説明

プロモーター

本発明は、新規のポリヌクレオチドベクター、ならびに、宿主細胞における生物学的材料の生産、さらには医学的治療もしくはポリヌクレオチドワクチン接種におけるその使用を提供する。本発明の新規のベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のUS3遺伝子と通常結合しているプロモーターを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のポリヌクレオチドベクター、ならびに、宿主細胞における生物学的材料の生産、さらには医学的治療もしくはポリヌクレオチドワクチン接種おけるその使用を提供する。本発明の新規のベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のUS3遺伝子と通常結合しているプロモーターを含む。HCMV US3遺伝子プロモーターを含むベクターは、HCMV US3タンパク質ではない少なくとも1個のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むプラスミドまたはウイルスもしくは細菌ベクターであり、このウイルスもしくは細菌ベクターまたはプラスミドは、ワクチン接種のために用いられる。
【背景技術】
【0002】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV MIE)の主要な前初期遺伝子プロモーターは、詳細に特性決定されている。加えて、HCMVゲノムは少なくとも3つの他の前初期遺伝子プロモーターも有する。これらのうち、HCMV US3遺伝子は、広く、かつ複雑なプロモーター領域を有する(Weston. K 1988, Virology 162: 406-416)。US3遺伝子の発現は、そのプロモーターにより制御されるが、このプロモーターは、最小プロモーター領域、エンハンサー領域(R2)およびサイレンサー領域(R1)を含む。
【0003】
US3プロモーターは、転写開始部位の約600bp上流と、該部位の約100bp下流に、約700 bpのシス作用性調節ドメインを含む。R2領域は、トランスフェクションしたヒト細胞系に高度の基本発現を賦与することが知られる多コピーNF-κB結合部位を含む。R1領域は、Nru制限酵素部位も含む10bpのTGTCGCGACAパリンドロームモチーフの反復配列を複数含む。R1サイレンサーエレメントは、一過性トランスフェクション実験において、異種プロモーターおよび最小US3プロモーターエレメントをダウンレギュレートすることが明らかにされた(Chan Y-Jら、1996. J.Virol 70: 5312-5328)。しかし、ウイルスゲノムに関しては、R1エレメントはリポーター(CAT)遺伝子の発現を増強するようである(Bullock GCら、2001. Virology 288: 164-174)。R1エレメントに関して考えられる1つの機能は、クロマチンを含まない領域を維持することにより、隣接するR2エンハンサーの転写活性化を促進することであろう(Bullock GCら、2002. Exp Mol Pathol 72: 196-206)。HCMVのTowne株のUS3プロモーター内で、R1サイレンサー領域は、−314〜−596位に位置し、R2エンハンサー領域は、−313〜−55位に位置し、最小プロモーターは−54〜+80位である(Chan Y-Jら、1996. J.Virol 70: 5312-5328)。EcoRV制限部位は、−316〜−311位にあり、機能的にNru(R1)とNF-κB(R2)領域との間の境界を画定する。すべてのマップ位置は、+1の転写開始部位に対するものである(Chanら(前掲)の図1Bを参照)。HCMVの他の株(例:AD 169およびToledo)由来のUS3プロモーターは、同じ全体の構造に従うが、塩基位置の番号付けは若干異なる。
【0004】
シス抑制配列(CRS)は、転写開始部位のすぐ上流に位置するUS3プロモーター(CGTGCAGTCCACACG)と、転写開始部位のすぐ下流のコンセンサスイニシエーター様(Inr)エレメント(CTACTTC)に書き込まれている。ウイルスIE86タンパク質は、許容細胞のウイルス感染後早期にCRSエレメントに結合し、プロモーター抑制に寄与する(Lashmit PEら、1998. J. Virol 72, 9575-9584)。転写開始部位とTATAボックスとの間の別のシス抑制エレメントには、配列特異的ウイルスDNA結合タンパク質UL34が結合し、恐らく、転写開始複合体の形成を阻止することにより、US3遺伝子産物の転写を抑制することができる(Lapierre, L.A.ら、2001, J. Virol., 75, 6062-6069)。
【0005】
US3遺伝子は、前初期反応速度で転写され、感染から1時間後に最初の転写物が出現し、許容細胞への感染から2〜5時間後に最大発現が起こり、その後減弱する(Tenney DJら、1991. J.Virol 65: 6724-6734)。3つの選択的にスプライスされた転写物が作られ、関連しているが別のタンパク質をコードするようである。全長転写物は最も豊富であり、22 kdタンパク質をコードするが、このタンパク質はER内でクラス1の分子を特異的に保持している(Wenzhong Lら 2002. Virology 301: 32-42)。
【0006】
US3遺伝子は、ER内にMHCクラス1の重鎖を保持させるため、被感染細胞の表面でのウイルス抗原の提示を阻止することが知られている(Ahn KA ら、1996. PNAS 93: 10990-10995)。US3遺伝子は、HCMVによりコードされる数種の免疫回避遺伝子の1つである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態では、宿主細胞にポリペプチドの発現を引き起こす新規ベクターが提供されるが、その際、このベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US3遺伝子のプロモーターエレメントを含み、このプロモーターは、HCMV US3タンパク質に関して外来である異種ポリペプチドをコードする領域に機能的(operably)に連結されている。
【0008】
本発明の別の実施形態では、宿主細胞内にポリペプチドの発現を引き起こす新規ベクターが提供されるが、その際、このベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US3遺伝子の最小プロモーターエレメントと転写調節エレメントとを含んでなるプロモーターを含み、US3最小プロモーターエレメントは、HCMV US3タンパク質に関して外来である異種ポリペプチドをコードする領域に機能的に連結されている。
【0009】
エンハンサーは、いずれかの配向で、しかも、転写された領域の下流位置からでも、最高数キロ塩基対の距離にわたって、RNAポリメラーゼIIにより隣接遺伝子の転写を刺激するDNAのシス作用性エレメントである(Boshartら、1985, Cell, 41, 521-530)。
【0010】
一実施形態では、ポリヌクレオチドベクターは、HCMV US3遺伝子の最小プロモーターエレメントと、エンハンサーエレメントである転写調節エレメントを含む。この実施形態では、最小HCMV US3プロモーターを含む本発明の新規のベクターは、HCMV US3遺伝子のR2エンハンサーエレメントをさらに含んでもよい。例えば、HCMV US3 R2エンハンサーエレメントは、最小HCMV US3プロモーターのすぐ上流に位置する。あるいは、本発明のベクターは、通常、別の遺伝子と結合している転写調節エレメント、例えば、HCMV主要前初期タンパク質遺伝子エンハンサーと一緒に、HCMV US3の最小プロモーターエレメントを含んでもよい(米国特許第5,168,062号および米国特許第6,218,140号を参照)。
【0011】
本発明の一形態では、前記ベクターとUS3プロモーターが提供されるが、その際、US3プロモーターはR1サイレンサーエレメントを含まない。あるいは、R1のサイレンシング作用を低減または除去するようにUS3プロモーターを突然変異させる。例えば、US3プロモーターを突然変異させることにより、Nru制限酵素部位も含むTGTCGCGACAパリンドロームモチーフの数を減らすように、US3プロモーターを突然変異させることができ、一実施形態では、上記モチーフを全部除去する(Chanら、前掲)。別の実施形態では、このプロモーターは、非HCMV US3遺伝子プロモーター由来の活性または不活性化サイレンサーエレメントと一緒に、HCMV US3由来の最小プロモーターエレメントとR2エレメントを含むことができる。
【0012】
US3最小プロモーターとR2エンハンサーエレメントの配列は、本明細書および実施例で記載するが、一実施形態では、これらはHCMVのToledo株に由来するものである。HCMVの他の株に由来する配列も本発明の一部を形成するものとする。
【0013】
本発明の別の実施形態では、前記ベクターは、非HCMV US3プロモーター由来の最小プロモーターと一緒に、唯一のHCMV US3配列としてUS3プロモーターのR2エンハンサー領域を含む。例えば、本発明のこの態様のベクターは、HCMV US3 R2領域と、HCMV MIE遺伝子プロモーター由来の最小プロモーターエレメントとを含むプロモーターを有する。
【0014】
