説明

プロドラッグである5−アミノ−3−(3’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオン

【課題】プロドラッグである5−アミノ−3−(3’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオンの提供。
【解決手段】本発明は、プロドラッグ:5−アミノ−3−(3’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオンに関する。上記プロドラッグの代謝物である親化合物は、免疫調節活性を有する。また、本発明は、癌等の異常細胞増殖に関連する症状の処置における、上記プロドラッグ及びその薬学的組成物の治療的使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロドラッグ:5−アミノ−3−(3’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオンに関する。上記プロドラッグの代謝物である親化合物は免疫調節活性を有する。また、本発明は、癌等の異常細胞増殖に関連する症状の処置における、上記プロドラッグ及びその医薬組成物の治療的使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ここ20〜30年間、グアニンアナログ及びそのヌクレオシドの治療的使用の可能性を探る多くの尽力が成されてきた。幾つかのヌクレオシドアナログは、現在、AZT、ddI、ddC、d4T、3TC、及びグアノシンヌクレオシドアナログ「アバカビル」等のHIV逆転写酵素阻害剤を含む抗ウイルス剤として市販されている。特定の理論に従うということはなく、ヌクレオシドアナログは、病原体若しくは腫瘍を直接阻害するか、宿主の免疫機能を刺激するか、又はこれらの機序若しくは他の機序を幾つか組み合わせることによって利益をもたらすことができる。
【0003】
研究により免疫調節活性が明らかにされたグアノシンアナログの1つは、5−アミノ−3−(β−D−リボフラノシルチアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7(3H,6H)ジオン(7−チア−8−オキソグアノシン)である。例えば、ある種のピリミド[4,5−d]ピリミジンヌクレオシドは、BDF1マウス中のL1210に対する処置において有効であるとして、Robinsらの特許文献1に開示されている。さらに、マウス脾臓細胞増殖、及びセムリキ森林ウイルスに対するインビボ活性といった免疫活性を有意に示す3−β−D−リボフラノシルチアゾロ[4,5−d]ピリミジンは、Robinsらの特許文献2及び3に開示されている。また、幾つかの刊行物には、チアゾロ[4,5−d]ピリミジン部分の非グリコシル誘導体が記載されている。例えば、特許文献4及び5、非特許文献1及び2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,041,542号明細書
【特許文献2】米国特許第5,041,426号明細書
【特許文献3】米国特許第4,880,784号明細書
【特許文献4】米国特許第5,994,321号明細書
【特許文献5】米国特許第5,446,045号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Revankar et al.,J.Het.Chem.,30,1341−49(1993)
【非特許文献2】Lewis et al.,J.Het.Chem.,32,547−56(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、免疫調節剤として有用である新規なプロドラッグ:5−アミノ−3−(3’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオン及びその薬学的に許容される塩を記載している。また、本発明は、癌等の異常細胞増殖に関連する症状の処置における、上記プロドラッグ及びその組成物の治療的使用も包含する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概括的な態様において、本発明は、下記化学式I:
【0008】
【化1】

〔式中、
はNH又は−NCH=NRであり、
はH、OH又は−ORであり、
はOH、−OC(O)C〜C18アルキル基、−OCO、−OC(O)NR、又は、ラセミ体、L体若しくはD体のアミノ酸基:−OC(O)CHRNHRであり、
はOH、−OC(O)C〜C18アルキル基、−OCO、−OC(O)NR、又は、ラセミ体、L体若しくはD体のアミノ酸基:−OC(O)CHRNHRであり、
は−C〜Cアルキル基であり、
及びRは、独立して−C〜Cアルキル基であるか、又は窒素原子と結合して5若しくは6員環の複素環を形成しており、
はH又は−C〜Cアルキル基であり、
はH、−C〜Cアルキル基、−C(O)R又は−COであり、
そのうち、
又はRの少なくとも1つは、−OCO、−OC(O)NR、又は、ラセミ体、L体若しくはD体のアミノ酸基:−OC(O)CHRNHRであり、
そのうち、上記アルキル基は、
水素、
アルキルアミン、
アミノ基、
アリール基、シクロアルキル基、複素環基、
〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基、C〜Cヒドロキシアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキルアミン、C〜Cジアルキルアミン、C〜Cアルケニル基、又はC〜Cアルキニル基(上記基にはそれぞれ、1つ以上のヘテロ原子が間に介在していてもよい)、
カルボキシル基、
シアノ基、
ハロ基、
ヒドロキシル基、
メルカプト基、
オキソ基、
チオアルキル基、
−C(O)−(C〜Cアルキル基)、−C(O)−(アリール基)、−C(O)−(シクロアルキル基)、−C(O)−(複素環基)、−O−(C〜Cハロアルキル基)、−O−アリール基、−O−複素環基、−NHC(O)−(C〜Cアルキル基)、−NHC(O)−(C〜Cアルケニル基)、−NHC(O)−(アリール基)、−NHC(O)−(シクロアルキル基)、−NHC(O)−(複素環基)、−NHS(O)−(C〜Cアルキル基)、−NHS(O)−(アリール基)、−NHS(O)−(シクロアルキル基)、及び−NHS(O)−(複素環基)
から選択される1〜4つの置換基で置換されていてもよく、
上記置換基はそれぞれ、さらに
アミノ基、
〜Cアルキルアミン、C〜Cジアルキルアミン、
〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルケニル基、C〜Cヒドロキシル基、及びC〜Cヒドロキシアルキル基(各々は
シアノ基、
ハロ基、及び
ニトロ基で置換されていてもよい)
から選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい〕
のプロドラッグ:5−アミノ−3−(3’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオン、又はその薬学的に許容される塩、水和物、若しくは立体異性体に関する。
【0009】
一実施形態において、本発明は、RがNHである、化学式Iの化合物に関する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、RがH又はOHである、化学式Iの化合物に関する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、Rが−OCO又は−OC(O)NRであり、かつRがOH、−OC(O)C〜C18アルキル基、−OCO又は−OC(O)NRである、化学式Iの化合物に関する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、Rが−OCO又は−OC(O)NRであり、かつRがOH、−OC(O)C〜C18アルキル基、−OCO又は−OC(O)NRである、化学式Iの化合物に関する。
【0013】
別の実施形態において、Rはイソプロピル基である。
【0014】
別の実施形態において、R及びRは独立してメチル基又はエチル基である。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、下記化学式:
【0016】
【化2】

から選択される化学式Iの化合物に関する。
【0017】
また、本発明は化学式Iの化合物の薬学的に許容される塩、水和物、及び溶媒和物に関する。本発明の化合物を製造する有利な方法もまた記載される。
【0018】
化学式Iのプロドラッグは、免疫システムの強化剤として有用であって、調節性、分裂促進性、増加性、及び/又は増強性等の免疫システムの特性を幾つか有しているか、又はこれらの特性を有する化合物の中間体である。上記化合物は、宿主の免疫システムの少なくともナチュラルキラー細胞、マクロファージ細胞、樹状細胞又はリンパ球に影響を与えると予想される。これらの特性によって、上記化合物は、抗ウイルス剤及び抗腫瘍剤として、又は抗ウイルス剤及び抗腫瘍剤の中間体として有用である。それらは、好適な医薬組成物の活性成分として作用することで感染宿主の処置に使用することができる。
【0019】
本発明の一態様において、化学式Iのプロドラッグは、上記化合物を治療的有効量で哺乳動物に投与することにより、ヒト等の哺乳動物のウイルス性疾患の処置に全般的に使用される。本発明の化合物で処置されることが期待されるウイルス性疾患としては、RNA及びDNAウイルスの両方によって引き起こされる急性及び慢性感染症が挙げられる。処置可能なウイルス感染症の種類は決して限定されないが、化学式Iのプロドラッグは、以下によって引き起こされる感染症の処置において特に有用である:アデノウイルス、サイトメガロウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、フラビウイルス科〔黄熱ウイルス及びC型肝炎ウイルス(HCV)等〕、単純ヘルペス1型及び2型、帯状疱疹、ヒトヘルペスウイルス6型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、麻疹、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポックスウイルス〔天然痘及びサル痘ウイルス等〕、ライノウイルス、RSウイルス(RSV)、出血熱を引き起こす多様な科のウイルス〔アレナウイルス科(LCM、フニンウイルス、マチュポ(Machup)ウイルス、ガナリトウイルス及びラッサ熱)、ブニヤウイルス科(ハンタウイルス属及びリフトバレー熱)、及びフィロウイルス科(エボラ及びマールブルクウイルス)等〕、一連のウイルス脳炎群〔ウエストナイルウイルス、ラクロスウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、キャサヌール(Kysanur)フォレストウイルス、及びダニ媒介ウイルス群(例えばクリミア・コンゴ出血熱ウイルス)等〕。
【0020】
本発明の別の態様において、化学式Iのプロドラッグは、上記化合物を治療的有効量で哺乳動物に投与することにより、哺乳動物の細菌感染、真菌感染及び原虫感染の処置に使用される。あらゆる病原性微生物が、本発明の化合物によって処置可能であると考えられる。例えば、抗生物質に耐性を有する上記微生物が挙げられるが、これに限定されない。免疫システムの多数の要素を活性化する化合物の能力によって、抗生物質に対する感受性の低減という通常見られる耐性機構が回避されるので、そのような耐性菌によって引き起こされる哺乳動物の感染に対しての化学式Iのプロドラッグによる処置は、本発明の中で特に有用である。
【0021】
本発明の別の態様において、化学式Iのプロドラッグは、上記化合物を治療的有効量で哺乳動物に投与することにより、哺乳動物の腫瘍の処置に使用される。処置されると期待される腫瘍又は癌としては、ウイルスによって引き起こされるものが挙げられるが、これに限定されない。ウイルス感染細胞の新生物状態への形質転換の阻害、形質転換細胞から他の正常細胞へのウイルス拡散の抑制、及び/又は、ウイルス形質転換細胞の増殖の阻止が効能として含まれる。本発明の化合物は、以下に限定されないが、癌腫、肉腫及び白血病等の広範囲の腫瘍に対して有用であると予想される。そのような種類のものとしては、乳癌、結腸癌、膀胱癌、肺癌、前立腺癌、胃癌及び膵臓癌、さらにリンパ芽球性白血病及び骨髄性白血病が挙げられる。
【0022】
本発明の別の実施形態は、投与を必要とする対象に本発明の化合物を治療的有効量で投与することにより、異常細胞増殖を処置することを含む。異常細胞増殖は、良性増殖もあれば悪性増殖もあり得る。特に、異常細胞増殖としては、癌腫、肉腫、リンパ腫又は白血病が含まれ得る。本方法の一実施形態において、異常細胞増殖は、下記の癌である:以下に限定されないが、肺癌、骨肉腫、膵臓癌、皮膚癌、頭部若しくは頸部の癌、皮膚黒色腫若しくは眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、ファロピーオ管の癌腫、子宮内膜の癌腫、頸部の癌腫、膣の癌腫、陰門の癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性若しくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓若しくは尿管癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄の軸の腫瘍、脳幹膠腫、下垂体腺腫、又は上記癌が1つ以上併発されたもの等。また、本発明の方法は、以下から成る群から選択される癌を有する患者を処置することも含む:小細胞肺癌、非小細胞肺癌、食道癌、腎臓癌、膵臓癌、黒色腫、膀胱癌、乳癌、結腸癌、肝臓癌、肺癌、肉腫、胃癌、胆管癌、中皮腫又は前立腺癌。上記方法の別の実施形態において、上記異常細胞増殖は、以下に限定されないが、乾癬、良性前立腺肥大、又は再狭窄等の良性増殖性疾患である。
【0023】
本発明の別の態様において、哺乳動物を処置する方法は、本発明の化合物を含む医薬品を治療的及び/又は予防的有効量で投与することを含む。この態様において、効能は、哺乳動物の免疫システムの幾らかを調節すること、特に、以下に限定されないが、IL−1からIL−12等のインターロイキン群、並びにTNFα、及びインターフェロン類(例えばインターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、及びインターフェロンガンマ)等の他のサイトカイン類、並びにそれらの下流エフェクター類といったTh1及びTh2のサイトカイン活性を調節することに関する。Th1及びTh2のサイトカインの調節が行われる場合、上記調節としては、例えば、Th1及びTh2両方への刺激、Th1及びTh2両方への抑制、Th1若しくはTh2のいずれかへの刺激、並びにその他への抑制か、又は、高濃度ではTh1/Th2レベルに対する効能の1つ(全般的抑制等)が奏され、低濃度では別の効能(Th1又はTh2のいずれかへの刺激、及びその他への抑制等)が奏される二峰性調節が考えられる。
【0024】
本発明の別の態様において、化学式Iのプロドラッグを含む医薬組成物は、本発明の化合物に含まれていない抗感染薬を摂取している哺乳動物に治療的有効量で投与される。本発明の好ましい態様において、化学式Iのプロドラッグを含む医薬組成物は、感染体に直接作用して感染体の増殖を阻害するか又は感染体を破壊する抗感染薬(複数可)とともに治療的有効量で投与される。
【0025】
別の態様において、本発明は、処置又は予防を必要とする哺乳動物、好ましくは処置又は予防を必要とするヒトのC型肝炎ウイルス感染症を治療又は予防する方法を包含する。
【0026】
別の態様において、本発明は、処置又は予防を必要とする患者のC型肝炎ウイルス感染症を処置又は予防する方法であって、本発明の化学式Iのプロドラッグ、及び薬学的に許容される賦形剤、基剤又はビヒクルを治療的又は予防的有効量で上記患者に投与する方法を包含する。
【0027】
別の態様において、本発明は、処置又は予防を必要とする患者のC型肝炎ウイルス感染症を処置又は予防する方法であって、化学式Iのプロドラッグ化合物、及び追加治療剤、好ましくは目的の使用に見合った追加抗ウイルス剤又は抗腫瘍剤を治療的又は予防的有効量で上記患者に投与する方法を包含する。
【0028】
本発明の好ましい態様において、化学式Iのプロドラッグを治療的有効量で含む医薬組成物は、免疫調節剤としての経口アベイラビリティ及び投与を向上させる。本発明の別の好ましい態様において、本発明の化学式Iのプロドラッグを治療的有効量で含む医薬組成物は、胃を覆っているリンパ系組織を上記薬剤が通過する際に活性構造を遮蔽し、それによってこの組織の活性化を最小にして、経口耐性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
下記の用語が本明細書で用いられる際は、以下に説明される通りに用いられる。
【0030】
本明細書において、「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、オープンな、非限定的意味として用いられる。
【0031】
「化学式I」という用語は、提供された一般的構造により表されるプロドラッグ及び/又は化合物のいずれかを指す。
【0032】
「ピリミジン」という用語は、単環式含窒素複素環を指す。
【0033】
本明細書において「アルキル(基)」という用語は、特に断りのない限り、直鎖、分枝鎖、若しくは環式(「シクロアルキル基」等)部分(縮合又は橋かけ構造を有する二環又はスピロ環部分等)、又は上記部分を組み合わせたものを有する一価の飽和炭化水素ラジカルを含む。環部分を有するアルキル基の場合、上記基は少なくとも3個の炭素原子を有していなくてはならない。
【0034】
本明細書において「アルケニル(基)」という用語は、特に断りのない限り、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するアルキル部分(アルキルは、上記で説明した通りのものである)を含み、上記アルケニル部分のE及びZ異性体も含む。
【0035】
本明細書において「アルキニル(基)」という用語は、特に断りのない限り、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有するアルキル部分を含む。ここでのアルキル基は、上記で説明した通りのものである。
【0036】
本明細書において「アルコキシ(基)」という用語は、特に断りのない限り、O−アルキル基を含む。ここでのアルキル基は、上記で説明した通りのものである。
【0037】
「Me」という用語はメチル(基)を意味し、「Et」はエチル(基)を意味し、「Ac」はアセチル(基)を意味し、「Bz」はベンゾイル(基)を意味し、さらに「Tol」はトルオイル(基)を意味する。
【0038】
特に断りのない限り、本明細書において「シクロアルキル(基)」という用語は、本願明細書で言及される、非芳香族の飽和又は部分飽和の、単環の、又は縮合環、スピロ環若しくは非縮合環である二環式又は三環式炭化水素であって、合計3〜10個の炭素原子、好ましくは5〜8個の環炭素原子を含有するものを指す。シクロアルキル基の例としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の3〜7個、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する単環が挙げられる。シクロアルキル基の具体例として、以下のものに由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
【化3】

