、化合物、例えば内在的又は誘発された内生的細胞毒性エフェクター系に結合する抗体(又はその相補的な固定部分)、チミジンキナーゼ、エンドヌクレアーゼ、RNAse、アルファ毒素、リシン、アブリン、緑膿菌エキソトキシンA、ジフテリア毒素、サポリン、モモルディン、ゲロニン、ヤマゴボウ抗ウィルスタンパク質、アルファ-サルシン、コレラ毒素、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
本明細書中に使用される「細胞毒性プロドラッグ」という用語は、通常は細胞中に存在する酵素によって細胞毒性化合物に変換される非毒性化合物を意味する。本明細書中に記載された組成物中に使用することができる細胞毒性プロドラッグの一例としては、安息香酸マスタードアルキル化剤のグルタミル誘導体、マイトマイシンCのリン酸誘導体、シトシンアラビノシド、ドキソルビシン、及びドキソルビシンのフェノキシアセトアミド誘導体が挙げられる。
【0060】
医薬組成物は任意には、維持、貯蔵、安定化、化粧品としての使用を支援するか、又は凝集を防止するのに役立つ付加的な化合物を含有する。これらの化合物の一例としては、保存剤、還元剤(すなわちジチオトレイトール、N-アセチルシステイン、2-メルカプトエタノール、システイン、グルタチオン)、抗酸化剤(すなわちアスコルビン酸、メチオニン)、金属キレート剤(すなわちEDTA又はクエン酸塩)、充填剤/安定剤(すなわち特にトレハロース、グリシン、マンニトール、デキストラン、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、アルブミン、二糖、例えばスクロース、環状オリゴ糖、例えばシクロデキストリン、L-アスコルビン酸又はその誘導体、トコフェロール、又はこれらの組み合わせ)、界面活性剤{すなわちtween, nonidet, triton, TRITON X-114(ポリエチレングリコール第三オクチルフェニルエーテル), TRITON X-100(ポリエチレングリコールモノ[p-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル)フェニル]エーテル)又はspan};色素、賦形剤;香料、芳香剤、不透明化剤、又はこれらの組み合わせを含有する。このような材料は、添加される場合には、医薬活性薬又は医薬活性物質の活性を過度に妨害するべきではなく、また刺激特性を有するべきではない。
【0061】
組成物の完全性を維持するために本明細書中に記載された組成物中には、保存剤が任意に含まれる。タンパク質との組み合わせで水性相を含有する製剤は、細菌や菌類による攻撃を受けやすいことが知られている。微生物の成長は製剤を汚染するだけではなく、患者に対して潜在的に毒性となるおそれがあり、感染源となる。傷又は炎症のある皮膚に塗布された局所用製剤中の微生物成長を最小限にすることが特に重要である。微生物汚染に晒されるといくつかのポリマーの粘度が低下すると報告されていることも、懸念材料である。組成物中で有用な保存剤の一例としては、クオタニウム、メチルパラベン、フェノール、パラ-ヒドロキシベンゾエート化合物、プロピレングリコール、プロピルパラベン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
安定剤及び/又は充填剤は、長期にわたって生体活性を保存するのを助け、またプロテアーゼ阻害剤の水溶性を改善する物質である。従って好ましい実施態様の場合、組成物は、安定剤及び/又は充填剤、例えば約0.01%〜約5% w/w、好ましくは約0.1%〜約1% w/wのアルブミン;約0.5%〜約30.0% w/w、好ましくは約1.0%〜約10.0% w/wのスクロース;又は約1.0%〜約10.0% w/w、好ましくは約2.0%〜約5.0% w/wのシクロデキストリンを含有する。
【0063】
任意には、本明細書中に記載された組成物は付加的に、例えばHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む作用物質を含有している。本明細書中に記載された組成物及び方法において使用するのに適したHMG-CoAレダクターゼ阻害剤の一例としては、特にメバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、ダルバスタチン、セリバスタチン及びアトルバスタチン、オキシステロール、及び25-ヒドロキシコレステロールが挙げられる。
【0064】
投与経路及び投与量
過剰増殖性及び炎症性粘膜皮膚障害を治療又は予防する方法によれば、本明細書に記載された組成物は、障害の治療を必要とする患者又は障害の予防を所望する患者に投与される。患者は例えば、ヒト又は動物を含む哺乳動物である。
【0065】
組成物の製剤は、医薬として好適な任意の投与手段によって個体に送達される。種々の送達系が知られており、これらの系を使用することにより、任意の好都合な経路によって組成物を投与することができる。例えば組成物は、経皮、腹腔内、頭蓋内、膣内、子宮内、口腔、直腸、眼(硝子体内又は房内を含む)、鼻腔、局所(頬及び舌下を含む)、又は非経口経路(皮下、腹腔内、筋内、皮内、頭蓋内、気管内及び硬膜外を含む)によって投与される。
【0066】
好ましい実施態様の場合、医薬組成物は局所投与のために調製される。プロテアーゼ阻害剤は、上述の任意の他の成分と、生理的緩衝剤、例えば生理食塩水中で合体される。好ましくは、プロテアーゼ阻害剤は、局所用調製物中で共通して使用される複数の保存剤又は抗菌薬のうちの1つと組み合わされる。溶液又は懸濁液は使用前に精製又は滅菌され、1日1回又は数回投与することができる。
【0067】
最も好ましくは、組成物は、負傷部位又は創傷にゲルを綿棒、ブラシ又はその他の形式でコーティングすることによって投与されるゲル製剤である。或いは、組成物を、座剤で皮膚又は粘膜表面に投与され、上皮層又は粘膜皮膚内層(すなわち口腔粘膜、直腸、膣、鼻腔及び腸の粘膜)を通して吸収することもでき、或いは点眼することもできる。組成物は任意には、負傷部位に結合する粘膜付着ポリマーを有するように調製される。局所治療は、炎症応答を誘発する確率が高いことが知られている部位において予防的に有用である場合もある。これらの事例の場合、後で生じる厄介な状況を予防するのを助けるように、治療をただちに始めることができる。