本発明のベクターに用いるHCMV US3プロモーターは、US3遺伝子の転写開始部位に対して−600から+100位の間、またはほぼこの間にある領域に由来することができる。別の実施形態では、より小さいUS3プロモーターをEcoRV制限部位の下流に位置するこの領域(例えば、HCMVのTowne株の場合、これは、転写開始部位に対して−313〜+80位の領域に対応する)内から選択する。別の実施形態では、ベクターは、HCMV US3遺伝子プロモーターに由来する唯一の配列としてUS3最小プロモーターエレメントを含み、その際、随意に別の非HCMV US3遺伝子プロモーター由来のエンハンサーエレメント(例えば、HCMV MIEエンハンサー)を一緒に含んでもよい。本発明の別の実施形態では、US3プロモーターは、転写開始部位の下流で末端切断された最小プロモーターエレメントを含んでもよい。一実施形態では、この末端切断型最小プロモーターは、転写開始部位を保持し、これは、HCMVのTowne株の場合、末端切断が転写開始部位に対し+8位の下流であることを意味する)。
【0015】
本発明のベクターによりコードされ発現される異種タンパク質は、HCMV US3遺伝子産物に関して外来である。一実施形態では、「外来(foreign)」とは、異種タンパク質が、HCMV US3遺伝子産物ではないか、あるいはHCMV US3遺伝子産物と70%以上の同一性を有するタンパク質ではないことを意味する。
【0016】
本発明の新規ポリヌクレオチドベクターは、ベクターが、細胞内の治療タンパク質の生産を駆動する遺伝子治療において有用であり;あるいは、プラスミドが、免疫応答を高めようとする抗原をコードするポリヌクレオチド免疫原である、ポリヌクレオチドワクチンとしても有用である。また、本発明の発現ベクターは、治療に有効なポリペプチドのin vitro発現にも用いることができる。
【0017】
本発明の発現ベクターに関して、当業者は、十分に機能的な発現カセットを作製するのに必要な別のエレメントについて一般に認識するはずである。例えば、ベクターが、転写を終結させるpol IIターミネーターと、該プロモーターから転写されたmRNAの3’末端の安定化およびプロセシングのためのポリアデニル化シグナルとを含んでいれば、最適である。好適なポリアデニル化シグナルとして、例えば、ウサギβグロビンポリアデニル化シグナルまたはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、ならびにウイルス由来のポリアデニル化シグナル(例えば、SV後期ポリ(A)領域)が挙げられる。加えて、ベクターは、翻訳開始部位にコザック共通配列を含むのが好ましい。
【0018】
US3遺伝子プロモーターを極めて多様な細胞型で発現させると、その初期発現速度論により、上記プロモーターは、DNAワクチン研究で用いるためのHCMV MIEプロモーターに代わる興味深い代替物になる。
【0019】
一実施形態では、ベクターはプラスミド、細菌またはウイルスベクターであり、一実施形態では、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)である。
【0020】
プラスミドベクターは、原核宿主細胞内で自律複製を可能にする複製起点と、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)をさらに含んでもよい。HCMV US3 5'UTR配列とポリアデニル化シグナルの間に、1以上の制限部位を含有させることにより、異種コード配列の挿入を容易にするのが有利である。本発明のプラスミドベクターは、当業者には周知の標準的組換え技術を用いて、成分配列エレメントから容易に構築することができ、そのような方法は、例えば、下記文献に記載されている:F. M. Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)。
【0021】
別の実施形態では、ベクターは真核宿主細胞での組換えポリペプチドの発現に用いられる発現ベクターであってもよい。この実施形態では、ベクターは、HCMV US3最小プロモーターおよび5'UTR配列に機能的に連結した組換えポリペプチドをコードするDNA配列をさらに含むことができる。
【0022】
本発明のベクターは、別の調節エレメント、もしくは配列(例えば、HCMV MIEエキソン1遺伝子配列)をさらに含むことができ、これらは随意に、US3プロモーターの転写開始配列(ACGCTACTTCT)直後に融合されてもよい。ベクターは、真核宿主細胞において選択を可能にする選択マーカー、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼマーカーをさらに含んでもよい。発現ベクターはまた、単一のベクターから多数の組換えポリペプチドの発現を可能にするために、1以上の発現カセットを含むこともできる。最も好ましくは、発現ベクターはプラスミド発現ベクターである。
【0023】
組換えポリペプチドをコードするDNA配列は、開始および停止コドンが結合した本質的にいかなるタンパク質コードDNA配列であってもよい。このタンパク質コードDNA配列は、イントロンを含んでもよい。特に好ましい実施形態では、組換えポリペプチドは、抗原性ポリペプチドまたは治療タンパク質である。
【0024】
「機能的に連結した」という用語は、プロモーターと結合した転写開始部位での転写開始によって、HCMV US3 5’UTR断片(あらゆる異種イントロンを含む)と、組換えポリペプチドをコードする配列とを取り込むmRNAの転写が起こるように、ポリペプチドコードDNA配列がプロモーターおよび5’UTRの下流に位置する配置を意味する。
【0025】
一実施形態では、本発明のベクターは、DNAワクチン免疫原として用いられるプラスミドである。その際、このプラスミドは、免疫応答を増強させたい異種タンパク質(その発現は前述のようにUS3プロモーターによって駆動される)をコードする。以下に、本発明のワクチンがターゲッティングしうる病原体、ならびに、本発明のベクターがコードできる上記病原体由来の可能な個々の抗原を列挙する。
【0026】
好ましい実施形態では、抗原は、ヒト病原体に対して免疫応答を誘発することができ、この抗原または抗原組成物はHIV-1(例えば、tat、nef、gp120またはgp160、gp140、p24、gag、env、vif、polvpr、vpu、rev)に由来し、ここでは、HIV-1抗原はRT(R)、Nef(N)およびGag(G)から選択されるのが特に好ましい。また、HIV-1抗原は上記3つすべての融合タンパク質であり、単一のポリプロタンパク質(RNG)として発現されるのが最も好ましい。他の病原体としては、以下のものが挙げられる:ヒトヘルペスウイルス、例えば、gH、gL、gM、gB、gC、gK、gEもしくはgDまたはその誘導体、あるいは、前初期タンパク質、例えば、HSV1またはHSV2由来のICP27、ICP47、ICP4、ICP36、サイトメガロウイルス、特にヒト由来のもの(例えば、gBまたはその誘導体)、Epstein Barrウイルス(例えば、gp 350またはその誘導体)、Varicella Zosterウイルス(例えば、gpI、II、IIIおよびIE63)、あるいはB型肝炎ウイルス(例:B型肝炎表面抗原または肝炎コア抗原またはpol)、C型肝炎ウイルス抗原およびE型肝炎ウイルス抗原のような肝炎ウイルス由来のもの、あるいはその他のウイルス病原体由来のもの、例えば、パラミクソウイルス:RSウイルス(例:FおよびGタンパク質またはその誘導体)、あるいはパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(例:HPV6、11、16、18、egL1、L2、E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7)(ここで、コードされた抗原はE1およびE2であるのが好ましい)、フラビウイルス(例:黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス細胞(例えば、HA、NP、NAもしくはMタンパク質、またはそれらの組合せ)、あるいは、以下に挙げるような細菌病原体由来の抗原:Neisseria spp(N. gonorrheaおよびN. meningitidis、例えば、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドヘシン);S. pyogens(例:Mタンパク質またはその断片)、C5Aプロテアーゼ、S. agalactiae、S. mutans;H. ducreyi;Moraxella spp、例えば、Branhamella catarrhalisとしても知られるM catarrhalis(例:高および低分子量アドヘシンおよびインベーシン);Bordetella spp、例えば、B. pertussis(例:ペルタクチン、百日咳毒素またはその誘導体、糸状血球凝集素、アデニレートシクラーゼ、線毛)、B. parapertussisおよびB. bronshiseptica;Mycobacterium spp、例えば、M. tuberculosis(例:ESAT6、抗原85A、-Bもしくは-C、MPT 44、MPT59、MPT45、HSP10、HSP65、HSP70、HSP 75、HSP90、PPD 19kDa [Rv3763] 、PPD 38kDa [Rv0934])、M. bovis, M. leprae、M. avium、M. paratuberculosis、M. smegmatis; Legionella spp、例えば、L. pneumophila;Escherichia