本明細書において「アリール(基)」という用語は、特に断りのない限り、芳香族炭化水素から水素を1つ除去することで得られる有機ラジカル(フェニル基又はナフチル基等)を含む。
【0040】
本明細書において「複素環基(heterocyclyl)」又は「複素環基(heterocyclic)」という用語は、特に断りのない限り、それぞれO、S及びNから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する、芳香族複素環基(ヘテロアリール基等)及び非芳香族複素環基を含む。ここでの各複素環基は、その環系に4〜10個の原子を有するが、但し、上記基の環には隣接した2個のO又はS原子が含有されない。非芳香族複素環基には、その環系に4個の原子しか有していない基が含まれるが、芳香族複素環基は、その環系に少なくとも5個の原子を有していなくてはならない。複素環基にはベンゾ縮合(benzo−fused)環系が含まれる。4員環の複素環基の一例として、アゼチジニル基(アゼチジンから誘導される)が挙げられる。5員環の複素環基の一例として、チアゾリル基が挙げられ、10員環の複素環基の一例として、キノリニル基が挙げられる。非芳香族複素環基の例としては、ピロリジニル基、テトラヒドロフラニル基、ジヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロピラニル基、ジヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、チオキサニル基、ピペラジニル基、アゼチジニル基、オキセタニル基、チエタニル基、ホモピペリジニル基、オキセパニル基、チエパニル基、オキサゼピニル基、ジアゼピニル基、チアゼピニル基、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル基、2−ピロリニル基、3−ピロリニル基、インドリニル基、2H−ピラニル基、4H−ピラニル基、ジオキサニル基、1,3−ジオキソラニル基、ピラゾリニル基、ジチアニル基、ジチオラニル基、ジヒドロピラニル基、ジヒドロチエニル基、ジヒドロフラニル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル基、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル基、3H−インドリル基、及びキノリジニル基が挙げられる。芳香族複素環基の例としては、ピリジニル基、イミダゾリル基、ピリミジニル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ピラジニル基、テトラゾリル基、フリル基、チエニル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イソチアゾリル基、ピロリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、シンノリニル基、インダゾリル基、インドリジニル基、フタラジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、イソインドリル基、プテリジニル基、プリニル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フラザニル基、ベンゾフラザニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基及びフロピリジニル基が挙げられる。上掲した基から派生するような上記基は、可能であれば、C−結合又はN−結合したものであってもよい。例えば、ピロール由来の基は、ピロール−1−イル基(N−結合したもの)、又はピロール−3−イル基(C−結合したもの)であってもよい。さらに、イミダゾール由来の基は、イミダゾール−1−イル基(N−結合したもの)、又はイミダゾール−3−イル基(C−結合したもの)であってもよい。4〜10員環の複素環基は、環毎に、1個以上の任意の環炭素、環硫黄又は環窒素原子を1〜2つのオキソ基で所望により置換されていてもよい。2個の環炭素原子がオキソ部分で置換されている複素環基の一例として、1,1−ジオキソ−チオモルホリニル基が挙げられる。4〜10員環の複素環基の他の具体例として、以下のもの由来の基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
【化4−1】

【0042】
【化4−2】

【0043】
特に説明のない限り、「アルキル(基)」、「アルケニル(基)」、「アルキニル(基)」、「アリール(基)」、「シクロアルキル(基)」又は「複素環基」は、それぞれ任意にかつ独立して、アルキルアミン、アミノ基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、C〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基、C〜Cヒドロキシアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキルアミン、C〜Cジアルキルアミン、C〜Cアルケニル基、又はC〜Cアルキニル基(上記置換基にはそれぞれ、1つ以上のヘテロ原子が間に介在していてもよい)、カルボキシル基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、−C(O)OH、−C(O)−(C〜Cアルキル基)、−C(O)−(C〜Cシクロアルキル基)、−C(O)−(アリール基)、−C(O)−(複素環基)、−C(O)−(C〜Cアルキル)アリール基、−C(O)−(C〜Cアルキル)複素環基、−C(O)−(C〜Cアルキル)シクロアルキル基、−C(O)(C〜Cアルキル基)、−C(O)(C〜Cシクロアルキル基)、−C(O)(アリール基)、−C(O)(複素環基)、−C(O)(C〜Cアルキル)アリール基、−C(O)(C〜Cアルキル)複素環基、及び−C(O)(C〜Cアルキル)シクロアルキル基から選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく、上記任意に選択される置換基はそれぞれ、さらに所望によりアミノ基、シアノ基、ハロ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、C〜Cアルキルアミン、C〜Cジアルキルアミン、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルケニル基、及びC〜Cヒドロキシアルキル基(各アルキル基は所望によりCF等の1つ以上のハロ置換基で置換されていてもよい)から選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい。
【0044】
「免疫調節剤」という用語は、正常な又は異常な免疫システムを刺激又は抑制によって調節することが可能な天然物又は合成物を指す。
【0045】
「予防」という用語は、本明細書中で特定される疾患を有すると診断された患者、又は上記疾患を発症するリスクのある患者の上記疾患を予防する本発明の化合物又は組成物の能力を指す。上記用語は、また上記疾患を既に患っている患者、又は上記疾患の症状を有する患者において上記疾患がさらに進行するのを防ぐことを包含する。
【0046】
「患者」又は「対象」という用語は、動物(例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、テンジクネズミ等)又は哺乳動物〔キメラ及びトランスジェニック動物及び哺乳動物等〕を意味する。HCV感染の処置又は予防において、「患者」又は「対象」という用語は、好ましくはサル又はヒト、最も好ましくはヒトを意味する。特定の実施形態において、患者又は対象は、C型肝炎ウイルスに感染しているか、又は暴露されている。ある実施形態において、患者はヒトの幼児(0〜2歳)、小児(2〜17歳)、青年(12〜17歳)、成人(18歳以上)、又は老人(70歳以上)である。さらに、患者には、HIV陽性患者、癌患者、免疫療法若しくは化学療法を受ける患者等の免疫システムが損なわれた患者も含まれる。特定の実施形態において、患者は健常者(健常体)であり、即ち他のウイルス感染症の症状を示していない。
【0047】
「治療的有効量」という用語は、ウイルス性疾患の処置若しくは予防に有利であるか、ウイルス感染症若しくはウイルス誘発性疾患に関連する症状を遅延若しくは最小化するか、又は上記疾患若しくは感染症若しくはその原因を治療若しくは改善する上で充分な本発明の化合物の量を指す。特に、治療的有効量は、インビボにおいて治療上有利であるために充分な量を意味する。上記用語は、本発明の化合物の量に関して用いられる場合、治療を全般的に向上させるか、疾患の症状若しくは原因を低減若しくは回避させるか、別の治療剤の治療効能を高めるか、又は別の治療剤との相乗的治療効果を高める無毒性量を包含するのが好ましい。
【0048】
「予防的有効量」という用語は、結果としてウイルス感染症の感染、再発又は拡散を予防するのに充分な本発明の化合物又は他の活性成分の量を指す。予防的有効量は、初感染、感染症の再発若しくは拡散、又は感染症の関連疾患を予防するのに充分な量を指す場合もある。上記用語は、本発明の化合物の量に関して用いられる場合、予防を全般的に向上させるか、別の予防若しくは治療剤の予防効能を高めるか、又は別の予防若しくは治療剤との相乗的予防効果を高める無毒性量を包含するのが好ましい。
【0049】
「併用(して)(in combination)」という用語は、それぞれの効能が相加的又は相乗的となるように、2つ以上の予防及び/又は治療剤を同時に又は逐次的に使用することを指す。
【0050】
「処置」という用語は、以下を指す。
(i)疾患、障害及び/又は症状を生じやすい傾向があるもののまだ発症しているとは診断されていない動物において上記疾患、障害又は症状が起こるのを予防すること、
(ii)疾患、障害又は症状を阻害すること、即ち、その発症を抑えること、及び
(iii)疾患、障害又は症状を和らげること、即ち、上記疾患、障害及び/又は症状を退縮させること。
【0051】
「α」及び「β」という用語は、描かれた化学構造中の不斉炭素原子における置換基の特定の立体化学構造を示す。
【0052】
本発明の化合物は、互変異性の現象を示すものであってもよい。化学式図では存在し得る全ての互変異体をはっきりと描くことができないが、それらは描かれた化合物の任意の互変異体を示すことを意図しているものであり、上記化学式図によって描かれた特定の化合物形態だけに限定されないと理解されたい。例えば、化学式Iに関して、置換基がエノール型又はケト型で表されるか否かに関わらず、(下記例に示されるように)それらは同じ化合物を示していると理解される。
【0053】
【化5】

