説明

プロペラシャフト用等速自在継手

【課題】ブーツアダプタと外方継手部材との間のシール性を確保しつつブーツを外方継手部材に組み付ける作業の能率を向上させる。
【解決手段】外方継手部材の開口部を覆うブーツ40はブーツ本体42とブーツアダプタ44とからなり、ブーツアダプタ44は、ブーツ本体42と結合した小径筒部44aと、外方継手部材20の外周面と嵌合する大径筒部44bと、半径方向に延在して小径筒部44aと大径筒部44bを連結する段差部46とからなる。大径筒部44bの段差部46側の端部内周に円弧状断面の環状溝48を設け、かつ、外方継手部材20の開口端面24に外径側が開放した矩形断面の切欠き25を全周にわたって設け、ブーツアダプタ44を外方継手部材20に嵌合させる前に環状溝48にOリング50を装着しておき、段差部46が開口端面24と当接した状態で、Oリング50が切欠き25と段差部46と環状溝48とによって画成された空間に収容されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はプロペラシャフト用等速自在継手に関するもので、より詳しくは、そのシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、従来の技術を図面に従って説明するならば、トリポード型等速自在継手は、図5および図6に示すように、内方継手部材120と、外方継手部材110と、トルク伝達部材としてのローラアセンブリ130とを主要な構成要素としている。
外方継手部材110は一端にて開口したカップ状で、一体的に形成したステム部118のスプライン(またはセレーション。以下同じ)軸にて図示しない他の回転軸とトルク伝達可能に結合するようになっている。円筒状内周面111に軸線方向に延びる三つのトラック溝112が円周方向等間隔に形成してある。各トラック溝112の周方向両側にローラ案内面113が設けてある。内方継手部材120はボス122と脚軸121とからなり、脚軸121はボス122の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。内方継手部材120はボス122に形成したスプライン孔にてシャフト123とトルク伝達可能に結合している。ローラアセンブリ130は、ローラ131を内方継手部材120の脚軸121に針状ころ132を介して回転自在に外嵌させることによって構成されている。
【0003】
内方継手部材120の各脚軸121にローラアセンブリ130を担持させた状態で、外方継手部材110の開口から挿入し、外方継手部材110のトラック溝112にローラ131を収容させる。図6から分かるように、ここではローラ131の外周面は部分球面状で、ローラ案内面113は部分円筒形状である。
【0004】
図5はトリポード型等速自在継手の作動角が0度で、外方継手部材110と内方継手部材120が一直線になっている状態であるが、作動角をとった状態で回転すると、内方継手部材120の回転に伴ってローラアセンブリ130が外方継手部材110のローラ案内面113に沿って転動しながら往復移動する。ローラ131や針状ころ132まわりの摩擦を軽減するため、継手内部に潤滑グリースを充填する。そして、潤滑グリースが漏れたり、外部から異物が侵入したりするのを防止するため、ブーツ140を装着する。
【0005】
プロペラシャフト用等速自在継手はドライブシャフト用等速自在継手と比較して仕様回転域が高速となる。したがって、プロペラシャフト用等速自在継手のブーツには、蛇腹状のものではなく、金属環とブーツ本外を組み合わせた構造のものが使用される。すなわち、図5に示すように、ブーツ140はゴムや合成樹脂等の弾性材料からなるブーツ本体141と、ブーツ本体141と外方継手部材110との間に介在するブーツアダプタ142とを有する。ブーツ本体141は断面略U字形状でかつ環状に形成され、内周端部143をシャフト123に取り付けてブーツバンド144で締め付ける。ブーツアダプタ142は略円筒形状で、片端側をブーツ本体141の外周端部145にかしめ固定する一方、図5の部分拡大図に示すように、他端側に形成された嵌合部146を外方継手部材110のシール部114に気密に嵌合させると共に、嵌合部146の端縁147を内径側にかしめて外方継手部材110のかしめ承部115に係合させてある。端縁147のかしめ前の状態を図5の部分拡大図に破線で示してある。また、外方継手部材110とブーツアダプタ142との間の気密性を高めるために、外方継手部材110のシール部114に形成した環状溝116にOリング117を装着してある。