spp、例えば、腸毒性E. coli(例:転移増殖因子、熱不安定性毒素またはその誘導体、熱安定性毒素またはその誘導体)、腸出血性E. coli、腸病原性E. coli(例:志賀毒素様毒素またはその誘導体);Vibrio spp、例えば、V. cholera(例:コレラ毒素またはその誘導体);Shigella spp、例えば、S. sonnei、S. dysenteriae、S. flexnerii;Yersinia spp、例えば、Y. enterocolitica(例:Yopタンパク質)、Y. pestis、Y. pseudotuberculosis;Campylobacter spp、例えば、C. jejuni(例えば、毒素、アドヘシンおよびインベーシン)およびC. coli;Salmonella spp、例えば、S. typhi、S. paratyphi、S. choleraesuis、S. enteritidis;Listeria spp、例えば、L. monocytogenes;Helicobacter spp、例えば、H. pylori(例:ウレアーゼ、カタラーゼ、空胞化毒素);Pseudomonas spp、例えば、P. aeruginosa;Staphylococcus spp、例えば、S. aureus、S. epidermidis;Enterococcus spp、例えば、E. faecalis、E. faecium;Clostridium spp、例えば、C. tetani(例:破傷風毒素およびその誘導体)、C. botulinum(例:ボツリヌス毒素およびその誘導体);C. difficile(例:ウェルチ菌AまたはB毒素およびその誘導体);Bacillus spp、例えば、B. anthracis(例:ボツリヌス毒素およびその誘導体);Corynebacterium spp、例えば、C. diphtheriae(例:ジフテリア毒素およびその誘導体);Borrelia spp、例えば、B. burgdorferi(例:OspA, OspC, DbpA, DbpB)、B. garinii(例:OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. afzelii(例:OspA、OspC、DbpA、DbpB):B. andersonii(例:OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. hermsii;Ehrlichia spp、例えば、E. equiおよびヒト顆粒球性エールリヒア症の因子;Rickettsia spp、例えば、R. rickettsii;Chlamydia spp、例えば、C. trachomatis(例:MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C. pneumoniae(例:MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C. psittaci;Leptospira spp、例えば、L. interrogans;Treponema spp、例えば、T. pallidum(例:希有外膜タンパク質)、T. denticola、T. hyodysenteriae;あるいは以下に挙げるような寄生生物に由来するもの:Plasmodium spp、例えば、P. falciparum; Toxoplasma spp、例えば、T. gondii(例:SAG2、SAG3、Tg34);Entamoeba spp、例えば、E. histolytica;Babesia spp、例えば、B. microti;Trypanosoma spp、例えば、T. cruzi;Giardia spp、例えば、G. lamblia;Leshmania spp、例えば、L. major;Pneumocystis spp、例えば、P. carinii;Trichomonas spp、例えば、T. vaginalis;Schisostoma spp、例えば、S. mansoni、もしくは以下に挙げるような酵母に由来するもの:Candida spp、例えば、C. albicans;Cryptococcus spp、例えば、C. neoformans。
【0027】
M. tuberculosisについて、その他の好ましい特異的抗原は、例えば、以下のものである:Rv2557、Rv2558、RPFs:Rv0837c、Rv1884c、Rv2389c、Rv2450、Rv1009、aceA(Rv0467)、PstS1、(Rv0932)、SodA(Rv3846)、Rv2031c 16kDal.、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38-1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2およびhTCC1(WO 99/51748)。M. tuberculosisのタンパク質には、M. tuberculosisの少なくとも2つ、好ましくは3つのポリペプチドがさらに大きなタンパク質に融合された融合タンパク質、およびその変異体も含まれる。好ましい融合体として、Ra12-TbH9-Ra35、Erd14-DPV-MTI、DPV-MTI-MSL、Erd14-DPV-MTI-MSL-mTCC2、Erd14-DPV-MTI-MSL、DPV-MTI-MSL-mTCC2、TbH9-DPV-MTI(WO 99/51748)などが挙げられる。
【0028】
クラミジアの最も好ましい抗原としては、例えば、高分子量タンパク質(HWMP)(WO 99/17741)、ORF3(欧州特許第366,412号)、ならびに推定膜タンパク質(Pmps)が挙げられる。ワクチン製剤のその他のクラミジア抗原は、WO 99/28475に記載の群から選択することができる。
【0029】
好ましい細菌ワクチンは、Streptococcus spp、例えば、S. pneumoniae(PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質)に由来する抗原、ならびにタンパク質抗原ニューモリシン(Biochem Biophys Acta, 1989, 67, 1007;Rubinsら、Microbial Pathogenesis, 25, 337-342)およびその突然変異無毒化誘導体(WO 90/06951;WO 99/03884)を含む。その他の好ましい細菌ワクチンは、Haemophilus spp、例えば、ヒトインフルエンザB型(例:PRPおよびそのコンジュゲート)、型分類意可能ヒトインフルエンザ(例:OMP26)に由来する抗原、高分子量アドヘシン、P5、P6、タンパク質Dおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来のペプチド(米国特許第5,843,464号)もしくはその多コピー変異体または融合タンパク質を含む。
【0030】
本発明に用いることができる抗原は、マラリアを引き起こす寄生生物に由来する抗原をさらに含んでもよい。例えば、Plasmodia falciparum由来の好ましい抗原として、RTS、SおよびTRAPが挙げられる。RTSは、B型肝炎表面抗原のpreS2部分の4つのアミノ酸を介してB型肝炎ウイルスの表面(S)抗原に結合するP. falciparumのスポロゾイト周囲(CS)タンパク質のC末端部分を実質的にすべて含むハイブリッドタンパク質である。その完全な構造については、国際特許出願番号PCT/EP92/02591に開示されており、これは、WO93/10152の番号で公開され、英国特許出願91243907号からの優先権を主張している。同様に、多段階マラリアワクチン成分の候補となるその他のマラリア原虫抗原を以下に挙げる:P. faciparum MSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、Sequestrin、PfEMP1、Pf332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230、ならびにPlasmodium sppにおけるそれらの類似体。
【0031】
本発明は、抗腫瘍抗原の使用を意図していることから、癌の免疫療法治療に有用である。例えば、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌もしくは黒色腫に対するものなどの腫瘍拒絶抗原がある。抗原の例を以下に挙げる:MAGE 1、3およびMAGE 4もしくはWO99/40188に記載されたその他のMAGE抗原、PRAME, BAGE、Lage(NY Eos 1としても知られる)SAGEおよびHAGE(WO 99/53061)もしくはGAGE(RobbinsおよびKawakami, 1996, Current Opinions in Immunology 8, pps 628-636;Van den Eyndeら、International Journal of Clinical & Laboratory Research(1997年寄託);Correaleら (1997), Journal of the National Cancer Institute 89, p293)。実際、これらの抗原は、黒色腫、肺癌、肉腫および膀胱癌のような非常に多種の腫瘍に発現する。
【0032】