本発明の化合物の幾つかは、単一の立体異性体(即ち、実質的に他の立体異性体が存在しない)、ラセミ化合物、及び/又は、エナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物として存在してもよい。そのような単一の立体異性体、ラセミ化合物及びその混合物は全て本発明の範囲に含まれるものである。光学的に活性である本発明の化合物が、光学的に純粋な形態で使用されるのが好ましい。
【0054】
当業者に一般的に理解される通り、1つのキラル中心(即ち、1つの不斉炭素原子)を有する光学的に純粋な化合物は、2つの存在し得るエナンチオマーのうちの1つから実質的に成る(即ち、エナンチオマーとして純粋である)ものであり、2つ以上のキラル中心を有する光学的に純粋な化合物は、ジアステレオマーとして純粋であり、かつエナンチオマーとして純粋であるものである。本発明の化合物は、好ましくは90%以上の光学的に純粋な形態、即ち、単一の異性体を90%以上含む形態〔80%のエナンチオマー過剰率(「e.e.」)又はジアステレオマー過剰率(「d.e.」)〕、より好ましくは95%(90%e.e.又はd.e.)以上、さらにより好ましくは97.5%(95%e.e.又はd.e.)以上、最も好ましくは99%(98%e.e.又はd.e.)以上の光学的に純粋な形態で使用される。
【0055】
また、化学式Iのプロドラッグは、同定された構造の溶媒和型さらに非溶媒和型も包含するものである。例えば、化学式Iには同定された構造の水和型及び非水和型の両方の化合物が含まれる。溶媒和物の他の例としては、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸又はエタノールアミンと結合した構造が挙げられる。
【0056】
「薬学的に許容されるプロドラッグ」とは、生理的条件下で、又は加溶媒分解によって本明細書に記載の化合物又はそのような化合物の薬学的に許容される塩へ変換された後に1つ以上の薬理効果を示すことが可能な化合物である。上記プロドラッグは、化学的安定性の向上、患者の受容性及びコンプライアンス(服薬率)の向上、バイオアベイラビリティの向上、作用持続時間の延長、臓器選択性の向上、剤形の向上(水溶性の増加等)、及び/又は副作用(毒性等)の減少という目的に合わせて処方されるのが典型的である。上記プロドラッグは、下記文献:Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Chemistry,1,172−178,949−982(1995)に記載されるような、当該技術分野において公知の方法を使用して容易に調製できる。また、文献:Bertolini et al.,J.Med.Chem.,40,2011−2016(1997);Shan,et al.,J.Pharm.Sci.,86(7),765−767;Bagshawe,Drug Dev.Res.,34,220−230(1995);Bodor,Advances in Drug Res.,13,224−331(1984);Bundgaard,Design of Prodrugs(Elsevier Press 1985);Larsen,Design and Application of Prodrugs,Drug Design and Development(Krogsgaard−Larsen et al.,eds.,Harwood Academic Publishers,1991);Dear et al.,J.Chromatogr.B,748,281−293(2000);Spraul et al.,J.Pharmaceutical&Biomedical Analysis,10,601−605(1992);及び、Prox et al.,Xenobiol.,3,103−112(1992)を参照されたい。
【0057】
「薬学的に活性な代謝物」とは、本明細書に記載の化合物又はその塩が体内で代謝されることにより生成する薬理活性物質を意味するものである。体内に入った後、ほとんどの薬剤は、化学反応における基質となり、その際、それらの物性や生物学的効果が変化し得る。本発明の化合物の極性に影響を通常与えるこれらの代謝変換によって、薬剤が体内に分布され、また体内から排出される方法が変化する。しかしながら、治療効果を与える上で薬剤の代謝が必要な場合もある。例えば、代謝拮抗性抗癌剤は、癌細胞に輸送された後、活性型に変換されなければならない。
【0058】
ほとんどの薬剤は、ある種の代謝変換を受けることから、薬物代謝において役割を果たす生化学反応は多種多様である。他の組織が関係する場合もあるが、薬物代謝の主要部位は肝臓である。
【0059】
これらの変換の多くには、極性薬剤がより極性の低い物質を生成する場合もあるものの、代謝産物、即ち「代謝物」が親薬剤よりもより極性を有するという顕著な特徴がある。また、膜を容易に透過する、脂質/水分配係数が高い物質は、尿細管から腎尿細管細胞を通って血漿中へと逆方向への拡散もしやすい。従って、そのような物質は腎クリアランスが低く、生体内持続性が高いという傾向を有する。極性のより高い化合物、即ち、分配係数が低い化合物へと薬剤が代謝される場合、尿細管での再吸収は大幅に低減されるだろう。さらに、近位尿細管や肝実質細胞における、アニオン及びカチオンの特定の分泌機構は、極性の高い物質に対して働く。
【0060】
特定の例として、フェナセチン(アセトフェネチジン)及びアセトアニリドは軽い鎮痛・解熱剤であるが、体内で、より極性が高くかつより有効な代謝物、即ち、今日広く使用されているp−ヒドロキシアセトアニリド(アセトアミノフェン)に変換される。アセトアニリドがヒトに投与される場合、続く代謝物は血漿中でピークに達し、順次減衰する。最初の時間帯では、アセトアニリドが血漿の主成分である。次の時間帯では、アセトアニリドの濃度が低下するにつれ、代謝物であるアセトアミノフェンの濃度がピークに達する。最終的に、数時間後には、体内から排出することが可能でかつ不活性なさらに代謝が進んだ生成物が血漿の主成分となる。従って、1つ以上の代謝物の血漿中濃度は、薬剤自身の血漿中濃度と同様に、薬理学的に重要であり得る。
【0061】
「薬学的に許容される塩」とは、本明細書に記載の化合物の遊離酸及び塩基の生物学的有効性を保持し、かつ生物学的に又は他の点で不適合ではない塩を意味するものである。本発明の化合物は、十分に酸性な官能基、十分に塩基性な官能基、又はその両方を有していてもよく、従って幾らかの任意の無機又は有機塩基や無機及び有機酸と反応して薬学的に許容される塩を形成可能である。薬学的に許容される塩の例としては、本発明の化合物と鉱酸若しくは有機酸又は無機塩基との反応により調製される塩、例えば硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、へキシン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタン−スルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩及びマンデル酸塩といった塩が挙げられる。
【0062】
発明の化合物が塩基の場合、望ましい薬学的に許容される塩は、当該技術分野で利用できる任意の好適な方法により調製できる。上記方法の例としては、無機酸(例えば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等)又は有機酸〔例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(pyranosidyl acid)(グルクロン酸又はガラクツロン酸等)、αヒドロキシ酸(クエン酸又は酒石酸等)、アミノ酸(アスパラギン酸又はグルタミン酸等)、芳香族酸(安息香酸又はケイ皮酸等)、スルホン酸(p−トルエンスルホン酸又はエタンスルホン酸等)〕による遊離塩基の処理が挙げられる。
【0063】
発明の化合物が酸の場合、望ましい薬学的に許容される塩は、任意の好適な方法により調製できる。上記方法の例としては、無機又は有機塩基〔例えば、アミン(一級、二級又は三級)、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物等〕による遊離酸の処理が挙げられる。好適な塩の具体例として、アミノ酸(グリシン及びアルギニン等)、アンモニア、一級、二級及び三級アミン、並びに環状アミン(ピペリジン、モルホリン及びピペラジン等)から誘導される有機塩や、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから誘導される無機塩が挙げられる。
【0064】
薬剤が固体である場合、当業者であれば、本発明の化合物及び塩は、各種異なる結晶形、即ち多形で存在し得ると、また、それら結晶形の全てが本発明、及び本明細書に記載の化学式の範囲に含まれるものであると理解するだろう。
【0065】
C型肝炎ウイルス感染症の処置法及び予防法
本発明は、処置又は予防を必要とする患者のC型肝炎ウイルス感染症を処置又は予防する方法を提供する。
【0066】
本発明は、C型肝炎ウイルス感染症の処置及び/又は予防において患者の血流に治療的有効量の化学式Iのプロドラッグを導入する方法をさらに提供する。
【0067】
感染に対する急性期又は慢性期の処置又は予防のための化学式Iのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の予防又は治療投与量の大きさは異なるが、感染の性質及び重症度、並びに活性成分の投与経路によって決定されるだろう。投与量、場合によっては投与頻度もまた、処置される感染症、個々の患者の年齢、体重及び反応に応じて異なるだろう。好適な投与計画は、当業者であれは上記要因を充分に考慮して容易に選択できる。
【0068】
本発明の方法は、特にヒトの患者に対して好適である。本発明の方法及び投与量は、特に免疫システムが損なわれた患者〔以下に限定されないが、例えば癌患者、HIV感染患者、及び免疫変性疾患(immunodegenerative disease)を有する患者〕にとって有用な可能性がある。さらに、上記方法は、目下寛解状態にある免疫システムが損なわれた患者とって有用な可能性がある。本発明の方法及び投与量は、他の抗ウイルス治療を受ける患者に対してもまた有用である。本発明の予防方法は、ウイルス感染のリスクがある患者に対して特に有用である。上記患者としては、以下に限定されないが、医者、看護士、ホスピスケア従事者等の医療従事者;軍人;教師;保育者;他地域、特に第三世界に旅行又は居住している患者(社会的支援者、宣教師及び外交官等)が挙げられる。最後に、上記方法及び組成物には、抵抗性患者、即ち、逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤等に対して耐性を有するといった、処置に対して耐性を有する患者の処置が含まれる。
【0069】
投与量
本発明の化合物の毒性及び効能は、細胞培養又は実験動物において標準的な薬学的手順により求めることができ、例えばLD50(母集団50%致死の投与量)及びED50(母集団50%に治療的に有効な投与量)の測定等が挙げられる。毒性効果と治療効果との用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。
【0070】
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータを使用して、ヒトに使用するための化合物の投与量範囲を定式化できる。上記化合物の投与量はほとんど又は全く毒性がなく、かつED50を含む血中濃度の範囲内であることが好ましい。上記投与量は用いられる投与形態や使用される投与経路に応じ、上記範囲内で変動する。本発明の方法で使用される任意の化合物について、治療的有効投与量はまず細胞培養アッセイによって評価できる。細胞培養により決定されるように、投与量を、動物モデルにおいて循環血漿中濃度範囲がIC50(即ち、症状の最大阻害の50%をもたらす、試験化合物の濃度)を含むものとなるよう定式化することもできる。或いは、上記化合物の投与量を、動物モデルにおいて上記化合物の循環血漿中濃度範囲が一定の大きさの反応が示される上で必要な濃度に相当するものとなるよう定式化することもできる。上記情報を使用してより正確にヒトへの有用な投与量を決定することができる。血漿中濃度は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0071】
本発明のプロトコル及び組成物は、ヒトに使用する前に、望ましい治療又は予防活性のためにインビトロ、次いでインビボで試験されるが好ましい。例えば、特定の治療プロトコルの適用が示されるかどうかの決定に使用できるインビトロアッセイとしては、化学式Iのプロドラッグの作用に反応する細胞がリガンドに曝露され、反応の大きさが適当な方法により測定されるインビトロ細胞培養アッセイが挙げられる。次に、化合物の効能、及び化学式Iのプロドラッグのその親化合物への変換率に関して化合物の評価が行われる。本発明の方法で使用する化合物は、ヒトで試験する前に好適な動物モデル系(以下に限定されないが、例えばラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスター等)で試験できる。その後、上記化合物を適当な臨床試験に使用することができる。
【0072】
感染又は症状の急性期又は慢性期の処置又は予防における化学式Iのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは水和物の予防又は治療投与量の大きさは、感染の性質及び重症度、並びに活性成分の投与経路によって異なるだろう。投与量、場合によっては投与頻度もまた、処置される感染症、個々の患者の年齢、体重及び反応に応じて異なるだろう。好適な投与計画は、当業者であれは上記要因を充分に考慮して容易に選択できる。一実施形態において、投与される量は使用される特定化合物や、患者の体重及び状態によって異なる。また、投与量は本発明の様々な具体的化合物について異なり得る。好適な量は、本明細書に記載又は参照されたシステムにより測定される場合、他の化合物よりも低濃度で有効性を示す化合物には低用量が好適であるといったように上述のインビトロ測定及び動物実験に基づいて予測できる。通常、1日の投与量は約0.001〜100mg/kg、好ましくは約1〜25mg/kg、より好ましくは約5〜15mg/kgの範囲である。C型肝炎ウイルスに感染したヒトの処置には、約0.1mg〜約15g/日が約1〜4回に分けて1日のうちに投与され、好ましくは100mg〜12g/日、より好ましくは100mg〜8000mg/日が投与される。
【0073】
さらに、推奨される日用量範囲を単剤により又は他の治療剤と併用して周期的に投与できる。一実施形態において、日用量は単回で、又は同量ずつに分けて投与される。関連した一実施形態では、1日の推奨用量を週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、又は週に5回投与できる。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は上記化合物が患者において全身分布するように投与される。関連した一実施形態において、本発明の化合物は体内で全身的に作用するように投与される。
【0075】
別の実施形態において、本発明の化合物は経口、経粘膜(舌下、口腔、直腸、鼻若しくは膣等)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注入、動脈内若しくは静脈内等)、経皮又は局所投与で投与される。特定の実施形態において、本発明の化合物は、経粘膜(舌下、口腔、直腸、鼻若しくは膣等)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注入、動脈内若しくは静脈内等)、経皮又は局所投与で投与される。別の特定の実施形態において、本発明の化合物は経口投与で投与される。さらに別の特定の実施形態において、本発明の化合物は経口投与で投与されない。
【0076】
当業者であればすぐに分かる通り、各種異なる治療的有効量を種々の感染症に適用できる。同様に、上記感染症の処置又は予防に充分であり、かつ従来の治療法に関連する有害作用の非発現又は低減に充分な量もまた、上記投与量及び投与頻度計画に包含される。
【0077】
併用療法
さらに、本発明の特定の方法は追加治療剤(即ち、本発明の化合物とは別の治療剤)の投与も含む。本発明のある実施形態において、本発明の化合物は少なくとも1つの他の治療剤と併用して使用できる。治療剤としては、抗生物質、制吐剤、抗鬱剤及び抗真菌剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、免疫調節剤、β−インターフェロン、アルキル化剤、ホルモン又はサイトカイン等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において本発明は、HCVに特異的であるか、又は抗HCV活性を示す追加治療剤の投与を包含する。
【0078】
化学式Iのプロドラッグは抗生物質と併用して投与又は処方できる。例えば、上記プロドラッグは、マクロライド〔トブラマイシン(Tobi(R))等〕、セファロスポリン〔セファレキシン(Keflex(R)、セフラジン(Velosef(R))、セフロキシム(Ceftin(R))、セフプロジル(Cefzil(R))、セファクロル(Ceclor(R))、セフィキシム(Suprax(R))、若しくはセファドロキシル(Duricef(R))等〕、クラリスロマイシン〔クラリスロマイシン(Biaxin(R))等〕、エリスロマイシン〔エリスロマイシン(EMycin(R))等〕、ペニシリン〔ペニシリンV(V−Cillin K(R)若しくはPen Vee K(R))等〕、又はキノロン〔オフロキサシン(Floxin(R))、シプロフロキサシン(Cipro(R))若しくはノルフロキサシン(Noroxin(R))等〕、アミノグリコシド系抗生物質(アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ネオマイシン、ネオマイシン、ウンデシレナート、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン及びスペクチノマイシン等)、アムフェニコール系抗生物質(アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール及びチアンフェニコール等)、アンサマイシン系抗生物質(リファミド及びリファンピン等)、カルバセフェム類(ロラカルベフ等)、カルバペネム(ビアペネム及びイミペネム等)、セファロスポリン類〔セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン(cefazedone)、セフォゾプラン、セフピミゾール、セフピラミド及びセフピロム等〕、セファマイシン類(セフブペラゾン、セフメタゾール及びセフミノクス等)、モノバクタム類〔アズトレオナム、カルモナム及びチゲモナム(tigemonam)等〕、オキサセフェム類(フロモキセフ及びモキサラクタム等)、ペニシリン類〔アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アモキシシリン、バカンピシリン、ベンジルペニシリン酸、ベンジルペニシリンナトリウム、エピシリン、フェンベニシリン(fenbenicillin)、フロキサシリン、ペナムシリン(penamccillin)、ペネタメートヨウ化水素酸塩(penethamate hydriodide)、ペニシリンo−ベネタミン、ペニシリンO、ペニシリンV、ペニシリンVベンザチン、ペニシリンVヒドラバミン(penicillin V hydrabamine)、ペニメピサイクリン(penimepicycline)及びフェネチシリンカリウム(phencihicillin potassium)等〕、リンコサミド類(クリンダマイシン及びリンコマイシン等)、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン、コリスチン、エンデュラシジン(enduracidin)、エンビオマイシン、テトラサイクリン類〔アピサイクリン(apicycline)、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン(clomocycline)及びデメクロサイクリン等〕、2,4−ジアミノピリミジン類(ブロジモプリム等)、ニトロフラン類(フラルタドン及び塩化フラゾリウム等)、キノロン類並びにその類似体〔シノキサシン、クリナフロキサシン、フルメキン及びグレパフロキサシン(grepagloxacin)等〕、スルホンアミド類〔アセチルスルファメトキシピラジン、ベンジルスルファミド、ノプリルスルファミド(noprylsulfamide)、フタリルスルファセタミド、スルファクリソイジン及びスルファシチン等〕、スルホン類(ジアチモスルホン、グルコスルホンナトリウム及びソラスルホン等)、サイクロセリン、ムピロシン並びにツベリンとともに処方できる。
【0079】
化学式Iのプロドラッグは制吐剤と併用して投与又は処方できる。好適な制吐剤としては、以下に限定されないが、例えばメトクロプラミド(metoclopromide)、ドンペリドン、プロクロルペラジン、プロメタジン、クロルプロマジン、トリメトベンザミド、オンダンセトロン、グラニセトロン、ヒドロキシジン、アセチルロイシンモノエタノールアミン、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ビエタナウチン、ブロモプリド、ブクリジン、クレボプリド、シクリジン、ジメンヒドリナート、ジフェニドール、ドラセトロン、メクリジン、メタルラタル(methallatal)、メトピマジン、ナビロン、オキシペンジル(oxyperndyl)、ピパマジン、スコポラミン、スルピリド、テトラヒドロカンナビノール、チエチルペラジン、チオプロペラジン、トロピセトロン、及びその混合物が挙げられる。
【0080】
化学式Iのプロドラッグは抗鬱剤と併用して投与又は処方できる。好適な抗鬱剤としては、以下に限定されないが、例えばビネダリン、カロキサゾン、シタロプラン、ジメタザン(dimethazan)、フェンカミン、インダルピン、塩酸インデロキサジン、ネホパム、ノミフェンシン、オキシトリプタン、オキシペルチン、パロキセチン、セルトラリン、チアゼシム、トラゾドン、ベンモキシン、イプロクロジド、イプロニアジド、イソカルボキサジド、ニアラミド、オクタモキシン、フェネルジン、コチニン、ロリシプリン、ロリプラム、マプロチリン、メトラリンドール、ミアンセリン、ミルタザピン(mirtazepine)、アジナゾラム、アミトリプチリン、アミトリプチリノキシド、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デメキシプチリン、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ドチエピン、ドキセピン、フルアシジン、イミプラミン、イミプラミンN−オキシド、イプリンドール、ロフェプラミン、メリトラセン、メタプラミン、ノルトリプチリン、ノキシプチリン、オピプラモール、ピゾチリン、プロピゼピン、プロトリプチリン、キヌプラミン、チアネプチン、トリミプラミン、アドラフィニル、ベナクチジン、ブプロピオン、ブタセチン(butacetin)、ジオキサドロール、デュロキセチン、エトペリドン、フェバルバマート、フェモキセチン、フェンペンタジオール、フルオキセチン、フルボキサミン、ヘマトポルフィリン、ヒペリシン、レボファセトペラン、メジホキサミン、ミルナシプラン、ミナプリン、モクロベミド、ネファゾドン、オキサフロザン、ピベラリン、プロリンタン、ピリスクシデアノール(pyrisuccideanol)、リタンセリン、ロキシンドール、塩化ルビジウム、スルピリド、タンドスピロン、トザリノン、トフェナシン、トロキサトン、トラニルシプロミン、L−トリプトファン、ベンラファキシン、ビロキサジン及びジメルジンが挙げられる。
【0081】
化学式Iのプロドラッグは抗真菌剤と併用して投与又は処方できる。好適な抗真菌剤としては、以下に限定されないが、例えばアンホテリシンB、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、イントラセカル(intrathecal)、フルシトシン、ミコナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、テルコナゾール、チオコナゾール、シクロピロックス、エコナゾール、ハロプログリン(haloprogrin)、ナフチフィン、テルビナフィン、ウンデシレナート及びグリセオフルビン(griseofuldin)が挙げられる。
【0082】