【0068】
或いは、組成物は制御放出系で送達される。1の実施態様の場合、ポンプを使用することができる(Sefton, Biomed. Eng. 14:201(1987))。当該部位にカニューレを通して高濃度の組成物を制御された状態で送達するのを可能にするために、浸透圧ミニポンプを使用することもできる。別の実施態様の場合、高分子材料を使用することができる(Ranger及びPeppas, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983);及びLevy他、Science 228:190(1985)参照)。さらに別の実施態様の場合、制御放出系を治療標的、すなわち肺の近くに配置することができる。当業者に知られている付加的な制御放出系は、Langer (Science 249:1527-1533(1990))による総論において論議されている。さらに、本明細書中に記載された組成物は、化合物の徐放を可能にする生分解性ポリマー内に組み込むことができる(すなわち、特にリポソーム、ミクロ粒子、及びミクロカプセル内のカプセル化)。ポリマーは、薬物送達が望まれる身体部位、例えば腫瘍又は負傷部位に埋め込まれて、組成物が全身にゆっくりと放出されるようになっている。生分解性ポリマー及びこれらの使用は、例えばBrem他、J. Neurosurg. 74:441-446(1991)に詳細に記載されている。この文献全体を参考のため本明細書中に引用する。他の実施態様の場合、組成物を任意の場所に配置することにより、化合物が房水中に連続的に放出されるようにすることもできる。投与は全身的又は局所的に行うことができる。
【0069】
組成物は、コンベンショナルな医薬技術によって調製された単位投与形態で好都合に提供することができる。このような技術は、活性成分と医薬担体又は賦形剤とを連携させる工程を含む。一般に製剤は、活性成分を液状担体又は微粉化担体又はその両方と均一且つ緊密に連携させ、次いで必要な場合には生成物を成形することにより調製される。別の実施態様の場合、組成物は、非経口投与用に調製される。非経口投与に適した製剤は、水性及び非水性滅菌注射溶液を含む。これらの溶液は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬及び溶質を含有する。これらの溶質は製剤を、意図された受容者の血液と等張にする。加えて、製剤は、特に懸濁剤、増粘剤、又はその両方を含む水性及び非水性の滅菌懸濁液を含有する。必要な場合には、組成物は可溶化剤及び局部麻酔、例えばリグノカインを含むことにより、投与部位の痛みを和らげることもできる。
【0070】
一般に、成分は例えば、密閉容器、例えば活性物質の量を示すアンプル又はサシェット内の凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、単位投与形態で別個に又は混合された状態で供給される。組成物が輸液によって投与される場合には、組成物は、滅菌医薬等級の水又は食塩水を含有する輸液ボトルで計量分配することができる。組成物が注射によって投与される場合には、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルを提供することにより、投与前に成分を混合することができる。
【0071】
組成物は単回投与用又は複数回投与用容器、例えば密封アンプル及びバイアル内で提供することができ、また、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することもでき、滅菌液状担体、例えば注射用の水を使用直前に添加するだけでよい。局所用製剤は、前に記載した種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0072】
或いは、組成物は経口投与される。経口製剤は標準的な担体、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム、スクロース、トレハロースなどを含む。好適な医薬担体の例が、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、治療上有効量の化合物を好ましくは精製形で、適量の担体と一緒に含有することにより、患者に適正な投与のための形態を提供することになる。製剤は投与様式と適合するべきである。
【0073】
粘膜皮膚又は皮膚の疾患又は障害を治療、改善又は予防する上で有効なプロテアーゼ阻害剤の医薬として有効量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、in vitroアッセイを採用することにより、最適投与量範囲を同定するのを助ける。具体的には、プロテアーゼ阻害剤の投与量は、治療を受ける病状又は状態、その他の臨床ファクター、例えばヒト又は動物の体重及び状態、及び組成物の投与経路に依存することになる。従って、製剤中に採用されるべき正確な投与量は、医師の判断及び各患者の環境に応じて決定されるべきである。in vitroシステム又は動物モデル試験システムから導き出された投与量-応答曲線から、有効投与量を推定することができる。
【0074】
ヒト又は動物を治療する際には、体重1キログラム当たりほぼ0.05〜100mgの投与量が、典型的な広い医薬組成物投与範囲である。本明細書に記載された方法は、単回の投与、並びに、同時に又は長時間にわたって行われる複数回の投与を念頭に置いている。個々の投与量は、治療を受けている特定の状態に応じて決定される。組成物は1日6回以上、又は皮膚状態を治療するのに必要なだけ塗布することができる。コルチコステロイドのような医薬活性物質を使用する場合、組成物は好ましくは1日1〜4回、より好ましくは1日1〜2回塗布される。最も好ましい塗布の場合、組成物は1日2回、患部に薄い層として塗布され、皮膚内に完全に擦り込まれる。
