説明

プロトン伝導性膜およびその使用

【課題】ポリアゾールに基づく高分子膜の利点を示し、特に100℃を超える作動温度で増加した比導電率を有し、特にカソードで顕著により低い過電圧を示す新規なプロトン伝導性高分子膜の提供。
【解決手段】A)溶液及び/又は分散液の形成を伴う、有機ホスホン酸無水物中にポリアゾールポリマーを溶解する工程、B)400℃までの温度へ、不活性ガス下、工程A)で得られた溶液を加熱する工程、C)工程B)で得られた溶液を使用して、支持体上に膜を形成する工程、並びにD)それが自己支持性になるまで、工程C)において形成された膜を処理する工程、を包含する方法によって得られるプロトン伝導性高分子膜。該膜は、PEM燃料電池用の膜電極ユニットを製造するための高分子電解質膜(PEM)としての使用に特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その優れた化学的および熱的特性に起因して、種々の目的のために使用され得、そしていわゆるPEM燃料電池における高分子電解質膜(PEM)として特に好適である、ポリアゾールに基づく新規のプロトン伝導性高分子膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアゾール、例えばポリベンゾイミダゾール((登録商標)Celazole)は、長い間知られている。このようなポリベンゾイミダゾール(PBI)の製造は、通常、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルとイソフタル酸またはそのエステルを溶融状態で反応させることによって行われる。得られるプレポリマーは、リアクター内で固化し、そして引き続いて機械的に粉砕される。次いで、粉末状プレポリマーは、400℃までの温度での固相重合において完全に重合され、そして所望のポリベンゾイミダゾールが得られる。
【0003】
ポリマーフィルムを製造するために、PBIは、更なる工程において、極性・非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc))中に溶解され、そしてフィルムが古典的方法によって製造される。
【0004】
PEM燃料電池における使用のためのプロトン伝導性(即ち、酸ドープされた)ポリアゾール膜は、既に公知である。塩基性ポリアゾールフィルムは、濃リン酸または硫酸でドープされ、そして次いで、いわゆる高分子電解質膜燃料電池(polymer electrolyte membrane fuel cells)(PEM燃料電池)におけるプロトンコンダクターおよびセパレータとして機能する。
【0005】
ポリアゾールポリマーの優れた特性に起因して、膜電極ユニット(membrane electrode units)(MEU)を製造するために加工された、このような高分子電解質膜は、100℃を超える、特には120℃を超える長時間の作動温度で、燃料電池において使用され得る。この高い長時間の作動温度は、膜電極ユニット(MEU)中に含まれる貴金属に基づく触媒の活性を増加させることを可能にする。特に、炭化水素由来のいわゆる改質ガソリンを使用する場合、リフォーマーガスはかなりの量の一酸化炭素を含み、これは、通常、複雑なガスコンディショニングまたはガス精製処理によって除去されなければならない。作動温度が増加する可能性に起因して、極めてより高い濃度のCO不純物が、永久に許容され得る。
【0006】
ポリアゾールポリマーに基づく高分子電解質膜を使用することによって、一方で、複雑なガスコンディショニングまたはガス精製処理を部分的に省くことが可能であり、そして他方で、膜電極ユニットにおける触媒負荷を減少させることが可能である。これらは、両方とも、PEM燃料電池の大規模使用に必須の前提条件であり、何故ならば、そうでなければPEM燃料電池システムの費用は高すぎるからである。
【0007】
以前から知られているポリアゾールに基づく酸ドープされた高分子膜は、有益な特性プロフィールを既に示している。しかし、特に自動車セクターおよび分散電力および熱発生(定常セクター)(the automobile sector and the decentralized electricity and heat generation (stationary sector))における、PEM燃料電池について意図される適用に起因して、これらは、全体的に改善される必要がある。更に、既に公知の高分子膜は、公知の乾燥方法によって完全には除去され得ない高含有量のジメチルアセトアミド(DMAc)を有する。ドイツ特許出願第10109829.4号は、DMAc汚染が除かれたポリアゾールに基づく高分子膜を記載している。
【0008】
ポリリン酸から製造されるポリアゾールに基づく高分子膜は、ドイツ特許出願第10117686.4号、第10117687.2号および10144815.5号から公知である。これらの膜は、特に100℃を超える作動温度において、優れた性能を示す。しかし、これらの膜は、それらが、特にカソードで、比較的高い過電圧を示すという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、一方で、適用技術の点でポリアゾールに基づく高分子膜の利点を示し、そして他方で、特に100℃を超える作動温度で、増加した比導電率を有し、そして更には、特にカソードで、顕著により低い過電圧を示す、ポリアゾールに基づきそして有機酸を含有する高分子膜を提供することである。
【0010】
本発明者は、市販のポリアゾールポリマーを、該膜を作製する目的でそれぞれ溶解された有機ホスホン酸無水物中に懸濁または溶解させると、ポリアゾールに基づくプロトン伝導性膜が得られることを見出した。
【0011】
この新規の膜を用いれば、ドイツ特許出願第10109829.4号に記載の特定の後処理を省くことが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、
A)溶液および/または分散液の形成を伴う、有機ホスホン酸無水物(organic phosphonic anhydrides)中にポリアゾール−ポリマーを溶解する工程、
B)400℃まで、好ましくは350℃まで、特には300℃までの温度へ、不活性ガス下、工程A)に従って得られ得る溶液を加熱する工程、
C)工程B)に従うポリアゾールポリマーの溶液を使用して、支持体上に膜を形成する工程、ならびに
D)それが自己支持性になるまで、工程C)において形成された膜を処理する工程、
を包含する方法によって得られ得る、ポリアゾールに基づくプロトン伝導性高分子膜である。
【0013】
ポリアゾールに基づく工程A)において使用されるポリマーは、一般式(I)および/または(II)の繰り返しアゾール単位