化学式Iのプロドラッグは抗炎症剤と併用して投与又は処方できる。有用な抗炎症剤としては、以下に限定されないが、例えば非ステロイド系抗炎症剤〔サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサラート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、メフェナム酸、メクロフェナミン酸ナトリウム、トルメチン、ケトロラック、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン(flurbinprofen)、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ドロキシカム、ピロキシカム(pivoxicam)、テノキシカム、ナブメトン(nabumetome)、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アンチピリン、アミノピリン、アパゾン及びニメスリド等〕、ロイコトリエン拮抗剤(以下に限定されないが、例えばジロートン、オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム及びオーラノフィン)、ステロイド〔以下に限定されないが、例えばプロピオン酸アルクロメタゾン(alclometasone diproprionate)、アムシノニド、プロピオン酸ベクロメタゾン(beclomethasone dipropionate)、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、プロピオン酸ベタメタゾン(betamethasone diproprionate)、リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール(clobetasol proprionate)、ピバル酸クロコルトロン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン誘導体、デソニド、デソキシメタゾン(desoximatasone)、デキサメタゾン、フルニソリド、フルコキシノリド(flucoxinolide)、フルランドレノリド、ハルシノシド(halcinocide)、メドリソン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン(prednisolone tebuatate)、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、酢酸トリアムシノロン(triamcinolone diacetate)、及びトリアムシノロンヘキサアセトニド〕、並びに他の抗炎症剤(以下に限定されないが、例えばメトトレキサート、コルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン及びベンズブロマロン)が挙げられる。
【0083】
化学式Iのプロドラッグは別の抗ウイルス剤と併用して投与又は処方できる。有用な抗ウイルス剤としては、以下に限定されないが、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤及びヌクレオシドアナログが挙げられる。上記抗ウイルス剤としては、以下に限定されないが、例えばジドブジン、アシクロビル、ガングシクロビル(gangcyclovir)、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、レボビリン、ビラミジン及びリバビリン、さらにホスカルネット、アマンタジン、リマンタジン、サキナビル、インジナビル、アンプレナビル、ロピナビル、リトナビル、α−インターフェロン、β−インターフェロン、アデフォビル、クレブジン(clevadine)、エンテカビル、プレコナリルが挙げられる。
【0084】
化学式Iのプロドラッグは免疫調節剤と併用して投与又は処方できる。免疫調節剤としては、以下に限定されないが、例えばメトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(シロリムス)、ミゾリビン、デオキシスパガリン、ブレキナル、マロノニトリロアミド類(malononitriloamindes)〔レフルノミド(leflunamide)等〕、T細胞受容体モジュレーター、及びサイトカイン受容体モジュレーター、ペプチドミメティック及び抗体〔ヒト、ヒト化、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、Fvs、ScFvs、Fab若しくはF(ab)2フラグメント、又はエピトープ結合フラグメント等〕、核酸分子(アンチセンス核酸分子及び三重螺旋等)、小分子、有機化合物及び無機化合物が挙げられる。T細胞受容体モジュレーターの例としては、以下に限定されないが、例えば抗T細胞受容体抗体[例えば抗CD4抗体〔cM−T412(Boeringer)、IDEC−CE9.1(R)(IDEC及びSKB)、mAB 4162W94、オルソクローン及びOKTcdr4a(Janssen−Cilag)等〕、抗CD3抗体〔ヌヴィオン(Product Design Labs)、OKT3(Johnson&Johnson)又はリツキサン(IDEC)等〕、抗CD5抗体(抗CD5リシン結合免疫複合体等)、抗CD7抗体〔CHH−380(Novartis)等〕、抗CD8抗体、抗CD40リガンドモノクローナル抗体〔IDEC−131(IDEC)等〕、抗CD52抗体〔CAMPATH 1H(Ilex)等〕、抗CD2抗体、抗CD11a抗体〔ザネリム(Genentech)等〕並びに抗B7抗体〔IDEC−114(IDEC)等〕、並びにCTLA4−免疫グロブリン]が挙げられる。サイトカイン受容体モジュレーターの例としては、以下に限定されないが、例えば可溶性サイトカイン受容体(TNF−α受容体の細胞外ドメイン又はそのフラグメント、IL−1β受容体の細胞外ドメイン又はそのフラグメント、及びIL−6受容体の細胞外ドメイン又はそのフラグメント等)、サイトカイン又はそのフラグメント〔インターロイキン(IL)−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15、TNF−α、インターフェロン(IFN)−α、IFN−β、IFN−γ及びGM−CSF等〕、抗サイトカイン受容体抗体[抗IFN受容体抗体、抗IL−2受容体抗体〔ゼナパックス(Protein Design Labs)等〕、抗IL−4受容体抗体、抗IL−6受容体抗体、抗IL−10受容体抗体、及び抗IL−12受容体抗体等]、抗サイトカイン抗体[抗IFN抗体、抗TNF−α抗体、抗IL−1β抗体、抗IL−6抗体、抗IL−8抗体〔ABX−IL−8(Abgenix)等〕、及び抗IL−12抗体等]が挙げられる。
【0085】
化学式Iのプロドラッグはウイルス酵素を阻害する薬剤と併用して投与又は処方できる。上記薬剤としては、以下に限定されないが、例えばHCVプロテアーゼの阻害剤(BILN 2061等)並びにNS5bポリメラーゼの阻害剤〔NM107及びそのプロドラッグNM283(マサチューセッツ州、ケンブリッジ、Idenix Pharmaceuticals,Inc.)等〕が挙げられる。
【0086】
化学式Iのプロドラッグは、文献:Wu,Curr Drug Targets Infect Disord.2003;3(3):207−19に記載されるようなHCVポリメラーゼを阻害する薬剤と併用して、又は文献:Bretner M,et al.,Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids.,22(5−8),1531(2003)に記載されるようなウイルスのヘリカーゼ機能を阻害する化合物と併用して、又は文献:Zhang X.,IDrugs.,5(2),154−8(2002)に記載されるようなHCVに特異的な他のターゲットの阻害剤とともに投与又は処方できる。
【0087】
化学式Iのプロドラッグはウイルス複製を阻害する薬剤と併用して投与又は処方できる。
【0088】
化学式Iのプロドラッグはサイトカインと併用して投与又は処方できる。サイトカインの例としては、以下に限定されないが、例えばインターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−7(IL−7)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン 15(IL−15)、インターロイキン 18(IL−18)、血小板由来増殖因子(PDGF)、エリスロポエチン(Epo)、上皮細胞増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、プロラクチン及びインターフェロン(IFN)(IFN−α及びIFN−γ等)が挙げられる。
【0089】
化学式Iのプロドラッグはホルモンと併用して投与又は処方できる。ホルモンの例としては、以下に限定されないが、例えば黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出ホルモン、ACTH、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、視床下部放出因子、インシュリン、グルカゴン、エンケファリン、バソプレシン、カルシトニン、ヘパリン、低分子ヘパリン、ヘパリノイド、合成及び天然オピオイド、インシュリン甲状腺刺激ホルモン、並びにエンドルフィンが挙げられる。
【0090】
化学式Iのプロドラッグはβ−インターフェロン(以下に限定されないが、例えばインターフェロンβ−1a、インターフェロンβ−1b)と併用して投与又は処方できる。
【0091】
化学式Iのプロドラッグはα−インターフェロン〔以下に限定されないが、例えばインターフェロンα−1、インターフェロンα−2a(ロフェロン)、インターフェロンα−2b、イントロン、ペグ−イントロン、ペガシス、コンセンサスインターフェロン(インファージェン)、及びアルブフェロン〕と併用して投与又は処方できる。
【0092】
化学式Iのプロドラッグは吸収促進剤、特にリンパ系をターゲットとするものと併用して投与又は処方できる。上記吸収促進剤としては、以下に限定されないが、例えばグリココール酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、N−ラウリル−β−D−マルトピラノシド、EDTA、混合ミセル、及び、文献:Muranishi Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.,7−1−33(その全てを本明細書に引用して援用する)に報告されるものが挙げられる。その他の公知の吸収促進剤もまた使用できる。従って、本発明は1つ以上の化学式Iのプロドラッグと1つ以上の吸収促進剤を含む医薬組成物もまた包含する。
【0093】
化学式Iはアルキル化剤と併用して投与又は処方できる。アルキル化剤の例としては、以下に限定されないが、例えばナイトロジェンマスタード、エチレンイミン(ethylenimines)、メチルメラミン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン(hexamethylmelaine)、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン及びテモゾロマイドが挙げられる。
【0094】
化学式Iのプロドラッグと他の治療剤は相加作用、又はより好ましくは相乗作用することができる。好ましい実施形態において、本発明の化合物を含む組成物は、同じ組成物の一部である別の治療剤、又は本発明の化合物を含む組成物とは異なる組成物に含まれる別の治療剤の投与と同時に投与される。別の実施形態において、本発明の化合物は、別の治療剤の投与前又は後に投与される。別の実施形態において、本発明の化合物は、別の治療剤、特に抗ウイルス剤による処置を以前に受けたことがないか、又は現在受けていない患者に投与される。
【0095】
一実施形態において、本発明の方法は、追加治療剤を用いずに1つ以上の化学式Iのプロドラッグを投与することを含む。
【0096】
医薬組成物及び投与形態
化学式Iのプロドラッグ又はその薬学的に許容される塩若しくは水和物を含む医薬組成物及びシングルユニット型投与形態もまた本発明に包含される。本発明の個々の投与形態は経口、経粘膜(舌下、口腔、直腸、鼻若しくは膣等)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注入、動脈内若しくは静脈内等)、経皮又は局所投与に好適である。また、本発明の医薬組成物及び投与形態は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含むのが典型的である。無菌の投与形態もまた考えられる。
【0097】
別の実施形態において、この実施形態に包含される医薬組成物には、化学式Iのプロドラッグ又はその薬学的に許容される塩若しくは水和物、及び少なくとも1つの追加治療剤が含まれる。追加治療剤の例として上掲されたもの等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0098】
本発明の投与形態の組成、形状及び種類はそれらの用途に応じて異なるのが典型的であろう。例えば、疾患又は関連疾患の急性期処置に使用される投与形態には、同じ疾患の慢性期処置に使用される投与形態よりもより多くの量の1つ以上の活性成分が含まれる。同様に、非経口投与形態には、同じ疾患又は障害の処置に使用される経口投与形態よりもより少量の1つ以上の活性成分が含まれる。本発明に包含される具体的な投与形態が、このように又は別の態様で変化するものであるということは、当業者にとって容易に明らかであろう。例えば、文献:Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing,Easton PA(1990)を参照されたい。投与形態の例としては、以下に限定されないが、例えば錠剤、カプレット、カプセル(軟弾性ゼラチンカプセル等)、カシェ剤、トローチ、錠剤(lozenges)、分散剤(dispersions)、座剤、軟膏、パップ(湿布)、泥膏、散剤、包帯、クリーム、硬膏、液剤、パッチ、エアゾール(鼻腔用スプレー又は吸入器等)、ゲル、患者への経口又は粘膜投与に好適な液体状の投与形態〔例えば懸濁剤(水性若しくは非水性懸濁液、水中油型乳剤、又は油中水型液体乳剤等)、液剤及びエリキシル剤〕、患者への非経口投与に好適な液体状の投与形態、並びに、液体に溶かすことにより患者への非経口投与に好適な液体状の投与形態にすることができる無菌固体(結晶質及び非晶質固体等)が挙げられる。
【0099】
典型的な医薬組成物及び投与形態は、1つ以上の基剤、賦形剤又は希釈剤を含む。好適な賦形剤は薬学に関する当業者にとって周知であり、好適な賦形剤の例は本明細書に記載されるが、これらに限定されない。ある特定の賦形剤が医薬組成物又は投与形態に配合されるのに好適かどうかは、当該技術分野において周知の様々な要因(以下に限定されないが、投与形態が患者に投与される方法等)によって決定される。例えば、錠剤等の経口投与形態には、非経口投与形態での使用に適さない賦形剤が含まれる場合もある。また、特定の賦形剤が好適か否かは、投与形態中の具体的な活性成分に応じて決定されることもある。
【0100】
本発明はさらに、活性成分を含む、無水の医薬組成物及び投与形態を包含する。これは、水が化合物を減成しやすくする場合があるからである。例えば、水(5%等)の添加は、貯蔵寿命又は剤形の経時安定性等の特性の決定のために、長期保存をシミュレートする手段として製薬技術分野において広く認められている。例えば、文献:Jens T.Carstensen,Drug Stability:Principles&Practice,2d.Ed.,Marcel Dekker,NY,NY,1995,pp.379−80を参照されたい。実際に、水及び熱によって分解が促進される化合物がある。従って、水分及び/又は湿気は剤形の製造、取り扱い、包装、貯蔵、出荷、及び使用において通常遭遇するものであるので、剤形における水の影響は非常に重要であり得る。
【0101】
本発明の無水の医薬組成物及び投与形態は、無水成分若しくは低水分含有成分、及び低水分条件若しくは低湿条件を用いて調製できる。
【0102】
無水の医薬組成物はその無水性が保たれるように調製され、貯蔵される必要がある。従って、無水組成物は、水への曝露を防止する公知の材料を使用して包装されて、好適な処方キット(formulary kits)内に収められることが好ましい。好適な包装材の例としては、密封ホイル、プラスチック、ユニットドーズ容器(バイアル等)、ブリスターパック及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本発明はさらに、活性成分の分解速度を低減する1つ以上の化合物を含む医薬組成物及び投与形態を包含する。そのような化合物(本明細書中では「安定剤」と称される)として、アスコルビン酸等の抗酸化剤、pH緩衝剤又塩緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
賦形剤の量及び種類と同様に、投与形態中の活性成分の量及び具体的種類は、以下に限定されないが例えば患者への投与経路等の要因に応じて異なり得る。一方、本発明の典型的な投与形態には、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは水和物が1単位当たり0.1mg〜1500mg含まれ、1日当たり約0.01〜200mg/kgの量が投与できる。
【0105】
経口投与形態
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、以下に限定されないが、例えば錠剤(チュアブル錠等)、カプレット、カプセル及び液剤(フレーバーを付与したシロップ剤等)といった分離した投与形態とすることができる。そのような投与形態は一定の量の活性成分を含有し、当業者に周知の薬学的方法により調製できる。概して、文献:Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing,Easton PA(1990)を参照されたい。
【0106】
本発明の典型的な経口投与形態は、従来の薬学的調合法に従って、活性成分を少なくとも1つの賦形剤と完全に混合することにより調製される。賦形剤は、投与に好適な処方形態に応じて非常に様々な形態をとり得る。例えば、経口液体又はエアゾール投与形態での使用に好適な賦形剤としては、水、グリコール類、油類、アルコール類、フレーバー付与剤、保存料及び着色料が挙げられるが、これらに限定されない。経口固体投与形態(散剤、錠剤、カプセル及びカプレット等)での使用に好適な賦形剤の例としては、デンプン類、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
それらの投与のしやすさから、錠剤及びカプセルは最も有利な経口投与単位形態であると言える。上記形態の場合、固体賦形剤が用いられる。所望により、錠剤は標準的な水性又は非水性技術でコーティングできる。そのような投与形態は任意の薬学的方法により調製できる。通常、医薬組成物及び投与形態は、活性成分を液体基剤、微粉固体基剤又はその両方と均質かつ完全に混合した後、必要によりその生成物を所望の形状に成形することで調製される。
【0108】
例えば、錠剤は打錠又は成形により調製できる。打錠剤は、散剤又は顆粒剤等の易流動性形態の活性成分を、所望により賦形剤と混合して、好適な機械によって打錠することで調製できる。成形錠剤は、粉末状化合物を不活性な希釈液で湿らせた混合物を好適な機械によって成形することで製造される。本発明の経口投与形態に使用できる賦形剤の例としては、結合剤、充填剤、崩壊剤及び滑沢剤が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物及び投与形態での使用に好適な結合剤としては、以下に限定されないが、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン又は他のデンプン、ゼラチン、アラビアゴム等の天然及び合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギナート、粉末トラガカントゴム、グアールガム、セルロース並びにその誘導体(エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(品番2208、2906、2910等)、微結晶セルロース、並びにその混合物が挙げられる。
【0109】
本明細書に開示される医薬組成物及び投与形態での使用に好適な充填剤の例としては、以下に限定されないが、タルク、炭酸カルシウム(顆粒又は粉末等)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート類、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、及びその混合物が挙げられる。本発明の医薬組成物中の結合剤又は充填剤の含有量は、上記医薬組成物又は投与形態の約50〜約99重量%であるのが典型的である。
【0110】
微結晶セルロースの好適な例としては、以下に限定されないが、例えばAVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103 AVICEL RC−581、AVICEL−PH−105〔FMC Corporation、アメリカンビスコース部門、Avicel販売部(ペンシルベニア州、マーカスフック)から入手可能〕として販売される物質、及びその混合物が挙げられる。具体的な結合剤として、AVICEL RC−581として販売される、微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物がある。好適な無水又は低水分の賦形剤又は添加剤としては、例えばAVICEL−PH−103TM及びStarch 1500 LMが挙げられる。
【0111】
崩壊剤を本発明の組成物に使用することによって、水性環境に曝露された際に崩壊する錠剤を得ることができる。崩壊剤含有量が過剰である錠剤は貯蔵時に崩壊する場合があり、一方、含有量が少なすぎる錠剤は所望の速度で、又は所望の条件下で崩壊しない場合がある。従って、活性成分の放出に悪影響を及ぼすことがないよう過不足のない充分な量の崩壊剤を使用して、本発明の固体状の経口投与形態が形成されるのが望ましい。使用される崩壊剤の量は剤形に基づいて変動し、当業者であれば容易に理解できる。典型的な医薬組成物は崩壊剤を約0.5〜約15重量%、特に約1〜約5重量%含む。
【0112】
本発明の医薬組成物及び投与形態に使用できる崩壊剤としては、以下に限定されないが、例えば寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium)、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、α化デンプン、他のデンプン類、粘土類、他のアルギン類、他のセルロース類、ゴム類、及びその混合物が挙げられる。
【0113】
本発明の医薬組成物及び投与形態に使用できる滑沢剤としては、以下に限定されないが、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽質鉱油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール類、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(落花生油、綿実油、ひまわり油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油等)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル(ethyl laureate)、寒天、並びにその混合物が挙げられる。別の滑沢剤として、例えばシロイド(syloid)シリカゲル〔AEROSIL 200、W.R.Grace Co.(メリーランド州、ボルティモア)製造〕、合成シリカの凝結エアゾール〔Degussa Co.(テキサス州、プラノ)により市販される〕、CAB−O−SIL〔Cabot Co.(マサチューセッツ州、ボストン)により販売される火成二酸化ケイ素製品〕、及びその混合物が挙げられる。仮に使用されるとしても、滑沢剤はそれらが配合される医薬組成物又は投与形態の約1重量%未満の量で使用されるのが典型的である。
【0114】
遅延放出型投与形態
本発明の活性成分は、当業者に周知の制御された放出手段又は送達デバイスによって投与できる。例としては、以下に限定されないが、米国特許第3,845,770号、3,916,899号、3,536,809号、3,598,123号、及び4,008,719号、5,674,533号、5,059,595号、5,591,767号、5,120,548号、5,073,543号、5,639,476号、5,354,556号、及び5,733,566号明細書に記載されるものが挙げられ、上記明細書をそれぞれ本明細書に引用して援用する。そのような投与形態により、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透析膜、浸透システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア、又はその組み合わせを使用して1つ以上の活性成分の放出を遅延又は制御することで、各種異なる割合での所望の放出プロファイルを得ることができる。本明細書中に記載されるような、当業者に公知の好適な放出制御型剤形は、本発明の活性成分とともに使用する上で容易に選択できる。従って、本発明は、以下に限定されないが、例えば錠剤、カプセル、ジェルカプセル及びカプレットといった放出制御が可能な、経口投与に好適なシングルユニット型投与形態を包含する。
【0115】
全ての放出制御型医薬品は、非制御型医薬品よりも薬剤治療を向上させるという共通の目的を有する。理想的には、医療における、最適な設計の放出制御製剤の使用は、最小量の薬剤物質を用いて最短の時間で症状を治療又は制御するという特徴を有する。放出制御型剤形の利点としては、薬剤の活性の持続、投与頻度の低減、及び患者コンプライアンスの向上が挙げられる。さらに、放出制御型剤形を使用して、作用開始時間、又は他の特性(薬剤の血中濃度等)に影響を与えることができ、ひいては副作用(例えば有害作用)の発現に影響を与えることができる。
【0116】
大部分の放出制御型剤形は、まず、所望の治療効果を即座に生じるような量の薬剤(活性成分)を放出して、漸進的かつ断続的に残りの薬剤を放出し、長時間にわたって上記治療又は予防効果のレベルが維持されるように設計される。このように薬剤を体内で一定の濃度に維持するためには、代謝されて体内から排出される薬剤の量を補充するような速度で薬剤を投与形態から放出させなければならない。活性成分の放出の制御は、以下に限定されないが、例えばpH、温度、酵素、水、又は他の生理学的条件又は化合物といった様々な条件により促進することができる。
【0117】
非経口投与形態