【0075】
医薬組成物の使用方法
炎症性又は過剰増殖性粘膜疾患、障害又は症候群を治療又は予防する方法が、本明細書中に記載されている。治療又は予防されるべき疾患、障害又は症候群(これらをまとめて本明細書中では「障害」と呼ぶ)の一例としては、皮膚障害、肺障害、耳障害、眼障害、消化管障害、及び尿路障害が挙げられる。
【0076】
治療又は予防されるべき皮膚障害は例えば、アトピー性皮膚炎;皮膚光損傷;外因性皮膚老化;皮膚かぶれ;慢性創傷、熱傷創、潰瘍創傷;座瘡;酒さ性座瘡;乾癬;苔癬(特に扁平苔癬);基底細胞癌又は扁平上皮癌(ボーエン病);カポジ肉腫;角化症、例えば光線角化症又は脂漏性角化症;角質化障害、例えば魚鱗癬(特に葉状魚鱗癬)及び角皮症のような皮膚障害を含む。この方法で治療又は予防されるべき肺障害は例えば、喘息のような肺粘膜炎症を含む。この方法はまた、耳及び眼の障害、例えば耳炎や結膜炎、並びに消化管及び尿路の炎症性疾患、例えば大腸炎や間質性膀胱炎を治療又は予防するのにも有用である。
【0077】
この方法で治療又は予防されるべき皮膚の炎症及びかぶれは、例えば経皮薬物送達、刺激性薬物送達エンハンサー、又は、医薬品並びにスキンケア製品に見いだされる刺激性薬物物質によって引き起こされるおそれもある。
【0078】
この方法によれば、障害を阻害又は改善するのに十分な投与量のプロテアーゼ阻害剤を含有する組成物が、障害を治療、抑制又は予防するための処置を必要とするか又は所望するヒト又は動物に投与される。好ましい実施態様の場合、組成物は、局所投与のためのゲル製剤における医薬組成物である。
【0079】
加えて、本明細書中に記載された方法は、種々様々な外科処置、例えば皮膚上の腫瘍摘出部位の処理に利用される。例えば、本明細書中に記載された組成物を利用して、腫瘍の除去前に所定の部位にコーティング、綿棒塗布、ブラシ塗布又は噴霧を施すことにより、炎症が周りの組織に広がるのを防止する。或いは、組成物を内視鏡処置又はカテーテル法によって送達することにより、腫瘍にコーティングを施すか、或いは粘膜の増殖又は炎症を阻害する。
【0080】
また、組成物を肥厚性瘢痕又はケロイドに投与することにより、肥厚性瘢痕及びケロイドを治療するための方法が提供される。例えば、組成物を肥厚性瘢痕又はケロイド上に直接的に注射又はこすりつけることにより、これらの損傷の進行を予防する。この治療は、肥厚性瘢痕又はケロイド(すなわち火傷)を発生させることが知られている状態の予防的治療において特に価値があり、好ましくは増殖期が進行した後で、しかし肥厚性瘢痕又はケロイドが発生する前に開始されることが好ましい。
【0081】
プロテアーゼ阻害剤含有ゲル製剤の製造方法
プロテアーゼ阻害剤を含有する医薬組成物の製造方法が提供される。好ましくは、製造されるべき医薬組成物は、プロテアーゼ阻害剤ゲル製剤である。ゲル製剤は、ゲル内部の好適なpH状態、最適なプロテアーゼ阻害剤可溶性、ゲル稠度、及び結果として得られる生成物中の無菌性を保証する手順に従って調製される。ゲル製剤は、好ましくは局所投与のために意図され、そしてプロテアーゼ阻害剤を局所用製剤として治療に使用するために特別に調製される投与形態が提供される。局所塗布のために選択された投与形態は、大量のプロテアーゼ阻害剤を放出し、無菌であり、そして創傷に対して非毒性であるのが理想的である。
【0082】
医薬プロテアーゼ阻害剤ゲル製剤の好ましい製造方法は下記の通りである。粉末状ゲル化剤を、水和してゲルを形成するまで水溶液、例えば生理的緩衝剤と合体させる。ゲルのpHを中性pH、好ましくはほぼpH5.5〜9まで調節する。次いでゲルを好ましくは放射線照射線によって滅菌する。好ましくはビヒクル・コントロール緩衝剤中に含有されたプロテアーゼ阻害剤を、ゲル溶液と混合することにより、プロテアーゼ阻害剤ゲル製剤を生成する。次いでプロテアーゼ阻害剤ゲルのpHを、必要な場合には、ほぼ5.5〜9のpH、好ましくはpH6.5〜pH8、より好ましくは約7〜7.5のpH、最も好ましくはpH7.5に調節する。任意には、ゲルの調製前、調製中、又は調製後に保存剤を添加する。次でゲル製剤を、無菌性及び活性を維持する条件下、例えば冷蔵庫又は低温室内の密封容器内で貯蔵する。
【0083】
例えば、約1.5% w/wの濃度のヒドロキシエチルセルロースを、pH約7.4の20mMリン酸ナトリウムと合体させ、そして十分に水和するまで撹拌する。組換えアルファ1-抗トリプシン(rAAT)及びビヒクル・コントロール緩衝剤を、混合しながらゲル溶液に添加する。pHがほぼ7.5の20mM: 200mM: 5mM: 5mMの濃度のリン酸塩、塩化カリウム又は塩化ナトリウム、N-アセチルシステイン、クエン酸ナトリウム緩衝剤中の5%溶液として、rAATを通常供給する。好適な場合には、組成物は付加的に、例えば濃度約0.02% w/w及びpH約7.5のクオタニウムを含む保存剤を含有する。次いでゲル製剤を、使用するまで気密管内に4℃で貯蔵する。
【0084】
別の実施態様の場合、ゲルを凍結乾燥させる。所望の安定性及び活性を有する好ましいゲル製剤を凍結乾燥させ、そして使用前に水中に溶解させる。或いは、安定的なゲル製剤を、塩濃度が低減された状態で凍結乾燥させ、そして使用前に滅菌生理食塩水中で戻す。本明細書中に記載された方法に従って調製されたプロテアーゼ阻害剤ゲル製剤の貯蔵寿命は、好ましくは1年以上である。
【0085】
キット
本明細書において、医薬パック又はキットも提供される。パック又はキットは、1つ又は2つ以上の容器を含む。容器には、本明細書中に記載された組成物の成分のうちの1種又は2種以上が充填されている。任意には容器とともに、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式で注意書きを記載することができる。この注意書きは、ヒト又は動物への投与のための製造、使用又は販売が政府機関によって承認されていることを反映する。
【実施例】
【0086】