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、
Arは、同一または異なり、そして、単核または多核であり得る四価の芳香族またはヘテロ芳香族基を示し、
Arは、同一または異なり、そして、単核または多核であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基を示し、
Arは、同一または異なり、そして、単核または多核であり得る二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基を示し、
Xは、同一または異なり、そして、酸素、硫黄またはアミノ基{これは、更なる基として、水素原子、1〜20の炭素原子を有する基(好ましくは、分枝または非分枝のアルキルまたはアルコキシ基、あるいはアリール基)を保有する}を示す]
を含有する。
【0016】
好ましい芳香族またはヘテロ芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、アントラセンおよびフェナントレンから誘導され、これらはまた、必要に応じて置換され得る。
【0017】
この場合において、Arの置換パターンは、任意の形態であり得;フェニレンの場合、例えば、Arは、オルト−、メタ−およびパラ−フェニレンであり得る。特に好ましい基は、ベンゼンおよびビフェニレン(これらはまた、必要に応じて置換され得る)から誘導される。
【0018】
好ましいアルキル基は、1〜4の炭素原子を有する短鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−もしくはi−プロピルおよびt−ブチル基である。
【0019】
好ましい芳香族基は、フェニルまたはナフチル基である。アルキル基および芳香族基は置換され得る。
【0020】
好ましい置換基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素)、アミノ基または短鎖アルキル基(例えば、メチルまたはエチル基)である。
【0021】
1つの繰り返し単位内でX基が同一である式(I)の繰り返し単位を有するポリアゾールが好ましい。
【0022】
ポリアゾールはまた、例えばそれらのX基が異なる、異なる繰り返し単位を原理的には有し得る。しかし、繰り返し単位が同一のX基のみを有することが、好ましい。
【0023】
本発明の別の実施形態において、繰り返しアゾール単位を含有するポリマーは、互いに異なる式(I)および/または(II)の少なくとも2つの単位を含有するコポリマーである。該ポリマーは、ブロックコポリマー(ジブロック、トリブロック)、ランダムコポリマー、ペリオディックコポリマー(periodic copolymers)および/または交互ポリマー(alternating polymers)の形態であり得る。
【0024】
本発明の特に好ましい実施形態において、繰り返しアゾール単位を含有するポリマーは、式(I)および/または(II)の単位のみを含有するポリアゾールである。
【0025】
該ポリマーにおける繰り返しアゾール単位の数は、好ましくは、10以上の整数である。特に好ましいポリマーは、少なくとも100の繰り返しアゾール単位を含む。
【0026】
本発明の範囲内で、繰り返しベンゾイミダゾール単位を含むポリマーが好ましい。1以上の繰り返しベンゾイミダゾール単位を含む最も好適なポリマーのいくつかの例は、以下の式によって示され:
【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
式中、nおよびmは、各々、10に等しいかまたはそれを超える、好ましくは100に等しいかまたはそれを超える整数である。
【0032】
しかし、使用されるポリアゾール、特にポリベンゾイミダゾールは、高分子量を特徴とする。固有粘度として測定すると、これは、少なくとも0.2dl/g、好ましくは0.2〜3dl/gである。
【0033】
更なる好ましいポリアゾールポリマーは、ポリイミダソール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)およびポリ(テトラアザピレン)(poly(tetrazapyrenes))である。
【0034】
工程A)において使用される有機ホスホン酸無水物は、式
【0035】
【化6】

【0036】
の環状化合物
または式
【0037】
【化7】

【0038】
の線形化合物
またはマルチ有機ホスホン酸の無水物(anhydrides of the multiple organic phosphonic acids)、例えば、式
【0039】
【化8】

【0040】
のジホスホン酸の無水物
[式中、基RおよびR’は、同一または異なり、そしてC〜C20炭素含有基を示す]である。
【0041】
本発明の範囲内で、C〜C20炭素含有基は、好ましくは、基C〜C20アルキル、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチルまたはシクロオクチル、C〜C20アルケニル、特に好ましくは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、オクテニルまたはシクロオクテニル、C〜C20アルキニル、特に好ましくは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニル、C〜C20アリール、特に好ましくは、フェニル、ビフェニル、ナフチルまたはアントラセニル、C〜C20フルオロアルキル、特に好ましくは、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチル、C〜C20アリール、特に好ましくは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、トリフェニレニル、[1,1’;3’,1”]−テルフェニル−2’−イル、ビナフチルまたはフェナントレニル、C〜C20フルオロアリール、特に好ましくは、テトラフルオロフェニルまたはヘプタフルオロナフチル、C〜C20アルコキシ、特に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシまたはt−ブトキシ、C〜C20アリールオキシ、特に好ましくは、フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ、アントラセニルオキシ、フェナントレニルオキシ、C〜C20アリールアルキル、特に好ましくは、フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ、アントラセニルオキシ、フェナントレニルオキシ、C〜C20アリールアルキル、特に好ましくは、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2,6−ジ−i−プロピルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、o−t−ブチルフェニル、m−t−ブチルフェニル、p−t−ブチルフェニル、C〜C20アルキルアリール、特に好ましくは、ベンジル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチルまたはナフタレニルメチル、C〜C20アリールオキシアルキル、特に好ましくは、o−メトキシフェニル、m−フェノキシメチル、p−フェノキシメチル、C12〜C20アリールオキシアリール、特に好ましくは、p−フェノキシフェニル、C〜C20ヘテロアリール、特に好ましくは、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ベンゾキノリニルまたはベンゾイソキノリニル、C〜C20ヘテロシクロアルキル、特に好ましくは、フリル、ベンゾフリル、2−ピロリジニル、2−インドリル、3−インドリル、2,3−ジヒドロインドリル、C〜C20アリールアルケニル、特に好ましくは、o−ビニルフェニル、m−ビニルフェニル、p−ビニルフェニル、C〜C20アリールアルキニル、特に好ましくは、o−エチニルフェニル、m−エチニルフェニルまたはp−エチニルフェニル、C〜C20ヘテロ原子含有基、特に好ましくは、カルボニル、ベンゾイル、オキシベンゾイル、ベンゾイルオキシ、アセチル、アセトキシまたはニトリルを意味すると理解され、ここで、1以上のC〜C20炭素含有基は、環式系を形成し得る。
【0042】
上述のC〜C20炭素含有基において、互いに隣接していない1以上のCH基は、−O−、−S−、−NR−または−CONR−によって置換され得、そして1以上のH原子は、Fによって置換され得る。
【0043】
芳香族系(aromatic systems)を含み得る上述のC〜C20炭素含有基において、互いに隣接していない1以上のCH基は、−O−、−S−、−NR−または−CONR−によって置換され得、そして1以上のH原子は、Fによって置換され得る。
【0044】
基RおよびRは、Hの各出現で同一または異なり、あるいは、1〜20C原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基である。
【0045】
特に好ましいのは、部分的にフッ素化またはペルフルオロ化(perfluorinate)されている有機ホスホン酸無水物である。
【0046】
工程A)において使用される有機ホスホン酸無水物は、市販されており、例えば、Clariant社製の製品(登録商標)T3P(プロパンホスホン酸無水物)である。
【0047】
工程A)において使用される有機ホスホン酸無水物はまた、ポリリン酸および/またはPと組み合わせて使用され得る。ポリリン酸は、それらが例えばRiedel−de Haenから入手可能であるように、通常のポリリン酸である。ポリリン酸Hn+23n+1(n>1)は、通常、(酸滴定によって)Pとして計算した場合、少なくとも83%の濃度を有する。該モノマーの溶液の代わりに、分散液/懸濁液を得ることも可能である。
【0048】
工程A)において使用される有機ホスホン酸無水物はまた、単一またはマルチ有機ホスホン酸と組み合わせて使用され得る。
【0049】
該単一および/またはマルチ有機ホスホン酸は、式
【0050】
【化9】

【0051】
[式中、基Rは、同一または異なり、そしてC〜C20炭素含有基を示す]
の化合物である。
【0052】
本発明の範囲内で、C〜C20炭素含有基は、好ましくは、基C〜C20アルキル、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチルまたはシクロオクチル、C〜C20アリール、特に好ましくは、フェニル、ビフェニル、ナフチルまたはアントラセニル、C〜C20フルオロアルキル、特に好ましくは、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチル、C〜C20アリール、特に好ましくは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、トリフェニレニル、[1,1’;3’,1”]−テルフェニル−2’−イル、ビナフチルまたはフェナントレニル、C〜C20フルオロアリール、特に好ましくは、テトラフルオロフェニルまたはヘプタフルオロナフチル、C〜C20アルコキシ、特に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシまたはt−ブトキシ、C〜C20アリールオキシ、特に好ましくは、フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ、アントラセニルオキシ、フェナントレニルオキシ、C〜C20アリールアルキル、特に好ましくは、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2,6−ジ−i−プロピルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、o−t−ブチルフェニル、m−t−ブチルフェニル、p−t−ブチルフェニル、C〜C20アルキルアリール、特に好ましくは、ベンジル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチルまたはナフタレニルメチル、C〜C20アリールオキシアルキル、特に好ましくは、o−メトキシフェニル、m−フェノキシメチル、p−フェノキシメチル、C12〜C20アリールオキシアリール、特に好ましくは、p−フェノキシフェニル、C〜C20ヘテロアリール、特に好ましくは、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ベンゾキノリニルまたはベンゾイソキノリニル、C〜C20ヘテロシクロアルキル、特に好ましくは、フリル、ベンゾフリル、2−ピロリジニル、2−インドリル、3−インドリル、2,3−ジヒドロインドリル、C〜C20ヘテロ原子含有基、特に好ましくは、カルボニル、ベンゾイル、オキシベンゾイル、ベンゾイルオキシ、アセチル、アセトキシまたはニトリルを意味すると理解され、ここで、1以上のC〜C20炭素含有基は、環式系を形成し得る。
【0053】