非経口投与形態は、以下に限定されないが、例えば皮下、静脈内(ボーラス注入を含む)、筋肉内、及び動脈内といった様々な経路で患者に投与できる。上記投与においては、汚染物質に対する患者の生来の防御を受けていないのが典型的であるので、非経口投与形態は無菌であるか、又は患者に投与される前に滅菌することが可能であることが好ましい。非経口投与形態の例としては、以下に限定されないが、すぐに注射可能な液剤、薬学的に許容される注射用ビヒクル中ですぐに溶解又は懸濁可能な乾燥品及び/又は凍結乾燥品(液体に溶かして再構成することが可能な粉末)、すぐに注射可能な懸濁剤、及び乳剤が挙げられる。
【0118】
本発明の非経口投与形態を得るために使用できる好適なビヒクルは、当業者に周知である。例としては、以下に限定されないが、例えば米国薬局方注射用水;水性ビヒクル(以下に限定されないが、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、並びに乳酸加リンガー注射液);水混和性ビヒクル(以下に限定されないが、例えばエチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール);並びに、非水性ビヒクル(以下に限定されないが、例えばトウモロコシ油、綿実油、落花生油、胡麻油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジル)が挙げられる。本明細書中で開示される1つ以上の活性成分の溶解性を向上させる化合物もまた、本発明の非経口投与形態に配合することができる。
【0119】
経皮投与形態
経皮投与形態としては、皮膚に塗布して、一定時間身に着けることで所望の量の活性成分を浸透させることが可能な「貯蔵型」又は「マトリックス型」パッチが挙げられる。
【0120】
本発明に包含される経皮及び局所投与形態を得るために使用できる好適な賦形剤(基剤及び希釈剤等)及び他の物質は、製薬技術分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は投与形態が塗布される具体的な組織によって異なる。その点を考慮して、典型的な賦形剤としては、以下に限定されないが、例えば水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、及びその混合物が挙げられる。処置対象の具体的な組織に応じて、本発明の活性成分による処置の前か、処置と同時か、又は処置の後に追加成分が使用されてもよい。例えば、浸透促進剤を使用して、組織への活性成分の送達を促進することができる。好適な浸透促進剤としては、以下に限定されないが、例えばアセトン、各種アルコール類(エタノール、オレイルアルコール及びテトラヒドロフリルアルコール等)、アルキルスルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、ピロリドン類(ポリビニルピロリドン等)、Kollidonの各グレード(ポビドン、ポリビドン)、尿素、並びに様々な水溶性若しくは不溶性糖エステル〔Tween 80(ポリソルベート 80)及びSpan 60(ソルビタンモノステアレート)等〕が挙げられる。
【0121】
また、医薬組成物若しくは投与形態のpH、又は医薬組成物若しくは投与形態が投与される組織のpHは、1つ以上の活性成分の送達性を向上させるよう調整することができる。同様に、溶媒基剤の極性、そのイオン強度又は張性も送達性を向上させるよう調整することができる。ステアリン酸塩等の化合物もまた、医薬組成物又は投与形態に添加することで、1つ以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に変化させて送達性を向上させることができる。この点において、ステアリン酸塩は、剤形の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達促進剤又は浸透促進剤として作用し得る。活性成分の他の塩、水和物又は溶媒和物を使用して、生成される組成物の特性をさらに調整することができる。
【0122】
局所投与形態
本発明の局所投与形態としては、以下に限定されないが、例えばクリーム、ローション剤、軟膏、ゲル、液剤、乳剤、懸濁剤、又は当業者に公知の他の形態が挙げられる。例えば文献:Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th eds.,Mack Publishing,Easton PA(1990);及び、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,4th ed.,Lea&Febiger,Philadelphia(1985)を参照されたい。
【0123】
本発明に包含される経皮及び局所投与形態を得るために使用できる好適な賦形剤(基剤及び希釈剤等)及び他の物質は、製薬技術分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は投与形態が投与される具体的な組織によって異なる。その点を考慮して、典型的な賦形剤としては、以下に限定されないが、例えば水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、及びその混合物が挙げられる。
【0124】
処置される具体的な組織に応じて、本発明の活性成分による処置の前か、処置と同時か、又は処置の後に追加成分が使用されてもよい。例えば、浸透促進剤を使用して、組織への活性成分の送達を促進することができる。好適な浸透促進剤としては、以下に限定されないが、例えばアセトン、各種アルコール類(エタノール、オレイルアルコール及びテトラヒドロフリルアルコール等)、アルキルスルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、ピロリドン類(ポリビニルピロリドン等)、コリドングレード類(ポビドン、ポリビドン)、尿素、並びに様々な水溶性若しくは不溶性糖エステル〔Tween 80(ポリソルベート 80)及びSpan 60(ソルビタンモノステアレート)等〕が挙げられる。
【0125】
粘膜投与形態
本発明の粘膜投与形態としては、例えば眼用液剤、スプレー及びエアゾール、又は、当業者に公知の他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば文献:Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th eds.,Mack Publishing,Easton PA (1990);及び、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,4th ed.,Lea&Febiger,Philadelphia(1985)を参照されたい。口腔内の粘膜組織を処置するのに好適な投与形態は、口内洗浄剤又は経口ゲル剤として処方できる。一実施形態において、上記エアゾールには基剤が含まれる。別の実施形態では、上記エアゾールには基剤が含まれない。
【0126】
本発明の化合物はまた、吸入により肺に直接投与される場合もある。吸入によって投与するために、本発明の化合物を多種多様のデバイスによって簡便に肺に送達させることができる。例えば、好適な低沸点高圧ガス(ジクロロジフルオルメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適なガス等)が入ったキャニスターを用いる定量噴霧式吸入器(「MDI」)を使用して化合物を直接肺に送達させることができる。MDIデバイスは、3M Corporation、Aventis、Boehringer Ingleheim、Forest Laboratories、Glaxo−Wellcome、Schering Plough、及びVectura等の幾つかの供給元から入手可能である。
【0127】
或いは、ドライパウダー吸入器(DPI)デバイスを使用して本発明の化合物を肺に投与することができる〔例えば文献:Raleigh et al.,Proc.Amer.Assoc.Cancer Research Annual Meeting,1999,40,397(その内容を本明細書に引用して援用する)を参照されたい〕。DPIデバイスは、典型的には、ガスの噴出等のメカニズムを用い、容器内で乾燥粉末を雲状にする。この雲状の乾燥粉末を患者は吸入することができる。また、DPIデバイスは当該技術分野において周知であり、幾つかの供給メーカー(例えばFisons、Glaxo−Wellcome、Inhale Therapeutic Systems、ML Laboratories、Qdose、及びVectura等)から購入することができる。バリエーションとしては、反復投与用DPI(「MDDPI」)システムがよく知られており、これにより複数回分の治療投与量を送達させることができる。MDDPIデバイスは、AstraZeneca、GlaxoWellcome、IVAX、Schering Plough、SkyePharma、及びVectura等の企業から入手可能である。例えば、吸入器又は吹き付け器で使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジは、それらに上記化合物と上記システムに好適な粉末基剤(乳糖又はデンプン等)との混合粉末を含有させて処方することもできる。
【0128】
本発明の化合物を肺に送達させるのに使用できる別の種類のデバイスとして、Aradigm Corporation等により供給される液体スプレーデバイスがある。液体スプレーシステムにおいては、非常に小さな噴口を使用して液体製剤がエアゾール化された後に、肺へ直接吸引される。
【0129】
好ましい実施形態では、本発明の化合物を肺に送達させるためにネブライザーデバイスが使用される。ネブライザーは、超音波エネルギー等を使用して、すぐに吸引可能な細粒を形成することにより、液体製剤からエアゾールを生成させる〔例えば、文献:Verschoyle et al.,British J.Cancer,1999,80,Suppl 2,96(その内容を本明細書に引用して援用する)を参照されたい〕。ネブライザーの例として、Sheffield/Systemic Pulmonary Delivery Ltd.〔参考文献:米国特許第5,954,047号明細書(Armer et al.)、米国特許第5,950,619号明細書(van der Linden et al.)、米国特許第5,970,974号明細書(van der Linden et al.)、これら文献を本明細書に引用して援用する〕、Aventis、及びBatelle Pulmonary Therapeuticsにより供給されるデバイスが挙げられる。
【0130】
特に好ましい実施形態では、本発明の化合物を肺に送達させるために電気流体力学(「EHD」)エアゾールデバイスが使用される。EHDエアゾールデバイスは、電気エネルギーを使用して薬液の溶液又は懸濁液をエアゾール化する〔参考文献:米国特許第4,765,539号明細書(Noakes et al.)、米国特許第4,962,885号明細書(Coffee)、国際公開第94/12285号パンフレット(Coffee、PCT出願)、国際公開第94/14543号パンフレット(Coffee、PCT出願)、国際公開第95/26234号パンフレット(Coffee、PCT出願)、国際公開第95/26235号パンフレット(Coffee、PCT出願)、国際公開第95/32807号パンフレット(Coffee、PCT出願)等、これら文献を本明細書に引用して援用する〕。剤形の電気化学特性は、EHDエアゾールデバイスによって上記薬剤を肺に送達させる際に最適化されるべき重要なパラメーターであり得る。そのような最適化は当業者により日常的に行われるものである。EHDエアゾールデバイスによって、既存の肺送達技術よりもより効率的に薬剤を肺に送達させることもできる。本発明の化合物の肺内送達の他の方法は当業者に公知であろう。それらも本発明の範囲に含まれる。
【0131】
ネブライザー及び液体スプレーデバイス及びEHDエアゾールデバイスでの使用に好適な液体製剤は、薬学的に許容される基剤とともに本発明の化合物を含むのが典型的であろう。薬学的に許容される基剤は、アルコール、水、ポリエチレングリコール又はパーフルオロカーボン等の液体であることが好ましい。所望により、上記化合物の溶液又は懸濁液のエアゾール特性を変化させるために別の物質が添加される場合もある。上記物質はアルコール、グリコール、ポリグリコール又は脂肪酸等の液体であることが好ましい。エアゾールデバイスでの使用に好適な薬液の溶液又は懸濁液を処方する他の方法は当業者に公知である〔参考文献:米国特許第5,112,598号明細書(Biesalski)、米国特許第5,556,611号明細書(Biesalski)等、これら文献を本明細書に引用して援用する〕。化合物はまた、例えばカカオ脂又は他のグリセリド等の従来の坐基剤を含有するような坐剤又は保持浣腸剤といった直腸用又は膣用組成物中に処方することもできる。
【0132】
上述した剤形に加えて、本発明の化合物は持続性製剤として処方することもできる。そのような持続性作用のある剤形は、植え込み(例えば皮下若しくは筋肉内)又は筋肉内注射により投与できる。従って例えば上記化合物は、好適な高分子物質若しくは疎水性物質とともに(例えば許容される油中のエマルジョンとして)、又はイオン交換樹脂とともに処方することも、或いは難溶性誘導体、例えば難溶性塩として処方することも可能である。
【0133】
一方、他の薬剤送達システムを用いることもできる。リポソーム及び乳剤は本発明の化合物を送達させるのに使用できる送達ビヒクルの周知例である。また、ジメチルスルホキシド等の特定の有機溶媒を用いることもできるが、通常、毒性が高いという弊害がある。本発明の化合物を放出制御システムによって送達させることもまた可能である。一実施形態では、ポンプを使用できる(文献:Sefton,CRC Crit.Ref Biomed Eng.,1987,14,201;Buchwald et al.,Surgery,1980,88,507;Saudek et al.,N.Engl.J.Med.,1989,321,574)。別の実施形態では、高分子物質を使用できる〔文献:Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.,1983,23,61;さらに、Levy et al.,Science,1985,228,190;During et al.,Ann.Neurol.,1989,25,351;Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71,105を参照されたい〕。さらに別の実施形態では、放出制御システムを本発明の化合物のターゲット(肺等)の近傍に配置することができるので、全身的投与量の一部しか必要としない〔例えば、文献:Goodson,in Medical Applications of Controlled Release(上述),vol.2,pp.115(1984)を参照されたい〕。他の放出制御システムを使用してもよい(例えば、文献:Langer,Science,1990,249,1527を参照されたい)。
【0134】
本発明に包含される粘膜投与形態を得るために使用できる好適な賦形剤(基剤及び希釈剤等)及び他の物質は、製薬技術分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は投与形態が投与される具体的な場所又は方法によって異なる。その点を考慮して、典型的な賦形剤としては、以下に限定されないが、毒性がなくかつ薬学的に許容される水、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、及びその混合物等が挙げられる。そのような追加成分の例は、当該技術分野において周知である。例えば、文献:Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th eds.,Mack Publishing,Easton PA(1990)を参照されたい。
【0135】
医薬組成物若しくは投与形態のpH、又は医薬組成物若しくは投与形態が投与される組織のpHは、1つ以上の活性成分の送達性を向上させるよう調整することができる。同様に、溶剤担体の極性、そのイオン強度又は張性も送達性を向上させるよう調整することができる。ステアリン酸塩等の化合物もまた、医薬組成物又は投与形態に添加することで、1つ以上の活性成分の親水性又は親油性を有利に変化させて送達性を向上させることができる。この点において、ステアリン酸塩は、剤形の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達促進剤又は浸透促進剤として作用し得る。活性成分の他の塩、水和物又は溶媒和物を使用して、生成される組成物の特性をさらに調整することができる。
【0136】
キット
本発明は、C型肝炎ウイルス感染症の処置又は予防に有用な化学式Iのプロドラッグを含む1つ以上の容器を備えるパック又はキット製剤を提供する。他の実施形態において、本発明は、C型肝炎ウイルス感染症の処置又は予防に有用な本発明の化合物を含む1つ以上の容器と、追加治療剤(以下に限定されないが、例えば上掲した治療剤、特に抗ウイルス剤、インターフェロン、ウイルス酵素を阻害する薬剤、又はウイルス複製を阻害する薬剤)を含む1つ以上の容器と備えるパック又はキット製剤を提供する。上記追加治療剤は、HCVに特異的であるか、又は抗HCV活性を示すことが好ましい。
【0137】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1つ以上の活性成分を含む1つ以上の容器を備えるパック又はキット製剤を提供する。所望により、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する行政機関により規定された形式の注意書を上記1つ以上の容器に付けることができる。上記注意書は、ヒトへの投与を目的とした製造、使用又は販売に係る上記機関の承認を表している。
【0138】
本発明の薬剤は、当該技術分野において公知の一般的技術を用い、容易に入手可能な出発物質を使用して、以下に記載される反応経路及び合成スキームを用いて調製されてもよい。例示されていない本発明に係る化合物は、例えば妨害基を適宜保護したり、当該技術分野において公知の好適な試薬に変更したり、又は反応条件について慣例的に変更したりといった当業者には明白な改変を行うことによって成功裏に合成可能である。或いは、本明細書中に記載される他の反応、又は当該技術分野において公知の他の反応が、本発明の他の化合物の調製において適用されることが理解されよう。
【0139】
化合物の調製
下記の合成スキームにおいて、特に断りのない限り、温度は全て摂氏温度で記載され、部及びパーセンテージは全て重量によるものである。
【0140】
試薬はAldrich Chemical Company、又はLancaster Synthesis Ltd.等の民間の供給元から購入し、特に断りのない限りさらに精製することなく使用した。溶媒は全て、Aldrich、EMD Chemicals、又はFisher等の民間の供給元から購入し、そのままの状態で使用した。
【0141】
通常、下記に説明される反応を周囲温度(特に断りのない限り)で、無水溶媒中、アルゴン又は窒素陽圧下で行い、基質及び試薬をシリンジで投入するため、反応フラスコにラバーセプタムを取り付けた。ガラス器具はオーブン乾燥及び/又は加熱乾燥した。
【0142】
上記反応をTLC及び/又はLC−MSにより分析し、出発物質が消費されたことを確認して反応を終了させた。ガラスプレートにシリカゲル60 F254が塗布された0.25mmプレート(EMD Chemicals)により薄膜クロマトグラフィー(TLC)分析を行い、紫外線(254nm)、及び/又は、シリカゲル上のヨウ素、及び/又は、TLC染色剤(リンモリブデン酸・エタノール溶液、ニンヒドリン溶液、過マンガン酸カリウム溶液、又は硫酸セリウム溶液等)を用いた加熱によって可視化した。ガラスプレートにシリカゲル60 F254が塗布された0.5mmプレート(20×20cm、Thomson Instrument Companyより)により分取薄膜クロマトグラフィー(prepTLC)を行い、紫外線(254nm)によって可視化した。
【0143】
通常は、特に断りのない限り、反応溶媒又は抽出溶媒で反応容積を二倍にした後、抽出容積の体積で25%に当たる指定の水溶液で洗滌することによりワークアップを行った。生成物溶液は、無水NaSO及び/又はMgSOにより乾燥した後、濾過、及びロータリーエバポレータによる溶媒の減圧留去を行い、溶媒が減圧下で除去されるのを確認した。メルクシリカゲル60;230〜400メッシュ若しくは50〜200メッシュの中性アルミナ;RediSepシリカゲル充填(prepacked)カラムを使用するISCO Flash−クロマトグラフィー;又は、SuperFlashシリカゲル充填カラムを使用するAnalogixフラッシュカラムクロマトグラフィーを使用して陽圧下でカラムクロマトグラフィーを完了した。実施例で指示された圧力で、又は周囲圧力で水素化分解を行った。
【0144】
H−NMRスペクトル及び13C−NMRは、Varian Mercury−VX400機器(400MHzで作動)により記録された。NMRスペクトル(ppmで報告される)は、適宜、クロロホルムの対照標準(プロトン:7.27ppm、カーボン:77.00ppm)を用いるCDCl溶液、CDOD(プロトン:3.4及び4.8ppm、カーボン:49.3ppm)、DMSO−d(プロトン:2.49ppm)、又は、内部標準であるテトラメチルシラン(0.00ppm)を用いて得た。必要に応じ、他のNMR溶媒を使用した。多様なピークを報告する際に、以下の略語を使用する:s(1重線)、d(2重線)、t(3重線)、q(4重線)、m(多重線)、br(ブロード)、bs(ブロードな1重線)、dd(2重線の2重線)、dt(3重線の2重線)。測定時に、結合定数はヘルツ(Hz)で報告されている。
【0145】
赤外線(IR)スペクトルはATR FT−IR分光計によりニート(neat)の油状物又は固体として記録された。測定時に、赤外線(IR)スペクトルは波数(cm−1)で報告されている。報告されるマススペクトルは、Anadys Pharmaceuticals,Inc.の分析化学部門によって行われた(+)‐ES又はAPCI(+)LC/MSである。元素分析は、Atlantic Microlab,Inc.(ジョージア州、ノークロス)又はNuMega Resonance Labs,Inc.(カリフォルニア州、サンディエゴ)によって行われた。融点(mp)はオープンキャピラリー装置で測定したものであり、補正されていない。
【0146】
記載の合成経路及び実験手順には、以下のような多くの一般的な化学略号を使用している:2,2−DMP(2,2−ジメトキシプロパン)、Ac(アセチル)、ACN(アセトニトリル)、Aliquat(R)336(塩化トリオクチルメチルアンモニウム)、Bn(ベンジル)、BnOH(ベンジルアルコール)、Boc(tert−ブトキシカルボニル)、BocO(二炭酸ジ−tert−ブチル)、Bz(ベンゾイル)、CSI(イソシアン酸クロロスルホニル)、DAST(三フッ化ジエチルアミノ硫黄)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン)、DCC(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DCE(1,2−ジクロロエタン)、DCM(ジクロロメタン)、DEAD(アゾジカルボン酸ジエチル)、DIEA(ジイソプロピルエチルアミン)、DMA(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMAP〔4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン〕、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、EDC〔1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩〕、Et(エチル)、EtOAc(酢酸エチル)、EtOH(エタノール)、EtO(ジエチルエーテル)、HATU〔O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート〕、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、HF(フッ化水素)、HOAc(酢酸)、HOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)、HPLC(高圧液体クロマトグラフィー)、iPrOH(イソプロピルアルコール)、IPA(イソプロピルアルコール)、KHMDS〔カリウムビス(トリメチルシリル)アミド〕、KN(TMS)〔カリウムビス(トリメチルシリル)アミド〕、KOBu(カリウムtert−ブトキシド)、KOH(水酸化カリウム)、LDA(リチウムジイソプロピルアミン)、MCPBA(3−クロロ過安息香酸)、Me(メチル)、MeCN(アセトニトリル)、MeOH(メタノール)、MTBE(メチルtert−ブチルエーテル)、NaCNBH(シアノ水素化ホウ素ナトリウム)、NaH(水素化ナトリウム)、NaN(TMS)〔ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド〕、NaOAc(酢酸ナトリウム)、NaOEt(ナトリウムエトキシド)、NIS(N−ヨードスクシンイミド)、Phe(フェニルアラニン)、PPTS(パラトルエンスルホン酸ピリジニウム)、PS(ポリマーに担持された)、Py(ピリジン)、pyBOP〔(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート〕、TEA(トリエチルアミン)、TFA(トリフルオロ酢酸)、TFAA(無水トリフルオロ酢酸)、THF(テトラヒドロフラン)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、Tol(トルオイル)、Val(バリン)等。
【0147】
【化6】