表を含む下記実施例によって本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明の範囲に制限を加えるものとして決して解釈すべきではない。逆に、言うまでもなく、本発明の種々の他の実施態様、変更形及び等価形を用いることもできる。これらは、本明細書の説明を読めば本発明の思想又は添付の特許請求の範囲を逸脱することなしに、当業者には明らかになる。
【0087】
下記表は、抗トリプシン・ゲル製剤の実施例、及び対応する活性及び安定性のデータを明示する。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
実施例1:組換え型アルファ1-抗トリプシンの比活性の検出
この研究の目的は、医薬組成物中の組換え型アルファ1-抗トリプシン(rAAT)の放出・安定性試験であった。この方法は、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)に対するrAATの阻害効果を測定することにより、ゲル中0.1%〜3.0%のエラスターゼ阻害剤としてのrAATに関する質的同一性試験として用いることもできる。
【0097】
試薬:Tris-HCl:FW 157,6g/モル、電気泳動等級、Fisher Cat# BP153-500。Tris-塩基:FW 121.1g/モル、生物工学性能認証済、Sigma Cat# 6066。水、HPLC等級。塩化ナトリウム:FW 58,44g/モル、認証済A.C.S.。ウシ血清アルブミン(BSA):画分V. プレテアーゼなし、Golden West, Cat# BA 1060。ブタ膵臓エラスターゼ、等級II凍結乾燥済、Roche Diagnostic Corp. Cat# 100907。N-Suc-Ala-Ala-Ala-pNA, Bachem, Cat# I-1385。rAAT対照標準、Arriva Pharmaceuticals。
【0098】
溶液:100mM Tris-塩基:12.1gのTris-塩基をHPLC等級の水で1.0L容積に溶解する。よく混合し、この溶液を真空下で、0.22μm酢酸セルロース・フィルター(使い捨てフィルター・システム)を通して濾過する。貯蔵:最大6か月。100mM Tris-HCl:15.8gのTris- HClをHPLC等級の水で1.0L容積に溶解する。よく混合し、この溶液を真空下で、0.22μm酢酸セルロース・フィルターを通して濾過する。貯蔵:最大6か月。注意:上記2種の溶液を、その他の溶液のpH調節のために使用する。
【0099】
PPE緩衝剤、100mM Tris-HCl溶液、pH8.0: 1.37gのTris-HClと、0.236gのTris-塩基と、約60mlの精製水とを合体させる。100mM Tris-塩基又は300mM Tris-HClで、pHを8.0(±0.05)に調節する。HPLC等級の水で100mlの容積に希釈する。よく混合し、この溶液を真空下で、0.22μm酢酸セルロース・フィルターを通して濾過する。貯蔵:最大6か月。
【0100】
アッセイ緩衝剤:50mM Tris-HCl、150mM Tris-塩基、pH8.0、0.5M NaCl、0.01% BSA(ウシ血清アルブミン):
工程1:6.35gのTris-HCl、3.18gのTris-塩基、及びほぼ600mlの精製水を合体させる。よく混合し、そして100mM Tris-塩基又は100mM Tris-HClで、pHを8.0(±0.05)に調節する。
【0101】
工程2:先ずNaCl 29.22gを添加し、次いでBSA 0.1gをpH8.0の緩衝剤に添加し、溶解するまで混合する。HPLC等級の水で1.0Lの容積まで希釈する。この溶液を真空下で、0.22μm酢酸セルロース・フィルターを通して濾過する。貯蔵:最大2か月間にわたって2〜8℃。
【0102】
PPE原液、100μg/ml:PPE緩衝剤で250mlの容積までブタ膵臓エラスターゼ25mgを溶解させ、そしてよく混合する。より小さな比例容積を調製することができる。4mlの容積にデカントする。-80℃で最大6か月間にわたって保存する。この溶液は2度以上凍結-解凍させてはならない。エラスターゼ活性(U/mgタンパク質)はAのうちのCにある。
【0103】
PPEカクテル、3μg/ml:PPE原液3.0mLを300mlの容積までアッセイ緩衝剤で希釈し、そしてよく混合する。4mLの容積にデカントする。最大6か月まで-80℃で保存する。この溶液を2度以上凍結-解凍させてはならない。
【0104】
基質溶液、N-Suc-Ala-Ala-Ala-pNA 2.7mg/ml:N-Suc-Ala-Ala-Ala-pNA 270mgをアッセイ緩衝剤で100ml容積に溶解する。4mlの容積にデカントする。6か月間にわたって-80℃で貯蔵する。この溶液を2度以上凍結-解凍させてはならない。基質溶液は25℃で12時間にわたって安定的である。
【0105】
【表9】

【0106】
51.65 mg/ml rAAT対照標準から1.722 mg/ml rAATを調製するために、5.0mlの51.65mg/mlを10.0ml容積、正味25.825mg/mlまで希釈する。4.0mlの25.825mg/mlを10.0ml容積、正味10.330mg/mlまで希釈する。1.0mlの10.330mg/mlを100.0ml容積、正味0.103mg/mlまで希釈する。10.0mlの0.103mg/mlを100.0ml容積、正味0.0103mg/mlまで希釈する。10.0mlの0.0103mg/mlを60.0ml容積、正味1.722μg/mlまで希釈する。2つの別個の希釈プールを調製し、一方をCaIと名付け、他方をChkと名付ける。4mlの容積にデカントする。最大6か月間にわたって-80℃で貯蔵する。この溶液を2度以上凍結-解凍させてはならない。
【0107】
【表10】

【0108】