【0006】
このように、ブーツ140は、ブーツ本体141をシャフト123に取り付け、ブーツアダプタ142を外方継手部材110に取り付けるようになっている。さらに、ブーツアダプタ142と外方継手部材110の嵌合部114との間にはシール性を向上させるためにOリング117が装着してある。Oリング117の組付け位置としては、外方継手部材110の外周面に環状溝116を形成してその中にOリング117を収容する形が一般的である(特許文献1)。
【0007】
また、ブーツ本体141を外方継手部材110に組み付ける際には、ブーツアダプタ142の嵌合部146がOリング117を乗り越えた後、さらに嵌合部146を軸方向に移動させて段差部148を外方継手部材110の端面119に当接させる。この間、Oリング117を乗り越えてから段差部148が端面119に当接するまでは、ブーツ140内の空気の逃げ場がないため、ブーツ140の内圧が上昇するという問題がある。内圧が上昇したことによって変形したブーツ140を図5に破線で示してある。この問題を解決するために、Oリング117をブーツアダプタ142の内側にあらかじめ挿入しておくことも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−14284号公報
【特許文献2】特開2000−310236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載された従来の技術では、組立の際、ブーツ組付けの前にブーツアダプタ142にOリング117を挿入するという作業が必要であり、手間と熟練を要す。また、Oリング117をブーツアダプタ142内に挿入した後であっても、取扱い中にOリング117が脱落する可能性が依然として残る。さらに、完全に脱落はしなくても、Oリング117の位置や姿勢がずれるおそれがあり、その結果、ブーツアダプタ142と外方継手部材110との間に噛み込んで、Oリング117に本来期待されている機能が得られない、再度組付け作業をやり直す必要が生じて作業効率が悪い、などといった問題がある。
【0010】
この発明は、上述のような問題を伴うことなく、ブーツアダプタと外部方向継手部材との間のシール性を確保することを目的とする。言い換えれば、この発明の目的は、ブーツアダプタと外方継手部材との間のシール性を確保しつつブーツを外方継手部材に組み付ける作業の能率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、ブーツアダプタと外方継手部材との間に介在してシール作用を行うシール部材を、ブーツアダプタ側に付着させるための手段を設けることによって課題を解決したものである。この付着手段は恒久的な手段であってもよく、組み付けが終了するまでの間の一時的な手段であってもよい。この発明は次のような構成を取り得る。
【0012】
第一の構成は、請求項1に記載したように、内方継手部材10と、外方継手部材20と、前記内方継手部材10と前記外方継手部材20との間でトルクを伝達するトルク伝達部材30とを有し、角度変位及び軸方向変位が可能なプロペラシャフト用等速自在継手であって、前記外方継手部材20の開口部を覆うブーツ40を具備し、前記ブーツ40は弾性材料製のブーツ本体42と金属製のブーツアダプタ44とからなり、前記ブーツアダプタ44は、前記ブーツ本体42と結合した小径筒部44aと、前記外方継手部材20の外周面と嵌合する大径筒部44bと、半径方向に延在して前記小径筒部44aと前記大径筒部44bを連結する段差部46とからなる。
前記大径筒部44bの前記段差部46側の端部内周に円弧状断面の環状溝48を設け、かつ、前記外方継手部材20の開口端面24に外径側が開放した矩形断面の切欠き25を全周にわたって設ける。そして、前記ブーツアダプタ44を前記外方継手部材20に嵌合させる前に前記環状溝48にOリング50を装着しておき、前記段差部46が前記開口端面24と当接した状態で、前記Oリング50が前記切欠き25と前記段差部46と前記環状溝48とによって画成された空間に収容されるようにしたものである。