本発明に用いるMAGE抗原は、発現エンハンサーまたは免疫融合パートナーを含む融合タンパク質として発現させてもよい。特に、Mageタンパク質はヘモフィルス・インフルエンザB型由来のタンパク質と融合させることができる。具体的に、融合パートナーは、タンパク質Dの最初の1/3を含むことができる。このような構築物はWO99/40188に開示されている。癌特異的エピトープを含みうる融合タンパク質の他の例として、bcr / abl融合タンパク質が挙げられる。
【0033】
好ましい実施形態では、以下に挙げるような前立腺抗原を使用する:前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、PSCA(PNAS 95(4) 1735-1740 1998)、PSMAもしくはプロスターゼとして知られる抗原。
【0034】
プロスターゼは、長さが254アミノ酸の前立腺特異的セリンプロテアーゼ(トリプシン様)であり、保存セリンプロテアーゼ触媒三つ組みH-D-Sおよびアミノ末端プレ−プロペプチド配列を含み、潜在的な分泌機能を示す(P. Nelson, Lu Gan, C. Ferguson, P. Moss, R. Gelinas, L. Hood & K. Wand, “Molecular cloning and characterisation of prostase, an androgen-regulated serine protease with prostate restricted expression, In Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999) 96, 3114-3119)。推定グリコシル化部位は記載されている。推定される構造は他の周知のセリンプロテアーゼと極めて類似しており、成熟ポリペプチドが単一ドメインにフォールディングすることを示している。成熟タンパク質は、長さが224アミノ酸で、1つのA2エピトープは自然にプロセシングされることがわかっている。
【0035】
プロテアーゼヌクレオチド配列と推定ポリペプチド配列および相同体は、以下に挙げる文献に開示されている:Fergusonら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96, 3114-3119)および国際特許出願番号WO98/12302(ならびに対応する付与された米国特許第5,955,306号)、WO98/20117(ならびに対応する付与された米国特許第5,840,871号および米国特許第5,786,148号)(前立腺特異的カリクレイン)およびWO00/04149(P703P)。
【0036】
本発明は、プロテアーゼタンパク質ならびにその断片および相同体(「誘導体」)に基づくプロテアーゼタンパク質融合物を含む抗原をコードするベクターを提供する。このような誘導体は、前立腺腫瘍の治療に適した治療ワクチン製剤への使用に好適である。典型的に、この断片は、前記参照特許および特許出願に開示されているように、少なくとも20個、好ましくは50個、さらに好ましくは100個の連続したアミノ酸を含む。
【0037】
さらに別の好ましい前立腺抗原は、P501Sとして知られる、WO98/37814の配列番号113である。前記参照特許出願に開示されているように、その遺伝子にコードされた免疫原性断片および部分であって、少なくとも20個、好ましくは50個、さらに好ましくは100個の連続したアミノ酸を含む上記断片または部分が意図される。具体的断片としては、PS108(WO98/50567)がある。
【0038】
その他の前立腺特異的抗原は、WO98/37418、およびWO/004149から周知である。それ以外に、STEAP PNAS 96 14523 14528 7 -12 1999もある。
【0039】
本発明に関連して有用なその他の腫瘍関連抗原として、以下のものが挙げられる:Plu -1 J Biol. Chem 274 (22) 15633 -15645, 1999, HASH -1, HasH-2, Cripto(Salomonら、Bioessays 199, 21 61-70、米国特許第5654140号)Criptin米国特許第5 981 215号。加えて、癌治療のワクチンに特に関連する抗原はチロシナーゼおよびスルビビンも含む。
【0040】
本発明はまた、以下に挙げるような乳癌抗原と組み合わせて用いても有用である:Muc-1、Muc-2、EpCAM、her 2/ Neu、マンマグロビン(米国特許第5668267号)またはWO/00 52165、WO99/33869、WO99/19479、WO 98/45328に開示されているもの。中でも、Her 2 neu抗原は米国特許第5,801,005号に開示されている。好ましくは、Her 2 neu抗原は、全細胞外ドメイン(約1〜645個のアミノ酸を含む)またはその断片と、細胞内ドメイン(C末端の約580アミノ酸を含む)の少なくとも免疫原性部分または全部を含む。特に、細胞内部分は、リン酸化ドメインまたはその断片を含んでいなければならない。このような構築物はWO/44899に開示されている。
【0041】
本発明で用いるher 2 neuは、ラット、マウスもしくはヒトのいずれに由来するものでもよい。ワクチンはまた、腫瘍支持機構(例えば、新脈管形成、腫瘍浸潤)と関連する抗原、例えば、tie 2、VEGFを含んでもよい。
【0042】
本発明のワクチンは、アレルギー、癌もしくは感染症以外に慢性疾患の予防または治療に用いることもできる。このような慢性疾患として、喘息、アテローム性硬化症、およびアルツハイマー病ならびにその他自己免疫不全などの疾患が挙げられる。避妊薬として用いるワクチンも考慮することができる。
【0043】
免疫応答をモジュレートするヒト自己抗原またはヒトタンパク質として考えられるものを以下に挙げられる:サイトカイン、ホルモン、増殖因子もしくは細胞外タンパク質、さらに好ましくは4-ヘリカルサイトカイン、最も好ましくはIL13。サイトカインとしては、例えば、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL20、IL21、TNF、TGF、MCSFおよびOSMが挙げられる。4-ヘリカルサイトカインとしては、IL2、IL3、IL4、IL5、IL13、GMCSFおよびMCSFが挙げられる。ホルモンとしては、例えば、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、絨毛性ゴナドトロピン(CG)、VGF、GHrelin、アグーチ、アグーチ関連タンパク質および神経ペプチドYが挙げられる。
【0044】
本発明のワクチンは、特に、慢性状態および癌のような免疫療法的治療だけではなく、持続的感染の治療にも適している。従って、本発明のワクチンは、感染症、例えば、以下に挙げるものに起因する感染症の免疫療法に特に適している:ヒト免疫不全ウイルス(HIV、その際、抗原は好ましくはRT、nefおよびgagの融合物であるのが好ましく、随意にgp120をさらに含む)、B型およびC型肝炎(その際、抗原は、コア、NS3、NS4BおよびNS5Bから選択されるか、これらの組合せであるのが好ましい)、ならびに、ヒトパピローマウイルス(その際、抗原は、6、11、16、18および31、33、39、45、51、52、53、56、58、59、66型、ならびにHPV関連の疾患を引き起こすその他の型に由来するE1およびE2であるのが好ましい)。
【0045】
本発明の一実施形態では、抗原はポリヌクレオチドであり、「ネイキッド」DNAとして投与/送達する(例えば、Ulmerら、Science 259:1745-1749, 1993に記載され、Cohen, Science 259:1691-1692, 1993により総説されている通り)。その際、DNAは、緩衝食塩水を用いて製剤化する。ネイキッドDNAの取込みは、細胞に効率的に輸送される、生物分解性ビーズまたは自然に除去されるビーズにDNAを被覆することにより、もしくはその他周知のトランスフェクション促進物質の使用により、高めることができる。抗原をコードするDNAは、例えば、リポソームのような担体と組み合わせて投与してもよい。典型的には、このようなリポソームはカチオン系で、例えば、イミダゾリム誘導体(WO95/14380)、グアニジン誘導体(WO95/14381)、ホスファチジルコリン誘導体(WO95/35301)、ピペラジン誘導体(WO95/14651)およびビグアニド誘導体である。
【0046】
抗原性ペプチドを発現させる本発明のベクターは、DNAワクチン組成物および免疫療法組成物のベースとして用いることもできる。同様に、治療タンパク質をコードするベクターを治療組成物の主成分として用いることができる。従って、本発明は、免疫療法薬、ワクチンまたはワクチン組成物の製造を目的とする抗原ペプチドの発現に好適な本発明の発現ベクターの使用も提供する。本発明はさらに、哺乳動物被検者にワクチン接種する方法を提供するが、この方法は、有効量のワクチンまたはワクチン組成物を被検者に投与することを含む。DNAワクチン、ワクチン組成物および免疫療法薬に用いる発現ベクターはプラスミドベクターである。
【0047】
DNAワクチンは、「ネイキッドDNA」の形態、例えば、注射器または高圧ジェットを用いて投与する液体製剤として、もしくはリポソームまたは刺激性トランスフェクションエンハンサーと一緒に製剤化したDNAの形態で、あるいは粒子媒介DNA送達(PMDD)により投与することができる。これらの送達系はすべて、当分野ではよく知られている。例えば、ウイルスベクター送達系によりベクターを哺乳動物に導入してもよい。