0.5% rAAT親水性ゲル試料からEIAアッセイのためのrAATを調製するために、アッセイ緩衝剤中にほぼ1.7μg/ml rAATを希釈する。500±50mgの0.5% rAATゲルを50.0ml中に、正味ほぼ50μg /mlまで可溶化する。1.0mlの50μg/mlを10.0ml容積、正味5μg/mlまで希釈する。2.0mlの5μg/mlを6.0ml容積、正味1.7μg/mlまで希釈する。プレート・ウェル反応混合物1ml当たりの全希釈係数は、59880である。EIAは即座に実行することができる。最終試料希釈物は5℃で貯蔵し、24時間以内に試験することができる。
【0109】
プレート・アッセイ手順:マイクロプレート・リーダーの内部温度を30℃に設定し、そして波長を405nmに設定する。VERSAmax(登録商標)プレート・リーダーのためのプレート鋳型をSOFTmax(登録商標)PRO内に設置する。熱平衡させるために30分間放置する。全ての溶液を室温で平衡にしなければならない。
【0110】
計算:10分間のキネティック・アッセイ中1.0分間のインターバルで、それぞれのプレート・ウェルから生吸収値(ウェル1つ当たり11の値)を収集する。SOFTmax(登録商標)PRO(V3.1.2)ソフトウェアは、吸収値を累積し、そして勾配を計算する(基質がPPEによって加水分解されるのに伴う発色速度)。データをよく知られた検討可能な形態に変換するために、生吸収値をExcel(登録商標)にエキスポートし、次いでExcel(登録商標)テーブル内に埋め込まれた式を使用して、全ての計算を完成させる必要がある。生吸収値をSOFTmax(登録商標)PRO(V3.1.2)からExcel(登録商標)にエキスポートする。0.0〜10.0分のインターバルで、それぞれの単一ウェルの吸収変化速度を計算する。3部の試験の平均速度を計算する。% CVを計算する。Cal/Chk %一致を検出する。PPE酵素対照の発色速度は、55〜80 mAU/分でなければならない。試料及び標準の酵素活性の阻害率は、30%〜70%であるべきである。このことはアッセイの線形範囲の中核である。PPE対照、rAAT標準及びrAAT試料のウェル間CV値は、7.5%未満でなければならない。基質対照複製の平均は、PPE酵素対照の平均の1.0%未満でなければならない。
【0111】
表11は、アルファ1-抗トリプシンのゲル製剤のための放出仕様を示している。
【0112】
【表11】

【0113】
実施例2. ヒト死体皮膚における抗トリプシンのin vitro経皮吸収
この研究の目的は、無傷のヒト死体皮膚における9種の局所用アルファ1-抗トリプシン(0.5%)ゲル製剤のin vitro経皮吸収を評価することであった。試験製剤を単回投与として塗布する。経皮吸収を1, 6及び24時間目に測定し、そして表皮、真皮及び角質層(S.C.)の回収を24時間目に測定する。試験の構成を下記表12に示す。
【0114】
【表12】

【0115】
放射性同位体125I抗トリプシン(100 Ci/ml)(S.A. 53 Ci/mg)をAmersham PLCによって提供した。
【0116】
ヒトの皮膚: ヒト死体皮膚(#000504)を単独のドナーから得た。皮膚をほぼ200ミクロンの厚さまで採取した。皮膚は、損傷されたり、凹凸(瘡蓋、穴、母斑など)があったり、炎症性疾患のドナーに由来するものであったりした場合にはこれを排除した。皮膚試料を使用するまで凍結した。皮膚試料は、試験前に密封プラスチック袋内で冷蔵庫で一晩解凍した。
【0117】
試験前に、125Iアルファ1-抗トリプシンで試験製剤をスパイクした。表7に示すように、試験製剤は、バッチ番号785-8A、785-9A、785-10A、785-11A、785-12A、785-13A、785-14A、785-15A及び785-16Aによって表す。スパイク済試験製剤の最終比活性をアッセイするために、ほぼ10〜50mgの製剤を秤量し、1.0mlのSolusol中に溶解させた。続いて、100μlの試料を10mlのEcoscint (登録商標)シンチレーション・フルオロ(National Diagnostics #LS275)中に入れ、そして125Iの前較正済急冷曲線を用いて、Beckman Model LS 3801液体シンチレーション・カウンター内でカウントした。
【0118】
アクリル・ブロック、磁気撹拌器及びステンレス鋼マニホルド(Crown #FDCD-9-LV)を備えた、9位置Franz拡散セル駆動コンソール上に磁気撹拌器が設けられた、全部で54個のFranz静的拡散ガラス拡散チャンバ(Crown Glass Cat# FDC-100)を研究のために使用した。各セルのリザーバー容積(6〜11ml)を前較正する。皮膚界面の気泡を回避することを考えて、拡散セルに、等張リン酸緩衝(pH7.4)生理食塩水を充填した。皮膚試験片への塗布前に循環水ポンプによって、拡散セルを37℃の温度まで1〜2時間にわたって平衡させた。
【0119】
皮膚への薬剤塗布:採取されたヒト死体皮膚をチャンバ上に置き、そしてOリングでシールした。試験製剤に晒される皮膚表面面積は、1.77cm2であった。Gilson Microman(登録商標)容積式ピペットを使用して、全体で30mgのスパイク済製剤を皮膚表面に塗布し、ピペットチップを使用して皮膚内に静かに擦り込んだ。計量分配チップを保持してカウントした。計量分配用チップによって保持された平均DPMを計算し、理論上DPMから差し引くことにより、各チャンバに塗布された平均総DPMを見極めた。
【0120】
試料捕集:較正済Gilson P1000 Pepetteman(登録商標)マイクロピペットを使用して、1, 6及び24時間目にリザーバーから1.0ml試料を取り出し、容積を1.0ml生理食塩水溶液と置き換えた。Ecoscint(登録商標)シンチレーション・フルオル(National Diagnostics #LS-275)を含有するシンチレーション・バイアル中に試料を入れ、カウント前に暗所内で一晩平衡させた。24時間目に、皮膚表面を水中1mlの2% Oleth-20(Croda, Inc.#9004-98-2)で3回洗浄し、続いて、イソプロパノール中1.0mlの5% Span 80で2回洗浄した。洗浄溶液を回収カウントのために捕集した。洗浄手順のために使用される計量分配チップもカウントし、これらを「洗浄」区画内に含めた。洗浄後、皮膚表面を3つの連続した綿ガーゼ布で拭い、これらの布を「ガーゼ」区画内で回収カウントするまでとっておいた。