上述のC〜C20炭素含有基において、互いに隣接していない1以上のCH基は、−O−、−S−、−NR−または−CONR−によって置換され得、そして1以上のH原子は、Fによって置換され得る。
【0054】
芳香族系(aromatic systems)を含み得る上述のC〜C20炭素含有基において、互いに隣接していない1以上のCH基は、−O−、−S−、−NR−または−CONR−によって置換され得、そして1以上のH原子は、Fによって置換され得る。
【0055】
基RおよびRは、Hの各出現で同一または異なり、あるいは、1〜20C原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基である。
【0056】
特に好ましいのは、部分的にフッ素化またはペルフルオロ化(perfluorinate)されている有機ホスホン酸である。
【0057】
工程A)において使用される有機ホスホン酸は、市販されており、例えば、Clariant社またはAldrich社製の製品である。
【0058】
工程A)において使用される有機ホスホン酸は、ドイツ特許出願第10213540.1号に記載されるようなビニル含有ホスホン酸を含まない。
【0059】
工程A)において作製される混合物は、1:10,000〜10,000:1、好ましくは1:1000〜1000:1、特には1:100〜100:1の、有機ホスホン酸無水物 対 全ポリマーの合計の重量比を有する。これらのホスホン酸無水物が、ポリリン酸あるいは単一および/またはマルチ有機ホスホン酸との混合物において使用される場合、これらは、該ホスホン酸無水物において考えられなければならない。
【0060】
更には、更なる有機ホスホン酸、好ましくはペルフルオロ化(perfluorinated)有機ホスホン酸が、工程A)において作製される混合物へ添加され得る。この添加は、工程B)の前および/または間あるいは、工程C)の前に、行われ得る。これによって、粘度を制御することが可能である。
【0061】
工程C)に従う層形成は、ポリマーフィルム作製の先行技術から公知であるそれ自体公知の手段(流し込み(pouring)、スプレーイング、ドクターブレードでの塗布)によって行われる。該条件下で不活性と考えられる全支持体は、支持体として好適である。粘度を調節するために、リン酸(濃リン酸、85%)が、必要である場合、該溶液に添加され得る。これによって、粘度が、所望の値へと調節され得、そして該膜の形成が促進され得る。加熱される溶液の温度は、400℃まで、好ましくは150〜350℃、特には190〜300℃である。
【0062】
工程C)に従って作製される層は、20〜4000μm、好ましくは30〜3500μm、特には50〜3000μmの厚みを有する。
【0063】
該層が燃料電池における使用のための十分な強度を示すまでの時間および温度での、湿気の存在下における、工程C)に従って作製された膜の処理。該処理は、該膜が自己支持性であり、その結果、それが損傷無しに該支持体から分離され得る程度まで、行われ得る。
【0064】
工程D)における該膜の処理は、湿気または水および/またはスチームおよび/または85%までの水含有リン酸の存在下において、ならびに/あるいは水またはリン酸中に有機ホスホン酸および/またはスルホン酸を含有する混合物中において、0℃超かつ150℃未満の温度、好ましくは10℃〜120℃、特には室温(20℃)〜90℃の温度で行われる。該処理は、好ましくは、標準圧(normal pressure)で行われるが、圧力の作用下でも行われ得る。該処理は、十分な湿気の存在下において行われることが必須であり、これにより、有機ホスホン酸および/またはリン酸(ポリリン酸も使用された場合)の形成を伴う部分加水分解によって、存在する該有機ホスホン酸無水物が該膜の固化に寄与する。
【0065】
該有機ホスホン酸無水物の加水分解において形成される有機ホスホン酸は、
【0066】
【化10】

【0067】
本発明に従う膜から作製される膜電極ユニットにおけるカソードで特に、過電圧の予想外の減少をもたらす。
【0068】
工程D)における有機ホスホン酸無水物の部分加水分解は、該膜の固化、および層厚みの減少、および自己支持性である15〜3000μm、好ましくは20〜2000μm、特には20〜1500μmの厚みを有する膜の形成へと至る。
【0069】
工程D)に従う処理についての温度上限は、典型的に150℃である。例えば過熱スチームからの、湿気の極端に短い作用によって、このスチームはまた、150℃よりも熱くなり得る。該処理の期間は、該温度上限について決定的に重要である。
【0070】
部分加水分解(工程D)はまた、該加水分解が所定の湿気作用で詳細に制御され得る、人工気候チャンバ(climatic chambers)において行われ得る。この関係において、湿気
は、それと接触する周囲エリア(例えば、空気、窒素、二酸化炭素または他の好適なガスのようなガス、あるいはスチーム)の温度または飽和によって、詳細に設定され得る。処理時間は、上記のように選択されるパラメータに依存する。
【0071】
更に、処理時間は、膜の厚みに依存する。
【0072】
典型的に、処理時間は、例えば過熱スチームの作用で、数秒〜数分、あるいは例えば室温およびより低い相対湿度で屋外において、終日である。好ましくは、処理時間は、10秒〜300時間、特には1分〜200時間である。
【0073】
部分加水分解が、40〜80%の相対湿度(relative humidity)を有する周囲空気を伴う室温(20℃)で行われる場合、処理時間は1〜200時間である。
【0074】
工程D)に従って得られる膜は、それが自己支持性(self-supporting)であるような様式で形成され得、即ち、それは、損傷無しに支持体から分離され得、そして次いで、妥当である場合、直接更に処理され得る。
【0075】
ホスホン酸の濃度および従って本発明に従う高分子膜の伝導率は、加水分解の程度、即ち、期間、温度および周囲湿度によって設定され得る。本発明によれば、プロトンの濃度は、イオン交換容量(ion exchange capacity)(IEC)として与えられる。本発明の範囲内で、IECは、少なくとも2eq/g、好ましくは5eq/g、特に好ましくは10eq/gである。
【0076】
工程D)に従う処理に続いて、該膜は、更に、大気酸素の存在下において熱の作用によって表面で架橋され得る。この膜表面の硬化は、更に、該膜の特性を改善する。
【0077】
架橋はまた、IRもしくはNIR(それぞれ、IR=赤外線、即ち、700nm超の波長を有する光;NIR=近IR、即ち、約700〜2000nmの範囲の波長および約0.6〜1.75eVの範囲のエネルギーを有する光)の作用によって行われ得る。別の方法は、β線照射である。この関係において、該照射線量は、5〜200kGyである。