【0048】
本発明の組成物は、筋内、皮下、腹腔内もしくは静脈内などの多数の経路で投与することができる。
【0049】
好ましい実施形態では、ベクターを皮内投与する。特に、ベクターは、遺伝子銃(特にパーティクルボンバードメント)投与法により送達するが、この方法は、例えば、Haynesら、J Biotechnology 44: 37-42(1996)に記載のように、ベクターをビーズ(例えば、金)に被覆してから、高圧下で表皮に投与することを含む。従って、本発明のベクターを被覆した遺伝子銃送達により表皮に送達するのに適した金ビーズが提供される。
【0050】
一例では、例えば、Powderject Pharmaceuticals PLC(オックスフォード、 UK)およびPowderject Vaccines Inc(メディソン、WI)により製造されるような装置を用いて、ガス駆動粒子加速を達成することができ、そのいくつかの例が以下の文献に記載されている:米国特許第5,846,796号;第6,010,478号;第5,865,796号;第5,584,807号;および欧州特許第0500 799号。この手法は、針を含まない送達法を提供し、ポリヌクレオチドのような顕微鏡的粒子の乾燥粉末製剤を、手で支持する装置により発生させたヘリウムガスジェット内で高速に加速させ、目的とする標的組織、典型的には皮膚に粒子を噴射させるものである。上記粒子は、0.4〜4.0μm、さらに好ましくは0.6〜2.0μm直径の金ビーズであるのが好ましく、DNAコンジュゲートをこれらのビーズに被覆した後、「遺伝子銃」に装填するためのカートリッジまたはカセットに入れる。
【0051】
関連する実施形態では、本発明の組成物のガス駆動による針のない注射に有用なその他の装置および方法として、Bioject, Inc.(ポートランド、OR)により提供されるものが挙げられ、そのいくつかの例が、米国特許第4,790,824号;第5,064,413号;第5,312,335号;第5,383,851号;第5,399,163号;第5,520,639号;および第5,993,412号に記載されている。本発明は、従って、DNAを被覆したビーズを患者の皮膚に送達するための経皮粉末送達装置に関し、この送達装置は、本明細書に記載するベクターが被覆されたビーズを装填している。
【0052】
本発明の一実施形態では、本明細書に記載するベクターを含むDNAワクチンをイミキモド(imiquimod)アジュバントと組み合わせて投与する。抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターは、予防または治療に有効となる量投与する。投与する量は、一般に、1ピコグラムから1ミリグラムの範囲で、粒子媒介送達の場合、1ピコグラムから10マイクログラム、ヌクレオチドのその他の経路の場合、1回の投与につき10マイクログラムから1ミリグラムの範囲であるのが好ましい。正確な量は、免疫しようとする哺乳動物の種および体重、投与経路に応じてかなり変動する。
【0053】
抗原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む免疫成分を単回または繰り返し、例えば、約1日〜約18ヶ月の間隔で1〜7回、好ましくは1〜4回、投与することが可能である。しかし、前述のように、この治療プログラムは、該当する動物の大きさおよび種、治療/予防しようとする疾患、投与するヌクレオチド配列の量、投与経路、ならびに獣医または医師には明らかなその他の要因に応じて、有意に変動しうる。
【0054】
本発明の一実施形態では、本発明のベクターを免疫刺激剤と一緒に用いる。免疫刺激剤は、本発明の核酸ベクターと同時に投与するのが好ましく、好ましい実施形態では、両者を一緒に製剤化する。このような免疫刺激剤を以下に挙げるが、以下に列挙するものは何ら限定的ではなく、他の剤を排除するわけではない:合成イミダゾキノリン、例えば、イミキモド[Aldara(商標)、S-26308、R-837](Harrisonら、‘ Reduction of recurrent HSV disease using imiquimod alone or combined with a glycoprotein vaccine’, Vaccine 19: 1820-1826, (2001));およびレシキモド[S-28463、R-848](Vasilakosら、‘ Adjuvant activites of immune response modifier R-848: Comparison with CpG ODN’, Cellular immunology 204: 64-74 (2000))、抗原提示細胞およびT細胞表面に構成的に発現するカルボニルとアミンのシッフ塩基、例えば、ツカレソル(Rhodes, J.ら、‘ Therapeutic potentiation of the immune system by costimulatory Schiff-base-forming drugs’, Nature 377: 71-75 (1995))、サイトカイン、ケモカイン、およびタンパク質またはペプチドいずれかの形態をした共刺激分子(GM-CSF、IL-1α、IL-1β、TGF-αおよびTGF-βのようなプロ炎症サイトカイン;インターフェロンγ、IL-2、IL-12、IL-15およびIL-18のようなTh1インデューサー;IL-4、IL-5、IL-6、IL-10およびIL-13のようなTh2インデューサー;およびその他のケモカインを含む)、ならびに、 MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、RANTES、TCA-3、CD80、CD86およびCD40Lのようなその他のケモカインおよび共刺激遺伝子、CTLA-4およびL-selectinのようなその他の免疫刺激ターゲッティングリガンド、Fas, (49)のようなアポトーシス刺激タンパク質およびペプチド、バクスフェクチンのような合成脂質をベースとするアジュバント(Reyesら、‘Vaxfectin enhances antigen specific antibody titres and maintains Th1 type immune responses to plasmid DNA immunization’, Vaccine 19: 3778-3786)、スクアレン、αトコフェロール、ポリソルベート80、DOPCおよびコレステロール、内毒素、[LPS](Beutler, B., ‘Endotoxin, ‘Toll-like receptor 4, and the afferent limb of innate immunity’, Current Opinion in Microbiology 3: 23-30 (2000)); CpGオリゴ-およびジ-ヌクレオチド(Sato, Y. ら、‘Immunostimulatory DNA sequences necessary for effective intradermal gene immunization’, Science 273 (5273): 352-354 (1996). Hemmi, H. ら、‘A Toll-like receptor recognizes bacterial DNA’, Nature 408: 740-745, (2000))、ならびに、Toll受容体を誘発してTh1誘導サイトカインを産生するその他のリガンド、例えば、合成微生物リポタンパク質、微生物タンパク質p19、ペプチドグリカン、テイコ酸および脂質A。
【0055】
主にT1型応答を誘導する好ましいアジュバントとして、例えば、モノホスフォリル脂質A、または好ましくは3-O-脱アシル化モノフォスフォリル脂質Aなどの脂質A誘導体が挙げられる。MPL(登録商標)アジュバントはCorixa Corporationから入手可能である(シアトル、WA;例えば、米国特許第4,436,727号;第4,877,611号;第4,866,034号および第4,912,094号を参照)。CpG含有オリゴヌクレオチド(この場合、CpGジヌクレオチドはメチル化されていない)はまた、主にTh1応答を誘導する。このようなオリゴヌクレオチドはよく知られており、例えば、WO 96/02555、WO 99/33488および米国特許第6,008,200号および第5,856,462号に記載されている。免疫刺激DNA配列についても、例えば、Satoら、Science 273:352, 1996により記載されている。別の好ましいアジュバントは、Quil Aのようなサポニン、またはその誘導体(QS21およびQS7など)(Aquila Biopharmaceuticals Inc., Framingham, MA);エスシン;ジギトニン;もしくはGypsophilaまたはChenopodium quinoaサポニンを含む。
【0056】
従って、本発明の重要な態様は、疾患に対する予防または治療に有効な免疫応答を生み出すのに十分な量の本発明のベクターを、上記疾患に罹患しやすい、または罹患した被検者に投与することにより、上記疾患を予防または治療する方法である。
【0057】
疾患の治療のための薬剤の製造における本発明のベクターの使用も提供される。
【0058】
本発明は、さらに、本発明の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクションした宿主細胞も提供する。宿主細胞は、主としてあらゆる真核生物細胞であり、哺乳動物細胞が最も好ましい。
【0059】