【0121】
テープ剥離(角質層):皮膚試験片をチャンバから取り出し、そして平らな表面上に、真皮側を下にして置いた。「きらきら輝く」まで(ほぼ22片のストリップ)、又は表皮分離が生じ始めるまで、セロファンテープで皮膚をテープ剥離することにより角質層を除去した。角質層の外面に付着した過剰な薬剤を取り除く最初の2片のストリップを別個にカウントした。これらのカウントは総回収(SC表面)内に含まれるが、しかし、角質層区画回収からは排除される。それぞれが5片の連続するテープ・ストリップから成る4つの群を、Scintilene(登録商標)(Fisher # SX2-4)を含有するシンチレーション・バイアル内に入れた。テープ剥離後、マイクロ波技術(2〜5秒後)により、真皮と表皮とを分離した。分離した表皮を、1mlのSoluene 350(Packard, Inc # 6003038)を含有するバイアル内に入れ、そして真皮を、2mlのSoluene 350を含有するバイアル内に入れた。次いで組織を4時間にわたって、60℃の炉内で消化させた。消化された組織に、Hionic Fluor (Packard, Inc # 6013319)を添加し、Beckman LSC内でカウントし、急冷に対して補正した。
【0122】
リザーバー区画、洗浄区画、ガーゼ払拭区画、及び皮膚区画(角質層、表皮、真皮)内で回収されたアルファ1-抗トリプシンの量を、それぞれの区画内で回収された総塗布DPMの量を計算することにより見極めた。それぞれの区画内で回収された薬剤の総マイクログラムは、回収率%を、各チャンバに塗布された薬剤の総量(マイクログラム)で掛け算することにより得られた。LSCテープから得られたDPSデータ、セル容積の測定値、及び薬剤塗布量を、標準化Quattro Proスプレッドシート内に入力した。データ入力及びコンピュータ計算により、正確であることが検証された。スプレッドシートによって生成された計算、テーブル及びグラフを抜き取り検査することにより、精度を保証した。レポートにおいて、それぞれの区画毎に外れ値を廃棄したあとデータを計算した。疑わしい値が残りの値の平均偏差の4倍超だけ再計算平均と異なる場合には、これを「外れ値」と考えた(Skoog & West, Analytical Chemistry)。
【0123】
結果:アルファ1-抗トリプシンの累積経皮吸収率は、図1のそれぞれの時点で、リザーバー内で回収された塗布量のパーセントとして表される。リザーバー区画内で吸収率≧1.0%を示す皮膚試験片は、バリア性能の明らかな欠陥に基づいて、最終データ分析に際してリザーバー・データから除去した。種々の皮膚区画内のアルファ1-抗トリプシンの局在化は、図2に示すように各区画内で回収された塗布量(DPM)のパーセントとして表される。
【0124】
全ての引用文献の全体を参考のため本明細書中に引用する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本明細書中に記載されたアルファ1-抗トリプシン組成物の9種の製剤に関する浸透率パーセント対時間を示すグラフである。アルファ1-抗トリプシンの累積経皮吸収率は、各時点においてリザーバー内で回収された塗布量のパーセントとして表される。リザーバー区画内で吸収率≧1.0%を示す皮膚試験片は、バリア性能の明らかな欠陥に基づいて、最終データ分析に際してリザーバー・データから除去した。
【図2】本明細書中に記載されたアルファ1-抗トリプシン組成物の9種の製剤の回収率パーセントを示す棒グラフである。種々の皮膚区画内のアルファ1-抗トリプシンの局在化は、それぞれの区画内で回収された塗布量(DPM)のパーセントとして表される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ阻害剤及びゲル化剤を含む、炎症性又は過剰増殖性粘膜皮膚障害の治療又は予防用組成物。
【請求項2】
前記プロテアーゼ阻害剤がアルファ1-抗トリプシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルファ1-抗トリプシンが天然型、合成型又は組換え型アルファ1-抗トリプシンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記プロテアーゼ阻害剤が、アルファ1-抗トリプシンの修飾ペプチド、生体活性断片、実質的に相同のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、変異体、誘導体及び/又は類似体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
pHが約6〜約9の生理的緩衝剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤が約6.5〜約7.5のpHをもつ、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ゲル化剤がヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
1種又は2種以上の医薬活性物質をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
無菌である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
炎症性又は過剰増殖性粘膜皮膚障害の予防又は治療に使用するためのゲル組成物の製造におけるプロテアーゼ阻害剤の使用。
【請求項11】
前記阻害剤が請求項2〜4のいずれか1項に記載のものである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が請求項5〜8のいずれか1項に記載の成分をさらに含む、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