【0078】
本発明に従う高分子膜は、既に公知のドープト高分子膜と比較して改善された材料特性を有する。特に、それらは、公知のドープト高分子膜と比較してより良好な性能を示す。この理由は、特に、改善されたプロトン伝導率である。これは、120℃の温度で、少なくとも0.1S/cm、好ましくは少なくとも0.11S/cm、特には少なくとも0.12S/cmである。
【0079】
ポリアゾールに基づくポリマーに加えて、本発明に従う膜はまた、ブレンド材料として更なるポリマーを含み得る。この場合、該ブレンド成分の機能は、本質的に、機械的特性を改善しそして材料のコストを削減することである。
【0080】
この目的のために、更なるブレンド材料が、工程A)および/または工程B)の前、間または後に、あるいは工程C)の前に、添加され得る。ブレンド材料としては、ポリエーテルスルホン、特に、ドイツ特許出願第10052242.4号に記載のポリエーテルスルホンが考慮される。ブレンド成分として使用され得る更なるポリマーとしては、中でも、以下が挙げられる:ポリオレフィン、例えばポリ(クロロプレン)、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリ(p−キシリレン)、ポリアリールメチレン、ポリアルメチレン(polyarmethylene)、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルエーテル、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンと、ペルフルオロプロピルビニルエーテルと、トリフルオロニトロソメタンと、スルホニルフルオライドビニルエーテルと、カルボアルコキシペルフルオロアルコキシビニルエーテルと、PTFEとのコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクロレイン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリシアノアクリレート、ポリメタクリルイミド、シクロオレフィン性コポリマー、特にノルボルネンのもの;
骨格にC−O結合を有するポリマー、例えば、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリエーテル、ポリプロピレンオキサイド、ポリエピクロロヒドリン、ポリテトラヒドロフラン、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルケトン、ポリエステル、特に、ポリヒドロキシ酢酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシプロピオン酸、ポリピバロラクトン(polypivalolacton)、ポリカプロラクトン、ポリマロン酸、ポリカーボネート;
骨格におけるポリマー性C−S結合、例えば、ポリスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン;
骨格におけるポリマー性C−N結合、例えば、ポリイミン、ポリイソシアニド、ポリエーテルイミン、ポリアニリン、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアゾール、ポリアジン;
液晶性ポリマー(liquid-crystalline polymers)、特にVetra、ならびに
無機ポリマー、例えば、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリケイ酸、ポリシリケート、シリコーン(silicons)、ポリホスファゼンおよびポリチアジルが挙げられる。
【0081】
100℃を超える長期間使用温度での燃料電池における用途について、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃そして非常に特に好ましくは少なくとも180℃のガラス転移温度またはVicat軟化点VST/A/50を有するような、ブレンドポリマーが好ましい。この関係において、180℃〜230℃のVicat軟化点VST/A/50を有するポリスルホンが好ましい。
【0082】
好ましいポリマーとしては、ポリスルホン、特に、骨格に芳香族基を有するポリスルホンが挙げられる。本発明の特定の局面によれば、好ましいポリスルホンおよびポリエーテルスルホンは、ISO1133に従って測定した場合、40cm/10分に等しいかそれ未満、特には30cm/10分に等しいかそれ未満、そして特に好ましくは20cm/10分に等しいかそれ未満のメルトボリュームレート(melt volume rate)MVR300/21.6を有する。
【0083】
特定の局面によれば、該高分子膜は、芳香族スルホン酸基および/またはホスホン酸基を有する少なくとも1つのポリマーを含み得る。芳香族スルホン酸基および/またはホスホン酸基は、スルホン酸基(−SOH)および/またはホスホン酸基(−PO)が芳香族またはヘテロ芳香族基へ共有結合されている基である。該芳香族基は、該ポリマーの骨格の一部または側鎖の一部であり得、ここで、骨格に芳香族基を有するポリマーが好ましい。スルホン酸基および/またはホスホン酸基はまた、多くの場合において、それらの塩の形態で使用され得る。更に、誘導体、例えば、スルホン酸のハロゲン化物あるいはエステル(特に、メチルまたはエチルエステル)が使用され得、これらは、該膜の作動の間にスルホン酸へ変換される。
【0084】
好ましい芳香族またはヘテロ芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,5−トリフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ビピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン(cinnoline)、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジンまたはキノリジン、4H−キノリジン、ジフェニルエーテル、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン(benzopyrazidine)、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アジリジン(aziridine)、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリンおよびフェナントレンから誘導され、これらはまた、必要に応じて置換され得る。好ましい置換基は、ハロゲン原子、例えばフッ素、アミノ基、ヒドロキシ基またはアルキル基である。