本発明は、真核生物宿主細胞における組換えポリペプチドの生産方法も提供し、この方法は、本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入し、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で上記細胞を培養することを含む。
【0060】
本明細書全体を通して、「含んでいる」、「含む」もしくは「含んでなる」という用語は、非限定的に理解すべきである。すなわち、前記実施形態は、記載した要素を含むだけでなく、他の要素を含んでもよい。本発明の別の実施形態では、「含んでいる」、「含む」もしくは「含んでなる」という用語は、限定的意味で解釈される用語「からなる」、「から構成される」で置き換えることもできる。
【0061】
本明細書は、様々な可変パラメーターを記載するが、その各々を属として記載し、多様な従属種をそれぞれについて記載する。本明細書は、属および/または種の考えられるあらゆる組合せを開示するものとする。本発明の一ベクターは、R2エンハンサーエレメント、転写開始部位の下流で末端切断されたUS3最小プロモーターエレメント、およびHCMV MIEタンパク質プロモーター由来のエキソン1配列からなるUS3プロモーターを含む。
【0062】
以下に挙げる実施例により本発明を説明するが、これらに限定されるわけではない。
【実施例】
【0063】
実験研究
これらの研究実験は、HCMVのToledo株由来のUS3最小プロモーターおよびR2領域エンハンサーをホタルルシフェラーゼリポータータンパク質発現アッセイ系(Promega corp)にクローニングし、HCMV MIEプロモーターとの比較発現試験を実施することを含む。加えて、モデル抗原OVAcytおよびHIVポリタンパク質融合抗原RNGを用いた比較発現試験も実施した。
【0064】
US3エンハンサープロモーターの2つの変異体を作製した。一つは天然のUS3 DNA配列を含み、US3と称し、もう一つは、US3非翻訳リーダー配列(+15〜+81bp)の代わりにHCMV MIEエキソン1領域を融合し、US3exと称する。
【0065】
実施例1:HCMVのToledo株由来のUS3プロモーター断片の作製
HCMV株Toledoに由来し、US3最小プロモーターとR2領域エンハンサーエレメントを含むDNA配列領域をPCRによりルシフェラーゼリポーターベクターpGL(Promega Corp)にクローニングした。クローニングのためのプライマー対は、HCMV株AD169由来のUS3DNA配列を用いて設計した。
【0066】
エンハンサー/プロモーター(R2および最小プロモーター領域)を含む−346から+74(転写開始部位+1に対して)までのHCMV株AD 169のDNA配列を以下に示す。Nf-kBドメインは太字で示した。TATAAボックスとEcoRV制限部位に下線を引いた。Lashmitら(1998)に定義されるCRSエレメントを太字で示す。
【化1】

【0067】
HCMV Toledo 由来のUS3プロモーター領域をクローニングするために、AD169株に基づくPCRプライマーを設計し、MWG-biotech AGから取得した。GSKで作製され、Toledo株HCMVゲノムを含むコスミドライブラリーを供給源遺伝子材料として用いた。プライマー配列およびPCR条件を以下に示す:
US3 5’末端:5'-GGGGTACCCTGCAGCCCGGGTCCCCTCA-3’ (配列番号2)
US3 3’末端:5’-CCCAAGCTTGCGGCCGCGGCTCCGAAGGTCCGCT-3’ (配列番号3)
Kpn I, Pst I, Hind III, Not I
反応:5μl 10x ポリメラーゼバッファー
2.5μl DMSO
0.5μl 鋳型コスミドクローン#11
0.5μl 1プライマーにつき(@100pモル/μl)
2.5μl 10mM dNTP’s
5U Herculaseポリメラーゼ(Stratagene)
50μl dd水に調製。
【化2】

【0068】
アガロースゲルでのエチジウム染色により、予想した大きさ(約430 bp)のPCRバンドを確認した。このバンドをゲル精製し、後にルシフェラーゼリポーターベクターpGL3(Promega Corp)と結合させるために、Kpn IおよびHind IIIで制限消化した。
【0069】
US3exプロモーター断片の作製
HCMV MIEエキソン1遺伝子配列をUS3プロモーターの転写開始配列(ACGCTACTTCT(配列番号4))の直後に融合した。
【0070】
HCMV MIE CMVプロモーター由来のエキソン1配列
CGTCAGATCGCCTGGAGACGCCATCCACGCTGTTTTGACCTCCATAGAAGACACCGGGACCGATCCAGCCTCCGCGGCCGGGAACGGTGCATTGGAACGCGGATTCCCCGTGCCAAGAG(配列番号5)
この手順は、4つの個別PCRを含む。ここでもMWG-Biotech AGからオリゴヌクレオチドを入手した;
a)その3’末端に融合配列を有するUS3断片についてのPCR:PCR条件およびサイクル時間は、用いるプライマーがUS3 5’およびUS3/exRである以外、前記と同様である;
【化3】

【0071】
PCRにより、適正な大きさの断片が得られ、これを再び精製した。
【0072】
b)その5’末端に融合配列を有するエキソン1断片についての2×PCR:PCR条件およびサイクル時間は以下の通りである;
オリゴヌクレオチド:
【化4】

【0073】
FVprex F2:
5'-TGACCTCCATAGAAGACACCGGGACCGATCCAGCCTCCGCGGCCG-3'(配列番号8)
FVprex F3:
5'-GTGCATTGGAACGCGGATTCCCCGTGCCAAGAGGCGGCCGCAAGCTTGGG-3'(配列番号9)
FVprex R1:
5'-GAATCCGCGTTCCAATGCACCGTTCCCGGCCGCGGAGGCTGGATC-3'(配列番号10)
FVprex R2:
5'-GGTGTCTTCTATGGAGGTCAAAACAGCGTGGATGGCGTCTCCAGG-3'(配列番号11)
オリゴヌクレオチドはすべて、100 pモル/μlの濃度で水に懸濁させた。
【0074】
5μlの各オリゴを混合することにより、オリゴヌクレオチドプールを作製した。次に、これを以下のPCR反応に用いた;
B(i)集合PCR;5μl 10x ポリメラーゼバッファー
1μl オリゴプール
1μl 25mM dNTP’s
42μl dd水
5% DMSO
5U Herculaseポリメラーゼ(Stratagene)
【化5】

【0075】
反応生成物をアガロースゲル上で検査し、10μlを次のPCR反応に用いた;
B(ii)回収PCR;5μl 10x ポリメラーゼバッファー
10μl 集合反応
*0.5μl 回収プライマー*
1μl 25mM dNTP’s
32μl dd水
5% DMSO
5U Herculaseポリメラーゼ(Stratagene)
【化6】

【0076】
*用いた回収プライマーはUS3/exFおよびRex1である。
【0077】
Rex1:
5'-CCCAAGCTTGCGGCCGCCTCTTGGCACGGGGAATCCGCGTTCCAATGCAC-3'(配列番号12)
ここでも、適正な大きさのエキソン1断片(〜100bp)を確認し、精製した。
【0078】
C)最終PCRは次の通りである;
反応;5μl 10x ポリメラーゼバッファー
2.5μl DMSO
1μl 鋳型DNA:PCR(A)からのUS3断片+PCR(B)からのエキソン1断片
0.5μl US3(-330)5’オリゴ
0.5μl Rex1オリゴ
2.5μl dNTP’s
5U Herculaseポリメラーゼ(Stratagene)
dd水で50μlに調製。
【化7】

【0079】
エチジウム染色したアガロースゲルで、予想した大きさ(約500 bp)のPCR生成物バンドを確認した。このバンドをゲル精製し、後にルシフェラーゼリポーターベクターpGL3(Promega Corp)と結合させるために、Kpn IおよびHind IIIで制限消化した。
【0080】
実施例2:US3およびUS3exルシフェラーゼリポーター構築物の作製
プロモーター断片US3およびUS3exを制限し、ベクターpGL3に結合した後、細菌株JM109への形質転換を実施した。1プロモーターにつき6つの細菌コロニーを選択し、挿入DNA配列決定を実施した。各クローンからプラスミドDNAを作製し、以下のプライマーを用いて挿入DNA配列を決定した;
Luc R;5'-ATGAGATGTCAGGAACGTCT-3'(配列番号13)
Luc F;5'-TAAGGGATTTTGCCGATTTC-3'(配列番号14)
RV3;5'-CTAGCAAAATAGGGCTGTCCC-3'(配列番号15)
(−350から+74まで)のToledo US3領域のDNA配列データから、参照株配列AD169と比較して、いくつかの塩基変化が明らかになった。これらの塩基変化のうち9つは、試験した12プロモータークローンすべての全域で一貫していたため、HCMV株Toledoと参照株AD169の配列に特異的な相違を表していると考えられる。これらの9塩基の変化は、US3プロモーター:クローンUS3#3およびUS3ex#1に下線で示した。AD169配列と比較して、これらのクローンに他の塩基変化は起こっていない。従って、クローン#3は、HCMVのToledo株由来の US3最小プロモーター配列およびR2エンハンサーについて最初に記載したものである。加えて、TATAAボックス、およびEcoRV制限部位(GATAT)は太字である。Lashmit 1998に定義したCRSエレメントは太字であり、そこから転写開始も(+1)で示されている。