前記障害が、皮膚障害、耳障害、眼疾患、胃腸管障害、又は尿路障害である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記障害が、アトピー性皮膚炎、皮膚光損傷、外因性皮膚老化、皮膚かぶれ、慢性創傷、熱傷創、潰瘍創傷、座瘡、乾癬、苔癬(特に扁平苔癬)、基底細胞癌又は扁平上皮癌(ボーエン病)、カポジ肉腫、角化症、角質化障害及び角皮症から選択された皮膚障害である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記障害が耳炎、結膜炎、大腸炎又は間質性膀胱炎である、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
以下のステップ:
(a) 粉末状ゲル化剤と水性溶液とを混合することにより、ゲルを形成し;
(b) 上記ゲルのpHを約5.5〜約9.0に調整し;
(c) 上記ゲルを滅菌し;そして
(d) プロテアーゼ阻害剤と上記ゲルとを組み合わせて、プロテアーゼ阻害剤ゲルを形成する、
を含むプロテアーゼ阻害剤ゲル組成物の製造方法。
【請求項17】
前記水性溶液が生理的緩衝剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プロテアーゼ阻害剤ゲルのpHを約5.5〜約9.0に調整するステップをさらに含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記プロテアーゼ阻害剤がアルファ1-抗トリプシンである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせである、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記滅菌が放射線照射を含む、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記プロテアーゼ阻害剤ゲルを凍結乾燥するステップをさらに含む、請求項16〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
当該予防又は治療を必要とする患者に、プロテアーゼ阻害剤及びゲル化剤を含む有効量の組成物を投与することを含む、炎症性又は過剰増殖性粘膜皮膚障害の予防又は治療方法。
【請求項24】
前記プロテアーゼ阻害剤がアルファ1-抗トリプシンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物がpH約6〜約9の生理的緩衝剤をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記緩衝剤が約6.5〜約7.5のpHをもつ、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記アルファ1-抗トリプシンが天然型、合成型又は組換え型アルファ1-抗トリプシンである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が1種類以上の医薬活性物質をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記障害が、皮膚障害、耳障害、眼疾患、胃腸管障害、又は尿路障害である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記障害が、アトピー性皮膚炎;皮膚光損傷;外因性皮膚老化;皮膚かぶれ;慢性創傷、熱傷創及び潰瘍創傷;座瘡;乾癬;苔癬(特に扁平苔癬);基底細胞癌又は扁平上皮癌(ボーエン病);カポジ肉腫;角化症、例えば光線角化症又は脂漏性角化症;角質化障害、例えば魚鱗癬(特に葉状魚鱗癬)及び角皮症から成る群から選択された皮膚障害である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記障害が、耳炎、結膜炎、大腸炎又は間質性膀胱炎である、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が哺乳動物である、請求項23に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ阻害剤及びゲル化剤を含む、炎症性又は過剰増殖性粘膜皮膚障害の治療又は予防用組成物。
【請求項2】
前記プロテアーゼ阻害剤がアルファ1-抗トリプシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルファ1-抗トリプシンが天然型、合成型又は組換え型アルファ1-抗トリプシンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記プロテアーゼ阻害剤が、アルファ1-抗トリプシンの修飾ペプチド、生体活性断片、実質的に相同のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、変異体、誘導体及び/又は類似体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
pHが約6〜約9の生理的緩衝剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記緩衝剤が約6.5〜約7.5のpHをもつ、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ゲル化剤がヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
1種又は2種以上の医薬活性物質をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
無菌である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
炎症性又は過剰増殖性粘膜皮膚障害の予防又は治療に使用するためのゲル組成物の製造におけるプロテアーゼ阻害剤の使用。