【0085】
この場合、置換パターンは任意の形態であり得、例えば、フェニレンの場合、それは、オルト−、メタ−およびパラ−フェニレンであり得る。特に好ましい基は、ベンゼンおよびビフェニレン(これらはまた、必要に応じて置換され得る)から誘導される。
【0086】
好ましいアルキル基は、1〜4の炭素原子を有する短鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−もしくはi−プロピルおよびt−ブチル基である。
【0087】
好ましい芳香族基は、フェニルまたはナフチル基である。アルキル基および芳香族基は置換され得る。
【0088】
スルホン酸基で修飾されたポリマーは、好ましくは、0.5〜3meq/g、好ましくは0.5〜2meq/gの範囲のスルホン酸基の含有量を有する。この値は、いわゆるイオン交換容量(IEC)によって測定される。
【0089】
IECを測定するために、スルホン酸基は、遊離酸に変換される。この目的のために、該ポリマーは公知の様式で酸で処理され、過剰な酸は洗浄によって除去される。従って、スルホン化(sulfonated)ポリマーは、まず、沸騰水中で2時間処理される。引き続いて、過剰の水が取り除かれ(dabbed off)、そしてサンプルは、15時間、p<1mbarで、真空乾燥キャビネット中、160℃で乾燥される。次いで、膜の乾燥重量が測定される。このようにして乾燥されたポリマーは、次いで、1時間、80℃で、DMSO中に溶解される。引き続いて、該溶液は、0.1M NaOHで滴定される。当量点に達するための酸の消費量および乾燥重量から、イオン交換容量(IEC)が次いで算出される。
【0090】
芳香族基へ共有結合されたスルホン酸基を有するポリマーは、専門家集団において公知である。例えば、芳香族スルホン酸基を有するポリマーは、ポリマーをスルホン化することによって作製され得る。ポリマーのスルホン化のプロセスは、F. Kucera et. al. Polymer Engineering and Science 1988, Vol. 38, No 5, 783-792に記載されている。この関係において、スルホン化条件は、低度のスルホン化が得られるように選択され得る(DE-A-19959289)。
【0091】
その芳香族基が側鎖の一部である芳香族スルホン酸基を有するポリマーに関して、特に、ポリスチレン誘導体が参照される。例えば、公報US-A-6110616は、ブタジエンおよびスチレンのコポリマーおよび燃料電池における使用のためのそれらの引き続いてのスルホン化を記載している。
【0092】
更に、このようなポリマーはまた、酸基を含むモノマーのポリ反応(polyreaction)によって得られ得る。従って、ペルフルオロ化(perfluorinated)ポリマーは、US-A-5422411に記載されるように、トリフルオロスチレンおよびスルホニル−修飾されたトリフルオロスチレンの共重合によって作製され得る。
【0093】
本発明の特定の局面によれば、芳香族基へ結合されたスルホン酸基を含む高温で安定な熱可塑性物質が使用される。一般的に、このようなポリマーは、骨格に芳香族基を有している。従って、スルホン化ポリエーテルケトン(DE-A-4219077、WO96/01177)、スルホン化ポリスルホン(J. Membr. Sci. 83 (1993) p. 211)またはスルホン化ポリフェニレンスルフィド(DE-A-19527435)が好ましい。
【0094】
芳香族基へ結合されたスルホン酸基を有する上述のポリマーは、個々にまたは混合物として使用され得、この場合、骨格に芳香族基を有するポリマーを有する混合物が、特に好ましい。
【0095】
芳香族基へ結合されたスルホン酸基を有するポリマーの分子量は、ポリマーのタイプおよびその加工性に依存して、広範囲に変化し得る。好ましくは、重量平均分子量Mは、5000〜10,000,000、特には10,000〜1,000,000、特に好ましくは15,000〜50,000の範囲内にある。本発明の特定の局面によれば、芳香族基へ結合されたスルホン酸基を有するポリマーは、低多分散性指数(low polydispersity index)M/Mを有する。好ましくは、該多分散性指数は、1〜5、特には1〜4の範囲内にある。
【0096】
適用技術の点で該特性を更に改善するために、充填剤(特に、プロトン伝導性充填剤)および更なる酸が、更に該膜へ添加され得る。該添加は、工程A)および/または工程B)の前、間または後に、あるいは工程C)の前に行われ得る。
【0097】
プロトン伝導性充填剤の非限定的な例は、以下である:
スルフェート、例えば、
CsHSO、Fe(SO、(NHH(SO、LiHSO、NaHSO、KHSO、RbSO、LiNSO、NHHSO
ホスフェート、例えば、
Zr(PO、Zr(HPO、HZr(PO、UOPO・3HO、HUOPO、Ce(HPO、Ti(HPO、KHPO、NaHPO、LiHPO、NHPO、CsHPO、CaHPO、MgHPO、HSbP、HSb14、HSb20
ポリ酸、例えば、
PW1240・nHO(n=21〜29)、HSiW1240・nHO(n=21〜29)、HWO、HSbWO、HPMo1240、HSb11、HTaWO、HNbO、HTiNbO、HTiTaO、HSbTeO、HTi、HSbO、HMoO
セレン化物およびヒ化物、例えば、
(NHH(SeO、UOAsO、(NHH(SeO、KHAsO、CsH(SeO、RbH(SeO
リン化物、例えば、ZrP、TiP、HfP;
酸化物、例えば、Al、Sb、ThO、SnO、ZrO、MoO
シリケート、例えば、ゼオライト、ゼオライト(NH)、フィロシリケート(phyllosilicates)、テクトシリケート(tectosilicates)、H−ソーダ沸石、H−モルデン沸石、NH−方沸石(NH4-analcines)、NH−方ソーダ石、NH−ガレート(NH4-gallates)、H−モンモリロナイト;
酸、例えば、HClO、SbF
充填剤、例えば、炭化物、特にSiC、Si、繊維、特にガラス繊維、ガラス粉末および/またはポリマー繊維(好ましくは、ポリアゾールに基づく)。
【0098】