本発明の5’−カルバメートはスキーム1に示されるように調製できる。ヌクレオシド[1]を塩化ジメチルカルバモイル等のClC(O)NRと反応させて所望の5’−カルバメート[2]を得ることができる。さらに、塩基で処理してアセテートを取り除くことにより[3]を得ることができる。また、ヌクレオシド[1]をイソプロピルカルボニルクロリドと反応させて所望のカーボネート[4]を得ることもできる。[4]中のアセテートを塩基により取り除いて5’−カーボネート[5]を得ることができる。
【0148】
【化7】

2’−カーボネート及びカルバメートはスキーム2に示されるように調製できる。ヌクレオシド[6]を選択的に加水分解してヒドロキシ化合物[7]を得ることができる。アルコール[7]を塩化ジアルキルカルバモイルと反応させて所望の2’−カルバメート[8]を得ることができる。[8]中のアセテートを塩基により取り除いて2’−カルバメート[9]を得ることができる。さらに、アルコール[7]をイソプロピルカルボニルクロリドと反応させて所望の2’−カーボネート[10]を得ることもできる。カーボネート[10]中のアセテートを塩基で処理して取り除くことにより2’−カーボネート[11]を得ることができる。
【0149】
【化8】

スキーム3に示されるように、ジヒドロキシ糖をイソ−プロピルクロロホルメートと選択的に反応させて5’−カーボネート[12]を形成させた後、これを無水酢酸によりアセチル化して[13]を形成させることができる。その後、このアミドをポリマーに担持されたトリフェニルホスフィンで活性化させて、続いてエタノール及びDEADで処理することで所望のエーテル[14]が形成する。次にアセテートを塩基処理により取り除いてエーテル[15]を形成させることができる。
【0150】
実施例1:酢酸2−(5−アミノ−2−オキソ−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−5−イソプロポキシカルボニルオキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル(4)
【0151】
【化9】