【0013】
第二の構成は、請求項2に記載したように、内方継手部材10と、外方継手部材20と、前記内方継手部材10と前記外方継手部材20との間でトルクを伝達するトルク伝達部材30とを有し、角度変位及び軸方向変位が可能なプロペラシャフト用等速自在継手であって、前記外方継手部材20の開口部を覆うブーツ40を具備し、前記ブーツ40は弾性材料製のブーツ本体42と金属製のブーツアダプタ44とからなり、前記ブーツアダプタ44は、前記ブーツ本体42と結合した小径筒部44aと、前記外方継手部材20の外周面と嵌合する大径筒部44bと、半径方向に延在して前記小径筒部44aと前記大径筒部44bを連結する段差部46とからなる。
前記ブーツアダプタ44の前記段差部46の内壁面に矩形断面のゴムリング52を接着し、かつ、前記外方継手部材20の開口端面24に外径側が開放した矩形断面の切欠き25を全周にわたって設ける。そして、前記ブーツアダプタ44を前記外方継手部材20に嵌合させて前記段差部46が前記開口端面24と当接した状態で、前記ゴムリング52が前記段差部46と前記切欠き25と前記大径筒部44bとによって画成された空間に収容されるようにしたものである。
【0014】
第三の構成は、請求項3に記載したように、内方継手部材10と、外方継手部材20と、前記内方継手部材10と前記外方継手部材20との間でトルクを伝達するトルク伝達部材30とを有し、角度変位及び軸方向変位が可能なプロペラシャフト用等速自在継手であって、前記外方継手部材20の開口部を覆うブーツ40を具備し、前記ブーツ40は弾性材料製のブーツ本体42と金属製のブーツアダプタ44とからなり、前記ブーツアダプタ44は、前記ブーツ本体42と結合した小径筒部44aと、前記外方継手部材20の外周面と嵌合する大径筒部44bと、半径方向に延在して前記小径筒部44aと前記大径筒部44bを連結する段差部46とからなる。そして、前記ブーツアダプタ44を前記外方継手部材20に嵌合させる前に前記段差部46の内壁面に液体パッキン54を塗布し、前記段差部46が前記開口端面24と当接するまで嵌合させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、従来の技術に関連して述べたような問題を伴うことなく、ブーツアダプタと外部方向継手部材との間のシール性を確保することのできるプロペラシャフト用等速自在継手を提供することができる。すなわち、第一の構成を採用した場合、ブーツアダプタ40に形成した環状溝48にOリング50を保持させることができるため、ブーツアダプタ40を外方継手部材20に組み付ける前の段階でもゴムリング50が脱落したり位置ずれを起こしたりするおそれはない。したがって、また、ブーツ40を外方継手部材20に組み付ける作業の能率も向上する。
【0016】
第二の構成のように、Oリング50に代えて矩形断面のゴムリング52を採用した場合、ゴムリング52をブーツアダプタ40の段差部46の内壁面に接着するとともに、外方継手部材20の開口端面24に切欠き25を形成しておくことにより、ブーツアダプタ40を外方継手部材20に嵌合させてブーツアダプタ44の段差部46を外方継手部材20の開口端面24に押し付けてゴムリング52を弾性変形させることによってゴムリング50がシール機能を発揮する。この場合もブーツアダプタ44を外方継手部材20に組み付ける前の段階でもゴムリング52が脱落したり位置ずれを起こしたりするおそれはない。したがって、この場合もブーツ40を外方継手部材20に組み付ける作業の能率が向上する。
【0017】
第三の構成のように、ブーツアダプタ44と外方継手部材20との間に介在してシール作用を行うシール部材として液体パッキンを採用した場合、液体パッキンがシール部材と付着手段を兼ねる。すなわち、ブーツアダプタ44の段差部46の内壁面に液体パッキン54を塗布しておくことにより、ブーツアダプタ44を外方継手部材20に嵌合させてブーツアダプタ44の段差部46を外方継手部材20の開口端面24に押し付けることにより液体パッキン54がシール機能を発揮する。この場合もブーツアダプタ44を外方継手部材20に組み付ける前の段階でも液体パッキン54が脱落したり位置ずれを起こしたりするおそれはない。したがって、この場合もブーツ40を外方継手部材20に組み付ける作業の能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1を示す断面図である。