【請求項11】
前記阻害剤が請求項2〜4のいずれか1項に記載のものである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が請求項5〜8のいずれか1項に記載の成分をさらに含む、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
前記障害が、皮膚障害、耳障害、眼疾患、胃腸管障害、又は尿路障害である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記障害が、アトピー性皮膚炎、皮膚光損傷、外因性皮膚老化、皮膚かぶれ、慢性創傷、熱傷創、潰瘍創傷、座瘡、乾癬、苔癬(特に扁平苔癬)、基底細胞癌又は扁平上皮癌(ボーエン病)、カポジ肉腫、角化症、角質化障害及び角皮症から選択された皮膚障害である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記障害が耳炎、結膜炎、大腸炎又は間質性膀胱炎である、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
以下のステップ:
(a) 粉末状ゲル化剤と水性溶液とを混合することにより、ゲルを形成し;
(b) 上記ゲルのpHを約5.5〜約9.0に調整し;
(c) 上記ゲルを滅菌し;そして
(d) プロテアーゼ阻害剤と上記ゲルとを組み合わせて、プロテアーゼ阻害剤ゲルを形成する、
を含むプロテアーゼ阻害剤ゲル組成物の製造方法。
【請求項17】
前記水性溶液が生理的緩衝剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プロテアーゼ阻害剤ゲルのpHを約5.5〜約9.0に調整するステップをさらに含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記プロテアーゼ阻害剤がアルファ1-抗トリプシンである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせである、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記滅菌が放射線照射を含む、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記プロテアーゼ阻害剤ゲルを凍結乾燥するステップをさらに含む、請求項16〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
当該予防又は治療を必要とする患者に、プロテアーゼ阻害剤及びゲル化剤を含む有効量の組成物を投与することを含む、炎症性又は過剰増殖性粘膜皮膚障害の予防又は治療方法。
【請求項24】
前記プロテアーゼ阻害剤がアルファ1-抗トリプシンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物がpH約6〜約9の生理的緩衝剤をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記緩衝剤が約6.5〜約7.5のpHをもつ、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、又はこれらの組み合わせである、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記アルファ1-抗トリプシンが天然型、合成型又は組換え型アルファ1-抗トリプシンである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が1種類以上の医薬活性物質をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記障害が、皮膚障害、耳障害、眼疾患、胃腸管障害、又は尿路障害である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記障害が、アトピー性皮膚炎;皮膚光損傷;外因性皮膚老化;皮膚かぶれ;慢性創傷、熱傷創及び潰瘍創傷;座瘡;乾癬;苔癬(特に扁平苔癬);基底細胞癌又は扁平上皮癌(ボーエン病);カポジ肉腫;角化症、例えば光線角化症又は脂漏性角化症;角質化障害、例えば魚鱗癬(特に葉状魚鱗癬)及び角皮症から成る群から選択された皮膚障害である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記障害が、耳炎、結膜炎、大腸炎又は間質性膀胱炎である、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が哺乳動物である、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記阻害剤がアルファ1-抗トリプシンであり、かつ、前記障害が魚鱗癬である、請求項11に記載の使用。
【請求項35】
前記阻害剤がアルファ1-抗トリプシンであり、かつ、前記障害が乾癬である、請求項11に記載の使用。
【請求項36】
前記阻害剤がアルファ1-抗トリプシンであり、かつ、前記障害がアトピー性皮膚炎である、請求項11に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−508971(P2006−508971A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552903(P2004−552903)
【出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005049
【国際公開番号】WO2004/045634
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(505187459)アライバ−プロメティック インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】