化合物1〔1.50g、4.60mmol;化合物1の合成について、文献:国際公開第2006/066080号パンフレット(この内容を本明細書に引用して援用する)の56ページ(実施例3)を参照されたい〕をピリジン(22.5mL)に溶解して、0℃まで冷却した。クロロギ酸イソプロピル(9.66mL、トルエン中1M、9.66mmol)をシリンジポンプにより45分かけて添加して、無色から濃いピンク−オレンジへと変化させた。上記反応物を室温によって2時間温めた後、0℃に8時間保持した。反応物が室温まで温まった後、氷水500mL中に注ぎ込んだ。水層をデカントして粘着性沈殿物から分離した。DCMを用いた上記沈殿物の摩砕を2回行った。純粋な固体を吸引濾過により集め、45℃で高度の減圧下乾燥させて、1.45g(75%)の[4]を白色固体として得た:H NMR(400MHz,DMSO−d):8.34(H,s),8.34(11H,s),6.90(2H,s),5.91(1H,d,J=2.0Hz),5.65(1H,d,J=7.7Hz),4.71(1H,7重線,J=6.2Hz),4.35〜4.42(1H,m),4.28(1H,dd,J=2.9Hz,J=11.5Hz),4.07(1H,dd,J=7.8Hz,J=11.8Hz),2.63〜2.71(1H,m),2.06〜2.10(1H,m),2.06(3H,s),1.20(3H,s),1.18(3H,s);m/z 412.8[M+H]。C1620Sとしての元素分析計算値:C,46.60;H,4.89;N,13.58;S,7.77。実測値:C,46.23;H,4.90;N,13.45;S,7.68。
【0152】
実施例2:炭酸5−(5−アミノ−2−オキソ−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−3−イル)−4−ヒドロキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステルイソプロピルエステル(5)
【0153】
【化10】

化合物4(0.50g、1.21mmol)をMeOH(5.0mL)に溶解し、TEA(0.51mL、3.63mmol)を添加した。その溶液を室温で48時間攪拌し、48〜72時間35℃まで温めた。反応物を熱源から外して、減圧濃縮した後、フラッシュクロマトグラフィー(0−100%EtOAc−DCM)に供して、0.298g(66%)の[5]を白色粉末として得た:H NMR(400MHz,DMSO−d):8.33(1H,s),6.85(2H,bs),5.85(1H,d,J=2.3Hz),5.52(1H,d,J=4.1Hz),4.79〜4.83(1H,m),4.71(1H,7重線,J=6.2Hz),4.35〜4.41(1H,m),4.23(1H,dd,J=3.8Hz,J=11.9Hz),4.06(1H,dd,J=8.0Hz,J=11.9Hz),2.40〜2.47(1H,m),1.86〜1.91(1H,m),1.20(3H,d,J=1.4Hz),1.19(3H,d,J=1.4Hz);m/z 370.9[M+H]。C1418Sとしての元素分析計算値:C,45.40;H,4.90;N,15.13;S,8.66。実測値:C,45.07;H,4.84;N,14.70;S,8.51。
【0154】
化合物の抗ウイルス活性
細胞培養、動物モデル、及びヒトを対象とした投与といった幾つかのアッセイを本発明に応じて用い、本発明の化合物の抗ウイルス活性度を測定することができる。本明細書に記載されるアッセイを使用してウイルス増殖を経時的に分析し、本発明の化合物の存在下でのウイルスの増殖特性を決定することができる。
【0155】
別の実施形態において、ウイルス及び本発明の化合物は、ウイルス感染を受けやすい動物対象に投与される。この場合の感染の罹患率、重症度、期間、ウイルス量、死亡率等は、対象に(本発明の化合物の非存在下)ウイルスだけが投与された際に確認される、感染の罹患率、重症度、期間、ウイルス量、死亡率等と比較することができる。本発明の化合物の抗ウイルス活性は、感染の罹患率、重症度、期間、ウイルス量、死亡率等が本発明の化合物の存在下で低減されることにより示される。特定の実施形態では、ウイルスと本発明の化合物とが同時に動物対象へ投与される。別の特定の実施形態では、ウイルスは本発明の化合物の前に動物対象へ投与される。別の特定の実施形態では、本発明の化合物はウイルスの前に動物対象へ投与される。
【0156】
別の実施形態においてウイルスの増殖速度は、本発明の化合物の存在下又は非存在下のいずれかでヒト又は動物対象から生物学的流体/臨床サンプル(鼻腔吸引液、咽頭スワブ、痰、気管支肺胞洗浄液、尿、唾液、血液又は血清等)を感染後の複数の時点でサンプリングし、ウイルス濃度を測定することにより試験することができる。特定の実施形態では、ウイルスの増殖速度は、当該技術分野で周知の任意の方法を使用して、細胞培養による増殖、許容される増殖培地での増殖、又は対象中での増殖を行った後に、サンプル中のウイルスの存在を評価することで分析される。上記当該技術分野で周知の任意の方法としては、以下に限定されないが、分析対象のウイルスを免疫特異的に認識する抗体を使用する免疫測定法(ELISA等;ELISAに関する考察として、例えば文献:Ausubel et al.,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.I,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkの11.2.1を参照されたい)、免疫蛍光染色、若しくは免疫ブロット分析、又はウイルスに特異的な核酸の検出(例えばサザンブロット又はRT−PCR分析等により)等が挙げられる。
【0157】
特定の実施形態では、ウイルス力価は、感染細胞又は感染対象から生物学的流体/臨床サンプルを得て、上記サンプルの一連の希釈物を調製して、ウイルス感染を受けやすい細胞の単層(例えば初代細胞、形質転換細胞系、患者の組織サンプル等)を、単一プラークを出現させるウイルスの希釈物に感染させることにより測定できる。その後、上記プラークをカウントして、ウイルス力価を、サンプル1ミリリットル当たりのプラーク形成単位として表すことができる。
【0158】
ある特定の実施形態では、対象中のウイルスの増殖速度は、対象中のウイルスに対する抗体価により評価することができる。血清抗体価は、以下に限定されないが、例えばELISA等により血清サンプル中の抗体量又は抗体断片量が定量できるといったように、当該技術分野において周知の任意の方法によって測定することができる。さらに、化学式Iの化合物のインビボ活性は、試験動物に上記化合物を直接投与し、生物学的流体(鼻腔吸引液、咽頭スワブ、痰、気管支肺胞洗浄液、尿、唾液、血液又は血清等)を採取して、上記流体の抗ウイルス活性を試験することにより測定することができる。
【0159】
ウイルス濃度分析の対象であるサンプルが生物学的流体/臨床サンプル(鼻腔吸引液、咽頭スワブ、痰、気管支肺胞洗浄液、尿、唾液、血液又は血清等)である実施形態において、上記サンプルには無傷細胞が含まれていても、いなくてもよい。サンプルは無傷細胞を含む対象から直接調製することができるが、無傷細胞の存在しない分離サンプルは、最初に許容細胞系(例えば初代細胞、形質転換細胞系、患者の組織サンプル等)又は増殖培地(例えばLBブロス/寒天培地、YTブロス/寒天培地、血液寒天培地等)で培養されていても、いなくてもよい。細胞懸濁液を遠心分離(室温下、300×gで5分間等)にかけて透明にした後、pH7.4のPBS(Ca++及びMg++を含まない)による洗滌を同条件下で行うことができる。細胞沈殿物は少量のPBSに再懸濁して分析することができる。無傷細胞を含む一次臨床分離サンプルをPBSと混合して、室温下、300×gで5分間遠心分離にかけることができる。その界面から粘液を滅菌ピペットチップによって除去し、細胞沈殿物を同条件下でもう一度PBSで洗滌することができる。その後、沈殿物は少量のPBSに再懸濁して分析することができる。
【0160】
別の実施形態において、本発明の化合物はウイルスに感染したヒト対象へ投与される。この場合の感染の罹患率、重症度、期間、ウイルス量、死亡率等は、本発明の化合物の非存在下、又はプラシーボの存在下においてウイルスに感染したヒト対象で確認される、感染の罹患率、重症度、期間、ウイルス量、死亡率等と比較することができる。本発明の化合物の抗ウイルス活性は、感染の罹患率、重症度、期間、ウイルス量、死亡率等が本発明の化合物の存在下で低減されることにより示される。上述のような当該技術分野において公知の任意の方法を使用して対象の抗ウイルス活性を測定することができる。
【0161】
さらに、化学式Iのプロドラッグのインビボ活性は、動物又はヒト対象に上記化合物を直接投与し、生物学的流体/臨床サンプル(鼻腔吸引液、咽頭スワブ、痰、気管支肺胞洗浄液、尿、唾液、血液又は血清等)を採取して、上記生物学的流体/臨床サンプルの抗ウイルス活性を試験すること(ウイルス存在下での培養細胞への添加等)により測定することができる。
【0162】
化学式Iのプロドラッグの代謝
本発明の化学式Iのプロドラッグは、プロドラッグとして有効に作用する上で5−アミノ−3−(3’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオン(16)へと代謝されなければならない。
【0163】
【化11】