【図2】実施例2を示す断面図である。
【図3】(A)は実施例3を示す断面図、(B)は変形例を示す断面図である。
【図4】トリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図5】従来の技術を示すトリポード型等速自在継手の縦断面図である。
【図6】図5のトリポード型等速自在継手の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、図4に示すしゅう動式等速自在継手の一種であるトリポード型等速自在継手を例にとって等速自在継手の全体構成を説明する。なお、図5および図6を参照して上に述べた従来の技術のトリポード型等速自在継手も、シール構造を除いた基本的構成に関する限り変わるところはない。
【0020】
トリポード型等速自在継手は、内方継手部材10と、外方継手部材20と、トルク伝達部材としてのローラアセンブリ30を主要な構成要素とし、ブーツ40を装着して使用するのが一般的である。連結すべき2軸のうちの一方(駆動軸または従動軸)を内方継手部材10と結合し、もう一方(従動軸または駆動軸)を外側継手部材20と結合し、両者間でトルク伝達を行うが、角度変位のみならず軸方向変位(プランジング)も可能である。
【0021】
内方継手部材10はボス12と脚軸16とからなり、ボス12の軸心部にスプライン孔14が形成してあり、このスプライン孔14にて上記駆動軸または従動軸(ここではシャフト18)とトルク伝達可能に結合するようになっている。脚軸16はボス12の円周方向三等分位置に配置してあり、それぞれボス12から半径方向に突出している。
【0022】
外方継手部材20は一端にて開口したカップ状で、その開口側の端面を符号24で指してある。外方継手部材20の内周面の円周方向三等分位置に、軸線方向に延びるトラック溝22が形成してあり、各トラック溝22の両側壁はローラ案内面26となる。
【0023】
内方継手部材10の各脚軸16にローラアセンブリ30を担持させてある。ローラアセンブリ30は、脚軸16に針状ころ34を介して回転自在に外嵌させたローラ32を含む。このローラ32は外方継手部材20のトラック溝22に収容され、継手が角度をとった状態で回転すると、ローラ案内面26上を転動しながら外側継手部材20の軸線方向に往復移動する。針状ころ32の両端側にはワッシャ36a、36bが配置してあり、脚軸に形成した環状溝にサークリップ38が装着してある。ワッシャ36aはサークリップ38で抜け止めがしてあるが、ワッシャ36aはその形状よりローラ32がある程度軸方向に移動するのを許容する。
【0024】
ローラアセンブリ30は、ローラ32と針状ころ34との間、針状ころ34と脚軸16との間で転がり摩擦、すべり摩擦が発生する。また、ローラ32とローラ案内面26との間でも転がり摩擦、すべり摩擦が発生する。そこで、これらの部分の潤滑を目的として継手内部に潤滑グリースを充填する。そして、この潤滑グリースの漏れを防止するため、また、外部から異物が侵入するのを防止するため、ブーツ40を装着して継手内部を密封している。
【0025】
ブーツ40はブーツ本体42とブーツアダプタ44とで構成されている。ブーツ本体42はゴムや合成樹脂等の弾性材料製で、小径部42aはシャフト18に取り付けてブーツバンドで締め付けるようになっており、大径部42bは図示するように折り返してブーツアダプタ44と結合させてある。ブーツアダプタ44は金属製で、全体外観は異径円筒形状であり、小径筒部44aをブーツ本体42の大径部42bと結合する。ここでは、ブーツアダプタ44の小径筒部44aを巻き締めることによってブーツ本体42の大径部42bを一体的に保持させてある。大径筒部44bは外方継手部材20のカップ部21の端部外周面に嵌合させる。大径筒部44bの端縁47は、図1〜3に示すように、また図5に破線で示すように外径側に拡径させてあり、段差部46が外方継手部材20の端面24と当接するまで嵌合させた後、端縁47を内径側にかしめて外方継手部材20のかしめ承部29に係合させる。これによってブーツアダプタ44の抜け止めがなされる。