【化8】

【化9】

【0081】
実施例3:ヒト細胞系HEK293Tにおけるプロモーター活性の分析
ホタルルシフェラーゼアッセイを用いて、プロモーター活性をin vitroで分析した。
【0082】
手短に言うと、形質転換したヒト胎児性腎293細胞(HEK293T)を96ウェルブラックプレート(透明で平らな底部ウェル)において、1ウェル当たり1×104細胞で平板培養した。これらを37℃のインキュベーターに一晩放置した。翌日、リポフェクタミン2000試薬(Invitrogen)を製造者の指示に従い用いて、1ウェル当たり250 ngのプロモータープラスミドで細胞をトランスフェクションした。細胞を24時間放置した後、ルシフェラーゼ活性についてアッセイした。
【0083】
アッセイの詳細および試薬については、Promega Corp製の技術マニュアルTM052にみいだすことができる。Wallac Victorプレートリーダーでプレートを読み取り、結果を1秒あたりの相対光単位として記録した。プラスミドは二重にトランスフェクションした。結果を図1に示す。
【0084】
興味深いことに、12のプロモータークローンは広範囲のルシフェラーゼ活性を示したが、これは恐らく各プロモーターにおける様々な突然変異によるものであろう。
【0085】
12クローンのうち4つだけが9つのToledo特異的DNA配列変化を有していた。これらは、クローンUS3#3、#5およびUS3ex#1、#3であった。クローンUS3#3およびクローンUS3ex#1をさらなる試験のために選択した。
【0086】
プロモーター活性の速度論
マウスでの免疫原性試験の前に、US3ex#1プロモーターの活性をマウスマクロファージ細胞系で試験した。マウスRAW264.7細胞を24ウェルプレートで平板培養し、Superfect試薬を製造者(Qiagen)の指示に従い用いて、0.5 ugの各プラスミドベクターでトランスフェクションした。6時間、9時間および24時間おきに、トランスフェクションした細胞を回収し、ルシフェラーゼアッセイを前記のように実施した。平均的結果を図2に示す。
【0087】
US3exプロモーターからの発現(ルシフェラーゼ活性により決定する)は、トランスフェクションから6時間および9時間後の両方で、SV40プロモーターより高く、iCMVプロモーターのそれと同等である。24時間後、US3プロモーターの発現はiCMV より低い。US3プロモーター活性の反応速度は文献と一致している。
【0088】
US3プロモーターはヒト樹状細胞において活性である
治療DNAワクチンの重要な標的DNAは樹状細胞である。ヒト樹状細胞を健康な供与者から単離し、Amaxa Biosystemsの技術および方法を用いて、エレクトロポレーションによりトランスフェクションした。4つの異なるプロモーター構築物を試験した。トランスフェクションから24時間後、ルシフェラーゼアッセイを実施した。
【0089】
ヒト樹状細胞における発現レベル全体が293のような他の細胞系より低いが、これは、細胞トランスフェクションのレベルが一般に低いためと考えられる。しかし、ヒト樹状細胞において3つのプロモーターすべてから検出可能な発現を測定した。この実験では、US3プロモーターの活性は、iCMVプロモーターとSV40プロモーターの中間にある。結果については図3を参照されたい。
【0090】
実施例4:モデル抗原Ovacytを用いたマウスにおけるUS3プロモーター免疫原性
Ovacytは、核細胞位置ではなく細胞質位置について作製したモデル抗原である。この抗原を用いて、US3exプロモーターが遺伝子発現を駆動し、動物において免疫応答を喚起する能力を評価した。US3exプロモーターをベクターp7313.ova cytにおいてOvacyt遺伝子の後ろでクローニングすることにより、p73OvaUS3exを作製した(マップ(図4)を参照のこと)。金ビーズに被覆したプラスミドベクターでマウスを免疫するが、その際、PMIDワクチン方法によりこれを皮膚に送達する。
【0091】
PMID DNA免疫のためのカートリッジの作製
Accell遺伝子転移装置のためのカートリッジの作製についてはすでに記載されている(Eisenbraunら、DNA and Cell Biology, 1993 第12巻、第9号、 pp 791-797;Pertnerら)。手短にいえば、プラスミドDNAを2μmの金粒子に被覆(DeGussa Corp., South Plainfield, N.J., USA)した後、Tefzelチューブに装填し、このチューブを長さ1.27 cmに切断することにより、カートリッジとし、使用するまで4℃で乾燥状態で保存する。典型的ワクチン接種では、各カートリッジは、プラスミドベクターを被覆した0.5 mgの金を含み、これにより、1カートリッジ当たり総量0.5μgのDNAを供給する。
【0092】
免疫
PMID(0.5μg/カートリッジ)を用いて、プラスミドベクターをマウスの皮膚に投与した。500 lb/in2でAccell遺伝子転移装置(McCabe WO 95/19799)を用いて、2つのカートリッジからC57B1/6マウス(Charles River United Kingdom Ltd, Margate, UKから購入)の腹部皮膚の剃毛した標的にプラスミドを送達した。
【0093】
免疫アッセイ
ELISPOTアッセイを用いて、抗原特異的T細胞応答を測定した。初回免疫から7日後および14日後に測定した。頸部脱臼によりマウスを死なせ、膵臓を氷冷PBSに回収した。膵細胞をほぐして取り出し、リン酸緩衝食塩水(PBS)に入れた後、赤血球を溶解させた(155mM NH4Cl、10mM KHCO3、0.1mM EDTAからなるバッファー中で1分)。PBSで2回洗浄することにより、粒状の物質を除去し、単細胞懸濁液をELISPOTプレートに等分して導入したが、このプレートは事前に捕獲IFN-γ抗体で被覆し、CD8制限ペプチドで刺激しておいた。一晩培養した後、IFN-γ産生細胞を抗マウスIFN-γビオチン標識抗体(Pharmingen)、次にストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼの使用により視覚化し、画像分析を用いて測定した。
【0094】
ELISPOTアッセイで用いたペプチドのアミノ酸配列を以下に挙げる:
CD8制限Ovaペプチド SINFEKL(配列番号18)
CD8制限GAGペプチド AMQMLKETI(配列番号19)
CD8制限RTペプチド YYDPSKDLI(配列番号20)
この実験の結果(図5)から、US3exプロモーターが活性で、1回の初回免疫から7日および14日後のマウスに細胞免疫応答を発生できることがわかる。US3exプロモーターを用いた免疫応答のレベルはiCMVのそれと同等である。
【0095】
実施例5:HIV抗原を用いたマウスでのUS3プロモーター免疫原性試験
3つのHIV抗原(RT、NefおよびGag)を含む融合タンパク質を用いて、US3プロモーターの有用性も評価した。これらのタンパク質を融合し、単一のポリプロタンパク質(RNG)として発現させる。
【0096】
ベクター構築
制限酵素ClaIおよびNotIを用いて、US3exプロモーターをpUS3ex-ovaプラスミドから放出させることにより、737 bpの断片を取得した。この断片を用いて、プラスミドpT-RNGのClaI - NotI断片を置換した。こうしてRGNポリタンパク質をUS3プロモーターの制御下に置くことにより、プラスミドベクターpUS3-RNGを作製した(図6参照)。
【0097】
RNG挿入物の配列およびその作製方法についてはWO03/025003(図18)に記載されており、該文献の内容は、参照として本明細書に組み込むものとする。
【0098】
注:pT-RNGは、pUCをベースとするプラスミドであり、これは、エキソン1を含むが、イントロンAを含まない、増強されたHCMV MIE1プロモーターの制御下で、HIV 1(HXB2)RT(不活性)、Nef(末端切断)、およびGag(p17/24)を含む融合タンパク質を発現するように設計されている。RTおよびGag成分は、哺乳動物発現増強のために最適化されたコドンである。
【0099】
免疫ならびにGAGおよびRTに対する免疫原性測定
カートリッジの作製、免疫および免疫アッセイは前記の通りである。
【0100】
7日および14日後のマウスのHIV GAGに対する細胞免疫応答を図7に示す。
【0101】
Gagペプチドに特異的なCD8 T細胞応答は、免疫から7日および14日後に検出可能である。応答のレベルは、iCMVプロモーターベクターT-RNGからのものと同等である。
【0102】
HIV RT抗原に特異的なCD8 T細胞応答も、免疫から7日および14日後に検出可能である。7日および14日後のマウスのHIV RTに対する細胞免疫応答を図8に示す。
【0103】
実施例6:ミニブタプロモーター試験
この試験の目的
・US3プロモーター(クローン#1−HCMV MIE遺伝子由来のエキソン1配列を有する)とHCMV MIEプロモーター(エキソン1配列も含む)によりそれぞれ発現を駆動したプラスミド(以前記載されているマウス試験で用いられたものと同じプラスミド)におけるRNGの免疫原性を比較する。
【0104】
・ブタにおける3つのプラスミドに対する免疫応答の反応速度を解明する。
【0105】