更なる成分として、この膜はまた、ペルフルオロ化スルホン酸添加剤(perfluorinated sulfonic acid additives)(0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%、特に好ましくは0.2〜10重量%)を含有し得る。これらの添加剤は、性能の改善、カソード付近の酸素溶解性および酸素拡散性の増加、ならびに白金へのリン酸およびホスフェートの吸着の減少を生じさせる。(Electrolyte additives for phosphoric acid fuel cells. Gang, Xiao;Hjuler, H. A.;Olsen, C.;Berg, R. W.;Bjerrum, N. J.. Chem. Dep. A, Tech. Univ. Denmark, Lyngby, Den. J. Electrochem. Soc. (1993), 140(4), 896-902 および Perfluorosulfonimide as an additive in phosphoric acid fuel cell. Razaq, M.;Razaq, A.;Yeager, E.;DesMarteau, Darryl D.;Singh, S. Case Cent. Electrochem. Sci., Case West. Reserve Univ., Cleveland, OH, USA. J. Electrochem. Soc. (1989), 136(2), 385-90)。
【0099】
ペルスルホン化添加剤(persulphonated additives)の非限定的な例は、以下である:
トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸リチウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸セシウム、トリエチルアンモニウムペルフルオロヘキサスルホネート、ペルフルオロスルホンイミドおよびナフィオン(Nafion)。
【0100】
更なる成分として、該膜はまた、操作の間の酸素還元において生成される過酸化物フリーラジカルを捕獲するか(一次酸化防止剤)または破壊する(二次酸化防止剤)添加剤を含有し得、そしてそれによって、JP2001118591 A2に記載されるような膜および膜電極ユニットの寿命および安定性を改善し得る。このような添加剤の官能基および分子構造は、F. Gugumus in Plastics Additives, Hanser Verlag, 1990;N.S. Allen, M. Edge Fundamentals of Polymer Degradation and Stability, Elsevier, 1992;またはH. Zweifel, Stabilization of Polymeric Materials, Springer, 1998に記載されている。
【0101】
このような添加剤の非限定的な例は、以下である:
ビス(トリフルオロメチル)ニトロキサイド、2,2−ジフェニル−1−ピクリニルヒドラジル、フェノール、アルキルフェノール、立体的に込み合ったアルキルフェノール(例えば、Irganox)、芳香族アミン、立体的に込み合ったアミン(例えば、Chimassorb);立体的に込み合ったヒドロキシルアミン、立体的に込み合ったアルキルアミン、立体的に込み合ったヒドロキシルアミン、立体的に込み合ったヒドロキシルアミンエーテル、ホスファイト(例えば、Irgafos)、ニトロソベンゼン、メチル−2−ニトロソプロパン、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒド tert−ブチルニトロン、システアミン、メラニン、酸化鉛、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト。
【0102】
本発明に従うドープト高分子膜についての適用の可能な分野としては、中でも、燃料電池、電気分解、キャパシタおよびバッテリーシステムにおける使用が挙げられる。それらの特性プロフィールに起因して、該ドープト高分子膜は、好ましくは、燃料電池において使用される。
【0103】
本願発明はまた、本発明に従う高分子膜を少なくとも1つ含む、膜電極ユニット(membrane electrode unit)に関する。膜電極ユニットに関する更なる情報については、技術文献、特に特許US-A-4,191,618、US-A-4,212,714およびUS-A-4,333,805を参照のこと。膜電極ユニットの構造および製造ならびに選択される電極、ガス拡散層および触媒に関する前記の参考文献[US-A-4,191,618、US-A-4,212,714およびUS-A-4,333,805]に含まれる開示はまた、本明細書の一部である。
【0104】
本発明の変形において、該膜形成はまた、支持体上ではなく、直接、電極上において行われ得る。これによって、工程D)に従う処理は対応して短縮され得、何故ならば、該膜が自己支持性である必要はもはやないためである。このような膜もまた、本発明の目的である。
【0105】
本発明の更なる目的は、
A)溶液および/または分散液の形成を伴う、有機ホスホン酸無水物中にポリアゾール−ポリマーを溶解する工程、
B)400℃まで、好ましくは350℃まで、特には300℃までの温度へ、不活性ガス下、工程A)に従って得られ得る溶液を加熱する工程、
C)工程B)に従うポリアゾールポリマーの溶液を使用して、電極上に膜を形成する工程、ならびに
D)それが自己支持性になるまで、工程C)において形成された膜を処理する工程、
を包含する方法によって得られ得る、ポリアゾールに基づくプロトン伝導性ポリマーコーティングを有する電極である。
【0106】
上述の変形および好ましい実施形態はまた、この目的に適用され、その結果、この点でそれらは繰り返されない。
【0107】
該コーティングは、工程D)後、2〜3000μm、好ましくは3〜2000μm、特には5〜1500μmの厚みを有する。
【0108】
このような様式でコーティングされた電極は、本発明に従う少なくとも1つの高分子膜を必要に応じて含む膜電極ユニットへ統合され(integrated)得る。
【0109】
一般的な測定方法:
IECについての測定方法
膜の伝導性は、いわゆるイオン交換容量(ion exchange capacity)(IEC)として表される酸基の含有量に大きく依存する。イオン交換容量を測定するために、3cmの直径を有するサンプルを打ち抜き、そして100mlの水で満たしたビーカー中に入れる。放出された酸を0.1MNaOHで滴定する。引き続いて、該サンプルを取り出し、過剰量の水を取り除き、そして該サンプルを160℃で4時間乾燥する。次いで、乾燥重量、mを、0.1mgの精度で重量測定によって測定する。その後、イオン交換容量を、以下の式によって、第一滴定終点に達するまでの0.1MNaOHの消費量、V(ml)および乾燥重量、m(mg)から計算する:
IEC=V300/m
比伝導率についての測定方法