【0026】
ブーツ40を構成するブーツアダプタ44と外方継手部材20との間に介在してシール作用を行うシール部材を、ブーツアダプタ44側に付着させるための手段を設ける。この固定手段は恒久的に固定する手段であってもよく、組み付けが終了するまでの間の一時的固定手段であってもよい。
【0027】
実施例1は、シール部材としてOリング50を採用し、固定手段としてはブーツアダプタ44の内周に環状溝48を設けたものである。すなわち、図1に示すように、ブーツアダプタ44の大径筒部44bの内側に、段差部46と接する円弧状の断面を有する環状溝48が形成してある。環状溝48はブーツアダプタ44の製造過程でプレス加工により形成することができる。ブーツアダプタ44を外方継手部材20に取り付ける前の任意の段階で、Oリング50を環状溝48に装着しておく。このようにすることで、Oリング50の位置ずれや、脱落を防止することができる。
【0028】
外方継手部材20の端面24には全周にわたる切欠き25が形成してある。この切欠き25は断面が矩形で、ブーツアダプタ44を外方継手部材20に取り付けてブーツアダプタ44の段差部46と外方継手部材20の端面24とが当接した状態では、ブーツアダプタ44の段差部46と環状溝48とによって閉じられ、概略矩形断面の一種のOリング溝が画成される。Oリング50に有効なシール機能を発揮させるために、環状溝48の径、Oリング50の線径、切欠き25の幅(外方継手部材の軸方向における寸法)と深さ(外方継手部材の半径方向における寸法)を、たとえばJISB2406の規定を参考にして設定する。
【0029】
実施例2は、シール部材として矩形断面のゴムリング52を採用し、固定手段としては接着を採用したものである。すなわち、図2に示すように、ブーツアダプタ44の段差部46にゴムリング52をあらかじめ接着しておく。ここで、接着の具体的態様としては、加硫接着のほか、接着剤によるものでもよい。
ゴムリング52の板厚にもよるが、ブーツアダプタ44の段差部46と外方継手部材20の端面24とに挟まれてゴムリング52が半径方向に変形する。具体的には、ゴムリング52の外径は拡径し、内径は縮径する。この変形を吸収することができるように、外方継手部材20の端面24に形成した切欠き25の、外方継手部材の軸方向、半径方向における寸法を調整する。
【0030】
実施例3は、シール部材と固定手段を兼ねる材料を採用したものである。すなわち、図3(A)に示すように、液体パッキン54を採用し、ブーツアダプタ44の段差部46の内壁面に塗布する。図3(B)に示すように、外方継手部材20の端面24に塗布するようにしてもよい。もちろんブーツアダプタ44の段差部46と外方継手部材20の端面24の両方に塗布することも可能である。液体パッキン54が乾燥する前にブーツ40と外方継手部材20の組付けを終了する必要があるため、液体パッキン54の塗布は組み付けの直前に行う。
【0031】
液体パッキンの具体例としては、液状シリコーンゴム(LSR: Liquid Silicone Rubber)を挙げることができる。シリコーンゴムにはその形態、硬化機構などによって種々のグレードがあるが、ミラブル型シリコーンゴムと液状シリコーンゴムに大別できる。ミラブル型は、使用時に加硫剤を添加することにより加熱硬化するタイプである。液状シリコーンゴムは、室温または加熱することにより硬化して、ゴム状となるタイプである。
【0032】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に悖ることなく種々の改変が可能である。たとえば、しゅう動式等速自在継手としてトリポード型等速自在継手を例にとったが、ダブルオフセット型やクロスグルーブ型など他のしゅう動式等速自在継手にも適用することが可能である。また、単一のローラを用いたシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手の場合について述べたが、ダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手にも同様の効果をもってこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 内方継手部材