動物
10匹のミニブタ(生後2〜4ヶ月、雄)
グループ
・グループA CMVプロモーター−RNG(n=5)
・グループB US3exプロモーター−RNG(n=5)
PMIDのプラスミド
・CMVプロモーターを含むp7313-RNG
・US3exプロモーターを含むp7313-RNG
各カートリッジは、0.5 mg金ビーズ(直径2μm)に被覆した1.0μg RNGプラスミドを含む。金ビーズを500 psiのヘリウムガス流で送達した。
【表1】

【0106】
PMIDによる免疫の直前に、標準的獣医用クリップで免疫部位を留め、清潔な湿った布で清浄にしてから、医療用(mediwipe)綿棒でふき取った。1回の免疫につき4つのカートリッジを腹部尾側部分の非重複部位に送達した。免疫部位は、初回免疫の場合、腹部中央線からいずかの側に1インチ、追加免疫の場合には、腹部中央線からいずれかの側に3インチの地点に位置決めした(すなわち、初回免疫と追加免疫で皮膚の同じ箇所への免疫を避ける)。
【0107】
Aldara
各PMID免疫から24時間後、20μl Aldara(商標)(3M)を免疫の各部位に局部適用する。へらを用いて、皮膚にクリームを塗る。Aldara(商標)は性器いぼの治療のために販売されている局部適用クリームであり、活性薬剤としてイミキモドを含有する。これに関し、イミキモドは、DNAワクチンのアジュバントとして作用する(詳細については、WO 02/24225を参照)。
【0108】
血液サンプルの採血
1mlの1000 U/ml抗凝固ナトリウムヘパリンを含む個々の50 ml Falcon管に、各ブタからの血液サンプル(20〜40 ml)を回収した。
【0109】
結果
タンパク質またはペプチドプールに対するELISPOTアッセイで測定した百万PBMC当たりのIFN-γ産生細胞の結果を図9〜12に示す。これらの結果から、US3プロモーターを含むDNAワクチンが前記ブタにおいて免疫応答を発生し、それはHCMV MIEプロモーターを含むDNAワクチンにより誘導されたものと少なくとも同等であったことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】ルシフェラーゼアッセイを用いてヒト細胞系HEK293Tにおけるプロモーター活性を測定した結果を示す図である。
【図2】ルシフェラーゼアッセイを用いてRAW264.7細胞におけるUS3exプロモーターの活性を測定した結果を示す図である。
【図3】ルシフェラーゼアッセイを用いてヒト樹状細胞におけるUS3プロモーターの活性を測定した結果を示す図である。
【図4】プラスミドp73ovUS3exの構造を示す図である。
【図5】免疫から7日目および14日目のマウスにおけるOvaに対する細胞免疫応答を示す図である。
【図6】プラスミドpUS3-RNGの構造を示す図である。
【図7】免疫から7日目および14日目のマウスにおけるHIV GAGに対する細胞免疫応答を示す図である。
【図8】免疫から7日目および14日目のマウスにおけるHIV RTに対する細胞免疫応答を示す図である。
【図9】ミニブタ代替プロモーター:初回免疫から8週間後(DNA追加免疫の日)のIFN-γELIspotによるRT、NefおよびGagペプチドプール(PLP)ならびにタンパク質に対する平均応答を示す。
【図10】ミニブタ代替プロモーター:初回免疫から10週間後(追加免疫から2週間後)のIFN-γELIspotによるRT、NefおよびGagペプチドプールならびにタンパク質に対する平均応答を示す。
【図11】ミニブタ代替プロモーター:初回免疫から12週間後(追加免疫から4週間後)のIFN-γELIspotによるRT、NefおよびGagペプチドプール(PLP)ならびにタンパク質に対する平均応答を示す。
【図12】ミニブタ代替プロモーター試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US3遺伝子のプロモーターエレメントを含むポリヌクレオチドベクターであって、このプロモーターが、HCMV US3タンパク質に関して外来である異種ポリペプチドをコードする領域に機能的に連結している、上記ポリヌクレオチドベクター。
【請求項2】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)US3遺伝子の最小プロモーターエレメントと転写調節エレメントを含み、この最小プロモーターが、HCMV US3に関して外来である異種タンパク質をコードする領域に機能的に連結している、請求項1に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項3】
前記転写調節エレメントがエンハンサーエレメントである、請求項2に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項4】
前記エンハンサーエレメントが、HCMV US3遺伝子由来のR2エンハンサーエレメントである、請求項3に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項5】
前記R2エンハンサーエレメントが、最小HCMV US3プロモーターのすぐ上流に位置する、請求項4に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項6】
US3プロモーターの転写開始配列の後に融合されたHCMV MIEエキソン1遺伝子配列をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項7】
US3プロモーター内のR1エレメントのサイレンシング作用が低減または除去されている、請求項1に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項8】
US3 R1エレメントの配列が除去されている、請求項7に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項9】
HCMV US3遺伝子プロモーターのR2エンハンサーエレメントと、非HCMV US3遺伝子プロモーター由来の最小プロモーターエレメントとを含む、ポリヌクレオチドベクター。
【請求項10】
非HCMV US3遺伝子プロモーター由来の前記最小プロモーターエレメントが、HCMV MIE遺伝子最小プロモーターエレメントである、請求項9に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項11】
プラスミドベクターである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項12】
真核宿主細胞または生物におけるポリペプチドの発現に使用するための発現ベクターである、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項13】
前記ポリペプチドが抗原性ポリペプチドである、請求項12に記載のポリヌクレオチドベクター。
【請求項14】
ワクチンまたは免疫療法薬として、あるいはワクチン組成物または免疫療法組成物の成分として使用するための、請求項13に記載のポリヌクレオチド発現ベクター。
【請求項15】
治療タンパク質のin vitro発現に使用するための、請求項12に記載のポリヌクレオチド発現ベクター。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現ベクターと、薬剤学的に許容されうる補助希釈剤、賦形剤もしくは担体を含む、免疫原性組成物。
【請求項17】
前記担体が、ベクターが被覆されたビーズを含む、請求項16に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
ワクチン、免疫療法薬、ワクチン組成物もしくは免疫療法組成物の製造における、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現ベクターの使用。
【請求項19】
ヒト被検者にワクチン接種する方法であって、請求項14に記載の発現ベクターを含む有効量のワクチンまたはワクチン組成物、あるいは請求項16または17に記載の有効量の組成物を上記被検者に投与することを含む、上記方法。
【請求項20】
請求項15に記載のポリヌクレオチド発現ベクターで形質転換またはトランスフェクションした宿主細胞。
【請求項21】
真核宿主細胞における組換えポリペプチドの生産方法であって、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で、請求項15に記載の発現ベクターを宿主細胞に導入することを含む、上記方法。
【請求項22】
DNAを被覆したビーズを患者の皮膚に送達するための経皮粉末送達装置であって、送達装置には請求項1〜14のいずれか一項に記載のベクターを被覆したビーズを装填する、上記装置。
【請求項23】
免疫療法で使用するための請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−517514(P2007−517514A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548284(P2006−548284)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000443
【国際公開番号】WO2005/068638
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】