しばしば肝細胞を使用して、動物体内で化合物が変換される程度が評価されるが、そのような変換は、各動物個体における代謝を反映するようにそれぞれの種の肝細胞で異なることが知られている。文献:Seddon T.et al.,Biochem Pharmacol.,38(10),1657−65(1989)を参照されたい。
【0164】
新鮮なカニクイザル肝細胞の存在下で化学式Iの化合物4及び5の代謝安定性を評価し、5−アミノ−3−(3’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2,7−ジオン(16)の形成を観察する研究が着手された〔文献:国際公開第2006/066080号パンフレット(この内容を本明細書に引用して援用する)の109ページ(当該化合物の合成、実施例40)及び137ページ(IFN−α産生)を参照されたい〕。比較のために、ファムシクロビルの代謝安定性もまた評価された。
【0165】
新鮮な肝細胞懸濁液の調製
新鮮なカニクイザル肝細胞懸濁液はCellzDirect(アリゾナ州、トゥーソン)から購入した。Krebs−Henseleit緩衝液(KHB)はSigma(ミズーリ州、セントルイス)から購入した。
【0166】
カニクイザル肝細胞懸濁液は、KBH中の新鮮なカニクイザル肝細胞(濃度:1.25百万細胞/mL)により調製した。最終培養濃度(試験物質添加後)は1.0百万細胞/mLであった。
【0167】
原液の調製
4及び5のDMSO原液(10mM)は下記のように調製された。
【0168】
【表1】

【0169】
培養
取り外し可能な96ウェルチューブ各々に細胞密度:1.25百万細胞/mLの新鮮なカニクイザル肝細胞懸濁液320μLとKBH40μLとを含ませ、反応懸濁液を調製した。上記混合液を湿度95%、5%CO下、37℃で30分間、開放系で前培養した。10倍希釈濃度となるように40μLの試験物質を各チューブに添加して反応を開始して、試験物質の最終濃度を50μMにし、かつ細胞密度を1百万/mLにした。各チューブを数回逆さにしてチューブ中の反応懸濁液を混合した。上記チューブを湿度95%、5%CO下、37℃で培養した。
【0170】
分析用サンプルの調製
所定時点で、1ウェル当たり150μLの停止液を含む96ウェルプレートに反応懸濁液の50μLアリコートを移し入れて反応を止めた。停止液の組成は以下の通りである:内部標準としてのネブラリン1μg/mLと0.1%ギ酸とを含むアセトニトリル。
【0171】
検量線を以下のように調製した。80μLの細胞懸濁液(細胞密度:1.25百万/mL)に、KBH10μLとKBH中の上記化合物(適当な濃度)10μLとを添加した。混合後すぐに、各懸濁液50μLを96ウェルプレート中の停止液150μLに移し入れた。
【0172】
反応が停止したサンプルは全て、分析用に調製するまでの間、濡れた氷上に保持した。その後、ベンチトップ型Multi−Tube Vortexer(VWR Scientific Products)を使用して、それらを約30秒間混合し、4,000rpm(3,220rcf)で10分間4℃で遠心分離にかけた。透明な上澄み(100μL)を未使用のディープウェル96ウェルプレートに移し、窒素下で濃縮して乾燥させ、水:アセトニトリル(95:5)100μLに溶いて再構成し、試験物質の親化合物形態及び代謝物を適当なLC/MS/MS法を使用して分析した。
【0173】
生物学的分析
ESI−ポジティブMRMモードのAPI3000 LC/MS/MS機器で化合物を定量した。プロドラッグの減成及び生成物の形成の結果の大要は表1に示される。
【0174】
【表2】

【0175】
新鮮なカニクイザル肝細胞において、化合物4及び5は代謝され、対応する6−オキシ代謝物16が生成し、ファムシクロビルはペンシクロビル(pencilovir)を生成する。
【0176】
動物PK実験
本発明の化合物が経口投与後に親化合物を体循環に送達させる能力の評価は、当該技術分野において周知の方法によって評価された。各試験化合物は、水性緩衝液(pH3若しくはpH7のPBS等)か、100%プロピレングリコール溶液か、又は可溶化剤(Cremophor EL、Tween80若しくはPEG400等)を含む溶液のいずれかに上記化合物を溶解させることで経口投与用溶液として処方することができる。上記化合物の溶液はカニクイザルに経口胃管栄養法によって投与されるが、通常は、4個体から成る群を各実験に使用している。血漿サンプルは24時間内の複数の時点(通常、6〜12の時点が使用された)で動物個体から採取される。血漿サンプルは採取後直ちに凍結され、生物学的分析用サンプルの調製前に急速解凍される。
【0177】
生物学的分析
動物PK実験又はインビトロ試験で採取された各サンプルのアリコート(通常、50μL)を、内部標準(通常、ネブラリン)を含むアセトニトリル(アセトニトリル:血漿比 3:1)により反応停止させる。その懸濁液を14,000rpmで5〜10分間遠心分離にかける。得られた上澄みのアリコートを未使用のバイアルに移し、窒素下で乾燥させる。乾燥サンプルを液体に溶いて再構成して、MRM(多反応モニタリング)検出を用いたLC−MS/MS分析に供する。
【0178】
検量線用標準液は、高濃度の初期検体標準液を動物血漿か、又は細胞培養培地のいずれかで段階希釈することで調製される。検量線用標準液は、動物PKサンプルのための上述されたようなLC−MS/MS分析用に調製される。LC−MS/MS分析は、少なくとも2セットの検量線用標準液を用い組み合わせた検量線を使用してバッチモードで行われるので、試験サンプルが一括して処理される。検体及び内部標準の両方のLC−MS/MSトレースは積分され、それらのピーク面積の比を使用して、試験サンプル及び検量線用標準液各々における検体の相対感度が算出される。検量線は、検量線用標準液の感度及び標準濃度を、最も単純な重み係数(即ち、なし、1/x、又は1/x)を用いて、最も単純な方程式(即ち、一次又は二次)に当てはめることにより得られる。検量線の採用は逆算された標準濃度の精度に基づく。20%が適用される定量の下限以外の全ての標準に対して精度が15%以内であれば、標準は採用される。当てはめられた検量線を用いてサンプル中の検体が定量される。有用な検量線のダイナミックレンジは1〜5ng/mLから2,000〜10,000ng/mLである。
【0179】
PK算出
血漿中濃度−既知の投与量の上記化合物を経口投与した後の親化合物のタイムプロファイルを用いて、体循環における16のAUC(曲線下面積)が算出された。AUCは分子量に基づいた16の理論総面積に従って正規化される。
【0180】
末梢血単核細胞(PBMC)からのIFN−α誘導
末梢血単核細胞(PBMC)は標準的な方法でヒト血液から調製され、主に単球、NK細胞、末梢血樹状細胞、並びに、T及びB細胞から成っている。それらは、簡潔に言えば、白血球及び血小板を含む全血中の成分である軟膜から密度勾配遠心分離法によって精製される。軟膜については、全血を遠心分離し、分離した混合物の上層の血漿層と下層の赤血球部分の間にあるクリーム色の薄層を分離することで調製される。
【0181】
PBMC精製
採取したばかりのドナー軟膜はサンディエゴ血液銀行から得られる。PBMCは、ヒストパック−1077グラジエント(Sigma)を使用し、本質的には製造業者のプロトコルに記載されるようにして軟膜から分離される。軟膜を50ml遠心分離管に移し、全容量が35mlになるまでPBSを添加する。次に10mlのヒストパック−1077を各管の下部に投入した後、5804 R遠心分離機(Eppendorf)により259×gで30分間、室温でブレーキをかけることなく遠心分離にかける。各管からPBS上層を除去し、軟膜層を未使用の管に移す。全容量が50mlになるまでPBSを添加した後、上記管を259×gで10分間、室温で遠心分離にかけた。このようにして細胞をPBSによってさらに3回洗滌する。
【0182】
次に、細胞(PBMC)沈殿物は完全(RPMI 1640)培地30〜40mlに再懸濁される。PBMCを2.5又は7.5×10細胞/ml完全培地(それぞれ播種1回、3回)のいずれかとして播種し、一晩置いた後、化合物に24時間曝露する。次に上記細胞及び培地を採取し、5415 C微量遠心分離機(Eppendorf)により735×gで5分間、室温で遠心分離にかけ、上澄みをIFN−α ELISAにより分析する。
【0183】
化学式Iのプロドラッグが、選択された経路で投与される場合に有利な経口送達特性を示し、免疫応答を誘導する能力は、文献に記載される化合物による同様な実験の結果と比較することができる。文献:米国特許第5,041,426号、第4,880,784号明細書、米国特許出願Nos.10/861,430(米国特許出願公開第2005/0070556号明細書)、及び2005年12月16日出願の米国特許出願Nos.11/304,691(上記文献にはとりわけイサトリビンのIFN−α誘導が開示されている)の全てを本明細書に引用して援用する。
【0184】
上記記載は、本質的に例示的かつ説明的なものであり、本発明及びその好ましい実施形態を説明するものであると理解されたい。当業者は、慣例的な実験方法によって、本発明の趣旨から外れることなく明らかな改変及び変形を行うことが可能であると理解するであろう。このように、本発明は、上記記載によってではなく、本願の特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式I:
【化1】

〔式中、
はNH又は−NCH=NRであり、
はH、OH又は−ORであり、
はOH、−OC(O)C〜C18アルキル基、−OCO、−OC(O)NR、又は、ラセミ体、L体若しくはD体のアミノ酸基:−OC(O)CHRNHRであり、
はOH、−OC(O)C〜C18アルキル基、−OCO、−OC(O)NR、又は、ラセミ体、L体若しくはD体のアミノ酸基:−OC(O)CHRNHRであり、
は−C〜Cアルキル基であり、
及びRは、独立して−C〜Cアルキル基であるか、又は窒素原子と結合して5若しくは6員環の複素環を形成しており、
はH又は−C〜Cアルキル基であり、
はH、−C〜Cアルキル基、−C(O)R又は−COであって、
そのうち、
又はRの少なくとも1つは、−OCO、−OC(O)NR、又は、ラセミ体、L体若しくはD体のアミノ酸基:−OC(O)CHRNHRであり、
そのうち、前記アルキル基は、
水素、
アルキルアミン、
アミノ基、
アリール基、シクロアルキル基、複素環基、
〜Cアルキル基、C〜Cハロアルキル基、C〜Cヒドロキシアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキルアミン、C〜Cジアルキルアミン、C〜Cアルケニル基、又はC〜Cアルキニル基(前記基にはそれぞれ、1つ以上のヘテロ原子が間に介在していてもよい)、
カルボキシル基、
シアノ基、
ハロ基、
ヒドロキシル基、
メルカプト基、
オキソ基、
チオアルキル基、
−C(O)−(C〜Cアルキル基)、−C(O)−(アリール基)、−C(O)−(シクロアルキル基)、−C(O)−(複素環基)、−O−(C〜Cハロアルキル基)、−O−アリール基、−O−複素環基、−NHC(O)−(C〜Cアルキル基)、−NHC(O)−(C〜Cアルケニル基)、−NHC(O)−(アリール基)、−NHC(O)−(シクロアルキル基)、−NHC(O)−(複素環基)、−NHS(O)−(C〜Cアルキル基)、−NHS(O)−(アリール基)、−NHS(O)−(シクロアルキル基)、及び−NHS(O)−(複素環基)
から選択される1〜4つの置換基で置換されていてもよく、
前記置換基はそれぞれ、さらに
アミノ基、
〜Cアルキルアミン、C〜Cジアルキルアミン、
〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルケニル基、C〜Cヒドロキシル基、及びC〜Cヒドロキシアルキル基(各々は
シアノ基、
ハロ基、及び
ニトロ基で置換されていてもよい)
から選択される1〜5つの置換基で置換されていてもよい〕
の化合物、又はその薬学的に許容される塩、水和物、若しくは立体異性体。
【請求項2】
はNHである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
はH又はOHである、
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
は−OCO又は−OC(O)NRであり、かつRはOH、−OC(O)C〜C18アルキル基、−OCO又は−OC(O)NRである、
請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
は−OCO又は−OC(O)NRであり、かつRはOH、−OC(O)C〜C18アルキル基、−OCO又は−OC(O)NRである、
請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
下記化学式:
【化2】

から選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
薬学的に許容される基剤と請求項1に記載の化合物とを含む医薬組成物。
【請求項8】
患者におけるサイトカインの免疫活性を調節する方法であって、
請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を治療的又は予防的有効量で前記患者に投与する方法。
【請求項9】
患者のC型肝炎ウイルス感染症を処置する方法であって、
請求項1に記載の化合物を治療的又は予防的有効量で前記患者に投与する方法。
【請求項10】
処置を必要とする哺乳動物の増殖関連疾患を処置する方法であって、
請求項1に記載の化合物を治療的有効量で前記哺乳動物に投与する方法。
【請求項11】
前期疾患は異常細胞増殖である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記疾患は癌である、
請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2009−541349(P2009−541349A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516736(P2009−516736)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/071830
【国際公開番号】WO2007/150002
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(504204443)アナディス ファーマシューティカルズ インク (13)
【Fターム(参考)】