比伝導率を、定電位モードにおける4極配置でのインピーダンス分光法(impedancy spectroscopy in a 4-pole arrangement in potentiostatic mode)によって、そして白金電極(ワイヤ、直径0.25mm)を使用して、測定する。集電電極間の距離は2cmである。得られるスペクトルを、オーム抵抗およびキャパシタの並列配置からなるシンプルなモデルで評価する。リン酸でドープされた膜のサンプル断面を、該サンプルを搭載する直前に測定する。温度依存性を測定するために、測定セルを、オーブン中において所望の温度までもっていき、そして該サンプルのすぐ隣に配置されたPt−100サーモカップルを使用して調節する。温度が到達された後、該サンプルを、測定開始前の10分間、この温度で維持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアゾールに基づくプロトン伝導性高分子膜の製造方法であって、
A)溶液および/または分散液の形成を伴う、式
【化1】

の有機ホスホン酸無水物
または式
【化2】

の線形化合物
または式
【化3】

のマルチ有機ホスホン酸の無水物(anhydrides of the multiple organic phosphonic acids)
[式中、基RおよびR’は、同一または異なり、そしてC〜C20炭素含有基を示す]
中に、
一般式(I)および/または(II)の繰り返しアゾール単位
【化4】

[式中、
Arは、同一または異なり、そして、単核または多核であり得る四価の芳香族またはヘテロ芳香族基を示し、
Arは、同一または異なり、そして、単核または多核であり得る二価の芳香族またはヘテロ芳香族基を示し、
Arは、同一または異なり、そして、単核または多核であり得る二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基を示し、
Xは、同一または異なり、そして、酸素、硫黄またはアミノ基{これは、更なる基として、水素原子、1〜20の炭素原子を有する基を保有する}を示す]
を含有するポリアゾール−ポリマーを溶解する工程、
B)400℃まで、好ましくは350℃まで、特には300℃までの温度へ、不活性ガス下、工程A)に従って得られ得る溶液を加熱する工程、
C)工程B)に従うポリアゾールポリマーの溶液を使用して、支持体上に膜を形成する工程、ならびに
D)それが自己支持性になるまで、工程C)において形成された膜を処理する工程
を包含し、且つ、
前記工程D)における膜の処理が、0℃超かつ150℃未満の温度で、該膜が自己支持性であり、それが損傷無しに該支持体から分離され得るまでの時間、湿気または水および/またはスチームの存在下において行われることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
工程A)において、(酸滴定によって)Pとして計算した場合、少なくとも83%の含有量を有するポリリン酸が、更に使用されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程A)において、Pが更に使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
工程A)において、ポリベンゾイミダゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾールおよびポリ(テトラアザピレン)(poly(tetrazapyrenes))からなる群から選択されるポリマーが使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
工程A)において、使用されるポリマーが、

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

[式中、nは、10に等しいかまたはそれを超える整数である]
の1以上の繰り返しベンゾイミダゾール単位を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
工程A)および/または工程B)の前、間または後に、あるいは工程C)の前に、更なるポリマーが、ブレンド材料として添加されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
工程D)の前に、粘度が、リン酸および/または有機ホスホン酸の添加によって調節されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
工程C)に従って作製された膜が、該膜が自己支持性になりそして損傷無しに前記支持体から分離され得るまでの時間および温度で、湿気の存在下において処理されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程D)における膜の処理が、10℃〜120℃で行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記工程D)における膜の処理が、室温(20℃)〜90℃で行われることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
工程D)における膜の処理が、10秒〜300時間であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
工程D)における膜の処理が、1分〜200時間であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
工程C)において、20〜4000μmの厚みを有する層が作製されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
工程D)において形成される膜が、15〜3000μmの厚みを有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−252159(P2011−252159A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−166861(P2011−166861)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【分割の表示】特願2006−546106(P2006−546106)の分割
【原出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【出願人】(505118475)ベーアーエスエフ フューエル セル ゲーエムベーハー (24)
【Fターム(参考)】