12 ボス部
14 スプライン孔
16 脚軸
18 シャフト
20 外方継手部材
21 カップ部
22 トラック溝
24 端面
25 切欠き
26 トラック溝
28 ステム部
30 ローラアセンブリ
32 ローラ
34 針状ころ
36a、36b ワッシャ
38 サークリップ
40 ブーツ
42 ブーツ本体
42a 小径部
42b 大径部
44 ブーツアダプタ
44a 小径筒部
44b 大径筒部
46 段差部
48 環状溝
50 Oリング
52 ゴムリング
54 液体パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内方継手部材と、外方継手部材と、前記内方継手部材と前記外方継手部材との間でトルクを伝達するトルク伝達部材とを有し、角度変位及び軸方向変位が可能なプロペラシャフト用等速自在継手であって、前記外方継手部材の開口部を覆うブーツを具備し、前記ブーツは弾性材料製のブーツ本体と金属製のブーツアダプタとからなり、前記ブーツアダプタは、前記ブーツ本体と結合した小径筒部と、前記外方継手部材の外周面と嵌合する大径筒部と、半径方向に延在して前記小径筒部と前記大径筒部を連結する段差部とからなり、
前記大径筒部の前記段差部側の端部内周に円弧状断面の環状溝を設け、かつ、前記外方継手部材の開口端面に外径側が開放した矩形断面の切欠きを全周にわたって設け、
前記ブーツアダプタを前記外方継手部材に嵌合させる前に前記環状溝にOリングを装着しておき、前記段差部が前記開口端面と当接した状態で、前記Oリングが前記切欠きと前記段差部と前記環状溝とによって画成された空間に収容されるようにしたことを特徴とするプロペラシャフト用等速自在継手。
【請求項2】
内方継手部材と、外方継手部材と、前記内方継手部材と前記外方継手部材との間でトルクを伝達するトルク伝達部材とを有し、角度変位及び軸方向変位が可能なプロペラシャフト用等速自在継手であって、前記外方継手部材の開口部を覆うブーツを具備し、前記ブーツは弾性材料製のブーツ本体と金属製のブーツアダプタとからなり、前記ブーツアダプタは、前記ブーツ本体と結合した小径筒部と、前記外方継手部材の外周面と嵌合する大径筒部と、半径方向に延在して前記小径筒部と前記大径筒部を連結する段差部とからなり、
前記ブーツアダプタの前記段差部の内壁面に矩形断面のゴムリングを接着し、かつ、前記外方継手部材の開口端面に外径側が開放した矩形断面の切欠きを全周にわたって設け、
前記ブーツアダプタを前記外方継手部材に嵌合させて前記段差部が前記開口端面と当接した状態で、前記ゴムリングが前記段差部と前記切欠きと前記大径筒部とによって画成された空間に収容されるようにしたことを特徴とするプロペラシャフト用等速自在継手。
【請求項3】
内方継手部材と、外方継手部材と、前記内方継手部材と前記外方継手部材との間でトルクを伝達するトルク伝達部材とを有し、角度変位及び軸方向変位が可能なプロペラシャフト用等速自在継手であって、前記外方継手部材の開口部を覆うブーツを具備し、前記ブーツは弾性材料製のブーツ本体と金属製のブーツアダプタとからなり、前記ブーツアダプタは、前記ブーツ本体と結合した小径筒部と、前記外方継手部材の外周面と嵌合する大径筒部と、半径方向に延在して前記小径筒部と前記大径筒部を連結する段差部とからなり、
前記ブーツアダプタを前記外方継手部材に嵌合させる前に前記段差部の内壁面に液体パッキンを塗布し、前記段差部が前記開口端面と当接するまで嵌合させるようにしたことを特徴とするプロペラシャフト用等速自在継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−44336(P2013−44336A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180094(P2011−180094)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】